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前置き

  • 遠近法、パース/パースペクティブ(perspective)、空気遠近法は立体を平面に描く技法であり、立体を縮小コピーする為の技法ではないので縮小模型とは一切無関係である。
  • スケール効果、スケールエフェクトは素材の質感・塗装について扱った理論であり、ボディのフォルム・寸法をデフォルメする行為とは一切無関係である。そしてキットは通常無塗装で出荷され、塗装の厚みは個々の技量・塗料の種類に左右され、インジェクションキットメーカーが予め塗装の厚み分小さく設計する事は困難である。また素材表面の質感はインジェクションキットでは元々再現することが困難であり、寸法さえ正確であれば十分良心的である。
  • パネルラインやワイパー等の大抵のキットでオーバースケールになってしまっている部分は技術的・強度的に正確にスケールダウンすることは困難でありデフォルメとは一切無関係である。全く再現されないより、オーバースケールであっても再現されている方が良心的である。
  • 当ページで扱うデフォルメとは「deformer」本来の定義に従い、なんら技術的問題が無いにも関わらずフォルム形状を歪める行為についてである。

以下はデフォルメ推進派の主張を取り上げ、同時にその主張の欠陥を指摘したものである。




主張1 #主観的理由

主張例A

カーモデルは小さいので、実車を見たときと同じ視覚的効果を得る為に特徴を強調せねばならない。
また、違和感を感じさせないよう(実車を見た時と同じ印象になるよう)デフォルメを加える必要がある。

この主張の問題点

  • デフォルメを行うにあたっての客観的で明確な基準が存在しない為、以下のような弊害が発生する。
  1. 車高や全幅をスケール通りではない寸法にした場合、特に実車に詳しい人物に違和感を感じさせてしまう原因になる。
  2. 何を以って特徴とするかには個人差があり、特定の人物が特徴と認識している部分を強調したとしてもその他の人物から見れば形状がおかしいとしか認識されない。(これはあくまで販売対象が広いインジェクションキットのメーカーは客観的に正確な寸法・形状を再現する事に努めるべきであるという意見に留まる。特定の個人がカーモデルを自分好みの形状に改造することを否定するものではない。)

スケールモデルとしての問題点

  1. 特徴を強調しようと意図的にプロポーションを改変した場合、スケール表記から外れてしまう。
  2. 模型の定義は「実物を模した型」であり、個人々人が持つ自分勝手な脳内のイメージを形にしたモノではない(後者は模型ではなく像・創作物である)。
  3. 実車の形状に対する認識・理解度は様々であり、不特定多数を対象にしたインジェクションキットに於いて消費者に違和感を与えないという発想・目標設定そのものが間違っている。(実車の形状・構造を誤解していたり、認識が不十分な人物が模型から正しい情報・形状を学ぶ機会を奪うべきではない)

  • 縮小模型はその性質上小さくて当然であり、小さいことに文句があるならよりスケールが大きいものや実車を買うべきである。

主張例B

(主張例Aに付随して)縮尺が小さければ小さい程、より大きく強調する必要がある。

この主張の問題点

縮尺が小さい程大きく強調した場合、以下のように縮尺が小さくなるほど指数関数的に実車との形状の剥離が進行する。

  • 縮小模型はその性質上小さくて当然であり、小さいことに文句があるならよりスケールが大きいものや実車を買うべきである。



主張2 #物理特性を考慮した理由

主張例A

縮小模型に於いては、眺める角度・距離が異なるために視点の違いを考慮して形状を変えた方が良い(車高を低く、また全幅を広くする等)。

この主張の問題点

  1. ある特定の距離・角度から眺める事を想定して形状を最適化しても他の方向から見ると形状が崩れてしまう。模型を眺める角度や距離は消費者の自由であり一定では無い。

スケールモデルとしての問題点

  1. 視点等を考慮して形状を変更した場合、スケール通りでない部分が出てくる。そういった技法はスケールモデルの範囲外である。

主張例B

眼球の水晶体のレンズ効果を考慮しなければならない。(水晶体は対象物との距離によって焦点距離を変えるために屈折率が変わる。対象物との距離が短い程屈折率が上がる。)

この主張の問題点

  1. デフォルメ推奨派は水晶体の屈折率の数値やそれが視野に及ぼす影響についての客観的・科学的説明や、縮小模型に補正を加えるための計算式を提示できた事が無い。科学的・客観的手法を装った屁理屈である。
  2. 仮に対象物が近い場合は視野がレンズ効果が歪むという現象が事実であるとした場合でも、個人個人による水晶体の屈折率の違い、視力の違い、視力矯正方法の違い(コンタクトレンズ・メガネ等。メガネには球面レンズと非球面レンズがあり、レンズ効果の強度に差がある。)があり形状を補正する為の絶対的な基準値を設定する事がはたして可能なのか不明である。

スケールモデルとしての問題点

  1. レンズ効果を考慮して形状を変更した場合、スケール通りでない部分が出てくる。そういった技法はスケールモデルの範囲外である。



主張3 #メーカーの販売戦略的理由

主張例A

デフォルメをしない場合、複数のメーカーが同一車種のモデルアップする際にメーカー毎の差別化が図れない。

回答

  1. 1/12、1/16、1/20、1/24、或いはそれ以下のスケールのカーモデルでは技術的・コスト的制約等から実車の完全再現は困難であり、いかに技術的障壁を克服するか、あるいはエンジンの再現の有無、開閉等のギミックの有無、資料や取材力の違いから出るフォルムの正確性、また組み立てやすさ等でいくらでも差別化が可能である。

主張例B

幅広い客層を相手にするインジェクションキットメーカーはより多く販売する為にデフォルメを施すべきである。

この主張の問題点

  1. デフォルメが行われているキットであってもその旨がパッケージに記載されておらず、また購入前のキットの寸法を計る事は常識的に問題があり、販売店によっては購入前に箱を開けられない・パーツが分割されている・内袋に入っている等で計測どころかじっくり見る事すら困難なケースもあり、デフォルメが施されているかどうかを購入前に判別する事は困難であり購入動機に直結する事は考えにくい。購入する動機としては車種選定や箱絵の方がずっと大きなウェイトを占める。
  2. これまで述べた通り万人がデフォルメされたキットを望んでいる訳ではないしデフォルメされたキットを見て喜ぶわけではないので、デフォルメされている事は必ずしも付加価値とはならずネガティブ要素と受け取られる事もしばしばである。その為製品に意図的にデフォルメを加える行為は自社の首を絞める事になる。
  3. 公式にデフォルメを施している事を認めており実際デフォルメされた例が多数確認されているタミヤのカーモデルが、フジミ・アオシマ・ハセガワのカーモデルに売り上げで圧倒的な差を付けていたり売り場で他社製カーモデルより扱いが大きいかと言えばそうでもないのが現実である。



主張4 #デフォルメするかどうかはあくまで趣向・好みの問題だと開き直る

主張例

デフォルメを好むか好まないかは趣向の問題であり、インジェクションキットメーカーに於いても独自の裁量でデフォルメを施すか否かの決定が出来る。

この主張の問題点

  1. 寸法は各車種を特徴付け、判別する為の重要な要素である。モデルとなった実車名と縮尺を表記している模型に於いてはインジェクションキットメーカーが独自の裁量で形状を歪める行為は許されない。 もしもインジェクションキットメーカーが正確にスケールダウンした形状に対して不満があるのならば、スケール表記を外しノンスケールのジャンルで販売するか、あるいは実車をモデルにする事を辞め、自社デザインによる架空の車をモチーフとしたオリジナルキットを販売するべきである。

タミヤ模型の問題点

  1. 特に「リアル」「実車そのまま」「ミュージアムコレクション」等のキャッチフレーズを多用するタミヤ製品にデフォルメを施すことは消費者に対する完全な背信行為と言える。
  2. そもそもタミヤ模型はデフォルメを施している事を製品に一切記載していない為、消費者にはデフォルメ製品と通常のスケールモデルを選択する余地が与えられていない。その為消費者らはタミヤ模型社員の趣向や好みを押し付けられ、自らの趣向や好みを発揮し望む製品を購入する機会を奪われている。

  • こういったルール・企業倫理の問題を趣向・好みの問題に摩り替えて強引に正当性を主張する人物は反社会的であり、社会のルールから逸脱している。|











最終更新:2010年04月17日 04:51
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