2009.7.25 00:08
企業内失業者が600万人を超えるという衝撃のデータが示された平成21年度の経済財政白書は、深刻さを増す雇用問題と表裏一体の関係にある格差問題についても詳細に分析した。具体的には「所得格差の拡大傾向が続いている」と格差の広がりを明確に認めるとともに、その原因についても「非正規雇用の増加が主因」と断じた。衆院選では与野党ともに雇用や格差問題への積極的な対応を訴えようとしており、選挙戦での争点となりそうだ。
「構造改革の裏側でいろんな『ひずみ』が出てきた。それを正面から認めたことは意義がある」
閣議に白書を提出した林芳正経済財政担当相はこう語った。麻生政権ではこれまで、小泉政権下で進められた構造改革に伴う“ほころび”の修復を目指してきたが、今回の白書は、非正規労働者が増えた要因の一つとして、製造業への派遣を解禁した小泉政権の「労働法制の改正」を初めてあげた。行き過ぎた規制緩和が格差拡大につながった側面を認めた格好だ。
格差拡大を政府に認めさせたのは数字だ。家計調査などをもとに所得格差の現状を指数化した代表的な経済指標「ジニ係数」は昭和62年以降、一貫して格差の拡大傾向を示している。
さらに白書は景気悪化に伴い「『派遣切り』などの形で雇用調整が行われた」と失業率の急激な悪化を指摘。「仮に20~21年のジニ係数を推計すれば格差はかなり拡大しているだろう」(内閣府幹部)と、失業の増加が格差拡大を加速させることを懸念している。
このほか、白書には「正規と非正規との間には生涯所得で約2・5倍の格差が生じる」「年収300万円未満の雇用者が19年に50・2%と過半数となった」など、非正規労働者の増加が格差拡大の主因であることを裏付けるデータが数多く並んでいる。
一方、白書は格差対策の一つとして、税控除の恩恵を受けられない低所得者対象に給付金を支給する「給付付き税額控除」を検討課題に挙げたが、それ以外は「景気回復が最大の格差対策」と結論づけた程度。衆院選では自民、民主両党とも、所得格差が次世代の子や孫に受け継がれる「格差の固定化」を防ぐ施策を打ち出す方向だが、給付付き税額控除や失業者支援の拡充など似通った政策も多く、どこまで有権者に訴えられるかが問われそうだ。