お年玉@碇家


「はい、お年玉」
とシンジが自らの愛娘に初めてのお年玉袋を渡す。
喜喜としてそれを受け取る小学一年の愛娘ミライ。
そしてその光景を不思議そうに見つめているアスカ。
「どうしたの? アスカ」
とシンジが聞くとアスカは「うん……」と答えた。
「あの袋はなんなのよ?」
「ドイツには無かったの?」
アスカは頷く。
「少なくとも私は貰う機会なんてなかったわ」
「あ、ごめん……」
アスカの母親の事を思い出したのか、シンジはトッサに謝った。
アスカは溜め息を吐き、ジト目でシンジを睨む。
「何度目よ、アンタが子の事で謝ったの」
律儀に頭の中で数えるシンジ。多分100は越えている筈だと当たりがつく。
「いい加減にしなさいよね。なにも慰めて欲しくて言うんじゃないんだから」
「え?」
シンジの耳には入らなかった。謝った回数を数えていたから。
「聞いてねーのかー!」
うがー、とシンジに吠えるアスカだが、シンジはもう馴れた様子で、微笑みで軽く流した。
「まぁまぁ……それより聞きたいのはお年玉の事でしょ?」



目にも留まらぬ変わり身で怒髪モードから興味深々モードになるアスカ。
「そうよ! あれはなんなのよ!」

手短くアスカに説明するシンジ。

「子供にお金上げるワケ? 年の始めから?」
倫理的に疑問に思っているオーラが漏れだしている。
「ああ、それなら大丈夫……」
言い終わらぬ内に、子供達が初めてのお年玉を数え終えて走ってきた。
因みに中身は野口さんが一人だ。
「はい。お父さん」
両手にしっかりとお金を持って、差し出すミライ。
「はい、ちゃんと預かっておくからね」
そしてミライはその言葉をしっかり聞くと、安心したように微笑んで走っていった。
リビングの扉の所で立ち止まり「ゼッタイだからね!」と念を押すのも忘れない。
娘のいなくなったリビングで、アスカは掌に拳をあてて「なるほど」と叫んだ。
「何年かしたら返すって言っといて、まんまと無垢な娘から巻き上げる作戦ね!」
冷や汗を垂らしながら人聞きの悪い宣言を聞くシンジ。
「ま、巻き上げるなんてしないよ。ちゃんと返すさ。それにあと何年この方法が使えるか分からないし……」
素直に預けてくれる事自体、ある意味奇跡だ。
「律儀ね。アンタ」
ははは、と頭を掻きながらシンジは照れるように笑った。



「で?」
「え?」
「私のは?」
意味が解らないような顔をして、シンジは自分に手を差し出すアスカを見た。
「だ、か、ら。私のお年玉」
「い、いや……お年玉は子供だけの……」
そこでシンジに天啓と言うべき閃きが降りた。
「じゃあ……さ……」
「?」
「子宝じゃ、ダメ?」
たちまち赤くなるアスカの体がシンジの腕の中に収まった。
「ちょ! そりゃ元はタマだけど……ってまだ朝よ! バカ、ミライが……」
「ミライなら外で隣の子と遊んでるよ。」
「や、ちょ、バカぁん……」


その三ヶ月後、お年玉が見事実り、二人目が発覚したアスカでした。



 

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最終更新:2009年03月28日 00:25
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