夜7時
「ただいま~」
「お、おかえり・・・」
「どうしたの?なんか元気ない?」
「そ、そんなことないわよ!ただわたしも忙しいから疲れてるだけよ!」
「あ、そうそうハイ、お弁当箱」
アスカはその単語を聞くと急にビクッとして下を向いてしまった。
(いつもはあたしが愛が足りないって言ってるのに、今日はシンジに愛が足りないって思われるかも・・・)
「今日もおいしかったよ、アスカ」
アスカがそれを聞いてホッとした瞬間だった。
「でも毎朝作ってたんじゃしんどいでしょ?たまには今日みたいなのも良いと思うよ。僕はアスカの作ってくれたものならなんでも良いんだから。
そうだ、僕もアスカにお弁当作ってあげるよ。」
そう微笑みながら言うシンジの言葉を聞いてアスカは自然と涙があふれていた。
「バレちゃったか・・・」
「そりゃあね。エビフライがアスカの味じゃなかったから。なにより朝からあんな車の音出してたら起きちゃうよ」
シンジは苦笑いしながら言う。するとアスカはシンジの胸に顔を埋める。
「朝から気付いてたのに騙してたんだ・・・」
「アスカが僕の為に一生懸命になってくれてたのが嬉しくてさ、昔のアスカじゃ考えられないよね」
そう言ってシンジはニコっと微笑む。
「また、そういうこと言う!」
そう言ったアスカの目にはキッと吊り上っているがうっすらと涙が見える。
「怒ってない?」
「僕が?なんでさ?僕はアスカが忙しい中、お弁当作ってくれるんだから、ちょっとくらい手を抜いても気にしないよ」
「良かった・・・あたしってさ、あんたに愛情を求める癖にさ、あたし自身があんたに同じようにできてるかって言われると少し自信なかった
だから、お弁当まで手抜いたのがバレたりしたらきっと愛想つかされると思った」
「ふふ、良いんだよ。僕はそんな素直じゃなくてわがままなアスカが好きになったんだから」
「バ~カ」
そして二人のシルエットが一つに重なる。
「あ~まま、ぱぱちゅー、ちゅー」
となりの部屋からさっきまで寝ていたのだろう二人の愛息がまだハイハイを卒業したばかりのヨタヨタとしたおぼつかない足取りでやってきていた。
「ただいま」
シンジはさっと我が子を抱き上げてアスカの方を見る。
「だからさ、これからはそんなに頑張らなくても良いよ。」
そのとき、アスカはこれまでホントの意味でシンジを信じてあげられてなかったんだなぁと今までを振り返る。
「あんなこと考えちゃって、ホントあたしバカみたい」
最終章 終
その後、アスカが今回の件で味を占めたことと以外にも冷凍食品がアスカの口に合ったことで
お弁当どころか晩御飯にまで冷凍食品が出てくる機会が増えてしまうも
自分の言葉の為になかなかそのことを口に出せず、苦笑いしかできないシンジさんでしたとさ
最終更新:2007年10月25日 13:45