033 加奈子「ジュース買ってこいよ。いちごのドロリッチな。」

ただ今早朝6時半、俺はイチゴ味のドロリッチを買うためにひたすら走り、売っている自動販売機を探している
あの味は何故か……、いや、ドロリッチは、と言った方が良いな、とにかくドロリッチは何故か殆ど売っていない

そのおかげで俺は今加奈子のパシリとしてこんなに走っている、くそっ。もう辞めてやろうか、こんな仕事。

そんな事を考えていると俺は合計29箇所目である自動販売機に辿り着いた
膝で体を支えて息を整えてから、自動販売機を見るがどんなに願っても願いは叶わないのか、そこにはドロリッチは売っていなかった

俺はもう一度走り出す為にちょっと小休止を入れようとそこにあったベンチに座った

「はぁあ、何でこんな事になったんだ?」
そんな声が俺の口から漏れるがどんなに言ったってこの現状は変わらない

こんな事は昨日加奈子の相談を受けた時に覚悟していた事なんだから。今のこの状況は言わば自業自得だ。

そう、この状況は昨日の加奈子からの一本の電話から始まったのだ。
その事を俺がドロリッチを探している間に話しておこうと思う




    ・・・・・





昨日、俺はベッドに潜り込み何時ものように睡魔のヤローが襲ってくるのを待っていたんだ
だが睡魔のヤローは何時まで経っても襲ってきやがらなかった、何時もなら俺がベッドにもぐった瞬間に、十秒も経たずに襲ってきやがるのに、だ。

「ちっ、何なんだ?睡魔のヤロー、サボってんのか!?」
そんな言葉を深夜三時くらいにボヤくが、誰かの返答があるはずもなく、俺の言葉はむなしく部屋の空気と一体化したのだった

「ふぅ、しゃーない、何か食ったら眠くなんだろ…」
俺はそう言って勢いよく立ち上がった
さて飯でも食べに行きますかぁ、と思いながら立ち上がったのはいい、だが、なんなんだろうね、俺はこういう星の下に生まれてきたのかねぇ

そう心の中で言いたくなるほどタイミング良く俺の携帯は鳴っていた
まさに立った瞬間ってやつだった

pipipi……pipipi……

今も俺の携帯は机の上で勢い良く鳴っている、何故だかなぁ、今の俺には携帯の音が不幸の音に聞こえてきて仕方ねぇんだけど、これって俺の勘違いかな?

内心涙目になっててもなんでか俺の手は机の上の携帯に向かって伸びていった
そして手に取り着信名を見る、これが加奈子とかなら楽勝でブチッてやったんだけど、いかんせん、こんな時に限って着信名は『ブリジット』と書かれていたのだった

こうなったら俺にブチるっていう選択肢は消える、消えてしまう
俺は内心だけでなく現実でも涙目になりながら電話にでたのだった

「あー、もしもし?京介だが?」
『あん?、よぉ、加奈子なんだけどぉ、ちょっくらお願いしたい事あんだけど?』

………お前かよ!!
そんなやるせなさ99%加奈子のチビ野郎1%で構成された突っ込みを心の中に押しとどめて、俺は初歩的、かつ今現在最も大事な事を聞いたのだった

「お前、なんでブリジットの電話からかけてきてんの?」
『え?だってクソマネってば私からの電話だとブチッてくんじゃん』
「当たり前だ、お前は必ずと言っていいほど俺に不幸を持ってくんじゃねえか」

それと俺の聞き間違いじゃなければ今さっきからブリジットの「お電話返してよー、ねぇってばぁ」って声がお前の後ろから聞こえて来るんだが?聞き間違いか?

『聞き間違いだ』

あれ!?、今さっき俺口に出していなかったよね!?

「もしかしてお前超能力者なのか?」
『そんなわけねぇじゃんww』

そんなわけないらしい

ま、そんな事は(本当に心を読まれたならどうでもよくないけど)どうでもいいとして

「で?なんの用だ?、まぁ何か用事があっても俺はブチるけどな」
『ちょ、酷くない!?、何で加奈子の時だけクソマネは冷たいんだ!?』

そこまで聞いた所で俺はため息をついた、何を今更言ってんだ?、そんなの簡単じゃねぇか

「じゃ、理由を言うぞ? その①口が悪い。 その②口が悪い その③口が悪い
…………分かったか?」
『わからねぇよ!、理由全部一緒じゃねぇか!!』

「ほら、その口調だよ、分かってねぇの?」

そこで加奈子は「うぐ……」と声を詰まらせた

『分かったよ、口調変えればいいんだろう?』
「おう」

俺がそう返事をすると加奈子は演劇の練習みたいにアーアーんんっ、と声の調整を行った

『分かりませんよ!、何で私の時だけマネージャーさんは冷たいんですか!?酷いです!!』
「前言撤回!!、即座にその口調を元に戻すんだ加奈子!!」

俺は即座に片手を口に当てた
『ちょ、何で!?、クソマネの言った通りにちゃんと変えたじゃん!声まで変えたじゃん!!』

うおぇっぷ、危ねぇ、今日の晩に食ったカツが俺の胃液と共にリバースされちまうところだったぜ

「も、もういいんだ加奈子、もう………いいんだ。」
『何この空気!、まるで私が悪いみたいになってんだけど!?』

………え?、加奈子は自分が悪くないって思ってるの?
『思ってるよ!!』

ここで加奈子は電話越しでも分かる程荒れている息を整え始めた

「どうした?何でそんなに興奮しているんだ?」
『誰のせいだとだと思ってんの!?』

俺のせいらしい

「はぁ、で、なんなんだよ、俺に用って」

面倒くさいから俺は加奈子に続きを促した
ったく、なんでこんなに話しが脱線すんだか。疑問でしかたない。

『もう突っ込まないからなぁ!!』

残念だ。

『それで、その相談っつーのは超簡単、一日私達のマネージャーに戻って欲しい、っつー事なのよ、分かる?』
「加奈子、悩んだんだが、その話し………、断らせてもらう」
『ぜってー悩んでねぇだろ!!、話して十秒も経ってねぇのに何が悩んだだ!?』

そこで俺は顔を伝う汗を手で拭った。ふぅ、久しぶりだ、こんなにボケ倒したのは
本来俺はボケの方なのに何故か俺の周りには個性的過ぎる奴らがウヨウヨいやがるからなぁ、しょうがなく突っ込みに回ってしまうのだ

『はぁ…はぁ…、も、もう満足したか?クソマネ?、それで、真面目な話しどうなのよ、来れんの?』

息を切らしながらそう言う加奈子。ま、俺としても行ってやりたい事この上無いのだが、どうも腑に落ちない、何で俺なんだ?、というかお前の一存で俺をマネージャーに戻すとか出来んの?、という疑問がどうしても沸いてきてしまう
ま、聞いてみりゃわかんだろ。
俺はそう思ってさっき考えた事をそのまま口にした

「一つ疑問なんだが何で俺なんだ?、ていうかお前俺をマネージャーに戻すとか出来んのかよ?、どうも気になってな」

そこまで言ったところで会話が途切れてしまった。な、何だ?、もしかして俺聞いちゃ駄目な事聞いちゃった?
そう思ってたら何やら電話から加奈子のボソボソ……、という言葉?、が聞こえてきた

「え?何て?」

『………ボソボソ』
「あん?、全然聞こえねぇって!」

『………ボソボソ』
「聞こえねぇっつってんだろ!?」

『………ボソボソ』
「ちゃんと言えやぁああああ!!!」

いい加減イラッとくるわ!!
なんなの?、言いたくないのか?

そんな疑問が俺の中に沸いてくる。ふむ、もういっかなぁ
嫌がってんなら別に無理に聞こうとも思わねぇしなあ

何て事を俺が考えていると加奈子は決心したのか、電話越しでも分かる程大きく唾を飲み込み、話し始めた

『あ、あ、あんたが1番……マネージャーの中で好きだから』

そしてその後の何とも言えない沈黙が訪れた

お前2番目の質問に答えろよ、ま、出来るからこんな事を俺に言ってんだろうけど

ていうか、い、いかんぞ?、自分で聞いといて何なんだがとてつもなく気まずいぞ?
その後俺はどうやって話しを切り出そうか、と考えながら気まずい沈黙に耐えていた
それから何分くらい経っただろうか、俺の精神上ではすでに一時間ほど経っている気がする、そんな時に加奈子はこの沈黙を打ち消した

『り、理由は話したぞ?、で、どうなんだよクソマネ』

……無理、絶対断れねぇって、これ
だってここで断ったら俺ってなによ、ただ人が言いたくない事を無理矢理聞いた最低野朗じゃん
…………ま、別に断る気は最初から無かったんだけどな。

そこからは別にこれといった会話は無い

ただ一つだけ確かなのは加奈子が最後俺が断れないようにしたのはわざとだって事だ、うん。
だってあいつ最後に言った言葉ってこんなのだからな

『へへ、マネージャー単純過ぎ!!』




という事で今俺は仕事終わりに加奈子が飲むから買って来い、って言われたドロリッチを今買いに行ってる途中っつーわけだ
ったく、ちっとはブリジットちゃんを見習って欲しいね、ブリジットちゃんなんか「何でも良いですよ、マネージャーさんが美味しそうと思ったやつを買ってきて下さい」なんて事をニッコリと笑いながら言ってくれるんだぞ?
そんな事をドロリッチを求めて爆走しながら考えていると目の前にまた新しい自動販売機を発見した

「ドロリッチぃいいいいいいいいいいいいーーーーーーーーーいいいいいいイ!!!!!」

そう叫んで自動販売機に群がっていたガキ共をおっぱらう

頼む、ドロリッチよ、あってくれ!


最後の希望と言わんばかりに俺は目を充血させながら目の前の自動販売機を見た

………あ、あ、あ、
「あったぁああああああああああああああああああ!!!」

その日、俺は合計30台もの自動販売機を巡りドロリッチ苺味を確保したのだった



そして歩く事三十分、ようやく俺は仕事場へと無事帰り、ちょっと前に仕事の休憩に入ったのであろう加奈子とブリジットに向かって買ってきた飲み物を渡した
「で?、どうだったのよ、仕事のほうは」
何の気なしに加奈子達にそう聞くと、予想通りの返答が二人から帰ってきた

「あ?、クソマネは加奈子がこんな事でミスるとでも思ってんのかよ?(片方の眉を上げて)」

「はい、おかげ様で何時もより上手く出来たと思います(超笑顔)」

もうどっちがどっちなのかは言わなくても分かるだろう、てか分かれ
だがそんなに態度が違うとやっぱりこっちとしても二人に対する態度が変わるのは分かって欲しい

「あ?思ってっからそう言ったんだろうが、あ?。それとお前仕事で汗かいてっからって調子に乗ってそんな物ばっかり飲んでたら太んぞコラ!」

「え?そう?それは良かった、これでこっちも来たかいがあったってもんだ、え?なに?帰りにレストランに行きたい?、よしちょっと待ってろよ?予約入れっから」

どっちがどっちに対する返事かというと上が加奈子に対する返事で下がブリジットに対する返事だ
後ろで何か加奈子が叫んでるがもはや気にしない

その後すぐに後半の撮影が始まった

改めて見ると思う事がある

この仕事をやっている人は皆こうなのか?、という疑問だ
カメラの前だと人が変わっているのだ
時に眩しいくらいの笑顔を見せ、時にこっちまで切なくなってくる悲しい顔を見せる
大胆な格好、照れくさそうな格好

そんな、そんな姿を見てるから俺も加奈子の言う事に文句は言っても、逆らったりはしない(あまりに理不尽なのは含まない)

「やっぱ……、かっこいいな……」

聞こえないのは分かってるのに俺の口からは自然と言葉が漏れていた

ま、ちょっとは認めてやってもいい、うん。

その後、特に変わった事は無く、いつも通りに撮影は終わりタオルと飲料を加奈子達へと渡す
「お、サンキュー!」
「ありがとうございます、マネージャーさん」

何でこんな時だけ加奈子は礼を言うんだか……、俺は今さっきドロリッチを買いに走った事に礼を言ってほしかったよ!

ま、何はともあれ、やっと終わったな~
思い返せば大変な事ばかりだったが、今は大切な思い出だーはっはっは!

なんて感慨にふけっていると加奈子はまるで当然かの様にこんな事を言い出した

「あ、この後カラオケな~!、着替えたらすぐ行くから待ってろよ!!ブリジットにはもう話してあっから」
「よろしくお願いしますね!、マネージャーさん!」

はい?why?

俺が会話について行けずにいると加奈子は俺が状況を理解するに充分な言葉を言った

「あ、もちろんクソマネの奢りだかんな」

………こいつ、俺にたかる気だ

ヤヴァい、このままだと俺が奢るはめになりそうだ、だってブリジットが俺によろしくと言っていたって事は加奈子の野郎があらぬ事をブリジットに吹き込んだって事だからだ
俺の中の非常警報が赤いランプを灯しながら何か打開策を!!!、と言って叫んでいる
俺は頭でほとんど考えずに叫んだ

「俺は金無ぇからなぁ!!」

その言葉に加奈子は掛かった!、と言わんばかりにニヤァと笑う
そして俺に対して決定的な一言を言って下さった

「今さっきみたぜぇ?、今日のギャラ、福沢諭吉さんが四人ぐらいでお前につぶらな瞳を向けてただろ?」
「おふぁ!!、何で知っていやがる!」

そんな事を言っても最早後の祭りだった、加奈子は「奢りでよろしくぅ!!」と言いながら行ってしまったし俺が悲しげな瞳でブリジットを見てもブリジットは苦笑いをしてすみませんと言わんばかりに頭を下げて行ってしまった
最早ここからの打開策は無い

そんな俺の口からは、吐息と共にこんな言葉が出たのだった

「oh……no my way(オー、ノウ マイウェイ)」


ちなみに意味は逃げ道が無い、という意味だ




 ・・・・






「メ~ルメルメルメルメルメルメ メ~ルメルメルメルメルメルメ!!!」


今、俺の耳に親のいない休みの日、異常に薄い壁の向こうから嫌というほど聞いた音が大音量で流れてきている
加奈子よ、何故………何故その歌をチョイスするのだ、俺はお前がオタクではないと信じているんだよ?

そんな言葉を苦悶の表情に込めて俺は加奈子を見た

そこにはそれはもう満面の笑みを浮かべている加奈子の顔があった

……こいつ、俺が嫌がるのを楽しんでいやがる



それに気がついた俺は何かが、俺の中の何かが音を立ててプツンと切れたのを自覚した

そこで俺は曲を選ぶ機械(名前を知らない)を手に取り一気に5曲程を入れる


加奈子……、いいよ?、お前がその気なら俺も付き合おうじゃないか……
俺は!!お前がアニソンを歌い続けるならばその空気をブチ壊すために泣き歌を歌い続ける!!


「まず第一曲目!!!、Sky chord ~大人になる君へ~!!」


そう俺が言ったら加奈子の顔が引きつった、ような気がする!!
それを見て俺は大きく息を吸い込んだ


『素直な歌が歌えない 飾り付けてしまうから
いつからこんなに楽に自分 守る事を覚えたの?

校庭から見える空 君には何色に写る
ただ真っ白な雲でも 時に真っ黒に変えたくなる

見っかんない sky chord 昔ならあったのに
なくした sky chord 誰のせいでもなく 自分

きっと大人になることなんかより 大切なものがあるの
きっとそれを見つけらんないまま 大人になっていくんだ』

え?、これもアニソンだって?、そんな細かい事は気にするな!!
ていうかそこ!!何勝手に料理頼んでんだ!?、それ以上俺の財布を薄くする行為をすんじゃねぇ!!

俺がそんな事を言っている間に店員が来てパフェを置いていく
加奈子貴様ぁ、一体何時の間に頼んでたんだ!?

ああ!ブリジットまで何て高そうなパフェを頼んでいるんだ……。

3時間後、店を出る時に俺が叫んだのは仕方の無い事だと思う、ていうか、何でカラオケだけで福沢諭吉さんが二人も俺の手元からいなくなるんだ……


涙目の俺はポケットに手を突っ込んで不貞腐れて歩いている、その両脇には加奈子とブリジットが付いてきていた
なに?両手に花だって?うるせぇ!、片方は毒花だよ!

その内ブリジットは俺の前に申し訳なさそうにしながら立ちこんな事を言ってきた

「あの……やっぱり自分の分だけでもお支払いしましょうか」

ちょっと目が潤んでいる

そんな様子を見て俺はフゥ、とため息をついていった

「いいよ、今回は俺が奢っから」
「でも…」

まだ申し訳なさそうにしているブリジットの頭に俺は勢い良く手をおいてグシャッと撫でた

「本当にいいから」

そういって俺は笑う
それでやっと笑顔になったブリジットは俺の腕に勢い良く抱きついた

やっぱ子供は笑顔が一番だな

そんな事を思いながらブリジットを見ていると俺はおかしな事に気が付いた
………何かもう片方も重いと思ったら加奈子も抱き付いてきてんだけど
本当に桐乃と同級生とは思えない程、小さな膨らみが俺の腕に押し付けられていた

俺が戸惑っていると視線に気がついたのか加奈子がちょっと見上げてきてボソボソと何かを呟いた

「え?何て?」

聞こえなかったので聞き返すと加奈子はムスッとしながら上目遣いをして今度は大声で言った

「ブリジットばっかズルいぞ!、私にも構え!!」

………はい?
俺がポカンとしていると加奈子はもう一言大声で言った

「お、お前は!!加奈子とブリジットの二人のマネージャーなんだからな!!」

そこまで言われて俺はやっと加奈子の気持ちが分かった
こいつ……俺の事を

何で気ずかなかったのか自分でも不思議だ

そんな事を思いながら俺が見つめていると加奈子は段々と頬を紅潮させていった
そして俺は革新的な事を言ったのだった

「お前……俺の事を玩具かなんかだと思ってんな?」

そこまで言って加奈子はポカンとした、横を見るとブリジットも何か信じられない物を見る様な目で俺を見ていた

「え?なに?、お前自分の玩具を取られた感覚で怒ってたんじゃねぇの?」

え?違うの?。
ねぇ、違うの?

そんな困った目で俺が皆の事を見てても皆は黙ったまま何も言ってくれない

それに何だか加奈子の方を見たら桐乃が怒った時の様な顔をしている、それも普通に怒っている時ではない、静かに、ただ静かに怒っている時の顔だ

思わずブリジットの方に助けを求める視線を送るが、そこには冷たい目をしたブリジットがいて、俺をジーっと見ていた
そしてブリジットの小さな口から俺に対する死刑宣告が出た

「手遅れです」

とてもニコやかに
その笑顔を見て数秒後、俺は自分の男として失ってはいけない所を勢いのついた加奈子の蹴りが当たる所を見た


薄れていく意識の中、俺は思った

俺が……、何をしたっていうんだ?













「ん………」

俺は瞼越しでも分かる明るい光に当てられ瞼を開けた
目に飛び込んだのは真っ赤な夕焼け、あまりに眩しくて俺は夕日に背を向けた

そしてその直後に聞こえてきたのは加奈子の戸惑ったような声だ

「ちょ、お前何処に顔向けてんだよ」

そこで俺はやっと頭が冴えてきた、そして目を開けるとそこには

へそがあった

「どわひゃぁ!」

そんな声が俺の口から漏れる
そして後ろに落ちると地面に尻餅をついてしまった

改めて冷静に見るとここは公園のベンチだった、そのベンチには加奈子とブリジットがチョコンと座っている
両方顔を赤くして。

何で二人がまだこんな所にいるんだ?
まさかまだ蹴り足りなかったのか?
これ以上蹴られたら俺は男では無くなってしまうかもしれない

俺は警戒して二人を見る

すると二人はまるで練習してたかのようにハモりながら声を出した

『「あの!」「なあ!」』

な、なんだ?
一体何なんだ?

俺は戸惑うばかりだ

「か、カナカナちゃんはさっきマネージャーさんを膝枕してたんだから今度は私の番だよ!」
「それはブリジットがジャンケンで負けっからだろ!?」

そこまで言い合うと二人はこっちを意味ありげに見てきた
な、何なんだ?一体俺に何を求めてるんだ?

やがて二人は諦めたようでまた睨みあった

切がないと二人とも思ったんだろう
我先に!、と言わんばかりに一気に話始めた

「おい!(あの!)就職さきは決まったのか(んですか)!?」
「いや、まだです!」

雰囲気に負けて俺は目を逸らしてすぐさま答える

何か知らんけど怖い!!
とてつもなく怖い!!

さあ!次は何なんですかこの野郎!!
どこからでも来いやぁ!!!、と言わんばかりに二人を再び見ると
いきなり手を掴まれた

目を潤ませて、思いつめたように真剣な目で二人は俺を見ていた

「どうしたんだよ、二人共」

思わず漏れる俺の言葉
二人はそれに反応したようにこちらを見て大声で言った

『マネジメントに興味はない!?』


悪りぃ、赤城、俺はちっと先に就職決定のようだ
俺はこいつらとちょっくら先に青春を謳歌してくるぜ

そんな事を思いながら俺は晴れやかに返事をしたのだった


「興味?」

俺を真剣に見つめる二人

「あるに決まってんだろ?」

そこで二人は飛び上がって喜んだ
だが、ここで終わりじゃないぜ?

「ただし」

もう一度俺を心配そうに見る二人に俺は言った

「お前等のマネジメント限定でな!」
寒い風が俺と二人の間を通過していった。空気が死んだのは言うまでも無いだろう







最後に一言言うなら、そうだな
俺はそこで赤くなって俺の腕に抱きついている二人を見て考える

そして笑った

俺のモデル達がこんなに可愛いわけがない

かな。


オマケ


「なぁ、クソマネ?」

ちょっと心配そうな声で加奈子が俺に言い寄る

「何だよ」
俺が答えても一向に返事が来る気配が無い

訝しげに思い加奈子の方を見ると加奈子はニヤリと笑ってこう言ったのだった

「クソマネの男の象徴、ちゃんと機能するか見てやろうか?」

その一言で俺は真っ赤になる、ブリジットなんか気絶してしまってるじゃないか


ま、その後どうなっかはご想像にお任せしよう。



終わり

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最終更新:2011年05月24日 06:01