いいかげんにして頂戴

黒猫「いいかげんにして頂戴」
麻奈美「……えっ?」
黒猫「学校で偶然見かけたから? ”きょうちゃん”の友達だから? ハッ笑わせないで
   話しかけてこないで。迷惑よ」
麻奈美「……ご、ごめんなさい。……で、でもきょうちゃんに」
黒猫「でもきょうちゃんに仲良くしろ、とでもいわれてるのでしょう……」
麻奈美「……あ、あの。くろねこ、さん? それは、…そうなんだけど」
黒猫「違う、違うのよ、……クク、堕落の種ベルフェゴール。そうよ、…そうでなくてはね」
麻奈美「わ、わ…。べ、べるふぇーごーるって前にも聞いたよ?!」
黒猫「いいわ。私が、――いや聖天使黒猫が、直々に貴方に鞭打つときが来たと考えていいのでしょうね」

○○○

京介「あれ? 黒猫からメール、…か?……なんだ珍しいな」
桐乃「あいもかわらず仲がよろしいことで」
京介「ちげーって! つかなんか、オイ。このメールの内容……」
桐乃「ちょ、近づいてくんな。メールの内容もシラネーから寄るなバカ」
京介「そんな言い方しなくてもよくねーか?!」
京介「…………明日の放課後か」
桐乃「……ッ?!」
京介 (なんだよ、「待ってる」ってこれ、ニヤついていいのか俺……?)
桐乃 「…………きッも」

○○○

桐乃「ハァ? 何で私がそんなことしなくちゃなんないの」
黒猫「頭を下げてるの。貴方の兄さんにとっても大事なのことなのよ」
桐乃「あのバカにとって……?」
黒猫「貴方はそれについて知らなくて結構」
桐乃「は? もっとワケわかんなくなってきたんですけど…」
黒猫「……………全く、だから貴方は幼児アニメがお似合いね。
   低脳は最後まで話しないとわかんないんだから最後まで聞きなさい」
桐乃「 はー、ダッル。説教するほど年食ってっくせに精神年齢中学レベルとかーww」
黒猫「――――地味女」
桐乃「……あいつ? は? なにそれ」
黒猫「いいから黙って私の言うとおりに事を進めることね」
桐乃「……はーっ。なんか釈然としないけど、
   まあ、そこまでいうならそんな簡単なことやってあげてもいいけどぉ…」
桐乃「てか、あー。あのバカ、あたしが念押さなくても明日はゼッテー来るっぽいよ…………」
黒猫「そう」
桐乃「――で? わざわざ放課後呼び出して何すんの?」 
黒猫「貴方には関係のないことだと再三言っているでしょう…」
桐乃「ハァ? まじ信じらんねー…。ここまで確認させておいてそれはねーよ」
黒猫「あら、兄さんを確実に私の元へむかわせればそれで事が足りるの」
桐乃「……」
黒猫「……ククク」

○○○

京介「……で。どういうことだ黒猫? メール返信ぐらいしろよ」
黒猫「あら兄さん? こんなとこで、お盛んね? ノゾキ?」
京介「俺はいつから変態って思われてるのだろうか……?」
黒猫「とにかく、来て、…くれた、……みたいね」
京介「おう。…それで、何か用事があるのか? ……その、この前の……校舎裏の……ことについてか?」
黒猫「そうかしら? そうね、そういえば、そうね。――ところで……そろそろちょうど四時ね」 
京介「んア?! ああ、俺のケータイでも、まあぴったり四時だが、それがなにか――」
黒猫「…兄さん」
ふわっ
京介「おいおいおいオイ! なに抱きついてんだよ!? っておい!黒猫フザけてんなら――」
黒猫「兄さんのことが、…やっぱり、好きよ…」
京介「…………、え」

ばたん

麻奈美「……きょう、…ちゃん?」
京介「 ――え?  ま、麻奈美? な、何で、…お前、ここに?」
麻奈美「……そう、…だった、の? きょうちゃん?」
京介「イヤ、これは、だから!」
麻奈美「……ごめんね! くろねこさん! ごめんね、きょうちゃ~ん、うう…………。
    ごめん私が”ばか”だったんだ。……ふたりの邪魔、してたんだね……」
京介「麻奈美おまえ! バッカ違うッて!!」
黒猫「…何が違うの? ねぇ兄さん」
京介「…………お前」

校舎影

桐乃「こんなとこでなにしてんの…。……このロリコン……、死ねバカ。
    …アイツも、……つか、みんな死んじゃえ、……ばか」

プルルル……ガチャ

京介「電話して悪かったな」
あやせ「悪かったなら電話切ります、では」
京介「ってオイ! 待て、待ってくれ。……少し相談したいことがあってな」
あやせ「はあ…、で? ふられでもしたんですか? 重病なら十秒までですよ」
京介「いや、まあ、そんなとこだ…」
あやせ「はっきりしてください! 貴方がそんなんだから桐乃も貴方を嫌っているんですよ全く」
京介「まあ、今回桐乃は関係ないんだ」
あやせ「はぁ? それで桐乃に関係なくて、何で私に相談なんですか?」
京介「年下の、……後輩の女の子に告白されたんだよ」
あやせ「ていうか、それは桐乃に相談すればいいじゃないですか? あなた方は”そういう仲”だと思ってましたが?」
京介「いや、複雑だからな。スマン、やっぱ桐乃もかなり関係してるわ」
あやせ「……そうですか、ま、それでも知りませんけど、で? 訊きたいことってなんですか?」
京介「もしあやせが『自分の友達、の兄貴』に告白してフられた、ってなったら、その友達自体とあやせが仲が悪くなるって事ないかな?」
あやせ「? …………まあ、今までどおり、ってワケにはいきませんよね」
京介「そうか……。二度目だが悪かったな、ホント。相談に乗ってくれてありがとう。じゃあな」

プツン

あやせ「――――お兄さんにしては真面目に元気がなかったですね……、…しかしそれにしても……」

京介「桐乃」
桐乃「…………」
京介「おい…出てこいよ。……大事な話あんだよ」
桐乃「…………」
京介「…………おいって」
桐乃「……」
京介「……、……クソッ!」

ピンポーン

京介「……誰だよ、こんなときに、はいはいー! いまでますからー!」

ガチャ

京介「ご、五更……?」
黒猫「なによ? いまさら苗字で呼んで汚らわしい」
京介「ってお前、なんだよ…。俺の返事をもらいに来たのか? ――だとしたら、速すぎるんじゃないか?」
黒猫「ふん。 貴方の家に遊びに来るのは少ないのよ。私は き り り ん の家に遊びに来たの。
   ソコどいてくれる?」
京介「ハァ? お前何いってんのか――」
黒猫「お邪魔するわ」
黒猫「ちょっとドア開けてくれないかしら?」
桐乃「…はあ!? 何でアンタここに来るのよ!   ――……つか開いてるっつの」
京介「…開いてたのかよ…、んならそういえっつの…」
黒猫「兄さんはさぞ被害者なんでしょうね」
京介「…よく、分からん。まあ桐乃にはいつもぞんざいに扱われてはいるけど――」
桐乃「そうですか」
京介「桐乃! さっき俺のこと無視してたろ!」
桐乃「うるさい、しね」
京介「しねってお前、俺は大事なはなしがあるっていうのに……」
黒猫「ふふ、兄さんは知らないかもしれませんが、きりりん氏はさきほど私たちが抱き合っていたところを見ていたはずですよ」
京介「…………、え」
黒猫「でしょう? ビッチさん?」
桐乃「……」
京介「なんでお前まで見てんだよ……」

フフフ

黒猫「早速だけど、実はあれ演技なのよ。…まあ兄さんはそんなことも気が付かずに相当調子付いてるかしら?」
桐乃 京介「は?」
黒猫「ま、……もともと貴方たちに混乱を与えるつもりは毛頭なかったわけです。もう一名に現実を知ってもらおうとですね……」
桐乃「ちょ、ちょっと!」
京介「まてまてまてまて!」
黒猫「ふっ。所詮堕天使ルシファーであったキョウスケ、はベルフェゴールの化身を甘やかしすぎなのよ」
京介「ワケが分からん…! が――」
京介「つ、……つまりは、麻奈美にあの場面を見せて困らせるためだけに、俺に、だ、だ、抱きついたってワケなのか?」
黒猫「そうよ。地味女さんが私にしつこく近寄るから、ひっぱたいてやりたかったのよ」
桐乃「――――――――はずかじー! このバカ顔真っ赤にして、おいwwざまあwww地味女もざまあwwww
   バカ兄貴wwww釣られてやんのwwwウケるwwww」
京介「…は? まじで、それだけのために?」 
黒猫「被害者お疲れ様ですセンパイ!」

ガタッ

京介「呆れすぎてモノも言えねーよ!! お前ら二人とも!! どうしてそんなに麻奈美に対して普通に接してくれないんだ!?
   マジ信じらんねーわ……、どうして?! 麻奈美のどこが気に入らないんだよ……」
黒猫 桐乃「………何と、なく? (笑)」
京介「 ……!」
京介 (……どいつもこいつも、馬鹿にしやがって、どうして麻奈美にあたるんだよ……)
バタン!

京介「…はっ…、はっ…、……やっと見えた、田村屋!」

ガラガラッ!!

田村屋爺ちゃん「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
麻奈美「? おじーちゃん! また入れ歯、ごいん、しちゃったの!?」
田村屋爺ちゃん「おおお? ガクッ…」
京介「……ま、麻奈美スマン! 俺が爺さん驚かせたかもしれねー!」
麻奈美「え!? 何で? きょうちゃんが、……ここに?」
京介「悪い! いきなり扉勢いよく開けちまった! 話は後だ! 爺さんを何とかしないと!! ああああ」
麻奈美「そ、そういうことにな、なるのかな!  おじーちゃん! しっかりして! おじーちゃん」
田村屋お婆さん「あんまりふざけてるとお爺さん。足の爪、一枚一枚はがしていきますよ」
田村屋爺ちゃん「ぬっぉおおおおおおおおお! ワシそれは新たなパターンじゃと認識?! 拷問は流石にひどくないかぁ?!」
麻奈美「…ごいんじゃなかったんだよ……ね?    …………よ、よかったあ……」
田村屋お婆さん「また引っかかって、きょうちゃん。甘いですよ、この人は出会いがしらでも別れ際でもどこでもスキを狙ってますから」
京介「あ、スイマセン」
田村屋お婆さん「この人を調子に乗らせたらろくでもないんですから」
京介「そ、そうッスよね。今度からしっかり観察してツッコミいれたいとおもいます。スイマセン」
麻奈美「…ふふ。きょうちゃんって、謝るとき、なんだかかわいいなー」
京介「は? 何だよ……それ…
   ――ていうか! 起こってないの……?」
麻奈美「……あっ。そういえばきょうちゃんと気まずかったこと……忘れちゃってた……」
京介「あれは、カクカクシカジカぱくぱくうまうま^^っていうワケだったのよ。だからあれは黒猫がお前に対していじわるしただけだから気にスンナ」
麻奈美「ふぇ? なんで、きょうちゃんと抱っこするのが私にいじわるなの?」
京介「ええ? いや、あの、……それはだな…ええっと」
京介「とにかくごめんな! 偶然だけど麻奈美を困らせちまった……」
麻奈美「……でも偶然じゃない、よ……! わたし、くろねこさんに『四時に来て』っていわれたもんー」
京介「あ、そっか。考えてみれば、出来すぎだとおもったが、それくらいならあいつはやり兼ねん。黒歴史ェ…」
麻奈美「べ、別にいいんだよ? おつきあいしてても。……くろねこさん、かわいいし、難しいことばいっぱい知ってるし…
     私じゃきょうちゃんとは……」
京介「いや、だからそういう話じゃなかったんだって! 麻奈美ごめんほんとごめん!」

ボソッ
麻奈美「 …でもやっぱりかわいー」
京介「え? なって言った今?」
麻奈美「ううん…! なんでもなーい。 ……きょーーちゃん!」
京介「な、何だよ」
麻奈美「え、何って……何だろうね?」
ロック「あんちゃーん!!!! 俺ピアスっつうもんをしてみたんだー見てくれよ!」
京介「はぁ?! 麻奈美と大事な話してんのに割り込んでくるんじゃねえ」
ロック「まぁまあ見てくれよ、この金ぴかのピアス。イカしてるだろ?」
京介「それは……ビンディだ。お前インドは小中学生ですらピアスしてんのに、そんな金ぴかシールでピアスとかいっちゃってんのかよ」
ロック「え 。これピアス、…じゃないの ?  うそん」
京介「……俺最近思うけどスキンヘッドもギターもピアスも、全部知っててギャグでやってるだろ
   なあ、ギャグだろ?  え、マジなの…? あ、そー。そうなんだ…。ホント指摘してごめんな、スマン」
麻奈美 (やっぱりきょうちゃんはきょうちゃんだなあ…)

黒猫「実はね抱きついたときに背中に目一杯ドロつけてやったのよ」
桐乃「うはww ナイスw GJすぎwww」
黒猫「私をそう簡単に舐めないで頂戴。このくらいやらないとセンパイは分からないのよ」

プルルルル

桐乃「あ、ちょいこっちの友達から電話だわ、少しの間静かにしててね」
あやせ「…………あ、あの! 桐乃? 
    ちょっと…相談があるんだけど。あのね、もし、……もし私があなたのお兄さんに、こくは――――」

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最終更新:2010年12月30日 23:46