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ファンタジア


1991 2011(SP)



  • 目次

ストーリー

クラシック音楽とアニメーションを融合したシリー・シンフォニーの究極版とも言えるオムニバス作品。


概要

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ*の長編アニメーション映画第3作。

アニメーションに音楽を付けるのでは無く、クラシック音楽にアニメーションを融合し芸術性を追求した珍しいタイプの長編映画であり、全8曲が展開されるオムニバスとなっている。音楽を主軸にした短編アニメーションシリーズ『シリー・シンフォニー』のコンセプトに近い。

当時はディズニーのスタジオがバーバンク*に移転しており、複数の長編映画を同時制作する体制が整っていたため、前作『ピノキオ』(1940年)からわずか9ヶ月後の公開を実現した。

音楽にフィラデルフィア管弦楽団*、指揮にレオポルド・ストコフスキー、監修・解説(ナレーター)にディームズ・テイラーを起用した。

ウォルトは演奏会形式の作品を目指し、席を予約制にすること、パンフレットを提供することなどを企画していた。また、作品の一部を別の作品に置き換えて、何度も新しいものとして公開していくアイデアもでていたが、没案となった。日本で行われたメアリー・ブレア展*では『ベイビー・バレエ*』という未公開パートの原画が公開された。

公開当初は映画としてではなく音楽作品として認識されていたことや、制作費が膨大であったこともあり、到底利益につながる興行成績は残せなかった。また、世界初のステレオ音声使用作品として、この作品用にファンタサウンド*という現在のサラウンドに近い音響システムを開発したが、導入できる映画館がほとんどなかったのも赤字の理由である。前述の公開のアイデアが没になったのもそのためである。ウォルト・ディズニーは本作に関してあくまで芸術性を追求した結果であるとして、未来の人が楽しめる映画を作ったと考えていたという。

AFIアメリカ映画100年*シリーズでのランクイン歴がある。

アメリカ映画ベスト100 (1998年):58位
アニメ映画ベスト10 (2008年):5位(ディズニーが、『シュレック』(ドリームワークス)を除く9枠を独占した)

歴史

1936年、ウォルト・ディズニーミッキーマウスの人気がドナルドダックグーフィープルートらに押されていることを気にしており、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ*の詩にポール・デュカス*が曲を付けた『魔法使いの弟子』をミッキー主演で短編アニメ化しようと考えた。1937年7月までに楽曲の使用権を得たウォルトはハリウッド*のレストランでフィラデルフィア管弦楽団*の指揮者レオポルド・ストコフスキーと出会い、このプロジェクトの話をした。ストコフスキーはノーギャラでの参加を申し出て、『魔法使いの弟子』は従来の短編とは別扱いのスペシャル映画として配給されることになった。

1937年12月16日、ストコフスキーは5,000ドルでプロジェクトへ参加することとなり、演奏者を選ぶ権利を得た。演奏には85名のミュージシャンが参加し、1938年1月9日の深夜から3時間にわたって録音が行われた。

『魔法使いの弟子』の製作費が短編としては破格の125,000ドルにまで膨れ上がると、スタジオの財政を担当していたロイ・O・ディズニーは弟のウォルトに追加費用を抑えるように忠告したが、逆にウォルトは複数の曲のアニメーションと合わせて長編映画として公開するコンセプトを提案した。1938年2月、ディズニーはストコフスキーに8万ドルを支払い契約を延長した。ウォルトはラジオを聴いて解説役に作曲家・音楽評論家のディームズ・テイラーを起用した。9月3日、「できるだけ早くスタジオに来てほしい」と依頼されたテイラーは2日後にロサンゼルス*へ向かった。

テイラーが到着すると、多忙なウォルトの代わりにストコフスキー、ジョー・グラントディック・ヒューマーを含む各部門の代表者で選曲会議を始めた。

1938年9月29日、ディズニーのアーティストたち60名が集まってピアノコンサートを開き、『魔法使いの弟子』のラフカット版が上映されたという。

候補に残った9曲は「トッカータとフーガ ニ短調」、「組曲 くるみ割り人形」、「魔法使いの弟子」、「春の祭典」、「シダリーズと牧羊神*」、「禿山の一夜」、「アヴェ・マリア」、「月の光」だった。「月の光」はほどなくしてカットされ、「シダリーズと牧羊神」は1939年1月5日に「交響曲第6番 田園」に変更された。

映画は長らく、『Musical Feature』という仮名で呼ばれていたが、約1,800もの案の中からストコフスキーによる『ファンタジア』が採用された。

本作の楽曲において、ウォルトは従来の映画のようにスクリーンの裏から音が聞こえてくるのではなく、観客が指揮者のように立体的な音楽を楽しめるしくみを作りたかった。かねてから新しい技術を採り入れることに積極的だったストコフスキーはウォルトに賛同した。ディズニーとRCA*のエンジニアは共同で、現在のステレオサラウンドシステムの元祖とも言える「ファンタサウンド*」を開発。映画の膨大な予算の約5分の1が録音に費やされた。

他の作品同様再公開は行われているが、『ファンタジア』は再公開のたびに、毎回マイナーチェンジが加えられている。

1940年 初公開。
1941年 ステレオ音声の一部をモノラル音声に変更し、上映規模を拡大。
1946年 『トッカータとフーガ』と解説を全面的にカット。
1956年 ステレオ音声が一般化され、音響も向上したため、ステレオを再使用。
音声の磁気録音を実施した。
1969年 『田園』の差別的表現をカット。
当時の大学生を中心に広く受け入れられ、大ヒットを記録。公開から29年後にしてようやく利益を上げる。
1982年 スコアが劣化し、デジタル・リマスターが不可能であったため、音楽を再録。
それに関するナレーションをヒュー・ダグラス*が担当。
1985年 1982年をベースに、解説をティム・マシスンが新録。
1990年 オリジナルの指揮者であったレオポルド・ストコフスキーの協力のもと、公開当時の音源を復元し、デジタル・リマスター化。
2000年 1940年当時のほぼ全シーンをリマスター化。
実写パートのディームズ・テイラーのナレーション部分が劣化して残っていなかったため、コーリー・バートンが吹替。

2000年にはアメリカで『ファンタジア』と『ファンタジア2000』(1999年)と特典映像をセットにした3枚組のDVDが発売されている。

日本において『ファンタジア』と『ファンタジア2000』がセット販売されたのは2011年。

AFIアメリカ映画100年*シリーズでのランクイン歴がある。

アメリカ映画ベスト100 (1998年):58位
アニメ映画ベスト10 (2008年):5位(ディズニーが、『シュレック』(ドリームワークス)を除く9枠を独占した)

キャスト

解説 ディームズ・テイラー(劇場公開版)
コーリー・バートン(Blu-ray版)※
指揮者 レオポルド・ストコフスキー
ミッキーマウス ウォルト・ディズニー
バイオリニスト ポール・スミス
マッシュルーム -
ホップ・ロウ -
イェン・シッド -
魔法の箒 -
ブラダス -
メリンダ -
ゼウス -
バルカン -
バッカス -
ジャッカス -
ディアナ -
アイリス -
モルフェウス -
アポロ -
ヒヤシンス・ヒッポ -
ベン・アリ・ゲーター -
ミラ・ユパノーバ -
エレファンシーネ -
チェルナボーグ -

※声のみ差し替え

  • 日本語版
VHS・DVD版 Blu-ray版
ナレーション 矢島正明 -
ディームズ・テイラー - 垂木勉
ミッキーマウス 青柳隆志
レオポルド・ストコフスキー 松岡文雄

※VHS・DVD版ではミッキーとストコフスキーの台詞は日本語吹き替え版でも英語(字幕なし)となる。また、VHS・DVD版とBlu-ray版では本編の構成が異なるため、VHS・DVD版のナレーションはBlu-ray版ではディームズ・テイラーの解説に差し替えられている。


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タグ:

長編映画
最終更新:2024年03月27日 13:38
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