鉄道 (平井喜久松,岩波書店,1936年 第1刷,1949年 第7刷) > 第一編 鉄道線路 第四章 線路の諸設備

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鉄道』は平井喜久松さんの著書で,岩波書店から1936年(昭和11年)に第1刷が,1949年(昭和24年)に第7刷が発行されました。
このページには「第一編 鉄道線路 第四章 線路の諸設備」を収録。

目次


第一編 鉄道線路 (p. 4)

第四章 線路の諸設備 (p. 89)

§1. 線路諸標 (p. 89)

鉄道線路には列車運転および保線作業の便に供し,または公衆に対する警告用のために色々の指示を必要とする。これらを線路諸標(track sign)と称する。その構造はなるべく簡単で注目しやすく耐久性のあるものがよろしいので,普通白黒書とし,標抗の地中に埋設する部分にはコールタール類の防腐剤を塗布する。線路諸標に次の如きものがある。
  1. 距離標:起点からの線路延長を示す標
  2. 勾配標:線路勾配の変わり目に建て,勾配を記入せる標
  3. 曲線標:曲線の始終点に建て,曲線半径等を記入せる標
  4. 逓減(ていげん)標:曲線部においてカントの逓減位置を示す標
  5. 伏樋標:伏樋の位置を示す標
  6. 防雪林標:防雪林の施設年月,林地名等を示す標
  7. 防雪林警標(けいひょう):公衆に防雪林保護上の注意を促す警標
  8. 量水標:河川等において水量を指示する標
  9. 量雪標:雪量を示す標
  10. 用地界標(かいひょう):鉄道用地界を明示する標
  11. 市街地用地界標:人家稠密(ちゅうみつ)の地の鉄道所有地を示す標
  12. 丁場界標:保線丁場の境界を示す標
  13. 車輛接触限界標:軌道の車輛接触限界を示す標
  14. 停車場区域標:特に停車場区域を指定する必要がある時,その界を示す標
  15. 雪掻車警標:雪掻車のウイング,フランジャー等を使用する事のできない場所を示す標
  16. 氣笛吹鳴(すいめい)警標:踏切道等に列車の近接を知らせるため氣笛吹鳴を促す標
  17. 踏切警標:踏切道を通行者に知らしむる標
以上の内,(1) (2) (3) (4) および (16) は線路終点に向い左側に,(5) (12) および (15) は右側に設けるものである*1

第111図 (1)

第111図 (2)

第111図 (3)

第111図 (3)

第111図 (4)

第111図 (4)

§2. 柵垣および境界設備 (p. 94)

1. 柵垣 (p. 94)

停車場構内その他線路上の主要な箇所で境界を明かにし,また他より線路内に進入するを防ぐ目的で作られるが,その構造は木造,鉄造,鉄筋コンクリート造あるいは木鉄混造等である。最も普通のものは古枕木を焼焦したものである*2

2. 堤塘,溝渠 (こうきょ) (p. 94)

柵垣と同様の目的のために盛土を施し,その上に樹木を植えた堤塘あるいは排水溝と兼用の溝渠を造る場合がある。何れも用地費安く他の目的と併せて有利なる場合に用うる*3

§3. 踏切道および立体交叉 (p. 94)

1. 踏切道 (p. 94)

道路が鉄道線路を横断する時に両方の路面が同一面である時はこれを踏切道と言うのであるが,往来の頻繁な踏切道は人馬諸車の通行に危険な許りでなく,列車運転の保安上にも危険が少なくない。その設備としては列車回数,道路交通状態によって次の如き各種のものがある。
(A)人が稀に通行する場合:踏切に特別の設備を施さない。
(B)車馬の通行する場合:軌道に軌条上面と同高に道幅だけの敷板,敷石,古軌条,コンクリート等を敷詰める。ただし車輛の輪縁が通る間隔を設けるために護輪軌条を用うる。
(C)相当の交通量ある場合:この場合においては以上の外にまた交通量に応じて次の如き設備を施す。
  1. 門扉を設けて昼夜看手を附するもの(第1種踏切道)
  2. 門扉を設けて一定時間交通の頻繁な時間のみ看手を附するもの(第2種踏切道)
  3. 門扉を設けずに閃光式の警報器(第112図)および電鈴を設け列車の近付きたる時横断者に注意を喚起するもの(第3種踏切道)
我国有鉄道の踏切道の数は総計約88,500で,内自動車の通行するものが14,000位ある。而(しか)して第1種が650,第2種が2,380,第3種が340位となっている*4

踏切門扉
踏切門扉には大体引掛式(第113図 a),上下式(第113図 b および c),引出式(第113図 e,f)および索条式(第113図 g)等種々の種類がある。而(しか)して動力は手動のものと電動のものと2種ある*5



2. 立体交叉(Crossing above or below a track)(p. 97)

最近自動車交通量が異常に増加して踏切事故が絶えないので国道,府県道,その他重要道路の交通頻繁な箇所では,立体交叉即ち道路と鉄道線路とを上下別々の面として交叉させるようにしている。而(しか)して在来の平面交叉を立体交叉に改築することを平面交叉分離(grade separation or level crossing elimination)と言うている*6

道路と鉄道線路との平面交差分離の方法として次の如きものがある。
  1. 道路上げ越(street elevation):道路を扛上*7する。
  2. 線路上げ越(track elevation):線路を扛上する。
  3. 道路下げ越(street depression):道路を低下する。
  4. 線路下げ越(track depression):線路を低下する。
  5. 線路分担上げ越(partial track elevation):線路をある高さだけ扛上し,道路はある高さ低下する。
  6. 線路分担下げ越し(partial track depression):線路をある高さだけ低下し,道路をある高さ扛上する。
この外,歩道だけ立体交差とする場合もある。即ち跨線橋または歩道地下道を設けるものである*8

線路と線路の場合も以上と同様の方法がある(第19図参照*9

以上6つの方法のうち何れが優れるかは地方的条件によって支配せらるるから一概には言えないが,工費その他の点から推してまず大体基準として道路上げ越,道路下げ越,線路上げ越,線路下げ越の順となるであろう。工費は複線で道路幅7.2mの場合約70,000円及220,000円を要する。歩道のみの立体交差は跨線橋と地下道との2方法があるが,前者は後者の大体50%位の費用でできる*10

立体交叉の橋梁の型式,径間割
立体交叉の橋梁の型式,径間割等は種々比較研究の必要があるが,径間を小にし得る場合は騒音,外観等の点より鉄筋コンクリート・スラブ式が適当であろう*11

大都市における高架鉄道または地下鉄道は道路との平面交差を避けるためになされた平面交差分離の連続と見做(みな)される(第18,20,21,22,25図参照*12*13

§4. 防雪設備 (p. 99)

鉄道線路に興うる雪の被害は
  1. 自然の積雪
  2. 吹雪
  3. 雪崩(avalanche)
の3つによるので,この雪害を防止することは冬季における鉄道保安上重大なる問題である*14

1. 除雪方法 (p. 99)

線路の積雪を除く方法には次の如きものがある。
  1. 人工排雪:機械力によらず,人力により積雪を排除するのである
  2. 牽引機関車に排雪器を取付ける方法
  3. ラッセル式排雪車(plough car)
  4. ロータリー式雪掻車(rotary plough)
  5. 広幅雪掻車(Jordan snow spreader)
  6. マックレイ式雪掻車(Maclay snow spreader)
以上の内,(3) (5) (6) は何れも機関車に推進せられて除雪するのであって,積雪の深さその他種々の状態によって使用機を選択するものである*15




2. 吹雪防止設備 (p. 101)

1)雪覆(snow shed)
これには木造,鉄筋コンクリート造のもの等があって,その効果極めて大であるが,半永久的であるから旅客に不快の念を与え,補修費もまた多額に登るので近年はあまり用いられず,これに代わるに防雪林を設置するようになった*16

2)防雪柵(snow fence)
これは風の方向に対して直角または地形に応じて適当な角度に建てた塀で,その高さは2〜5.5mで莚張*17,萱張*18等がある。またその目的により建て方に2種ある。即ち雪を止める吹止式と雪を吹沸う吹沸式とある。
前者は線路から大体高さの10倍くらいの距離を離して風上に設置し吹雪を止めるもので,高さは莚(むしろ)3枚及至4枚張りである(第116図)。
後者は線路に近接して第116,117図の如く下を風通し良くした莚(むしろ)2枚張位の柵を建て,線路に積る雪を吹沸うようにしたもので,降雪量少なき地方に設ける*19


3)雪堤(snow banking)
積雪を利用して堤を築き,吹雪を防止する方法で,一種の応急施設である*20

4)防雪土堤
これは半永久的に線路に沿って高さ約4m,線路中心より約20m位離して築堤を作り,防雪の用をなさしむるものであるが,用地と土工に費用を要するからあまり適当でない*21

5)線路切取切拡げ
切取では吹溜りが生じ,ラッセル車運転の際左右に押し除けられた雪が再び線路内に転落する虞(おそれ)がある。これを防ぐために線路の両側を切拡げて置くのである*22

6)線路の昂上
線路の状態および地形の関係上容易に防雪方法を施工できない場合に,線路を扛上*23した方が得策である事がある。これは線路の勾配変更で工事費が大であるからあまり用いられない*24

3. 雪崩警報装置 (p. 103)

雪崩の起ったことを逸早く自動的に知る方法で,雪崩発生の危険区域に電線を張り,雪崩が起ったときには雪崩の重量で電線が切れ電鈴装置で最寄りの駅または番所に雪崩のあった事を通知する方法である(第118図)。


4. 雪崩防止設備 (p. 103)

次の如きものがある*25
  1. 雪崩止坑木(第119図)
  2. 雪崩止柵(第120図)
  3. 雪崩擁壁(第121図)
  4. 雪崩割及び雪崩刎(第121,122図)
  5. 雪覆(第123図)




5. 防雪林 (p. 105)

前述の防雪設備は何れも消極的で充分でない。その完全なるものは防雪林である。防雪林とは繁茂せる一定幅の森林により吹雪(または雪崩)の発生を防止し,またこれを阻止し線路を安全にする森林である。防雪林は次の如き場所に設置する。
(イ)地形上線路に吸込,吹溜を生じやすき所
(ロ)現に雪崩を有し,または毎年防雪柵を要する所
(ハ)雪崩防止設備のある所
(ニ)雪崩の発生する虞(おそれ)ある所
即ちその目的から吹雪に対するものと雪崩に対するものとの2様ある*26

防雪林の幅員
防雪林の幅員は樹種,風向,風力,降雪量,積雪量,気温,雨量,地形等により異なり,林幅は広き程効果大である*27

最小幅員
最小幅員は恒風の方向が線路に直角で杉林の場合は36m内外,落葉松林は45m位である。この林況を保持するために適宜伐採してその跡に植林し森林を新しくする必要がある。この伐採の方法には択伐更新法と帯伐更新法とある(第124図)*28

線路中心からの間隔
線路中心からの間隔は約10〜20mを必要とする*29

防雪林の利点
防雪林の利点は次の如きものである*30
(イ)雪害を未然に防止する効果大である
(ロ)産出木材を材料品として供給せらる
(ハ)防火地帯として間接に沿線の火災を防ぐ
(ニ)鉄道沿線に風致を増す
(ホ)植木の気風を増す
(ヘ)他の防雪設備より線路が安全である
(ト)他の設備を要しないから経済的に有利である

樹種選択条件は次の如くである。
(イ)防雪の効果充分なるもの
(ロ)その土地,気候に適するもの
(ハ)造林容易なるもの
(ニ)成長盛なるもの
(ホ)暴風雨に対して強いもの
(ヘ)煙害を蒙(こうむ)る事少ないもの
(ト)材質優良なるもの
以上の条件に適うものは杉,檜,ヒバ,赤松,黒松等である*31

§5. その他諸設備 (p. 107)

1. 車止 (p. 107)

制動を誤った列車または車輛を停止させるため,あるいは軌道の終端を指示するために軌道の終端に設くるものを車止(buffer stop)と言う。この車止には種々の種類がある。
  1. 盛土を施したもの
  2. 木造のもの
  3. コンクリート造のもの
  4. 砂利をある長さ盛ったもの
  5. 軌条製のもの
我国有鉄道では以上の内 (1) (2) (3) (5) 等を用いていたが,結果が面白くないので種々の実験の結果高速度の列車を運転する線においては (4) が最も適当であると言う結論を得て,現在は (4) (5) が用いられ,(4) の砂利をある長さ盛ったものを第1種車止と言い,軌条製のものを第2種及び第3種と言うている(第125図)*32

その使用種別は第23表の如くである*33*34
第23表
使用箇所 車止の種類 記事
安全側線の終端 第1種
第1種車止の砂利盛工の寸法はその始めの勾配によって下表の如く異なる。
折返線の終端  〃
特に必要と認める箇所  〃
行止り到著本線 第2種
第2種車止施設箇所は線路状態及び使用程度により砂利盛工とし,その延長2〜5mとすることを得。
桟橋及びこれに類似線  〃
主要側線  〃
車庫内線及び建物内線 第3種甲
その他側線 第3種乙

施設線路状態 T (m) W (m)
第1種車止始端の外方1km間の平均勾配が列車または車輛進行に対し 10/1000 より急なる下り
40.0 2.5 
10/1000 または 10/1000 より緩なる時
30.0 2.25
10/1000 より急なる上り
20.0 2.0 

以上の場所の外,場所により水圧を利用した hydraulie buffer stop を設けることがある*35

2. 車輪止(scotch block)(p. 109)

側線にある車輛が自然に動き出して,他の車輛に支障を及ぼす虞(おそれ)ある場合に車輛接触限界内2mの箇所に設け,車輪を止めるものである。これには木製と鉄製とあるが,鉄製のものは重要な所に用い,関係分岐器と双動になっている*36

3. 落石止 (p. 109)

岩石混り土砂の切取の場合,列車の振動または自然風化等のために,線路上に岩石が転落して列車に危害を与える事がある。これに対する防護施設に次の如きものがある*37
  1. セメントガンによりモルタルを表面に吹付け或はモルタルを内部に注入し,切取法面を堅め,岩石の転落を防ぐ法
  2. 石覆を作って落石を喰止める方法(第127図)
  3. 線路の山側に擁壁を作り落石を止める方法(第128図)


4. 防波施設 (p. 110)

線路の海岸の沿う場合,往々波浪によって被害を受ける事がある。これを防ぎ且つ土圧による陸岸の崩壊を止むるために護岸を設く。護岸の形状は第129図の如きもので,コンクリートまたは石積である。波浪の甚(はなはだ)しき箇所には波返しまたは護岸の上に更に胸壁を設く。この胸壁の高さは1〜2mである*38


参考文献

(著者・編者の五十音順)

書籍
  • 平井喜久松『鉄道』岩波書店,1936年5月15日 第1刷発行,1949年7月15日 第7刷発行

辞典
  • 石井忠久,他『福武漢和辞典』福武書店,1991年11月1日 発行,初版
  • 岩波書店『広辞苑』〈シャープ電子辞書 PW-9600 収録〉岩波書店,1998-2001年,第5版

(書名の五十音順)



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更新日:2010年12月10日

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*1 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 89-91

*2 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 94

*3 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 94

*4 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 94,95

*5 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 95-97

*6 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 97

*7 ) 【扛】〔コウ〕〔げる〕-『福武漢和辞典』1990,p. 439

*8 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 97,98

*9 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 98

*10 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 98,99

*11 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 99

*12 ) 「第1編 鉄道線路 第1章 線路一般 §2. 構造物 5. 橋梁」へのリンク貼付。

*13 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 99

*14 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 99

*15 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 99-101

*16 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 101,102

*17 ) 【莚】〔むしろ〕

*18 ) 【萱】〔かや〕

*19 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 102

*20 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 102

*21 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 103

*22 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 103

*23 ) 【扛】〔コウ〕〔げる〕-『福武漢和辞典』1990,p. 439

*24 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 103

*25 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 103-105

*26 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p.105

*27 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 105

*28 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 105,106

*29 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 106

*30 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 106

*31 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 106,107

*32 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 107

*33 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 107,108

*34 ) 表中の語句「盛工」は原文ママ。◆「到著」の読みは〔トウチャク〕。意味は「到着」と同じで「目的地に行き着く」--【到】/【到着・到著】『福武漢和辞典』p136

*35 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 109

*36 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 109

*37 ) 平井喜久松『鉄道』1949,pp. 109,110

*38 ) 平井喜久松『鉄道』1949,p. 110