第6回口頭弁論期日①(2010年3月17日):被告準備書面(3)


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

第6回口頭弁論期日(2010年3月17日)
陳述書面:被告準備書面(3)
http://watashinim.exblog.jp/10877885/


平成21年(ワ)第19716号
原告  金 光翔
被告 (株)新潮社 外2名

準備書面(3)

平成22年3月8日
東京地方裁判所民事第5部合議係 御中

被告等代理人
 弁護士  岡田 宰
  同   広津 佳子
  同   杉本 博哉

被告佐藤優訴訟代理人
 弁護士  安田 好弘


第1 原告の求釈明に対する釈明

被告の準備書面(2)に記載したとおりである。

第2 原告の準備書面(2)に対する反論

1 原告の異動について

(1)被告の真実性もしくは相当性の立証対象は、原告が主張するような、「原告が『世界』編集部で“反総連の記事はけしからん□“なぜ佐藤を連載に使うのがなどと抗議をしたり、匿名で始めたブログで佐藤氏やジャーナリストの斎藤貴男氏など、社と関係の深い作家の批判を繰り返すようになった」がゆえに、『世界』編集長が原告を「持て余し校正部に異動させた」という事実ではない。
 「反総連の記事はけしからん・・・」云々はあくまでも『世界』編集長が原告を持て余した事情の一つである。原告が主張するような「がゆえに」という接続詞で結ばれるような単純な原因と結果の関係に立つものではない。

(2)又「反総連の記事はけしからん」との記述は、一般読者の普通の注意と読み方を基準にすれば、原告は特定の政治団体(朝鮮総連)の熱心な構成員もしくは同調者であるとの印象を与えるとの原告の主張は独自の主張という他はない。この部分は、単に、原告の『世界』編集部への抗議内容の一つを伝えるものにすぎず、原告の主張するようなものではない。

2 「思想・良心の自由と異動顛」について

(1)あらためていうまでもなく、人事異動は使用者が業務上の必要から労働者に対し命ずるものであって、原告がいうように「(異動顛を申請したという事実)がなければ異動自体がそもそも成立しなかった」(5頁)というものではない。

(2)又、本件において原告が異動顛を提出した動機・理由などは全く争点ではない。

3 「中国人差別発言」について

 被告が「中国人差別発言」にふれたのは、原告と『世界』岡本編集長の面談のテープ(甲33号証)の中に「Aさん」との発言部分がある為、何故面談の際に「Aさん」に関し言及されているのかを理解するために原告のブログ(乙1号証)を引用して説明し、あわせて、岡本編集長が原告の言動を持て余していた例証の一つとしたものに過ぎない。

4 「当初の異動対象」について

(1)前述したとおり、人事異動は使用者が業務上の必要から労働者に対し命ずるものである。
 当初の異動対象が原告のいうとおり山本某であろうとなかろうとそれは本件の争点ではない。

(2)本件の争点は、あくまでも『世界』編集長が原告を持て余し校正部へ異動させたという事実の真実性・相当性である。

5 佐藤発言①について

(1)原告の論文(甲3号証)の141頁~142頁の6項のタイトルは「『人民戦線』という罠」であり、本文の中で佐藤の論文が2本引用されているが、その中で佐藤は「人民戦線」という用語は一切使用していない。「人民戦線」という用語は、佐藤の「ファシズムの危険を阻止するためには、東西冷戦終結後、有効性を失っているにもかかわらず、なぜか日本の論壇では今もその残滓が強く残っている左翼、右翼という『バカの壁』を突破し、ファシズムという妖怪を解体、脱構築する必要がある」との「民族の罠」での記述に対する魚住昭や斎藤貴男等の反応をとらえ、原告が「ファシズム政権の樹立に抗するために、人民戦線的な観点から佐藤を擁護する」とまとめているだけであって、あくまでも原告が使用した用語である。

(2)次に、原告の論文の143頁から144頁の7項のタイトルは「『国民戦線』としての『人民戦線』」であり、本文の中でも佐藤の論文が2本引用されているが、その中で佐藤は「人民戦線」という用語は一切使用していない。にも拘らず、タイトルは前述したとおり「『国民戦線』としての『人民戦線』」とされた上で、本文の1、2行目では「ここで佐藤の提唱する『人民戦線』なるものが、いかなる性質のものであるかを検証してみよう」とつながっているのである。
 以上のとおり「人民戦線」という用語は原告が使用したものであって佐藤が使用したものではない。
 まさに『私が言ってもいないことを、さも私の主張のように書くなど滅茶苦茶な内容」という他はないのであって、佐藤のこのコメントは真実である。

(3)尚、原告は「佐藤優 国家を斬る」(甲36号証)の中の佐藤の発言、即ち「『反ファッショ統一戦線』というのと、私が理解するところの『国体の護持』というのは全く同じなんです」という部分を拾い出し、「反ファッショ統一戦線」と「人民戦線」とは同義であると主張する。
 ここでは、同義であるかどうかはひとまず置くとして、同義であるということと「使用」しているということは全く別の事柄である。又、加えて原告の論文では「佐藤のいう」、「佐藤が使う」ではなく、より主体的・能動的に佐藤が関与していることを意味する「佐藤が提唱する人民戦線」とされているのである。
 しかも、論文の7項の出典には、甲36号証は掲げられていない。
 この点においても、まさに「私が言ってもいないことを、さも私の主張のように書」いているとの佐藤コメントは真実である。
 加えて、「人民戦線」とは歴史上の概念であって、「1935年のコミンテルン第7回大会で書記長ディミトロフの指導の下に、ファシスト独裁と戦争に反対する労働者階級の統一と、これを中心に反ファシズムの諸階層と諸党派を結びつける共同戦線戦術として採り上げられた政策(である)」(辻清明編・岩波小辞典・政治・第3版・第4刷・123頁)。
 佐藤は『反ファッショ統一戦線』という用語を使用したことはあるが、「戦争反対」との主張をしたことはない。「新帝国主義の選択肢」(乙2号証)においても「帝国主義の選択肢に戦争で問題を解決することも含まれる」と主張しているとおりである。
 以上の次第で、佐藤の主張を「人民戦線」と同義であるとするのは明らかに誤りである。


6 「曲解していること」について

 この点に関しては、被告の準備書面(2)の主張を再度援用し、反論するにとどめる。本書面で、原告の主張に対し新たな反論を繰り返すことにより、争点から次第に離れて行く危険性があることを危惧する為である。


第3 情報提供者の責任

1 ところで、被告佐藤優の本件記事作成過程への関与は、本件記事(甲1号証)の54頁2段から3段にかけて、

 「佐藤氏は呆れて言う。
  『私が言ってもいないことを、さも私の主張のように書くなど滅茶苦茶な内容です。言論を超えた私個人への攻撃であり、絶対に許せません。そして、『IMPACTION』のみならず、岩波にも責任があります。社外秘の文書がこんなに簡単に漏れてしまう所とは安心して仕事が出来ない。今後の対応によっては、訴訟に出ることも辞しません』」
と記述されているとおり、かかるコメントをしたことのみである。

2 ところで、情報提供者の責任については、雑誌記事の編集権が雑誌社に独占的に帰属していることから、情報提供者による情報提供行為と当該情報を基に作成された雑誌記事による名誉毀損との間には原則的に相当因果関係が認められず、情報提供者には不法行為責任が認められないとするのが従来の裁判例の大勢である。そして、過去の裁判例の中で例外的に相当因果関係が認められる場合とされたのは、①提供した情報に即した記事が掲載される蓋然性が高いことを予測し、これを容認した場合又は掲載することについて出版社との間で意を通じた場合(東京高判平19・1・18、公刊物未登載)、②出版社による裏付取材が期待できない場合(出版社と情報提供者が意を通じた場合も含まれる)、又は情報提供者が事前に当該記事を見せられ、当該記事の掲載を承諾した場合(東京地判平18・29判タ1224号277頁)、③記事の掲載につきその結果を意図した場合(東京高判平13・5・15判タ1067号213頁)、④取材に対する発言が、取材当時、情報提供者が置かれた立場を考慮してもなお著しく不当であることに加えて、情報提供者が自らの発言をそのまま雑誌に掲載することについて予め出版社と意を通じた上で、あえて第三者の名誉ないし名誉感情を毀損する発言をした場合(東京高判平13・7・30判タ1118号182頁)、⑤自己のコメント内容がそのままの形で記事として掲載されることに同意していた場合又は自己のコメント内容がそのままの形で記事として掲載される可能性が高いことを予測しこれを容認しながらあえて当該出版社に対してコメントを提供した場合(東京地判平20・4・22判タ1286号178頁)などであって、情報提供者の責任を認容する為の要件はかなり厳格なものとなっている。

3 本件記事掲載にあたり、被告週刊新潮編集部は、被告佐藤に事前に「ゲラ」を見せるなどして本件記事に掲載するコメント内容の確認をとるという作業を行っていない。また「コメント」を必ず記事に掲載するという話をした上で取材をしたものでもない。
 よって被告佐藤の情報提供行為と、当該情報を基に作成された本件記事による名誉毀損行為との開には、相当因果関係が認められず、この意味でも被告佐藤の責任は認められないというべきである。


以上
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。