学校の終了の鐘がなって、生徒が元気良く走り出していく。
宿題を終わらす生徒、友達と遊ぶ生徒など、我先にと扉をつめていく。
その中、俺は一人クラスへと歩いていた。
戸を思い切りあける。
「待たせたな!」
そこには部活メンバーがいた。
前原圭一、竜宮レナ、園崎姉妹、北条兄妹、そして古手姉妹。
「待ちくたびれたぜスネーク!」
「はぅ、やっと来たよ~♪」
「ありゃ、遅かったね先生」
「いいじゃないですか、お姉。今日ぐらい別に」
「むぅ、何で詩音は先生たちには猫被るのかなぁ」
「にーにーも部活以外は猫被っているんじゃなくて?」
「皆猫被っているのです、にぱ~☆」
「あぅあぃあぅ、いじめないでほしいのです、あぅあぅあぅ」
いつもと変わらず、部活メンバーはハイテンションだ。
「じゃあ魅音。今日の部活は何をするんだ?」
「フッフッフ・・・やっぱり気になる?」
「もったいぶらないで教えろよ魅音」
圭一が横から言って来る。
「もしかしてカルタなのかな?かな?」
「私はジジ抜きだと思いますので?」
「沙都子とトランプは遊びたくないよぉ」
「ぜーいんはずれ!じゃ発表するよ~!」
皆黙り込む。
「今日の部活は球技!その種目は野球!だから皆外で集合!じゃ解散!」
解散後、皆で外まで全力疾走する。
悟史はバットを持ち、魅音はロッカーから人数分のグローブを取り出した。
まったく、どうやったらあんな小さなロッカーに九つもグローブが入るのやら・・・
いろいろ不思議なことが起こっているが、それがこの村だ。
もはや驚くことでもない。
今はとりあえず外に出ることに専念した。

「じゃチーム分けするよ~!」
全員出揃った頃、魅音が叫んだ。
「そっちの端から二ずつ数えて~!」
1、2、1、2、1、2・・・・
俺は当然一だ。
「じゃ一は向こうに行って~!先攻後攻はじゃんけんで決めるから~!」
結果、魅音、悟史、圭一、梨花、沙都子が敵になった。
「じゃんけんする人前に出て~!」
「先生、お任せします」
「先生、がんばって~!」
「あぅあぅあぅ、がんばるのです・・・」
と、このようにじゃんけんするのは俺に(強制的に)決まった。
「んじゃせんせー行くよ~!」
「「じゃ~んけ~ん!」」
同時に叫ぶ。
「「ポイッ!!」」
これまた同時。
しかし、出された手は違った。
魅音はパー、俺は・・・
「勝った!!」
チョキだった。
初めての感動。
初めて魅音に勝負事で勝てた・・!
「うぉ、すげーなぁスネーク。魅音に勝っちゃうなんて」
「ぅわ~、おじさん久しぶりに負けちゃったよぉ。じゃおじさんたち後攻だから、先どぞ~」
「わかった、じゃ始めるとするか!」
「「「「プレイボール!」」」」

最初のバッターは詩音。
対するピッチャーは姉の魅音。 
いきなりの姉妹対決だ。 
「まぁさかいきなり詩音とはねぇ」 
「私も一番打者として出されるのは心外でしたよ」 
「大丈夫?ずっと女学院にいたんでしょ?野球は久しぶりだから手加減してあげようか?」 
「お姉ぇ、いくら私が女学院の出だとしてもあなたの妹ですよ?なめられたくはないですねぇ」 
詩音がバットをより強く握る。 
「それに部活中のお姉ぇが手加減してくれるとは思えません」 
「あ、やっぱりばれてた?勝負事は手加減しないって」 
魅音が構える。 
「んじゃあ行くよぉ詩音」 
魅音が振りかぶる。 
「これが私のぉ・・・」 
そして・・・ 
「本気だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 
投げた! 
「なっ・・・!」 
あれぇぇぇぇ!? 
○学生ってこんなに速く投げられるっけ!? 
90キロは楽に超えてるぞ!? 
「それがお姉ぇの本気ですか・・・」 
詩音が言った。 
「じゃあこれが私のぉ」 
バットが空を切る! 
「本気だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 
カッキーンと響くバットと硬球の衝突音。 
そしてボールは・・・ 
「センターッ!」 
弾丸のような速さで駆け抜けた! 
センターには圭一がいた。 
「うわぁぁぁぁぁぁ!」 
圧倒的な威力を秘めたライナーの前に完全に腰を抜かしていた。 
「よしッ!」 
走り出す詩音。 
落下する硬球。 
魅音はそれに走りよって投げた。 
「ファースト!」 
一塁には悟史がいて、見事魅音の投げたボールをとった。 
しかし、もうすでにそこには詩音がいた。 
「お姉ぇ、少し腕が落ちたんじゃないですか?」 
こんなものは余裕だと言うような表情で挑発する詩音。 
「詩音、どうやってそんなにうまくなったの?」 
「お姉ぇ、忘れたんですか?私の幽閉先は女学院ですよ?ソフトボール部ぐらいあって当然じゃないですか」 
いや、それでもソフトボールと野球は似て非なるものだぞ、と心の中で突っ込む。 

二番打者はレナ。 
っと、その前に・・・ 
「ターイム!」 
「えっ、どうしたの先生」 
「ちょっと待ってくれ、な?」 
「おじさんは別にいいけど・・・」 
「じゃ、レナ!ちょっとこっちに来てくれ」 
「どうしたんですか?先生」 
「ちょっと話したいことがある」 
そう言って、レナを少し離れたところへ連れて行く。 
「先生、どうしたんですか?」 
レナの肩をつかむ。 
「レナ。お前確かかぁいい物が好きなんだよな?」 
聞いたことがある。レナはかぁいいモードになると、神々をも超える存在となると。 
「うん、レナはかぁいいものが大好きですけど・・・」 
「この部活で勝てたら、レナにかぁいいものをたくさんあげるが、どうだ?」 
「え?」 
きょとんとするレナ。 
「だから、この試合に勝ったらかぁいいものを山ほどあげるって言ってるんだ」 
「かぁいい・・・物?」 
「ああ。たとえば・・・」 
ポケットに手を入れて引っ張り出した。 
「こういうのはどうだ?」 
手にはガーコ人形が入っていた。 
「かぁいいか?」 
などと聞いてみたが、どうやら無意味のようだ。 
目がもう輝き始めている。 
もう一度ポケットの中に手を入れて引っ張り出す。 
今度はケロタン人形が入っていた。 
その瞬間。 
「かぁいいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 
レナはもうイッていた。 
「おっもちかえりぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」 
すかさずケロタン人形とガーコ人形を手放す。 
「せんせー!これで全部なの!?」 
「い、いや、勝てればもっとあげるぞ。たとえば・・・」 
「たとえば!?」 
「ドラ○ン○ールに出てくる小動物みたいな飛ぶ奴の人形!」 
レナから鼻血が噴水のように飛び出た。 
「じゃレナ行って来るよ〜!」 
「とりあえず止血してから行け!」 

レナがバッターボックスへ向う。 
勿論、止血済みだ。 
「うわぁ、せんせーレナに何したの?」 
魅音が聞く。 
「いや。少し話していただけだが?」 
「少し話すだけでレナがそんな状態になる訳ないでしょ!」 
魅音は少し怒っている様だ。 
「反則だよ反則〜!」 
「ほう、反則だと?これの何が反則なんだ?」 
「レナをかぁいいモードにした事が反則なの!元に戻して来てよ!」 
「だから今のレナの何が反則なんだ?第一こんな事は魅音もしていただろう!」 
「うっ!」 
そう、魅音は部活のときレナを強制的にかぁいいモードにして一人勝ちするのだ。 
もちろん、沙都子と梨花はそれに対抗してレナ一段階上のかぁいいモードにして操るのだが。 
要するに、男達はいつも地獄を見ているという事だ。 
「今日は俺がレナを使わせてもらう!」 
「いいよいいよわかったよ!ったくもう〜、やりづらいな〜」 
そう言った瞬間、魅音はボールを投げていた。 
「なっ!汚いぞ魅音!」 
「汚いのはそっちも同じだよ!」 
慌ててレナの方へ振り向く。 
しかし、そこに居たのはいつもと違うレナだった。 
「遅いッ!」 
宙を舞う硬球。 
静まり返る魅音。 
唖然とする俺。 
そこに居るレナは、 
いつもと違いすぎていた。 
「アッハハハハハハハハハハ!」 
いや、これはかぁいいモードだ。 
しかし、今日のレナはちょっと狂っている。 
「遅いよ遅すぎるよみぃちゃん!遅すぎて止まっているように見えたよ!」 
うわぁ完全にイッちゃってるよ今日のレナ。 
全身からオーラみたいな物が出てるんだけど。 
それにレナの影が何か違うよ? 
角と羽が生えてるんだけど。影に。 
あれ?元に戻ってる。 
「はぅ〜〜☆じゃ行ってくるよ〜☆」 
「・・・何だったんだ、今のは」 
楽に一塁まで歩いていくレナ。 
「じゃ、じゃあ気を取り直して行こうか?」 
「お、おう」 
さっきの事は忘れて次のバッターを出す。 
「あぅあぅ、がんばりますです!」 

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最終更新:2008年02月22日 03:17