タルドール

タルド-ル(Taldor)


タルドール は、アヴィスタン亜大陸の内海沿岸の東部に位置する帝国である。かつてはアヴィスタンの過半を支配していた大帝国だったが、現在は衰退と退廃への道を辿っている。[1]

歴史

-1281AR、約6000年前、滅亡したアズラントの生存者が、ケレッシュ人の部族が住む内海北岸東部に移住し、タルドール王国を建てた。伝説によればエイローデン自身が植民者の居住地を巡っていたというが、それから長い間、この地がエイローデン信仰の中心となった。
“戴冠の時代”の前半がタルドールの黄金期で、数多くの遠征軍 Army of Exploration を各方面に派遣し、セレン河をさかのぼって河川諸王国、現在ブレヴォイと呼ばれているイシアとロストランドに植民し、東方との緩衝地帯としてガルトを建てた。西にもシェリアックスアンドーランイズガーニアマサスモルスーンラストウォールがある地域を併合し、アヴィスタンの西はアルカディア海沿岸、東は“世界の端”山脈にいたる大帝国を作り上げた。
しかし世界の富を集め繁栄に酔っているうちに、文化的な退廃がはびこり、人々は国外に関心を持たないようになってきた。
4079AR、長年のライバルであったカディーラはこれを好機と見、大規模な侵攻を開始した。大戦役 the Grand Campaign の始まりである。
4081AR、それを機に、西方でもシェリックス人が立ち上がり、Even-Tongued Conquest が始まった。東方の戦線では敵を撃退したものの、西方ではシェリアックスの独立を許し、多くの属国を奪われ、ここにタルドール帝国の栄光は終わった。エイローデン教会もシェリアックスがいまや世界の中心であるとして移転して行った。
4603AR、大戦役が終結し、カディーラとの国境に不穏な気配を残しながらも平和が訪れた。[2]

政治

欲望と不信がタルドールの政治の特質である。帝国の最初期まで遡る歴史を持つ数千の貴族の家系は勢力争いを繰り広げている。暗殺と裏切りが横行している。タルドールの現在の皇帝はGrand Prince Stavian III である。未熟で扱いがたい君主で、大仰なおべっか使いに囲まれ、ぐずぐずと空想的な話をもてあそんでいる。彼を取り巻く貴族たちは日々些事を論じ合い、実際に職務を行っている官僚機構は非効率で縄張り争いばかりしている。
Grand Prince 位は長子相続制で、代々長男が受け継ぎ、男子がいない場合は他の王家に属する系統に移る。Stavian III には男子がなく、娘のPrincess Eutropia がいるのみである。彼女は父が死ねば、必要ならば力づくでも帝位を継承し、帝国にかつての栄光を取り戻そうという大計画を抱いている。彼女が勝利を収めるにしても、他の王家が帝位を継承するにしても、いずれにせよ近い将来の内戦は避けられないだろうと見られている。[1]

軍事

タルドールの生命線は内海東部の海域の制海権を握っていることであり、それを守るため軍港都市 Cassomir を中心に帝国海軍 Taldan Imperial Navy が睨みを利かせている。その一部は河川警備隊 the River Guard として内陸部の河賊の取り締まりに当たっている。また Zimar Corsairs という私掠船団にカディーラの海上交通を脅かさせている。

陸軍は高名なタルドール・ファランクス Taldan Phalanx で知られる。一団となって自在に行軍する長槍兵とそれを指揮する重装騎兵、優良な長弓兵の連合からなり、大戦役の間、多くのカディーラ軍を粉砕してきた。


誰も信用することができない皇帝の私的護衛団として、リノーム諸王の地の蛮族兵によって構成された Ulfen Guard がある。

タルドール軍の最も悪名高い兵士は the Lion Blades である。自分自身と周囲の人間の動きをコントロールすることに長け、人の多い街中での戦闘を得意とする。

住民

多くは人間(タルドール人)である。

タルドールの身分で最上位にあるのは王族 Royalty である。ほとんどはかつての皇帝の系譜に連なる者だが、Grand Prince は下位の階級の者に称号と財産を与え、この身分に引き上げる事もできる。
次に元老階級 Senatorial Class がある。元老院の議員、州の長官、各種の官僚機構の長によって構成される。市民は職務に精励することで比較的容易にこの地位に達することができる。
この2階級は the Bearded と呼ばれ、合法的に髭を蓄えることができる。タルドールでは髭は身分の象徴である。

最も数の多い、人口の99%を占める平民階級が the Unbearded である。勝手に髭を伸ばすと投獄される(ドワーフなど亜人間は例外)。重税と無権利状態に苦しめられているが、Grand Prince は不満を和らげるために有力な平民を上の身分に取り立てていき、また軍隊で出世することも階級を上昇させる有力な手段となっている。[3]

宗教

アーバダーエイローデンカリステリアカイデン・カイリーエンノルゴーバーシェーリンサーレンレイが信仰されている。
大戦役中の4528AR、カディーラ軍と呼応されることを恐れ、タルドール国内でサーレンレイ信仰は違法とされ、全ての神殿は破壊された。しかしタルドール政府の弱体化に伴い、大都市の外では太陽の女神への信仰は普通に見られるようになってきている。
エイローデンは1世紀前からクレリックに信仰の恩寵を授けないようになり、死んだものと考えられ、その信者はほとんどいなくなっている。ゴラリオン最後のエイローデンの大司教である老ハーフエルフ Father Basri は僅かな聴衆に神がいつか再来するだろうと語っているが、多くの者は老いぼれの泣き言にすぎないと考えている。[3]

地理

何世紀もの居住により、タルドールの中心部にはほとんど危険な獣は存在しない。しかし北西部のヴァーデュラン森にはドルイド、ノーム、エターキャップ、フェイなどが生息している。北部では霧山脈のフロスト・ジャイアントやサンダーバード、“世界の端”山脈のオークがしばしば脅威となる。ケレッシュ人の遊牧民がしばしば東部や南部の国境を越えて襲撃してくる。1941ARにKing Dahalvian が布告したRoyal Proclamation of the Draconic Banking により、ブロンズ・ドラゴンはカソミール、メヘト、オパーラ、ジマールの4都市で銀行を設立し、王に税金を払わずに利息をとってもよいということになった。その結果、この国にはアヴィスタンで最もブロンズ・ドラゴンの生息数が多い。[6]
オパーラ Oppara:かつては黄金で舗装されていたことから Gilded City と呼ばれているタルドールの首都。王宮と議会、高名な2つのバード学園 Kitharodian Academy と Rhapsodic College、内海地域最大の盗賊ギルド“沈黙の血盟会”the Brotherhood of Silence、最古のエイローデン神殿がある。
カソミール Cassomir:ゴラリオン最長の大河セレン河の河口にあるタルドール第2の都市。河川諸王国やヴァーデュラン森にむかうセレン河の水運と内海東海域の海運の双方を管制する港湾都市であり、造船と海軍の中心。
メヘト Meheto:“世界の端”山脈の北の麓にあるドワーフ居住地。高品質の金属製品と武器を産出する。
ウィスペル Wispel:ヴァーデュラン森にあるノームの町。古代のドルイドとの盟約によってタルドールが伐採を許可された木材を伐り、加工してカソミールに出荷する。
ジマール Zimar:カディーラにほど近い要塞都市。訓練を積んだタルドール軍が駐留する。東には高名なモンク僧院 Monastery of the Seven Forms があり、ティアン武術とカディーラのダルヴィーシュの技が融合した武術を教えている。

参考文献

[1] Erik Mona et al. (2008). Campaign Setting, p. 136. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[2] Erik Mona et al. (2008). Campaign Setting, p. 201. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-112-1
[3] Joshua J. Frost. (2008). Echoes of Glory, p. 201. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-169-5
[5] James Jacobs et al. (2011). The Inner Sea World Guide, p. 182. Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-169-2
[6] Mike McArtor (2008). Dragon Revisited ,p.26 . Paizo Publishing, LLC. ISBN 978-1-60125-165-7

カテゴリー:内海地域
最終更新:2013年10月27日 06:17