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 呪文は1回限りの魔法効果である。呪文には2種類のものがある。すなわち、(ウィザード、バード、ソーサラーが使用する)秘術呪文と(クレリック、ドルイド、高レベルのパラディンとレンジャーが使用する)信仰呪文である。呪文の使い手の中には限られた修得呪文リストから呪文を選ぶ者もいれば、多くの選択肢の中から呪文を選ぶ者もいる。

 ほとんどの呪文の使い手は呪文をあらかじめ準備する――これは呪文書からであることもあれば、真摯な祈りや瞑想を通じてであることもある――が、準備をせずにその場で呪文を発動するものもいる。このように、キャラクターが呪文を学び、準備する方法が異なっているにも関わらず、発動に関してはどの呪文も同じようなものである。

呪文の発動 Casting Spells


 呪文が秘術呪文でも信仰呪文でも、キャラクターが呪文をあらかじめ準備しておく場合もその場で選ぶ場合も、呪文は同じように発動される。

呪文の選択

 まず、どの呪文を発動するか選択する。君がウィザード、クレリック、ドルイド、高レベルのパラディンかレンジャーなら、その日にあらかじめ準備しておいた呪文のうち、まだ使用していないものの中から選択する(『ウィザード呪文を準備する』および『信仰呪文を準備する』を参照)。

 君がソーサラーかバードなら、修得している呪文から好きなものを選んで使ってよい。選んだ呪文と同レベルか、同じレベルの呪文を使用することができさえすればよいのである。

 呪文を発動するには、術者は話すことができ(その呪文に音声要素が必要な場合)、身振りを行うことができ(その呪文に動作要素が必要な場合)、物質要素や焦点具を(その呪文にそれらが必要な場合)取り扱うことができなければならない。更に、術者は呪文の発動に精神を集中しなければならない。

 呪文に複数のバージョンがある場合、術者は発動時にどのバージョンを使用するか選択する。呪文を準備するときに(ソーサラーやバードならば修得する時に)呪文のバージョンを特定する必要はない。

 準備した呪文を発動すると、術者はその呪文を再び準備するまで使用することはできない(1つの呪文を複数個準備していたのならば、そのそれぞれを1回ずつ使用できる)。術者がソーサラーかバードなら、呪文を発動すると、それはその呪文レベルの1日の使用回数にカウントされるが、その回数上限に達するまでは同じ呪文を再び発動できる。

精神集中


表:精神集中判定のDC
状況 精神集中判定のDC
防御的発動 15+呪文レベルの2倍
呪文の発動中に負傷した 10+受けたダメージ+呪文レベル
呪文の発動中に持続ダメージを被った 10+持続ダメージ源が最後に与えたダメージの半分+呪文レベル
呪文の発動中にダメージを与えない呪文の効果を受けた 効果を受けた呪文のセーヴィング・スローDC+呪文レベル
呪文の発動中に組みつき/押さえ込まれた状態である 10+組みついてきたものの戦技ボーナス+呪文レベル
激しい揺れ 10+呪文レベル
非常に激しい揺れ 15+呪文レベル
極めて激しい揺れ 20+呪文レベル
呪文の発動中にみぞれや雨を伴う風の中にいる 5+呪文レベル
呪文の発動中に砂礫が舞う風の中にいる 10+呪文レベル
呪文によって引き起こされた天候 『呪文』項を参照
呪文の発動中に絡みつかれた状態である 15+呪文レベル

 呪文を発動するためには、術者は精神を集中しなければならない。発動中に何かが術者の集中を乱した場合、術者は精神集中判定をしなければならず、失敗すると呪文は失われる。精神集中判定を行う際、術者はd20をロールし、その出目に術者レベルと、同じ種類の呪文のボーナスを決定する際に使用する能力値ボーナスとを加える。クレリック、ドルイド、レンジャーは術者の【判断力】修正値を加える。バード、パラディン、ソーサラーは術者の【魅力】修正値を加える。最後に、ウィザードは術者の【知力】修正値を加える。妨害が気の散るものであればあるほど、発動しようとしている呪文が高いレベルのものであればあるほど、DCは上がる(「表:精神集中判定のDC」を参照)。術者が判定に失敗すると、その呪文はあたかも発動してしまったが効果がなかったかのように失われる。

 負傷:呪文の発動中に負傷すると、術者は精神集中判定(DC10+受けたダメージ・ポイント+発動しようとしている呪文のレベル)を行わなければならない。この判定に失敗すると、発動中の呪文は効果を表すことなく失われる。呪文を妨害しようとするような事柄呪文の発動中に術者に加えられたとするのは、以下のような場合である。まず、(発動時間が1全ラウンド以上の呪文で)術者が呪文の発動を開始してから完了するまでの間にその事柄が行われた場合。次に、(呪文の発動によって誘発された機会攻撃や待機アクションのような条件攻撃によって)呪文の発動に応じてその事柄が行われる場合。

 アシッド・アローや溶岩の池にいることなどによって術者が持続ダメージを被っている場合、そのダメージの半分が呪文発動中に発生したと見なす。術者は精神集中判定(DC10+持続ダメージ源が最後に与えたダメージの半分+発動しようとしている呪文のレベル)を行わなければならない。最後に与えたダメージがその効果の与える最後のダメージだった場合、そのダメージは終了しており、それが術者の気を散らすことはない。

 呪文:自分の呪文を発動中の術者が、別の呪文の作用を受けた場合、術者は精神集中判定を行わなければならず、失敗すると発動しようとしていた呪文は失われる。術者に作用する呪文がダメージを与えるものであれば、DCは(10+ダメージ・ポイント+術者が発動中の呪文のレベル)である。

 呪文がその他の何らかの方法で術者を妨害したり、気を散らしたりするものであれば、DCは(その呪文のセーヴィング・スローDC+術者が発動中の呪文のレベル)であるセーヴィング・スローを行うことのできない呪文の場合、その呪文にセーヴィング・スローがあったとした場合のセーヴィング・スローDC(10+呪文レベル+術者の能力修正値)を用いる。

 組みつき/押さえ込まれた状態:組みつき状態あるいは押さえこまれた状態で呪文を発動することは難しく、精神集中判定(DC10+組みついているものの戦技ボーナス+発動しようとしている呪文のレベル)を必要とする。押さえこまれているクリーチャーが発動できるのは動作要素がない呪文のみである。

 激しい揺れ:術者が移動中の馬に乗っていたり、揺れる馬車に乗っていたり、波立つ水面上のボートに乗っていたり、嵐に揉まれる船の船内にいたり、あるいは単に同様の激しさで揺さぶられている場合、術者は精神集中判定(DC10+発動しようとしている呪文のレベル)を行わなければならず、失敗すると呪文は失われる。

 非常に激しい揺れ:術者が早駆けする馬に乗っていたり、爆走する馬車に乗っていたり、急流や嵐の海の上でボートに乗っていたり、嵐に揉まれる船の甲板に立っていたり、あるいは同様の激しさで揺さぶられている場合、術者は精神集中判定(DC15+発動しようとしている呪文のレベル)を行わねばならず、失敗すると呪文は失われる。自身の影響などで揺れが極めて激しい場合、精神集中判定のDCは(20+発動しようとしている呪文のレベル)に等しい。

 悪天候:悪天候の中で呪文を発動しようとするなら、精神集中判定を行わなければならない。目を開けていられないほどの雨やみぞれを伴う強い風の中にいる場合、DCは(5+術者が発動中の呪文のレベル)である。ひょうや土ぼこりや砂礫が舞う激しい風の中にいる場合、DCは(10+術者が発動中の呪文のレベル)である。いずれの場合も、精神集中判定に失敗すると術者は呪文を失う。天候が呪文によって引き起こされたものであれば、上記の『呪文』の項のルールを使用すること。

 防御的発動:機会攻撃を誘発することなく呪文を発動したいなら、術者は精神集中判定(DC15+発動しようとしている呪文のレベルの2倍)に成功する必要がある。失敗すれば呪文を失う。

 絡みつかれた状態:ネットや足留め袋に絡みつかれていたり、同様の効果を持つ呪文が作用しているときに呪文を発動したいなら、術者は精神集中判定(DC15+発動しようとしている呪文のレベル)を行わなければならない。失敗すれば呪文を失う。


呪文相殺

 どの呪文も相殺呪文として発動することができる。そうすることで、その呪文のエネルギーを用い、他のキャラクターが同じ呪文を発動するのを妨害できる。呪文相殺は一方の呪文が信仰呪文で、もう一方が秘術呪文であっても効果がある。

 呪文相殺の仕組み:呪文相殺を使用するには、術者は敵を相殺呪文の目標として選ばなければならない。術者は待機アクションを選ぶことでこれを行う。こうすると、術者は敵が呪文を発動しようとするまで自分のアクションの完了を遅らせることができる。待機は標準アクションなので、術者は待機アクションを取った上で自分の移動速度で移動できる。

 相殺呪文の目標が呪文を発動しようとしたら、〈呪文学〉判定(DC15+その呪文のレベル)を行うこと。この判定はフリー・アクションである。この判定に成功すれば、術者は敵の呪文を正確に識別し、その相殺を試みることができる。判定に失敗すれば相殺も識別もできない。

 このアクションを完成させるには、術者は次に適切な呪文を発動しなければならない。一般則として、呪文は全く同じ呪文しか相殺できない。術者が同じ呪文を発動でき、その呪文を準備していたなら(あるいはしかるべきレベルの使用できるスロットを持っているなら)、相殺呪文の効果を生み出すようにそれを発動する。目標が“距離”内にいれば、どちらの呪文も自動的にお互いを無効化し、それ以外の効果を表すことはない。

 修正呪文の相殺:ある呪文を相殺することができるかどうかを決定する際に、呪文修正特技は考慮に入れない。

 例外:呪文の中には、ある呪文に限ってお互いに相殺しあうものがある。特に全く正反対の効果を持つ呪文の場合に多い。

 相殺呪文としてのディスペル・マジック:術者は他の呪文の使い手の呪文を相殺するためにディスペル・マジックを使用でき、この場合、相手の発動しようとしている呪文を識別する必要はない。しかし、ディスペル・マジックは常に相殺呪文として働くとは限らない(この呪文の説明を参照のこと)。

術者レベル


 呪文の威力はしばしば術者レベルに基づいている。術者レベルは大抵の場合、術者が発動しようとしている呪文が属するクラスのクラス・レベルと等しい。

 術者は通常より低い術者レベルで呪文を発動することもできるが、術者レベルはその呪文を発動するのに十分なレベルでなければならないし、術者レベルに基づくすべての特徴は同じ術者レベルに基づいて計算しなければならない。

 クラスの特徴やその他の特殊能力によって術者レベルが変化するような場合、その変化は(距離、持続時間、与えられるダメージなど)術者レベルに基づく効果だけでなく、目標の呪文抵抗を克服する際の術者レベル判定や解呪判定(解呪判定と判定のDCの両方)に使用される術者レベルにも適用される。

呪文の失敗

 呪文の特徴が合致しない条件下で呪文を発動しようとした場合、発動は失敗し呪文は無駄になってしまう。

 呪文は術者の精神集中が途切れても失敗するし、動作要素のある呪文の発動時に鎧を着ていた場合も、失敗する可能性がある。

呪文の結果

 どのクリーチャー(や物体や範囲)に作用するか、(セーヴが可能な場合)そのクリーチャーがセーヴィング・スローに成功したかどうかがわかったら、術者は呪文の与える結果を適用できる。

特殊な呪文効果

 特殊な呪文の効果の多くは、その呪文の系統に従って取り扱われる。その他にも、系統をまたがる特殊な特徴もある。

 攻撃:呪文の中には、攻撃について触れているものがある。攻撃的な戦闘アクションはすべて、それが敵にダメージを与えないものであっても攻撃と見なされる。エネルギーの放出も、範囲内のクリーチャーを傷つける場合には攻撃として扱われる。敵がセーヴィング・スローで抵抗する呪文も、ダメージを与える呪文も、それ以外で対象に害があったり行動を妨げる呪文も攻撃となる。サモン・モンスターやそれに類する呪文は攻撃とはならない。というのも、これらの呪文自体は誰に害を与えるものではないからである。

 ボーナスの種類:通常、ボーナスには種類があって、呪文がどのようにボーナスを与えるかを表している。ボーナスの種類に関する重要な点は、普通、同じボーナス2つは累積しないということである。高い方のボーナスだけが有効になる。ただし、回避ボーナスとほとんどの状況ボーナス、種族ボーナスは例外である(『呪文の効果を組み合わせる』を参照)。同様の原理はペナルティにも適用される――同種のペナルティを2つ以上被ったキャラクターには、最もひどいペナルティのみが適用される。しかし、ほとんどのペナルティには種類がなく、それらは常に累積する。種類の無いボーナスは常に累積するが、同じボーナス源から与えられるボーナスは累積しない。

 死者を生き返らせる:いくつかの呪文には、殺されたキャラクターを生き返らせる力がある。

 生きているクリーチャーが死ぬと、その魂は肉体を離れて、物質界を去り、アストラル界を旅して、そのクリーチャーの神格が住む次元界へと向かう。もしそのクリーチャーが神格を信仰していなかった場合、その魂は対応する属性の次元界へと向かう。誰かを死から蘇らせるということは、その魂を呼び戻して、肉体に返すことを意味する。次元界に関する詳しい情報は『環境』を参照すること。

 負のレベル:生き返ったクリーチャーは通常、1以上の永続的負のレベルを得る(『特殊能力』を参照のこと)。この負のレベルは、レストレーションなどの呪文により取り除かれるまで、ほとんどのロールにペナルティを与える。死亡時にそのキャラクターが1レベルであれば、負のレベルを得る代わりに【耐久力】を2ポイント失う。

 生き返りの妨害:敵はキャラクターが死から蘇るのを難しくするために手を打っておくことができる。死体を隠しておけば、殺されたキャラクターを生き返らせるためにレイズ・デッドリザレクションを使用するのを妨害できる。トラップ・ザ・ソウルを使えば、まずその魂を解放しない限り、いかなる生き返りをも妨害する。

 当人の意志に反する生き返り:魂が望まなければ、生き返らせることはできない。魂は自分を生き返らせようとするキャラクターの名前、属性、(もしいるなら)守護神格を知ることができ、それに基づいて戻ることを拒否するかもしれない。

魔法効果を組み合わせる

 呪文や魔法効果は、同じ効果範囲や同じ対象にたまたま別の呪文や魔法効果がいくつ働いていようと、通常は記述通りの効果を表す。特殊な場合を除けば、呪文が他の呪文の働きに作用することはない。呪文が他の呪文に特定の影響を及ぼす場合、その呪文の解説にその効果についての説明がある。その他にも、同じ場所で複数の呪文や魔法効果が働いている場合に適用される一般的なルールがいくつかある:

 累積する効果:攻撃ロール、ダメージ・ロール、セーヴィング・スロー、その他の特性にボーナスやペナルティを与える呪文は通常、同じ呪文とは累積しない。さらに一般的な話をすると、同じ種類のボーナスは違う呪文のものからであっても累積しない(一方が呪文以外の魔法効果によるものでも同様である;前述の『ボーナスの種類』を参照)。

 ボーナス名が異なる:異なる2つの呪文によるボーナスやペナルティは、修正値の効果が異なれば累積する。名前のついてないボーナスはどんなボーナスとも累積する。

 威力の異なる同名の効果:2つ以上の同一の呪文が、異なる威力で同じ範囲あるいは目標に働いている場合、最も高い効果のもののみが適用される。

 異なる結果の同じ効果:同じ呪文が同じ対象に2回以上かけられた場合、異なる効果を生み出すことがある。通常は、最後の呪文が他の呪文に優先される。以前の呪文が実際に除去されたり解除されたわけではないが、それらの効果は最後の呪文が持続する限り無意味になってしまうのだ。

 ある効果によって別の効果が無意味になる:ときには、ある呪文のために、それ以降にかける呪文が無意味になってしまうこともある。呪文は双方とも依然として効果を表しているが、いくつかの理由から一方の呪文が他方を無意味にしてしまうのだ。

 複数の精神制御効果:精神制御を可能にする複数の魔法効果は、互いを無意味にしてしまうことがある。例えば、対象から動く能力を奪ってしまうような呪文である。通常、対象が行動する能力を奪わない精神制御は互いに干渉しない。1体のクリーチャーが2体以上のクリーチャーに精神制御されている場合、全力を尽くして(それぞれの効果に可能な限度まで)それぞれのクリーチャーに従おうとする。精神制御されているクリーチャーが矛盾する命令を同時に受けた場合、制御しようとするものたちは対抗【魅力】判定を行い、そのクリーチャーがどの命令に従うかを決定すること。

 正反対の効果を持つ呪文:正反対の効果を持つ呪文は通常通り適用される。すべてのボーナスやペナルティや変化は適用された順番で発生する。呪文の中にはお互いを完全に無効化あるいは相殺してしまうものもある。これは特殊な効果であり、個々の呪文の解説に記載されている。

 瞬間的な効果:持続時間が“瞬間”の呪文が2つ以上、同じ目標に作用する場合、累積的に働く。
最終更新:2015年04月01日 02:20