ほとんどの定命のものが忘れてしまった古代の戦闘において、死のティタンは恐ろしい戦争のさなか神に対して反旗を翻した。この戦争を引き起こしたティタンが敗北したとき、ティタンの尽きることのない力を押さえることができる場所であると信じて、神は彼らをアビスに永遠に追放した。何千年もの時が過ぎ、追放されたティタンは彼らだけが定命のものの称賛と信奉に本当に値するものだと確信しながら――それこそが彼らが革命に至った苦々しい理由であった――、怒りの中で思案を進めた。募る嫌悪は傲慢さと混じり合い、死のティタンは自らを信奉する種族を産み出した。アビスの闇の土と汚染された水を、星のない夜の色をした粘土と捏ね合わせた。彼らのすばらしい造形と生命構築によりこの粘土は彼ら自身の似姿を持つ人型生物となった。その大きさは人間に似ているがより器量がよく、印象的な表情と大きな竜の翼、そして輪郭のはっきりした体格をしていた。そのとき創造者は自らを切り、その血をこの被造物の空っぽの器に注ぎ、うなり声のような彼らの息を吹き込んだ。そうすると血と空気はこの彫り込まれた姿を覚醒させるべく、その中で流れ始めた。ティタンらは、自らの力は神格に値すると考えた。古き神々のように自らが生命と存在を作り出すことができたからである。彼らは過ちを犯した。
このティタンの作り出した力の化身は焦げて溶けてしまい、ねじれた姿へとあふれ出てしまった。しかしこれらの姿は自らに付与された命のきらめきに、執拗にしがみついていた。
このようにしてデモダンドは生まれた――その主の気まぐれな残酷さを吹きこまれた、おぞましいクリーチャー種族として。奇形で直視に耐えないデモダンドを、ティタンスポーン(ティタンの落とし子)と呼ぶ学者もいる。その不快な肉体にもかかわらず、全てのデモダンドは創造者であるティタンの力をわずかに保持している。その神に近い力はわずかだが、彼らを悪意ある存在というだけではなく恐ろしい存在にしている。多くのデーモン・ロードはデモダンドが引き起こした戦争を行い、彼らの急襲を失敗させ、ダメージを回復するのに何百年とは言わないが、何年もの時間を費やしている。死のティタンはその影響力を拡大し不死の忍耐強さでアビスをその手に収めようとする。そのとき突撃部隊、将軍、奴隷の引き立て人となるのがデモダンドである。彼らが好む囚人はクレリックやパラディン、その他の信者といった神とのつながりを持つ定命のものである。デモダンドは彼らに奴隷としての生を押し付ける前に、このような囚人を拷問にかけることにこの上ない喜びを見出す。労働力の確保を数えきれないほどの年月行なっていく間、デモダンドは奴隷の耳に汚らわしくも狡猾に囁く。囚人の信仰に疑問を投げかけ、最終的に侵食しようとするのである。屈服したものは死のティタンの1人の前で「罪を償い」、悪のティタンの「真なる」信仰を広めるものとして、彼らは新しい信者として元の世界に送り戻される。このような定命のものは死の信仰に熱心な秘密のカルトを形成することがあり、最初に彼らを捕らえたデモダンドによってしっかりと監視される。そうした、信仰心が壊れないであろう定命の奴隷のために、デモダンドは奴隷たちの肉体が最終的に至る結末に確実に至らせる。
デーモンを奴隷にするときには、デモダンドはこのような隠された動機を持たない。彼らはアビスの同類を、生まれながらの力と擬似呪文能力を利用できる強力な従者程度にしか見なしていないからだ。特にデモダンドはグラブレズゥやナルフェシュネーのような強力なデーモンを捕らえて、ボディガードあるいは名高い死の闘技場の剣闘士として隷属させることができれば、彼らをステータス・シンボルとして大切にする。シャギィ・デモダンドは自らやティタンの主に喜びを与えるべくインキュバスやサキュバスを捕らえるために、アビスの別の次元界に侵略を仕掛けることで知られる。
定命のものの魂におけるもっとも汚らわしい部分から作られたデーモンとは異なり、デモダンドはアビスの汚らわしい隅で子を産む。女性のデモダンドは卵から無数の子供を産み、自力で生きていけるようにする。デモダンドはいつもすさまじく飢えているため、生まれ落ちた時点で生き延びたもの達は、その兄弟姉妹とともに身の毛のよだつ種族の一員となる。彼らを養う親もなく食料の保証もないため、彼らは必ず第一の食事は同族の仲間となる。ティタンと他のデモダンドはともに、この生き残るための戦いは種族をより強くするために必要なものだと考えている。時には、1体以上の子供が生き残ることもある。このような場合、仲間のすさまじい空腹感から逃亡したためであることが多い。
彼らの主の傲慢な命令を喜々としてこなしているとき以外は、デモダンドは愚かな旅人を探し魂を消滅させるためにアビスをさまよう。自らの作成者の名の元に独自に行動することのできる場所である物質界を密かに歩き回るものもいる。このようなデモダンドは寺院や聖地を汚し、信仰の指導者を殺害し、コミュニティ全体を堕落させたりする。
彼らは主を神格のように信仰しているが、デモダンドは全てヘヴンから作成者を追放した神格への強い憎しみを注ぎ込まれている。この異端の熱狂により、彼らはいかなる形の信仰魔法にも特別な抵抗力を持ち、全てのデモダンドは自分たちの先祖の神殺しの能力の弱体化版を持つ。デモダンドは神とその従者とのつながりを阻害することに特別の喜びを抱き、極めてまれな状況においては、見込みのある相手をこのような攻撃の後で生かしておき、これは単なる敵の力ではなく、心を揺さぶる信仰なのだと知らしめることもある。
デモダンドのデーモンと宗教的信念への強い憎しみを上回る唯一の憎悪は、天上の種族に対する怒りである。神の力の器――他の何よりエンジェル――の中に、デモダンドは自分たちの作成目的である侮蔑と破壊の対象の具体化した姿全てを見出す。実際、善属性の来訪者の破壊を求める強力な個体や悪のカルトは、しばしばもっとも強力なデモダンドでさえ助力を願うための捧げ物は極めて少なくて良いと分かる。
この蛙の顔を持つ人型生物はぶくぶくに太り膨らんでおり、その黒曜石のような肌にあるたるみは、一対の大きな蝙蝠の羽根の下で伸ばされている。
シャギィ・デモダンド 脅威度18 Shaggy Demodand
防御
AC 32、接触17、立ちすくみ25(+15外皮、+7【敏】)
hp 262(25d10+125)
頑健 +19、
反応 +17、
意志 +18;信仰呪文に対して+4
DR 15/善および魔法;
完全耐性 [酸]、
毒;
抵抗 [火]10、[冷気]10;
SR 29
攻撃
移動速度 40フィート、
飛行50フィート(標準)
近接 +2アンホーリィ・モーニングスター=+36/+31/+26/+21(1d8+11)、
噛みつき=+32(2d6+4)、
爪=+32(1d6+4)または
噛みつき=+34(2d6+9)、
爪(×2)=+34(1d6+9)
特殊攻撃 信仰盗みの打撃(DC27)
一般データ
言語 共通語、天上語、奈落語
その他の特殊能力 異端の魂
生態
出現環境 気候問わず/地形問わず(奈落界アビス)
編成 単体または戦闘集団(シャギィ・デモダンド1、加えて
ターリィ・デモダンド2~5)
宝物 ×2(
+2アンホーリィ・モーニングスター、その他の宝物)
シャギィ・デモダンドはでっぷりと太った来訪者であり、デモダンド社会の最も高い地位を占める。この肥満した暴君は全長7フィート(約2.1m)で、その600ポンド(約272kg)の重量を支えることができる巨大な蝙蝠の翼を持つ。彼らの顔には横に長い蛙の目と無数の歯が生えた下あごがついている。
未だそのティタンの主に応じるが、シャギィ・デモダンドは彼ら同胞の主であり、死のティタンに助言者、秘密の使者、戦場の将軍として仕える。アビスにおいてはシャギィ・デモダンドは巨大な軍隊を指揮し、盛衰するアビス勢力の均衡としてデーモンの軍団に対して進軍させる。その姿のためにしばしば低い評価を受けるが、このデモダンドは知性もあり狡猾で、戦略と無慈悲な切り捨てを効果的に混ぜ合わせて戦場に挑む。
この筋骨たくましい蛙の頭をした人型生物はぼろぼろの肉体を蝙蝠の翼からぶら下げており、その肉体はねばねばした粘液に覆われている。
スライミィ・デモダンド 脅威度16 Slimy Demodand
防御
AC 30、接触13、立ちすくみ27(+11外皮、+3【敏】、+6鎧)
hp 241(21d10+126)
頑健 +18、
反応 +13、
意志 +14;信仰呪文に対して+4
DR 10/善および魔法;
完全耐性 [酸]、
毒;
抵抗 [火]10、[冷気]10;
SR 27
攻撃
移動速度 20フィート、
飛行40フィート(標準)
近接 噛みつき=+30(1d10+9、加えて2d6[酸])、
爪(×2)=+30(2d6+13/19~20、加えて2d6[酸]および“
つかみ”)
特殊攻撃 恐るべき爪、酸、信仰盗みの打撃(DC23)
一般データ
言語 共通語、天上語、奈落語
その他の特殊能力 異端の魂
生態
出現環境 気候問わず/地形問わず(奈落界アビス)
編成 単体または作業団(スライミィ・デモダンド2および
ターリィ・デモダンド2~5)
宝物 標準(高品質のブレストプレート、その他の宝物)
特殊能力
酸(超常)/Acid スライミィ・デモダンドは肉体攻撃に成功すると2d6ポイントの[酸]ダメージを与える、永遠にしみ出し続ける酸の層に覆われている。加えて、スライミィ・デモダンドに対して素手攻撃や肉体攻撃に成功した敵は、2d6ポイントの[酸]ダメージを被る。
恐るべき爪(変則)/Dread Claws スライミィ・デモダンドは、自らの爪を使用した全ての攻撃ロールに【筋力】ボーナスの1.5倍を加える。
スライミィ・デモダンドはシャギィ・デモダンドよりも筋肉が発達しているが、同胞のターリィ・デモダンドに比べればしなやかでも素早くもない。彼らも蛙のような頭を持つ。それはシャギィ・デモダンドのものに似ているが、いつも落ち着かない視線のためにずっと野蛮に見える。スライミィ・デモダンドは全長6フィート(約1.8m)で、重量は500ポンド(約227kg)。
スライミィ・デモダンドはデモダンドの軍隊の中で突撃兵の役を担うことが多い。しかし彼らは奴隷を集め捕らえておく任務を任されることも多い。スライミィ・デモダンドは精神を支配する魔法の能力を一切持たないが、脅迫と肉体的な危険によって奴隷を無理矢理従わせ大人しくさせることを好む。
このしなやかでざらざらとしたクリーチャーの真っ黒な肌は生きたタールのようだ。その長い腕の先にある爪からねばねばしたものがしみ出している。
ターリィ・デモダンド 脅威度13 Tarry Demodand
防御
AC 26、接触13、立ちすくみ23(+7外皮、+3【敏】、+6鎧)
hp 171(18d10+72)
頑健 +15、
反応 +11、
意志 +12;信仰呪文に対して+4
DR 10/善および魔法;
完全耐性 [酸]、
毒;
抵抗 [火]10、[冷気]10;
SR 24
攻撃
移動速度 40フィート、
飛行40フィート(標準)
近接 高品質のショート・ソード=+27/+22/+17/+12(1d6+9/19~20)、高品質のショート・ソード=+27/+22/+17(1d6+4/19~20)、
噛みつき=+22(1d8+4)
特殊攻撃 信仰盗みの打撃(DC22)、接着
一般データ
生態
出現環境 気候問わず/地形問わず(奈落界アビス)
編成 単体、2体、または巡視体(3~8)
宝物 標準(高品質のブレストプレート、高品質のショート・ソード×2、その他の宝物)
特殊能力
接着(変則)/Adhesion 作られた武器でターリィ・デモダンドに攻撃したクリーチャーはDC23の反応セーヴを行わねばならない。セーヴに失敗するとこのデモダンドに武器が張り付き、解放されるまでこの武器を使用して攻撃を行うことはできなくなる。張り付いた武器を解放するには組みつき判定に成功する必要がある。接着能力は武器落としの試みに対するCMDに+4の種族ボーナスを得る。
ターリィ・デモダンドは他のデモダンドに比べてしなやかでやせている。この差により、ターリィ・デモダンドは全て力強く機敏である。その蝙蝠のような羽根はタールに濡れていて使えないように見えるが、彼らは飛行することができる。ターリィ・デモダンドは全長7フィート(約2.1m)で、重量は400ポンド(約181kg)。
ターリィ・デモダンドはデモダンドの軍隊における歩兵である――戦場で育ったこの素早く恐るべきデモダンドは、デモダンド軍の大半を占める。彼ら自身がほとんどの来訪者より強力であることは、この種族が他のものと同じ程度に強い証である――ターリィ・デモダンド単体でも恐るべき相手であり、このクリーチャーが何体もいる場合は言うまでもない。ターリィ・デモダンドは相当の力があるが、彼らは軽い武器をそれぞれの手に1つずつ持つことを好む。ターリィ・デモダンドがより大きな兵器を使用することはほとんどなく、上位の存在に直接命令された場合のみである。彼らはより力あるデモダンドが持つ恐るべき爪を失っており、武器を持たないターリィ・デモダンドは可能な限り逃亡しようとし、武器を手に入れたときにのみ戻ってくる。
最終更新:2016年12月17日 10:10