なんなのよ! このおせち!!

桐乃「早いものでもう12月も中旬かー。 色々あったわよねぇ」
京介「なんだ、感慨にふけるなんてお前らしくないな」
桐乃「なによそれ! ……でも、そうね。 あたし、結構みんなに迷惑かけちゃったかなって」
京介「おいおい、ほんとにどうした」
桐乃「あたしね、あんた達と知り合ってからの毎日、本当に楽しかった。
    なんていうか……、やっと生きてる充実感を得られたっていうか……。
    前はこうじゃなかったわ。 アニメやエロゲーが好きなのに、趣味を共有できる人もいなくて……、でも、今は違う。
    みんながいるから、それが凄く楽しいの」
沙織「きりりん氏……」
桐乃「あんまり楽しいから、周りが見えなくなってあんたたちのこと振り回して……。
    自分のことしか考えてなかったわ……。 ごめんね」
桐乃「……今のこの瞬間って、大事にしないと、すぐに消えちゃうような気がするの。
    だから、言えるうちに言っておくわ。 みんな……、ありがとう」
沙織「きりりん氏……」グスッ
京介「まぁ、確かに迷惑な目にいっぱい遭わせられたなぁ」
沙織「キョ、京介氏!」
京介「でもさ、それひっくるめて楽しかったぜ。 お前が人生相談をしてくれなかったら、
    きっと俺はお前と冷え切った毎日を過ごしてた。 ……ありがとな」
沙織「わ、わたしもでござる!」
黒猫「わたしも」
桐乃「みんな……」ジーン

桐乃「そ、そのね。小説のアニメ化のお金も入ったし、日ごろのお返しの気持ちを込めてね、おせちを注文したの! みんなと新年を迎えたくて!」
桐乃「ちゃんと本格的なやつよ! バードカフェって言う横浜の人気レストランのね。グルーポンって言うクーポンサイトでね、21,000円のところを10,500円で売ってたの! ほら、これ!」
京介「おお、凄いじゃないか」
沙織「美味しそうでござるな。」
黒猫「立派なおせちね。 あなたにしてはいい心遣いだわ。」
京介「それじゃ、元旦は4人ででゆっくり過ごすか」

沙織「拙者のマンションでマッタリしましょうでござる。」
桐乃「そうっ? じゃあ、沙織の家におせちが届くようにしておくわ!」
京介「悪いな、沙織」
沙織「よいでござる。」
桐乃「でもみんな! その前に冬コミがあるんだからね! そっちも気合いれるわよー!」
京介「ああ、これからもよろしくな、桐乃」
桐乃「うん!」

そして、元旦

桐乃「あけましておめでとう~!」
京介たち「おめでとう~」
桐乃「いや~、沙織のマンションって、立派でいいわよねぇ」
京介「あんまり大騒ぎするなよ」
桐乃「正月は無礼講よ!」
京介「お前は一年中無礼講だろ……」
桐乃「そういえば、お腹すいたわね~」
沙織「今、お雑煮を作ってるところでござる~」
京介「沙織、注文したおせちは?」
沙織「昨日のうちに届く予定だったでござるが、未だに来ないでござる」
桐乃「おかしいわねぇ、そろそろ来るんじゃ――」

ピンポーン

桐乃「あ、きたきたっ。 は~い」
たったったっ がちゃ
京介「……まるで我が家のような応対だな」

桐乃「みんな~、届いたわよ~」
京介「腹減ったな、早く食おう」
黒猫「……あら?」
京介「どうした?」
黒猫「あ、いえ、通常の配達物として送られたのね。 こういうものはクール便だと思っていたのだけれど・・・」
沙織「確かにちょっと変でござるな……」
京介「まぁいいじゃないか。 さすが豪華な箱だなぁ! こりゃ、中を見るのが楽しみだ」
黒猫「そうね。 わたし料理も作るから、他人が作るおせちってすっごく興味わね。」
京介「わくわくするな」
桐乃「なにせ、横浜の人気レストランの厳選食材をふんだんに使った33品・3段・7寸の立派なおせちだからね!」
京介「早く開けてくれっ」
桐乃「うふふ、それじゃ開けるわよ~!」

ごそごそごそ ぱかっ

桐乃「じゃーん! 豪華謹製おせちの――――えっ…………?」
京介「……ん?」
沙織「これは…………」
黒猫「…………」
桐乃「え、えっと…………」アタフタ

桐乃「き、きっと2段目は凄いわよっ! ほらっ!」カパッ

京介たち「…………」

桐乃「3段目ならきっと!!」カパッ

沙織「あ、6Pチーズでござるな……」

桐乃「な……、なんなのよこのおせち!! 写真と全然違うじゃない!!」
京介「何かの間違いじゃないのか……? おせちというより、食い残しの弁当にしか見えないんだが……」
沙織「な、なんだか、酸っぱい匂いがするでござる」
黒猫「……腐っているわ。 食べるのは危険よ」
沙織「箱の中身……スッカスカでござるな……。 黒豆が1,2,3……14粒。」
黒猫「貝の中のアワビも1切れしかないわ」
桐乃「なによこの生ハム……、完全に乾いててカピカピじゃない」
京介「この6Pチーズはなんだ……。 笑えばいいのか……?」
黒猫「違うわ、これは6Pではなく8Pチーズ」
京介「どっちでもいいよ……」
沙織「4人前のおせちにハム2枚にチーズ1切れってどういうことでござろうか…………」
京介「スカスカだから配達の時に揺れて、中身が更に酷いことになってるな。 まるで残飯だ……」

桐乃「…………」
京介「あっ! い、いや……、ちょっと大袈裟に言いすぎたな!」
沙織「え、あっ! そ、そうでござるな! よく見たら美味しそうかもしれぬでござる!」
黒猫「そ、そうね! おせちなのに重箱の底が見えるところなんて前衛的なデザインよね――」
桐乃「……っ!」

京介(ば、ばかやろう! お前のフォローは嫌味にしか聞こえないんだよ!)
黒猫(怒らないで頂戴……、わたしもよかれと思って……つい…………)


京介「それじゃ~、いただこうか! 桐乃が俺たちのために用意してくれた、心のこもったおせちだもんな!」
黒猫「いや、だから腐って――むぐっ」ギュ
沙織「いただこうではござらんか!(黒猫さん、空気読んで!)」
桐乃「いいわよ……、無理しなくて……。 あんたの言うとおりお腹壊すわ……」
京介「そ、そんなことないさ! うわぁ~、この数の子おいしそうだなぁ~!」

 ひょい ぱくっ

京介「うん! 味がしっかり染み込んで――――うっ! おげぇ!」

 ぺっ!

京介「げほっ! げほっ! な、なんだこの味……! 塩の塊を食ったみたいだ……」
沙織「こ、この数の子、塩抜きしてないでござるな……。 皮がついたままでござる…………」
京介「い、いやぁ! これだけたくさん料理があったら外れもあるんじゃねえか! なにせ33品目だっけ」
黒猫「今数えたら25品目しかないのだけれど・・・」
京介「こ、こまけぇこたぁいいんだよ!」
黒猫「このサトイモをいただこうかしら」

 ぱくっ がりっ

黒猫「うっ、うわあ、おいしい………………」ウッ
黒猫(硬い! サトイモなのに硬いですよこれ!)

京介(吐くな! 飲み込め!)

ごくん

黒猫「さ、さすが本格おせちのサトイモね! 普段食べてるものとは出来が違うわ!」
京介(だから、その嫌味やめろ!)
黒猫(そんなつもりじゃないのだけれど……)

桐乃「もういいわよ…………」
沙織「わ、わたしは、このローストビーフをいただくでござる!」

ぱくっ

沙織「うぉ、おいしい……なぁ……アハハ…………」ウウッ
沙織(どうしよう、吐き出したい……。 半分生な上に、本当に腐ってるよこれ……)
京介(沙織、後で胃腸薬を買ってきてやるから、耐えてくれ!)

ごくん

沙織「あ~、お正月から幸せな気分です~」アハハ…
京介「そうでしょう! いや~、楽しいなぁ!」アハハ…

ドンッ!

桐乃「もういいって言ってるでしょ!!!」

シーン……

沙織「き、きりりん氏……」
桐乃「ごめんね……、せっかくのお正月に水を差しちゃって……」グスッ
京介「お前は悪くないぞ! 桐乃!」
沙織「きりりん氏のお気持ちはしっかり伝わったでござるよ!」
黒猫「そ、そうよ! 悪いのは、こんなゴミ汚せちを送りつけてきたバード○フェよ!」
桐乃「ゴミ汚せち…………」
京介(黒猫……、後で真剣な話がある…………)
黒猫(えっ!? 何かまずいこと言ったかしら!?)

桐乃「ごめんね……、ほんとゴメン…………」ポロポロポロ
京介「桐乃…………」
黒猫「……気にしなくていい」
桐乃「……あんた?」

ビリビリ ひょい ぱくっ

黒猫「この8Pチーズは中々イケるわね」モグモグ
桐乃「…………っ!?」
桐乃「うわああああああああああああああん!!!」ダッダッダッダッ
京介「お、おい桐乃! 桐乃ーーーーー!!!」

ガチャ バタンッ

京介「黒猫おおおおおおおおおおお!!!!」
黒猫「……何かまずかったかしら?」
沙織「8Pチーズしか、まともなものがなかったでござる…………」

シーン……

京介「……どうすんだ、このゴミおせち…………」

ぶるるる ぶるるる

シーン……

沙織「……ストIVでもやるでござるか?」
京介「いいよ……、俺も帰る…………」
沙織「う……、さっきのローストビーフのせいでお腹が…………」ゴロゴロ

おわり

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最終更新:2011年01月12日 21:29