「カナダの日本人から日系カナダ人へ」

庭山 雄吉
東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程


 本報告では、はじめに日系カナダ人の歴史について概観し、第二次世界大戦後の日系カナダ人の諸活動に焦点をあてる。「カナダの日本人」(Japanese in Canada)から「日系カナダ人」(Japanese Canadian)へと変容する過程を分析し、いつ、どのようにしてJapanese Canadianという表記が登場したのかについて説明する。次に、Nikkeiという言葉がいつ頃から、どのような背景で使用されはじめたのか、またNikkeiという言葉がどのような役割を果たしているのかを、主に日系カナダ人の戦後の活動を事例として説明する。戦後、抑留キャンプ地から解放された日系カナダ人は、カナダ政府による政策によりカナダ各地へと分散させられた。生活の再建を築いた日系カナダ人は、1977年の「移住百年祭」を契機に1980年代からは戦時中の強制移住をめぐる補償運動を展開した。地理的に分散した日系カナダ人を結集させ、かつ、異なる経験を持つ各世代間の融合をはかるためNikkeiという言葉が象徴的に用いられたと考えられる。

最終更新:2008年02月08日 05:45