ゆえ吉の悩み 前編



学園祭二日目。

一番の親友であるのどかの好きなネギ先生に恋した私。

のどかに対しとても申し訳なく、親友を裏切ってしまったと思い、

罪悪感でいっぱいになっていた私を、のどかは許してくれたです…。

一緒に頑張ろうって、言ってくれたです…。

私はとても、うれしかったです…。

でも、私は本当にネギ先生に恋してもいい資格はあるのでしょうか…。

一番の親友の好きな人を、横からとっていってもいいのでしょうか…。

私は、私は…

いったい、どうすればいいのでしょう…。



「バカレンジャーの皆さん、成績は大変いいです!このまま頑張ってください!」

ネギ先生の声に、ふと我に返った。

あぁ、今、居残りさんテスト中でしたっけ…。

…全然聞いてませんでした。我ながらなんという無駄集中力…。

次々にテスト用紙が返される。夕映の番が回ってきた。

「夕映さんもすばらしいです!」

「いえ、今回は少し真面目に勉強しようかと…」

先生に褒められ、頬を赤く染めて、口をばってんにする夕映。

…努力したかいがあったです…。もうちょっと頑張るのも悪くないですね…。

でも、ほどほどにしておかねば、バカレンジャーでいられなくなってしまうです…。

そしたら…ネギ先生と…居られなく…

『一緒にがんばろー、ゆえー。』

な、ななな何を考えてるです私!!親友ののどかに黙ってぬぬ抜け駆けなど!!!

…考えちゃ、ダメ、ですのに…。

「明日菜さんは…相変わらずなので…」

「頑張るわよ!!悪かったわねぇ…」

あっっ…明日菜さんもネギ先生のコト好きなのでしょうか…。困ったです…。

明日菜さんに相談しようと思いましたのに…。

夕映がそんな事を考えてるうちに、居残り授業は終わった。

「楓…。何をしている。早く帰るぞ。」

「あいあい♪分かったでござるよ、真名。」

「まき絵~♪はよ帰ろ~」

「うん。もちょっと待って、亜子。く~ふぇも帰らない?」

「おぉ、帰るアルヨ♪はやく復習しなきゃならんアル。」

「お~、さすがく~ふぇ。復習するって…。」

「頑張りややな~♪ほなかえろか」

(あれ?えと、ホントはそっちの復習じゃないアルが…)ごにょごにょ…

「ゆえー、迎えにきたよー。」

「あ、のどか…。ハルナはどうしたですか…?」

「なんか漫研のほうで会議があるらしくて、すぐ終わらせるから待っててーって…。」

「そうですか…。じゃあ待っときましょうです。」
(漫研の会議って、一体どのようなコトを…?)



「あそこの階段に座っておこうよー。」

夕焼けが窓から沁みこみ、周りが紅く照らされる。

窓の紅い影が映る階段に腰掛けると、のどかが口を開いた。

「補習どうだった?いつもどういうコトするの?」

「あ、あぁ…。普通のテストです。今回はなかなかの点が取れて、ネギ先生に褒められて…って、ぁっ…」

「よかったね~、ゆえ。ゆえはもともと頭良いんだから、頑張ればもっと伸びるよ~絶対」

微笑んでのどかは言った。夕陽に照らされたため、のどかの顔に影が映る。

一瞬、よくわかんなくなってしまった。まるで光が直接目に入ったみたいだ。

夕映は、勇気を出して、のどかに聞いてみた。

「のっ、のどかっ!!」

「?なにー?ゆえ」

一瞬ためらった後、声を振り絞って、言った。

「のどかは…ネギ先生のコト…その、好きですか?」

「ふっ、ふえぇ!?な、なに?どうしたのーゆえ、いきなり…」

のどかはいきなりの質もんに戸惑う。

しかし夕映は、そのことを知らずに、思うままに告げた。

「私もネギ先生は好き…、なんですけど、ネギ先生が好きだと自分自身ではっきりと気づいたのはのどかが先なのですよね?」

「…そ、そうだけど…。ゆえ、どうしたの…?」

「のどか…、あなたは、本当にネギ先生のコトが好きなのですか?」

ズン、と突き刺されていくような一言。

「…え…?」

のどかはどうすればいいのか、どう告げればいいのか、わからなかった。

「のどかには嫉妬心がないのですか?ネギ先生を他の誰かに取られたくない、とか、そのような普通の女子中学生にあるような、ココロが」

追い詰めていく。答えが知りたかったから…。

「確かにのどかが男性が嫌いな事は知っていたです。でも、同じ男性でもネギ先生のような子供だったらアリなのですか!?そもそも。好きな人に嫉妬心がないのはおかしいです…。」

「…ゆえ…?」

胸が熱くなる。行き場のない感情。それが私を加速していく。

「のどかの恋心は…その程度だったのですか…?」

「!!!?」

ぽたっ…。

前髪に隠れる大きな瞳…。

その瞳は…涙で、濡れていた…。

「あっ…!!」

その涙で、夕映は我にかえった。

「ゆえ…ちがうよ…私…そんなんじゃ…っく…」

何かが壊れるような、音がした。

私は、なんてことを…

一番の親友に対し、なんてひどいことを…?

私は何様なのですか…?同じ人を好きになっただけなのに…なにを偉そうに…

親友を、傷つけているのですか…?

「すみませんですっ!!のどか!!」

「ゆっ、ゆえ!!?」

気がつくと、私は駆けだしていた。
最終更新:2009年04月06日 16:48