ゆえ吉の悩み 後編



無我夢中で走っていた。

前なんて見てなかった。歪んで見える目の前が嫌いだった。

何かにぶつかっても、顔を見ずに謝って走った。

ぶつかった相手が私の涙を見ていたって、気にも留めなかった。

…どんな顔して謝ればいいのですか…!?

そのことしか頭になかった。

しかしぶつかられた相手は、ぶつかってきた人が夕映だとすぐに分かった。

「…夕映殿…?」




気がつけば屋上にいた。

そのまま屋上の端っこまで移動して、そのままぺたんと座り込んだ。

誰も居ない屋上、だった…。

ふわりと風が吹き込んで、フェンス越しの夕映の長い髪をほんのちょっと揺らす。

「なんで、私はそんな…親友に対しひどいことを…、言ったですか…?」

答えは帰ってくることなく、風が虚しく夕映の髪を揺らす。

「…っ、のどか…、ごめんなさいです…、ひっく…のどかぁ…っ」

「その言葉、そのままのどか殿に伝えてみればどうでござるかなぁ??」

ふと、後ろから声がした。

「!!?」

がばっと後ろを振り返ると、そこには楓がいた。

「かっ、楓さん…!?どうして…?」

夕映は、驚きをかくせなかった。…いろんな意味で。

「さっき、夕映殿とぶつかってしまったでござる。なんだか様子がおかしいと思った故、気になって来てみたでござるが…」

「それはそうとして…!なんでフェンスの上にいるのですかー!!?」

楓は、なぜか夕映の後ろ、つまり…

フェンスのうえで、立っていた。しかも風が吹いているのに、揺れていない。

「いや、追いつくには窓から飛ぶのが一番と思ってのでござるよ♪」

「楓さん…(‐△‐)((まるで忍者です…。)」

「ん?何のことでござるかな~?拙者、そのような者ではないでござる♪」

「な、何で人の心が読めるのですかー!!」

一通り会話した後、楓が本題に突入した。

「夕映殿は…何をそんなに落ちこんでいるのでござるか?」

単刀直入に問われた。

「…っ」

苦しそうに顔をしかめて、どう答えればいいのか分からず、うつむいた。

「言いたくなければ、無理に言う必要はないでござるよ…。誰にだって、事情はあるでござるから…」

「事情」

夕映は、ハッとした。

のどかにも、「事情」があったハズではないのか、と。

なのに私は、向こうの事情もろくに聞かないで、自分の感情を出し切って…

…のどかは、どんな顔をしてたです…?

気づくと、自分の瞳から、涙があふれでた。

「ひっく…うぅ…のどか…、のどかぁ…っ」

楓は、夕映を抱き寄せた。




「夕映殿、落ち着いたでござるか…?」

夕映の頭を撫でつつ、楓が問う。

小さな頭が、楓の胸の中でこくん、と小さく頷いた。

そして夕映は、先程の出来事を、全て楓に打ち明けた。


「そうでござるか…。う~む…」

「私はのどかに、なんて謝ればいいのか、わからないのです…」

すると楓は、ぽん、と思い出すかのように、掌に拳をのせて、

「先程夕映殿は、のどか殿に謝っていたでござろう?
自分の気持ちを真っ直ぐに伝えれば、のどか殿にもしかと伝わるはずでござるよ」

楓の口から出たのは、案外普通の答えだった。

「でっ、でも…、のどかはちゃんと私を許して-」

「のどか殿がそのような酷い者ではないことは、夕映殿が一番知っているでござろう?」

優しく夕映をみつめた。そして、強引に、

夕映をお姫様だっこ?して、

「ほれほれ、やってみなければ分からないでござるよ♪いくでござる」

「わ~っ!!楓さん、まだ心の準備が出来て…!?ていうか、どこから行こうとしてるですかー!!そこから行くと理論上落ちそうな予感がー!!!ってあれ、落ちない…?あああなたやっぱり忍者ですーーー!!!」

叫び声は虚しく?聞こえなくなっていた…。



玄関前、なぜか真名とのどかがいた。

「楓…貴様、どこをうろついていた…?」

真名の声は、一段と低くなっていた。

「いや~、まぁ、気にしたら負けでござる♪」

のほほんと返す楓。

そんな二人をよそに、のどかと夕映はチラチラと見つめあっていた。

どうやらまだ心の準備が出来てないのだろう。

「どうした宮崎、綾瀬に言う事があるだろう」

「夕映殿、自分の口で言うでござる」

「…!!!」

すると、奇跡か偶然か、

「ゆえ、ごめんね!!!」

「のどか、ごめんなさいです!!!」

「私、ゆえにちゃんと気持ちを伝えられなくて…!!!」

「のどかの事情も考えず、私…!!!」

二人「あれ!?」

「こんなこともあるんだな。息ピッタリに、二人謝りあうとはな…」

「心が繋がっている証拠でござるな♪」

「まさか楓が綾瀬の相談にのっていたこともな」

「そういう真名こそ、のどか殿の相談にのっていたのでござろう?」

ぷっ、と吹き出し、二人笑いあった。


「のどかには悪いことをしたとおもってるです…。のどかの気持ちや事情も知らずに…。」

「そんなことないよ、ゆえ。私も気持ちをちゃんと伝えられなかったもん…。
でもね、ゆえ、私はネギ先生が好きなのはホントの気持ちなの…。嘘なんかじゃないの。」

「のどか…。…私も、ネギ先生が好きです。でも、恋のライバルでもあるのどかともずっと、親友でいたいです…。わがまま、でしょうか…?」

「ううん…そんなことない…。一緒にがんばろー、夕映。」

「あーっ!!二人とも、そんなとこにいたの!!?」

玄関内に響く、叫び声。その声の主は、腕いっぱいに書類を抱えている。

「あっ、ハルナ!!」

「もー、どこ行ってたの?探したのよ!!?ゴメン、これもってくれる?図書館島の書類なの!!」

「ふぉぉ!!?た、大変です!!今すぐ持ちますです!!」

「ありがとうございます、龍宮さん、長瀬さん…って、あれ?いない…」

いつの間にか、真名と楓の姿は消えていた。

「のどかー!!なにしてんの!!?はやく持ってちょうだい!!」

「こここぼれる!!崩れ落ちるですー!!!」

「あー!!ごめんねー!ハルナ、夕映ー!!!」


「一件落着、だな。」

「いや~、ヒヤヒヤしたでござる」

「二人」の陰の功労者は、やれやれと息をついた。




あとがき***

夕映のどか、龍にん入り、な話ですね。
ホムペ創立後さっそくの前後変は…疲れたですね…。
次はコメディ的なのかいてみたいです♪なんでもありです♪
私は龍にん一筋ですが、ね☆
4月1日


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最終更新:2009年04月07日 15:01