「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki
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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki
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連載 - 次世代の子供達-44g
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人狼
「汝は人狼なりや?(Are You a Werewolf?)」と言う名称でアメリカから発売されたパーティーゲームが一番有名であろうか
元となった遊戯や同種のパーティーゲーム、オンラインプレイできるゲームと多々あるが、総じて「人狼ゲーム」等とも呼ばれる
簡単に言えば、参加者は「村人」側と「人狼」側にわかれ、人狼は村人に気づかれぬよう潜み続け、毎晩一人を食らう。村人は潜んでいる人狼を見つけ出し、全て処刑しきる。人狼を全て処刑すれば村人の勝利。村人の数を自分達と同じ数まで減らせば人狼の勝利、と言うルールだ
細かい選択ルールやら追加役職やらもろもろある訳だが、簡単に言えばそんなところである
村人側に要求されるのは推理力、人外側に要求されるのは偽り出し抜く力
どうあがいても、頭を使うゲームである
参加人数によってはガッツリと運の要素も絡んでくるが、この人数であれば推理力の方が優先される
「ルールは、だいたいこんなとこ。どう、できそう?」
「なんだったら、最初は観戦するっす?それで基本的な流れはわかると思うっすけど」
「いや、だいたいはわかったし、とりあえずやってみる。これ、多分経験した方が早そうだし」
優と憐に、そう答える早渡
そう、彼の巻によれば、恐らくこの遊戯、経験を摘んだほうが有利になりやすい
大体のセオリーがわかってきた方が、推理がやりやすい為だ……もちろん、そのセオリー通りに動かない相手もいる為、油断はできないが
「坊主も参加するんだったら、12人村……狐も入るな」
鬼灯のその言葉に、早渡は一瞬、反応しかける
……「狐」
そう、今回、彼も参加するこの人狼と言うゲームの役職に狐……妖狐等と呼ばれる役職・陣営も存在するのだ
当然、あの「狐」とは関わりがない。関わりはない、が、やはり「狐」と言う単語には、一瞬反応しかける
早渡のそんな様子に「先生」がにこりと笑って提案する
「狐と言う名称に何か感じるのであれば、別の呼び方にするかい?ゲームによっては呼び名違うしね。ハムスター人間とk「狐でお願いします」おや、そうかい?」
ハムスター人間は流石に嫌らしい
冗談みたいな名称だが、ルールによっては「妖狐」のポジションを「ハムスター人間」と呼ぶのだ
「初心者がうっかり狐引き当てると厳しいかもしれませんね」
「そん時はそん時だろ。頑張れ、って事で」
龍哉は、万が一早渡が狐の役職を引いてしまった場合を心配してくれているようだが、直斗はあまり気にしている様子はない
「経験するのが一番」と言うスタンスなのだろう
実際、人狼は「こう言うように動こう」と思っても、いざやってみると思った通りにいかない、と言う事が多々ある。まずは経験するのが一番なのだ。どのような役職であれ
「じゃ、カード配るぞ。配役は人狼二人、狂人一人、狐一人。占い・霊能・狩人それぞれ一人ずつ。残りは全員村人。役職欠けはなし。素村の騙りは最終日以外禁止。リアル狂人行為禁止。晃とかなえは契約都市伝説から助言もらうのも禁止」
役職が書かれたカードが配られていく
自分の元に配られたカードを他の人に見せないように確認。自分の役職を把握し、ゲーム開始だ
まずは「夜時間」と呼ばれる時間に、人狼は襲う相手を、村人サイドの特殊役職は能力を発動する相手を宣言する……のだが、基本、初日、人狼は襲う相手を選べない(初日は俗に「初日犠牲者」「身代わり君」等と呼ばれる者が犠牲となる事が決まっている、もしくは誰も襲われない為)。そこから、「狩人」と呼ばれる人狼の襲撃から毎晩一人だけ村人を守れる役職もまた、初日は能力を発動できない
よって、初日に能力を発動できるのは「占い師」のみだ。村人一人を夜に占い、その人物が村人か人狼かを見抜くと言う、村人にとって非常に重要となる役職。「占い師」を引いた者は、GMに誰を占うかを指差して指示。GMは、その人物が「村人」であるか「人狼」であるかを「占い師」へと伝えた
それが終わったら、次は人狼二人がそれぞれ、仲間を確認。行動方針は限られた時間内に筆談で行う
……なお、ネットのようなオンライン上ではなく対面式でゲームをやっている為、顔を上げる等の気配で誰が特殊役職を引いたかバレないよう、それぞれの座っている席は放していた。それでも気配を察知してしまうような者もこの場にはいる為、ポチが皆の足元をうろちょろして気をそらしている。ポチはそれくらいは指示されれば実行できる賢い子犬なのだ。疲れたら遠慮なく眠るのが欠点だが
さて、それらの確認が終われば、まずは最初の「昼時間」が開始される
「……それじゃあ。夜が明ける。うさんくさい白衣が死体で発見された」
人狼を見抜くゲームが、このようにGMの合図でスタートした
「占い師CO(カミングアウト)、占い結果、「先生」白!」
「俺が占い師だ!占った対象は「先生」、結果、村人!」
昼時間開始と同時に、占い師が即座に結果を伝える
これはよくある事だ
一人しかいないはずの占い師が二人出るのも、人狼においてはよくある事だ
ここまではいい。よくある事だから
ただ
「あれ?」
「……初日、犠牲者なしだったはず」
そう
「昼時間」開始時、GMを担当している鬼灯はこう言った。「白衣が死体で発見された」と
事実、「先生」は死亡者席の方に移動して「解せぬ」と言う顔をしていた
「初日犠牲者なし」と言うルールにしていた以上、初日は死者なしのはず
それなのに、死者が出た
……この事実が示すことは、一つ
「…もしかして、「先生」、妖狐引いた?」
神子がぼそり、そう口にする
そう、今回のルールにて採用されていた第三勢力「妖狐」
その能力は、人狼に襲われても死ぬ事がないと言うもの。ただし、占い師に占われてしまった場合、問答無用で死亡する。通称「呪殺」等と呼ばれるものだ
そして、先程「占い師」を名乗った二人は、どちらが本物かはさておきどちらも「先生」を占ったと宣言
……すなわち
「……初日呪殺」
「え、それってありえるのか?」
ぽそ、と呟いた晃の言葉に思わず問いかける早渡
ありえる、と晃はそのまま頷いた
「実際、「先生」死亡者席の方に移動してるし……そういう事なんでしょうね」
「これで、占い師の結果が割れてりゃ、その場で偽物がわかったんだがな」
優と遥の言葉が続く
そう、先程占い師を名乗った二人は、どちらも「先生」を占ったと宣言したのだ
「先生」が妖狐であり、かつ初日犠牲者なしのはずなのに死体になっている以上、占い師が「先生」を占ったのは確実
ここで、本物ではない占い師が「先生」以外を占ったと宣言していれば、そちらは偽物だと確定されるのだ
今回の場合、どちらも「先生」を占ったと宣言した為、偽物を見抜く判断材料にはならないが
「俺は、「先生」が敵サイドだったら厄介だと思って占ったけど」
「俺も。「先生」、こういうゲーム強そうだな、と」
占い師を名乗ったのは、直斗と早渡
それぞれの「先生」を占った理由はこの通りだ
死亡者席の「先生」が二人の言い分を引いて「解せぬ」顔を続行している
「まぁ、妖狐がもういないってのは安心できていいっすね。おうどん(妖狐陣営勝利)の心配しなくてすむっすから」
どちらが真占いか、と言うことはさておき、妖狐陣営の勝利がなくなった事実を喜ぶ憐
村人側としても人狼側としても、妖狐陣営勝利は悔しい事態なので、先に妖狐が始末できたのは嬉しい事なのだ。妖狐陣営からしてみれば悔しいだろうが
「とりあえず、白進行なんだし、霊能出てもいいな。霊能誰だ?」
灰人が、「霊能」に名乗り出るように促した
すると
「あ、霊能私」
「俺だ、霊能」
神子と慶次の声が、被った
両者とも、む、と言う表情で互いを見る
「占い二人に霊能二人……」
「これは、どちらかに狼がいますね」
かなえの言葉に、龍哉がそう続けた
妖狐がいない以上、役職を騙っているのは狂人と人狼しかいない
占いか霊能の中に、人外が紛れ込んでいる、と言うことになる
「占い真狂の霊能真狼か……?」
「狂人潜伏でどっちも人狼の騙りとか」
「そんな大胆な戦法とってくる人狼いたら負けでいいわよ。狂人は人狼と相談できないんだし、まず、騙りで出てると見ていいでしょ」
それぞれ、推理し、それを口に出す
こうして、村人は隠れている人狼を見つけ出し、人狼は村人逹を巧みに混乱させて勝利を狙うのだ
「占いと霊能の真偽は一旦、置いておいた方がいいんじゃねぇのか?」
「そうっすね。今日はグレランにして、明日以降占いの真偽詰めていく感じにしたいっすね」
占い師も霊能も、まだどちらが真であるか決めかねる場面
そんな時、誰を吊り上げるべきかとなった場合、よくとられるのが「占いから白であると言われている者以外」…つまりはグレーの者から適当に投票すると言う手段。「グレラン」等と呼ばれるやり方だ
ゲームが進んでいくとグレランと言う行為は危険だが、序盤はこうするのが一番だ
「グレランって、どういう基準で投票すればいいんだ?」
グレーゾーンの中から誰か適当に、となっても、完全初心者の早渡はどう判断して投票すれば良いのかピンと来ない
なので、正直に尋ねてみた
そうすると
「直感でしょうか」
と、答えたのが龍哉
「気に食わないやつ」
と答えたのが遥
「発言省みて怪しいと思ったやつ」
と、答えたのが慶次
遥の回答は「ちょっと待て」と突っ込むものとしておいておくとして、ようは最初の投票なんて、よほど失言していない限りは勘だ
他にもステルス吊りやら多弁吊りやら、人によってグレランの投票基準は様々である。ひどい場合だと「隣だから」とかそんな理由で投票する者もいる
「と、言うか。「狩人」が誰かわからない以上、「狩人」吊る危険性あるんじゃ」
「その時はその時よ」
そう、特殊役職の中、唯一、誰も名乗り出ていない「狩人」
人狼の襲撃から誰か一人を護衛して護るこの役職は、通常、積極的に名乗り出る役職ではない
正体がバレた瞬間、自らを護衛できない「狩人」はそのまま狼に喰われるパターンが多いからだ
「…さて、昼時間終了。投票だ」
鬼灯がそう宣言する
投票相手は紙に名前を書いて、GMに手渡す形で行った
その結果、一日目、吊られたのは
「優だな」
「あらー……まぁ、仕方ないわね」
票がバラけた中、唯一2票もらった優が脱落
優はそのまま死亡者席に移動した
そのまま、何やら「先生」とぼそぼそと話し出す。まだゲームを続けている面子には聞こえない程度の声量なので聞こえることはない
昼時間、終了
ーーー夜時間へと突入する
「占い師」が占い先を指定。「狩人」が護衛先を指定。ついでに「狩人」であることの証明に使う「狩人日記」を書いておく
そうしてから、人狼が襲撃先を指定。簡単な相談
二度目の夜時間が終わり、二度目の昼時間へと突入する
二度目の昼時間、昨晩の人狼の襲撃による死者は
「え?誰も死んでいない?」
死亡者席へと移動した者は誰もいない
人狼は「襲撃しない」と言う行動をとることはできない為、こうして死者がいない、と言うことは
「護衛成功の犠牲者なしか?」
「あぁ、そうだ」
灰人の質問に、鬼灯がそう答えた
そう、「狩人」の護衛先と人狼の襲撃先が一致。犠牲者が出なかったのだ
村人は誰も犠牲とならなかった為、村人に有利な状況となる
「狩人誰かわからないけど、よくやった!占い結果、かなえ、人狼!」
「吊り数余裕ができるんだったか、護衛成功すると。えーと、占い先は荒神……あ、憐の方。占い結果村人」
…………
「ん?」
「え、わ、私?」
直斗が「人狼だ」と示した相手は、かなえ
かなえはおたおたとした表情を浮かべる
「かなえ占った理由は、前の昼時間で発言少ない気がしたから。ステルスかと思って」
「……こっちは、結構喋ってるな、と思って占い先を決めた」
直斗、早渡、それぞれ占った理由も述べる
発言数が少ない、多い。どちらも疑われる事があるのだから、人狼というものは発言のさじ加減も難しいのだ
「占い先どっちも了解っすー。んー、かなっちが黒……」
「…ここは、かなえ吊って、霊能に結果見てもらうのが早いか?」
憐、灰人、それぞれがそう口にした
直斗と早渡、どちらが真の占いかはまだ判断しきれないが、かなえを吊って霊能に村人だったか人狼だったか判断してもらう、と言うことだ
そうする事で。直斗が真であるかどうか、推理の材料となる
「と言うか、昨晩の結果は……」
「「優は村人」」
「だよな」
なお、昨晩グレランで吊られた優の結果はこの通りである
うんうん、と死亡者席に座る優が霊能二人が口にした結果に頷いている
「あー。でも。そうやって色を見る、となると。霊能が人狼に襲われるんじゃないか?」
「……それ、ない、と思う」
早渡の懸念に、晃がぽそ、と反論した
「……この状況、人狼が霊能襲うの、危険。自白になりかねない」
「自白?」
「今、霊能は二人名乗り出てるでしょ?この状況で片方の霊能を食べちゃうと、生き残った方が人狼だって言ってるようなものになるのよ」
神子の説明に、あぁ、と納得する早渡
なるほど、霊能のどちらかは狂人、もしくは人狼
本物の霊能を食べてしまうと、もう一方は「偽物」と言う事になる
霊能の片方が狂人であったのだとしても、人狼がどちらかを襲って食ってしまえば疑いがむく可能性は否定できない
……もちろん、そうした「セオリー」を逆手に取った作戦もあるのだが
「ちなみに、かなえさん。実は狩人だった、と言うような宣言はありますか?」
「えっと、その……ない、です」
龍哉に問われ、おろおろしながらかなえはそう答えた
「護衛成功で余裕あるし、今日はかなえ吊りで霊能に結果見てもらおうぜ」
「……まぁ、その手が一番だよな」
他、特に誰か異論を唱えることもなく
昼時間二回目。かなえ吊りに決定
三回目の夜時間は、先程の寄る時間と同じ流れで進んでいき
……三回目の昼時間
「晃は死体で発見された」
「………むぅ」
晃が人狼に襲撃され、死亡者席に移動
みなの周りをうろちょろするのに疲れたのか、ポチもいつの間にか優の膝の上に移動していた
「先生」がそんなポチに指先でちょっかいを出して、前足でべっち、と叩かれている
「「霊能結果、かなえは人狼!」」
犠牲者発表の後、神子と慶次が同時に霊能結果を宣言
結果は、どちらもかなえは人狼だった、と言うもの
そして、占いの結果だが
「占い結果、早渡は村人!潜伏人狼は見つけたし、確実に人狼いそうなとこから占った。多分、早渡は狂人で霊能のどっちかだな」
「占い結果、獄門寺は村人……俺視点だとまだ狼見つけてなかったから、グレーから占ったんだが……」
このようにわかれた
霊能、占い、双方の結果を合わせて早渡が偽……とは、まだ言い切れない
なにせ、占いのふりをした狂人が騙った結果が、たまたま人狼にヒット、ということもありえるからだ
時折、本物の占い並の仕事をする狂人がいるから困る
さて、この日は誰を吊るか、話し合いが始まるわけだが
「はーい。霊能ロラを提案するっすー」
と、ぴ!と憐が宣言した
霊能ロラ。霊能ローラー。すなわち、霊能を名乗る者を順番に全員吊るす。そういう戦法だ
長所は、人外が隠れている場合確実に一人は吊れる事。欠点は、本物の霊能も吊ってしまう事
「え、どうして霊能を?人外が隠れてる可能性なら、占いでも……」
「霊能はー、もうお仕事終了してるっすからー」
疑問を口にした早渡に、憐はへらりとした表情でそう答えた
憐のその言葉に、慶次がはっとした表情になる
「あー……あぁ、そうか。確かに役割終了してるな。人狼を一人見つけ出してっから」
霊能の能力は、吊った相手が村人であったか人狼であったかを見抜くこと
かなえが人狼であった、と言う結果を見つけ出した霊能は、もう仕事が終わっているのだ
なにせ、残る人狼はあと一人。その人狼を吊り上げた時点で村の勝利が確定し、ゲーム終了である
もしも、かなえが村人だったのか狼だったのか、霊能二人の結果が割れていた場合はまた別の考え方をしなければいけないのだが、霊能二人の結果は「かなえは人狼」で同じだった
「役職欠けなしっすから、占いが真狼で霊能が狂狼って心配はないっすしね。遠慮なくローラーできるっす」
「役職欠けなしだったとしても、そんな配役の村あったら嫌だわ。ない訳じゃないけど」
……他、特に有益な意見は出ない
早渡は何やら思考を巡らせ、何か言いたそうにしているがうまく案が出ないらしい
神子は「霊能の仕事終わったし。それが妥当ね」と言う態度。慶次も同じく
………昼時間終了
霊能のどちらを先に吊るか、と言う話にはならなかった為、それぞれが霊能どちらかに投票
結果
「慶次吊り………村に人狼はいなくなった。村人側の勝利だ」
「あー……こっち先に吊られたか」
仕方ねぇわ、と言う顔の慶次
勝利した村人サイドの面子は、よっしゃあ!と嬉しそうだ
「負けたー……なるほど、こういう感じでやるのか」
「……狂人、そっちか」
慶次の言葉に、ぱたん、と突っ伏した早渡がそうだよ、と答えた
狂人は人狼陣営勝利が勝利条件の為、村人側が勝利した場合、生き残っていても敗北となるのだ
「お、お疲れ様……えっと、私達、最初に直斗君を襲撃したけど。狩人、誰だったの?」
「僕です。初日からずっと、直斗を護衛しておりました」
かなえの問いには、龍哉がそう答えた
どうぞ、と狩人日記を公開。確かに、直斗を連続護衛している
「え、こっち信じてもらえてなかった?」
「いえ、最初は占い師のどちらか、と思いまして。直斗の護衛が成功したので、そのまま続けました」
護衛成功、と言うことは人外ではない事は確かと言う事になる(妖狐が生き残っていた場合は別だが)
運良く最初の護衛が成功したのであれば、その相手を護り続けるのは狩人として間違っている戦法ではないのだ
「はい、皆お疲れ様であるよ。うーん、妖狐を引けたので思い切り好き勝手やろうと思っていたが初日呪殺とは。実に残念」
「初日に呪殺できてよかった」
えー、と不満そうな「先生」だが、この人物が妖狐を引いて好き勝手動いた場合、村人側も人狼側も両方引っ掻き回すこと確実な為、初日に呪殺できてよかった、としか言いようがない
そもそも、妖狐は村人人狼どちらも引っ掻き回すのが生き残るコツなので、「先生」のやり方が間違っている訳でもないが
「しゅうっち、初心者なのに狂人お疲れ様ー、っす。どうっす?人狼やってみた感想は」
「あ、えーっと……と、言うか。待って。「しゅうっち」って」
「しゅうっちの事っすよー?」
へらん、といつもの調子の笑顔で早渡に話しかける憐
……微妙に、遥から睨むような視線が早渡に飛んでいるが、気づかないほうが幸せだろう
遊びを終えた後の子供達の平和な光景に、大人二人は穏やかに、笑った
to be … ?
#navi(連載 - 次世代の子供達)
2022-12-08T00:55:16+09:00
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非日常の真実
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*次世代の子供達
**獄門寺 龍哉
獄門寺龍一の息子であり長男
「大通連」「小通連」と契約をしている
外見は龍一によく似ているが、目元は隠れておらず龍一よりは表情豊か
言葉遣いや振る舞いは基本的に礼儀正しく、ややおっとりとした雰囲気を周囲に与える
幼馴染の直斗を始め、仲良しグループのメンバーの事を大切に思っている
獄門寺家の役目を理解しており、それを成し遂げるべきであると考えており、行動の理由としてもそれがあげられる事が多い
何故か(?)飴玉が苦手な様子
・「大通連」「小通連」
どちらも鈴鹿山に天下った天女(『田村三代記』では魔王の娘)立烏帽子(鈴鹿御前)の所持する三振の剣の一つで、文殊菩薩の化身、もしくは文殊の打った剣。『田村の草子』では天竺の阿修羅王が大だけ丸に贈った三振の剣とも言われる
大通連は三尺一寸の厳物造りの太刀
伝承の関係ゆえか、鬼と関わり深い者でなければ契約は難しい
どちらも契約者である龍哉の意思によって手元に出現したり、どこからか飛んできて空中を自在に飛び回る
龍哉が斬ろうとした都市伝説のみを斬り、契約者にダメージを与えていなかった事がある為、斬る対象を限定できるのかもしれない
伝承によれば、鈴鹿御前はもう一振り、刀を持っていたとされるが……?
**花房 直斗
獄門寺龍一の親友を父親に持っている少年。それ故に龍哉の幼馴染である
非契約者だが都市伝説関連の知識は豊富であり、幼馴染達を知識面や作戦面でサポートする事が多い
憐程ではないが少し小柄で、どことなく軽そうなイメージを他者に与える外見をしている
実際お調子者であり、ムードメイカー的な一面を持つ
**日景 遥
日景翼の息子。長男。上に姉がいる
「ベオウルフのドラゴン」と契約しており、自らの肉体に竜の爪や牙、鱗をはやしたり炎のブレスを吐き出して攻撃する
母親似の白い肌と金の髪と、父親の血筋か翡翠色の目を持つ。体格は仲良しグループの中では良い方で一番背が高い
父親からは戦闘センスを、母親からは知力を受け継いだような感じらしく、俗にいう天才児
……が、天は二物を与えずと言うべきか、料理に関してはさっぱりである
また、親友を「宝」として認識しており、それを護る事に関して全力を尽くす、まではいいのだがそれが暴走する事しばし
特に憐に対しては強い保護欲を抱えており、周囲から盛大に誤解される。本当に誤解かどうかは本人のみぞ知る
何よりも一番の弱点は、怒りによって契約している都市伝説の能力を暴走させてしまう可能性を秘めている事かもしれない
・ベオウルフのドラゴン
北欧の英雄叙事詩で語られる勇者ベオウルフと戦ったドラゴン
己の財宝を奪った人間を追って国を襲い、炎や毒を吐いて暴れまわったとされている
遥が契約している「ベオウルフのドラゴン」は、遥自身にドラゴンとしての力を与えている
牙、爪、鱗等を肉体に発生させ、人間離れした身体能力で戦闘を行う事が出来る
炎と毒、両方のブレスを吐く事が出来るが、遥は炎の方がお気に入りの様子
恐らく、翼やしっぽをはやしたり、さらにドラゴンに近い姿になったり、ドラゴンそのものになる事も可能であると思われる
が、それを行うと飲まれるリスクも同時に高まることだろう
**荒神 憐
荒神 涼とフェリシテの息子。長男
母親譲りの金髪と金の目をもっており、やや小柄な体格をしている
「俺っち」「~~っす」と言う軽い調子の口調で喋り、普段からへらへらとした軽薄な笑みを浮かべている
外見通りの軽い性格に見られがちだが、実際は真面目で優しく世話焼き。家事も得意で家庭的
アーチェリー部に所属し、保険委員を務めている
「教会」に所属しており、学校街にあるとある教会にはよく手伝いに行っている
・「シェキナーの弓」
性格には憐が契約している都市伝説ではなく、母親のフェリシテが契約している物であり、憐に「貸し出されている」物
天使ケルビムの長ケルビエルが構えていると言われる弓であり、太陽の36万5000倍明るいと言われる、聖なる光輝の弓である
「シェキナー」はそれだけ重要な言葉で、ヘブライ語のシャカンShachan「住むこ」との意味
新約的意味では神から流出した栄光、光輝とされるという
能力としては、聖なる属性を持った光る矢を撃つと言うもの
弓の腕前は純粋に契約者の力量に任せられる為、使いこなす事は少々難しい
・「ラファエル」
憐が本来契約している都市伝説
その名は「神の癒やし」を意味し、「癒やす者」「若者の庇護者」「旅人の守護者」等の呼び名を持つ、悪魔祓いにして病気の治療者である
慈悲深い天使とされており、「神の御前に立つ天使」の一人であり、三大天使の一人でもある
本来ならば剣等による高い戦闘力と、どんな傷でも癒やす高レベルの治癒能力を契約者に与えるのだが、憐はまだ未熟な為、治癒能力のみを使うようにしており、戦闘能力は引き出せない様子……?
**広瀬 優
広瀬 辰也と空条 恵の娘
幼い頃から新体操をやっており、柔軟性が高く身体能力に優れている
双子である晃のことを常に気にかけており、何かあったら常にフォローできるように、と考えている(幼馴染達がそばにいるときは、そちらに任せる場合もあるが)
基本的に誰とでも仲良くなれる明るい性格
クラスメイトから相談を持ちかけられる事も結構あるらしい
なお、中学の頃辺りから、遥とかへの告白についてきてほしい、と頼まれることが増えたが「無理だと思うからやめといた方がいいよ」と諦めさせようとする事が多いようだ
・赤いちゃんちゃんこ
学校の怪談で語られる都市伝説
トイレで「赤いちゃんちゃんこ着せましょか」と言う声が聞こえ子供達が不気味がり、気の強い女教師(もしくは婦警)が現場のトイレに行き、再び聞こえたその声に「着せてみなさいよ!」と答えた結果、まるで赤いちゃんちゃんこを着たような血塗れの姿で発見された、と言うものである
これの契約者である優は、敵対者をらくらく血塗れにできるだけの怪力を得ている
その気になれば、爪先を鋭く尖らせる事もできるが、尖った爪がそのままになってしまい、手入れが面倒なのであまりそこまでしない様子
本来のテリトリーは学校のトイレであり、一番能力が高まるのはその場所である
**広瀬 晃(あき)
広瀬 辰也と空条 恵の息子
幼少期より体が弱く、おとなしめの性格
また、自分が体が弱い事で、双子である優に苦労をかけてしまっている、と思い悩みがちな性格
が、周囲より一歩引いたところで全体を見回すことには長けている様子
・怪人アンサー
人工的に生み出された都市伝説と呼べる存在(今はもう有名な都市伝説だが)
本来は多人数の協力により呼び出される都市伝説だが、契約によって常に晃のスマホに在住している
どのような質問にも答え、逆に質問した相手の体の一部を奪い取る能力を持っている
欠点として、質問の答えが未来予知の一種であったりする場合、アンサー自身に負荷がかかり、答えた後しばらく能力が使えなくなってしまう
また、相手の肉体の一部を奪う際も、腕のような物がスマホから伸びて奪うという方式をとっているため、その腕を攻撃されて阻止される場合がある
・携帯電話はペースメイカーを誤作動させる
よく言われている話だが、これは都市伝説である(参照:ttp://smhn.info/201202-2g-3g)
契約より能力が強化されており、携帯電話を使う際、周囲の機械を一時的に誤作動させる事ができる
周囲、の範囲も広めに強化されており、中央高校校舎からクラブハウスまでの距離でも能力が発動する
欠点は、効果範囲と定めた範囲内の機械全てが多少なりとも影響を受けてしまうことである
**荒神 灰人
荒神 秀の一人息子
幼馴染グループの中では唯一年上であり、中央高校ではなく別の高校に通っている
両親双方に似たのか普段はクール気味であり、他者にも冷たい印象を与えがち
憐とは同じ家で育ったせいか、従兄弟同士なのだが本当の兄弟のような関係である
医療関係の仕事に付くと言う夢を持っており、東区の診療所の手伝いをしてる
・「ジャック・ザ・リッパー」
ご存知「切り裂きジャック」
本来ならばイギリスロンドンにのみ出現するはずの存在。しかし学校街ではわりと普通に出没するから困る
灰人が契約したものは契約者が切り裂きジャックの能力を得るタイプであり、いつでも手元にメスを出現させる事ができる
また、人体……特に腸を以下に効率よく取り出す方法や切り裂く方法の知識を手に入れている
霧の中では身体能力があがり、気配を極限まで薄くする事も可能
灰人は過去に一度、切り裂きジャックを暴走させて飲まれかけた事があり、今でも油断すると飲まれかける危険性を秘めている
*次世代の子供達と関わる者達
**?? 咲夜
中央高校に通う一年生。学校町外の出身で、中央高校に通うために学校町にやってきた
かなりの美少女であり、中学生の頃までは学校中の男を骨抜きにし、数々のトラブルを生み出してきていた…………が、中央高校では、何故かその美貌があまり通じず、ツッコミ役に徹している事が多い
今のところ、都市伝説とはあまり関わっていない……?
**紅 かなえ
中央高校に通う一年生。龍哉達のクラスメイトであり、中学校の時からの知り合い
少しいいお家の出身で、ちょっぴりぽややんとしたおとなしい性格
長い黒髪に黒い瞳、ちょっぴりぽっちゃりめな体格。デブではない、ぽっちゃりだ
2年前に都市伝説と契約し、「組織」に所属している。最近の「組織」についてしか知らないため、昔の「組織」に関する情報には疎いのが欠点かもしれない
・岩融
かの有名な武蔵坊弁慶が使っていたとされる薙刀
平安時代の刀工・三条宗近により作られたとされており、刃の部分だけでも1mもあったとされている(当時の薙刀の標準的な刃の大きさは80cm)
なお、岩融の名の由来は不詳だったりする
かなえが契約している岩融は、契約者の手元にいつでも岩融と思われる薙刀を出現させられる他、岩融自体が自我を持っているようで、それが人間の姿となって現れ、契約者に付き従い、時にともに力を振るう
人間としての姿は一言でいえば長身の僧職系男子である
おいこら、刀○乱舞とか言うな
**小道 郁(かおる)
「組織」CNo所属の黒服。常に黒一色のゴシックロリータ衣装を来た少年の姿をしている
女装好きと言う訳でもなければオカマでもオネェでもなく、単に可愛い服が好きなだけ、との事
かなえの担当黒服であり、彼女のことを気にかけている様子を見せる
また、「三年前」の事件に関して憂いてみせる面も持つ
・「てけてけ」「とことこ」
上半身だけで動く少女の都市伝説たる「てけてけ」と下半身だけで動く「とことこ」の多重契約者であり、現在は「飲まれて」いる
上半身と下半身を分離させて行動する事ができ、その状態では身体能力が格段にアップする
欠点として、切り離している間、下半身は周囲の状況を完全には把握しきれないため、上半身から見えない位置では動かすのが難しい
**角田 慶次
「組織」所属の契約者
20代前半ほどの若者。イマドキ風の若者スタイルをしている
幼少期に都市伝説事件絡みで両親を失っており、それ以降「組織」に保護されて育ってきた
その関係か、都市伝説契約者以外をやや見下す傾向がある(最近は、少しマシになってきた?)
両親の仇を売ってくれた存在であり、命を助けれてくれた恩人でもある「組織」の黒服である赤鐘 愛百合(ANo-4649)を母親代わりとしているが………
実は、かなえのことがちょっと気になっているらしい
・「カブトムシと正面衝突」
バイクで走っていたとある男が、死体となって見つかった
彼の額には、ヘルメットを貫通して何かで穴が開いていた
ショットガンで撃ちぬかれたかのようなその傷跡を調べると、そこにはカブトムシが埋まっていた
バイクで走っていたところにカブトムシが突っ込んできた結果、そのカブトムシがヘルメットを貫通して男の額を貫き、男は死んだのだ………
それが、「カブトムシと正面衝突」などと呼ばれる都市伝説である
慶次はこれとの契約により、いつでもどこでもカブトムシを召喚し、それを高速で飛ばすことで攻撃する
その攻撃力と貫通力は高く、かなり固いものでも貫いて攻撃することができる
狙う場所によっては一撃必殺も狙える、かなり強力な都市伝説である
**赤鐘 愛百合
「組織」ANo所属の黒服。ややおばさんくさい印象を感じさせる女性
慶次の担当黒服である
元々は強行派所属であり、かなり強引な手段で事件を解決させてきた
その際、一般人に犠牲者が出る事を厭わなかったために問題となり、現在はCNoの監視下におかれている
過去にも何人かの契約者を担当してきたが、それらを過去に都市伝説事件で失ってきた過去を持っている
・隙間女
隙間から、こちら側を覗く女の姿があった
そんな都市伝説に飲まれた存在が愛百合である
隙間に自分だけではなく、もう一人を隙間に引っ張り込んで忍ばせる事ができる
また、あるせんよりダメージを受けている相手を手帳の「隙間」に収納し、拘束する事も出来るようだ
**鬼灯
長い焦げ茶色の髪に褐色の肌の男。左目は大きな切り傷で潰れており、着流し姿をしている
日本中どころか世界中をふらふらと気まぐれに旅をして回っており、現在は学校町にて獄門寺家の客人として滞在している
キセル煙草を愛飲し、常に桜に似た花の香りを纏っている。三味線の演奏を得意とする等、どことなく古い時代の生まれを思わせる雰囲気を持つ
龍哉逹とは親しく、古い話を聞かせてやったり、遊び相手になったりしてやっているようだ
時折、悪夢にうなされている
その正体は、都市伝説に飲まれた存在
江戸の時代の生まれであり、年齢は有に数百歳程である
・通り悪魔
鬼灯が人間だった頃に契約していた都市伝説(当時は都市伝説ではなく「怪談」「怪異」等と呼ばれていただろうが)
気持ちがぼんやりとしている人間に憑依し、その人の心を乱すとされる日本の妖怪
通り者を見て心を乱すと必ず不慮の災いを伴うので、これに打ち勝つためには心を落ち着けることが肝心だという
能力としては、刀の形で具現化したその力を対象に突き刺し、「魔が差した」行動をとらせる事が出来る
系統的には、「悪魔の囁き」に近い能力とも言える
・????
鬼灯が飲まれる原因となった都市伝説
多重契約していなければ、彼が飲まれる事はなかっただろう
**「先生」
三年程前より、東区某所に診療所を構えている通称「先生」。本名は「アハルディア・アーキナイト」。「薔薇十字団」所属と言う扱い
白く長い髪をうなじの辺りでくくっており、赤い瞳をした長身の若い青年の姿をとっている
基本的には常に白衣と眼鏡
かつて盛大に発狂していた時代があり、その頃は世界中で「毒」に関わる騒動を起こして回っていた
数年前に無事(?)正気に戻っており、かつての罪滅ぼしも兼ねて己の役目を果たさんとしている
・賢者の石
かの有名な賢者の石。その完成版
万能の石であり、錬金術絡みの存在の大半を作り出すことができる他、いくつかの魔術の疑似再現等が可能
また、契約された賢者の石は「先生」の体内に存在しており、それ故に「先生」は死ぬことがない
賢者の石と契約した以上、たとえ飲み込まれていなくとも、彼は存在自体が賢者の石そのものと呼べる状態である
**栗井戸 星夜(くりいど せいや)
長い髪をうなじの辺りでくくった三白眼の少年。中学三年生
「組織」所属。ただし、担当黒服がいないように見える
慶次とは仲が悪いが直斗とはそこそこ仲が良く、また、都市伝説使用による体の不調をよくおこしており「先生」に診てもらっている
不良にみられる事もあるが、実際は誰に対してもほぼマジレスストレートに発言するだけである
・「残留思念」
指定した範囲の過去の記憶を読み取るほか、過去、発生した出来事を再現させる程度の能力
再現を使用した際の疲労が激しいうえ、再現した範囲に強力な都市伝説が存在した場合、「持って行かれそう」になるとの事
その為、再現を使用した後は大体「先生」に診察してもらっている
……なお、彼が契約している都市伝説が、本当に残留思念であるかどうかは不明
**「ライダー」
「レジスタンス」所属の契約者
銀髪を逆立て、サングラスをかけ、真っ赤なライダースーツを着ているという大変目立ついでたちの西洋人男性
正体を隠している事が多い「レジスタンス」所属としては珍しく正体を明かしている
シルバーメタリックのバリバリ改造されたバイクは、本来は上司の所有物らしいが勝手に借りて勝手に改造して使っているらしい
・????????
契約都市伝説の詳細不明
バイクが関連していると思われる
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その他の人達は今後更新していくのでもうちょっと待ってね!
[[連載 - 次世代の子供達]]
2022-01-29T23:23:09+09:00
1643466189
-
連載 - 次世代の子供達-64d
https://w.atwiki.jp/legends/pages/5217.html
【[[ピエロ 廃工場にて>連載 - 次世代ーズ-CL01]]から続き】
どうするか
慶次は必死に考える
一応、天地に緊急連絡のメールはいれた
この場に、誰かしら駆けつける可能性はある、あるのだが
(問題は、「誰」が来るか……)
ある程度戦闘ができる人員が向けられるはずではある
だが、「ある程度」しか戦闘が出来ないのでは、この場は駄目だ
もっと、理不尽に立ち向かえるような、そんなレベルでなければどうにもならないのではないか
そのように、慶次は感じたのだ
天地がこちらに向かわせることができる人員で、そんな奴はいただろうか……
そうして、必死に思考を巡らせていた、その時だった
何か、聞こえてくる
その音は、外から聞こえてきていた
様々な音が混ざり合っているが、具体的に言うと暴走族が乗っていそうなバイクのエンジン音と走行音、何かと何かがぶつかったような音と絶叫
……バイクの音+何かと何かがぶつかった音+絶叫?
慶次以外にも、その音ははっきりと聞こえていた
そして、それらの音を聞いた全員が、外で起こっている何かに気づいたのだろう
誰もが一瞬………本当に、ほんの一瞬だったはずだ………この建物の入口を見たのと、それは、ほぼ同時だった
工場の入口から、シルバーなメタリックが飛び込んできた
耳にうるさい爆音を響かせながら、その銀色に輝く改造バイクは工場内にいたピエロメイクの者逹へと、一切合切遠慮なしの突進を開始する
バイクを運転しているライダースーツに銀髪の男の背後に、もう一人誰か乗っているようで、白衣がはためく
(………白衣?)
白衣である
見間違いでなければ、白衣だ
……まさか
ギギギギギギッ、と嫌な音をたてながら、バイクが慶次逹の前で急ブレーキをかけて停まり………その白衣が、降りた
「やぁ、カブトムシの青年!天使の御仁に行けと言われたから来たよ!」
「よりによっててめぇか、くそ白衣ぃいいっ!!」
「うん、それだけ叫べるならとりあえず大丈夫だな!」
あっけにとられている様子のかなえやひかりに構う様子なく、「先生」は朗らかに笑う
緊張感あふれるこの場にやってきたのだと言う自覚などさっぱりないのではないか、と疑いたくなるような朗らかな笑顔だ
「まぁ、そちらのお嬢さんが怪我しとるのはなんとかしたいが………ん、んー、先にあっちを片付けねばならんかね」
つ、と
「先生」がタートルネックの男とスーツの男を見た
眼鏡の奥で、血のように赤い瞳が興味深げに彼らを見つめる
向こうも、突然の闖入者に流石に驚いているようだった
いきなり、こういう場に都市伝説能力なしで(なしのはずだ。さっきの轢き逃げアタックは都市伝説能力が働いているようには見えなかった)突撃してくる馬鹿がいるとは思わないだろう
都市伝説能力者であれば、都市伝説能力を使って乱入してくるものだろう
何故、バイクで轢き逃げした
ちらり、とバイクを運転していたそいつを見ると、銀髪にサングラスにライダースーツ
……慶次は見覚えが合った
戦技披露会の会場に来ていた「レジスタンス」のメンバーだ。確か、「ライダー」とか呼ばれていたはず
「……待て。なんで天地がよこした人員なのに、「レジスタンス」の奴がいやがる?」
「天使の御仁から連絡きた時、ちょうど診療所にいたので足代わりに」
「バイク改造してもらった分の代金代わりにここまで連れてきたぜ」
さらりと、「先生」と「ライダー」はそう答える
そう言うのであれば、恐らくそうなのだろう。何かが引っかかるが
ようやく、相手は混乱から回復したのだろうか
タートルネックの男が声を上げる
「これはこれは………「死毒」アハルディア・アーキナイトに、「レジスタンス」の「ピーターパン」の部下が一人、「ライダー」とは。「死毒」がこの街に来ていた事は知ってたけれど、まさか「ライダー」までとは」
「……懐かしい呼び名だね」
タートルネックの男の言葉に、「先生」はやんわりと微笑む
苦々しい表情、ではない。本当に懐かしそうに、やんわりと微笑んでいた
彼にとって、「死毒」とは発狂時代の色々とやらかしていた頃の異名であり、苦い思い出しか無いはずなのだが……
……否、違う
彼にとっては、発狂時代の事もまた「苦々しい思い出」ではないのだろう
俺の過去として。ただ「あった事」として飲み込んでしまっているだけなのだ
「「ライダー」がいると言う事は、「ピーターパン」も?」
「安心しな、ちょろい上司ランキングナンバー1なうちの上司は、只今アヴァロン補修に駆り出されてて日本に来る暇もねぇよ」
バイクのエンジンをふかしながら「ライダー」はタートルネックの男にそう答えた
そうかい、と男は笑う
「それは良かった。彼もまた、イレギュラーと言うべき厄介な存在だからね。これ以上イレギュラーに増えられてはこまる」
「それは同感だな。あの御仁にこっちに来られると我々も困る」
うんうん、と何故か「先生」がタートルネックの男の言葉に同意している
……どうやら、「ライダー」の上司とやらは、ひかり同様イレギュラーになり得る存在であるらしい
「レジスタンス」の上位幹部ともなれば「組織」の上位幹部と同じくらいのとんでもクラスがいる事は確実なので、あまり驚きはしないが
「あ、あの、「先生」……」
かなえが、怯えたように、不安そうに声を上げた
「先生」は、かなえに優しく笑いかける
「あぁ、大丈夫だよ、お嬢さん。少なくとも、お嬢さん逹はちゃんと逃がすさ。そういう事は、大人の仕事だからね」
「逃がす?ここから?」
スーツの男が、「先生」をじっと見つめる
そうだよ、と、「先生」は笑う
「どうやら、お嬢さん逹のメンタル面にあまり良くなさ気な者がたくさんいるみたいだしねぇ」
とんとんっ、と「先生」が床を軽くつま先で叩いた
その瞬間、「ライダー」の乗るハデッハデなバイクの傍らに、地面からサイドカーが生えた
違う、生えたのではない
「先生」が、廃工場の床を材料に、瞬時に錬成したのだ
「「賢者の石」、厄介ですね。あなたもある種、イレギュラーと言っていい」
「おや、私はそこまで万能ではないよ………万能だなんて、そんな「猛毒」、残念ながら私は手に入れられなかったよ。なにせ、天才ではなく凡人なのでね」
ゆるゆると笑いながら、ついでにヘルメットを錬成する
出来たヘルメットは、三人分
「薙刀の御仁、一度、お嬢さんの中に戻ってくれるか。サイドカーをつけたとは言え、流石に君が乗る余裕はあるまい。サイドカーにお嬢さん逹2人、「ライダー」の御仁の後ろにカブトムシの青年一人。それで希望の明日へレディゴーしようか」
「おじちゃま?……おじちゃまは、どうするの?」
ひかりが、「先生」を見上げて問う
…その通りだ
先程「先生」が言ったように「ライダー」のバイクに乗り、ここを離脱するのだとしたら「先生」はどうするのか
この場に、取り残される事になる
「なぁに問題ない、なんとかなるさ」
ひかりの問いにも、「先生」は普段と何も変わらぬ様子で答えた
穏やかな表情も、優しく笑う表情も、何もかもそのままだ
「ずいぶんと余裕だね」
「いやぁ。君達こそ、余裕であろ?ここまでのおしゃべりやら準備やら、きっちり見逃してくれているではないか。うん、実に優しい!とりあえず初手でこちらの脳天にバズーカぶっぱしてきた天使の御仁とは違う」
にこにこと「先生」は笑う
はいはい、と慶次逹にヘルメットを渡すと、す、と「ライダー」の前に立つ
この場にいる全員、自分が相手しよう、とでも言うように
「ほら、早く行きなさい……と言うか、行ってくださいお願いします。私は戦うこと自体ヘタであるし、そのせいか年頃のお嬢さんに見えていい戦い方ではないのだよ」
「…てめぇの場合、戦いのうまいヘタの問題じゃねぇだろ」
ぼやきつつ、慶次は半ば強引に、かなえとひかりにヘルメットを被せていく
そうしながら、「岩融」に告げた
「一旦、戻れ……離脱するしかねぇからな、ここは」
『……っわかった。主、戻るぞ』
ふっ、と「岩融」の姿が掻き消えた
完全にパニックからは脱出しきれていないかなえを急ごしらえのサイドカーに載せ、その膝の上にひかりも載せた
慶次自身もヘルメットをかぶると、「ライダー」の後ろへと乗る
「逃がすとでも……」
「逃げるさ!」
ライダーが、バイクのハンドルについていたスイッチを押す
………ハンドルに、スイッチ?
慶次が疑問に思うよりも早く、彼らの乗るバイクの前方部分に、キュィイイイン……っ、と光が集まって
「ABRACADA…………っ!?」
タートルネックの男が、「ライダー」が行おうとしている何かを阻止しようとして
が、その口からは「アブラカダブラ」の呪文ではなく、血が吐き出された
バチ、バチバチッ、と、いつの間にか「先生」の周囲に赤黒い光が放電するように輝き始めている
その輝きは、「先生」が手掛けた「賢者の石」が、何かしらの能力を発動する際のもの
かつて、「先生」も開発に関わった「賢者の石」の出来損ないもまた、それを埋め込んだ人物を再生させる際にそんな光を発していたと言う
何をされたのか、タートルネックの男は気づく
瞬間的に、己の周囲の空気を「毒」に変えられたのだ、と
血を吐き出すというタイムラグのせいで、間に合わない
「ライダー」の乗る派手な改造バイクに収束された光は、そのまま、どぉん!!という派手な音と共に、レーザービームとして打ち出され
発射の瞬間、そっと横にそれた「先生」を微妙に巻き込みながら、前方にいた者逹を容赦なく、焼いた
あまりの眩しさに、かなえやひかりにその様子が見えたかどうかは、わからない
ごぅんっ!!とエンジンが唸りを上げて、轟音と共に四人を載せたバイクは廃工場から走り去っていってしまった
「うん、腕によりをかけて改造してよかったと言うべきかな」
バチバチッ、と赤黒い光を発生させながら、うっかりとレーザーに巻き込まれた体を再生させる「先生」
「ライダー」に頼まれて、あのバイク(「ライダー」の上司の物だった気がする)を改造したかいがあった
ミサイルだけではなく、やはりレーザーも積んで正解だったのだ
ミサイルもレーザーも、男のロマンである
ドリルを詰めなかった事が、若干後悔であるが今後、また改造の機会があったら積ませてもらおう
「……やってくれるね」
さて、ピエロ連中は轢き逃げアタックや先ほどのレーザーでそれなりに倒したものの、タートルネックの男とスーツの男は、まだ無事だ
タートルネックの男も、口から血を吐き出し続けてはいるが、まだ軽めの毒であるからか致命傷ではない
「良いのかな?……あなたは確か、正気に戻った後、むやみにどの毒をばらまかないよう、約束させられていると聞いているけれど」
「可愛らしいお嬢さん逹が襲われていたのであるからね。そちらを助けるためならば問題ないさ。誰かを助けるためであれば多少毒をばらまいてもいい、問題ない、と言われている」
にっこり、「先生」は笑って答えた
そう、問題ない
これから自分が行う事も、何も問題はないのだ
「さて、諸君。彼らを追いかけたいかもしれないけれど、駄目だよ」
毒が満ちる
この廃工場全体を覆うように、毒が回る
床も、壁も、天井も、窓も、空気も、何もかも何もかも
全てを「先生」が毒へと変えていく
何か動作をする事なく、ただ、「先生」の周囲でバチバチと赤黒い輝きが生まれるたび、高速で錬成がなされていく
「大丈夫、即死はさせない。その前にやらないといけない事もあるからね」
白衣の内側から、「先生」がメスを取り出す
「多分、素直に口割ってくれないだろうし、一応素直になるお薬も使うが、それでも駄目だったら頭をかっさばいて中身を見ないとね。緊急事態だし、まぁ良かろう」
「死毒」が笑う
彼は、ある意味で発狂状態から正気へと戻った存在である
だが、そもそも、「元から正気ではなかった」とも言える存在である
彼に罪悪感はない
どれだけ残虐な事であっても、残酷な事であっても、「必要」と判断したならば、やり遂げる
「さぁ、私のスペシャルな毒のフルコースを、どうぞ」
致死量の毒が襲う
人体を麻痺させる毒が、体の機能を殺す毒が、ありとあらゆるものを腐食させる毒が
一斉に、この場にいる者逹へと襲いかかった
to be … ?
#navi(連載 - 次世代の子供達)
2022-01-29T23:22:16+09:00
1643466136
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連載 - 次世代の子供達-64e
https://w.atwiki.jp/legends/pages/5218.html
毒が満ちる
辺りの空気そのものを毒へと変えたのだから、通常の生物であれば呼吸すらままならない
吸い込んでしまえば呼吸器官をやられる。それだけではなく体を内側からどろどろに溶かしてくる
…そもそも、この現場にいる事自体、危険なのだろう
空気も、床も、天井も、壁も、窓も
この場の全てが毒へと錬成され変えられたのだから
この廃工場の外までは毒は漏れ出していないものの、確実にこの土地は駄目になるだろう
そのような状況を作り出した「先生」自身が頑張って治せなくもないのだが………少なくとも、現時点でこの「先生」がそこまで考えているかどうか、となると微妙であった
「先生」の顔に浮かんでいる表情は、明らかに楽しんでいるもの
久々に、良い実験体が見つかった、と。そうとでも言いたそうな表情だった
たんたんっ、と「先生」が足元を踏み鳴らす
踊るように、奏でるように
バチバチと赤黒い光を放ちながら、毒を生み出していく
タートルネックの男とスーツの男はまだ、立っている
しかし、他のピエロ逹は悲惨な状況だった
溶けているのだ、内側から、外側から
悲鳴もあげられず、逃げる事もできず、ぐちゃり、と溶けて溶かされ崩れていく
その状態で死んでいられたならば、きっと楽だったのだろう
せめて、痛覚だけでも消えていてくれていたならば楽なのだろう
だが、「先生」の作り上げた毒はそれを許さない
ピエロ逹は、痛みと言う痛み、苦しみと言う苦しみを味わいながら、生きながらにして溶かされ続けていた
「さすがは「死毒」と言うべきか。残酷な事をする」
「ん?……ふむ。ふむ?」
スーツの男の言葉に、「先生」は不思議そうに首を傾げた
その間も、とんとん、たたたんっ、と足元を軽く踏み鳴らし続ける
「ん、んー………あぁ、そうか。これは「残酷」に入るんだったね。まぁ、いいや。我が上司いわく「外道は苦しみながら死ね」との事だから、オッケーオッケー許される」
うんうん、と何やら自分に言い聞かせるように頷いている「先生」
残酷、と言うものの基準すら、「先生」はいまいち理解できていない
「生かしたまま溶かすとかも、コーラの御仁もやってるし……うん、やっぱりオッケーだね!駄目だった時は仕方あるまい、私が怒られればそれで終わる」
「本当に、このまま生きてここから帰るつもりらしい」
タートルネックの男は笑う
吐き出した血は、拭う事なくいつの間にか消えていた
足元を踏み鳴らす「先生」を真っ直ぐに見据え、彼は唱える
「ABRACADABRA(私が話す通りになる):毒は全て、アハルディア・アーキナイトへと返る」
能力が発動する
「先生」が生み出した猛毒が、全て、「先生」へと返っていく
返っていっている、はずだった
しかし、「先生」には何の変化も訪れない
「我が子(毒)に負ける程には、耄碌しておらんよ」
「……まぁ、そうだろうね」
そもそも、己が生み出す毒に負けてしまうのであれば、今、この場に立っていられたはずがないだろう
「先生」が生み出した毒は、彼自身には効かないのだ
たんたんたたたん、ステップを踏みながら、「先生」は更に口を開く
「ABRACADABRA(私が話す通りになる)」
穏やかに笑みを浮かべて、「先生」がこの言葉を口にする
「君達は逃げられない」
ほんの少し、悪戯めいた声音でそう告げる
その瞬間、スーツの男も、タートルネックの男も、自身の足に違和感を覚えた
足が、重たい
先程までの毒に侵されていた状態とは、また違う
まるで、逃げられないように縛り付けられているような、そんな感覚だ
「なるほど、なるほど!ABRACADABRAは、古代には熱病や炎症の治療に使われていた呪文であったと記憶しているが、今はその気になればこんなふうにも使えるのか!なるほど、楽しい!!」
「自身で契約していない都市伝説の力まで使うのはやめて欲しいね」
「魔術要素があるなら、ちょこっとくらいなら許されようよ。私は「賢者の石」の契約者であるからして」
楽しげに笑いながら、そう告げる
「賢者の石」は、最高レベルの魔術媒体ともなり得るものだ
それにくわえて、「先生」は元々、人間であった頃から……「賢者の石」の契約者となる前から、「薔薇十字団」に所属していたのだ
魔術的教養をある程度身につけており、扱い方を心得ている
「賢者の石」の使い方としてかなりイレギュラーではあるが、他の魔術的都市伝説の真似事もできるらしい………もちろん、何かしらの制限・制約は存在するのだろうが
「ふむふむ。しかし。君のその「ABRACADABRA」は、事情で現実を上書きすると言う、それこそ間違えば万能足り得るものであるが。流石に制限があるか。できん事もある………いや、時間がかかって、まだ発動しとらんだけかな?」
「何故、そう思うんだい?」
「君のその力が真に万能で何だってできるのであれば、さっさと私を殺せば良いではないか。それをやらん、と言う事は。できないもしくは時間がかかるのだろう?」
少なくとも、「先生」はそのように理解した
殺さずとも、さっさと無力化するなりなんなりしてしまえばいいのにやらないのはそういう事なのだろう、と考えたのだ
それと、と「先生」はスーツの男へと視線を移す
「君は、私に何をしてくれるんだい?……それとも、予知能力・探知系能力・察知系能力に対するカウンターしか出来ないタイプかな?」
「……やっても、すぐに毒で溶かされるだろうし。そもそも、すでに発狂済の相手が更に発狂するかどうか」
「私、今は正気のつもりであるのだけれどなぁ」
スーツの男の言い分に、解せぬ、と言う表情の白衣
しかし、すぐにまた、笑顔に戻る
たんたん、とととん、たん、たたたんっ、と足元で刻み続けるステップは続く
バチバチ、バチバチと、毒を生み出し続け……
それだけではないのでは
タートルネックの男も、スーツの男もそれに気づいたが
それと同時に、「先生」は緩やかに、穏やかに、笑った
「それじゃあ、この毒もちょっと借りて使おうか」
「ーーーーーっ!」
一瞬、ざわざわとしたものを「ライダー」は感じた
この学校町に来てから、ずっと妙にぞわぞわしたものを感じていたのだが……それが、ほんの少し「動かされた」ような「引っ張り出された」ような、そんな感覚
「どうした?」
「いや、なんでも。あえていうなら「先生」がなんかした気がしただけさ」
それは何かろくでもないことが起きる予兆じゃねぇのか、と背後から慶次の突っ込みが飛んできたが、スルーする「ライダー」
なんかあったら「ライダー」が怒られたり踏まれたり椅子にされたりするだけだと思うので、「ライダー」的にはあんまり問題がないのだ
怒られるのを嫌がって、派手なことはしないはずだし、多分
「さて、っと。このまんま「組織」の病院に行くつもりだが。そっちのガールもそれでいいのか?」
「ガールって、私?」
「おう、そうだぜ」
サイドカーで、かなえの膝の上に座っていたひかりにそう告げる「ライダー」
彼女が、郁の救出に向かったのだという者と合流するつもりであれば、そちらに送るつもりらしい
「っあ、あの、ら、「ライダー」さん、前方に。また……」
と、あわあわとかなえが口を開く
彼らが乗るバイクの前方、ピエロの影が見えた
どうやら、学校町内で何かしら動き出しているらしい
「オッケー、じゃ、見たくなかったら目を閉じとけ!」
「おい、待」
て、と慶次が言うよりも早く、「ライダー」がバイクのハンドルを決められた方法でひねった瞬間
けたましい銃声音が響き渡り、バイクから発射されたガトリングの弾はピエロ達を次々打ち抜き、そのまま道を爆走していったのだった
毒が沸き立つ
地面から……地脈から、毒が取り出される
本来、この土地の地脈の影響をダイレクトに受けるとあるものにだけ通じるはずの毒は、取り出された瞬間に「先生」によって改造される
改造された毒は、地面からゆるゆると登り上り、スーツの男とタートルネックの男の精神を蝕みだした
「ーーー世界は毒で出来ている」
バチバチと、自身を中心に赤黒い輝きを放ちながら、歌を歌うように言葉が紡がれる
「世界に満たされた毒を、我々はほんの一部しか知らない。しかして、自覚さえしてしまえば、後はその力を強めれば、その毒はたやすく全てを殺しえる」
溶ける
すでに原型すら残さず、細胞のひとかけらすらも残されずに溶かされていったピエロ逹のように、彼ら二人も溶かされ始める
先程までの毒よりさらに数段上の猛毒が、辺りへと満たされる
「私も、毒なのだろう。君逹もまた、毒だ。毒を持って毒を制せよ。彼らの目的を達成させるためにも、君逹と言う毒は、私という毒にて制圧しよう」
溶けよ、解けよ、融けよ、と
ゆるりるりらと言葉は紡がれ、その言葉すら毒になる
子守唄のように言葉は紡ががれ、耳を心を精神を犯し、眠りにつかせようとする
二度と目覚めることがないように、最後の子守唄を贈るように言葉を紡ぎ、毒を贈る
「眠りなさい、溶けなさい、消えなさい。舞台から観客席へと突き飛ばさせてもらおう。目覚めてしまわないように、ずっと、その穏やかで苦しい悪夢が続くように」
タートルネックの男が、何か告げようとした
スーツの男が、何か告げようとした
その言葉を遮るように、「死毒」はわらった
「君達がいると、彼らの「物語」に支障が出かねない。彼らが「最初から決まっていた通り」に「物語」を進められるように。障害を排除するのもまた、大人の役目であろうよ」
溶かし切る
消し去りきる
その強い意志を持って、「死毒」は二人を殺しに、否、「消し去り」にかかった
to be … ?
#navi(連載 - 次世代の子供達)
2022-01-29T23:20:40+09:00
1643466040
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連載 - 次世代の子供達-58x
https://w.atwiki.jp/legends/pages/5121.html
「いやはや、派手にやったよねぇ、彼も。流石と言うべきか」
等と口にしながら、「先生」はてきぱきと怪我人逹の手当てを終えていた
次いで、行っているのは何やら服の作成
……くしっ、とくしゃみの音が治癒室に響き渡った
ザンとのスペシャルマッチは挑戦者側の勝利となった訳だが、ザンが返した「クイーン・アンズ・リベンジ」の大砲の弾が降り注いだ「良栄丸」と「クイーン・アンズ・リベンジ」は見事に撃沈した
そんな中でも、重傷者が出なかったのは幸いだ
あの場に居た誰頭が、とっさに防御でもしたのかもしれない
一番の重傷者は大砲の弾の直撃を受けたらしいサキュバスだが、契約者ではなく都市伝説(それも、結構な実力者)であるおかげか、意識が飛んだ状態であったものの今はすぷー、と心地よさ気な寝息を立てている
どちらにせよ、船が撃沈した以上、そこに乗っていた者逹は水中に落ちたのだ
スコール+クラーケン召喚の際に付属するらしい海水に落ちてしまえば、ずぶ濡れにならない方がおかしい
よって、スペシャルマッチ参加者のほとんどがずぶ濡れ状態になり、大きなバスタオルに包まっている状態だ
着替えはあまり、どころかほぼ用意されていなかった為、また「先生」が作っているのである
…………なお、「具体的にきちんとリクエストしておかなければ、どんなデザインの服が出されるかわからない」と言う事実は、灰人が一気に運ばれてきた怪我人の治療に専念した為、伝え忘れたままである
今現在、白衣が作ってる服は思いっきりフリルたっぷりの物なのだが、はたして誰用なのだろうか
もっとも、大半がバスタオルに包まっている中、そうではない状態の者もいる
一人は、ゴルディアン・ノット
その出で立ちのせいもあり、ずぶ濡れ度はかなり高いのだが「大丈夫ダ」の一点張りだ
「先生」は「後でちゃんと診察させてもらうよ」と言っていたのだが、それに関しても「大丈夫」と告げている
大砲の弾を受けこそしたが、ダメージを受けた際の形態が形態だった為か、さほど大きなダメージとならなかったのだ
一応、水分は絞ってきた……つもりであるし、急いで着替える必要もないはず、と当人は判断しているのかもしれない
もう一人、ずぶ濡れの服を脱ごうともせず、バスタオルにも包まっていない人物
それは、スペシャルマッチにてザンに一撃を当てる事に成功した忍び装束の人物だった
目元がかろうじて見えるだけのその忍び衣装は、スコールに晒された為にぐっしょりと濡れている
ゴルディアン・ノット同様、一応絞って水分は落としたようであるが、忍び装束越しでも小柄で細身とわかる体付きの為、心配そうに見ている者もいる(主に、まだ治療室から出ていなかった憐)
「…お前ハ、ソロソロソの装束を脱いデ、着替えた方ガ良いのデハないか?」
ゴルディアン・ノットがそう声をかけたが、その忍びは声を発する事もなく、ふるふる、と首を左右にふるだけだ
ぽた、ぽた、と水滴が床に落ちる
この忍び、治療室に来てからと言うもの、一言も言葉を発していない
「先生」が治療を行う為に診察しようとした際も、手で軽く制してふるふる、と首を左右にふってみせた
診察なしでの治療は困難……と思われたが、憐が治療室にばらまいてしまった治癒の羽がまだあった為、それで治療をしたから怪我はもう問題ないだろう
ただ、そのずぶ濡れ状態では風邪を引きかねない
そして、ずっと口を聞く様子がない
声を出せない、と言うよりも、むしろ……
「そういえば、試合中も身振り手振りだけで話していなかったような………声がでない?」
ずぶ濡れの髪をタオルで拭きながら深志が問うたが、ふるふる、とまた首を左右に振ってきた
「喋れない」のではなく「喋らない」。そういうことなのだろう
顔は隠す。体型も、細身とはわかるが忍び装束ゆえ細部はわからない。そして声も出さない、となると
「まぁ、大方「レジスタンス」所属だろ。それなら、正体は隠すわな」
黒髭がそう口にした瞬間
ぴくり、その忍びの身体が小さくはねた
黒髭の言葉に、バスタオルに包まっていた黒が首をかしげる
「どういうことだ?」
「あのな、マスター。「レジスタンス」は元々、少数精鋭でのステルスや潜入捜査が得意なんだよ。「MI6」には流石に負けるが、スパイの数もかなりいる」
「正体がバレたらまずい、と」
なるほど、と真降は納得した様子だ
中には堂々と「レジスタンス」所属である事実を公言している者もいるが(灰人の母親なんかがその例だ)、「レジスタンス」所属の大半は、おのれが「レジスタンス」所属である事を公言することはないという
この忍びも、そうした「レジスタンス」の一員であるならば、正体を晒すような真似はしない、そういう事なのだろう
そうではない、と言う可能性は、この時、治療室に入ってきた男によってあっさりと否定された
「そういう事なんだよ。まだその子は自分の正体バラせるだけの子じゃねーんだわ」
ひょこり、と治療室に顔を覗かせた大柄な男の姿に、「げ」と黒髭が嫌そうな顔をした
オールバックにして逆立てた銀髪にサングラス、ライダースーツという出で立ちの、どうやらヨーロッパ方面出身らしい外見の男だ
「おや、「ライダー」殿。会場に来ていたのか」
「おーぅ。お仕事あるんでねー。さて、「薔薇十字団」の「先生」よ、うちの、回収してっていいな?」
「ライダー」と呼ばれた男は、そう「先生」に告げた
…黒髭が、先程までは「先生」の視線から黒を守るようにしていたのが、「ライダー」相手からも守るような位置へと移動した事に、気づいた者はいただろうか?
すくり、と忍びが立ち上がった
とととっ、と「ライダー」と呼ばれた男性に近づいていき………そっ、とライダーの背後に隠れた
まるで、人見知りの子供のような行動だ
単に、「正体が見抜かれる可能性」を減らそうとしただけなのかもしれないが
(……こりゃ、この中に顔見知り、もしくは、少なくともあの忍者が知ってる奴がいる、って事か)
そのように黒髭は考えた
……そう言えば、自分の契約者の方をなるべく見ないようにしている
(マスターの学校関係者か……もしくは近所に住んでいるか。はたまた契約者の親の会社関連か………どっちにしろ、あまり関わり合いたくはねぇな)
「レジスタンス」にはあまり関わり合いたくない
それが「海賊 黒髭」としての考えである
契約者である黒が関わると言うのならわりと全力で止めるだが、今後どうなる事やら
(「レジスタンス」とは何度かやりあってるし、関わり合いたくねぇ……味方にできりゃ心強いだろうが、あそこは支部っつか、「どこに対するレジスタンス」かによって違うしよ)
ようは、色々と面倒だから嫌だ、と言う理由なのだが
……後で、契約者に、もうちょっときっちり「レジスタンス」について説明しよう
この時、黒髭はそう強く、心に決めた
「一応、服越しとは言え治療はした。ただ、何かあったら、すぐに連絡………こっちに、その子の正体が知られたくなかったら、そちらの治療役に頼んでちゃんと診てもらうように」
「おーぅ。一応、確認はしとくわ。傷残ったら可哀想だし」
手元で何やら作業しながらの「先生」の言葉に、ライダーは軽い調子でそう返した
見た目からして日本人ではないようなのだが、日本語ペラペラだ。それを言うなら、「先生」も明らかに日本人ではないのだが
「あんたは、スペシャルマッチに参加しなかったのか」
「いやぁ、本国の上司に参加していいかどうか確認したら「僕は面倒かつつまらない仕事中なのに、そんな面白そうな事参加するなんてズルい」って却下された」
栄の言葉に、ライダーは肩をすくめながらそう答えている
どうやら、上司は日本には来ていないらしい
参加したかったんだがなぁ、とライダーは残念そうだ……どこまでが本心かは不明だが
「じゃ、そういう事で。この子の着替えはこっちがなんとかするけど、他のスペシャルマッチ参加者逹は風邪引くなよ」
そう言うと、ライダーはひらひらと手を振りながら、治療室を後にした
忍びはその後をついていき………ぺこり、一礼してから、治療室を出た
不意打ちとはいえ、ザンに一撃を与えたあの忍びは、どこの組織にも所属していなかったのであればスカウトがあちこちからきた可能性があるが、「レジスタンス」にすでに所属していると判明したならば、そういったスカウトも来ないのだろう
ライダーがわざわざ忍びを迎えに来たのは、そう言ったスカウトの類が来ないように、「レジスタンス」所属の者であると知らしめるために来たのかもしれない
「……ある意味、過保護だねぇ」
「?何が??」
ライダー達を見送りながら、ぽつり、「先生」が口にした言葉が耳に入ったのか、ひかりは首を傾げた
「なんでもないよ」と「先生」は笑いながら、作業を続けている
ひかりはもう一度首を傾げて……が、特に気にする事でもないと判断したのか、思考を切り替える
彼女が考えることは、一つ
「せっかく、おっきなエビフライ作ったのになぁ……」
そう、これである
あの巨大なエビ型クラーケンをせっかくエビフライにしたのに、食べることが出来なかった
彼女は、それがとっても残念なのだ
「せめて、ひとくち食べたかったな…」
と、そう口にすると
「ふむ、しかしお嬢さん。あのスコールの中にさらされていたならば、あのエビフライ、水分でぶよぶよになってしまって味が落ちていたのでは?」
……………
「先生」の言葉にっは!?となり、ガビビビビン、とショックを受けるひかり
そう、誠に残念ながら、「先生」の言う通りだろう
かなりの水分に晒されたであろうエビフライは、揚げたてさくさくの美味しい状態ではなかったのだ
美味しく食べる事など、あの試合会場にスコールが降り注いでいた時点で無理だったのだ
ガーンガーンガーン、とショックで固まった後、若干、涙目でぷるぷるしだしたひかり
と、そこに「先生」が救いの手を差し伸べる
「さて、お嬢さん。可愛らしい服がずぶ濡れになってしまっているからね。はい、乾くまでこちらを着ているといいよ」
ひらりっ、と
「先生」が、先程までずっと作っていたそれを広げてみせると、ひかりが「わぁ」と嬉しそうな声を上げた
それは、可愛らしい、黒いゴスロリのワンピースだったのだ
首元のリボンやスカートを見るに少々デザインは古めかしいが、ひかりにぴったりなサイズである
「おじさん、ありがとう!」
「どういたしまして。さて、次作るか」
「だから、せめてリクエスト聞いてから作れ」
っご、と灰人に脳天チョップツッコミをしたが、「先生」はスルーしてさっさと次の服を作り上げている
どうやら、また女性物を作ろうとしているらしい。レディーファーストだとでも言うのだろうか
なんとなく楽しげに、「先生」はその作業を続けていた
(……際立っておかしなところはない、よね?)
「先生」の様子を何気なく伺いながら、三尾は少し不思議に思っていた
この「先生」に関して、実は「組織」で少し、話を聞いたことがあるのだ
三尾が担当する仕事絡みではない為、又聞きだったり噂が大半なのだが、共通している事は一つ
「あの「先生」は厄介だ」と言う事
何故、よりにもよって学校町に来たんだ、と、学校町に来た当初、天地が頭を抱えていた様子も見たことあるような。ここで「先生」を見ているうちに、それを思い出した
……何故、そのような評価なのか?
治療の手伝いをしつつ何気なく観察していると、「海賊 黒髭」は自分と自身の契約者に関しては、「先生」に治療されないように、と言うより、接近すらされないようにしている事に気づいた
契約者の方はともかく、黒髭の方はかなり「先生」を警戒している
その警戒っぷりは、「先生」が学校町に定住し始めた頃の天地にどこか似て見えて
(彼に聞けば、わかるのかな)
と、聞く聞かないはともかくとして、三尾はそう判断したのだった
to be … ?
#navi(連載 - 次世代の子供達)
2022-01-25T16:48:04+09:00
1643096884
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連載 - 次世代の子供達-58m
https://w.atwiki.jp/legends/pages/5106.html
【[[死を従えし少女 寄り道「焦りは禁物」>http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/13199/1315717525/499]]より】
建物を溶かし崩すような大技を使った
その時点で、「あぁ、焦れてきたんだな」と遥は判断していた
なにせ、自分の姉である。ある程度考え方はわかる
(……と、なると。こりゃ「奥の手」使うかもしれないな)
「奥の手」はいくつか持っているはず
そのうちの一つは確実に使うだろうな、と
その遥の予想は、すぐに当たる事となる
振りかぶられた拳を、アンナは確かに見ていた
下半身の分厚い氷を溶かすには間に合わないはずだった
そう、「氷を溶かす」のは、間に合わない
「…………え?」
ぐちゃっ、と
キラの目の前で、アンナの体が「溶け崩れた」
すかり、キラの拳は空を切る
「どこに……!?」
分厚い氷での中には下半身すら、残っていない
慌てて覗き込めば、どうやら地面を「溶かして」地面に逃げ込んだらしい……と、言うよりも
(まさか、「自分の肉体も溶かし崩せた」!?)
先程からの能力の及ぶ範囲を見るに、視界の範囲内を溶かし崩しているのだろう、と言うのはわかっていた
なるほど、たしかに自分自身にも視線は届くだろうが………
(……待って。自分を溶かす、なんて無茶をやって………そもそも、「溶け崩れた」状態で視界の届く範囲、ってどれくらい?)
警戒して辺りを見回す
どこから、飛び出してくるのか、とそこを警戒し……
………ぼごぉっ!!
「っわわ!?」
キラが立つ位置、その周りをぐるっ、と囲むように、地面が一気に崩れ落ちた
バランスを崩しそうになり、急いで体勢を立て直す
そして、その直後………溶け落ちた地面の向こう側から、アンナが飛び出してきた
少しだけ、遡る
実況席から試合の様子を見ていた神子は、アンナの体が溶け崩れた瞬間、思わず「うわぁ」と声を上げていた
「慣れないなぁ、アンナのあの「奥の手」」
自らの肉体に向かって「人肉シチュー」の能力を使い、溶かし崩す
アンナが使う「奥の手」の一つだ
溶け崩れた状態でもアンナの意思は残っており、痛みを感じる事もなく、その溶け崩れた状態のまま自由に行動出来る
若干、視界の広がる範囲が狭くなるのが欠点、とは当人が言っていた言葉だが、溶け崩れた体を広範囲に広げれば、広がった分視界が届く範囲は広がるのだから、半分詐欺だ
しかも、溶け崩れた状態から元の姿に戻るのは、ほぼ一瞬で完了してしまう
当人が能力を使いこなす為に努力した結果とはいえ、なかなかに反則気味だろう
(ただ、流石に長時間溶け崩れた状態ではいられない、とも言ってたのよね。となると………)
「……こりゃ、アンナさん本気になってきたな」
神子の思考を知ってか知らずか、そう口に出した直斗
そう、先程までも決して手加減していた、と言う訳ではないのだが、本気でもなかった
しかし、あの奥の手を使った以上、本気と見ていいだろう
「そうなりますと、そろそろ………」
次にアンナが使う、今まで使っていた能力
「人肉シチュー」の応用で発動可能なその能力を使うだろうと、龍哉が口に出しかけたのと
アンナが、それを使いだしたのは、ほぼ同時だった
繰り出された蹴りを、キラは分厚い氷を作り出す事で不正だ
しかし……
(攻撃が、さっきまでよりも重たい!?)
それだけ、ではない
「早………」
「遅いっ!!」
っひゅっひゅっひゅ、と連続して繰り出される蹴撃
早い
一撃一撃のスピードも、上がっているのだ
「まさか、身体能力が上がって…………熱!?」
攻撃を避けながら、気づく
自分の、足や腕の部分だけ、「体温が上がってきている」と
……一定ラインよりも体温をあげられたら、溶かされる!!
ひゅうっ、と自分の足と腕を氷で覆い、体温を下げる
が、相手は能力を発動し続けているのだ
遅かれ早かれ、溶かされる可能性はある
「なら、一気に……」
「……決める!!」
相手も、考える事は一緒だったのか
アンナのスピードが、さらにあがった
半ば残像すら残しながら、一気にキラの懐へと潜り込んで
「ーーーーーーっ!!??」
重たい一撃
いや、一撃ではない。連撃を浴びたのだと理解したのと
キラの意識がぶつりっ、と途絶えたのは、ほぼ同時だった
「ーーーーっふぅ」
きゅう、と気絶したキラを見下ろし、アンナは息を吐き出した
「人肉シチュー」の能力を自分に使用し、「意図的に体温をあげる」事によって、「熱量エネルギーを身体能力へと変換させる」
……父親である日景 翼が、「日焼けマシンで人間ステーキ」の能力を自分自身に使う事によってやっていることと同じ事を、アンナもまた出来た
ただ、父親とは違いかなり最新の注意を使いながらでなければ間違って自身の肉体を溶かし崩してしまうため、精神力の消耗が激しい
使いだしたからには、一気に勝負を決めるしかなかったのだ
「…に、しても。自分を「溶かし崩す」のも、「溶かし崩さない程度に体温を上げて身体能力をあげる」のも、使わないつもりだったのに」
使わなければ勝てなかった
つまり、自分はまだまだ、と言うことである
もっと、鍛錬が必要である
アンナはそう、自覚したのだった
to be … ?
#navi(連載 - 次世代の子供達)
2022-01-25T16:22:43+09:00
1643095363
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連載 - 次世代の子供達-58j
https://w.atwiki.jp/legends/pages/5102.html
【[[死を従えし少女 寄り道「キラの戦い」 >http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/13199/1315717525/495]]から】
……なるほど、凍らせる能力なのだろう
何度溶かしても、氷の剣を出してくる。それだけではなく、足元も凍らせてくる
(相性の問題で言うと、普通に考えればこっちが有利なんでしょうけれど)
それでも、油断はしてはいけない
アンナは、そう考えていた
勝負において最も危険なのは、油断、慢心、そして軽率
慎重たれ、しかし大胆たれ
慢心していても勝負に勝てるのは、「首塚」首領たる「将門」様のような圧倒的な存在だけ
そして、自分にはまだ、それだけの圧倒的な力はない
だから、油断しない。慢心しない。軽率な考えは抱かない
本当であればもう少し距離を詰めて攻撃を続けたいところであるが、あまり接近し続けるのも危険だろう
……一瞬で凍りつかされてしまえば、そこまでなのだから
(あの子の能力の効果範囲がわかればいいんだけど……)
こちらの能力が届く範囲は「視界が届く範囲」……自分の父親と同じだ
彼女、桐生院 キラの能力が視界が届かない範囲まで届く場合、こちらは不利となるだろう
(それでも、相手の動きはまずは封じたいわね)
だから、発動する
自身が契約している都市伝説による能力を
先程までは足元を「溶かす」ことで動きを封じようとしていたが、そちらはすぐに対処される
ならば、別のものを溶かすとしよう
幸いにして、この銭湯ステージは町中をイメージした作りになっている
…町中以外のステージだったのは、優とゴーレムの試合くらいだろうか
戦いを魅せやすいステージとなると、町中の方がいいのだろうかと勝手に考えながら………見た先は、キラの周辺の建物
能力を使い、効果が発動するまで少し時間がかかってしまうのがこの能力の欠点だ
前もってある程度能力を発動させていた地面に、先に効果が現れる
「っわ、わわ……!?」
キラの対応は早い
すばやく地面を凍らせて溶けた地面に足がめり込むのを防ぎ、こちらへと氷の剣を生成しながら接近してくる
その攻撃を避けながら、能力の発動を続ける
……そろそろ、いける!
キラが作り出した地面の氷を利用して、滑るように移動してキラから距離を取った
そして、能力により「温度をあげていた」建物へと止めを刺すように強く、能力を使った
溶けた、融けた
キラが立っている位置の左右の建物が、地面が
ほぼ同時に、溶け融ける
足元のバランスを崩した上で、建物のいち部を溶かし、崩した建物の上層を彼女に向かって崩していく
一歩間違えば下敷きになって大惨事だが……恐らく、大丈夫だろう
彼女も契約者なのだから
溶かす事、融かす事
それが、アンナが契約した「人肉シチュー」の能力だ
見える範囲の者の、物の温度をあげていき、融点に達した時点で溶かし融かす
その都市伝説で語られている、長時間風呂で煮込まれ煮崩れた女性のように溶かし崩すのだ
本来、人間にしか効果が及ばないその能力を契約によって人間以外の物体にすら効果が及ぶようになった
……もっとも、元から実体のないものには効果が及ばないのだが
………さぁ、どう動く?
圧倒的質量をキラの頭上へとふらせながら、アンナは次のキラの動きを警戒した
to be … ?
【[[死を従えし少女 寄り道「焦りは禁物」>http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/13199/1315717525/499]]へ】
#navi(連載 - 次世代の子供達)
2022-01-25T16:15:43+09:00
1643094943
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連載 - 次世代の子供達-53
https://w.atwiki.jp/legends/pages/5083.html
体育の時間と言うものは、どうしても運動神経が良い子が目立つものだと思う
いや、運動神経が絶望的に悪い子も、嫌な意味で目立ってしまうかもしれないが。やはりどちらかと言うと目立つのは運動神経の良い生徒
自分は、運動神経は決して悪い方ではない
スポーツは、ある程度一通りできるつもりだ。もちろん、できないふりもできるけれど
……そんな自分が、あまり注目を集められない
そして、自分よりも運動が(ぽっちゃりな見た目に反して)できるCですら、あまり目立てないこの現状
Cが目立てないのなら、これはもう仕方ないかな、と、最近は思うようになってしまった
本日の体育の時間は、二つのクラスでわかれてバレーボールの試合
先程から、Yがばりっばりに目立っている
新体操以外にもスポーツ万能たるYは、バレーボールではどのポジションもそつなくこなせていたのだ
当人いわく「バレーボール部員には負ける」との事だが、そう言いつつも隣のクラスのバレーボール部員といい勝負をしている
そんなYと、同じくらいに目立っているクラスメイトが、一人
唯と言う名前の彼女は、一言で言えば「巨乳」である。それはもう、女としては「っく、負けた…!」と言いたくなるサイズの巨乳だ。もっとも、当人は「重たくて肩こる」と発言していたけれど
自分だって、ナイスバディと言う自覚はあるが、唯の巨乳にはかなわない、そんな巨乳
彼女は運動神経もYと同等程度にあり、なおかつ、運動中、その胸が情け容赦なく揺れるわけで
わかる、大体育館の網幕の向こう側で、男子が視線を唯に集中させているのは
(全く、男共は………)
その視線、こっちに向けてもいいのよ
あぁ、けれど、やっぱりと言うべきか、R逹は違う
唯のボインボイン揺れまくっている胸元など、ちっとも気にしていない
流石だよくやった、と言いたいのだけれど、こっちにも注目しないのは腹立つ
「えと、咲夜ちゃん、どうかしたの?」
「え?あ、うぅん、なんでもないよ、かなえ」
きょとん、としながら首をかしげてくるCにそう答えておく
どうやらCは、男共の視線はあんまり気にしていない、と言うより気づいていないようだ
全くもって純粋な子であり、ちょっと将来心配になったりもする
「それにしても、優も唯もすごいなぁ。運動、それなりに出来るつもりだったのに、自信無くしちゃいそう」
「二人共ね、中学生の頃から、すごかったんだよ」
中学校も同じだったの、とかなえは笑う
そうか、昔からすごかったのか。それは、注目の的だろうなぁ
「唯ちゃんね、中学生の時、剣道の大会の女子の部で、優勝した事もあるの。他の運動も大体できるし、すごいなぁ…」
「かなえだって、薙刀、結構な腕前なんでしょ?他の運動だってしっかり出来てるし」
「うぅん、私は薙刀もまだまだだから」
もうちょっと、うまくできるようになりたいんだけど、とCは苦笑する
普段はぽややん、としている事が多いCだが、薙刀に関してはしっかりしている、と言うか、上へ上へと目指そうとしている傾向がある
あんまり目立ちたがらないが、薙刀に関しては別なのだろう
それだけ、打ち込んでいる。全力を注いでいる、そういうことだ
「あ、そういえば。さっき、唯が中学の時、剣道の大会で優勝したって言ってたわよね?唯って剣道部だっけ?」
「んっと、今もそうじゃなかったかな」
どうだったっけ。普段、あんまり話すわけじゃないから気にしてなかった
剣道かー。正直、やってる様子がぱっと浮かばない
と、言うか、あの巨乳が剣道着の中に収まるのか、ってその方が心配になってくる。いや、晒とか巻いたりするんだろうなー、とも思うんだけど
唯がYに張り合うように果敢に動いているその様子を見ながら、この日の体育の授業の間、そんな事を考えていた
今日の学校帰りは、Hと一緒になった
HはLと一緒に帰ろうとしていたようだったが、LはYと一緒に保険委員会の会議があったようで。更にその後はまっすぐ教会の手伝いに行くとかで、無理だったらしい
そのチャンスを逃さず、Hと一緒に帰ると言うラッキーを手にすることが出来た自分は偉い、と言いたいのだけれど
「憐はもうちょい、自分のための時間持ってもいいんだと思うんだがなぁ。アーチェリー部の活動辺りがそうなんだろうが、それ以外は委員会の仕事に教会の手伝いに。家でも家事積極的にやってるっつーし」
……うん…………うん
本当、HはLの事ばっかり考えてるというか何と言うか!!
ブレないってのはある意味いいことかもしれないけど!そこは!!ブレてもいいから!!!
「当人が好きでやっているならいいんじゃない?無理矢理やらされてるって訳じゃないんでしょ?」
「そうなんだけどよ……」
そうなんだが、と、繰り返して
「あいつは、昔から。自分よりも他の奴の事ばかりだから」
昔から
付き合いが長いから、それこそ昔からLを見続けてきたからの言葉だろう
……うん、昔から、ずーっと見てたんだ、と思わなくもない
それもこの無自覚ナチュラルホモが悪い
あ、待てよ
そう言えば……
「ねぇ、遥。憐の事、昔から知ってるのよね?」
「うん?当たり前だろ。幼馴染なんだから」
「それならさ………憐って、昔は今と雰囲気とか違ったらしいけど、本当?」
「三年前」
それを境に、Lは変わったらしい、ということがわかっている
それなら、以前のLとはどんな人物だったのか
なんとなく、気になっていたのだ
こちらの言葉に、Hは「誰から聞いたんだ?」と首を傾げつつ、答える
「そうだな。昔はおとなしかったし、ずーっと、俺や直斗の後ろに隠れてた」
「そうなんだ?今は、むしろ直斗とかと並んでる事多い感じだけど」
「今はな。前までは、とにかく気が弱くて、おとなしくて………でも」
…こうして
Lのことについて話しているHは、楽しそうで
「でも、芯はしっかりしてて、やるべき時はやる奴だよ。それは、昔も今も変わらねぇ」
とても、誇らしそうで
…………けれど、なぜだろうか
語るその表情の奥底に、後悔にも似た感情が見えたような、気がしたのは
貴方は笑う、いつでも優しく
貴方は笑う、いつでも悲しく
笑っていてください
どうか、どうか
貴方は、笑っていれば、大丈夫
Red Cape
#navi(連載 - 次世代の子供達)
2022-01-25T15:50:42+09:00
1643093442
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連載 - 次世代の子供達-52
https://w.atwiki.jp/legends/pages/5080.html
「やぁ、すまないね。君も忙しいだろうに」
「お気になさらず。直希さんこそ、体調は……」
「あぁ、僕の体調なら問題ないさ。と、言うか、体調が良くなければ「光輝の書」の天使逹が外出を許してくれん」
「残当な結果であると思われます」
「………解せぬ」
からからと、車椅子を押していく龍哉
その車椅子に腰掛けている直希は、むぅ、と首を傾げている
年齢でいうと、龍哉の父親よりも年上のはずである。遥の父親の同級生と聞いているから、それくらいの年齢だ
が、元々童顔気味であるのか、それとも仕草のせいか、もう少し若く見える
首を傾げると、長い髪がはらりはらりと揺れた
直希は車椅子に乗っているが、別に足が悪い訳ではない
あえて言うならば、「身体中すべてが悪い」状態だ
元々病弱であったそうだが、ここ数年は特に酷い、と龍哉は聞いていた
臥せっている事が多く、食欲もかなり落ちている
それでも、体調がいい日はこうして外に出たがるらしい
「天地は忙しいそうでね」
「そうですね。「狐」の件で、「組織」はたいへんと忙しいのだと聞いています」
かなえが心配そうにそう口にしていたのを思い出す
龍哉としては、かなえにはなるべく「狐」の件に関わらないままでいてほしいと感じているのだが、「組織」所属の契約者である以上、どうしても難しいだろう
ならば、どうするか、と言えば、自分逹は自分逹で出来る範囲のことをやっていくしかない
……もどかしいが、仕方ないのだ
「しかし、天地も。だからと言って「組織」所属でもない君に頼まなくとも良いだろうに」
「いえ、僕も本日は、特に目的があって散歩していたわけでもありませんので」
苦笑しながらの直希の言葉に、龍哉はにっこり、微笑む
本来、直希の外出に天地が付き合うはずだった………というか途中まで一緒だったのだ
その道中に散歩していた龍哉と遭遇し、少し立ち話をしていたところで、天地に緊急の用事が入ってしまった
直希は一人でも行けるよ、と言ったのだが、天地と龍哉にダブルで却下され、龍哉がそのまま直希の外出に付き合う事になったのだ
天地が「建物毎ぶっ飛ばす」と言っていたような気がするが、気のせいだろう
もしかしたら、また学校町から廃工場が一つ、消えるかもしれないが
「龍哉、君は、無茶をしてはいないかい?」
と、く、と直希が龍哉を見上げ、そう問うてきた
にこり、龍哉は微笑んでその問に答える
「無茶はしていませんよ。僕は、僕に出来る範囲の事をしております」
「ふむ、ならば良いのだがね」
からから、からから
この時間帯、この通りは人が少ない
なにせこの街であるから、人が少ない通りは都市伝説との遭遇率もあがるのだが、龍哉はあえてこの道を選んでいた
人通りの少ない場所の方が、直希の体調が悪化しにくい事をしっての事だ
「若いうちは、ついつい無茶をしがちだからね………君達の事だから、「出来る範囲の事」と言って、用意周到に色々とやっているのかもしれんが」
「用意周到、とまではいきませんよ。ただ、備えをしているだけの事です」
「君達の場合、「用意周到」の域に入っていると思うけれどね」
からから、からから
がたがた、がたがた
進む先にあるマンホールの蓋が、がたがたと、揺れる
「「狐」にプラスして、便乗する厄介な連中も入り込んでいるのだからね。もしかしたら、君達くらいに用意周到なくらいが、調度良いのかもしれないが」
「そうなのですよね。「狐」だけで手一杯だと言うのに、他の問題まで転がり込んでくるのですから、困ります」
がたんっ、と
マンホールの蓋をはねのけて、真っ白な鱗を持った鰐が、姿を表した
「下水道の白い鰐」だろう。飛び出したそれは近づいてくる龍哉と直希へと襲いかかろうとする
だが、龍哉も直希も、驚いた様子も逃げようとする様子もなく
龍哉は直希が座る車椅子を押したまま、直希はいつの間にか手元に古ぼけた本を出現させて
「……穿け、ゾフィエル」
出現したのは、槍を構えた天使
胸元や関節などを部分的に守る鎧をまとったその天使の槍は、吸い込まれるように「下水道の白い鰐」の脳天を貫いた
「下水道の白い鰐」とて、戦闘力は高い都市伝説なのだ、一撃で絶命したりはしない
そして、「下水道の白い鰐」の内側から………槍によって貫かれたその傷口の向こう側で
何かが、目を光らせ、飛び出してきた
「下水道の白い鰐」には、類似の都市伝説がいくつか存在する。その中の一つが「トイレから出てくる下水蛇」である
親しい存在である故に共生関係だったのか、それとも単に蛇のほうが鰐の体内に勝手に住み着いていただけか
とにもかくにも、蛇は飛び出し、槍を構えた天使へと襲いかかった
槍の穂先から素早く登られ、天使は対応しきれずに
が、「トイレから出てくる下水蛇」の牙は、天使には届かない
ひゅんっ、と言う音と共に二振りの刀が飛んでくる
「大通連」と「小通連」は、くるり、くるりと舞い踊るような動きで持って、「トイレから出てくる下水蛇」へと斬りかかった
すぱりっ、と蛇が斬り裂かれる。「大通連」の方は、そのままどすりっ、と、「下水道の白い鰐」の口へと突き刺さり、「下水道の白い鰐」を地面へと縫いつけた
槍と刀に縫い止められ、身動きできなくなった「下水道の白い鰐」へと、もう一体、召喚された天使が斧を振り下ろして
………そして、その通りはまた、静かになった
「……やれやれ。どうにも、反応やら判断力が鈍って困るな。やはり、もう少し実戦に出ねば」
「駄目ですよ、直希さん。ご家族や天地さんが心配しますよ」
「…………むぅ」
ぱたむ、と直希が本を閉じると、2人の天使は姿を消す
……姿を消す直前から、天使逹の姿は薄らいでいた
天使の具現化が長時間続けられない程に、直希は弱っているのだ
その事実を、龍哉は改めて確認した
おそらく、天地もこの事実を知っているのだろう
だから余計に、龍哉に直希を頼んだのだ
その点を理解しているからこそ、龍哉は直希の護衛を引き受け、やり遂げる
……それに、直希への「口止め」の件もあるのだし
「さて、それでは。行き先は「ヒーローズカフェ」で良いのですよね?」
「あぁ。あそこでは、海外のヒーロー物の映像も流してくれることがあるからね」
実に興味深い、と直希は笑う
二人共、先程まで都市伝説に襲われたと言う事実など感じさせぬ表情で、そのまま目的地へと向かったのだった
to be … ?
#navi(連載 - 次世代の子供達)
2022-01-25T15:46:54+09:00
1643093214
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連載 - 次世代の子供達-51
https://w.atwiki.jp/legends/pages/5079.html
明かりもつけていない資料室の中で、小さな音が響く
いくつもの資料を確認し、目当ての資料を探し続けた
(これは違う………これも、違う。これじゃない……)
あの件の資料が、この辺りにあるはず……
………がちゃり
「何をしているんだい、君は」
「!?」
ぱちり、と部屋の明かりがつけられた
慌ててそちらへと視線を向けると、呆れた様子の郁が立っており、じっと、こちらを見つめてきてた
「…あらまぁ、郁君。びっくりさせないでちょうだいな」
「それはこっちのセリフだよ。この資料室はCNoの管轄なんだから……ANoは許可を得ないと入ってはいけないはずだよ。許可はとったのかい?」
すたすたと近づいてくる郁のスカートの裾が、ひらひらと揺れる
男性であるにも関わらず、何故、黒のゴシックロリータ服を好んで着るのかはあいにく、愛百合には理解できない世界なのだが、仕事はきちんとやっているらしいからよしとしよう
「忙しそうでしたもの、許可はもらってないわ。資料を持っていく訳ではないのだし、いいでしょう?」
「良くないよ。SNoが管理しているような閲覧制限はいるような資料はないにしろ、ここには大事な資料だってあるんだから」
近づいてくる、近づいてくる
これ以上は無理か。そう判断して、手にしていた資料を戻した
「まぁ、いいわ。私が探してた資料、見つからなかったし」
「そうかい。だが、どの辺りの資料に目を通したのかは、確認しなければいけないね。誰がどの資料お見たのか、記録をとらなきゃ」
「もう、面倒ねぇ」
「仕方ないだろう………近頃、上がピリピリしているからね」
そう言って、郁は肩をすくめてきた
仕方ない、と溜息をつく
流石に、上層部に目をつけられたくはない
「わかったわ。話す。話すけれど、私、ここで資料探すの無理だってなったら急にお腹減ってきちゃったわ。食堂で、なにか食べたいんだけど」
「あぁ、構わないよ……というか、君は食べながら話してくれればいい。今の時間、食堂は空いているだろうしね。話しても問題ないさ」
「組織」の本部の中には、当然のように食堂も存在している
何らかの料理に関係した都市伝説に飲まれた黒服が調理係だ……もちろん、他者の命を奪うような都市伝説ではなく、美味であったり健康状態を整える能力者が、だが
「…ねぇ、愛百合」
「ん、なぁに?」
「君は、今回の「狐」の件、首を突っ込むつもりなのかい?」
資料室を出る間際、郁がぽつり、そう呟いた
そうねぇ、と考えるふりをしてみせる
答えは、最初から決まっていた
「上の指示次第ですわね」
表向きは、そういう事にしよう
けれど、上からどう言われようとも、「狐」の件では動くことにしている
ANo強行派の今の肩身の狭さを、少しでも改善すべきだろう
甘い考えでは、「組織」に敵対行動をとる者に「組織」が舐められる事となる
もっと、もっと、以前の「組織」のように、「組織」所属以外の契約者や都市伝説を支配していくような動きをするべきなのだ
その考えが正しいと、証明する為にも。自分が「狐」の件を片付けられるように動く必要が、ある
慶次にも、協力してもらう必要があるだろう
いざとなれば、郁や郁の担当契約者である紅 かなえの力も利用させてもらうとしよう
…全ては、「組織」の為に
愛百合の返答に、郁はそうかい、とため息を付いて
「こちらは、現状、学校街に入り込んでいる「狐」の手駒の調査だよ。見つけても戦闘はするな、と言われてはいるが、どうなる事やら」
「へぇ……」
…これは、好都合かもしれない
郁に気づかれぬようにこっそりと笑い、愛百合は郁と共に資料室を後にした
再び、資料室の中は闇に包み込まれて
小さく、笑い声が、響いた
to be … ?
#navi(連載 - 次世代の子供達)
2022-01-25T15:43:58+09:00
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