Basweema (詳細・ネタバレ編)


  • ヒューム♀、8a(赤茶髪)、通常配置無し
  • 家出をしていたAhgdeenを助け、恋人のような関係になっている女性。


  過保護な母親・Wadayraの束縛から逃れる為に家出をしたAhgdeenとカダーバ浮沼で出会った心優しい女性、バスィーマ。その愚痴をじっと聞き、最後にAhgdeenの頭を優しく撫で、励ました彼女にAhgdeenはたちまち恋に落ちた。今では結婚をも考えている様子で語るAhgdeenだが……。彼女の思わぬ秘密は、Ahgdeenを追ってナシュモに来たWadayraの話を聞き、二人で事情を説明する為に会った際に突然暴かれる事になってしまった。

カダーバ浮沼に潜む甘い罠(クエスト『空知らぬ雨』)

  ナシュモを訪れた冒険者(プレイヤー)は、ガードのFhe Maksojhaがとある女性と言い争っているのを目撃する。何が何でもカダーバ浮沼へ向かうと言って聞かないこの女性はWadayra。家出をした息子を追ってアルザビからはるばるやってきた彼女だが、「不死の軍団」が根城にしているアラパゴへと続くカダーバ浮沼は危険がいっぱいだとFhe Maksojhaが引き止めていたのだった。それなら「この人だったら、街の外へ行けるんだろ?」とFhe Maksojhaに確認を取った上でWadayraは冒険者に行方不明になった息子・Ahgdeenの捜索を半ば強引に依頼してきた。
  Fhe Maksojhaが冒険者にくれた手掛かりをヒントにカダーバ浮沼を歩く冒険者が出会ったのは、白いローブに実を包んだ美しい女性。突然の出会いに驚いた彼女は悲鳴を上げてしまい、その声に驚き飛び出してきた男性はそのまま崖から滑り落ちてしまう。そのまま崖の段差を転がり落ちた彼は足の痛みを訴え、死ぬと思い込み別れの言葉を口走る(勿論、死なない)。この少々頼りない男性こそが、探していたAhgdeenだった。


Ahgdeenと一緒にいた女性は、家出後に彼が出会ったバスィーマだった。

  母Wadayraは過保護に一人息子Ahgdeenと接しており、彼は母の理想の息子として息苦しい生活をしてきたと語る。その束縛に耐えかね、とうとう家出をしてしまった。しかし行く宛ても当然なく、彷徨っているところで出会ったのがバスィーマだった。愚痴や不満だらけのAhgdeenの話を静かに聞いた彼女は、話が終わると彼の頭を優しく、撫でた。Ahgdeenはその優しさに惹かれ、今は結婚を夢見る程に彼女に恋をしていたのだ。
  母がナシュモまで来ていると冒険者から聞いたAhgdeenは驚きながらも、彼女と共に居たいから母のところへは帰れないという。しかしバスィーマは「貴方は自分が思ってるほど、弱い人じゃないわ」と励まし、母に直接その言葉を伝えるべきだと述べた。その言葉に勇気を与えられたAhgdeenは彼女と、彼を探しに来た冒険者と共に直接母と対峙する事を決意した。


Ahgdeenの話の通り、優しい女性のようだ。躊躇うAhgdeenの背中を押すように励ました。

  ナシュモで母Wadayraと再会したAhgdeenは、勇気を振り絞り胸のうちにある決意を語った。

Wadayra :こんなに痩せ細っちまって、かわいそうに……。つらかったねぇ、苦しかったねぇ……。
Ahgdeen :母さんっ、く、苦しっ……。
Wadayra :もう大丈夫、母さんがずっと一緒だよ!さぁ、早く家に帰って、あんたの好きなメネメン、たっぷり作らなきゃね!
Ahgdeen :か、母さん、ちょっと待って……
Wadayra :家出なんて、ちょっとした気の迷いだったんだよねぇ。お前も疲れてただけなんだよねぇ。ね、お前のことは全部、母さんに任せておけばいいんだよ?
Ahgdeen :母さん!ぼ、僕は、母さんと一緒には、帰らない。
Wadayra :アグディーン、お前、何を言ってるんだい……?

  Wadayraは言葉を失ってしまう。やっと戻った息子は帰らないと言い出した上に、見たことも無い女性を紹介してきたのだ。

Ahgdeen :ごめん、母さん。僕は、ここで彼女と2人で暮らす。彼女と、結婚するんだ。
Wadayra :……そうかい。……この女が、お前をたぶらかしたんだね!この女狐! どんな姑息な手段を使って息子を騙したんだい!?返せ、息子を返せ!そうやって純情なふりして、何人もの男を弄んできたんだろ?息子は騙せても、私の目は、ごまかせないよっ!
Basweema :やっ、やめてください、お母様!私はそんな……
Wadayra :!?お母様なんて呼ばれる筋合いはないよ!いい加減にしな、この泥棒猫!
Fhe Maksojha :わっ、ミスラに対する暴言~!
Ahgdeen :母さん、やめてくれよ!彼女は何もしてない!
Wadayra :お前も、お前だよ!何もこんな……、見るからに胡散臭い女と、結婚するとか言ってんじゃないよ!
Basweema :私は、本気で彼のことを想っています!遊びなんかじゃ、決してありません……! お願いします、彼と一緒にいさせてください!

  絵に描いたような泥沼である。そこにキキルンたちが集まりだした。それは静かなナシュモで突然展開された修羅場の喧騒のためか、それとも……。


Tsetseroon :……おぉ?あなた、においするネ!「らみあ」のにおい、するうル!

  口々に「らみあ」の匂いがすると叫び、散り散りに逃げていくキキルン達。その言葉に親子は思わず頭をひねっていたが……。Fhe Maksojhaは、バスィーマの脚が、なんとヒレになっていたのを見てしまった。驚く一同に、彼女は「ごめんなさい」とだけ言い残し、カダーバ浮沼へと逃げていった。我に返ったAhgdeenは、その真相を確かめる為に彼女を追い、冒険者もまたAhgdeenを身の危険から守るべく追うように浮沼へと走った。


  浮沼でバスィーマがあっていたのは、Lamia No.27だった。そう、バスィーマはLamia No.27の部下であり、クトゥルブになりうる人間を魅了し不死の兵士にする為に放った刺客だったのだ。おそらくはBasweemaと言う名前も、人間に化ける為に使った偽名であり、彼女自身は名もナンバーもない(※特殊能力を備えた強力なラミア達はナンバーを付けられている)ただのラミアの一体なのだろう。
  その現場に、彼女を追ってきたAhgdeenが駆けつけた。彼の処刑を命じる、Lamia No.27に従うように、バスィーマは変身をとき、ラミアの姿になった。それでも、Ahgdeenは怯まずにバスィーマに呼びかけ続けたが、その姿を気に食わなかったLamia No.27は、使役しているクトゥルブ・Moshdahnをけしかけた。


そのMoshdahnのナイフからAhgdeenを守ったのは、なんとバスィーマだった。

Basweema :逃ゲテ……、早ク!
Ahgdeen :ど、どうして……!
Lamia No.27 :浮世ニ惑ワサレタカ……。ラミアノ恥メ。裏切リ者ニ、永遠ノ眠リヲ!


Lamia No.27に文字通り牙を向けるバスィーマ。

  Lamia No.27らの猛攻から二人を守る為に躍り出た冒険者だったが、バスィーマが受けた傷は深かった。戦いが終わる頃には力なく、彼女は地面に倒れこんでいたのだ。


そんな彼女を心配そうに見つめるAhgdeen……。

Ahgdeen :バスィーマ!しっかりするんだ、バスィーマ!
Basweema :アグディーン……?……フフフ、モウ少シデ、貴方ヲくとぅるぶニスルコトガ出来タノニ……残念ダワ。
Ahgdeen :バスィーマ……僕は、思うんだ。自ら不死を望んだ者の中には、ラミアの魅了に惑わされたんじゃなく……僕のように、ラミアのことを……君のことを真剣に想った人がいたんだろうな、って。君をなくしたくない。君と、永遠の時を一緒に過ごしたい。そのためなら、たとえクトゥルブになっても僕は、かまわない……!
Basweema :……アグディーン、貴方ハ、本当ニ優シイノネ。オ願イガアルノ、私タチガ、初メテ出会ッタ場所ヘ連レテイッテ……。

  そういい、バスィーマはその姿を人間の姿にした。彼女は、最期は人間として過ごそうと思ったのかもしれない。


ヴァナ・ディールで初めての「お姫様抱っこ」。

  バスィーハをその腕に抱え、思い出の沼へと運ぶAhgdeen。二人はそれぞれの思い出を語りながら、ゆっくりと、蓮が咲き乱れる泉へと進んでいった。


Basweema :お母様の前で結婚する、っていってくれたとき、私……本当に嬉しかった。

  やがて、バスィーマはAhgdeenに正体を隠してだましていた事を詫び、彼をクトゥルブに出来なかったことで仲間をも裏切ったと心境を明かす。本当に弱かったのは自分自身だった、と。そんな彼女にAhgdeenは裏切ったなどと思ってはいないと伝え…。

Ahgdeen :君は、それだけ苦しい思いをしてまで僕のことを、守ってくれたんだ。
Basweema :ありがとう……。
Ahgdeen :……ねえ、君にずっと、伝えたかった言葉を言うよ。
Basweema :……。……なぁに?
Ahgdeen :君のことを、愛してる。……世界中の、誰よりも。

Ahgdeen :……。……バスィーマ?聞こえたんだろ?返事、してくれよ。またそうやって、僕をからかってるのかい?はは、今まで何回も引っかかってきたけど、もう、騙されないからな……。ねえ、だから寝たふりなんかしないでよ、目を開けてよ……。


しかし、彼女が応えることはなかった……。

  この後Ahgdeenは冒険者に、愛する人を亡くした悲しみと憤りをぶつけるが、もう彼女は帰ってこない事も理解していた。その体と、求婚するときに渡そうと思っていた指輪は、おそらく蓮が咲き乱れる泉に沈められたものと思われる。Ahgdeenは、押し潰されそうな喪失感を胸に抱えながらも、母の待つナシュモへ戻り、共にアルザビへ戻った。


ヴァナ・ディール流「人魚姫」?

  「空知らぬ雨」とはすなわち涙の事のようだ(参照:FF11用語辞典「空知らぬ雨」)。その涙はAhgdeenのものか、バスィーマのものか、あるいは二人のものかもしれない。出だしはギャグ調のクエストだが、なんともやるせない最後である。
  なお、バスィーマの人間に化けた動機は上記の通り、人間を誘惑しクトゥルブに変えるための罠だったわけだが、その後半部分はかのおとぎ話「人魚姫」と似ている部分もある。自分が人間で無い事を明かさぬまま、恋する王子に接近した人魚姫、自分の動機と正体を明かさぬまま予定通りAhgdeenを虜にしていくバスィーマ(しかし実際は彼女も彼の好意に多少なりとも惹かれていたのかもしれない)。やがて王子の側に居るには辛過ぎる人魚姫に、仲間の人魚達は「人魚に戻る方法はこのナイフで王子を殺すこと」と伝え、ナイフを渡し、王子を裏切る事を薦める。バスィーマもまた、Ahgdeenに正体がバレそうになり、共に居れなくなった為にLamia No.27に報告した所、Ahgdeenが追ってきた為にその殺害を命令される。どちらも己の本来の姿を保つ/戻る為に恋人『役』だった男性を殺さないといけない運命となった。
  一度は眠っていた王子を刺そうと寝室に忍び込んだ人魚姫は、愛するあまりそれは出来ないと悟り、自らをそのナイフで貫き、泡となった。そしてバスィーマは襲われそうになったAhgdeenを守る為に自らの身で盾になった。その武器となったのは、奇しくも「ナイフ」だ。そしてバスィーマはAhgdeenを愛する心を抱えたまま死ぬ事を望み、二人が出会った泉に連れて行って貰い、そこに沈められたような描写がなされている。
  勿論相違点でいうと似てない部分が多いが、オマージュ的に「人魚姫」の物語がベースにあるのではないか、と思いながらクエストを見ると、より一層切なく、美しい物語に見えてくるかもしれない。


Ahgdeenの言葉が届いたかは不明だが、心は届いている。動かなくなった彼女の顔には、笑みが……。

最終更新:2008年07月31日 12:27