Ulmia (詳細・ネタバレ編)


  • エルヴァーン♀、独自フェイス(ベースはF6)、通常配置無し
  • 家族構成:祖父(Despachiaire
  • タブナジア地下壕の長老・Despachiaireの孫娘。
  • タブナジアで「忌み子」と呼ばれるPrisheの親友であり数少ない理解者。


  「プロマシアの呪縛」ではヒロイン・Prisheの最も身近な人物であり、無二の親友であるウルミア。一見、「プロマシア」のキャラクター達の中でも数少ない常識人であり、特別な能力で敵と、運命と戦っている訳ではない。それでも「(時には世界を滅ぼしかねない程の)慈愛に満ちた女性」であり、神をも降臨させるとも言われている「石の歌」を再現できる才能と、美声の持ち主でもある。他のプロマシアキャラクター同様、「超設定」を施されたキャラクターの一人とも言える。

誰にでも向けられる「慈愛」

  我が強く、それぞれ目標がハッキリしているプロマシアの主要メンバー達。その中でウルミアはある種異質といえるのかもしれない。彼女の主な同行の理由はPrisheの安否を心配した上でのものが大半なのだ。その中でタブナジア聖堂とサンドリア聖堂の繋がりや石の歌についての調査に向かう事もあるが、基本的に全ての動機はPrisheに繋がっているともいえる。
  プロマシアの主要メンバーの中では目立った戦闘能力についても語られていない(しかし非常に危険なプロミヴォン・ヴァズ等にも堂々と同行してくるが)。実質的に「非戦闘員」であり、強く対立する要因となる「使命」めいたものも特に無いウルミアは、逆に言うと他のキャラクターに比べて心が自由であるともいえる。元々タブナジア聖堂の信者であり、かつては聖歌隊にも所属していたウルミアは、道徳心も高く、結果的に暴走しがちな他のキャラクター達を気遣う場面も多い。


お互いを裏切る流れになっても、ウルミアは気遣いを失わない。

  特にその慈悲深さは、同じタブナジア出身のPrisheと、チェブキー兄妹に向けられる。いずれも、プロマシアミッション開始前から「共にタブナジア自警団のメンバーとしてタブナジアを守る活動をしていた」仲であり、その生存すら忘れられていたタブナジアという閉鎖空間で育った幼馴染同士といえる。よって、彼女が彼らの心配をしたり、「困った行動」をした時に擁護する気持ちも判らないでもない。
  しかしものには限度と言うものがある、とも言える。Prisheに関しては、行動そのものは粗野で破天荒ではあるが、基本的には世界を救おう、犠牲者は誰も出さないという思想をもとにしているため、ウルミアの擁護もまだ理解しやすい。しかし、問題はチェブキー兄妹のほうである。

Ulmia:どうしたの? いったいなにがあったの?ほら、泣いてばかりじゃわからないわ。困っているのなら、私たちに相談してごらんなさい?
Cherukiki:おいらたち、もう、おしまいなんだ。
Kukki-Chebukki:おいらたち、もう、じえんどなんだ。
Makki-Chebukki:おいらたち、ジュノから出ていかなくちゃならないんだー!
Ulmia:まぁ、どうして?あなたたちのことは、彗星のごとく現れた実力あるタルタルたちだと噂されていたわ。それなのに……なにか、大きな失敗をしでかしてしまったの?
Makki-Chebukki:ううん、おいらたち、ちゃんとアメとムチ、騙しと裏切りのテクニックを駆使して……
Kukki-Chebukki:地元の人にわいろを渡したり、上官を見限ったり……
Cherukiki:出世街道まっしぐらの将来有望な官僚の卵になれてたのに……


現実世界でも犯罪まがいな事をやるチェブキー兄妹に関する噂を信じていたウルミア。昔から知っているなら、疑問の一つでも浮かびそうなんだが……。

  百歩譲って、このエピソードを純粋に彼女が信じていたとしよう(それでも会話の流れが何回読んでも、管理人は不自然な流れと思えてならない)。このチェブキー兄妹は、ミッションでの出会い以来、冒険者(プレイヤー)を事あるごとに喧嘩をふっかけ、挑発し、妨害し続ける、いわゆる「トラブルメイカー」を超えた活躍(?)を見せるキャラクター達である。そして、冒険者と共に行動をする事が多いウルミアの前でも、当然そのような態度を振舞う事も多々ある。「帝龍の飛泉」に向かう冒険者達の前に立ちはだかった彼らは、Tenzenの口調を小ばかにしながら登場し、一同に問答無用でデジョン2を掛けて強制送還しようとする。しかしこれはCherukikiが「力み」すぎて魔法が失敗した為に未遂で終わる。


そんな時でも守ろうとするウルミア。お人好しにしても限度が……。

Justinius:この馬鹿3人組は俺に任せて、先に行け。少しばかり痛い目にあわせてやらないと図に乗る奴らだ。
Tenzen:ジャスティニアス殿、かたじけないでござる!
Ulmia:できるだけ手加減をしてあげてくださいね、ジャスティニアスさん。

  そこで斧を構えるJustiniusも充分物騒ではあるが、元々「問題児」といわれている三人である。しかも今さっき妨害しようと不意打ちをしてきたところだ。むしろ何か弱みでも握られてるのか?とウルミアのチェブキー兄妹への過保護っぷりに脈絡が無い事もある気がする。
  「優しい」から怒らない、というわけではない。実際、ウルミアが行き過ぎたPrisheの「悪戯」に怒る場面もあるし、逆にそのPrisheを「殺さなければならない」という結論に辿り着きそうになった一行に感情を露にし反対した時もあった。確かに感情に任せた言い分であり、冷静なディベイトからは程遠い。しかし、だからこそ人間らしい言動ともいえる。


「やむを得ない犠牲」に議論をする一同、そして珍しく孤立するウルミア。結果的に彼女の望みにも沿える流れになっていくが、一部では「感情任せの理想論」といわれても仕方が無い言い分ともいえる。

  個性豊かで、我が強いプロマシアメンバー。その中でも中立の立場に近く、皆に平等に優しく、常識人というイメージが強いウルミア。それだけにチェブキー兄妹に対する態度は不自然なほどの理解を示し、最後まで諭そうと勤める。それ故に彼女の作られた「慈母」に近いイメージが強すぎる感も多少なりとも受けたプレイヤーもいたのではないだろうか。コレに関しては過剰な演出故、と言わざるを得ないのが残念である。


「癒し系」は殺伐としがちなプロマシアミッションのストーリーで重要であり、ウルミアもその役に収まっていると言えるが、時には「やりすぎ」と感じた人もいるのでは……?

プリッシュとウルミアの過去・紡がれる絆

  ウルミアといえば、何といってもPrisheの親友である。冒険者と出会うときも、二人でタブナジアの外を見回りに出掛け、無事に街に帰ってきた所だった。


登場から「いつも一緒」状態の二人。

  タブナジア地下壕の長老・Despachiaireの孫娘である彼女だが、Despachiaire自身は孫娘の親友のPrisheに冷たくあたっている。二人の行動を快く思っていないが、ウルミア自身が既に成人したオトナの女性である為に、禁止を強要するわけにもいかない。
  では逆に、唯一の血族である祖父Despachiaireの反対を押し切ってまで、ウルミアがPrisheを大切に思っている訳とは何か?それは、彼女が冒険者に語る、Prisheとの出会いに理由があるようだ。

Ulmia:<PC NAME>さん?私を探していたのですか?すいません、私、どうしていいのかわからなくて。そういうときは、ここで歌を歌うことにしているんです。ほら、この風……。ここには、想いを運ぶ風が吹くんです。その風はこの大空に舞い上がり、海原を越えて、世界中に響き渡る……。そしてそれを聴いた女神さまが、その声に、想いに、応えてくれるんです。Ulmia:昔、私が小さい頃、ここで女神さまにあるお願いをしたとき、女神さまは応えてくれました。

  幼い日のウルミアは、タブナジア聖歌隊に入る為の試験に落ちてしまった。皆の前で歌う事に緊張し、思うように実力が発揮できなかったのだ。そんな悲しみを抱えて一人でミザレオで夕日を眺めていた彼女の前に現れたのはPrisheだった。ウルミアの心に溢れる悲しみの声が聞こえて、彼女なりに慰めに来たようだ。


ウルミアが幼い姿であるのに対し、Prisheは現在と変わらない姿であるのにも注目したい。


Prishe:どうしても入りたかったって気持ちもわかるけどよぉ、そんなもんだけで、世界の終わりだとか思うなよなぁ!?
Ulmia:……!?
Prishe:いいか!?おまえはまだガキんちょだから知らねぇだろうが、世界なんてもんは、すげぇでっけぇもんなんだぜ!?ほら、見ろよ!この右手の先に広がる世界……この左手の先に広がる世界……その上にもその下にも広がる世界……こーんなにたくさんの世界が、おまえの周りにはあるんだ!わかるだろ!?ヴァナ・ディールの中の、タブナジア諸島!その中心タブナジアに住んでるおまえ……ウルミアの世界なんて、すっげぇちっぽけなのさ!……でも、まあ、確かに、おまえがタブナジアの聖歌隊で歌ってる世界は、終わっちまったかもしれねぇ。おまえの父さんや母さんが、おまえに望んだ世界は終わっちまったかもしれねぇなぁ。……でもさ、おまえがヴァナ・ディールで歌ってる世界は終わっちまっていねぇ!わかるだろ!?ほら、歌ってみようぜ!その世界を作るために!!!

  この後二人は夕日を眺めながら歌い、ウルミアは元気と自信を取り戻し、そして再試験を受け、無事にタブナジア聖堂聖歌隊に入れたのだった。幼いながらも夢が破れたかもしれないと絶望していた彼女にとっては、乱暴な励ましの言葉ながらも、Prisheのシンプルな応援は、まさに女神が遣わした、ウルミアにとっての救世主とうつったのかもしれない。その後タブナジア聖堂に入ったウルミアはPrisheの素性を知りながらも、友情を深めていった。
  つらい時に側に居てくれる「友達」の大切さを誰よりも知っているウルミア。Prisheに襲い掛かってくる運命、そんな彼女を側で見守り、支えたいと思うのは自然な感情といえる。ウルミアは、ミッションを通してPrisheを想い、かつて受けた恩義、そして今まで築いた友情に報いる為にもウルミアは頑張っているのだ。それは、時には他のプロマシアミッションで主要のキャラクター達と対立する形になっても揺るがないものだった。


Prisheが倒れたと聞いたときも真っ先に駆けつけた。

  そしてミッションを通してPrisheもウルミアの安否を心配しあっている場面は多く見られる。二人の友情は、Prisheを蝕む運命より強い絆である事を強く印象付けていく。


プロマシアミッションの「エンディング」では、二人が出会った思い出の場所で歌を奏でるウルミアと、それをじっと聞き入っているPrisheの姿を中心に展開していく。

  その関係は、プロマシアミッション終焉後も続いているのが、クエスト「日輪を担いて」から続いていく物語でも見られる。Esha'ntarlからBahamutガ再び「リヴェーヌ岬」で目撃されたという情報を冒険者が聞かされ、現場に向かう事になった。そのときにリヴェーヌで出会うのが、タブナジア自警団に戻って活動を続けているウルミアとPrisheだった。


今も二人で警護にあたっているらしい。

  再び出会ったPrisheの様子が前と違う事に戸惑う冒険者だったが、実はそれは再会に「照れた」Prisheの演技であり、悪戯だった。そして、それに気付いて、怒るのがウルミアである。長年の付き合いである彼女だからこそ、Prisheの演技を簡単に見破ったのかもしれない。


腰に手を当て仁王立ちするウルミアに怯えるPrishe。この後とんずらで逃げる。


忘られた都の歌姫

  ウルミアのもうお一つ、大きな要素といえるのは「歌姫」である。冒険者が始めてウルミアと会話をするシーンでも、彼女は一人ミザレオの海岸でハープを弾いている場面だった。


幼い頃から、ここで歌を紡ぎながら風と「会話」を繰り返し、気持ちを整理する事が多いと語る。

  聖歌隊に所属していた彼女はタブナジア大聖堂でも有名で、今でもその美声について語る者も多い。ミッションの大半では、この「タブナジア聖堂の聖歌隊だった女性」という立場を利用したストーリー展開が多くなっていく。そしてそこから、「タブナジア聖堂とサンドリア聖堂の間おきた歴史」と「神を降臨させる伝説がある「石の歌」について」調査していく事になり、分岐する物語の一角として活躍する。


サンドリア港でハープを奏でるウルミアに、NPC達が聞き入る。

  結果から言うと、プロマシアミッションでは「石の歌」を再現することなく、物語が進んでいく。その為、彼女が中枢となってプロマシアミッションで歌を奏でるというわけではなく、物語に彩を添える形に留まっている。


全てが終わったお礼にと、冒険者のためだけに演奏をしてくれる。ある意味豪華。

  そして、まるでウルミア自身の優しさを象徴すかのように、エンディングムービーでは、プロマシアミッションでの主要人物達のその後を描きながら彼女が歌っているかのような演出がされている。


そしてそんな彼女の歌に誘われるかのように……。

  プロマシアミッションでは、その役目が鳴りを潜めた感がある「石の歌」であるが、ジラート・プロマシアミッションのエピローグとして描かれる連続クエストの最終章「世界に在りて君は何を想うのか?」で、ついにその全貌を見る事が出来る。


ちゃんと描写はされたが、ミッション自体では見られなかったのが少々残念である。

信仰と信頼と・ウルミアの家系と、祖父との関係

  タブナジアクエスト「信仰と信頼と」では、ウルミアの祖父であるDespachiaireの過去を中心に展開していく。一見、ウルミアは直接関係無いように思われそうだが、三世代に渡るDespachiaireの想いを通じて、ウルミアへの愛情、そして隠れた感情が紡がれている。
  南サンドリアで「リヴェーヌワート」を使った料理を懐かしむ老女・Rouva。彼女の口からDespachiaireの意外な過去を聞く事になる。それは、クリスタル大戦よりもはるか昔、タブナジアとサンドリアの交流が盛んだった時代。Despachiaireは当時、タブナジアからサンドリアを定期的に訪れる行商人であった。しかも……。

Rouva:あらまあ、そんな!どうしましょう……。でもあのお方には、いい人がいらっしゃいましたから……。サンドリア大聖堂の神学生の方とご一緒になり、後にタブナジアで暮らされたとか……。今もご無事でいらっしゃればよいのですが……。そのお方の名前ですか……たしか……デスパシエールさんとおっしゃったかしら。

  つまり、ウルミアの祖母・Despachiaireの妻となった女性は元々は、サンドリア大聖堂での神学生であり、結婚を期にDespachiaireと共にタブナジアへ渡ったことになる。現代のように自由に冒険者達が行き交う世界ではない、その決断はサンドリアに戻る事は無いかもしれないことを意味し、サンドリア大聖堂と親密な関係にあるタブナジア大聖堂があるとはいえ、本来の信仰を愛する男性の為に「捨てる」ことになる。その決意というのは並ならぬものだったと言うのは言うまでも無い。当時の彼女についてはRouvaはこのように振り返っていた。

Rouva : 当時は珍しかったのですけど、とてもお歌の上手な方だったと記憶しております。それにお2人ともお美しくて……はたから見ても、それはもうお似合いでした。当時の若い女性の間ではよく話題になっていましたから、私以外にもきっと覚えている人もいると思いますよ。ただ……教会に属する女性がそこに出入りする商人と一緒になったことで、後ろ指をさされるようなこともあったようです。だからタブナジアに移り住んだ後は、そのデスパシエールさんももうサンドリア教会に出入りすることはなくなったとか……。


ミッションでも、サンドリア聖堂に関心を見せるウルミア。祖母の時代からの教えからかもしれない。


  これについては、Rouvaが覚えているように、Despachiaireは結婚後サンドリア大聖堂を避けていた事を認めた。そして愛する女性を故郷タブナジアへ連れてきた事によって色々と自分のうちに秘めていた感情を、まるで懺悔をするかのように冒険者に語りだした。


母娘の絆が強い程、Despachiaireは孤独感を感じた。


なお、回想に出る母子はウルミアの少女時代なのか、それともその母の少女時代なのかは不明。

Despachiaire : 妻が遺したひとり娘、つまり、ウルミアの母親は、とても信仰のあつい娘でした。きっと、元々サンドリア大聖堂にいた妻の影響があったのでしょう。 けれど……妻と娘が女神様のことについて話すたびに、私は複雑な心境でいたのです……。疎外感、罪悪感……私の中に醜い感情がいりまじっていました……。私は所詮、ただの商人だったのですから……。私は……妻から信仰を奪ったのではないか?妻は後悔していたのではないか?
妻が亡くなった後も、そしてウルミアの両親が亡くなった後も、その思いが消えることはありませんでした……。


ウルミアへの愛情は、母子三代続くDespachiaireの恋心にも近い独占欲と信仰の差からくる不安を募らせたものかもしれない。

Despachiaire :ウルミアは……妻や娘にとてもよく似ています。容姿も、その信仰も、その歌声も……。ウルミアがこの街をまた出ていくと言ったとき……胸が、はりさけそうになりました……。これは女神様が、私から、ウルミアを……そして妻を、取り返しにきたのだ……とも考えました。けれど……妻には妻の、そしてウルミアにはウルミアの「信じる心」があったのだと思います。そして何よりも……妻は……妻は、後悔していなかった……。 せめて、そのことに対してだけでも、私は「信じる心」を持ちたい……そう、思います。そう……信じる心があれば……後悔することなどないのですから……。


愛情はあっても信仰心が無かったDespachiaireにとっては、サンドリア聖堂もタブナジア聖堂も、妻、娘、そして孫娘への疎外感と後ろめたさの象徴となっていった。今思うとタブナジア聖堂のPrisheを嫌うそぶりを見せるのも、ウルミアを「奪う」対象と感じた、嫉妬からとも言える。

最終更新:2008年11月06日 20:17