Bernahn (詳細・ネタバレ編)


  • エルヴァーン♂、8a(白髪)、通常配置無し
  • Faihalの「じいや」を名乗る人物。


GaliwaoDeminzaKobdyuの話が正しければ、このベルナーン氏がFaihal嬢を屋敷から連れ出した張本人という事になる。しかしどうにも、彼らが心配するような、誘拐などを目論む悪人にも見えない。彼の真意、そしてその裏に隠されている物語とは……。


ある富豪が望んだ夢(クエスト「主人と私」)

  ある平和なアトルガン白門にて。今日もMhasbaf少年は将来の夢を描きながら街を警備する一人遊びをしていた。そこに慌てた様子で駆け寄ってくるガルカの三人組。


Galiwao : どうだ、見つかったか?
Kobdyu : いえ、街中を見て回りましたが、影も形も見当たりません……。まさかまさか、誘拐では……?もしかして、もしかすると、さらわれて縛られているのかも……。
Deminza : お前っ、なんてこと言うんだ!冗談にも程があるぞ!?
Kobdyu : でも、でも……。
Mhasbaf : お兄さん(お姉さん)、いまのみた?これは事件の匂いがするね~。

  Mhasbafと冒険者(プレイヤー)の視線に気づいたのか走り寄ってきた三人組。

Deminza : そこのお前たち!! 尋ねたいことがある!
Mhasbaf : ゴホン、なんでしょう?困ったときはこの僕にお任せください!
Kobdyu : ええとええと、うちの主を、見かけませんでしたか?
Galiwao : お前たち、ちと気が逸りすぎだ。
Galiwao : 騒がせてすまぬ。我々はある方を捜している最中でね。その、申しにくい話なのだが……我々の仕える屋敷の主なのだ。主は若くして家業を継ぎ、苦労を重ねて成功された方でね。今では皇民街でも名の知れた実業家であられる。それが昨日、従者と散歩に出かけたきり、屋敷に戻られていないのだ。そこで、こうして我々従者が手分けして捜している次第……。主はお育ちが良い。たとえ、巷に紛れようとも、気品ある言動、それに知性をたたえた強い眼光はお隠しできまい。そう、それは時に黄金色の宝石のようであり、いや、瑠璃色か、あるいは真紅……。
Kobdyu : えと……その、そういうお方なんですけどどなたか見かけませんでしたか?
Mhasbaf : う~ん……見かけたような、見かけていないような……。
Deminza : おい、しっかりしてくれ!我々は目撃情報だけが頼りなんだぞ!!
Mhasbaf : そんなこと言われても、最近は、この街にもよそ者が増えたし…思い出せないよー。


  手掛かりがなく焦るガルカ達。そのリーダー格と思われるGaliwaoは冒険者に気付き、「西から来たという、冒険者」と見抜いた上で、是非主を見つけるのに協力してほしいと頼んできた。三人が焦るのにも理由があり、主と言われる人物が元々体が弱いというのもあるが、その真相はMhasbafの何気ない一言から明らかになっていく。

Mhasbaf : ちょっと待って!その人、大人なんでしょ?やっぱり、大人が迷子になるなんておかしいよ!
Galiwao : 実はな……。主の行方には、心当たりがある。
Mhasbaf : えっ?それは本当?
Galiwao : 昨晩、主が散歩に出たときにな、うちの世話人が1人、そばについておったのだ。そやつまで、主と一緒に消えている。 もしかすると、主はそやつに……。ああっ!だいたい前々から私は、そやつが怪しいと思っていたのだ!! 聞けば、奴は幼い頃から犯罪すれすれの生活をして、生きてきたというではないか!!きっと今回も、主の財産を目当てに近づいたに違いない!!
Mhasbaf : そんなのひどいよー!僕も、捜すの手伝う!お兄さん(お姉さん)も、その人を助けるのに、協力してあげてよ。
Galiwao : 万が一のことが起きる前に、主を見つけ出したい!お主らも、よろしく頼むぞ!

 そういって走り去るガルカ達。しかし冒険者は、別の場所から今の一連を見守っていた別の視線に気付いていた……。


  早速聞き込みを開始したGaliwaoを見守る二人の男女。若いヒュームの娘とエルヴァーンの老人のようだ。Galiwaoから隠れるように、電灯の裏に隠れて様子を伺っていた。


Faihal : (ああもう、ここまで手が回ってるなんて……。)
Bernahn : (……万事休す、じゃな)
Faihal : (弱気になっちゃダメ!)
Faihal : (こうなったら、誰かの力を借りるしか……。)
Faihal : わっ!?

  振り返った女性、Faihalの背後には冒険者が立っていたのだ。

Faihal : あっ……さっき、あいつらと話してた冒険者……?
Bernahn :……見つかってしまいましたか。やはり、今回は諦めた方がよいのでは……。

  諦めを見せるエルヴァーンの老人・ベルナーンだったが、意を決したようにFaihalは冒険者に向き直った。


Faihal :……じいや。この方に、頼んでみてはどうかしら。
Bernahn : は、はい?
Faihal :申し遅れました。わたくしが、あのガルカたちの主です。彼らに代わってお詫びします。いきなり不躾な依頼をしたようで……申し訳ありません。

  Faihalは、自分こそが先ほどのガルカ達の主であり、彼らが誤解していると冒険者に語りだした。共にいるベルナーンは彼女の良き従者であり、やましい事は何もない人物という。しかし二人が屋敷を抜け出したのには深い事情があるとの事だ。


Bernahn : (お、お嬢さま?)
Faihal : 見てのとおり、とてもとても強そ……いえ、病弱な、じいやです。ほら、じいや……また咳が!
Bernahn : ゲホ、ゲーホ!
Faihal : じいやはもう、わたくしのために十分尽くしてくれました……。あとは、自分の生を好きなように生きてほしいのです。


  幼い頃に両親を失ったFaihalを育ててくれたのがこのじいや・ベルナーンであると話し、年老いてしまった彼には大変な恩があるという。暇を与えて余生を「故郷のサンドリア」で過ごして欲しいと願ったが、いざ別れるとなるとFaihalも名残惜しくなってしまったという。しかし体調を気にするあまり過保護なGaliwao達に反対され、せめて最後の思い出にとベルナーンと二人で散歩に出かけたと見せかけ、二人で変装をし、港まで見送る為に抜け出して来たと明かす。
  しかしいつまでも帰ってこない二人を心配しGaliwao達が探しに街に飛び出してきた、というわけだ。Faihalは冒険者に、二人が港で別れを済ませる間にGaliwao達を別の場所へ……二人が向かうのは白門の南側の「アルザビ港」……街の反対側のナシュモへの便が行き来する「イフラマド港」へ誘導してほしいと頼んできた。
  事情を知ってしまっては、二人の気持ちも分からないでもない。承諾した冒険者に安堵し、二人はアルザビ港に向かう事にした。


そして思い出したように立ち止まり、冒険者のもとに戻って来たFaihal

Faihal : あ、そうそう。言い忘れたことがありました。


Faihal : もしあいつらに告げ口したり、変なこと言ったら……。そのときは、ただじゃおかないよ。覚悟しな!

(;°д°) <!?

Faihal :……うふふ。頼みましたよ。

  やはりこの話は何かしら裏がありそうな展開である。ともかく、冒険者はガルカ達を探し出し、イフラマド港に誘導する為に走った。



  傭兵達から情報を集めると語ったGaliwaoを追って中央広場に向かうと、彼はKubhe IjyuhlaTohka Telposkhaに話を伺っている所だった。しかし、二人の反応はというと……。

Kubhe Ijyuhla : あっ、キミキミ!ちょっとぉ~!
Tohka Telposkha : (助けてー!長話に付き合わされて、うんざりしてるのよぉ。)

  やっぱりウザがられている様子だった。困り果てた二人と一緒にGaliwaoの話を聞く事になってしまった。

Galiwao : 主はな……。幼いころに両親を亡くしていらっしゃるのだ。そのときに、莫大な遺産を相続しておられる。でもな、主はその金を必要以上に使うことはせん。いわゆる世間の成金と違ってな。ほとんど外に出ることもなく、質素で穏やかな生活をしておられる。屋敷で働く我々をとても大事にしてくれる、よき主なのだ。
Galiwao : だが、悲しいかな……その人のよさにつけこんで、有り余る富を狙う輩は、数え切れないほどたくさんいるのだよ。……まさか、そのような輩が屋敷で働く者の中にもおったとはな……。うぬぬ……!あやつめ、今度見つけたらただでは済まさぬ!!
Galiwao : して、冒険者殿!ここにいるということは、主について何か情報を手に入れたということですな!?

  そこで作戦の通り「イフラマド港」と答えた冒険者にショックを隠せない様子のGaliwao。イフラマド港から向かうその先とは「疫病が流行した不浄の土地」ナシュモ。病弱な主には過酷過ぎる目的地である。ほかの二人にも急遽イフラマド港に向かうように伝えてほしいと言い残して走り去っていった。一方、すっかり置いてきぼりになったKubhe IjyuhlaTohka Telposkhaだが……。

Kubhe Ijyuhla : バイバ~イ……ふぅ、助かったぁ。
Tohka Telposkha : 事情が全っ然わからないけど、とにかくありがと。

  本気で困っていたようだ。

  見つけた二人目のガルカKobdyuは、気弱で人見知りの性格が災いして、人通りの多いバルラーン通りに来たはよかったが、聞き込みをする勇気が無くて立ち往生していた。その様子が不気味で客が寄り付かないと不満を漏らすRubahahは、通りすがった冒険者に「ちょいちょいと追っ払ってきてくれないか」とお願いする有様である。
  見知った冒険者の姿を見て安堵した様子のKobdyuは、この一連に関する悩みを打ち明けた。

Kobdyu : あのとき、僕も一緒に行っていれば……今頃、ミンチにはされなかったはず……うっうっ。 うう……すみません。僕、すぐに悪いほうに考えちゃうんです。僕は、人と話すのがもともと苦手なんですけど……でも、聞き込み以外の方法で、僕なりに見当をつけて、捜しているんですよ。
Kobdyu : 主と一緒に、いなくなった仲間が1人いるんです……その人を追おうと思いまして。その人には、よく「仕事が遅い!」って、よく怒られました……。でも、残った仕事を手伝ってくれたり、優しいところもあったんですよ。 勉強が嫌いで、文字の読み書きが苦手なところも、僕と似ていて……すごく親近感を持っていました。ガリワウさんや、デミンザさんは、その人が主を連れ出した、と決め付けているんですが……。僕はあの人が、主に何かするとは思えないんです。今回のことも、深い理由があるんじゃないか、と。だから、ちゃんと会って話がしたいんです。

  そう語るKobdyuは、ネガティブ思考ではあるが、平和的でやさしい性格が滲み出ていた。ナシュモに向かったかもしれないという事を冒険者から聞いたKobdyuは、海風が主の体に障るのではと心配した。そしてナシュモ自体行くのが始めてで不安も隠せずにいた……だが、もっと心細いであろう主を思うと居てもたっても居られない、と走り出した。そして、振り返って冒険者も応援していった。


いい子や……。

  そして三人目のガルカは、熱血漢のDeminza。情報屋が居ると聞きつけたから向かってみると走り出した彼が居たのは、情報屋Cacaroonの店だった……。しかし「主」など知らない、情報もないと言うCacaroonにいきり立っている様子だった。

Deminza : おぉぉっ! 冒険者殿っ!いま、情報屋とやらを見つけたところなのだ!!だが、キキルンではないかっ!話がまったく通じんぞ!!
Cacaroon : おきゃくさ、しつれーい!カカルンに、しつれーい!カカルンのほっぺ、ぷくぷくぷくぷくッ!ね!
Deminza : 俺は近頃、どうも主の様子がおかしいと感じていてな……。今までは、ご自分の体を大切にされて、屋敷で穏やかに暮らされていたのに。突如として、毎日のように、「皇民街区の外に出たい」などと仰るようになってしまった……。理由はわかっているのだ。あの世話人……!主と共に姿を消したあやつに、怪しげなことを吹き込まれたに違いない。
Deminza : 街の情報屋なら、あやつの行きそうな場所がわかるのではないかと思ったのだが……。だいたい、あやつは元から怪しいと思っていたのだっ!朝から晩まで主にべったりで!!くっ……!!
Deminza : ぬおぉぉっ!!これ以上、主をあやつの魔の手に委ねるわけにはいかん!!

  イフラマド港を指示する冒険者に戸惑いを隠せないDeminza。その様子を見ながら意地悪そうに「なしゅも、すてきなとこよ?カカルンのなかま、いぱーい、ね!」と茶化すCacaroonは彼の不安を煽った。Deminzaはそのままイフラマド港を目指して爆走していった。


そして、一連の様子を隠れて見ているのは……。


  ガルカ達がイフラマド港(下手したらナシュモ)に向かう事になり、一応約束を果たした冒険者。実は、行き先を別の場所としてガルカ達に言おうとすると後ろから何者かに殴られ、気絶するイベントもある。なんとも腑に落ちない展開であり、ガルカ達の行き先を報告しに冒険者が向かったアルザビ港で佇むFaihalとベルナーンの会話も何か引っかかるものがある。


Bernahn : ついに、ここまで辿り着けれましたね。中の国に着いたら、すぐにあなたへ手紙を書きますよ。ウィンダスにある大樹のこと、バストゥークの鉱山サンドリアにあるという城。
Faihal :……はい。


近づいてきた冒険者に気付き慌てる様子を見せるFaihalだが。

Faihal : あ……あら!ありがとうございます。ここまで来ることができたのもあなたのお陰です。
Bernahn : とても感謝していますよ。冒険者殿。ところで……ガルカたちは何か言ってませんでしたかな? 例えば……誰かが冒険者殿に嘘をついている、とか。
Faihal : じ、じいや!……何を言ってるの!?

(※ここでFaihal、ベルナーン、あるいは二人が嘘をついていると指摘できる選択肢が出るが、どれを選んでも基本的な流れは変わらない)

Faihal : な、なっ!?あたしらが嘘をついてるだって!?
Faihal : あ、あっ……!い、いえ、おわたくしどもがお嘘だなんて、とてもとてもそんな……
Bernahn : はっはっは!もうよいのですよ、ファイハル。おそらく、初めからすべてお見通しだったのですよ。さすが、冒険者と名乗るだけのことはある。
Faihal : そ、そんな……あたしの苦労は一体……
Bernahn : ここまで親切にしてくださった御人です。正直に、全てをお話ししたいのですよ。
それに、もしあなたが屋敷に戻って疑われたときに。……その無実を証明してくれる人がいなくてはいけない。


Faihal : ベルナーン……。ホントにあんたは……いっつも、自分勝手なんだから。
Bernahn : すでに気づいておられるかと思いますがわたしこそが……ガルカ、いえガリワウたちの本当の主、ベルナーンです。
Faihal : 嘘を思いついたのはあたしだよ。悪気があったわけじゃないんだ……ごめん。あはは、驚いたかい?あんな堅っ苦しいしゃべり方してたら、口が固まっちゃったよ。もう。
Bernahn : 元はと言えば、わたしが計画したことです。どうかファイハルのことは、責めないでください。


  ベルナーンが語る真実とは、こうだ。先代から続く商売を継ぐことで財を築いてきた彼だが、過ぎゆく歳月だけは財産と関係なく押し寄せてくるもの。老いてからは体を壊してしまい、以来、ほとんど屋敷の外に出ることなく過ごし、ガルカ達も献身的に彼の心配をしてくれ、不自由の無い屋敷内の生活を送っていた。しかし、老いと共に頭を過ぎったのは、このまま狭い屋敷の中で一生を終えていいのか、という事だった。そんな思いから、数年前のある日Galiwaoらに無理を言って皇民街の外へ散歩をしたという。初めて歩く人民街区は珍しい物でいっぱいだったと語る彼。


  一方、Faihalは 小さい頃、親に捨てられた事実を明かした。頼れる身よりも居ない孤独な日々。店から食べ物を盗んでは日々を凌いでいたと語る。その日はたまたま食べ物を盗んだのがバレてしまい、店の人に追われていたと。


出会いは突然に。


ベルナーンにとっては、まさに衝撃の出会いだったという。

  このとき、ベルナーン自身は幸いにもGaliwao達が間一髪で支えてくれたお陰で傷一つ無かったというが、勢いよくぶつかってしまったFaihalはバランスを崩し、足に酷い怪我を負ってしまった。自分の我が儘で外に出て、しかも見ず知らずの若い少女に怪我をさせてしまったと深く後悔したベルナーンだったが、少女の危機はそこでは終わらなかった。店の主人が追いついて彼女を責め立てだしたのだ。


  ベルナーンは見ず知らずの少女を庇い、店の主人と交渉した。そのときの彼は、自分のせいで怪我をしてしまったこの少女を屋敷で看護してやらねばならないという使命感を感じていたという。


  そしてFaihalは、突然自分の不注意でぶつかってしまったにも関わらず自分を庇ってくれたこの老人を不思議に思い、自分のために頭を下げてまで助けた彼に感謝した。孤独で犯罪に手を染めていた彼女が初めて触れた、人の優しさだったのだ。
  屋敷で医者に足を診てもらう為にFaihalはベルナーン達と共に連れ帰られた。そして足の治療をしながら屋敷内で彼女はベルナーンに外の世界について色々話したという。知らなかった街の素顔、傭兵達の何気ない会話、アトルガンに訪れるようになった冒険者達、そして彼女自身の生い立ち。お互い肉親が居ない者同士、共感する部分も強かったのかもしれない。怪我が治ると、Faihalはベルナーンに頼み込んで、屋敷で住み込みで働くようになったという。その後も彼女の話を興味深く聞き続けてきたベルナーンはいつしか失いかけた夢に再び火が点いたと語った。

Bernahn : わたしも世界を駆ける冒険者となろう、と。
Faihal : 熱心に話を聞いてると思ったら、突然「わたしは冒険に出ますよ」なんて言い出すんだもの。もちろん反対はしたさ。あたしもね。


Faihal : でもさ……あの時のベルナーンの目が瞼に焼き付いて離れないんだ。冒険に出るって言った時の……。きらっきらした目の輝きがさ。あたしはこの人に助けられた。この人が本当に望む夢ならあたしが叶えてあげたい……そう思ったんだよ。

  そしてその目標の為に密かに病弱な体質を克服する為にバルナーンは運動と訓練を重ね、ある日二人で抜け出す計画を実行した。しかしベルナーンを過保護なまでに心配していたGaliwaoらがその事態に気付き、連れ戻すために街に飛び出してきた。そしてその騒動から噂は広まり、二人は困り果てていたのだという。しかしこの逃走劇の間も元気に逃げ回れる体力を確信したベルナーンは自身に驚き、自信もついたと笑う。
  すべてを話し、ベルナーンはFaihalにあるものを差し出した。


Bernahn :……さあ、ファイハル。これを、持って行きなさい。
Faihal : これは……?
Bernahn : 屋敷を相続するための権利書です。サインはすでに入っています。
Faihal : !?
Bernahn : 屋敷に残った財産は、あなたとガリワウたちで、分けなさい。そして、これからは人に雇われることなく、好きなように生きなさい。今度はファイハル、あなたがあなた自身の冒険へと旅立ちなさい。ありがとう。ファイハル。
Faihal :……。

  ベルナーンが、恩人と感じたであろうFaihalに与えようとしている最後の贈り物、それは自由だったのかもしれない。しかしそれはベルナーンとの縁も永遠に消えてしまうかもしれないものでもあった。背中を向けるFaihal


Faihal :……わかった。あたしは……。あたしの好きなように生きるよ。
Faihal : ついてく……。あんたについてく!
Bernahn : はい!?
Faihal : 助けてもらった恩……。まだまだ返しきれてないんだよ!財産なんているか!普通の生活なんているかっ!
Bernahn : しかし……。
Faihal : いくったらいく!ベルナーンについていく!もう決めたんだ!ベルナーンがだめでもあたしが勝手についていく……。もう決めたんだ……決めたんだったら……。
Bernahn :……ははは。まるで、娘を持ったようですねえ。わたしによく似て、頑固だ。
Bernahn : ファイハル、あなたには本当に感謝しなければなりません。本当は不安だったのです。 住み慣れた屋敷を離れること、そして何より……あなたがいなくなることがとても……。
Faihal : ベルナーン……。


  二人が築いた絆は、財産や身分を越えたものになっていた。家族をもたない二人がお互いの中に見つけた居場所。全てを捨ててでも共に歩む決意をしたのだった。新たな、自由な冒険者として。


Bernahn : これは、あなたにお預けします。ガリワウたちへの、手紙です。彼らは今頃ナシュモで、わたしたちを必死に捜してくれていることでしょう。最後まで、あなたに迷惑をかけてすみません……。どうか、よろしくお願いします。
Faihal :……よろしく頼むな。あんたには、感謝してる……。ありがとう。

  二人はそういい残し、遙かな西の国を目指して旅立っていった。一方、屋敷の権利と二人の別れの言葉を綴った手紙を預かった冒険者は、今もなおベルナーンを探していると思われるガルカ達に渡しにナシュモに向かった。



Deminza : 主ーっ!いずこにー!!こら、離れんか!
Tataroon : おっきい、がるか。むきむきしてうの、すてきなのー。
Kobdyu : あっ、冒険者殿っ。
Galiwao : 助かった……かたじけない。

  ……Galiwaoらは、ガルカが物珍しいのか集まってきてしまったキキルンに囲まれ、港から出てすぐのところで足止めされていた。冒険者をみて安堵する三人。

Galiwao : ん? 手紙とな? むっ、この字は?!もしかして、この手紙を書かれたのは……ふむ……あの世話人の女も一緒か……。冒険……?まさか主が、冒険とは……。
Kobdyu : たしかに、最近は食事もよくお召し上がりになって体調もよさそうに見えていました……。
Deminza : だがっ!あのご老体で、冒険を続けられるのか!?やはり、力ずくでも止めなくてはっ……!!
Galiwao :……なあ、お前たち。我々も冒険者として、世界を駆け巡ったあの頃を覚えているか?


なんと彼らもかつては冒険者だったのだ。

Galiwao : 食うに困ったときもあった。怪我に倒れたときもあった。しかし……毎日が新鮮であった。 主が望むのなら、それを応援するべきではないのか。
Deminza : むう……。
Galiwao : なあに、あの女……ファイハルが一緒なら、大丈夫だろう。腕だけは確かだからな。
Kobdyu :……そうですね。彼女、強すぎるくらいですもんね。

  そして主ベルナーンの無事と、本心を知った三人は新たな目標を打ち出した。それは、主が留守の間、屋敷と財産を彼らが守り、主ベルナーンが長い冒険から戻ってきたときに帰って来る居場所を守り続ける、というものだった。


Galiwao : 帰る場所があるのなら、主も他の場所では死ねまい?
Kobdyu : ええ!
Deminza : たしかに……たしかに、そのとおりだっ!!
Galiwao : さあ、お前たち!行くぞっ!! 我々で主人の屋敷を守り抜くのだ!!

  そして、これまで主の為に尽力してくれた冒険者にお礼をし、三人は新たな目標の為に屋敷のあるアトルガンへと戻っていった。



最終更新:2008年02月13日 15:07