Enu(詳細・ネタバレ編)


  • ヒューム♀、子供グラフィック、バストゥーク商業区G-9
  • 家族構成:父(Zacc)、母(Alisa


When you wish upon a star...


乗り越える力をください(クエスト「星に願いを」)

バストゥークの象徴とも言うべき商業区の噴水広場。通り過ぎる人々と少し離れた所でそわそわと歩き回る男性がいた。そして彼は近くを通り過ぎようとしていた冒険者に声をかけた。

Zacc:おっかしいなあ。もうとっくに帰ってきてもいい時間なんだがなあ……おっ、あんた冒険者かい?あのよう……俺の嫁さん、見なかったか?

その男性・Zaccはなかなか帰ってこない妻Alisaを娘と共に迎えに来ているのだが、一向に姿が見当たらないという。

Zacc:アリサ(Alisa)ってんだ。色白で、金髪のショートカットの美人さ!頼むぜ。俺もそこらへん捜してみっからよう!

そういいながら笑う彼の後ろで、その娘と思わしき少女は無言のまま立っていた。

しかし、とある民家でこのような話を聞いてしまった。

Malene:あんた、何言ってんだい?アリサさんは半月前、事故で亡くなっちまったじゃないか。えっ、旦那のザックが捜して……?
Malene:そうかい、気の毒にねえ……あんまり突然、逝っちまったもんだから、きっと受け入れるのがつらいんだねえ……あれは本当に、不運な事故だったからねえ……アリサさん、確かまだ小さい娘さんがいてね。エニュちゃんだったかしら……その子も、つらいだろうね……あんなかわいい娘のいる母親が亡くなって、身寄りもない、私みたいなごうつく婆さんが生き残るなんて、嫌な世の中だよ、全く……。

おそらくは、Zaccの後ろで静かにたたずんでいた少女こそがエニュだろう。広場に戻り彼女に声をかけてみると冒険者にまくしたててきた。

Enu:パパに何を言っても聞かないわ。ママがしんじゃってから、パパのこころはこわれちゃったんだもん。パパはママのこと、すごく大好きだったから……
Enu:ねぇ、冒険者さんでしょ?わたしのお願い、聞いてくれないかなあ。わたし、パパを元気にしたいんだ。だから、星のかけらをさがしてるの。星のかけらっていうのは、ひみつのたからものなんだって。星のかけらを、星のいっぱい出てる、きらきらしたお空に向かってさし出すの。するとね、その夜のあいだだけ、何でもお願いを叶えてくれるんだって!すごいでしょ。わたしご本で読んだのよ。本当なんだから!冒険者さん、お願い!星のかけらを、見つけてきて!

星のかけらとは、バストゥークの遙か南東、ユタンガの森の樹木の中で眠っている、内部で美しい光彩を乱反射させる奇石。それを探すには樹木を伐採し、採取しないといけない。

星のかけらを手にエニュの元に戻ると彼女は早速それを握り締め祈り始めた。

Enu:星のかけらさん、お願いです。ひとばんだけ、ママを帰してください。お星さま、願いをかなえて!!……。

しかし、そのような奇跡はおきるとは思えず、やはり何も変化は起きなかった。呆然とするエニュに、父Zaccが気付いた。


Zacc:こら、エニュ。何やってんだ?そんなに身を乗り出して、危ねえじゃねえか。
Enu:パパ……天国から、ママに来てもらえるように、パパが、ママに会えるようにお願いしたのに……言い伝え、うそだったみたいなの!お星さま、お願いを叶えてくれないよ……
Zacc:アリサが……天国に?何言ってんだ、エニュ……

心が壊れてしまっている、とエニュが言っていたZaccだが、変化が見え始めた。


Zacc:アリサは朝、かごと手ぶくろを持って、すぐに帰ってくるって……かご……?あいつ、何を採りに行ったんだ……?いつ、家を出たんだっけ……頭が痛てえ……思い出せねえ……、あいつはあれからどうなったんだ?……草原?ああ、峠の草原に行ったんだ……!……そうだ、そこであいつ、食材を採りに行った先から、なかなか戻らねえから……

激痛の中でZaccが思い出したその出来事……。それは、元々が体が弱かったAlisaが、食材を求めに峠の草原に行ったのが心配になり、追いかけて行った事。夢中で採取をしていた彼女を見つけ、声をかけようとしたZaccの目の前で、彼女は足を滑らせて崖から落ちてしまったのだ。彼女が目の前にいたのに、助けるまもなく消えてしまった現実を、彼は受け入れられずにいた。


Zacc:俺はその場に居ながら、あいつを救ってやることができなかった……!!バランスを崩したあいつの体が、遥か下の景色に吸い込まれていくのを……俺はただ、見ていることしか……そうだ、死んじまったんだ……俺が、見殺しにしたのも同然だ……俺は今まで……ずっとその事を忘れてたのか……いや、忘れてたんじゃねえ。分かってた、分かってたのによう……あいつが死んじまったこと……認めたくなかった……
Enu:パパ、思い出したんだね!いままでのこと、ママのこと……
Zacc:ああ。あいつが急に死んじまって、俺がお前を支えてやんなきゃなんねえのに、おまえに世話かけちまった……エニュ、ふがいない父親を……俺を、許してくれ……
Enu:パパ、わたしも、ママに会わせてあげられなくて、ごめんね。


Zaccの記憶が戻ったようだ。そして、深い悲しみの中でも一人じゃない事も思い出したようだ。そんな父をずっと見詰めながら、その想いを叶えようと必死だった娘がそばにいる事を。

Zacc:ばか、おめえ、何言ってんだよ。父ちゃんは、もう大丈夫なんだぞ。それに……それに、星に願わなくたってなあ、母さんは……アリサは、ここにいる。
Enu:……?
Zacc:俺の、胸の中に。ちゃんといる。おまえの中にも……いるだろ?
Enu:!!うん!

妻の死を受け入れることにより、現実と再び向きあえるようになったZacc。これからはエニュと二人で、Alisaの思い出を胸に生きて行くことを思い出した。一人で抱えるには重すぎたその悲しみだけど、二人で支えあえば大丈夫。それが、家族だから。

そして娘の願いを聞いてくれた冒険者に改めて礼を述べた。

Zacc:あんたにはすっかり世話になっちまったみてえだな。これからはしっかりとこいつを支えていくつもりだ。天国のあいつに、笑われねえようにな!!



そしてそんな二人を、噴水の横から暖かいまなざしで見詰める女性がいた。


二人はもう、大丈夫。それを確認したAlisaは、微笑だけを遺して消えて行った。星は願いを聞き届けてくれていたのかもしれない。


最終更新:2007年12月31日 18:44