20000330・147回参 - 国民福祉委員会(丹羽厚生大臣他答弁)

質問:清水澄子、堂本暁子

答弁:(厚生大臣)丹羽雄哉、(外務省条約局長)谷内正太郎

○清水澄子君
 (前略)
 次に、まだ余り問題になっていないことで、韓国出身のBC級戦犯の人たちの問題でございます。中でも、さらに過酷な人生を送ってこられているのが日本軍の軍属として、戦争犯罪者ですね、BC級の戦争犯罪者とされた旧日本国籍の韓国・朝鮮人の方です。
 彼らは、日本支配下の朝鮮にあって日本軍に軍属として徴用されて、そして南方へ送られ欧米人の捕虜の見張り役などを命じられたために、百四十八名が敗戦後連合国の戦争犯罪者という判決を受けております。うち二十三名が処刑をされております。そして百二十五名が懲役二十年とか十年という刑を科せられた上、サンフランシスコ条約が締結された後も日本に帰されて巣鴨のプリズンで残りの刑期を服役させられてきたわけであります。その後、韓国へ帰国した人を除きますと五十二名が日本に在住をされておられて、うち二名は日本で生活ができず自殺をされました。そして、本人が御存命なのは二十名でございまして、遺族世帯となっているのが三十名おられます。
 この人たちについては、やはり東京地裁、高裁、最高裁とも深刻かつ甚大な犠牲ないし損害をこうむったと判決をしております。そして、この問題の早期解決を図るために早急に政府における立法化の必要性を判示しているわけでございます。
 きょうこの傍聴席にも、当事者の李鶴来さん、この方はシンガポールのチャンギー刑務所から巣鴨プリズンに移された後、一九五六年十月まで四千二十六日間、日本の戦争犯罪者として自由を剥奪されてこられた方でございますけれども、きょう傍聴されております。
 そこで、私は大臣にお伺いしたいんですけれども、やはりこういう方々には日本が非常に重要な責任があると思うんですけれども、ぜひこの裁判所の判決の意味というもの、早速それを深く受けとめていただいて新たな立法をしていただきたいと思いますが、大臣、そのためにぜひ御尽力いただきたいと思いますが、いかがでございますか。

○国務大臣(丹羽雄哉君)
 御指摘の韓国出身のBC級戦犯の方々の問題につきましては、こうした戦後問題の解決の基本的な枠組みにかかわるものでございます。援護法の枠組みを超える問題でもございますし、私の立場から率直に申し上げて非常に申し上げにくい事柄でございますが、しかしながら、日本国民として戦争犯罪を犯したという理由で刑を受け、また監禁された韓国出身のBC級戦犯の方々が経験されました御労苦に対しましては、心中察して余りあるものがございます。
 このような悲惨な忌まわしいことが決して繰り返されてはならないと強く感じておるわけでございますが、この問題につきましては、日本人の取り扱いを含めて総合的に考えていかなければならない問題だと、このように考えているような次第でございます。

○清水澄子君
 日本人同様に考えていきたいと。その問題はちょっと違うんじゃないかと思いますね。
 ここに当時の、戦争時代の一九四二年五月二十三日の京城日報というものがございます。この新聞を見ますと、ここで、今般日本政府は、陸軍の要求に基づいて、大東亜戦争における赫々たる戦果によって各地に収容中のアメリカや英国の俘虜の監視に従事せしめるために、朝鮮半島における有為なる青年数千人を軍属として採用することになった。そして、ここでは、こういうような名誉ある職務をやることに至った朝鮮半島の青年はそれは非常に光栄である、この責任を皇国臣民としての資質がそのあるがままに認められたんだと、朝鮮人が。そして、その採用された者の任務というのは、単にアメリカや英国人の捕虜を監視するだけではだめだ、傲慢不遜のアメリカや英国人に対して真に日本国民の優秀性を認識せしめて衷心より日本帝国に対する尊敬の念を抱かしめるように指導すべきであると。そういう使命を持っているんだということをちゃんと軍は指示をしているわけですね。
 こういう新聞をそのまま私は手にしたわけですけれども、これは明らかに日本のA級戦犯、BC級戦犯の人たちとはおのずと性格が違うと思います。
 そういう意味で、私はやはり、これは日本政府の明らかな政策によって朝鮮半島の青年たちがこういう役割をさせられた、しかも捕虜虐待という仕事を強制させられた、そのことに対する日本政府の責任は大きいと思います。
 ですから、この人たちの人権を回復するということについて、私は、特に大臣は人間としても、一人の政治家としても、ぜひ御尽力いただきたい。ここでひとつ御決意をいただきたいと思います。

○国務大臣(丹羽雄哉君)
 大変、お話を聞いておりまして胸が痛む思いがいたしております。再びあのような忌まわしいことを繰り返してはならない。政治家共通の願いとして恒久平和というものを私どもは常にこの政治の羅針盤の一つとして考えていかなければならない問題でございますが、事が大変大きい問題でございますので、機会があるたびごとにこういった問題が提起されていることを十分に私自身の脳裏に刻み込んで、委員の御指摘のことにつきましてどういうような対応策がとれるかということにつきまして十分に私の立場で今後検討していきたい、このように考えているような次第でございます。

○清水澄子君
 直ちにひとつ検討を始めていただきたいと思います。
 そこで、ちょっと戻るわけですけれども、なぜ朝鮮人が日本の戦争犯罪者とされたのか、その法的根拠ですね、そして同時に、昭和二十七年には日本が独立ということでサンフランシスコ講和条約の発効で、朝鮮人の戦争犯罪者も日本国籍を奪われているわけですね、外国人になっているわけです。
 ところが、なぜ独立後も日本政府が管理する巣鴨刑務所で彼らを服役させたのか、そういうことになった法的根拠というのは一体何なのか、外務省の条約局長にお伺いいたします。

○政府参考人(谷内正太郎君)
 先生御指摘のとおり、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷が刑を宣告した者のうち、朝鮮半島出身者及び台湾出身者は平和条約発効により日本の国籍を喪失したわけでございます。
 我が国といたしましては、このサンフランシスコ平和条約第十一条及び平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律というものに基づきまして、連合国の最高司令官または関係国から身柄の引き渡しを受けた者に対しては巣鴨刑務所で残刑を執行したというふうに承知しております。
 それで、国籍の観点で申しますと、先生御指摘のとおり朝鮮半島出身者及び台湾出身者の方々はサンフランシスコ条約発効後は日本人でなかったわけでございます。それで、御質問の焦点は、それではどういう法的根拠に基づいてこういう方々の残刑を執行したのかと、こういうことでございますけれども、この点につきましては、日本国は平和条約発効直前まで日本国民であった者の刑の執行の義務を平和条約十一条で負ったわけでございます。それで、平和条約発効後の国籍の変更、喪失は、この義務に影響を与えないということで、刑の執行は日本国が平和条約発効前に連合国が権利として行使していた刑の執行を平和条約の義務の履行として引き続き行う、こういうふうに理解しておるところでございます。

○清水澄子君
 御存じのように、当時の敗戦後という問題もあったと思いますけれども、この法のはざまの中で、同じ刑に服していながらある時期までは日本国民、そしてその刑務所にいる間に日本国民でなくなる、国籍がなくなる、こういうことの中でもこの平和条約では、「日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。」となっているわけですね。ですから、日本国民扱いなんでしょう。そうしたら、刑が終わっても日本国民としての補償をしなければ、非常に御都合主義といいますか、余りにも機械的といいますか、この人たちは本当に日本で戦争犯罪者として刑に服するようなそんな重要な役割を果たしたわけではないですよね。
 ですからそういう中で、ここでは私は今回のこの法律、今いろいろ準備をされていると言われるわけですけれども、自民党がやっていらっしゃること、それからいろんな各政党が考えられている中に、私はこのBC級戦犯の人たちの問題は入っていないと思うんです。ですから、そういう人たちをぜひここで謝罪と補償の対象にするということについて、私はここでどうしてもはっきりさせていただきたいわけです。そうしないと、またここでこの一番重い責任を負わされてしまった人たちを見殺しにしてしまう。
 ですから、今ようやくいろんな問題を処理しようとする動き、二〇〇〇年内に起きたことを処理しようとする動きがあるときに、こういうBC級戦犯の方々本人とそして遺族ですね、そういう人たちに対してもぜひその補償の対象にするように、これも私はやっぱり大臣に言っていただかないと困ると思うんですが、そういう問題提起をしていっていただきたいと思いますが、いかがですか。

○国務大臣(丹羽雄哉君)
 現在与党内で、先ほどから申し上げておりますように人道的な立場から在日韓国人などであっても旧日本軍人軍属等の戦没者、重度戦傷病者に対して弔慰金、見舞金などの一時金を支給する措置が検討されておるわけでございます。
 その内容の詳細については与党内で検討中でございますから申し上げる立場ではございませんけれども、御指摘のBC級戦犯の方々につきましては、日本人のBC級戦犯の方々の取り扱いも、先ほども申し上げましたけれども、勘案しながら総合的に判断されるものと考えておるような次第でございます。

○清水澄子君
 最後にもう一度申し上げますけれども、こうした補償を考えるとき、政府は従来日本国籍を有することという非常に狭い枠内で問題を処理してこられました。そのために非常に多くの人たちの人権が侵害されたまま、じゅうりんされたまま、そのままになってきたわけです。
 しかし、最近ようやく在日の永住外国人の問題がこういう課題になってきたこの時期に、やはりもう一度このBC級戦犯になった旧日本国籍の人たち、この人たちはさっきも申し上げたように戦後南方で死刑になっていればもう日本と関係なくなっちゃっているんですね、処刑されてしまいましたから。または長期間現地、シンガポールとか南方の刑務所で服役した人たちは在日外国人としての要件を、日本でいう在日外国人としての要件を欠いているわけです。ですから、そういうふうな人たちも含めてぜひ調査をされて、そしてまたその現地からわざわざこの日本の巣鴨プリズンで残りの刑期を勤めさせられた人たち、こういう人たちとやっぱり会って、生きている人たちいらっしゃるわけですから、ぜひこれらの人たちの補償というものを、在日という要件だけに絞るとまたその人たちは外れてしまうわけですね。
 ですから、ぜひその点は旧日本国籍を持っていてそういう政治の谷間、法律の谷間で犠牲になった人たちに対して今度しっかり補償をしていただくことを私はここで再度お願い申し上げたいんです。大臣に最後の御決意を伺って質問を終わりたいと思います。

○国務大臣(丹羽雄哉君)
 先ほども申し上げましたけれども、大変心の痛む問題でございます。
 日本人でも拘禁されていないことに対する補償がないから、だから韓国人の方々のBC級戦犯に対する補償がなされていないということでございます、整理といたしまして。
 こういう問題も含めて、いずれにいたしましても大変大きな問題でございますので、政府全体で取り組む中においてこういう問題の取り扱いというものも当然のことながら議論されるべき問題だと考えておりますけれども、先ほどから申し上げておりますような総合的に勘案をして取り組むべき問題だと、このように認識をいたしておるような次第でございます。

○清水澄子君
 終わります。

○堂本暁子君
 私も戦傷病者戦没者遺族等援護法で朝鮮半島出身の方についての質問をしたいと思いましたが、今同僚議員の質問には本当に心痛むものがございました。後ろにいらしていらっしゃるとすればどの方なんでしょうか。
 大変な御苦労をなさったということで、私も本当に胸がかきむしられるような思いがいたしました。
 やはりこういった法律と申しますか、制度の谷間に落ちてしまう方がいらしてはいけないんだということをつくづく思いますし、それからある程度きょうのお話で、私は大臣にお願いしたいのは、人数もそう多くない、それから、私の父もアメリカにおりましたから、敵国ということでキャンプに入れられて、そしてそのまま亡くなりましたけれども、やはり戦争というのは本当に個人の意思とは別にその人の不幸を招くものだし、日本は責任を持たなきゃいけないというふうに思います。だから、清水さんの質問を補うのであれば、私は、超法規的な措置をとっていただきたい、そんな気がしています。
 (下略)

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最終更新:2010年03月16日 21:07
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