19560210・24回衆 - 予算委員会(重光外務大臣答弁)

質問:古屋貞雄

答弁:(外務大臣)重光葵

○古屋委員
 そこで、私、御質問申し上げるのは、今度は政治を離れて人道的の立場から申し上げるのですが、大臣も御承知の通り、大東亜戦争に日本の軍人として志願された朝鮮の方たち、あるいは強制的徴用されて日本に参りまして働いておった人々、陸海軍に従軍された方たちの中で、約三十万の方たちが戦死あるいは、死亡されておる。その遺骨の問題について、その処置がどうなっておるか。私ども承わるところによりますと、これは厚生大臣からも承わりたいと思うのですが、相当の数の遺骨が、一定の場所に保管されて、そのままになっておるんです。それから、巣鴨に戦犯で長く拘置を受け、死刑の処罰を受けた者もある。あるいはこれらの人々には釈放された人々もありまするが、一体これらの人々に対してどういう処遇を日本ではされたか、簡単でよろしゅうございますからお答え願いたい。

○重光国務大臣
 全部私からお答えすることが、あるいはできないかもしれませんが、戦争のために日本の軍に従事し、もしくは日本のために働いてくれた朝鮮人の処遇というものは、これは日本としては最も公平に、かつまた丁重に扱うべきものだと思います。そこで、大体のことは、そういう何は日本人と同様に取り扱うという主義で今日まで来ておるのでございます。
 それからまた、遺骨のお話がありましたが、遺骨はそれぞれ郷里に送還することには少しも異存はないのでございまして、韓国側の代表者とはこのことについて交渉をいたしておるわけでございます。これは向うの都合のいいようにして差しつかえないのでございます。
 それから、戦争中に日本で働いておった朝鮮人に対する処遇は、日本人に対すると同じような処遇をするという考え方で進んでおります。
 それから、軍人になった人の恩給等は、ずっと積み立てて、すべて問題が解決するときにお渡しし得るように用点をいたしておるつもりでございます。

○古屋委員
 そこで、私が承わりたいのは、北鮮の赤十字社からは、これらの遺骨を持ち帰るために赤十字の代表を日本に送りたい、さらに、居留民についても、赤十字の代表がこちらへ来て、実情に即する交渉を日本政府といたしまして、そうしてこれら英霊を祖国に迎えたり、居留足を祖国に帰すことをいたしたいという申し出が確かにございました。それが外務省に来ておるかどうか。もし外務省に来ておらないとしますならば、来た場合に、これに対しては人道的立場から当然に私どもはこちらに赤十字の代表を迎えて英霊を引き渡すことをしていただき、並びに居留民で帰りたい者は向うへ帰すような取扱いをすることが当然だと思うのですが、この点はいかがでしょう。

○重光国務大臣
 そういう北鮮側の申し込みは正式には参っていないそうでございます。新聞情報にはそういう情報がございました。そこで、それじゃそういう場合にはどうするかというと、今日本の赤十字社の代表も北鮮に行っておるわけでございますから、いずれそういう筋でもって事情がはっきりするだろう、こう考えております。

○古屋委員
 まことに外務大臣の無責任な……。

○三浦委員長
 古屋君に重ねて申し上げますが、一つ簡潔にお願いします。

○古屋委員
 非常に重要な問題ですが、まことに無責任な答弁です。向うへ行かれている方がおりますから何とかなるというような無責任な態度をやめて、もっとはっきりすべきだと思う。そういうような御答弁を申されば重ねて承わりますが、一体、日本人と同じ処遇をしていると育うが、一つもしていない。私はこれでずいぶん苦しんだ。巣鴨におります戦犯で、処刑を受けて、刑期が満ちて帰ります者に対して、日本の政府は裸で帰している。それから遺骨などは――もう時間がありませんから外務大臣だけでやめたいと思いますが、これは呉と佐世保に数万の英霊の遺骨があるわけです。これは確かに厚生省の援護局の倉庫にあるが、そのままほうってあるのですよ。なお、日本の諸君については、ビルマにしても南洋にいたしましても、遺骨を迎えるべくあちらに行っておりますけれども、その中にもたくさん朝鮮人の遺骨があるはずです。というのは、朝鮮人の戦犯の名簿を見ますと、その処刑を受ける現地は、マレーとか、あるいはジャワとか、あるいはビルマとかです。だから、向うにも遺骨がたくさんあるわけです。日本の英霊のみを迎えて、同じように日本の戦争に努力された、しかも放って参りました朝鮮の諸右の英霊をそのままにして何ら処置をしておりませんから、私は申し上げているのです。それが、もうこらえ切れずに、北鮮から代表の赤十字社が日本に参りまして、こういう問題を政府と交渉して解決したいということは、当然の権利であり、当然の主張だと思う。人道上から考えましても、日木の国の国際的信用から考えましても、当然に日本の方と同じような処置をすべきだと思う。従って、赤十字、いわゆる政治を超越した中立的立場の赤十字の代表が参りました場合には、むしろこれをお迎えして、外務省はこうした英霊に対するあとの始末などすべきだと思う。それが、葛西さんが行っているから何とかなるでしょうというような無責任な答弁では、いわゆる国際的信用から申しましても、人道上から申しましても、私どもは納得がいかたいのです。従いまして、赤十字社の代表をお迎えして、これらの問題の解決に当っていただくような配慮をする意思が外務大臣はあるかどうか、それを承わりたい。

○重光国務大臣
 私は決して、今赤十字の代表が北鮮に行っているから何とかなるだろう、こういうことは申し上げたことはございません。ただ、私が申し上げたのは、それによって向うの当情も判明して、いろいろな方法を、話し合いをすれば話し合いができるであろう、適当な方法がつくであろう、こういうことを申し上げたのでございます。それからまた、そうして実際的に解決をしなければならぬ問題であります。むろん、お話の通り人道上の問題でありますから、これは十分に努力をいたさなければならぬことは当然でございます。今後もそのつもりでやることを申し上げます。

○古屋委員
 それでは、なお、呉と佐世保にあります数万の英霊を送るだけの準備と決意があるかどうか。祖国にお帰しをする決意があるかどうか。ということは、四十数人の日本の居留民は近く日本に引き揚げて参ります。これは当然人道的立場から引き揚げてくる。従って、こちらにあります英霊を片づけるということも、日本政府のなすべき義務であり、たすべき当然の責務があると私は思う。従いまして、この英霊をどうするか、積極的に送り帰す意思があるかどうか、その点承わりたい。

○重光国務大臣
 遺骨の問題は、これは丁重に考えなければならぬと思っております。その問題については、人道上の処置をするために今十分努力をいたしておりますことを申し上げて、お答えといたします。

○古屋委員
 そうすると、こういうことですね。英霊の処置に対して、あるいは戦犯の人たちの処遇に対しては、日本人と同じような処遇をいたすということを確約され、しかも今の英霊に対する処意は丁重に、取り扱っていただく、こういうように承わってよろしゅうございますか。

○重光国務大臣
 さような趣旨でやりたいと考えます。

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最終更新:2010年03月17日 03:45
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