Chronicle 2nd 1st Story Renewal CD

聖戦と死神 第三部「薔薇と死神」~歴史を紡ぐ者~



「此処は何処なのかしら?私は確か…追われ…矢を射られ…倒れたはずだったわ…」

「気付いて良かった、大丈夫かい?
私の名はアルヴァレス、君達の村を襲った軍隊の指揮官…
だったのだが…今ではもう追われる身だ…からと言っても…言い訳に過ぎぬ…私が憎いかい?」

「えぇ…憎くない…と言ったら嘘になるけれど…助けてくれた貴方のこと、私は信じたい…」



「私はベルガ人(ベルジュ)なのだよ…
亡国の仇を取る為、旧フランドルへ身を寄せた<異邦人>(アルベルジュ)
この意味が解るかい…お嬢さん?この手はもう取り返しのつかない程に汚れている…」

「最初は怒りからプロイツェンを…
次に異国での居場所を確保する為ロンバルドを…
そして己の願望を満たすという目的の為に、カスティリヤを滅ぼした…」

「今でも目を閉じると、鮮やかに浮かんでくる風景がある…
私にはどうしても取り戻したい場所があったのだ…
そんな私に当時のキルデベルト六世陛下は約束してくれた…」

「国をあと一つ…例えばプリタニアの征服を条件に…
ベルガの独立自治権を許すと…私は他人(ひと)の国を売って…自分の国を買い戻そうとしたのだ…」
「私はそんな愚かな男なのだよ…」

「そう…そんな愚かな男なら、私がここで殺してしまっても構わないわね?」
「あぁ…好きにするが良い…私は取り返しのつかない過ちを犯してしまった…」

「馬鹿!それでは何も解決しないじゃない…貴方はそれで満足かも知れない…
でも貴方の仇を取ろうとする者が現れないとは限らない…その論理が繰り返し悲劇を生んでいるのよ…」

「取り返しのつく歴史なんて一つもないの、だから尊いの、だから私達は新しい歴史を創ってゆくの…
愚か者とは…過ちを犯す者のことじゃない…過ちと知ってなお、正そうしない者のことをいうのよ…」

「…ねぇ…そうでしょう?」
「お嬢さん…君は強いな…」

「えぇ…そうよ…私は強いわ、この国の未来を背負っているんだもの…」
「この国の未来?プリタニアの女王は若い娘だと聞いていたが…まさか…君が…!」

「ローザ・ギネ・アヴァロン…そう…私がこの国(プリタニア)の女王よ…
黙っていて御免なさい…でも解って欲しいの…アルヴァレス将軍…私は貴方を信じます…」

「これは…女王陛下とは露知らず、数々の非礼を…」

「お願い!畏まらないで、私はそういうの好きじゃないの、私のことはローザで良いわ…」
「それにしても貴方があの有名な「ベルガの死神」(アルベルジュ)とはね…
…想像していた像(イメージ)と随分違うわね、熊のような大男だと思っていたのに…」

「…でも<ベルガの死神>(アルベルジュ)はやめた方が良いわね…
この国では流行らないわ…プリタニア風に言うと…
そうね、<ベルガの暴れん坊>(アーベルジュ)かしら…
そっちの方がずっと素敵よ…ねぇ…そうしなさいな…?」

「何?さっきから女性(ひと)の顔をそんなに見つめて…」
「いや…最初に貴女(あなた)を助けた時、ある女性に似ていると思ったのだが…」
「思ったのだが?」

「…今にして思うと全然似ておらぬ…」
「なに!?」

ウインダミアの湖畔を白い風が駈け抜けて往く…
トリストラム騎士団長率いる第六騎士団が衛る地

ランカスターへと…
最終更新:2009年04月19日 04:48