ながされて藍蘭島エロパロSS
『寝取られて』 第11話
1
藍蘭島は日の出から始まって日の入りで終わる。
電気も石油もないので照明に乏しく、したいことがあっても暗くてできない夜はさっさと寝てしまうのだ。まさしく太陽と寝起きを共にする生活で、現代人が来たら戸惑う習慣のトップクラスに挙げられることはまず間違いないだろう。ボクもそうだったし。
日が落ちる前に調理を終えて膳を並べ、夕陽か灯火の明かりで食事と風呂、それらが済むと辺りは真っ暗で行灯の光だけ。読書に耽るには光量が足りず、あまり長くは読めなかった。そうしたらもう眠る時間だ。体感でしか計れないが、床に入るのは夜の8時か遅くても9時。夜更かしとは無縁の世界であった。
寝る子は育つ。そりゃ健康が満ち溢れるよね……と、つくづく思う。
確かにこの島は不自由だ。移動は徒歩、仕事は手作業、先進的な利器など何一つとして無い。現代日本では当たり前に享受できるインフラは皆無、お腹が空いたとか暇を潰したいなどと思っても欲求を満たしてくれる店なども無い。すべては自分たちで賄わなければならない。
現代日本の生活に慣れきった人によっては、気がおかしくなってしまうかもしれない環境だった。
ただ、もし現代人と藍蘭島の人々のどちらが幸せかと訊ねられたら、ボクは返答に迷ってしまうだろう。
『便利』が発達した現代社会。移動手段は豊富で機械が仕事を効率よく助けてくれる。夏は冷房、冬は暖房。すぐにお湯を沸かしたり氷を作ったり、小さな携帯電話一つで遠くにいる人と話せたり。街には美味しい料理店や娯楽施設が建ち並び、夜でも明るい部屋で日中のように過ごすことができて、コンビニがあれば小腹を満たしたり雑誌を買ったりすることもできる。
だけどその一方で、現代社会には問題もひしめいている。希薄化する家族、学校ではいじめや非行が当たり前のように発生し、また青春を捨てて一生懸命勉強に打ち込んでも必ずしも良い仕事に就けるとは限らない。巷にはびこる遊楽の誘惑に道を踏み外す子供も多い。発達した機械による悲惨な事故、現代病、貧富の差。まだ口にできる食べ物や飲み物がどんどん捨てられ、ゴミは溢れ返る。どんなに便利という名の豊かさを掻き集めようと満たされない心。人と人は近くなったようで、便利になればなるほど、豊かになればなるほど、どこか遠くなってしまう。
全てが近代化の招いた弊害とは言わないけれど、これが本当に皆んなの望んだ幸せなのかと言えば、確信を以て全肯定することはできなかった。
翻(ひるがえ)ってみて藍蘭島はどうだろう。皆んなが平和ににこやかに、一つ家族のように仲睦まじく暮らしている。肉体労働は大変だけれど、ひとつひとつの仕事が自分の生活に繋がっている。そういった意味で己が仕事に疑問や虚しさを持っている人など一人もおらず、全ての村人が自立していた。そして躰を動かした後のご飯はとびきりに美味しく、お風呂や睡眠も極楽だ。緑豊かな森林や綺麗な碧海は心を落ち着かせ、不安や悩みなどどうでもよくさせる。濃密な自然の中で酷い目に遭うとしたら、大抵、自分の不注意が原因である。自然は在るがままに在るだけなのだ。自然との付き合い方を学べば学ぶほど、自分にも一個の生命体としての自覚が芽生えてくる。深い森に包まれた村では、一人一人が“自然に”他人を気に掛け、支え合い、笑い合いながら過ごしている。村に“他人”はおらず、濃密な人間関係が築かれていた。
何もないんじゃない。
............
ここには何だってあるのだ。
単純に比べられるモデルケースではないとは分かっている。それでも、現代日本が藍蘭島より幸せだとは、到底思えなかった。
ただ。
ボクに関して言えば、話は違った。
2
あいつが居着くようになってからも村里は表面上ほとんど変わらず、日常は穏やかに過ぎていくように見えたが、ボクの日常にはある変化が起こっていた。
西のぬしであるからあげさんが臨時で東の森を任されたために、その代理でボクが西の見廻りをすることになったのだ。
はじめは外来の人間であるボクにそんな大事な役目は出来ない、と断ったのだが、「自信ないのかい?」と挑発するように問われると、それ以上拒むわけにはいかなかった。ボクも男だしね。
「ところで、見廻りって何をすればいいんですか?」
「なーに、その言葉通りだよ。西を適当に歩き回ればいいのさ」
からあげさんの返答は今ひとつ要領を得なかったが、実地で学べと示唆したかったのだろうか。とにかく、困り事を見つけたら手助けすればいいのかな──そう解釈した。
実際に始めてみるとこれがなかなか面白かった。毎日多くの人と出会って色んな話をしたり、様々な仕事を手伝ったり、村以外のヒト達(?)とも顔見知りになれるし、困っている人がいれば助けに入り、それで感謝を貰えればこちらも嬉しかった。中にはボクの手に負えないような事件もあったけど、ひとつひとつが良い経験になったし、村のために何かしているという実感があって楽しかった。
(なるほど、やり甲斐のある仕事だな……)
見廻りというのはただブラブラ歩くわけじゃない。当然と言えば当然のことだけれど、実地で体験するしないでは認識に雲泥の差がある。
二、三日ほど経って、この見廻りというのは、いわば今までの仕事の発展型かもしれない、と気付いた。何でも屋のすずについて仕事をしていた時も色んな作業を手伝ったものだ。それが良い素地になっているのか、抵抗や労苦などほとんど感じなかった。
ただ、嫌なこともひとつだけあった。
言わずもがな。“アイツ”である。
最近のぱん太郎はどこかにしけ込んでいることが多く、ボクが一日じゅう外を歩き回っていてもそうそう見掛けなくなったのだが、それでも狭い村の中だから、出くわす時は出くわした。あちらは気付くとこちらを見ているようだったが、そういう時、ボクは努めて目もくれず無視して通り過ぎた。
無視できない時もあった。
道を歩いていると、“声”が聞こえてくる。
それは誰かの家の傍だったり、森の小径だったり、丈高い草茂る野原だったり。
ボクの足は呪縛されたかのように止まってしまう。
少し躊躇ったのち、思い切って“声”のする方へそっと忍んで行ってみると、隠れた場所であいつと女性が乳繰り合っている光景が目に入ってくるのだ。
(またやってる──)
そう呆れてしまう。せっかく言葉を交わすことが多くなった人たちがあんな奴に抱かれているのを見るのは辛かったが、生々しい情事から視線を切るのは精神力がいることだった。すぐにはその場から離れることはできず、大抵の場合、しばらくの間見入らずにはいられなかった。
相手は毎回変わった。娘とは限らず、大人の女性の時もあった。つまり、母親たちまでもが子作りに加わっているのである。
大人のセックスは激しく、だけど、行為中の母親たちは少女のようですらあった。ぱん太郎の男根は大人であっても巨(おお)きすぎるのだろう、その抽送を受け止める女性たちはたまらないといった様子で声を上げていたが、それは苦痛ではなく、快感から来るものであった。
中でも驚いたのは、その中にりささんがいたことだった。
りささんは大工一家の棟梁の娘で、りんの母親でもある。
男勝り、気っぷの良さはりん以上で、少なくともボクはりささんの女らしいところをおよそ見たことがない。結婚が遅かった──と言ってもこの島の晩婚というのは二十歳を超えない──らしいので三十路前半だと思うが、その若々しい立ち振る舞いはりんの年離れた姉と言われても不思議はなかった。……というか、婚姻出産の早い藍蘭島では、母親たちは皆、誰もが姉妹と見間違うほど若く見える。若さが保たれているのは、この楽園のような島の環境も影響しているのかも知れない。
そんな女性が、森の中の木陰で帯と半股引(はんだこ)を剥かれ、渋茶の長半纏一丁というあられもない姿でぱん太郎に抱え上げられて木の幹に背をつけ、駅弁の体勢でリズミカルに貫かれていたのだ。職人の命である道具箱が足元に転がっていた。
身にまとった最後の一枚である長半纏も、肘までずり落ちて今にも脱げてしまいそうであった。
「ああっ♥! ああっ♥! ああっ♥! ああっ♥!」
まるでりささんとは思えないほど女らしい鳴き声。
揺さぶられる度に腰まで届く長い赤毛やはちきれそうな豊満な乳房がユサユサと震える。
筋肉質と思っていたりささんの肉体は、想像に反してむちっとした柔らかさがあり、その肌は危険な作業をしているとは思えないほど艶やかだった。他の女性たちと比べれば確かに筋骨厚い躰付きだが、ぱん太郎にかかるとうら若い娘と大差ないように感じられた。
二人とも蕩けた表情で一つになっていた。
ぱん太郎に尻を抱えられながら肉太の剛塊を盛んに打ち込まれ、弛緩したようにだらんと伸びているりささんの脚。
グチュッ、グチュッ、グチュッ、グチュッ!
森は午睡に落ちているかのように閑かで、猥雑な摩擦音と腰を打ち付ける音がボクの耳まで届いた。
「ああっ♥! ああっ♥! ああっ──♥!」
陶酔の表情を浮かべるりささん。
「こッ、こんなッ────♥」
蒸せたような眼で頬を紅潮させ、半開きの口から舌を覗かせる。
「りさちゃんのオマンコ、ヌルヌルのキツキツですごく気持ちいいのん♥」
「ああ、ああ……そ、その、ちゃん付け、やめて……」
喘ぎながらりささんは何とか喋った。女言葉を使うところなんて初めて見た。
「じゃあ、りさって呼ぶよ」
ぱん太郎にそう耳元で囁かれると、「ハァッ……♥!」と、りささんのからだがブルブル震える。
そして、催眠術にかかった人のように、何度も首を縦に振った。
──あのりささんがあんな風に、男に寄りかかるように依存しているなんて──
「じゃありさ、もっといくよ」
そう言ってぱん太郎はさっきよりも激しく腰を打ち付け始めた。
グチュッ! グチュッ! グチュッ! グチュッ!
「ンアアッ♥! アア、アア♥!」
と、りささんは仰け反り、気持ちよさそうな甲高い声を上げる。
たまにぱん太郎が腰を密着させながらぐりぐりと回すような動きを加えると、「アア、アア、アア~~♥!」とさらに気持ちよさそうな嬌声を張り上げ、からだをわななかせる。
ただでさえまだほとんど垂れていないボリューム満点の胸が、昂奮で膨らんだような迫力で揺れに揺れる。
「アア、アア、すごい、スゴイッ♥!」
そう叫びながら嬉悦の涙を零す。こんなだらしない顔をしたりささんは初めてだった。
グチュッ! グチュッ! グチュッ! グチュッ!
「のふふ、まるで娘っこみたいなスゴイ締め付けのん」
「ア、アンタのが……デカすぎるんだよぉ……!」
「のの、痛いの?」気遣った言葉をかけるぱん太郎。「痛いなら言うのん」
腰振りのスピードが落ちると、りささんは大男の首根っこを掻き抱き、肩に頭を埋めて振った。
「大丈夫、もっと──」
「……もっと、なに?」
わざとらしく意地悪そうにぱん太郎は聞き返した。
「──も、もっと……」
りささんは顔を上げ、ぱん太郎と見つめ合った。まるで少女のように赤面していた。物欲しそうに緩む唇、キラキラと輝く瞳。
ぱん太郎はそんな唇を奪い、見ているこちらが息苦しくなるほどのディープキスをした。
長く淫靡な口づけが終わると、りささんはもっと溶けた表情になっていて、熱く切ない吐息を漏らした。──ぱん太郎を見る目が、もう完全に気を許したものになっていた。
「もっと……メチャクチャにしてほしい?」
「うん、メチャクチャにして……あたしを……♥」
「中出しするよ、りさにボクの赤ちゃん孕ませるよ」
「ああ……」またギュッと太い首を掻き抱くりささん。「もう、いくらでもやってくれ…………♥」
「のふふ、じゃあ、娘といっしょにお腹を大きくするのん♥」
再び精力的なピストン運動が始まった。
グチュッ! グチュッ! グチュッ! グチュッ!
その貪るような突き上げる抽送にりささんの口から遠慮のない嬌声が上がった。
「ああ、ああッ、いい、いいよぉッ♥!」
「出すのん、孕ませるのんっ!!」
グチュグチュグチュグチュグチュグチュ!!
ピストンの速さが一段と上がった。
「アァ、いい、いいよ、来て、来てッ♥!!」
乱れる息、りささんの脚がぱん太郎の胴を蟹挟む。
ぱん太郎は女性の中でも体重のありそうなりささんのからだを軽々と持ち上げ、ひたすら情熱的に突き入れてゆく。
「のおッッ♥♥!!!!」
切羽詰まった声が上がり、ググッと突き上げたまま、ぱん太郎の動きが止まった。
「ァ────ァッ────♥♥!!!!」
ギュッとぱん太郎にしがみつき、ビクビクと何度も強くわななくりささんのからだ。
しばらくして、二人が繋がった部分からボタボタと精液の白糸が垂れ落ちてくる。
──あの凄まじい射精で、りささんもぱん太郎に種付けられていた。
「うああ……すごい……すごい出てるよぉ……♥」
「りさの搾り具合も……相当のん……♥」
「こんな……こんな……あぁ……♥」うっとりとした恍惚に包まれるりささん。「ど……どれだけ……孕ませたいんだよ……♥」
「ダンナより孕ませたいのん♥」
「バ…………バカァ………………♥!」
二人は一緒にからだを震わしながら、長い時間そのままだった。
ぱん太郎の肉棒を愛おしむようなパイズリ顔射──巨乳と巨根の対決は壮観で、顔射だけでは済まず、りささんのからだじゅうに白濁が浴びせられた──を挟み、ぱん太郎も全裸になってバックで繋がると、精液まみれになったりささんはさらに乱れ悶えた。
ぱん太郎は何度もりささんに、「ダンナと比べるとどう?」と訊ね、
「ああッ……♥ アッ、アイツよりスゴイよッ……♥ 比べられないほどアンタの方がイイ……♥! も、もう、どうにかなっちゃうう……♥」
と、りささんはぱん太郎に突かれながら本気の口調でそう返した。
「キミの娘が妊娠中でできない分も、ボクの相手してもらうのん♥」
「あっ、あたしも、デキたら、どう、どうすんのッ」
「モチロン」ぱん太郎の目が光ったように見えた。「娘も交えてボテ腹せっくすのん♥」
「こ、この変態いぃ……♥!」
その言葉とは裏腹に、りささんは快感を堪えられないかのように背中を震わせ、ぱん太郎を深々と迎えながらまたからだ奥深くでぶちまけられ、
「アァッ、アア、アァッー♥!」
ほとんど裏返る寸前の声を出しながらブルブルと強く震え、明らかに絶頂に達した様子でぱん太郎と共に逝った。
また時の流れが静かに、緩やかになる。
濃密な種付けの時間。
りささんの幸せそうに溶けた顔──。
二人はもう、夫婦みたいだった。
ぱん太郎は何人もの女性の情夫だった。
3
それから数週間の間にも、遙かに大きな衝撃が次々とボクを待ち構えていた。
心のどこかでは薄々覚悟していたもの。それが現実となったのだ。
梅梅は無論のこと、ゆきのは以前に見てしまったし、かがみさんも見廻りを始めた直後に白昼堂々ぱん太郎に抱きつく場面に遭遇したことがあるので、この母娘が揃って関係を持っていることは知っていた。りんとみことも妊娠したという。
だけど、それ以外の女の子たちまでも。
しのぶ、ちかげさん、みちるさん。
そして……まち。
日も場所もそれぞれ違っていたが、やっていることは同じだった。
彼女たちまでもがぱん太郎の腕の中で喘いでいるなんて──。
でも、目の錯覚ではなかった。確かにあいつに抱かれていた。
……抱かれている? いや。
...
例外ではない。彼女たちもぱん太郎と子作りしていたのである。
こんな光景を実際に間近で目撃するというのは、さすがに自分の目が信じられなかった。
ぱん太郎にからだじゅう弄くられても、棍棒のような巨根を打ち込まれても、彼女たちは嫌悪も痛い顔もひとつせず、普段からは想像もできない媚態で喘ぎ、悶え、乱れ、陶酔しきっていた。他の女の人たちと何ら変わらない。ぱん太郎に与えられる欲望の津波に溺れ、嫌がるどころか自らからだを開き、心から受け入れている様子だった。肌を重ね、粘膜を擦り合わせ、腕を、脚を絡め、昂奮の高みへと登り、そして──あの特濃の精液を渾々と注がれながら、張り詰めるからだと歓喜ほとばしる悲鳴──
ボクの親しい女の子たちが、ぱん太郎に種付けられていた。
しのぶは最近ぱったりと朝の練習に来なくなったと思っていたら、こんなコトをしていたのか。
振り返ってみればみちるさんもずっと姿を見掛けていなかった、いつの間に子どもを産んでいたんだろう。
あの頭脳明晰なちかげさんが、馬鹿になってしまったかのようにあんな喘ぎ声を上げるなんて──。
ボクの頭の中でそんな考えがぐるぐると回った。
特にまち。ついこないだまでぱん太郎になど興味ないような態度だった気がしたのに。あのプライドの高い巫女が大男の膝の上に乗り、小柄だけど童顔にそぐわないほど成熟したからだをわななかせながら、見えない鎖に絡め取られたように、夢中になって自ら腰を振って快楽を求める──そのギャップの大きさが一番ショックだったかもしれない。
誰もが“女”になっていた。ぱん太郎の従順な女に。
どんなにいやらしいことをされても甘受し、快楽に染まりきった顔でぱん太郎のすべてを受け入れる。あの獰猛な射精を何度でも膣内で受け止める。はっきりと子作りを口にし、ぱん太郎の子種を、赤ちゃんをねだる。ただでさえ遠慮なく根元までみっちりと繋がっての膣内射精がさらに濃密に溶け合い、誰もがぱん太郎と一つとなってからだの中に子種を撒かれながら、もはや動物のような声を出し、深い絶頂を味わっていた。
肉欲の俎上に乗せられて快感をすり込まれながら調理され、すべてが盛り付けられた後、最後の一切れまで飽くなく貪られるのだ。
胸がちくちくと痛んだのは、たまにボクのことが出てくることだった。
抱きながらぱん太郎が問うのだ。ボクと自分どっちがいいかと。どっちの子どもが欲しいかと。
皆、答えは一様だった。
「行人はんは赤ちゃんくれないんや、ぱん太郎様に決まってるやん♥ こんな気持ちええコト、うち、ぱん太郎様とずっと子作りして、ずっと赤ちゃん産むわぁ……♥」
「彼とはお友達ですからぁ……だいいち、ここまで種付けといて、どっちがいいかなんて……♥ 私も早く、ぱん太郎様の子どもを身籠もりたいですの♥」
「ぱん太郎様以外に考えられないですぅ……あぁ……2人目が欲しいです……♥」
「わ、私の子宮、あなたの精液で孕み腹になるまでしておいて、何言ってるのよ……♥ もう、あなた以外の赤ちゃん孕めるわけないじゃない……♥」
そう言って彼女たちは発情した猫のようにぱん太郎に絡み付き、さらに求め合い、何度も昂奮の頂点に登り詰め、溶け合って生殖した。
……悔しいという気持ちは湧かなかった。
だって、ボクは別に彼女たちと特別な関係にあるわけではないから。
これまでだって、これからだって、彼女たちは友達だ。それ以上でも、以下でもない。
でも、なぜだろう。
震える腕の先にあるものをギュッと固めているボクがいた。
心にぽっかりと虚ろな穴が空いたような気持ち。
無意識にも、彼女たちの気がボクにあるなどと思っていたのだろうか。漂流してきた人間を暖かく迎えてくれた島の人たちに、そんな気持ちを抱いていたのだろうか。だとすれば傲慢だ。女しかいない環境でたった一人だけ男がいるならば、たとえボクじゃなくても特別視されるに決まっているのに。それなのに、ボクは彼女たちからチヤホヤされるのを心密かに喜んでいたのか。村の人たちが好意をもって接してくれるのに対して優越感を覚え、得意げになっていたのだろうか。
だとしたら、この気持ちは。
「──傲慢だ」
聞こえないようにポツリと呟く。
いずれの時もぱん太郎と幸せそうに交わっている少女に背を向け、その嬌声を遠く感じながらその場を後にした。
こんな出来事が続いたのに、ボクは見廻りをやめなかった。やめる理由がなかった。これはこれ、それはそれだ。そういう線引きができていた自分に軽い驚きを覚えたほどだった。
あのパンダ男がどれほど女に手を付けようが、それが村の取り決めた事である以上は止めるわけにもいかず、つまり、ボクの責務とは無関係な話なのだ。
一度だけ、もしすずだったらさすがに黙っちゃいないけど──と考えそうになって、ハッとしてゴチゴチと頭を拳で打ち、叩き消したことがある。
何考えてんだ。それだけは考えないように禁じているだろ。
すずが、あいつに──だなんて──!
悪夢よりたちの悪い妄想。
もう家族同然にお世話になりっ放しの恩人を、ふとした連想であってもそんな風に考えてしまうなんて、人間として最低最悪だ。
そりゃ近頃は別々に仕事するのが多くなったけど、毎朝毎晩顔を合わせながら寝食を共にしているんだ。そんな変化があったらすぐ気付くはずじゃないか。でも、すずに変わったようなところなんてない。
彼女を信じてないのか!?
──自分自身が腹立たしかった。
その翌晩はボクが包丁を握らせて貰い、今作れる最高の料理──最高、言葉は使いようだ──をすずに振る舞った。
「わあ、どうしたのこれ。美味しい!」
お世辞にも見てくれの佳いものではない料理を、彼女はそう言ってニッコリ笑ってくれた。
改めて安堵感を覚えながらも、ボクはなんだか照れ臭くなってすぐ返事ができなかった。最近大人びてきたというか、ますます笑顔が綺麗になった気がする。すずのハイスペックさはこちらの想像を超えている部分があるから、今でさえ十分すぎるのに、まだまだ成長する予感があるんだよなあ……。連邦の白いモビルスーツはバケモノか。
でも、綺麗だけじゃなく、人を安心させてくれるような柔らかさがあるんだ、すずの笑顔には。
それだけじゃない。気だてが良くて、優しくって、思いやりがあって、朗らかで快活で──彼女の長所を挙げていったらきりがない。
そんな子が、あんな好色漢との子作りを望むわけがない。
すずだけは何としても守らなくては──
それなのに。
すずは、とっくに堕とされていた。
4
家に、庭に、彼女の艶声が満ちていた。
胸から上を濡れ縁に置いて地面に膝を付き、一糸纏わず、後背位でまるで動物のように。
後ろから覆い被さったあいつがすずの中に侵入し、彼女は高く潤んだ声で鳴いていた。
「あぁン、ダメ、ダメェ♥」
甘く喉を震わせながら熱い吐息を何度もつくすず。
情熱的で、リズミカルで、この上なく淫猥なピストン運動。
グチュッ、グチュッ、グチュッ、グチュッ
二人の性器が淫らに擦れ合う音までもが聞こえてくる。
すずのからだも一緒になって前後に揺れ、下向きになってもたわわさを失わない乳房が盛んに踊っていた。
腰が密着して離れることなく、ミドルテンポで、恋人が愛を確かめ合うような一体感ある動き──。
激しいセックスを見るより強烈だった。
快楽に没入しているのか、うわ言のように喋る二人。
「すずちゃんのオマンコトロトロでとっても気持ちいいのん……♥」
「わ、私も気持ちいいよぉ……♥」
やめろ…………そんなこと言わないでくれ…………。
たまにぱん太郎がぐっと腰を押し進め、奥を激しく擦る動きに変わっても、すずは苦悶するどころか、快感が増したようにからだを張り詰め、「アァ、アァ、ニャアァッ♥!」と、さらに蕩けた声を上げるのだ。
あの巨根をまるで苦もなく、お互いを知り尽くしたように深く迎え入れていた。
「ぱん太郎様のオチンチン気持ちいいのぉ……♥! おかしくなっちゃう……♥」
「最高でしょ?」
「うん、うん……♥!」顔を真っ赤にして嬉し涙を流しながら頷くすず。
「もう……どうにでもしてぇ……♥」
どんなに熟した果物よりも甘みを含んだ声。
やめろ…………やめてくれ…………。
ぱん太郎はそれからもさらに甘く責め立て、すずを快楽の虜にした。その快楽を生み出す肉棒の虜にした。
二人の股間がぬらぬらと糸を引くほど淫靡にぬめっているのは、すずの体内から溢れて来ているからだ。
ぱん太郎とすずは、運命の相手のように、一つに溶け合っていた。
恍惚に満ちたいやらしい表情でぱん太郎の抽送を受け入れ、嬌声を上げ続けるすず。
拷問具を連想させるほどの凶々しい肉塊が、すずの秘裂に簡単に根元まで呑み込まれ、ずるずると引き出され、また呑み込まれてゆく。
「あっ……あぁっ……ああぁっ…………♥」
本当に、心底、気持ちよさそうな、すず…………。
どれほど二人は溶け合っていただろうか。
「そろそろ出すよ」
腰を振り続けながらぱん太郎が耳元でそう囁くと、すずは目を瞑ったままコクコクと何度も頷き、
「奥で、奥でいっぱい出して……♥」
と、何の躊躇いもなく、むしろ願っているかのようにせがんだ。
すず………………。
「じゃあ遠慮なく奥にドクドク流し込むよ。すずちゃんのオマンコにボクの愛を注ぎ込むからね」
そう言ってぱん太郎は濡れ縁にしっかりと手をつき、貪るようなラストスパートに入った。
ズチュズチュズチュズチュズチュズチュズチュッ
「アァッアァッアァッアァッ♥!!」
官能に乱れたすずの切ない声。覗く赤い舌。キュッと寄った眉根。そのからだに力みが入り、白い喉が晒される。
いつの間にか二人の手が重なり合っていた。
「イイよおッ、イイよおッ、とけちゃう、とけちゃうぅ──♥!!」
「すずちゃんの子宮にボクの精子ドプドプ流し込むのんッ、ボクとすずちゃんの赤ちゃん作るのんッ♥」
ぱん太郎の全身に充ち満ちる迸るような精気。さらにグッとその腰が進み、凄い速さで動いたかと思うと、
「──のウ────ッッ♥♥!!!!!!」
いきなり痺れたようにスピードダウンし、その尻が強張った。
何かを堪える感じでほんのわずかな間だけ固まっていたが、ぐぐっ、ぐぐっ、と、腰を押し込むような動作を何度も始めた。突き破らんとするほどの勢いではなく、だが、ぱん太郎の男根ならば確実に最奥までみっちり届いてしまうぐらいに。
すずはギュウッと目を閉じ、押し込まれる度に、
「────ァッ♥! ────ァッ♥!」
と声にならない声で悶え、軽く仰け反り、ガクガクとからだを震わせた。
すずの中に──ぱん太郎の精液が注がれている──────
結合部からゴポゴポと溢れ落ちてくる白濁。濃厚な真っ白のどろついた精液。
ぱん太郎は射精しながら押し込んでいるのだ。噴き出すタイミングに合わせて、すずの奥に精液を注ぎ込んでいるのだ。
すずが、ぱん太郎に、種付けられている。
バックで繋がっている二人は、まさしく生殖する雄と雌だった。
からだの奥でぱん太郎の精液を受け止めているすずの、本能の悦びに満ちた表情。淫らな恍惚にまみれた営み。
大人と変わらない──。
「のっ、のっ……すごい出るのん……♥」
何度も何度も、何度も何度も、ぱん太郎の腰は押し込まれた。その度に二人は甘くわななき、蕩けた声を漏らした。
子作りというのは、こんなに甘美なものなのか──
やがて折り重なるように上体を縁側にぐったり伸ばした二人だったが、下半身は繋がったままだった。
普通ならとっくに終わっているはずである。だが、ぱん太郎の尻は依然、ビクンビクンと弾んでいた。
「のの……のの……すずちゃんの子宮の入り口がわかるのん……先っぽつけちゃうのん……直接注いじゃうのん……♥」
「にゃあぁ……ちょ、直接だ、だめぇ……ああぁあ……♥!」
離れずにゆるゆると揺らめく二人の腰。尽きることのない乳白色の瀑布。
まだ出ている……。
すずの子宮に、ぱん太郎の濃厚な精子が、直に渾々と注がれ続けているんだ……。
「ああ……ぱん太郎様、すごいよぅ……♥ まだ出てる……♥ たくさん孕まされちゃってるよおぉ…………♥」
「キミを抱く前から、ずっと種付けたいって思ってたのん。すずちゃんのオマンコの奥で、こうやって、ドピュドピュしたいって思ってたのん。念願がかなって嬉しいのん♥」
「私も……」すずのうっとりとした目。「最初に抱かれた時から、本当は……ぱん太郎様との子作り……したいって……心の奥では……思ってたの…………」
嘘だろう………………。
「じゃあ、もう相思相愛だね♥」
「うん──にゃあっ……♥!」
痙攣するすずのからだ。
「ぱ──ぱん太郎様のオチンチン……また大きくなって……♥!」
「すずちゃんの今の言葉でまた昂奮してきちゃったのん、最後の一滴まですずちゃんの中に出し尽くすのん♥」
ぱん太郎はまたググッと腰を押し込み始めた。
「ハアァ……アアアァア…………♥! ぱん太郎様ァ……好きィ…………♥!」
「ボクも愛してるよ、すずちゃん♥ イクト君なんて忘れてボクの赤ちゃん孕もうね」
「孕むぅ……ぱん太郎様の赤ちゃん孕ませてぇ……イクトのことなんて忘れるからぁ……♥」
そこでボクが出てくるのか…………。
すずはガクガクとからだを震わせ、幸せそうな顔で悶えた。目が、もう、半分以上イッていた。
二人の濃密な交わりは、ぱん太郎の射精が終わるまで。
つまり、長く長くいつまでも、すずとぱん太郎は一つになっていた────
「ねえ、行人…………私とぱん太郎様のせっくす──ううん、子作り──見ててくれた?」
「!!!!」
跳ね起きる。
──部屋は真っ暗だった。
5
「……………………夢………………………………?」
頭がぐわんぐわんする。躰中ねばつくもの凄い量の汗。
雨戸の閉まっていない障子の向こうに見える薄明。
緩慢に首を曲げると、隣ですずととんかつが寝息を立てていた。
ボクはすずの顔をまじまじと覗いた。
何ら苦悩のない、安らかな寝顔──
夢────
「…………はああああぁぁぁぁ……………………」
ボクは息が尽きるまで、長く、長く、溜め息をついた。
蒲団から起き上がり、障子を開ける。
日の出まであと一、二時間といったところだろうか。外はもうだいぶ明るかった。
海は凪いでいて、いつものように穏やかな潮騒が広がっていた。
少し出ている風が火照った躰に心地良い。
ボクは縁側に座り、何気なく撫でてみた。
いつもすずが綺麗に掃除している。何かをした痕跡などなかった。
もう一度、ほっと溜め息をついた。
(なんて夢を見るんだ…………)
生々しく、リアルで、まるで現実であるような。
まさしく悪夢だった。
やっぱり──心の奥底では不安なのか──
でなければ、あんなものを見るはずがない。
……それとも、衝撃的な光景を何度も目の当たりにしたせいだろうか。それであんな夢が出てきてしまったのだろうか。やけに生々しかったのはその影響と考えるならば納得がいった。
しかし……だとしても、すずはないだろう…………。
(ボクもボクだよ……覗き見なんてするからじゃないか)
皆んながアイツと何をしようが関係ないんだから。もう、覗き行為なんて止めないと。
振り返り、ふたたび膨らんだ蒲団を見る。
そこにいる少女が消えるはずもなく、変わりない様子で寝入っていた。
少しホッとする。
「……風呂に入るかな」
ベトベトのシャツを抓み、そう独りごちて立ち上がった。こういう時は温泉なのが有り難い。
なるべく音を立てないよう歩いてそっと襖を開け、脱衣場で服を脱ぎながら考える。
(本当、すずには何から何まで世話になりっ放しなのに……このままでいいのかな…………)
あいつは想像以上に手を広げている。だとしたら、すずだって危ないじゃないか。たとえ彼女が東のぬしをあしらえるほどの実力を持っていたとしても、何か間違いが起こってしまう可能性だって──
(間違い? ……例えばどんな?)
湯に浸かりながら考えてみたが、何も思い浮かばなかった。
ええい、でも、やっぱりだよ。
やっぱり心配だ!
ボクは湯を跳ね上げて両の頬をピシャリと叩き、拳を掲げた。
「よし! ドスケベパンダからすずを守るぞ!」
そう固く心に誓った。
海にせり出した崖の上に建つ一軒家。その上空に浮遊する物体があった。
よく見ると、誰であろう、ごっちらのに乗ったまちであった。
「ふふ……行人様、良い夢が見れたかしら……?」
庇から薄い湯煙が昇る湯殿を見下ろしながら、難解な術式が描かれた札にそっと口づける。本来ならば夢に巣くう魔物などを相手にする時に使うものであるが、霊式を組み換えれば夢を操る術に応用できた。
「ちょっと可哀想だけど、あの人の頼みだから……悪く思わないでね。これを済ませたら、ご褒美が貰えるの……♥」まちの顔が淫蕩にほころぶ。もじもじと袴の上からあそこに手を当て、上気する頬。「あぁ……もう濡れちゃってるなんて……♥ 行人様、ごめんなさい…………♥」
そう言い残すと、まちはごっちらのに家へ帰るよう指示をした。
朝の清んだ空気の中、次第に遠ざかっていく岬の平屋に流し目を送る。
「すずは……もう、手遅れだと思うわよ……」そっと首を振る。「夢の中身は、嘘じゃない……だって、私が見たものを投影してるんだから…………」
まちからすれば、いや誰から見ても、すずも立派なぱん太郎の愛人の一員であった。未だに彼女がぱん太郎と子作りしているのを知らないのは、行人を含め村でもごく僅かしかいない。行人の夢に見せたすずとぱん太郎の行為は、まちの記憶にある情景であった。実際にあんなセックスをしたのだ。すずは本当に奥に出してと願い、アソコをキュンキュン締め付けながら悦んでぱん太郎の熱い射精を受け止め、彼を好きと言い、彼の子を孕むと答えたのだ。皆、行人を可哀想に思って言い出せないだけであった。
今となっては──まちもすずの気持ちの変化が解りすぎるほどよく解ったが。
あんな気持ち好いセックスをされたら、どんな女だって落ちちゃうわよ…………。
そっと腹の下を触る。
(たぶん、次の生理は来ないわね……)
そんな気がする。まだ孕んでないすずが珍しいのだ。
再び後ろを振り返る。少年と少女が住む家は森に隠れてもう見えなかった。
「守るのなら、まだふりーな子……そう、あやね……とか……ふふ」妖しい微笑みになる。「あの子はまだ無事よ。でも、急いだ方がいいわ、行人様。だって、あの子ももう、ぱん太郎様は狙ってるのよ……? にぶちんの貴方じゃ、難しいかしら…………」
(第12話に続く)