ハレグゥエロパロスレSS保管庫@ Wiki
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2021-10-13T23:14:52+09:00
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ラヴェンナ×ワジ
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ーラヴェンナ宅(夕方)ー
今日はラヴェンナの家にワジが寝泊まりに来た。
それは、ラヴェンナから「ワジ!私の家で寝泊まりしてみない?」と珍しく誘ってきたからだ。…だが、夕方ラヴェンナの親は留守だった。突然ラヴェンナはこんなことを言い出した。
「……はあー。やっぱりワジといるとほっとするや…溜まってるストレスの悩みも聞いてくれるし、いつものようにお姉さんらしく振る舞わずリラックスできるし、落ち込んだりイライラしてるとき腕組んで慰めてくれるし…ありがとな〜ワジ〜あんたといるとオアシスだわ」
ラヴェンナの声はいつものおしとやかな声じゃなくボーイッシュな声に変声し、ワジを褒めていた。
「あはははっ…いや〜////えへへ…ありがと。」
ワジは照れ笑いした。一方ワジも意味もなく笑う笑い上戸から、急におとなしくなり、赤面しながら少女のように内股になり、モジモジしていた。
「…あの、ラヴェンナ…ど、どうして僕とまた…その…えっと…寝泊まりに誘ったの?…?」
「ん〜?今日、お母さん達旅行行っていないから、あたし一人お留守番なの♪だから…一人じゃ心細くて♡だから誘ったのよ♡だってひとり退屈なんだもん!!」
「りょ‥旅行…あ、あははは…そうなんだ。それなら、グプタを誘えばよかったんじゃない?幼馴染だし…」
「何であたしがカツカレー男子と一晩過ごさなきゃいけねーんだよ💢やだ!ぜってーやだ💢寝泊まりつったら同性だろ!!!!」
ワジはビクリと驚いた。いきなり責められ少し半泣きした。
「あ…そっか…ご、ごめんよ…幼馴染だからって理由で…い、いっちゃ…て」
ワジはラヴェンナの怒った顔見て涙を流してしまった。
ワジは、ラヴェンナから怒られるとすぐ傷つき泣いてしまうのだ。
それを見てラヴェンナは「はっ!ヤバい」となり、やりすぎたと反省し、ワジを抱きしめた……そしてその後、ワジの顎に手をかけ、暑いくちづけした。
「!!?」
「ん…ん…ん〜〜〜♡♡♡」
ラヴェンナはワジの口の中に舌を入れ、身動きせぬように強く抱きしめながら、ワジのお尻を掴み、いやらしく撫で触る。
「〜〜〜ん、ん、ん♡んあ…ひ…ひやぁ…や、やめて…僕、いやぁ…きゃっ!こういうの…は、恥ずかしい…ん♡」
ラヴェンナは拒むワジの口をまた塞ぎ、舌を入れた。
そしてその夜……
ーラヴェンナ宅(バスルーム)ー
ラヴェンナとワジはお互い裸になり、ラヴェンナはワジを洗面椅子に座らせた。そしてワジのちいさな胸の膨らみを揉み始めた。
「きゃっ!!ちょ…ラヴェンナ?ラヴェンナ?やめて!……ひやぁ♡」
そしてその後ワジの又に手をかけくちゅくちゅした。
「ひゃっ!…あ、ぁ、あぁ、、ひゃああん♡や…やめて…あぁん♡ラヴェンナ…そこ…指…指淹れない…んあ♡」
「はは‥良い声だすな〜普段のゲラ姿を忘れさせるくらい反応が逆転してんな…ワジの穴小さいな〜2本指で限界か?」
ラヴェンナはワジの又の穴の中を2本指で突っ込み、激しく上下にゆらしながらいじった。
「きゃっ!?ひゃああああああん!痛い!!痛い痛い!!いた、いたぁぁ〜い…ひっ♡ひっ♡抜いて、、抜いて、ひぁぁん♡……のぼせちゃ、、あ♡」
ワジの又から大量の潮が吹いた。ラヴェンナは耳元で
「ワジの今まで見れなかった可愛いところ…あたしが全部一人占め♡…他のやつらに渡さない…あたしだけにしか見せない…可愛い可愛いワジの素顔よ」
「い、いやあん♡…み、耳くすぐったい…は、恥ずかしい…恥ずかしい、み、み、見ないで……あん♡揉まないで…大きくなっちゃうよ…こ、怖いよ〜…ひう」
もう怖くて痛くて限界超えたワジはラヴェンナの腕をぎゅっとしがみつき、震えたまま
上目遣いで涙を溜めたままラヴェンナをじっと見た。
「…ラヴェンナ…ひっく…怖い…怖いよ…僕優しいラヴェンナが良い……ひっく…痛いの…痛いから、普通にお風呂入って、ゴシゴシしよ……ね♡」
ワジの反応が可愛すぎて可愛いすぎてラヴェンナはワジを思わず前から抱きしめた。
「ワジ可愛い♡可愛い♡絶対他の人に見せないでね♡あたしにだけ見せて♡可愛い可愛い♡」
「ラヴェンナ…苦しい…苦しいよ〜…うぅ」
ーラヴェンナ宅(ベッド)ー
ラヴェンナとワジはパジャマに着替えた。ラヴェンナは、1つのベッドにスペースを空けて、ワジを寝かせた。ラヴェンナはワジのそばに寄り、ぎゅっとぬいぐるみのように抱きしめた。
「ラヴェンナあったか〜い」
「ワジいい匂〜い」
「…ワジ」
「ん?」
「…あたしのお母さん達が留守だったら…また寝泊まりしてくれる?…寂しいの。寂しかったのよ。だからワジといると癒やされるし元気がでるの…だから…良い?」
「……うん!あははは!いいよっ!いつでも行ってね」
「ありがとう。ワジは優しいわ。」
「えへへ////」
2人はおやすみのキスをして抱き寄せ合いながら眠った。
ー完ー
2021-10-13T23:14:52+09:00
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【ジャングル】ハレグゥでエロパロ アフロ3個目【都会】
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(過去スレ)
【ジャングル】ハレグゥでエロパロ アフロ2個目【都会】
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【ジャングル】ハレグゥでエロパロ【都会】
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ジャングルはいつもハレのちグゥでエロ妄想
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2016-01-09T15:59:35+09:00
1452322775
-
070901_8
https://w.atwiki.jp/hgpink/pages/105.html
****小麦色の白雪姫_8(二:279-288)
<<10>>
「……疲れた……ドッと疲れた……」
部屋に戻るやいなや、ベッドに備え付けられた大きなソファに持たれかかる。
グゥもオレの隣にちょこんと座り、オレの肩に体重をかけた。
「なんか、デジャヴを感じるな」
「……んじゃこの後も、似たような展開になる?」
「お前は……まったく」
呆れ顔で小さく溜息を吐く。しかしすぐに笑顔をくれ、オレの胸元にトン、と額を寄せた。
「……熱い」
胸に顔を付けたまま首を捻り、オレの左手にじっとりとした目を送る。
そこには先ほどアシオに手渡された蝋燭の瓶が律儀にも握られたままだった。
……どうしよう、コレ。
───あの後、オレの最後の叫声と共に、怪談大会は無事幕を閉じた。
パチンと電気が点くとついさっきまで部屋に漂っていた重苦しい空気が一気に晴れた気がした。
時計を見ると、夜中の一時を回ろうとしている所。随分と長い間やっていた気がする。確か、
談話室に入る前に見た時刻が八時ちょっと前。……軽く五時間くらいあの空気の中にいたって事だ。
よく精神が崩壊しなかったものだ。自分を褒めてやりたい。
語り部の四人は皆、凝り固まった身体を解しながら実に晴れ晴れとした笑顔を見せていた。
それでいて、まだ物足りないといった寂しそうな声もちらほら。今度はあんたたちだけで
勝手にやってくれ。
火の消えた蝋燭の瓶や飲み物、お菓子の入っていたトレイなど、テーブルの上は一部を除けば
パーティーの後のような結構な散らかりようだった。後片付けを手伝おうとも思ったが、ベルや
アシオたちにやんわりと断られ、部屋から追い出されてしまう。おばあちゃんも外に出され、
名残惜しそうにオレとグゥにお休みなさいを言うと一人で自分の部屋に帰っていった。
アシオは母さんとアメを部屋に送ろうと背中に背負い、次の瞬間ベルにリアル無限コンボを
食らって昇天した。あれこそが百番目の怖い話として相応しいだろうと思ったのだが、蝋燭の火は
消える気配を見せなかった。あれ以上に恐ろしい事が待っているのかと思うと泣きたくなる。
母さんとアメは、ボロ雑巾のようになったアシオの代わりにベルに背負われて部屋に帰っていった。
ロバートはそんなアシオを背負って医務室に向かったようだ。アシオ、お大事に。
……そうしてオレとグゥは二人でオレの部屋に戻り、今に至る……というわけだ。
その間、ずっとオレの手には蝋燭の灯るガラス瓶が握られていた。そしてそれは今も手の中にある。
さて、これをどうしたものか。アシオの話を信じるわけじゃないが、全く無視するのもなんだか
憚られるものがある。
あれだけ長時間火を灯していたのに、この蝋燭はまだ半分くらいしか減っていない。丁度、瓶の
真ん中あたりでランタンのようにチロチロと淡い灯りが揺らめいている。
さぞ高級なものなのだろう。これなら普通の蝋燭のように蝋が垂れる心配も、倒してしまったり
火が燃え移らないか、なんて事にも気を回さずに済む。
「どうしよう、これ」
「さっさと火を消してそのへんに転がしとけばいいだろ」
「いや、そーゆーワケにもいかないだろ……」
「なんで」
「なんでって……とにかく、どっかその辺に置いとくよ、コレ」
「…………」
ソファから降り、部屋を見渡す。広いわりに殆ど家具の無いこの部屋で置く場所と言えば、
暖炉の上かベッドに備え付けられた小さな机の上くらいだ。オレはベッドに座り、机の上に
置かれたランプを少しずらし蝋燭の瓶を置いた。ここなら、ベッドに横になっても常に
蝋燭の火を確認する事が出来る。
「……随分と大事そうにしおって」
オレの隣に座り、ぱたんと背中を倒しグゥはつまらなそうに呟いた。
少し持ち上がった服の隙間からちらりと小麦色のおへそが見える。
グゥは今、前止めの半袖シャツに長ズボンというパジャマ姿に着替えている。襟は無く、首元は
丸くカットされたシンプルな形。上下共に薄いピンク色で統一されており、袖や裾など末端部分だけ
少し濃い色で太いラインが入っている。第一ボタンまできっちり留めているため、着替える前よりも
ずっと肌の露出が減っているのが少し哀しい。
ちなみにオレは寝巻きもTシャツに短パンだ。……オレって、変わり映えしないなあ……。
「聞いてるのか」
「あだだだッ!!」
言いながら、グゥは寝転がったままオレの耳を引っ張る。そのまま無理やり引き込まれ、
オレはグゥの隣に勢い良く身体を倒した。
「アシオに言われた事、本気にしてるのか?」
「いや、本気って程じゃないけど……でも気になるじゃんか」
「気にするな」
「え、でも……」
「気にするなと言っている」
平坦な声で、命令するようにオレに言葉をぶつけながら、真っ直ぐに見詰めてくるグゥの瞳は
何故か不機嫌そうに見えた。
「そんな事が、そんなに気になるのか?」
「そ、そりゃあ、だって……」
「グゥよりも、気になるのか……」
「…………え……」
一瞬、グゥが何を言っているのか解らなかった。それを理解するよりも早くグゥの口が再度開く。
「もういい。ずっとソレ眺めてろ」
言ったきり、グゥは背中を向けて黙り込んでしまった。何度呼んでも、肩を揺すっても、
グゥは何の反応も示してはくれなかった。
そのうちに、むぅむぅと静かに寝息が聞こえ出す。……この気分屋め、と毒づくも自分に全く
否が無いなどとはとても言い切れない。
時計を見るともう一時をとうに回っている。普段ならとっくに寝ている時間だ。どちらにしろ、
それほどグゥと共に過ごす時間も無かったか。
オレは部屋の電灯を消すともう一度グゥの背中をちらりと見やり、おやすみ、と小さく呟き
グゥの隣に横になった。
……明日、グゥにちゃんと謝ろう。微妙に納得いかないがそれが多分、一番良いんだ。
<<11>>
……眠れない。
カチ、カチと規則的に時を刻む時計の音が煩わしい。
ジワジワと身体にまとわりつく様な熱気は、いくら寝返りを打っても離れてはくれない。
背中や首筋を伝う汗もとにかく不快だ。
今は夜中の何時くらいなのだろうか。
明かりを消し、ベッドにその身を倒してからどれほどの時間が経ったのか解らない。
部屋を淡く照らす常夜灯の光に紛れ、ゆらゆらと揺らめく蝋燭の灯りは寝る前に見た位置よりも
随分と瓶の底に近づいている。
数時間は経過しているようだが、窓の外はまだ真っ暗で、僅かに部屋に差し込む月明かりは
まだ沈む気配を見せていない。
ベッドの後ろの棚に立て掛けてある目覚まし時計を見る動作すら億劫で、身体が言うことを
聞いてくれない。このままでは明日に支障をきたすことは明白だ。
別に明日は何を予定しているワケでもないが、今日はあまりにも色々な事がありすぎて
身も心もへとへとに疲弊しているのだ。
少しでも体力を回復しておきたいと思い目を固く瞑る。……しかし、どうにも身体が火照り
目が冴えてしまう。
都会の夏も確かに熱いが、湿度を考えれば体感気温はずいぶんと涼しい。
ジャングルで生まれ育ったオレにとって、この程度の暑さはむしろ快適と言えるものだったはずだ。
それなのに何故こんなにも、寝苦しいほどに身体が熱を帯びているのか。
……考えられる原因は、一つしかなかった。
自分の隣で寝息を立てる少女を見やる。
オレに背を向け、小さくゆっくりと肩を上下させているその様子から、少女は疑いようも無く
ぐっすりと安眠しているように見えた。
「グゥ……」
ぴたり、とオレの手が少女の首筋に触れる。グゥの身体はひんやりと心地よく、オレの火照った
体から熱を奪い取っていく。
そのまますべすべと肌の上をなぞり、手触りの良い柔らかな感触を楽しんでいるうちに、
オレは身体の熱がある一点に集中していくのを感じていた。
……起きてない、よな。
ぐっとベッドに肘をつき半身を起こす。グゥの顔を覗き見るように自分の顔を近づけ、その横顔に
かかっている髪をそっと指で梳き耳の後ろに回す。
小さな耳。自分のものと何が違うのかも解らないのに、何故こんなに愛らしく感じてしまうのか。
耳の淵をそっと指でなぞると、トクンと、また自分の身体を包む熱の温度が上昇するのを感じた。
吐息のかかるほどに顔を近づけても、グゥはむぅむぅと規則正しい寝息を立て目を覚ます様子は無い。
ぷっくりと丸みを帯びた頬に軽く唇を当ててみる。唇を離す際にチュ、と、わざと少し大きな音を
立てるがグゥに変化は見られない。
耳たぶを優しく唇で噛み、耳の裏に舌を這わせ、軽く口付けをし、首筋にも何度もキスを重ねる。
なおも規則正しく安らかな寝息を立てる少女とは対照的に、オレの鼓動はドクドクと高まりその速度を
上げていく。
たまらず、ギュウ、と己の股間を押さえる。そこはもうズボンの上からでもはっきりと解るほどに膨らみ、
ズキズキと疼きその存在を主張していた。
……グゥ。オレ、もう……。
荒れる呼吸を抑え、コクリと小さく喉を鳴らすと、グゥの肩に置いていた手をゆっくりと
その身体に這わせる。その手は脇を通り、腰を通り、少女の下半身へと滑り降りていく。
やがて服の上からでもその柔らかさが解る、ぷるんと肉厚なヒップへと辿り着いた。
まずは指先でその双丘の周りをくすぐるように周回し、その手触りを確認する。下着のラインを示す
段差はあるが、その生地は薄い。柔らかく張りのある感触が十分に指に伝わってくる。
少し力を込めただけで、くむくむとどこまでも指が埋もれ不定形物のようにその形を歪ませて行く。
指に込めた力を抜くと、プルンとすぐに元の形に戻る。
身体を横に倒しているせいか、ベッドに圧迫された側の尻肉はモチモチとより一層の張りがあり、
また違った感触をその手に伝える。尻肉の谷間に埋めた指を戻した際も、ズボンの生地がその肉に
挟まったままにまりムッチリとその形を浮き上がらせていた。
ゾクリと、何かが背筋を通るような快感を覚える。オレは我を忘れてその身体をただ夢中で貪り続けた。
「ん……ふ…」
「────ッッ!!」
突然、耳に届く吐息。その少女の反応に、オレは瞬時に我に返りビクンと身体を引きつらせた。
慌ててグゥの身体を弄んでいた手を離し、目を瞑りたぬき寝入りを決め込む。
「…………」
しばらく凍りついたように硬直し、そのまま時の過ぎるに任せるが少女からはそれ以上の反応は
見られなかった。
何やってんだよ、オレ…これじゃ、まるっきり変態じゃないか……。
はぁ、と小さく溜め息を吐く。
いつの間にか動悸は幾分穏やかになり、身体の熱も引き始めていた。
もう、このまま寝てしまおう。そう思い心を落ち着けるが…どうしても一箇所、熱の引いてくれない
箇所がオレの心を悩ませる。
きゅう、と股に力を込める。自らの太股で強く圧迫するが、それは益々にジンジンと疼きを増していく。
トイレで、済まそう……。
身体を起こし、最後にグゥの寝顔を確認しようと覗き込む。
「うん……ん」
その時、小さな呻き声と同時に、グゥはゴロンと寝返りを打ち身体をこちらに向けた。
ただそれだけの事に、オレの心は大きく高鳴った。普段なら気にも止めないような小さな事に
今のオレは気付いてしまった。気付いてしまったばっかりに、トクン、トクンと、治まりつつ
あった鼓動がまた速度を上げていく。
グゥの胸元。ボタンとボタンの間に開いた小さな穴。寝返りを打った際に服がベッドに挟まれ
巻き込まれたのだろう。そこはくっぱりとひし形に隙間を開け、その向こうに真っ白なグゥの肌が
少しだけ覗いていた。
まだオレが見ていない部分の、日焼け跡。海での行為や、風呂に入る前に見たグゥの可愛いお尻が
フラッシュバックのように頭を過ぎる。
喉に溜まっていた唾を静かに飲み込み、オレはもう一度身体をベッドに倒しその胸元に顔を近づけた。
ちらりとグゥの顔を見上げる。先ほどと変わらず寝息を立て、ぐっすりと眠っているように見える。
オレはまた目の前のグゥの服に開いた穴に目を戻すと、ゆっくりとその隙間に人差し指を挿し入れた。
くにゅ、と指に心地よい弾力が伝わる。じっとりと汗ばんでいるのはグゥかオレの指先か。
少し指を浮かせ、また押し付ける。それを繰り返しながら、指を段々と隙間の奥に侵入させていく。
指が服の影に隠れる度に、指先に受ける感触は柔らかさを増していく。それに比例するように、オレの
鼓動も跳ね上がっていく。
そのまま指全体が根元まで隠れた時、指先に違う感触が触れた。屈伸するように指を曲げると
こりこりとした固い突起が柔らかい肉に埋まる。中指も奥まで挿し入れ、二本の指で摘みきゅ、と捻ると
グゥは身体を一瞬、ぶるっと震わせた。いよいよ心臓の音が身体全体を揺する程に昂ぶっていく。
もう気付かれても良い。そんな開き直りも手伝い、オレの指先はその動きに激しさを増していく。
突起を摘んだまま、親指をも服の中に侵入させ、反対の乳首に押し当てる。両方の突起を指の腹で撫で上げ、
くにゅくにゅと円を描くように揉み込む。
自らの股にあてがわれた指はズボンを盛り上げる膨らみの形を浮き上がらせるようにギュ、と強く握り、
その痛いほどに腫れ上がった己の分身全体を指で揉みこねるように動かしながら手のひらで擦り上げる。
もはや荒れる息や時折う、く、と漏れる呻き声もそのままに、オレは夢中で自らの身体を慰めていた。
「グゥ……グゥ…ッ」
グゥの寝顔を見上げる。その名を呼ぶと、益々その少女に対する想いがキュンキュンと昂ぶっていく。
しつこく弄り続けた乳首はピンと大きく勃ち、その固い膨らみが服の上からでも確認できる
くらいになっていた。
オレは服の上からその突起に舌を這わせ、チロチロと舐め上げる。たっぷりと涎を付けて何度も
舌を擦り付けているうちに、うっすらと透けた布地に乳首がピタリと張り付き、その形や色が浮かび
上がっていく。
ゴシ、ゴシと厚手の生地を擦る音が耳に響く。オレはいよいよ股間に押し当てた手の動きを
早める。その動きに合わせ、ハッハッと荒い息を吐き出すオレの唇が、少女のしっとりと濡れた
突起へと吸い寄せられる。
そうして少し舌を出したその口が、グゥの乳首に吸い付いた瞬間……
「────んぅ?」
不意に首に何かが巻きつき、グゥの胸にぎゅっと顔を押し付けられた。慌てて飛び退こうと
するが、今の体勢で頭を押さえられていては力が入らない。
まさか、グゥが起きたのか。ついさっき気付かれてもいいと思ったばかりなのに、実際に
その状況に直面すると頭から血の気が引いていく。
グゥの顔を見たくても、頭を上げる事も出来ない。なんとか振りほどこうと頭をぐりぐりと
動かすがオレを押さえつける力は益々強まっていく。
「慌てるな……落ち着け」
穏やかな吐息が頭にかかる。やっぱり、いつの間にかこの少女は目を覚ましていたらしい。
興奮の熱が引いていくにつれ、重い罪悪感が心にズシリと圧し掛かる。
……しかし、その声からは何故か、オレを咎めるような色は微塵も感じられなかった。
「それと、あまり激しく動くな。そこはグゥも敏感なんだぞ」
オレの頭にかかっていた力が緩み、何かが髪をさらりと撫でつける。顔を上げると、
グゥの優しげな微笑がオレを迎えてくれた。
「あ、あの、ごめん、オレ、その……」
いまだ状況を完全に把握し切れてはいなかったが、とにかく何か弁解せねばとしどろもどろに
口が動く。そんなオレの様子にグゥはくすりと笑い、額にちゅ、と唇を合わせまたオレを強く
抱き締めた。
「謝らなくてもいい。別に、ハレの夜這いなぞ今日がはじめてでは無いしな」
「ぅぇえッ!?」
首筋を冷たい汗が流れ落ちる。もしかして、これまでの行為も気付かれていたのか。
いや、夜這いなんて大それたものじゃあないつもりだったのだが。
この少女とは毎晩、並んで寝ているのだ。その無防備な寝姿にこれまで何の劣情も催さなかったと
言えば嘘になる。寝惚けたふりをして、寝返りを打ったふりをしてその身体に軽く触れた事は何度も
ある。だけど、次の瞬間には果てしない後悔と自己嫌悪に苛まれそれ以上は何も出来なかったのだ。
「ごめん、グゥ……で、でも、ここまでしたのはこれがはじめてだから……」
「…………」
「……だから……」
グゥの沈黙に、言葉が遮られる。どう言い訳をしても、自分のやった事は最低だ。
本当に、これほど大胆な行動を取った事はこれまでに一度も無い。しかし、程度の差はあれ
無抵抗な状態のグゥを好きに弄んでいた事に変わりは無いのかもしれない。
「グゥ……」
もう一度、声をかけようと口を開いた瞬間、グゥはオレの頭をぎゅうと強烈に抱き締めてきた。
グゥの胸元に頬が埋まり、その鼓動が耳に直接伝わってくる。
「ホントに、してたのか。……夜這い」
「ぐはっ……!」
しまった……またも、盛大な自爆をかましてしまったのか。
「いやそのっ、違っ!」
「違うのか?」
「……違、わない、けど……ごめん……」
何を言ってももう遅い。まんまと誘導尋問にハマってしまったオレに今出来る事と言えば、
ただひたすら謝罪の言葉を綴るくらいのものだ。
「もう、馬鹿だな、お前ってヤツは。……ホントに、もう……ッ」
グゥは両腕でオレを抱え、これ以上ないくらいに力を込めてオレをその胸に押し付ける。
そのせいか心臓の音は先ほどよりもずっと高く鳴り響き、その速度も増しているように思えた。
「ぐ、グゥ?」
「いいから、謝らなくていいから……」
グゥは押し殺すように細切れの声でそれだけを言うと口を紡ぎ、ただオレを抱き締める。
時折ふるふると身体を震わせ、足下からパタパタとシーツを叩くような音が聞こえる。
そうしてしばらくすると、はぁぁ、と大きな溜息と共にその身体から力が抜けていった。
「もっと、早く気付いていればよかったな……」
腕を離し、ずりずりとオレの目線まで滑り降りてくる。久々に真正面から見た
その表情はどこか残念そうに、寂しげな微笑を浮かべていた。
「……今日は、気付いたんだよね。どの辺から起きてたのさ?」
「む? 最初から寝てなどいなかったが?」
「ぐふっ……!」
……グゥは、就寝時も目はばっちりと開いているので寝ているのかどうかの判別が付き辛い。
それでもオレは長年の経験でだいたい見分けがつくようになってはいたのだが、たぬき寝入り
までを含められてしまうともはや判別は誰にも不可能だ。
「じゃ、じゃあ何でオレの好きにさせてたの……?」
「ふむ……。どのタイミングで声をかけたら一番ダメージが大きいか見計らっていたのだが」
「……へぇ、なるほどねぇ……」
こんな時でもこの少女はそんな事を冷静に計算していたらしい。何とも末恐ろしい……と言うか、
今現在既に十分恐ろしい。こうやってオレは今後もこの小悪魔に手玉に取られ続けるのだろうか。
「しかしな。その……あんまりにも、ハレが夢中だったから、邪魔するのも悪いと思えてな……。
……落ち着くまで、愛でていようと思っていたのだが……」
胸の前で両手を揃え、気恥ずかしそうに目を泳がせながらグゥは途切れ途切れに言葉を重ねる。
「結局、グゥの方が最後まで持たなかった。まさかハレがあそこまでするとは思っていなかったからな……」
「……ごめん……」
「だから、謝るなと言うに。……まだ、最後までしていないのだろう? その、グゥは別に、構わんのだが……」
オレを真っ直ぐに見据えたまま、グゥは自らの胸元、パジャマのボタンとボタンの隙間に指を
引っ掛け、小さく開く。
「こんな所から指を入れたのか。まったく、よく思いつくもんだな」
「……すんません」
「それに、パジャマが涎でベトベトだぞ。よっぽど夢中だったのだな?」
「……すんません」
うう、冷静に思い返してみれば、オレと言うやつはどれだけ必死だったのやら。
惨めというか哀れと言うか……人としてかなり情けない。
「……もう少し頭を使っていれば、服を汚さずに済んだかも知れんと言うのに」
そう言って小さく微笑むとグゥは少し腰を浮かせ、ボタンの隙間に入れた指をぐっと引っ張り、
服をずらしていく。強引にずらされた隙間が腋の下あたりまで到達した時、その穴からぷるんと
小さな突起が零れ出た。
「────ッッ!」
……ドクンと、心臓が飛び跳ねる。
半そでのシャツに長ズボン。普段よりもずっと露出の少ない格好をしているのに、ボタンだって
きっちりと全て留められているのに。その小さな隙間から、女の子が最も隠さなくてはならない
部分の一つ、艶やかな桃色の突起だけがてらいなく晒されている。
「ほら、こうすれば……直接、出来るだろ……」
胸を張り、ずり、ずりと少しずつオレの顔に胸元を寄せる。
オレはその様子に身動き一つ取れず、ただ目を皿のようにして見守る事しか出来なかった。
「……ンッ」
そうしてすぐ眼前まで迫ってきた突起が鼻の先に僅かにかすり、ぷるっと揺れた瞬間……
プツンと、頭の中で何かが切れた音が聞こえた。
「わぅっ? ハ、ハレ!?」
オレは弾かれたようにグゥに飛びつき、圧し掛かる。ベッドに背中を倒したグゥの腰をまたぎ、
その小さな隙間からツンと見える突起に唇を寄せた。
「おっ、落ち着……ふぁぁッ!」
隙間に指を掛け、限界まで穴を広げその中に舌を挿し入れる。ぷくんと桃色に膨らんだ乳輪と、
その中心で固くしこった乳首を、舌全体を使って大きく舐め上げる。
突起の周囲の膨らみは乳房よりもなお柔らかく、舌を這わせると乳首が一瞬その中にくぷ、と
埋まり、すぐに舌の動きに引かれて戻ってくる。
そのまま先端部分にちゅぷ、と吸い付き、啄ばむようにちゅうちゅうと音を立てて吸い上げながら、
口内ではただ夢中でペロペロと、何度も何度もグゥの乳房に唾液を擦り付ける。舌の上に伝わる全ての
感触が、オレを興奮させた。
「……ふふ、赤ん坊みたいだな」
グゥはオレの頭を優しく撫で付け、吐息交じりにそう呟いた。
その手が少しずつ、スムーズに身体を滑り降りていく。
「ここは、しっかり男の子なのにな」
「───うぁっ!?」
グゥの手はあっと言う間にするりとズボンの中に侵入し、オレの分身を直接、きゅ、と握り込んだ。
ビクンと腰が跳ねるが、その拍子にぬるりと指先に先端を摩擦され身体の力が一気に抜ける。
「随分と濡れているな……」
「ふっ、うんん……、んむぅぅ……っ」
既に十全に先走りの汁が溢れていた先端部分を、ちゅくちゅくと音を立てて擦り上げられる。
その遠慮の無い無骨な動きに包皮が捲られ、腫れ上がった肉傘に指の段差がコツコツとぶつかる度に
自分の意思に関係なく肩や爪先がぴくんぴくんと跳ね上がる。
それでもオレの口はグゥから離れず、思わず嬌声を吐き出してしまう時にも下唇や舌は
グゥの桃色の肌に這わせたままだった。
「いやらしい事を考えるとこうなるのか?」
分身の先端から分泌される粘液を塗り込むように撫で付けながら、ボソボソと耳元で囁く。
オレは乳首に吸い付いたまま上目遣いでグゥを見やり、ただコクコクと頷いた。
「ふむ……つまりグゥの事を考えるとこうなると」
「…………」
ニヤニヤと口端を歪め、ぎゅっと強く分身を絞り込み、オレに返答を促す。……このドS。
オレは顔を真っ赤にして強く頷いた。グゥも満足げにふむふむ、と頷き返し目を細めて微笑む。
「正直者にはご褒美をやらねばな……」
熱を帯びた瞳がゆらりと波を打つ。
グゥの手がオレの分身から離れたと思うと、グゥはもう片方の手もズボンの中に侵入させ
トランクスごとするりと膝元まで下ろした。
オレは何の抵抗も出来ず、ただグゥの所作に身を任せる。もう、羞恥心なんてどこにも
残ってはいなかった。長く焦らされ続けたオレの分身はもはや限界まで張り詰め、その解放を
待ち詫びているのだ。
窮屈な場所から解き放たれ、外気に晒された粘膜部分は空気の流れすらも敏感に感じ取り、
ピクンと跳ねる。粘液に塗れた表面はスースーと涼しいが、内部に蟠った熱は上昇する一方だった。
グゥはそのまま両手を自らの腰に当て、身をよじりながらスルスルとズボンを下ろしていく。
パンツは残しているのか、と一瞬思ったが、違う。そこに残っていたのは真っ白な水着の跡だけ
だった。勿論、オレの目には水着の跡だけじゃなくもっと大変なものも映り込んでいたのだが、
すぐに顔を上げた。今そこを凝視してしまったら、視覚刺激だけでオレの分身は簡単に爆発して
しまうだろう。
……ってか、何でいきなりグゥまで脱いでるんだ、おい。
「グ、グゥ……オレ、そこまでするつもりは……」
「馬鹿。何を勘違いしてる」
ブンブンと首を横に振るオレに、グゥは呆れ顔を返す。
「そのまま出されたらパジャマが汚れるだろう」
「……あ、そ……」
……どうやら、オレの早とちりだったようだ。
確かに、このままじゃグゥのパジャマもズボンも、オレの熱情の迸りにベッタリと汚されて
しまう事だろう。自宅ならともかく、それを洗濯するのはこのお屋敷のメイドさんたちなのだ。
そのまま手渡すわけには当然いかない。かといってこっそり洗面台などで洗うにしても、その
様を誰かに見られたらおしまいだ。例えばソレを見たのがメイドさんだった場合、彼女はまず
こう言うだろう。私どもにお任せ下さい、と。そして屈託の無い笑顔で言うのだ。ご安心下さい、
ご他言は致しません。……想像するだに恐ろしい。
「……まあグゥとしては、ハレが獣のように襲い掛かってきたとしても、別にいいのだが」
「グゥ……。その気持ちはすごく嬉しいけど、別にいいとか投げやりな言い方されるとちょっとショックだよ?」
「ハレが父親の二の舞になっても、グゥは本望だぞ。……これでいいか?」
「うん、絶対に暴走しないよ。誓うよ。命に代えてもグゥの貞操は守るよ」
まだ、オレの中の防波堤は完全には崩れていなかったらしい。今さらながらも決意を新たに
する事が出来た。ありがとう、保険医。オレは絶対、お前みたいにはならないからね。
グゥは足首まで降ろしたズボンをぺいっと蹴るように放ると、シャツのボタンにも手をかける。
一つ一つ、プチプチと淀みなく外していき、はだけたシャツの襟元に手をかけ左右に開く。
するりと袖から腕を抜き、上体を少し浮かせるとグゥはパジャマを背中から引っこ抜き
ズボン同様にベッドの脇に放る。これで、グゥの身を包んでいたものは全て無くなった。
小麦色に焼けた肌。そのほんの一部、胸元の二つの三角形とそれを結ぶ線、そして首筋に
伸びる二本の線のみが本来の肌の色を残し、その透けるような白さや緩やかな丘の頂点に
色づく桃色の艶やかさがより際立って見える。綺麗、と言うより単純に、エッチだと思った。
目の前に今、生まれたままの姿のグゥがいる。そう思うだけで、簡単に先ほどの決意が
揺らぎそうになってしまう。主の気も知らず、びくんびくんと嬉しそうに跳ねる自分の分身が
いっそ可愛らしい。
「おい、ホントに大丈夫か……流石に身の危険を感じるぞ、グゥも」
「……うう……だ、大丈夫だよ……ちゃんと、理性はあるから」
「ふむ……これはさっさと発散させてやらねばどうなるか解らんな」
「大丈夫だって……ふぁ!? ンッ……やぁ……ぅんぅぅッ!」
不意に、グゥの指先がつつ、と竿をくすぐるように滑った。そのまま裏筋から雛先までを
指の腹で何度も擦り上げられる。突然の刺激に腕の力が抜け、オレはグゥの胸元にその身を
トスンと倒した。
頬の全体を包む柔らかで張りのある感触と、その中に一点だけあるポチっと小さな固い感触。
顔を少し持ち上げる。すぐ目の前にぷるんと飛び出た可愛い突起に迷い無く吸い付くと、オレの
分身を包む圧迫感が一瞬、きゅっと強くなるのが解った。
オレは乳肉に唇を埋もれさせたまま、舌で乳房全体を舐め上げ、ぢゅるる、とわざと音を立てて
吸い立てる。そしながらもう片方の乳房もぐにゅぐにゅと柔肉全体を掌で押し包むように揉み込み、
乳首を人差し指と中指の谷間でしごき上げる。
徐々に吸い付く箇所を敏感な突起のみに絞っていき、強く吸引したままちゅぽっと引き抜く。
水着の跡をなぞるように反対側の乳房まで舌を這わせ、そちら側の乳首にも吸い付き、舌先で
ほじくるように突起を責める。
先ほどまで吸い付かれていた乳首は固く勃起し、指先で簡単に摘める程の大きさになっていた。
また唾液でとろとろに滑り、先端部分を摘み上げきゅ、きゅと強く捻ってもぬるりと指が表面を
滑っていく。逆に乳房の中に埋め込むように揉み潰し、先端を指の腹でチュルチュルと唾液を
塗り付けるように摩擦すると、グゥはそれが気に入ったのか絶え間なく漏らしていた嬌声を
一際強め、吐息交じりの甘くくぐもった声を上げる。
それに合わせるように、オレの分身への刺激も強くなっていく。
指で作った輪でカリ首をきゅ、と絞り込み、開いた傘の裏をなぞるように摩擦する。赤く腫れた
粘膜部分を掌で包み込み、すりすりと先端を磨くように撫で付ける。
オレからもカクカクと腰を振り、更に強い刺激を得ようとグゥの手に分身をこすり付けた。
グゥの手で作られた筒に向かって、まるでグゥ自身を犯しているように抽送を繰り返す。そんな
倒錯的な興奮も混ぜ合わさり、脳から直接分身の先端に向かって甘い痺れが流れ込んで行く。
……いよいよ限界が近い。オレは更に腰の動きを早くし、くちゅくちゅと音を立てて
その柔らかい手に粘液を擦り付け続けた。
グゥの胸元と、オレの下半身。二箇所から聞こえていた粘着質な水音にいつの間にかもう一つ、
ちゅくちゅくとテンポの速い、リズミカルな音が増えていた。ちらりと横目でその音のする方向……
グゥの下半身へと目を忍ばせる。
よく見ると、グゥの左手がその部分へ真っ直ぐに伸びていることに気がついた。オレのものを
弄りながら、自分の秘所をも慰めていたのだ。
「う……ぁ……」
急激に身体の熱が高まっていく。
オレはその指の動きに完全に心を奪われ、グゥの胸を責めるのも忘れ魅入ってしまう。
もはや、何もしなくてもグゥのその姿を見ているだけで達してしまうだろう。それでも
腰だけは動きを止めず、分身に物理的な刺激も与え続ける。
「も、もう……グゥ、…出る、よぉ……ッ」
身体中の熱が一気に分身の先端へと昇り詰める。このまま絶頂を迎えるべく、オレは更に強く
腰を振りつける。
……が、次の瞬間、オレの腰はグゥの手によってぴたりと止まった。
「ちょっと、待て……もうちょっと…だけ……」
「ぐ、グゥ……?」
言いながら、グゥはオレの分身を絞り込むように握り締めてくる。その強烈な圧迫感に、
オレは腰を引く事も押す事も出来なくなっていた。
しかしその手の中で、オレのものは絶え間なくビクビクと脈動を続けている。この圧迫すらも
今のオレには快感としか伝わらない。もう、とっくに限界は来ているのだ。
「ふ、っく……ホントに、んっ、もうちょっと、だから……一緒に……」
「グゥ……」
静まり返った部屋の中で、グゥの左手だけが忙しなく動く。
その指先が激しく自らの秘所をまさぐる度に、ヌチュヌチュと粘液をこねる音が耳に届く。
ぷっくりと盛り上がったほっぺを手のひらで覆い、全体を揉みこねながら、中心にあるスリットを
指でなぞるように擦り上げる。人差し指と薬指で柔肉を押し広げ、中指の腹でちゅくちゅく粘膜をこする。
そうしながら、掌はスリットの上部を強く圧迫し、何かをこねくるように円を描いていた。
「んっ、ク、うン、ふっ、んん……ッ」
身体を小刻みに震わせ、甘い声を漏らす。細切れに吐き出していた息が段々とそのテンポを上げていく。
その様を眺めるオレの息も徐々に上がり、無意識に腰が動く。早く、オレもこの熱を放出したい。
「グゥ、グゥ……」
うわ言のように少女の名を呼びながら、ぐっ、ぐっ、と強く腰を押し付けるが、急所を抑えられ
びくとも出来ない。それでも構わず、オレは何度も腰を振り続けた。尿意にも似たもどかしい
感覚に、下半身が麻痺したように痺れる。お預けを食らった犬のように、オレはただグゥのお許しが
出るまで腰をもじるしかなかった。
「い、いいぞ……も、もう、グゥも……ッ」
「───ッくあ!?」
不意に、分身に強烈な刺激が加わった。分身を包み込んでいた圧迫感が僅かに緩んだかと思うと、
グゥはその手に捻りを加えながら強くしごき上げたのだ。
オレは腰を振る勢いそのままに、その中に向かって自ら分身を強く突き込む。
「ハレ……ハレ……ッッ」
「……グ、ゥ……、ぅんんッッ!!」
そうして二、三度の前後運動にも耐えられず、限界まで張り詰めた膨らみはあっという間に
グゥの手の中で盛大に破裂した。
「…っく…ふン……ンッ……ん…はぁ……」
かくん、かくんと何度も大きく痙攣する。その脈動に合わせ、分身からはドプン、ドプンと
大量の精液が溢れ出し、その身体をドロドロに汚した。その度にオレは小さく嬌声を上げ、
グゥの胸元に唾液の糸を引かせる。
「ひン……ふっ……ぅ…」
白濁した粘液を身体で受け止めながら、グゥもくぐもった声を漏らす。
視点の定まらない虚ろな目でオレを見詰め、全身をふるふると震わせていた。
もしかして、ホントにグゥも一緒に……?
そう思うと、目の前の少女がより愛おしく思え、今すぐにでも抱きつきたい衝動にかられる。
そんな主人の気持ちなぞそ知らぬ顔で、焦らされ続けたオレの分身はその開放の喜びを全身で
味わっていた。どれだけ溜まっていたのか、いまだ小さく脈動を続けている。
「は…あ……ぁ…」
射精感が完全に止むまでの間、オレはグゥの胸元に唇を這わせたまま弛緩した身体を預け、
余韻に浸っていた。
****[[戻る<<>070901_7]] [8] [[>>進む>070901_9]]
2007-10-15T11:08:19+09:00
1192414099
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070901_10
https://w.atwiki.jp/hgpink/pages/107.html
****小麦色の白雪姫_10(三:004-013)
<<13>>
「こ、ここでいいのかな……?」
「ん……多分」
ピタリと、グゥの膣孔にオレの分身が押し当てられる。
ベッドに背を倒し、膝を立て大きく開くグゥの股の間に下半身を割り込ませ、それっぽい位置を
検討しながら分身をスリットに擦り付けているだけで既にオレの心臓も一物も爆発寸前だった。
必死で性教育の授業内容を思い出す。女の子のココには男の子のアレを受け入れるための小さな穴が
開いている。それは一応、発見できた。ついでに、女の子のココにはもう一つ穴が開いてる事も今、
はじめて気が付いた。
……しかし、そのもう一つの穴ほどでは無いとは言え、小さすぎるんじゃないか、いくらなんでも。
こんな所に本当に入れて大丈夫なのだろうか。無理にこじ開けて、裂けでもしたら大惨事だ。
「そう言えば、女の人の最初って、すごく痛いって聞いたんだけど……」
「うむ、あれはかなり痛かったぞ」
「……え? うぇえええ!?」
「冗談だ」
けろりとした表情で、こんな時にまで冗談をかますその芸人根性は認めるが……マジでそーゆーの
勘弁してくださいませんかね。自分でもビックリするくらいでかい声出たわ。
「なんだ、ホントだったらそんなにショックか?」
「怒るぞー」
「……すまん。まぁ、女ならば誰しも通る道なのだからな。最悪でも死にはすまい」
「そりゃそうかもしんないけどさ……本気で無理そうだったらちゃんと言えよ?」
「……任せろ」
「なんでそこで無駄に男前……」
キラリと白い歯を見せグッとサムズアップする様は現在のシチュエーションと如何にも噛み合わない。
うっかり萎えてしまいそうになるくらいいつも通りなその態度からはしかし、グゥなりの気遣いのような
ものを感じる。グゥもきっと緊張してるはずなのに、オレに比べれば平素そのものだ。ちょっと、悔しい。
「それじゃ、いくぞ……」
「ん……いや、ちょっと待て」
「な、何?」
「その……もう一度、ハレの気持ちを聞きたい。二文字でな」
「……ったくもう。……好きだよ、グゥ」
「うん……うん。来て、ハレ」
グゥは胸の前で手を握り、オレに身を預ける。
小さく深呼吸し、腹に力を入れるとオレはグゥの小さな孔に向かって、グッと分身を突き込んだ。
「……あれ?」
……が、どれだけ押しても前に進まない。と言うより、どうやって入れるんだ、コレ。
体勢が悪いのか、分身を押し当てる、膣に挿入する、のツーステップの間に大きな隔たりがある。
押し当ててから、少し身体を前に傾けて腰を入れて……ああ、ややこしい。なんだこれは。
授業ではここまでは習っていないぞ。
ってか、一人じゃ無理だ。ぼけっと寝そべってる目の前の少女にも協力してもらわねば。
「あの、グゥ、ちょっと起きて」
「……台無し」
「すんませんねっ」
肘を立て、少し上体を起こし腰に体重をかけてもらう。どうも突き入れる際にグゥの腰が
逃げるのが問題のようだ。ベッドに敷かれた高級そうなシーツの異常な滑らかさも手伝って、
グゥが寝そべったままではどうにも具合が悪い。まったく、蝋燭もそうだが高級品も良し悪しだ。
気を取り直して、再度グゥの秘所に一物をあてがう。先ほどよりもずっと安心感のある手応え。
「今度は大丈夫そう」
「致す前から一苦労だな。……それじゃ、もう一回」
「……好きだよ、グゥ。大好き」
「うん、うん。また失敗しても良い気がして来た」
「今度はちゃんと決めるっての。……んじゃ、いくよ」
「……うん」
グッと強く突き込むと、先端が僅かにその入り口にめり込んだ。瞬間、グゥの身体がぎゅっと
強張る。……やはり、キツイ。全て収まるのか不安だが、ここで止めるワケにもいかない。
腰に力を込め、オレは一息にずぐり、と膣内に一物を突き入れた。
「───ひッ、ぎ……ッ!!」
目を見開き、グゥが張り裂けそうな声を上げた。歯を食い縛り、シーツを握り締める手が
ぶるぶると震えている。
事前の濃厚な愛撫によりそこはトロトロに蕩け、確かにオレのものを受け入れる準備は
万端に整っているように思えたが、それでもなおそこは固く、狭い。ピッタリと閉じた壁を
無理やりこじ開けて侵入しているようだ。一物を、温かでぬめった肉にみっちりと咥え込まれ、
全体を隙間無くきゅうきゅうと圧迫されている。そのはじめての感覚に、オレは快楽を感じる
余裕すら無かった。
「グゥ……大丈夫……?」
「……はは、ハレでお腹、いっぱいって感じ……」
目に雫を浮かべ、それでもニヤリと口端を歪める。どう考えても平気そうには見えないが、
その精一杯のやせ我慢にオレも応えないといけない。
「ハレはどうだ……はじめての女の味は」
「言い方をどうにかしろ。……キツキツでいっぱいいっぱいだけど、温かくてなんか安心できるって感じ」
「ふ、ふむ……。動かないのか?」
「もうちょっと、このままでいよ」
柔らかな頬に唇を寄せ、涙を舐め取る。そのままちゅ、ちゅと首筋や肩にもキスを降らせる。
グゥと共にゆっくりとベッドにその身を倒し、身体を密着させ、唇を重ねる。下唇を軽く咥え、
つぅ、と舌を這わせて淡く吸い付く。過度に口内には侵入せず、その薄く色づいた表面を合わせ、
たまに舌を軽く寄せ優しく愛撫する。互いの口内粘膜を舐り合わせるような濃厚なキスでは無く、
唇同士を啄ばむような可愛いキス。
腋の下から後頭部に手を回し、抱き締める。グゥもオレの首を強く抱き、互いに出来る限りの
場所を密着させる。腰は動かさずに、しばし夢中で唇を交わし合った。
「……ちょっと、楽になった」
「よかった。でも、今日はさ。動くの、やめとこうね」
「む……いいのか? せっかくジューシィな獲物にありつけたと言うのに」
「何の比喩だ、それは。……オレより、グゥだよ」
「むぅ……。ケダモノのくせに」
「ケダモノになるのはもうちょっと後にとっとく。今は、こうして繋がってるだけで嬉しいよ」
「あっ、グゥの台詞だぞ、それは。先に言うな」
「グゥも、嬉しい?」
「……聞くな、いちいち」
唐突にぐいとオレを抱き寄せると、グゥはその顔を首筋に埋める。
そこから伝わるグゥの体温は、やけに熱かった。
そうしてしばらくの間、繋がったまま抱き合い、互いの頬や首筋、もちろん唇にも
キスを重ねながら静かに時を過ごした。
繋がりを解くタイミングは意外にも解りやすかった。互いが満足するより先に、オレに
限界が来てしまったからだ。いくら動かなくても、そこは粘液に塗れた肉壁に包まれ常に
刺激を受けている。唇や指先の愛撫による感覚的、視覚的な刺激も加わり、身体の熱が急速に
分身に流れ込んで行くのが解りオレは渋々とグゥから離れざるを得なくなった。
グゥの蕾を責めている時からずっと張り詰めていたオレの分身はグゥの膣で更にキンキンに
膨れ上がり、そこから少し引き抜くだけでぷっくりと広がった肉笠がその内壁に引っ掛かり
カリカリと擦り上げられ、その度に猛烈に襲い来る射精感に耐えなければならず、しばらく
動けなくなる。
長い忍耐の果てにようやく外に出た瞬間、キツキツのグゥの入り口に強烈に摩擦されたのが
止めとなり、グゥの身体をまた盛大に汚してしまった。
グゥは「堪え性の無いヤツだ」などとまた遠回しに男のプライドを傷つける発言を繰り返して
いたが、オレがまたその身体を綺麗に拭いている間も、グゥの要請で服を着せてやっている間も、
終始ニコニコと上機嫌な様子だった。
グゥの身体を拭いている時、はじめての時は血が出るらしい、というのを思い出したのだが、
グゥのその部分にも、シーツにも血の跡は無かった。ただ自分のものにうすべったりと朱色の
液体が付着している事に気が付いた時は軽く眩暈を覚えてしまったが。よく解らないがとにかく、
そんなに大量に出るものでは無かったようだ。
「───そう言えば、蝋燭の火は消えてしまったが良かったのか?」
手を繋ぎ、おやすみなさいの前の他愛も無い会話を楽しんでいると、ふとグゥがそんな事を呟いた。
すっかり忘れていた。蝋燭の火が消えた瞬間、何かが起こる。そう、アシオに言い含められていたのだ。
目の前の少女の事で手一杯で、すっかり記憶の片隅に追いやってしまっていた。
「結局、何も起きなかったね」
「あったと言えばあったけどな」
「さすがに100話目に加えちゃダメだろう、これは」
「グゥは言いふらしたい気分だが」
「やめてください」
言いながら、グゥは口に手を当てくふふと不気味に笑う。冗談に聞こえないのが怖すぎる。
「……だいたい、勝手に消えたんじゃなくてグゥが消したんじゃないか」
「ハレが消させたんだろう。アレを持ってきたのはハレだぞ」
「ううん……じゃあ二人で消したって事で」
「……うん」
オレの言葉に素直にコクンと頷く。ほんのり色づいた頬を少し綻ばせ、その表情は何故か
妙に嬉しそうに見えた。
「二人で共同で消した蝋燭か。記念にもらっておくか」
「いやいや、なんかフレーズ自体は良い感じだけど詳細はちょっと人に話せないエピソードだよコレ?」
「……ダメか?」
「え……」
「ハレが嫌なら、グゥもいい……」
「いやいやいやいや超オッケー!! じゃんじゃん持って帰ろッ!」
グゥのこの手のリアクションはオレの急所だ。普段の勝気な態度とのギャップのせいか、突然
ふ、と寂しげに俯かれると反射的に全てを肯定してしまう。
今日一日の事で、その威力もオレの中で大幅に上昇してしまっていた。このままでは、あらゆる面で
グゥに逆らえなくなってしまうのではないか。そんなリアルな未来予想図が脳内に鮮明に展開し頭が痛くなる。
どうせ次の瞬間には、いつもの仏頂面に戻り皮肉げに笑うのだろうよ。
「……うん。大事にする」
「へ……?」
……しかし、グゥは本当に嬉しそうにオレの手をきゅ、と握り、目を細めて微笑んだ。
あまりに意外すぎるその行動にしばし呆然となる。
「……なんだ、変な顔して」
「え、あ、いや……えらい素直だな、と思ってさ」
「む……グゥが素直だと変か?」
「自分の胸に聞いてみれ」
素直だとか正直だとか、普段のコイツの立ち振る舞いを思えばこれほど似合わん言葉もあるまい。
自分自身の欲求に対しては、実に素直ではあるのだが。それでもこの少女は、その言葉に、行動に
常に何か裏を持たせねば気がすまないのだ。……そう、気がすまないはずなのだが。
「むぅ……だから、海で言ったろ。それは反省したんだ、グゥも」
グゥは少しばつが悪そうに顔を背け、そう呟く。
海での事。グゥとの関係が一気に進展した切欠の、キス。あの時も、オレはグゥの行動の
裏を読もうとして、グゥを傷つけてしまったのだ。
「グゥも、もう少し自分の気持ちを素直に出せるようになろうと思う。今日みたいに状況に後押し
されなくても、せめてハレの前だけでも……」
「グゥ……」
両手を胸元に添え、オレを真っ直ぐに見据え静かに言葉を綴る。
グゥも、変わろうとしてくれているんだ。オレも、グゥの言葉を素直に受け止めてあげなきゃ。
「ありがと、グゥ。でも、無理はしなくていいからね」
「うん。さしあたって、ハレの喜ぶ事が素直に出来るように訓練したいのだが」
「お、大袈裟だな……。例えばどんな事だよ?」
オレの言葉にグゥは「ふむ」と唸る。そしてしばし中空に目を泳がせると
おもむろにこちらに向き直り、
「ハレっ、だっ、大好き!」
そう、満面の笑顔で声を張り上げた。
……そして次の瞬間には思い切り顔を背け、そのままゴロゴロとオレから離れるように転がり
バタンとうつ伏せに突っ伏した。
「……グゥ?」
「…………ダメ。……まだ、しらふじゃ無理……」
枕に顔を埋めたまま、呻くようにか細い声を上げて足をバタバタとのた打ち回らせる。
表情はもちろん、こんがり焼いた肌からはその顔色も解り辛かったが、グゥがなんだか
一生懸命自分の中の何かと激戦を繰り広げているって事だけはよく解った。
オレはその戦いに加わってやれないが、せめて邪魔だけはしないでおこう。腹の底から
込み上げてくる笑いを必死の思いで堪え、グゥの復活を待つ。
「……もう少し、難易度を落とそう」
細く長く深呼吸を繰り返し、グゥの身体から力が抜けていく。なんとか落ち着いたようだ。
枕から顔を上げ、グゥは少し離れた所に座るオレを舐めるように見る。
「……よし、今度ハレの目の保養になりそうな服でも買いに行くか」
「ええぇぇぇいやいやいやいや! 何がどないしてそんな結論に至ったんですかね!?」
「なんだ、嬉しくないのか」
またコロンと転がり、戻ってくる。そのまま体当たりするようにオレの身体にぶつかり、
胸元に顔を埋めた。
「う゛……そ、それは置いといて。……グゥ的にはそれでいいの?」
「ふふ。言ったろ、女は注目を浴びたい生き物なのだよ」
あごを持ち上げ、上目遣いでオレを見る。
「……ただし、グゥの場合はどこぞのエロガッパ限定で、だがな」
そう言って、グゥはオレにそっと唇を重ねた。
オレの喜ぶ事の第一弾がそれかよ、とか、それって結局自分の為なんじゃないか、とか、
あらゆる突っ込みが脳裏を巡っては消え、最終的に口に出すべき言葉は何も残らなかった。
この少女は、素の状態でもオレの中でナンバーワンの注目度を誇っている事に気付いていないのか。
これから益々、オレはこの少女から目が離せなくなってしまうのだろうか。
だらしない格好をした母さんを見た時の、アシオやロバートの姿を思い出す。オレも、彼らと
同じような気分を今後、味わう事になるのだろうか……。
ちょっぴりの不安感と、多分、それよりもずっと大きな期待感がぐるぐると綯い交ぜになり、
いよいよその少女の存在がオレの心にくっきりと深く刻み込まれる。
今日という日を境に、オレとグゥとの共同生活はガラリとその様相を一変させた。
良きにつけ悪しきにつけ、これまでと同じような接し方は出来なくなった。
それはオレにとって、理想的な関係へ変化したと言えるのかどうかはまだ解らない。
……でも、きっと大丈夫だろう。
少女の名を呼ぶ。すぐに、少女からもオレの名を返してくれる。
その声、視線、体温。グゥの全てを全身で感じる事が出来る。
グゥが傍に居る。昨日よりも、ずっと傍に。明日はきっと、もっと近づける。
これからもずっと、グゥと一緒にいられる。
何も難しい事なんて考える必要は無いんだ。
オレはそれだけで十分、幸せなのだから。
<<ep>>
「ちょっとウェダ、またそんな格好でっ」
「なぁによ、母様。家の中なんだからいーじゃないの」
「まったく……あの大人しかった子が、変われば変わるものね」
「母様こそ昨日のアレ、昔の母様からは想像も出来なかったわよ」
「たまの海水浴なんだから、あれくらい普通でしょう?」
「あれが普通? 私でも着れないわよ、あんなの」
「ふっ……でしょうね」
「な、なによそのヤな笑い方……」
「いいえ、何でも? ただ……そんなにお酒ばかり飲んでダラダラしていたら、ウェダが
私くらいの歳になった時にどうなっているか……。ちょっとだけ、心配よね」
「……だーいじょうぶです。ジャングルじゃ、これでも狩りの名人なのよ? お上品な
フィットネスとは運動量が違うんだから」
「ええ、それならハレちゃんに聞いているわ。たしか、最近育児が忙しいって言って1年以上
狩りに出てない……って」
「そっ、それは~……す、すぐに再開するわよっ!!」
「腕が鈍っていないといいけれど。一度、大怪我したんでしょう? あまり無茶しちゃダメよ」
「な、なによ急にぃ。大丈夫よ、ホントに私、強いんだから」
「……本当に、変わったわね。信じられないくらい」
「もう、イキナリしんみりしないでよ。人間、生きてりゃ変わるわよ、そりゃ」
「そうね。変わって、当然なのかもしれないわね」
「……母様だって、変わったと思うわよ」
「そうかしら? 自分じゃよく解らないけれど」
「変わったわよ。私なんかよりずっと変わったわ」
「そう……それじゃ、お互い様ね」
「うふふ。なんか変な感じだけど、でも、そうね。お互い様っ」
「……ほれみろ。止める必要、無かっただろ」
「うん。っつーか止めるだけ無駄っちゅーか心配するだけ損っちゅーか……。あの二人にとっちゃ、
アレが普通なのかな。はた迷惑極まりないわ」
「お互いに、遠慮なく対等に意見をぶつけ合える相手が見つかったのだからな。ああやって
親愛の情を深めているのだろう」
「自分の気持ちを素直に出せる……か。母さんとおばあちゃんも、きっとそうなんだろうな。
母さんの場合は、初対面でも誰に対してでもわりと遠慮ないけどね」
「……ハレもそのへん、しっかり受け継いでると思うぞ」
「え? お、オレ? どこが!?」
「幼ウェダや祖母に対して立派に意見していたではないか。ウェダや祖母が変わったのは、
ハレの功績も大きいとグゥは思うが」
「うーん……自覚、無いなあ」
「まあ、自分じゃ解らんものなのかもしれんな。だからこそ、グゥとしては凄く不安なのだがな……」
「……なんでさ」
「ハレは誰とでもすぐ仲良くなるからな…………リタとか……」
「え? ごめん、最後よく聞こえなかったんだけど……」
「……何でもない」
「……あら、ロバート。どーしたの?」
「あ、ウェダさん、奥様も。えっと、その、ハレ様とグゥさん見ませんでした?」
「んー? んーっと、どーだったかなぁ~?」
「……母さん、オレたちがテーブルの下にいるの解っててあんな事……」
「ふむ。あの位置からじゃこっちは見えんからな」
「ってかロバート、何の用だろ?」
「ああ、グゥが呼んだのだ」
「……なして?」
「買い物に行くと言ったろ? ハレの好きなものを選んでくれていいからな」
「昨日の今日で早速かよ。オレが選ぶのはいいけど、変に露出高いのは買わないぞ?」
「む、つまらんやつだ。今ならどんな卑猥なものでも着てやるというのに」
「う゛……いや、だから、それを他の人に見られるのがヤなんだよ」
「ほ、ほほう……じゃあ、普段着とハレに見せる専用の服を買う事にしよう」
「……そうきたか……。でもそれなら、いいかな」
「うむ。これがホントのハレ着だな」
「無理に上手い事言わんでいい」
「ロバート! ここに居たのね」
「え……ベルさん?」
「あら、ウェダ様、奥様も。ご機嫌麗しゅう御座いますわ。もうすぐお三時ですし、今日は
お二人でティータイムになさいますか? 宜しければ、こちらにお持ち致しますわ」
「そうね。そうさせてもらおうかしら」
「私もそれでいーわよ。それより、どうしたの? なんか慌ててたみたいだけど」
「あっ、ええ、ええ。そうで御座いました。先ほどアシオの様子を見に行ったのですが……」
「ああ、大丈夫だった? なんか、酷い怪我したらしいじゃない」
「はい。怪我自体は軽い打撲程度なのですが、精神的に参っているようでして……何があったのか
聞いてもうわ言のように"百物語の呪いが、呪いが"と呟くばかりで……」
「まぁ……何があったのかしら……」
「……それは、ロバート。あなたに教えてもらおうかしら?」
「うぇ!? お、俺は何も……ッ!」
「しらばっくれんじゃないわよ。昨日の深夜、アシオがロバートと一緒に居る所を見たって
メイドの一人が言ってるのよ」
「ううう……で、でも……その……」
「何? 私に言えないような事をしていたのかしら。そう、あなたがそんな態度を取るのなら、
あなたの今後の事も考えないといけないわね……」
「す、すいませんッ! で、でも俺は止めたんですよ!!」
「……何があったのか、話してくれるわね」
「はい……。えっと、どこから話せばいいのか……。百物語が終わってから、その、俺が
アシオさんと医務室に行ったのは知ってますよね」
「え? 私は寝てたから知らないけど……その時からアシオ、倒れたままなの?」
「あ、いえ、それはベルさんが……」
「…………」
「ヒッ! いえあのっ! それとはまた別の、ちょっとした事故がありまして!」
「ふぅん。なんか、アシオも大変ねえ……」
「本当に。こうも立て続けに事故に巻き込まれたのだから、呪いがどうこうとうなされるのも
少し、解りますわ」
「……それで、ですね。医務室でアシオさんに協力を求められまして」
「協力って、何の?」
「はい……あの……俺は、俺は止めたんですよ!」
「解ったから、さっさと続き」
「はぁ……。えっとですね、ハレ様とグゥさんを驚かそう、と……」
「……はぁ? 何でそんな事……」
「ジャングル帰る前に、出来るだけ沢山の思い出を残してもらおう、って事でして」
「……呆れた。ハレ様に蝋燭を渡した時に変だと思ったけど、そんな事を考えていたのね」
「ろーそく?」
「ウェダ様はお休みなされておられましたから、ご存知ありませんよね。百物語の99話目を
終えた後に、アシオが最後の蝋燭をハレ様に手渡したのですわ」
「ふうん。なんか意味あるの、それ」
「元来、百物語は百話まで語り尽くしてはいけないものなのです。99話で止めて、100本目の
蝋燭は完全に燃え尽きるまで放置するのが慣わしなのですわ」
「そうね。……本当に何かが起こってしまったら、大変ですものね」
「はい。ですから、あれは最後にハレ様を驚かせるためのアシオのアドリブだと思っていたのですが。
……アシオは更に何か企んでいたようですわね。そうでしょ、ロバート」
「……はい。ハレ様の部屋に窓から侵入して、驚かせてやろう、と。幽霊の衣装まで用意していました」
「ホントに呆れるわね……。ハレ様のお部屋は二階よね。おおかた、壁をよじ登ってる途中で
手を滑らせてしまったんでしょう」
「その通りです。俺に見張りをやらせて、アシオさんが一人で壁を登っていたんですが、ハレ様の
部屋の窓の真下にまで着いた時、突然その窓が勢いよく開きまして。多分、アシオさんはそれに
驚いたんだと思います」
「自業自得もいいところね。お二人のプライベートに闖入しようとするなんて、ばちが当たったのよ」
「……俺も、そう思います。そう言えば、アシオさんが落ちてくるのと同時にパラパラと水滴が
落ちてきたんですよ。アシオさんの顔や服も所々、ぐっしょり濡れていました」
「窓の隙間に雨水でも溜まっていたんでしょう。あそこの窓は滅多に開けないから」
「なんか、誰かが全力でアシオの邪魔をしようとしたって感じねー。ホント、これって呪い?」
「……それで、俺は急いでまたアシオさんを医務室に連れて行ったんです。その時にはもう、
今みたいにうなされていました」
「まぁ……。私も後で、お見舞いに伺わせてもらうわね」
「人を呪わば穴二つ。野暮な事をしようとするから、自分に災いが降りかかったので御座いますわね。
アシオにとっては、いい薬になったと思いますわ」
「なんか、知らない間に変なコトが起こってたみたいだね。ってか、俺のせい、なのかなあ」
「ハレは闖入者を撃退しただけだ。気にする事はなかろう」
「うーん。それでもさ、オレらも後で一応、お見舞いに行こうよ」
「ハレがそうしたいなら、グゥもそれでいい」
「ありがと。……でもなんか、妙な感じ。ホントに蝋燭の呪いなんじゃないの?」
「蝋燭の火を消した元凶を、アシオが全部かぶったのだからな。ひょっとすると、そうかもしれんな」
「……あの瓶、まだ持ってるんだよね?」
「うむ。益々面白い。是非部屋に飾っておかねばな」
「なんかもう、また変なエピソードが追加されちゃったなあ……」
「あ、あの! この事はどうか、ハレ様とグゥさんには内密に……」
「ふぅ……いいわ。未遂に終わって良かったけれど、お二人もそれを知って好い気はしないでしょうしね」
「うふふふ。わたしもいーわよぉ。黙っててあげる」
「そうね。アシオにもそう伝えておいて頂戴」
「はい。奥様、ウェダさん、ベルさん……ありがとう御座います……」
「……なんか、凄い出辛い雰囲気になっちゃったね」
「ふむ。気付かれる前にここから立ち去った方が良さそうだな」
「んじゃ、部屋に帰る?」
「何を言う。買い物に行くと言ったではないか」
「え、ふ、二人で?」
「何か、問題があるか?」
「…………無い、かな」
「邪魔者がいなければ、変なトコに連れ込み放題だぞ?」
「連れ込まんわっ! ……ったく。それじゃ、いこっか。二人でさ」
「うん。二人で、な」
END
****[[戻る<<>070901_9]]
2007-09-13T01:38:28+09:00
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070901_9
https://w.atwiki.jp/hgpink/pages/106.html
****小麦色の白雪姫_9(二:293-303)
<<12>>
「スッキリ、したか」
さらさらと頭を撫で付けながら、グゥはオレの額に小さくキスを落とす。オレはただ無言で
小さく頷き、グゥに頬をすり寄せた。
心地よい疲労感と眠気が身体を包む。このまままどろみの中に沈み込めたらどれだけ幸せだろうか。
だけど、まだ後始末が残っている。グゥの身体にべったりと付いたオレの欲望の跡をどうにかしないと
いけないし、それに一つ、どうしても確認せねばならない事がある。
「グゥ……。グゥは、どうなの?」
「む……?」
オレの言葉にグゥは訝しげな目を向ける。
「グゥもちゃんと、その、いけたの、かな」
「…………」
グゥはますます眉間にしわを寄せ、口を一文字に引くとぷい、とそっぽを向く。そして小さな、
消え入りそうな程に小さな声で「うん」とだけ囁いた。
「……グゥ~~~ッ」
先ほど引いたばかりの熱とは別の、温かい感情がきゅんきゅんと胸を疼かせる。
オレは居ても立ってもいられず、この高揚感を全てぶつけるようにその身を強く
抱き締めた。
「好きだよ、グゥ……だいすき……」
首筋に唇を這わせながら、キスの合間に言葉を重ねる。グゥも無言でオレの肩に頬を寄せ、
そっとオレの腰に触れるが、その手はふるふると小さく震えまるで力が入っていないようだった。
「ぐ、グゥ? 大丈夫?」
そのあまりの力なさに少し不安になり、慌ててグゥを離す。グゥはぐったりとベッドに
四肢を投げ出したまま顔だけをカクンとこちらに向けていた。
「……どうやら、腰が抜けてしまったみたいだ」
「え? ……何で……」
「それと、そのせいで今、グゥは物凄く切迫した状況にあるのだが」
言いながら、グゥはぶるっと大きく身体を震わせ何かに耐えるように手を握ったり開いたりさせる。
足先も忙しなくシーツの上を泳ぎ、ぴったりと閉じた脚をもじらせていた。
……まさか。
…………まさかまさか……。
「トッ、トイレまで我慢できる!?」
「無理」
即答だった。そして、その答えは残酷にもオレの予想を真っ向から肯定するものだった。
「じゃ、じゃあじゃあ、えっと……」
おろおろと部屋を見渡す。ただでさえ物の無い部屋の中を常夜灯の灯りの元で、
この状況を解決する何かを探す。正直、不可能に思えた。
しかし一つだけ、この薄暗い部屋の中でもなおハッキリとその存在を主張し、
しかもある意味で確実に現状を打破しうる可能性を持つものが目に留まる。
他にももっと良い方法はあったかもしれない。だけど、この一刻を争う状況において
オレにはそれ以上に迅速に用意できる手段があるとは思えなかった。
オレは勢いベッドを降り、その脇に備え付けられた机の上から小さなガラスの瓶を手に取った。
「こ、これにして!」
「…………」
ぐっと突き出した小瓶の中から漏れる淡い灯りにグゥの顔が照らし出される。
心底から呆れたと言わんばかりにぽかんと口を開けた表情。が、次の瞬間には
侮蔑と憤怒に塗れたしかめっ面に変わった。
「何のプレイだそれは……変態ドエロガッパ」
「違うわ!! 他になんか良い方法あんのかよっ」
「…………」
オレの言葉にグゥは口に弓を引き、しばし考えるようにそっぽを向くが、もう一度ぶるっと
身体を大きく震わせた途端、サァっと顔が青ざめた。
「……それで、いい」
目を細め、溜息混じりにそう呟く。本当に切迫した状態なのだろう。
その代わり、とグゥは常夜灯を消すようにオレに頼んだ。日に二度もグゥのシモの事に
悩まされるとは。オレはともかく、本人にはショックな事だろう。
真っ暗な部屋を、窓から差し込む月明かりとオレの手元にある蝋燭の灯りだけがぼんやりと照らす。
蝋燭はもう殆ど無くなり、火も瓶の底の方でちらついているだけだったが、数分くらいは持ってくれそうだ。
暗闇に薄らと浮かぶ影の輪郭だけを頼りにベッドに上り、グゥの元へ戻る。
「グゥ、これで良…………」
小さな円形の光の先にグゥの足が見えたと思った瞬間、更にその先にあるものも同時に照らし
出され思わず息を飲んだ。
脚をよじり、腰を震わせ、いよいよ切羽詰った様子で身悶えするグゥの下半身だけがおぼろげに
浮かび上がる。
一時的に引いていた熱がまたトクンと下半身に集まって行く。が、今はそんな場合じゃない。
オレはぶんぶんと頭を振って煩悩を払い、グゥの傍へ寄った。
「……それも消して」
薄暗がりの向こうから、か細いグゥの声。
「でも、これが無いと何も見え……」
「消して」
冷ややかな声で、そう繰り返す。
グゥから見れば、オレの姿と自分の腰から下だけが闇に浮かんでいるのだ。これから行う事を
考えても、その羞恥は耐えられる種類のものじゃあ無いだろう事はオレにも解る。
オレはもう一度グゥの姿を確認し、フッと蝋燭に息を吹きかけた。
「……あれ?」
「どうした、早く消せ」
「いや、その……フッ! ……あれぇ?」
何度息を吹いても、火は揺らめくばかりで消えてくれない。真上から鋭く吹いても、
瓶をゆすっても、ひっくり返しても頑固に灯ったままだった。
ほとんど消えかけのような状態だってのに、これだから高級品は。
「なにやってんだ、馬鹿!」
「で、でもこれ、全然消えなくて……」
「そーゆーときは蓋を……ああッ! んんンッ、も、ういい……お願い、それ、早くぅ……」
グゥはその身を一際悶えさせたかと思うと脚の力をスッと抜いた。そしてオレを招き入れるように
おずおずと開いていく。
「…………ッッ」
思わず、何事か呻いてしまいそうになり口を押さえる。今はいらない事を考えている場合じゃない。
オレは口元を手で覆ったまま、小さく深呼吸をしその開かれた脚の付け根に蝋燭の小瓶を寄せた。
赤い光に煌々と照らされる、むっちりと肉厚のほっぺ。その中心を縦に割る一本のスリットの
上端にはぷっくりと膨らんだ豆粒大の突起が見える。海でそこを触ったとき、そんな感触に触れた
覚えは無いのだが。……なんて事はどうでもいい。
口元の次はドクドクと爆発しそうなくらいに跳ねる心臓をぎゅっと押さえ、はぁぁ、と息を吐き出す。
ただ真ん中に線が一本入っているだけなのに、何故こんなにも胸が高鳴るのか。
脚の付け根から先やお腹は日焼けしているためほとんど闇に融け、パンツの跡にくっきりと象られた
グゥの女の子の部分だけが淡い光を反射している。そこは既に漏らしてしまったのかと思えるくらいに
ぐっしょりと濡れ、お尻を通りシーツにも染みを作っていた。
「……熱くない?」
「…………っくぅ…大、丈夫……」
低くくぐもった声の中に引きつるような嗚咽が混じる。自分が今どう言う状態で
何を見られているのか解っているのだろう。グゥの為にも速やかに済ませなくては。
オレはもう一度深呼吸し、両手で瓶を持ちグゥの秘所へ柔らかくあてがう。
「ここで、いいのかな」
「……いい。もう、なんでもいい……ッッ」
途切れ途切れに言葉を吐き出し、ふっ、と最後に息を飲む音が聞こえた瞬間、プシャッと
黄色い液体が瓶の中に飛び出した。
ちょろろろ、とコップに水を注ぐような音がガラス瓶の中に響く。中の火はジュッと音を
立ててつい消え、代わりに黄金色の水がみるみるうちに瓶を満たしていく。その出所をオレは
じっと見詰め、溢れ出さないように瓶の位置を微調整しながら放水が止まる時を待った。
盛大に噴出していた水のアーチもやがて細り、勢いを失い、最後に何度かぴゅっと飛沫を
飛ばすとグゥの身体はくったりと弛緩し、持ち上げていた膝も緩やかにシーツを滑り降りていく。
……同時に、ぐす、ぐすと鼻をすする音が聞こえる事に気が付いた。
「グゥ……」
「…………」
返事は無い。ただ時折、低い呻き声が聞こえるだけだ。今は、そっとしておいた方が
良いのかもしれない。とりあえず、先にこの瓶の中身をどうにかしないと。
かなり溜まっていたようだが瓶から溢れる程では無かったようで、窓の明かりに透ける
液体の影は瓶の中ごろより少し高いくらいの位置で揺らめいていた。
瓶が傾かないように慎重にベッドから降り、月明かりを頼りに窓の前まで静かに移動する。
一瞬、躊躇したが、勢い窓を開け瓶の中身を撒きすぐに閉めた。
窓の外は緑の庭が広がっているだけだ。さすがにこの時間には誰もいないだろうし、
まあ、草木の栄養にもなるだろう。問題無い、問題無い。
オレは瓶を机に置き、そっとベッドの淵に腰を下ろしグゥが泣き止むのを待った。
「電気、点けて」
……やがて、グゥの震える声が耳に届く。
常夜灯を点け、ベッドに戻る。グゥは両腕で顔を伏せ、力なく肢体を横たわらせていた。
「グゥ、大丈夫?」
「……ハレのせーだ」
「へ……?」
グゥの隣に座り、声をかけるとグゥは腕の隙間からオレをギロリと睨みつけてきた。
「ハレのせいでグゥの腰が立たなくなったんだからな」
「あっ! そ、そうだよ! 何でイキナリそんな事になったんだよ?」
「……だから、ハレのせいだ。ハレが早漏なのが悪い」
「ンなッ!?」
突然の理不尽すぎる畳み込み。男のプライドを傷つける言葉がグサリと心に突き刺さる。
だけどその言葉の真意を読み取るにつけ、オレはその傷の痛みに構っている余裕が消えていく。
「……あのさ、ひょっとして……。一緒にイこうとして、無理させちゃったのかな……」
「…………」
オレの問いに、沈黙で返す。
だがその沈黙は、どんな言葉よりも雄弁に肯定の意思を示していた。
「グゥ……グゥ……っ! 全く、おまえってさぁ……ッ」
「ッハレ……苦しいぞ……」
自分でも気付かないうちに、オレはまだくったりと横たわるその身体を力いっぱい抱き締めていた。
普段はそんな健気さとは無縁の少女が、こんな時ばかりはどうしようもなく愛おしくなる。
オレのせいで、とはさすがに男として認めるわけにはいかないが、グゥがオレを想って取った
行動の結果である事に変わりは無い。そのせいで、恥ずかしい思いもさせてしまった。
精一杯労わってあげなくては。
今、オレがグゥにしてやれる事と言えば。さしあたって汚れた身体を綺麗にしてやる事だろうか。
「グゥ。身体、拭いた方が良いよね」
「ケダモノ」
「だから、違うっての!! グゥ、まだ身体動かないだろ? 安心してよ、グゥが嫌がる事はしないよ」
「……ケダモノ」
「あのなぁー。どーやったら信用してくれるんですかね?」
「……とりあえず、その元気なものをなんとかしろ」
「へ? ……あっ!」
グゥの目線がじっとりとオレの股間に伸びる。
言われて思い出した。そう言えば、オレの下半身は丸裸だったのだ。それも、先ほどから
完全に血が通い張り詰めた状態を維持し続けている。慌てて隠すがいったん灯った熱は
しばらく収まらない。そのまま股間から手が離せなくなってしまう。
「だ、大丈夫、ただの生理現象だから……」
「……ま、よかろう。確かに、このままだと気持ち悪いからな。やるなら早くしてくれ」
くったりとベッドに背中を預けたグゥの四肢が、シーツの上をしなやかに泳ぐ。
またズキンと疼きはじめた堪え性の無さ過ぎる自分の分身が情けない。
しかしもう、これは仕方の無い事だと諦めるしかない。実際、この少女が目の前にいる以上
静かに収まっている時の方が少ないのだ。
部屋を散策し、拭く物を探す。タオルやティッシュはすぐ見つかったが、やはり濡らした方が
良いだろうか。洗面所まで走るのも手だが、人の目を考えると怖い。他に何か無いかとタンスや
小物入れなどを漁っていると……ようやく良い物が見つかった。
ウェットティッシュ。小さな陶器の四角いケースに入っていたので一見でそれと気付けなかったが
ケースの中身は間違いなく市販のウェットティッシュそのものだった。
───よし、あとはこれでグゥの身体を拭いてやるだけだ。
陶器のケースを手に、ベッドに戻る。
そう、あとはグゥの身体を拭いてやるだけ。グゥが許してくれれば、服もオレが着せてあげよう。
それでおしまいだ。そうだ、決してやましい気持ちでこんなことするワケじゃない。紳士だ、紳士に
徹するんだぞ、と固く心に誓いグゥに向かう。
「よし、それじゃあ拭くぞ、グゥ───」
しかし一糸纏わぬ姿でベッドに横たわる少女を確認した刹那、視界がくらりと、軽く歪む。
これは何度見ても、慣れるものじゃない。
いかんいかん、心頭滅却心頭滅却……。スーハーと大きく深呼吸し、いざ少女の身体を開く。
まずはオレが汚してしまった場所からだ。もう随分と乾いていたが、その跡はくっきりと
残っている。おへその周りから胸元まで、付着した粘液の跡を綺麗に拭き取る。
次いで、粗相の方の後始末にかかる。今思えば綺麗に瓶の中に収められたものだと少し自分に
感心するがそれは置いといて。やはり多少は零れてしまっているだろう。太股の内側から
お尻の辺りまでを優しく、丹念に拭く。両足の付け根までは早々に拭き終わり、いよいよ
少女の秘所へと踏み入る。
いくら優しくしても、ごしごしと拭いたら痛いだろうか。自分の敏感な粘膜部分にそうされたらと
思うと、血が下がる。
そう考え、軽くポンポンと叩くようにウェットティッシュを押し付ける。
「ひっ…う……」
それでもティッシュが秘所に当たる度に、グゥはくぐもった声をあげビクビクと身体を震えさせる。
それはただ敏感な部分であるというだけではなく、何かに耐えているような印象を受ける。
「グゥ、もしかしてどっか痛いのか?」
グゥの態度に少し不安になり、オレはティッシュを退けグゥの秘所を晒した。あまり正常な精神で
観察出来るような場所では無いが、なんとか理性的に目を送る。
一番目に付くのは、スリットの上端に見える突起だ。そこはまるで腫れ上がったように隆起し、
赤く膨らんでいた。
ティッシュをそっとその部位に当てると、グゥはビクンと腰を大きく跳ねさせた。やはり、ここが
患部なのだろう。オレと同時に達するために、強く弄りすぎてしまったのかもしれない。
剥けた包皮の先端部分にツルンと見えるそれはジンジンと痛々しげにその存在を主張している。
オレを想って、こんなにしちゃったのか。……チクリと、心が痛む。
ウェットティッシュなんかじゃ、刺激が強すぎるんだ。もっと柔らかくて、水分を含んだ何かで
優しく撫でてあげないと……。
「ヒッ────!?」
突然、グゥの身体がビクンと跳ね上がった。
オレの口内粘膜が少女の小さな蕾に触れた瞬間と、少女のその反応は、どちらが早かっただろうか。
「ハ、ハレ……な、……何を……っ」
───誓って言うが、今この瞬間のオレの心にはやましい気持ちは微塵も無かった。
それがたとえ傍からどう見えようとも、目の前の少女の、腫れ上がった患部をどうにか
癒したいという純粋な気持ちから来た行動なのだと言う事をご理解頂きたい。
「ハレ、駄目だ……、もういいから……やめ……」
にちゅ、にちゅと粘液の擦りあう音が響く。
オレの舌が、優しく柔らかに少女の急所を何度も撫で上げる。たっぷりと唾液を含み、
根元から先端まで、ゆっくりと穏やかな摩擦を繰り返す。
「んぁっ、く、はぁ……そこ…だめぇ……ッッ」
グゥは必死で身をよじるが、それはティッシュで触れた時のように痛みから来る反応とは
違うように思えた。きっと、羞恥心から来るものなのだろう。
女の子にとって最も恥ずかしい部分にキスをされているのだ。恥ずかしがって当然だろう。
でも、ここの腫れが引くまではオレも止めるわけにはいかない。
「らめら……も……らめ………」
虚ろな声で、何度も抗議を訴える。それが、力なくベッドに身を預ける少女に出来る唯一の
抵抗であるかのように。
だけどオレはそれを聞き入れず、ただ少女の身体のたった一箇所をのみ見据え、愛撫を繰り返す。
「あ……ふぁ……ッ、あっ、あぅ……」
不意に、カクンカクンと反射運動のように足が跳ねた。息を細切れに吐き出し、ベッドに
投げ出した両手はシーツを固く握り締める。
ティッシュで丁寧に拭いたはずの秘所からは、またトロトロと粘液が滴りはじめていた。
いつか、本で読んだ事がある。これがいわゆる、女の子の気持ち良いサインってやつだろうか。
……感じてくれているんだ。それで少しでも痛みが和らいでいるのなら、もっと続けないと。
「は、きゅっ……! も、もう、お願ッ……ふや、やぁぁんッ……」
こんなに小さいのに、ここは相当に敏感なのだろう。皮に包まれた上からだとそれ程でもないが、
その中に覗く赤く腫れた膨らみに触れた時の反応の多きさは乳房にある突起の比ではない。舌先で
少し蕾をなぞるだけで、グゥは身体を引きつらせ大きな嬌声を上げる。
ここは、オレの分身の先端と同じようなものなのかもしれない。それなら、ちゃんと皮を剥いて
中身を撫でてあげないと。
莢に収まったままの秘蕾を唇で包皮ごとくにくにと揉みこね、舌を使い根元まで皮を剥き下ろす。
ぴょこんと露出した突起全体に舌を這わせ、じっくりと擦り上げる。スリットから流れ落ちる愛液を
掬い取り、ぬちぬちと敏感な突起に塗り込めるように粘膜刺激を繰り返す。
「ふっ……く、はぁっ、あっ……ッッ」
また、カクッカクッと足先が跳ね上がる。
これで何度目かも知れないが、そのサイクルは段々と短くなっているようだった。
ぴったりと閉じていたラヴィアも完全に弛緩し、くぱ、とその口を開けている。
その中心にある小さな穴からは絶え間無く愛液が滴り落ち、シーツには水溜りが出来ていた。
「なんれ、なんれそこばっかり……そこ、されうと、やぁなのに……やぁ、はれぇ……」
完全にろれつの回らなくなった声で必死に哀願するが、その願いを聞く事はまだ出来ない。
そこは何故か、オレが責める前以上にぷっくりと膨れ上がり、小指の先程の大きさに腫れていた。
どうすれば良くなるんだろう。このまま続けても大丈夫なのか、少し不安になる。
「あう……は、ふぅ……ん……」
あれから更に何度目かの痙攣を見せた時、グゥの様子が変わった。
プルプルと、全身を小刻みに震えさせ、憚る事なく甘い嬌声を吐き出す。
「す……ごい……、もっと、はれぇ……」
その身体はもはや抵抗する意思を無くし、ただ与えられる快楽を素直に受け止めようと
しているようだった。
本当に、感じてくれているんだ。痛みはもう引いているのかもしれない。……だったら。
グゥの顔をちらりと見上げ、オレも愛撫に変化を付ける。
これまではただ舌で舐め擦るだけだった突起を、きゅ、と唇で柔らかく啄ばみ、舌は突起の根元、
剥き下ろされた包皮の裏をくりゅくりゅとほじくる。そのまま、突起全体を引き出すように
ちゅっ、ちゅっと吸い立てる。
「ふぁぁぁッ!! そ、そこっ、おっぱいみたいにするのやぁ……ッ」
弛緩した身体に力を入れ、グゥはガバッと頭だけを持ち上げてオレの方を向いた。
オレもグゥを見詰め返し、目線を合わせたまま愛撫の動きを激しくさせる。
グゥをいかせてあげたい。グゥの反応を見ながら、気持ち良いやり方を一つ一つ厳選していく。
小さな突起を包み込んだ唇をゆっくり先端まで持ち上げ、根元まで一気に吸い付く。
そうして吸い上げたままちゅぽっと引き抜き、また強く吸い立てる。その度にグゥの恥丘に
叩きつけられた唇が、パチュ、パチュと粘着質な音を立てる。
「うそ、うそっ……おかしいっ、これ……グゥ、へんになるぅぅ……ッッ」
シーツを破れそうな程に握り締め、突っ張るように腕を真っ直ぐに伸ばす。足にも力を込め、
膝を立てて踏ん張るように左右に開く。
その表情は完全にとろけ、締まりの無くなった口からはダラダラと涎を垂れ流していた。
「ひ……きゅ……ッッ! くる……すごいの……クル……ッ」
完全に包皮を剥き下ろされた無防備な粘膜突起を根元から吸い上げ、強く圧迫する。
そこに舌でチロチロと、柔らかく根元をほじりながら全体をヌチヌチと舐め上げる。
その裏側に甘く歯を当て、少しずつ先端部分へと掻きこすっていく。
オレは思いつく限りの方法で、グゥの敏感な粘膜突起に快楽刺激を与え続けた。
「らにっ らに゛されて……ッ、しらなひ……こんなのっ、しらな゛い゛ぃぃッッ」
ビクンビクンと身体を大きく弓なりに跳ね上げ、足をバタバタともがかせる。その痙攣にあわせ、
呻くように声を漏らす。
気付けば、ビクビクと全身を震わせつつもその脚はオレの首に絡み付き、両手は自らの乳首へと
伸びていた。
「あーーーー!! あーーーー!! あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
身体を動かせない代わり、とばかりに、グゥは全力で叫声を張り上げる。
必死で身をよじるグゥの腰をがっしりと掴み、更に股間に顔を密着させ最後の瞬間までオレは
愛撫を続けた。
「いっ……くぅ……ッッ」
真っ赤に腫れた敏感な突起に這わせた歯が先端部分に到達し、ちゅぷっと強く音を立てその唇から
解放された瞬間、ヒュウと、グゥは喉の奥から声にならない声を吐き出した。
「くぁっ……あ、あぅぅンンンンンンンンン……ッッ!!」
がに股で下半身だけブリッジをするような体勢で、腰をガクンガクンと振り上げる。
その度に秘所から透明な液体が勢い良く噴出し、飛沫が降りかかる。
これが女の子の絶頂、なのだろうか。男と違って、どうなればそうと取れるのか
イマイチ良く解らないが、きっと達してくれたのだろう。
オレはようやくその秘所から顔を離し、静かにグゥをベッドに横たわらせた。
「あ゛…かは……ぁ…ひ……ぐ……」
グゥは大きな痙攣が治まった後もその身体を小刻みに震わせ、ぐったりとベッドに四肢を投げ出し
細切れにくぐもった呻き声を上げていた。
「グゥ……」
そっと傍に寄り、涙や唾液で汚れた顔を優しく拭う。
だけど何度拭っても、虚ろな眼差しでオレを見上げるその瞳からはぽろぽろと止め処なく雫が
零れ落ち、頬を細く伝っていく。
「大、丈夫……?」
涙をせき止めるように、頬に手を添える。グゥは憔悴し切った顔に笑みを含ませ、オレの手に
自らの手を重ね目を瞑った。
「この……ケダモノめ……。何が、嫌がる事は、しない……だ……」
乱れた呼吸を整えるように細く息を吐きながら、ぽつりぽつりと言葉を重ねる。
その強気な声に、心が安らいでいくのが解る。オレ、グゥのこう言う所に助けられてばっかりだ。
「ごめん、最初はホントにそんなつもり、無かったんだよ」
「まったく、よくよくのエロガッパよの……困ったヤツだ」
そう言って、グゥはくすりと微笑ってくれた。
でも、ただグゥの身体を拭くだけって約束だったのに。本人の同意も無しに、あそこまで
弄んでしまったのだ。何か償いをしなくては、自分で自分を許す事が出来ない。
「グゥの大事な所、あんなにしちゃって……ホントにごめん。やっぱり、嫌だったよね……」
「……馬鹿ハレ。嫌じゃないから、困ってるんだ」
「え……?」
グゥは拗ねたように唇を尖らせ、じっとりとした目でオレを睨む。
「あんなにされて……もう、グゥは……戻れないかもしれん……」
「え、え? も、戻れないって……」
「……自分でも、わからないんだ……」
うつろな声でそう呟きながら、グゥはオレの手を両手で握り指先に舌を這わせた。
「ぐ、グゥ!?」
「んむ……ちゅ、ん、ふぁ……ハレぇ……」
指の谷間をぴちゃぴちゃと舐め、掌にも大きく舌を這わせ、手の形をなぞるように
唾液を塗り付ける。一本ずつ指を口に含み、舌を絡めちゅうちゅうと吸い付く。
口内粘液でドロドロになった手を首筋にすり寄せ、そのまま胸元まで唾液の跡を残しながら
ヌルヌルと滑らせ、その乳房にオレの手を押し付け無理やりくにゅくにゅと揉みこねさせる。
「な、なにしてんだよ、グゥ……ッ」
「ハレ……グゥは今、多分、ちょっとおかしくなってると思う。でも、この気持ちを抑える事が
どうしても出来ないんだ……」
オレの手に掴まるようにして上体を起こし、グゥは潤んだ瞳をこちらに向ける。
そしてすがるように腕にしがみ付き、その唇をオレの口に強く押し付けた。
「……ん、ぷぁっ、ちょ、ちょっと待ってよ!」
慌ててグゥを引き剥がし、後ずさる。頼むから、状況を整理させてくれ。
グゥがおかしいって? ああ、確かにおかしい。なんだか、今まさに発情してますって感じだ。
その表情からも物腰からも、芬々と強烈なフェロモンを発散させている。
その桃色の空気に当てられまい、と気を張るも既に下半身はとっくにそっちの世界の住人に
なってしまっている。この上で理性まで溶かされては自分がどうなるか解らない。
「一旦、落ち着こう、グゥ。どうしたのさ、急に」
「どうもこうもあるか……ハレのせいなんだからな……」
グゥは正座の姿勢でオレの正面にすり寄り、オレの両手をきゅ、っと握る。
「ここが熱くて……どうしようもない……」
そしてその手をそっと自らの下腹部にあてた。
「ハレ。最後まで、して」
「──────ッッ」
真っ直ぐに、あまりにもストレートにぶつけられたその言葉に、混乱していた頭がさらに
揺さぶられる。
いやいやいやいや、待て待て待て待て。流されるな、オレ。こーゆー状況が一番危険なのだ。
ここで流されたら後々間違いなく後悔するって事は解っているはずだぞ。
下半身からの声はシャットアウトしろ。性欲に負けるな。気合だ気合ッ!!
「そ、そんなのダメだよ! まだ、早いよ……っ」
「ここまでしておいて……今さら何を言う」
「う……で、でもさ、ほら。その、オレ、そーゆーの持ってないし……そのまましちゃうと不味いだろ」
「……孕まなければ良いのだろう?」
「だから、その保障が無いだろぉ……」
「ハレが出さなければいいだけだ」
「難しい事言うなよ……そんなに制御できねえっての。それに、ホントにそれで大丈夫なの?」
「さぁ? 本にはそんな感じで書いてたぞ」
「うう……」
確かに、学校の授業で聞いた限りでは、中に出さなければ大丈夫的な感じだったけれども。
レジィの言う事だ。ぶっちゃけあまりあてになる気がしない。あの時もらった本、ちゃんと
読んでおけば良かった。
更にそっち系の本職である保険医ですら、母さんのお腹にアメがいるって解った時にあれほど
狼狽していたのだ。ますますあてにならん。不確定要素が多すぎる。
「やっぱりやめよ、グゥ。グゥだって今はちょっと興奮してるだけだよ。これからも
ずっと一緒にいるんだからさ。焦る事、無いと思う」
「ハレ……」
きゅっと手を握り返し、一言一言、はっきりと気持ちが伝わるように言葉を重ねる。
グゥはオレの言葉に眉を顰め、口を引き絞り今にも泣きそうな表情を浮かべると
その顔を隠すように俯き、小さく肩を震わせた。
「グゥも、解ってる。ハレの言う事は、多分正しい。でも……ハレ、今じゃなきゃダメなんだ。
ハレを今、いっぱい感じたいんだ。もう、抑えきれない……グゥはハレの事……ハレのこと……ッッ」
顔を伏せたまま、引き絞るように声を出す。
肺の中の空気を全て言葉に乗せて吐き出しているかのように、その声は徐々に重く、か細くなっていく。
そしてその声が完全に消え入った瞬間、グゥはぐっと顔を持ち上げ、清廉な眼差しでオレを真っ直ぐに捉えた。
「……ハレ……お願い、グゥを奪って……」
静かな、その少女の口からはこれまでに聞いた事の無い程に、穏やかな声。しかし、その声から
伝わる溢れ出さんばかりの感情はそれこそこれまでに感じた事の無い程に濃密で、純粋だった。
沸点を完全に振り切った爆発的な感情の発露。それは言霊に乗り、光の矢となって一直線にオレの
胸を貫いた。
「グゥ、ホントに……」
言いかけて、飲み込んだ。これ以上の言葉は語る意味を持たない。
グゥは、その思いの丈の全てをオレにぶつけてくれたんだ。後は、オレがどうするか、だ。
……そうなればもう、答えは一つしかない。オレはグゥと手を握り合ったまま、そっとその唇に
唇を重ねた。
下半身からの声も、性欲の奔流も感じない。代わりにオレを突き動かしているのは、心の疼き。
一つの感情が、胸をいっぱいに満たしていく。
───グゥが好き。それだけの感情。ただそれだけの気持ちで、オレはグゥの想いに応えようと思った。
****[[戻る<<>070901_8]] [9] [[>>進む>070901_10]]
2007-09-13T01:38:15+09:00
1189615095
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070901_7
https://w.atwiki.jp/hgpink/pages/104.html
****小麦色の白雪姫_7(二:272-278)
<<8>>
「あー、なんかドッと疲れたなー」
部屋に戻るやいなや、ベッドに備え付けられた大きなソファに持たれかかる。
グゥもオレの隣にちょこんと座り、オレの肩に体重をかけた。
「グゥ───」
何を言う間も与えられず、唇が奪われる。
すぐにパッと離れ、グゥは頬を染めてくすりと笑った。
もう一度、今度はオレからグゥの頬に手を添え、唇を重ねる。
深く密着させず、舌も使わず、唇だけを味わうように優しく吸い付き、離れる。
そうして何度も、グゥと見詰め合いながらキスを交わした───
「───なあ、ハレ」
「……ん」
「そろそろ、風呂に行った方が良いんじゃないか」
「……んー」
グゥの髪を撫でながら曖昧な返事を返す。
今、グゥはオレの股の間にお尻を収め、その背中をオレの胸に預けて座っている。
「もうちょっと、このままでいない?」
「……ウェダが風呂で待ってる」
「ん~……。もうちょっとだけ……」
グゥの髪に鼻を埋め、頭を揺する。後ろから肩に腕を回し抱き締めるとグゥは一瞬、身体を
弛緩させたがすぐに頭をぐりぐりと捻りオレの顔を押し戻した。
「遅くなればなるほどウェダの想像力に火がつくと思うのだが?」
オレの腕を解き、肩越しに睨みつけてくる。
……確かに、あまり遅れてはまたいらぬ詮索をされてしまいそうだ。
どうせ風呂から上がって、イベントとやらが終わればここに二人で戻ってくるのだ。焦る必要も
時間を惜しむ必要も無いか。
しかし、一つだけ今やっておかなければならない事がある。
「グゥ。水着跡、ちょっとだけ見せて?」
「……ケダモノ」
「違うっての!」
冷やかな目線をオレに送りながら、グゥは自分の胸をガードするように抱いた。
「手触りは違うのかな? 味も見てみよう、とか言ってまたグゥを慰みものにするつもりなんだろう」
「するかッ!! ってか、"また"ってなんだよ、"また"って」
「だいたい、日焼けの跡など別に今見なくてもいいだろ。もうちょっとマシな口実を考えろ」
「……今じゃなきゃ、ダメなんだよ」
「ほう、その心は?」
グゥは腕を組んだまま肩越しにオレを見上げ、次の言を待つ。
ああ、もう。最初の言い方が不味かったか。自業自得ってやつか……。くそう、また恥ずかしい事を
告白せにゃならんのか。
「……母さんに先に見られるの、悔しかったんだよ」
「…………」
「オレが最初に見たかったのッ!」
顔中が熱い。グゥの顔をまともに見る事も出来ず、中空に目を泳がせる。
しばし無言の時が過ぎるが、不意に大きな溜息がその沈黙を遮った。
「ハレは意気地があるのかないのか……」
「……へ?」
「…………なんでもない」
グゥは何度も小さく溜息を付き、ぴょんとソファから降りると落ち着き無くオレの前をうろうろと
うろつく。最後にもう一度大きく息を吐くと目の前でぐっと屈み込みオレに顔を突き出した。
「……一瞬だけだからな」
「…………」
グゥは怒ったような困ったような顔で口を尖らせるとすっくと身体を起こし、ドアの前まで
歩きくるんとこちらに向き直る。
「……ちょっと待ってろ」
そしてそう言うと、グゥは突然後ろ手にスカートを捲り、ごそごそと何かを弄りはじめた。
こちらからはスカートの内部は見えないが、オレはその光景をただ呆然と見守るしかなかった。
「……よし。いいか、一瞬だけだぞ?」
「な、なんだよ……?」
何かの仕度を整え終えたのか、グゥはパンパンとスカートの皺を伸ばすようにお尻をはたくと、
少し前傾姿勢になり足を開く。
そしておもむろに勢い良く上半身を捻り、反動をつけて回転するようにクイッとお尻を前に
突き出した。
「ブ…………ッ!!」
ヒラリと傘を開くように展開するスカートの奥で、純白の膨らみがぷるんと揺れた。
最初は下着かと思った。だけど、褐色の肌とその白い双丘との間には何の段差も無く、
ただくっきりと色の境界線があるのみだった。
先ほどのグゥの怪しい動きはこれだったのだろう、下着はグゥのお尻の谷間に食い込み、
その根元にのみ逆三角形に布地が見えるのみだった。無理に食い込ませているためか、
布地の圧迫で尻肉がむっちりと持ち上がり、より豊満で柔らかそうに盛り上がっていた。
見えたのはほんの一瞬だったが、しっかりと目に焼きついた。小麦色の脚とのコントラスト
にくっきりと映える色白な双丘の、官能的とすら思えるようなふくよかな肉感。
グゥのスカートはとっくに膝元まで降り、更に上からガードするように前も後ろもグゥの
手で押さえられていたが、オレの目の前にはまだ先ほどの光景がそこにあるかのように
チラチラと浮かぶ。
「……満足したか?」
「…………」
「どうした、何か言え」
「………あ……」
「あ?」
「アンコール……」
「……馬鹿」
「アンコール! アンコール!!」
「黙れ!!」
オレの精一杯の掛け声にもグゥは応えてくれず、むしろ益々スカートを守りに入る。
くそう、ああなっては真下から竜巻が発生しても捲れはすまい。
「まったく。すぐ調子に乗りおって。これはサービスだ、サービス。別に、ハレがちゃんと言えば
グゥだってこれくらいの事はしてやっても良いんだからな」
「…………」
言ってから恥ずかしくなったのか、グゥは頬をほんのりと染めてぷい、とそっぽを向いた。
そこまでは、オレも期待してなかったってのに。こいつのやる事はまったく、ホントに……。
「じゃ、グゥは風呂に行くからな」
早口にそれだけを言うとグゥは後ろ手にドアを開け、オレを置いてそそくさと部屋を出て行った。
一人、取り残されたオレの意識と肉体が正常に戻ったのは、それから数分後の事だった。
風呂場に行くと、ロバートが物凄く良い顔で出迎えてくれた。脱衣所の前で随分と長い間
待ってくれていたようだ。「先に入ってくれて良かったのに」と言うオレの言葉にロバートは
ブンブンと首を振った。オレより先に入る事はロバート的に許されないのだそうだ。なんだか、
申し訳無い事をしてしまった。少し、反省する。
さっさと服を脱ぎ、中に入るとロバートも追って入ってきた。腰に巻いたタオルから覗く、
黒と白のコントラストに先ほどの絶景が上書きされそうになり慌てて顔を背ける。
どうやらロバートもアシオも海で本当にトランクス一丁にされたらしく、上半身はもとより
太ももの中ごろから下までもしっかり焼けていた。普通の水着の跡とまるで変わらない。
しかし男の日焼け跡はどこか間が抜けているように思えるのはオレが同性だからだろうか。
身体を洗い、ゆっくり湯船につかりながら部屋でのグゥを思い出す。……途端に、湯船から
上がる事が困難な状態になる。
自分で呼んでおいてなんだが、今ほどロバートが邪魔者に思えた瞬間は無かった。
「いやぁ、いいお湯ですねえ」
「…………ほんとにねえ」
「今日は疲れたでしょう。脚を伸ばした方が楽ですよ?」
「…………いや、オレはいいや」
「男同士なんですから、ほら、お気にならさずに」
「…………いいっつーの……」
最初に待たせてしまった手前、先に出ていてくれとも言えず、その理由を聞かれた際の言い訳も
思い浮かばず、オレは心地良いはずの広い湯船の中でひたすら窮屈な思いに悶々とするのだった。
<<9>>
───これは、あるストーカーの被害に悩まされとった一人の女性の身に起こった出来事です。
仕事の行き帰りに妙な視線を感じる。夜中に窓の外を覗いたら不気味な人影が立ってる。
毎日のように無言電話がかかってくる。
彼女はいつも背筋が凍る思いで過ごしてました。ドアは勿論、家中の窓をいつも閉めっぱなしに
していても不安は募るばかり。
今日も、いつもと同じ時間に電話の無機質な音が部屋に鳴り響いた。
もしもし? もしもし、どなたですか?
何度聞いても相手は無言。返ってくるのは不気味な沈黙だけや。
彼女はもともと気の強い方や無い、どちらかと言えば控えめな子やったけど、ここまでされては
黙ってもおれへん。今回ばかりはさすがに我慢の限界が来た。
「いい加減にしてよこの変態! アンタみたいに誰の心も理解できない人間サイテーだ!いっぱしの
つもりなんだろうけど傍から見ればちゃんちゃらおかしいだけ! なんもなし! 空っぽ! そーゆー
人間はね、結局死ぬまで今に見てろとホントのオレはこんなもんじゃないと、誰も解ってくれないで
誤魔化して! 根拠の無い自信と自己憐憫に溺れ生きていくんだわ! 大迷惑!! ッ死ね!!」
よっぽど腹が立っとったんやろう、彼女は饒舌にそこまで一気に捲くし立てると受話器を叩き付けた。
せやけどな、彼女の心は全く晴れへんかった。受話器を耳から放す瞬間、彼女は聞いてもうたんや。
いつも何を言うても無言やった受話器の向こう側から聞こえてきた、カスレた男の声。
「────死ぬのはお前だ」
彼女は途端に恐ろしくなり、警察に相談した。
幸いな事に、警察も最近はストーカーの被害者対策に力を入れとったから、彼女の相談に
すぐに対応してくれた。
「今度電話がかかってきたときには逆探知を行ってから携帯電話にかけるので、なるべくストーカーとの
電話を切らないようにして下さい」
そう警官に言われた彼女は、百万の味方を手に入れた気分やった。もう怖くない。
むしろ、電話がかかってくるのが楽しみにすら思えた。
そして、その夜も律儀に同じ時間に電話はかかってきた。
……しかし今日はいつもとは様子が違ったんや。
ククククク……ククククク……ククククク……
ストーカーの男はただ電話口で延々と不気味な笑い声を響かせとった。
恐ろしくなった彼女は電話を切ろうと思ったけど、警察が逆探知をしてくれることになっとるから
そうもいかん。我慢して受話器を持って、ただ男の笑い声を聞いてるしかなかった。
そして、ついに彼女の携帯電話が鳴った。警察からや。
彼女は急いで電話を取った。
「逆探知の結果が出ました!今すぐ外へ出てください!」
電話が繋がった途端、警官のテンパった声が聞こえた。
「ど、どう言う事ですか?」
彼女は慌てて聞いた。そやけど警官は、焦れたような声で「とにかく、早く家を出ろ」と
言うばかりや。
何が何だかわからへん。そやけど警官の声にただならぬ雰囲気を感じて彼女は靴も穿かずに
急いで外に飛び出した。
外に出た途端、一台の黒塗りの車が走ってきて自分の前で止まった。そこから二人の私服の男が
出てきて彼女を見てほっとした顔を見せた。その二人は彼女の相談を聞いてくれた警官やったんです。
こうして彼女は無事に保護されました。せやけど、警察署に向かう途中の車の中で聞いた警官の一言に、
彼女は最後の最後で、これ以上ないくらいの戦慄を覚えた。
────犯人は、あなたの家にいたんですよ。
「うぇぇぇええええええええいゃあああああぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
───談話室に、これで何度目とも知れぬ絶叫が木霊する。
しかし響く声はこの部屋に集まった人間のうちのほんの一握り……って言うか、ぶっちゃけ
オレ一人の声だけだった。
「いやー、坊ちゃんはホンマええ反応見せてくれるわ。話し甲斐があるっちゅうもんやで!」
言いながら、本当に愉快そうにアシオがカラカラと笑う。
……こちとらもう、叫びすぎて喉がカラカラに枯れる寸前なんですけどね。
「いやぁ、夏はやっぱり怪談に限るわ。昼は海で遊んで、夜は怖い話で盛り上がる……これぞ夏の風物詩!」
いや、限らないだろ。スイカ食べながら花火大会とか、普通にほんわか癒し系の夜を楽しんでも
罰は当たるまいよ。
「これで、78本目ね。次は誰?」
「俺、まだまだおもろい話残ってますよ?」
「続けて話すのはダメって決めたでしょう? 私だってまだまだ残ってるわよ」
「あらベル、私もメリーちゃんと体験した不思議なお話がいっぱいあるのよ?」
わいわいと子供のようにはしゃぐ三人をよそにオレは先ほどつい消えた七十八本目の蝋燭のように
燃え尽きる寸前だった。
薄暗い部屋を心許なく照らしている蝋燭の数は残り二十二本。その全てが消えるまで、この悪夢は
覚めることを許さないらしい。
一体、なんでこんな恐ろしい会合に参加してしまったのか。
ベルとアシオの企画した「納涼、百物語 -全ての蝋燭が消えた時、何かが起る-」
……もう既にオレの心中に甚大な何かが起っているのだが、それはともかく。
蒸し暑い夜を少しでも涼しくするため、入念に準備をしてくれたものらしい。確かに、その
気合の入れようはこの部屋に足を踏み入れた瞬間から十二分に伝わってきた。
足下が隠れるほどに厚く立ち込めるスモーク。部屋の中央に置かれた円形テーブルの上には
小さな透明の花瓶のようなものに入った蝋燭が整然と並ぶ。それを取り囲むように置かれた
ソファに円座を組んで座る皆の姿が蝋燭の灯りに下から照らし出され、否応無く不安感を煽られる。
確かに、今オレの身体を襲っている寒気を考えれば企画は大成功と言えるかもしれないが
オレは一言いってやりたい。お前ら、怪談話したいだけちゃうんか、と。
参加メンバーはオレ、グゥ、母さん、おばあちゃん、ベル、アシオ、ロバート、そしてアメ。
母さんとアメは既にソファでぐっすり快眠中。定期的に聞こえる絶叫をものともせずにぐっすり
お休み中だ。オレとグゥは聞き役に徹している。グゥはオレの腕にしがみ付き……いや、逆だ。
オレはグゥの腕にしっかりとしがみ付き、寄り添って座っている。グゥがいなければ、正直オレの
精神は今頃どうなっていたか。考えるだに恐ろしい。
語り部は勿論、都市伝説大好きベル、アシオ、おばあちゃん。……そして。
「ベルさん、アシオさん! 次は俺の番って、さっきクジで決めたじゃないですか!」
……そう、ロバートだ。コイツまでこの手の属性を持っていたとは。ホントに何なんだ
このお屋敷の連中は……。
「あら、あなたはもう話し終わったんじゃなかったかしら?」
「そ、そんな……さっきからそう言って飛ばされてばっかじゃないですか俺!! 俺だって
いっぱいネタ持ってるんですよ? なんたって日本は怪談大国なんですから!!」
オレは二度と日本へは行かない。今決めた。もう絶対決めた。
「しょうがないわねえ。じゃあ次はロバートで……その次はまたクジで決めましょう」
「よっしゃ、残り21本やから……一人あと5話ずつですね」
「もうそれだけなの? 物足りないわねえ」
「メリーちゃん以外のお友達のお話もいっぱいあるのに……残念ねぇ」
四人からあと五話ずつ……考えるだけで眩暈がしてきた。しかしここまで耐えたんだ。
ようやくゴールが見えてきた所じゃないか。諦めるな、オレ!!
……って、なんでそこまでして耐えにゃならんのだ……。何の試練だよ、これは。
「グゥ~……失神したら部屋まで送ってくれな?」
「んー?」
かすれた鼻声で、グゥに弱々しく声をかける。
グゥは相変わらずのポーカーフェイスで気のない声を返した。こいつは基本的に物事に動じると
言う事を知らない。特に怪談やらの「お話」に関しては鉄壁の耐性を誇っている。オレの耐性が
紙のようにペライせいで余計にそう見えるのかもしれないが……。とにかく、グゥのこの毅然と
した態度がオレの精神を紙一重で繋ぎ止めてくれている要因の一つとなっている事は間違いない。
「なんだ、そんなに怖いのか」
「うう……恥を承知で言うけど、普通に怖いよ……」
「ふむ。少しは和らぐかもしれん方法が一つ、あるが。試してみるか?」
「な、なになに? どんな方法!?」
「ようは、他の事に意識を向ければよいのだろう?」
グゥの言葉にオレは目を輝かせ、藁にもすがる思いでグゥを見る。
グゥは一瞬、ベルたちの方に目をやり、すぐにこちらに向き直ると、
ほんの一瞬、唇を寄せてすぐに離れた。
「……どうだ」
「…………」
ロバートの話はもう始まっているようだった。だけど、キンキンと頭の奥に響く耳鳴りに
かき消され、すぐ傍にいるグゥの声しか聞こえない。
心に蟠っていた不安感も消し飛んだ。ただ、この会合の唯一の成果であった寒気も消え、
身体中がほこほこと火照り出す。でも、その暑さに嫌な感じはしなかった。
「うん。ホントに効果あった」
「ん。それはよかったな」
「……また、効果が切れたらしてくれる?」
「よ、よかろう……」
「もうそろそろ、切れそうな気がするんだけど……」
「……お前と言うやつは……」
一つ口実を見つけたら、もう止まれない。
なおも勝手に盛り上がっている四人の目を盗み、オレは何度もグゥと唇を交わした。
たった二十ちょいの小話を聞くくらいしか時間が残っていないと思うと、ちょっと残念だった。
「────うふふ。これでこのお話はおしまい。ついに、残り1本になっちゃったわね」
「あれ、坊ちゃんそう言えばさっきから、全然怖がってないみたいですやん」
「え? あ、あはは。さすがにこれだけ聞かされたら、慣れるって」
「そうよね、男の子ですものね。それに私の話は、怖い話じゃなくてちょっと不思議な
ファンタジックなお話なんだから。怖がる必要なんて、無いわよね」
「そ、そうですねぇ……ははは」
いや、むしろアンタの話が……ってか、アンタの語り口が一番怖かったよ……。
でも、グゥのおかげで、なんとかここまで耐える事が出来た。最後の一話も軽く聞き流して
終わりだな。ありがとう、グゥ。ありがとう、オレの理性。
「よっしゃ、ついに100本あった蝋燭の火も最後の1本が残されるのみとなったワケやけど、
さぁて次の語り部は誰や?」
誰でもいいから、さっさとやっちゃって下さいよ。
「ふっふっふ。実はそれはもう決まっとる。最初から、決まっとった事なんやで……」
テーブルの上に置かれた最後の蝋燭の前で、アシオがおどろおどろしい声を出す。元々からして
怖い目が蝋燭の火に照らされもはや凶器と呼べるレベルのキモさになっている。
「それは……坊ちゃん、グゥさん、あんたらやでぇ~~~~!!!!!」
これ以上無いくらいに精一杯演技がかった声を上げ、アシオがオレたちに震える指を突きつける。
怪談話は苦手だが、この手の演出はさすがにオレも素直に怖がってやれる年齢は過ぎてしまった。
逆に、一生懸命なアシオの姿に少し心がホッとする。
「……なんや、ホンマに怖がらんようなってもうたなあ……」
オレの平静ぶりにアシオの熱も少し冷めたのだろう。つまらなそうに口を尖らせた。
「……てかさ、オレ、怖い話なんて全然知らないよ? 最後の語り部って言われてもさあ……」
「いや、それは今語らんでええんです。坊ちゃんは普段どおりにしているだけで、ええんです……」
「……ど、どう言う事だよ……?」
アシオはまだ諦めずに演技を止めようとしない。しかしその不気味な語り口に、少しずつオレの中にも
また不穏な気配が漂いはじめていく。
「一晩で九十九話もの恐ろしい話を聞いた人間は、夜が明けるまでに自分も恐ろしい体験をしてしまうんです。
それが、百話目の話として追加されて、この百物語は完成するんですわ……」
「…………」
ゴクリと、喉が鳴った。
アシオの力技の成果があったか。オレは背筋にゾクリと冷たいものを感じ思わずグゥの手を強く握った。
迷わずに握り返される手の温かい感触に、少し悪寒が和らぐ。しかしそれも、今度ばかりは完全に晴れては
くれなかった。
「この蝋燭は、坊ちゃんが持っといて下さい」
そう言って、蝋燭の入った小さな瓶を手渡された。煌々と揺らめく小さな灯は少し離れた所からでも
ジリジリとその熱を感じる。しかし指から伝わるガラスの硬質な感触は、氷のように冷たかった。
「この蝋燭はいわばセンサーです。怪異が起こる前に、この火がその予兆を知らせてくれるんです」
「…………」
「不自然な揺れ。火が突然燃え上がる。そーゆー変化があれば、すぐそこまで何かが迫ってる証拠です……」
「…………や……」
「この火が前触れなくふっと消えた瞬間……その時こそ、何かが起る瞬間ですから。……気をつけて下さいね……」
「…………いや……」
「あ、これだけは言っときますけど、自分で火、消さんといて下さいね? もしそんな事してもうたら、
今この屋敷に集まってる大量の霊の怒りをかって、何が起こるやわかりませんから…………」
「───いやぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
最後の最後、本日最大級の大絶叫が談話室を震わせる。
それは歓呼の調べか慟哭か。まるでこの会合の成功を祝うかのような最大最後の断末魔が
静まり返ったお屋敷にどこまでも、どこまでも高らかに響き渡るのだった。
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2007-09-13T01:37:44+09:00
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070901_6
https://w.atwiki.jp/hgpink/pages/103.html
****小麦色の白雪姫_6(二:261-271)
「鼻が痛い……」
「オレは耳ん中に入った……」
浅瀬にぐったりと膝を落とし、二人して息を切らせる。水中で暴れるのは危険だ。
特に塩水は場合によって思わぬダメージが追加されてしまう。グゥは目に涙を
浮かべながらしきりに鼻をかんでいた。オレも今日は塩分過多と診断されそうだ。
……塩水って、しょっぺえなぁ。当たり前だけど。
「……ハレ」
ぐいと目をこすり、鼻声でオレを呼ぶ。
「その、グゥはまだ……」
頬を染めて俯き、自らの腰を抱いて身をもじる。目だけをちらちらとオレに向け、
グゥは一瞬きゅ、と唇を結んだと思うと静かに立ち上がった。
「体が、もう、熱くて……どうしていいかわからない……」
ゆっくりとオレに近づく。すぐ目の前にまで来たとき、オレの視界にはグゥの胸元が
いっぱいに広がっていた。
「特に、その、ここが……」
言いながら、ブラの肩紐の根元に指をかけ、ぐぐ、と持ち上げる。
徐々にせり上がる水着のラインに胸の肉が柔らかくついていく。胸の真ん中あたりで一瞬、
詰まったかと思うと一気に水着が鎖骨のあたりまで抜け、持ち上がっていた乳肉がぷるんと
元の位置に戻った。
……釘付けになった。男なら当たり前だ。グゥが今、どんな表情でオレを見ているかも解らない。
真っ白い小さな二つの丘の頂点に、ほんのりと盛り上がる桃色の突起。その更に中心に見える
ほんの小さな窪みや根元の皺。白い肌に粟立つ鳥肌までも確認できる距離に、それがある。
「早く、さっきみたいに。じっと見られると、辛い」
グゥは焦れたように声を上げ、胸をぐっと張る。一層に近づいたグゥの胸は、少し首を持ち上げ
舌を伸ばせば届くくらいにすぐ傍まで接近していた。
震える手で、柔らかい丘を掴む。まだ敏感な部分には触れず、周囲の肉をくにくにと揉み込む。
二本の指で円を作るように囲み、きゅ、と搾る。ぷっくりと盛り上がった肉の中心で、小さな突起が
ふるふると揺れた。
こくんと喉を鳴らし、突起に顔を近づける。ハァ、と熱い息をかけるとグゥはビクッと身体を
強張らせ、もどかしそうにオレの頬に手を添える。
「や、優しくな……最初は、そっとしてくれ……」
オレは無言で小さく頷くと、その胸のサイズに合わせるように口を小さく開き、盛り上がった
乳肉全体を口に含むようにちゅぷっと咥え込み、吸い上げた。
「ハレ様~! グゥさ~ん!」
「─────~~~~~~~ッッ!!!?」
不意に遠くから聞こえた声に心臓ごと身体が飛び跳ねた。咄嗟にグゥを引っ張り込み、
また一緒にザバンと海中に沈む。
「あれ、海で遊んでたんですか?」
「ぶはぁッ!! はぁ……ろ、ロバート?」
水中から顔を上げると、砂浜の上を真っ直ぐこちらに向かって来る背広姿の男の姿。
ロバートだ。……ロバートだよな。なんか黒いけど。
「どーしたのさ、ロバート?」
「はい、そろそろ帰る仕度をしますんでお迎えに!」
やっぱりロバートだったようだ。よかった。黒いけどロバートだ。
「もう帰るの? まだ日も沈んでないのに……」
「ええ。なんか、ひと雨来そうだってウェダさんが」
言われて空を見る。確かに、先ほどまで真っ白だった雲は鉛色に変化し、今や太陽を完全に
覆い隠しその空の殆どを埋め尽くしていた。風も随分と強くなっている。
「そっか。ありがとロバート? オレたちもすぐ行くから、そう言っといて」
「いえいえ、一緒に戻りましょうよ。片付けるのはマットだけですよね?」
「いやいやいやいーから、ロバート? は先、戻ってて!!」
冗談じゃない。ここに居座られたらオレたちは身動きが取れなくなってしまう。
オレもグゥも、下半身は丸裸なのだ。と言うか、オレは完全に素っ裸だ。
くそ、良い所で邪魔をしおって。……いや、まぁお屋敷に帰っても部屋で続きをすればいいか。
……オレって、ゲンキンだなあ……。
「……あの、ハレ様?」
「何、ロバート?」
「さっきから、俺の名前が疑問系になっている気がするんですが?」
「いや……何ていうか、今の姿がどうもいつものロバートの印象と相容れなくてね」
「え? あ、ああ。確かにそうですね、すいません」
「謝る事じゃないし別に良いけどね」
言われて今気付いたように、ロバートは自分の身体を見て頭をかく。
「ネクタイ、締める時間が無くて。ハレ様たちを呼びに出されて急いで着替えたもので」
「いやいやいやいや知らんよそんな細かいとこは!! もっと大局的に変動した部分あるっしょ!?」
ははは、と何故か気恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべるロバート。そう言えば、いつも
きっちりと締めているネクタイは無く背広もシャツも全開にはだけていた。よっぽど
急いだのだろう。
……じゃなくて。なんでこうあのお屋敷のメンツは皆天然ボケが好きなのか。
「ああ……そんなに、印象変わりました?」
「変わった変わった。最初誰かわかんなかったもん」
「そうですか……なるほど、変装の手段としては一考の価値があるかもしれませんね」
はだけた胸元や腕をしげしげと眺め、何かを納得したように頷く。こいつの頭の中では今、
非常に物騒な物事が渦巻いているのだろう。
「それにしても、グゥさんも結構印象変わりましたよね」
「……そうか? 照れるな」
「へ?」
ロバートが目線を送った先、オレの隣にはもちろんグゥがいる。
黒いけど。
黒いけど………
「いやいやいやいやいやいやちょーーーーーー待てやあああああ!!!!」
「いやあ、一日で焼けるもんですね」
「うむ。太陽の力とはかくも強大なものよ」
「もしもーしグゥさーん!? 一体いつ、なにが、どう化学変化を起こしてそんな御姿に!?」
あああああああもう、ロバートはともかくグゥに関しては突っ込むだけ無駄なのだろうが
しかしこれが突っ込まずにいられるか。
「何を言っておる。お前が日焼けぐすりを塗ったのだろう」
「いやそんなどこから突っ込めばいいのかわからんけどとりあえず塗ったから焼けるとか
そーゆーマジックアイテムじゃないですからね!?」
「へぇ、やっぱりハレ様が塗ったんですか」
「うむ。全身くまなくムラなく塗ってくれてな」
「へ、へぇぇ……。お二人の仲はそこまで……なんだか少し妬けちゃいますねえ」
和気藹々と談笑を楽しむこの超狡猾と超天然のゴールデンタッグに対しオレの突っ込みなど
何処吹く風か。ええ、もう。慣れてますよ、この程度。
っつーか、またロバートにいらぬ誤解を……いや、誤解じゃなけどとにかく、いらん事を
吹き込むのは止めて頂きたいのだが。
「あっ……すいません、俺、お邪魔でしたか?」
「いやいや、良く知らせに来てくれた。だがまあ、あとはグゥに任せて先に戻るがよい」
「はい! それじゃ、ハレ様。なるべく早く戻ってきて下さいね」
おお、珍しくロバートが空気を呼んだ。
もしかして、グゥはこれを狙ってワザとオレとグゥの関係を仄めかしたりしたのかな。
でも、ちょっと恥ずかしいな。母さんたちには、もっとタイミングを計って伝えたい。
「ちょっと待ってロバート!」
「え、はい何でしょう?」
「あの、この事、さ。母さんたちには内緒に……」
「……ああ! はい、それはもう、ご安心を!」
ロバートは胸をトンと叩き、快活な笑顔をくれた。
よかった。ロバートは基本的に危険人物だが、こう言う素直な性格や忠誠心は本当に
信頼できる。呼びにきてくれたのがロバートで良かった。
「───誰にも言いませんよ、海で遊んでいた事は!!」
「ぅえええ!? ちっ、違ぁぁあ!!!」
結局、最後まで天然っぷりを発揮してロバートは走り去った。数分後には、オレとグゥの事は
母さんたちに知れるだろう。明日にはお屋敷中に広まっているだろう。うう、明日から周囲の態度が
露骨に変化しそうで怖い。
「はぁ……どーしよー、グゥ」
「……まぁ、そう気に病むな……」
がっくりとうな垂れるオレの肩にそっと手を乗せ、子供をあやす母のような優しげな、
それでいて芯のある声でグゥは言った。
「どうせ、明日には皆に知れる事になっていたのだ……」
……そう、確信めいた力強い言葉を。
ああ、そうだ。いくらオレが情報の隠蔽に苦心しようとも、パートナーがその方針に
従ってくれなくては全くの無意味なんですね。そしてこの少女がそんな協力をしてくれる
なんて無根拠に信頼しても確実に裏切られると言う事こそ長年の経験から導き出した信頼の
置ける唯一の情報だったんですよね。
暗雲の切れ間から差し込む陽の光は一転して輝ける太陽を厚く重く覆う不吉な雲という
ネガティブな立場に切り替わり、その今にも雨の雫が零れ落ちそうな不安定な空はまさに
オレという存在を体言しているかのように思えた。……ホントに勘弁して下さい……。
「過ぎてしまった事は仕方あるまい。グゥたちも戻る仕度をするぞ」
「はーい……」
言いながら、海から上がったグゥはいつの間にかきっちりパンツを穿いていた。
そしてパンツからすらりと伸びる脚もしっかりと小麦色に焼けていた。
そこは日焼けローション塗ってすらいねえ。なんて、とてもじゃないが突っ込む事など出来なかった。
突っ込むだけ無駄、なんて理由じゃない。グゥの今の姿に、単純に言葉を失ってしまったからだ。
こんがりと健康的に焼けた身体に真っ白な水着が眩しい。新鮮と言うよりも、全く別の魅力を放出して
いると言うかなんと言うかもう、嫌でも如何わしい事に想いを馳せてしまいそうな悩ましさがあった。
……ロバートの事も、日焼けの事も、すっかり頭から消えてしまった。やっぱ男って単純だ……。
まぁ、確かに過ぎてしまった事を悔やんでも仕方は無い。しかし一つだけ、重大な問題を解決する必要がある。
さっき発散したばかりだと言うのに、またアレな事になってしまっているオレのアレをどうにかしなくては
海から上がる事が出来ない。とにかく、オレもさっさとズボンを穿かねば。
……えっと。ズボンはどこかな。
…………えっと。トランクスも……。
「……グゥ?」
「どうした、早くしろ」
「いやその。オレのズボンが、どこにも……」
「…………ふむ。流されてしまったのかもしれんな」
「……は」
「砂に埋まったのかもしれんが……どちらにしろ今から探すのは無理だろう」
「……はは」
「安心しろ。グゥのを貸してやろう」
「……はは、はははははは…………」
今、完全にオレの精神とソウルリンクを果たした曇天の空は、枯れ果てたオレの心を潤さんばかりに、
そしてオレの代わりに涙を流してくれているかのようにぽつりぽつりと大粒の雫をもたらした。
あっという間に土砂降りに見舞われた海岸をパレオ一丁の姿で走るオレの心に虹がかかる日は
来るのだろうか。
母さんたちのいた所まで戻ると、ロバートが一人手を振り待っていてくれた。
急いで他のみんなが待つ車へと駆け込む。
車の中はびしょ濡れで、みんな水着のままバスタオルを羽織っていた。
「下に穿いていた物を全て無くした」と言うオレに一同は生暖かい眼差しを投げかけてくれた。
泣きたかった。
大きな一枚のタオルに包まれるオレとグゥに対しても終始、似たような目線を送られたが
それは不思議と気にならなかった。
雨は帰る途中ですぐに止んだ。通り雨だったようだ。
雲の切れ間に虹を見た。
タオルの中でグゥと手を繋いで見る、晴れた空に掛かる大きな虹。
その光景は何故か、とても温かなものに思えた。
<<7>>
「それにしてもほんと、よく焼けたわね~」
あれだけ燦々と輝いていた太陽も今は地平線の向こうに身を潜め、代わりに現れた
弓のように細い月が今は地表を淡く照らしている。
長い長いテーブルに過剰な程に並ぶ豪勢な夕食を隔てた向かいの席で、母さんが
嬉しそうに声を上げた。
「特にロバート! え、ちょっ、アンタ何があったの!? 声まで変わって!! ……って感じ!!」
拳を握り、鼻息荒くきゃっきゃとはしゃぐ母さんに、ロバートはオレの後ろで
恥ずかしそうに頭をかく。ちなみに声までは変わってないからね。
確かに、ロバートの焼け具合はある意味異常だ。保険医と並ぶくらい血色の悪かった
あのロバートが、ジャングルで暮らすオレや母さんよりもずっと濃く焼けている。
たった一日でここまでなるものなのか。今後、ロバートの体調に何か深刻な変化が
起こらないか微妙に不安だ。
「きっとあれよ、ロバートは日焼けの才能があったのよ!」
なんだそのレアな才は。そら人それぞれかもしれんが、もうちょっと真剣に考えてやれよ。
しかしまあ、本人は今のところいたって元気そうだし、その様子からも不安な要素は見当たらない。
今具体的に深刻な状況に陥っているアシオに比べたら、十分健康体と言っていいだろう。
「……大丈夫なの? 別に部屋で休んでていいのよ?」
「いえ、平気ですから、心配せんとって下さい」
かすれた声でそう返し、アシオは震える手で母さんのグラスにワインを注ぐ。いつものツナギ姿とは
打って変わった、ウェイターのようなスーツ姿がやけに様になっている。
袖口から先やきっちり第一ボタンまで留めた襟元から上。その肌の見える部分は全て痛々しく
真っ赤に焼けていた。アシオはさしずめ、日焼けの才能が無かったって所か。
「そうですわ、お嬢様。このくらいの事で弱音を吐いては、このお屋敷に勤める資格は御座いませんから、ねッ」
「おごほぉぉぉッッ!!」
言いながら、ベルがアシオの背中を思い切りひっぱたいた。破裂音、と言うよりも鈍器で殴ったような
重々しい音が食堂に響く。
アシオは背中を思い切り弓なりに反らせ、たたらを踏む。転倒までには至らずなんとか体勢を
持ち直したが、背中を向けたまま肩で大きく深呼吸を繰り返していた。きっと、泣いてるのだろう。
「まったく、大の男が情けない……。少しは私を見習いなさい」
そう言って髪をさらりとかき上げたベルの顔や手足はこれぞ日焼けの見本とばかりに健康的な
小麦色の肌に焼けていた。ある種、一番才能があったのはベルなのかもしれない。
「あーあ、可愛そ。誰かさんのワガママにつき合わされちゃって、ほんと可愛そ~」
「…………あらあら、ウェダったら。それは誰の事かしらね?」
「……自覚が無い所が、性質が悪いわよねえ。ねぇ、母様もそう思うでしょ?」
「そうねえ。日焼けしよう、なんて最初に誰が言い出したのか、自覚が無いなんて困ったものよねえ」
「えぇえぇ、誰かさんが勝手に付いて来さえしなければ、こんな事には……ねえ?」
「それを言うなら、そもそもの原因は海水浴の立案者、よね。ほぉんと、誰かしら?」
「あらあら~。それって、イジメッコよりもイジメッコが通う学校を建てた人が悪い、みたいな
言い草ね~。さっすが、偉い人は言う事が違うわ~」
「…………ちょっと。さっきから母親に対してなんですか、その口の利き方は!!」
「今はそんな話をしてるんじゃないでしょ! 自分の非を認めたくないからって話を逸らすなんて
卑劣よ、ヒレツ!!」
「あなたって子は……! だいたい、あなたが嫌味ったらしい言い方をするから!! そりゃあ
私だって悪いって思ってるわよ? でも何、その言い方は! だいたいあなたに責められる事じゃあ
無いでしょう!? アシオにはちゃんと謝ったのよ? これ以上何が必要だっていうの!?」
「解ってないわねぇ!! アシオを休ませてあげてって言ってるの!!」
「言ったわよ! でもアシオが聞かないんだからしょうがないでしょう!!」
「命令でもなんでもいいから休ませなさいよ!! 気が利かないわねー!!」
「私はアシオの意思を尊重しているのよ!! 無理に休ませたらそれこそ彼を傷つける事に
なるかもしれないでしょう!!」
「そりゃあお優しい事で! その殊勝な気持ちをもーちょっと早くアシオに見せてあげられなかった
ものかしらね!?」
「あれはアシオにも楽しんでもらおうと思って……本気で嫌がっていたら私だってそこまで
無理にするつもりはなかったのよ!?」
「これだから……使用人が母様に逆らえるわけ無いでしょう!? なんでそれが解んないかなー!」
「そ、そんな、逆らえないだなんて大げさよ! 私は普段、使用人にそんなに厳しく当たった覚えは
ありません!!」
「ほら出た、自覚が無いのよねーホンット!」
「え、え、え? ね、ねえアシオ? ベル? 私はそんなこと、しないわよね?」
「え!? え、ええ! それはもう、普段はとてもお優しい方ですとも、奥様!」
「そ、そやそや! 俺がここにいられるのも、奥さんのおかげやし。いくら感謝してもし足りんくらいですわ」
「ほ、ほら見なさい。私がいつもどれだけベルやアシオに心を砕いているか、あなたは知らないでしょう」
「ふぅ~ん。ま、普段はそうでしょうね。普段は」
「な、なによ、その持って回った言い方は……」
「母様、スイッチ入っちゃったら目の色がお変わりになられるものねぇ」
「な、何の事ですか? 言いたい事があるならもっとハッキリと……」
「おおおおお奥さん、お嬢さん!! 俺ならホント、大丈夫ですから!! オレのためにそんな、
お二人が喧嘩するなんてやめてくださいよ!」
「アシオ……いいの、ホントに?」
「そうですよ、アシオに何かあれば、あなたのご両親になんと言っていいか……」
「そんな、大袈裟ですよ。全然、平気ですって! ね、先輩! 他になんかやる事あったら遠慮せんと
じゃんじゃん言ってくださいよ!」
「え…ええ。勿論、そのつもりよ。……でも今の所、ここにはあなたの仕事はもう無いわね」
「そ、そんな先輩まで……」
「勘違いするんじゃないわよ。あなたにはこの後の準備をしてもらいます」
「……! 例のアレ、ですか?」
「あなたも、楽しみにしていたのでしょう? 今夜のメインイベントなんだから、気合入れて
手筈を整えなさい」
「はい、先輩! それじゃ、奥さん、お嬢さん、坊ちゃん、グゥさん。俺はここで失礼させて
もらいます!」
そう言って、アシオは意気揚々と部屋から退散した。皆がそれを見送る中、ベルが腰に手を当て
皆に聞こえないように小さく溜息を吐いた。
……しっかし、一旦始まったらホント、はた迷惑だなこの親子は。
アシオが割って入らなかったらどこまで発展してた事か。情けないが、オレはただ黙って
見守る事しか出来なかった。
当の本人たちは、あれだけ騒いだ後だと言うのに、今は涼しい顔で並んで食事を再開している。
喧嘩するのはいいのだが、人を巻き込むなと言いたい。ロバートなどは完全に気配を絶ち
空気と同化していた。己のスキルを最大限活かした処世術、お見事と言っていいのだろうか。
それにしても、さっきのベルとアシオの会話は聞き捨てならないものがあった。
例のアレ、だとかメインイベントだとか、かなり不穏な空気を感じるぞ。
「ねえベル?」
「はい、何で御座いましょうハレ様」
ベルはオレが呼ぶとすぐさま笑顔を見せ、素早く足音も立てずにオレの隣にやってくる。
プロの動きだ。ってそれは今はどうでもいい。
「あの、何? 今夜のメインイベントって」
「…………」
「ベル?」
「あら、グゥ様も綺麗にお焼きになられて!」
「……へ?」
「普段の儚げな淡雪のような白妙のお肌もお美しゅう御座いましたが、健康的な小麦色もまたよくお似合いで、
素敵ですわ! 今日は新しいグゥ様の魅力をご発見なさって、宜しゅう御座いましたわね、ね! ハレ様!?」
「へ? え? あ、あの、えっと、そうだねえ……」
「ええ、本当によう御座いました。そうそう、私そろそろデザートの準備をしなくてはなりませんわ。
皆様は続けてお食事をお楽しみ下さいませ!! それでは、失礼致します!!」
一方的にまくし立て、ベルまでがこの部屋から逃げるように退散してしまった。それもまたある種、
プロの動きだった。
……一体、なんだってんだ。嫌な予感は益々オレの中で膨れ上がっていく。
「慌しいわねー。みんな疲れてるんだから、そんなにがんばんなくていいのに」
「それが仕事ですもの。ベルにもアシオにも、ウェダのその気持ちは十分、伝わっているわ。ウェダには
いっぱい、元気を貰っているのよ。あの二人も、私も」
「母様……」
いい感じに親子仲良く会話している丁度向かい側にいるはずのロバートは現在、完全にその気配を絶ち、
もはや存在すら忘れ去られている。その妙技もある種、プロのものだった。
「そうそう、グゥちゃんもホントに綺麗に焼けたわね」
いきなりこちらに話が飛んできた。
グゥも無言で目の前の皿から母さんの方に向き直る。
「どうよ、ハレ? いーでしょ。こーゆーグゥちゃんも、たまには」
「な、なんでオレに振るんだよ?」
「だって、ねえ。グゥちゃんはハレのために焼いたのよぉ?」
母さんはニヤニヤと歯を見せて笑い、オレとオレの隣に座るグゥを見比べる。
グゥは少し椅子を引き、慎ましやかにひざの上で手を揃え、何か言いたげにちらりとオレに
目を向けた。
確かに、グゥもベルと同じくらい綺麗な小麦色に焼けている。白いワンピースから見える
褐色の肌にはことさら強調されるまでも無く、とっくにオレの目は釘付けになっている。
これが健康的な色気と言うやつだろうか。……それをグゥから感じる事になろうとは。
胸元が開いてない今の服装では、水着の跡は見えない。ただ胸元から首筋に伸びる二本と、
大きく開いた背中を横断する一本の、細く残った白い線だけは確認できるがその程度だ。
だけど、それだけでも何故か少しきゅんときてしまう単純なオレの心。他の部分も、見せて
貰えるのだろうか。なんて邪な考えに軽く自己嫌悪を覚えるが、しっかり期待してしまっている
自分を偽る事も出来ず。情けないやら、いっそ逞しいやら。
「どう、かな……ハレ」
「……ん、うん。かわいいよ、グゥ」
どこか不安げにこちらを見詰めるグゥに、オレは正直に感想を述べた。
「かっ……それは、感想として正しいのか?」
「え!? や、いや、あれ?」
……しまった、また自爆してしまった。
二人して顔を真っ赤に俯くグゥとオレを前に、母さんは後ろを向いて笑いを堪えている。
おばあちゃんも頬に手を当て微笑ましげにご鑑賞なさっておられる。くそう、見世物の気分だ……。
「ったくもー、まっすぐなんだから。こっちが恥ずいわよ」
こっちも十分恥ずかしいんですがね。茶化すのはもう止めにして頂きたい。
「ご馳走様!! ほら、いくぞグゥ」
これ以上オモチャにされては叶わない。急いで夕食を平らげ、グゥを椅子から引っ張り下ろす。
「あら、デザート来るわよ?」
「いらないよっ」
「ふぅん、一人でグゥちゃん鑑賞会?」
「あーのーねー!! もう、そーゆーんじゃないってのー!」
「ああ、そうだったわね。グゥちゃんだったらなんでもいいんだもんね、ハレは」
「もー!! 知らないよ、もう!!」
「あらら、牛さんになっちゃった」
「ウェダ、いい加減になさい。あまり男女の仲に割り込むものじゃあないわよ」
「いいでしょ、これくらい。息子の恋路は気になるものよ、母としては」
「ウェダだって、クライヴ先生の事はなかなか教えてくれなかったじゃないの」
「な、なんでそこでその話が出てくんのよぉ!」
「私だって、母なのよ? どれだけ心配したか……」
「もう、何よいきなり、もー!!」
「あら、ウェダも牛さんになっちゃったわね」
「もぉ!」
ぷりぷりと頬を膨らませて狼狽する母さんから一瞬、こちらに目を切り、おばあちゃんが
ぱちんとウィンクをくれた。
助けてくれたのだろうか。あまり深く考えている暇も無い。オレはおばあちゃんに小さく
頭を下げ、グゥの手を引きこっそりと部屋から抜け出した。
しかし……ううん、やっぱりおばあちゃんって、よく解らない人だ。
「なあグゥ。おばあちゃんって、ホントはどんな人なんだろ」
「んー?」
廊下を歩きながら、グゥに話しかける。
「最初会った時はさ? 上品で清楚で、お金持ちの奥様ーって感じでさ。それに泣き顔ばっか
見てたせいもあるかもだけど……なんか、今のおばあちゃん見てたらアレは何だったんだって
思えてくんだよなー。イメージ違いすぎって言うかさー」
「ふむ。そうは言うが、ウェダと再会してからの祖母はいつもあんな感じではないか。それ以前の
祖母の姿なぞ、一日二日見た程度だろう?」
「……まあね」
確かに、オレの中のおばあちゃんのイメージが変わりはじめたのは、母さんと仲直りしてからだ。
それ以前の姿なんて、グゥの言うとおり短い間だけしかオレは知らない。でも、あのお淑やかで
どこか寂しげなおばあちゃんの印象がオレの中で大きいせいか、どうにも納得がいかないのだ。
「祖母とてハレとは初対面だったわけだしな。猫を被っていたのではないか? ……グゥのように」
「ああ、なるほどね。最後の一言で思いっきり納得しそうになった自分が哀しいわ……」
母さんといきなり取っ組み合いの喧嘩をはじめたり、夜中に眠れないオレに怪談話を聞かせたり……。
あれが本性なのだとしたら、もしかしたら母さんよりも手強い性格なのかもしれないな……。
「いえ、やはり奥様は随分と変わられましたよ!」
「おわぁっ!?」
突然、にゅっと後ろから現れた黒い影に思わず飛び上がった。
「な、なんですかいきなり……驚かさないで下さいよ」
「驚いたのはこっちじゃ! どっから現れたのさロバート!!」
心臓を押さえ肩で息をするオレを何故か訝しげな目で見詰める男……ロバートは
オレの言葉にますます眉をひそめる。
「あの、ずっと後ろから付いていってたんですが……」
「……いやぁ、全く気付かなかったよ?」
部屋を出る時も出てからも気配を絶ちっぱなしだったのだろう。髪も肌もスーツも黒いせいで余計に
存在感が消えている。
「ロバート、日焼けが治るまではスーツはもっと明るい色にした方がいいと思うよ……」
「は、はぁ……解りました……」
頭をかき、肩を落とすロバート。少し気の毒にも思うが、この姿で物陰に潜まれでもしたら本気で怖い。
ここはお屋敷の平和のためにも本人に努力してもらおう。
「……で、さっきの話の続きだけど、おばあちゃんが何って?」
「ああ、えっと、はい。ウェダ様と再会する以前の奥様は、今のように……何と言うか、明るい姿を
お見せになることは殆どありませんでした」
「やっぱりそうだったんだ……」
「俺たち使用人には努めて平静に振舞っておられましたけど、時折、ふっと哀しげなお顔をお見せになる時が
ありまして。……その原因は、勿論我々も知っていました。でも、こればかりはどうする事も出来ませんから。
ベルさんも、いつも悩まれていましたよ……」
当時を思い出すように、顔を伏せて鼻をすする。オレにはとてもその様子を想像する事は出来ないけれど、
十一年と言う歳月の長さをロバートの表情は十全に物語っているように思えた。
「あんなにお元気な奥様を見るのは、俺ははじめてです。これもきっと、ウェダさんのおかげだと思います」
パッと持ち上げたロバートの顔はまるで憑き物が取れたかのように晴れやかで、まるで自分の事のように
誇らしげで、本当に嬉しそうだった。
『───ウェダにはいっぱい、元気を貰っているのよ』
食堂で聞いた、おばあちゃんの言葉を思い出す。ロバートたちも、皆きっとおばあちゃんと同じ想いで
いるのだろう。
そう言えば、いつか母さんが言っていた。ベルもアシオもロバートも、みんな、家族だって。
臆面も無く、当たり前のようにそんな事が言える母さんだから、みんなも、あのおばあちゃんも素直に
自分を出せるのかもしれないな。
「そうですわ! お嬢様はこのお屋敷の太陽なのです!!!」
「おわぁぁぁッッ!!」
どこから湧いて出たのか、突然現れた人影にまた飛び上がった。このお屋敷の人間はどうしてこう
みな同じような行動を取るのか。
「べ、ベル!? どうしたの、こんなトコで?」
「11年……それはもう長い長い、筆舌に尽くし難い程の風霜で御座いました。奥様はその日々をどのような
想いで耐えておられた事か……」
ベルはオレの声が聞こえていないかのように……実際、聞こえていないのだろうが……ぽろぽろと零れる涙を
スカーフで拭い、ぐすっと鼻をすすった。
「幼き頃の蒲柳のお姿、今もつい先日の事のように思い出せますわ。そのお嬢様があんなにも溌剌とした姿を
お見せになられて……。こんな事を、私などが口に出しすべき言葉ではない事は重々承知致しております。
でも、少し……ほんの少しだけ思う時があるので御座います。お嬢様はこの家をお出でになられて、良かった
のではないかと。この11年間があったからこそ、お嬢様はお変わりになられた。奥様との確執も晴れ、今は
あのように遠慮の無い会話をなされて……。私は、このような時が来る事を何よりも望んでいた気がするので
御座います……ッッ!!」
いよいよ溢れ出す涙を隠すようにスカーフで顔を覆い、目を押さえぐいと拭う。ついでにブフーと鼻をかみ、
流れるように優雅な動きでスカーフを折り畳み当たり前のようにロバートの胸ポケットに仕舞った。
ロバートは文句を言う事も突っ込みを入れるタイミングも見失い、ただその身を凍りつかせていた。
この遠慮の無さは家族の間のそれとはまた別種のような気がするが、あえてオレも突っ込むまい。
「申し訳ありません……少々、取り乱してしまいました」
「いやあ、普段から多々取り乱してるとこ見てるし、気にしてないよ?」
まだグスグスと鼻をすすりながらも、深々と頭を下げる。ようやく落ち着きを取り戻したようだ。
「お嬢様と再会してから、奥様は本当に笑顔がお増えになられました。いいえ、笑顔だけでは御座いません。
あのように感情を露にされる事は、お嬢様がこのお屋敷におられた頃ですら稀だったので御座いますから。
お嬢様と同じように、奥様もお変わりになられておられるのですわ」
改めて、母さんの影響力を思い知らされる。オレにとっては、ただのワガママでだらしないダメ人間としか
思えないのだが、そのワガママでだらしない所を隠さずさらけ出せる所にみんな惹かれていくのかもしれない。
そのワガママに四六時中付き合わされる身としては、あまり喜べないのだが。
「ハレ様のことも、奥様は本当に喜んでおられましたよ」
「え、お、オレ? なんでさ?」
「お嬢様のお腹の子の事も、ずっと奥様はお気になされておられましたから。ですがハレ様のお姿を見て、
本当に安心なさったようで御座いますよ」
……そうか。母さんがこの家を勘当された原因は、オレが出来ちゃったからなんだよな。
オレもその事で随分悩んだけど、おばあちゃんは喜んでくれていたんだ。
「こんなに優しくて可愛らしい男の子に育ってくれているなんて、きっとお屋敷ではこうは育たなかったろう、と
いつも仰っておられますのよ」
「そ、そんな……ちょっと大袈裟だってそれは~」
顔がみるみる熱くなっていく。面と向かってそんな事を言われると、さすがに恥ずかしすぎる。
「ハレ様を、大事なお友達のみんなに紹介してあげたい。とも、いつも仰っておられますわ」
「と、友達?」
おばあちゃんの友達、って、みんな大人だよな、多分。もしかして、お金持ちにありがちな
社交界とかパーティーとか、そう言うやつだろうか。ちょっと堅苦しそうで、気乗りはしないけど。
「えぇ。奥様はそれはもう、大のお人形好きで御座いまして。特に気に入っておられるのがメリーちゃん……」
「───うぇえええええいやああああああああああああ!!!」
瞬時に、おばあちゃんに聞かされたあの物凄く嫌な話が脳裏を高速で駆け抜ける。
二度と思い出したく無かったのに……今夜も安眠できるか心配になってきた……。
「ど、どうなさいました、ハレ様?」
「い、いえいえいえ、なんでもないですよ……。そ、それよりさ、どうしたのベル? 食堂の方はもういいの?」
げふげふと咳き込みながら、なんとか別の話題を探す。放っておいたらベルからもメリーちゃん絡みの
ヤバイ逸話を聞かされかねない。
「奥様とお嬢様には、他の使用人を当たらせておりますわ。私はお嬢様のお使いで御座います」
「お使い?」
「はい。今夜はちょっとしたイベントが御座いますので、早めに汗をお流しになられますよう、お願い致しますわ。
グゥ様、お嬢様が日焼け跡を早く見たいと仰っておいでですわよ」
言いながら、ベルはにこりとグゥに微笑を向ける。グゥは何故かオレの方をちらりと見てから小さく頷いた。
「私も呼ばれたので御座いますのよ……ああ、お嬢様に私の恥ずかしい日焼け跡をじっくり、たっぷり、
舐り上げるように目で犯されるので御座いますわねーーーー!!!!!!!!!」
お屋敷中に響き渡らんばかりの絶叫と共に、長い廊下の先の先まで槍のように一直線に飛んでいく鼻血。
アレに当たったら冗談抜きで貫通するんじゃないか。いらん想像をして心が冷えた。
「それでは、私も入浴の準備を致しますのでこれで失礼させて頂きますわ。ハレ様、ご入浴がお済みになられましたら
3階の談話室にお越し下さいませ」
それだけを言うと、ベルはしずしずとその場を去った。その姿が廊下の先に消える頃にやっと、
イベントってのは結局何なのか、聞きそびれてしまったことに気が付いた。
「ねえロバート。イベントこと、聞いてる?」
「いえ……すいません、俺もよく知らないんですよ」
申し訳無さそうに頭を垂れるその様子からは、嘘や誤魔化しといった雰囲気は感じられない。
きっと本当に知らないのだろう。海での件もそうだが、ベルやアシオが企んでいる事は何故か
ロバートに伝わっていない事が多い気がする。信用されていないワケじゃあないのだろうが、
ロバートは隠し事が出来ない性格だ。その辺を考慮してロバートには知らせていないのだろう。
「まあ、いいや。ところで談話室って、どこにあるの?」
「はい、それなら解ります。中央の大階段がありますよね。踊り場から二股になっていますが
右の階段を上ってですね、3階のプレートの右手を……」
「ちょ、ごめん、さっぱりわかんないから一緒に行ってくれないかな?」
「あ、はい勿論それは構いませんが……」
ロバートはどこかバツが悪そうに鼻頭をかくと、視線をグゥとオレの間で何度か往復させ
おもむろにオレの傍に寄り、ヒソヒソと耳打ちをしてきた。
「あの、オレ、お邪魔じゃないでしょうか?」
「え、な、なんで?」
つられてオレもひそひそ声で返す。
「いえその、ハレ様、グゥさんと一旦部屋に戻るんですよね? 部屋の前に俺が待機していたら、
落ち着かないのでは、と」
「…………」
どうやらロバートは物凄く下世話な気遣いをしてくれているようだ。いや、ありがたいですけどね。
しかし、もはやどうにもこの問題は言い逃れの出来ない所まで来ているようだ。明日が怖いなあ。
「じゃあさ、ロバートも一緒にお風呂入ろうよ。先にそこで待っててくれたらいいからさ。
上がったら一緒に談話室に行こ」
「……は、はい、俺は全然、それで問題ないです! それでは、早速!」
言うが早いか、ロバートは早足で廊下を駆けて行った。
騒がしい人々がいなくなり、真っ直ぐな廊下を突然静寂が襲う。一人きりだったら、自分の部屋まで
思わず駆け出していたかもしれない。
無言で少し手を横に伸ばす。すぐに、掌がきゅ、と温かな圧迫感に包まれた。
「いこっか」
「ん……」
オレからも手を握り返し、静かに歩き出す。部屋に戻るまでの間、一言も声を漏らす事は無かったけど、
何よりも楽しい会話を交わしているようにオレの心は柔らかい熱を感じていた。
****[[戻る<<>070901_5]] [6] [[>>進む>070901_7]]
2007-09-13T01:37:30+09:00
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https://w.atwiki.jp/hgpink/pages/102.html
****小麦色の白雪姫_5(二:248-260)
<<6>>
「……では、早速やってもらおうか」
肩越しに流し目を送り、グゥは腕をしなやかに横に伸ばし、ローションを手首から肩まで
見せ付けるように真っ直ぐに垂らす。
「知らないぞ、どうなっても……」
オレは小さく深呼吸し、目の前に差し出されたグゥの腕に静かに触れた。
ローションの筋に沿って、両手で腕を包むように丁寧に塗り込めていく。
いつもの感触。ローションのせいで肌の触り心地はいつもと違ったが、何故か安心できた。
次いで、反対の手も同じように満遍なく塗る。ここまでは、滞りなく速やかに仕事は済んだ。
……問題は、ここからだ。
「……次は、ここだな」
そう言うと、グゥは鎖骨の上にローションを横一線に引いた。身体のラインに沿ってトロトロと、
何本もの線がお腹の下まで垂れていく。
コクンと喉が鳴る。その様子を肩越しに見るだけで、下半身に熱い血が集まるのが解った。
「……やるぞ、いいんだな?」
「早くしろ。ローションが流れるだろ」
オレの言葉に間を空けず平坦に、早口で答える。心なしかその声は無感情に過ぎるように思えた。
グゥも少しは緊張しているのかもしれない。
後ろから腰を抱くようにお腹に手を添える。どう触っていいのか解らず、牽制のつもりでそっと
指先でわき腹をなぞった。
「ひゃわわぅぅっ!?」
「───ぐホッ!!」
……瞬間、腹に、肘鉄が入った。眉をピクピクと吊り上げ口を尖らせたグゥと肩越しに目が合う。
「わざとやってるだろ……」
……すんません。
今度はしっかりと手を密着させ、円を描くようにお腹を揉み込む。肉を持ち上げるように
下から上に撫で上げ、おへそにも指を通すとグゥの引き結ばれた口元から「ぅんッ」と引きつった
声が漏れ、ピクンと肩が揺れた。
もう一度、下から上へ指を屈伸させるようにおへそをこねくる。
「んっ、ふぁ、あ……ッ」
ちゅぷちゅぷと粘着質な水音に、グゥの吐息交じりのくぐもった声が混ざり、耳に心地良い。
「───ごぶッ! ボほッ!!」
……左右のわき腹に高速で肘のワンツーが入った。またグゥと肩越しに目が合う。
「遊ぶな、馬鹿」
……すんません。
しかしその目は先ほどと違ってどこか弱々しく、頬も少し上気している。その声も、悪戯っ子を
嗜めるような、拗ねたような甘い色が含まれているように聞こえた。
もっと苛めたい衝動に駆られるが、後が怖いのでやめておこう。おへその上を通り、わき腹に手を回す。
しっかりとした肉付きの中に肋骨の波の感触が僅かに触れる。優しく撫で上げるとグゥはくすぐったそうに
身をよじり、身体を小刻みに震わせていた。だけどここは心を鬼にして丁寧に塗らねば。説明にも「ムラなく
塗れ」と書いてあったし。
ゆっくり、きっちりわき腹にローションを塗りたくる。グゥは水平に持ち上げた腕を捻り、
耐えるように拳をぎゅっと握っていた。
ようやくそこから手を離すとグゥは肩の力がみるみる抜け、はぁぁ、と大きな溜息を吐く。
「……ハレ、背中の時も思ったが、なんか慣れてないか?」
「へ?」
「なんと言うか……ハレに触られているとぼうっとしてくる」
グゥはカクンと力無く頭を斜めに倒し、のぼせたように赤くした顔をこちらに向けた。
その目はとろんと蕩け、息も少し上がっている。
「母さんにいつもマッサージさせられてたから……それでじゃないかな」
「ふぅん……」
「……もしかして、気持ち良い、とか?」
「バカ」
目を細め恥ずかしそうにそれだけを言うと、また前に向き直った。
そんな態度を取られると、こちらとしても非常に困るのだが……。既に下半身に灯った熱は
臨界点を超え、ズボンの中で窮屈そうに張っているのだ。オレの手つきが怪しくなっても、それは
オレだけのせいじゃない事をご理解頂きたい。……まあ、怒っているワケでも無さそうだし、
このまま続けるとしよう。
あと上半身で塗っていない箇所は、腋の下と鎖骨の辺りと……残りは、水着の周囲だ。
ブラの紐はローションを塗りはじめる前に、キッチリと結えてある。
とりあえず、腋の下に手を挿し入れる。腕を横に伸ばしているので、そこにはくっきりと
窪みが出来ていた。
指を揃え折り込み、窪みの内側を撫でる。やはりくすぐったいのか、またグゥはふるふると震え
今度は先ほどよりも大きな声で悶えていた。その声が耳を通るたびに、下半身に切ない痛みが走る。
腋の下から背中を回り、塗り残しの無いように肩へと滑らせる。そのまま鎖骨の上を撫で、
水着のラインを指でなぞる。
もう、グゥはどこを触っても、ぅん、ん、とくぐもった声を漏らし、息を荒げ身体を震えさせていた。
それに同調するように、オレの呼吸も徐々に昂ぶっていく。
鎖骨からまた背中を通り、腋の下の水着のラインへ。水着の周辺は他の場所よりも段違いに柔らかく、
もちもちと弾力があった。なんとも心地よい感触。
柔らかな肉に埋もれた指が少し、ブラの内側へ入った瞬間、グゥが敏感にその事に感づき
ビクンと大きく身体を引きつらせた。
「おい、何してる。そこは塗る必要ないだろ、エロガッパ」
「な、なんだよ。不可抗力だろ、これくらい」
「少し許したらすぐ調子に乗りおって……まったく、男というやつは」
「聞けよこらっ! 不可抗力だっつんてんだろっ」
「んー? さっきから怪しい手つきでグゥの横乳に触りまくってるくせに、今さら言い訳か?」
思い切り得意そうに、グゥはニヤニヤとオレに嘲笑をよこす。
……こんにゃろう。確かにその通りだがその態度が無性にムカつく。
「……へー、オレ、触っちゃってた? いやあ、ごめんねえ。背中触ってるのと区別つかなくてさー」
「…………ほう」
グゥの鋭い目線が突き刺さる。
殺気めいたものを感じ、即座に自分の言動を後悔した。……オレって弱え。
「……グゥのは、そんなに無いか?」
が、グゥはすぐに表情を緩め、不安げな声で小さくそう呟いた。
殺気はとっくに消えたが、その言葉にむしろ後悔が深まる。たとえグゥみたいなヤツでも、
女の子にとってそこはデリケートな問題なのだ。
「確かに、背中と変わらぬかもな。ハレもこんな乳じゃ、つまらんよな」
「い、いやそんな事ないよッ! 大きさなんて関係ないって!!」
「慰めなどいらん……男はみな大きい方が好きなのだろう」
慌ててフォローするが、グゥは前を向き顔を伏せてしまう。
ああ、もう。突然そんな風に普通の女の子に戻られてはこちらのペースが狂う。いつもみたいに
皮肉たっぷりの百倍返しをされたほうがずっとマシだ。
「ごめん、変な事言っちゃって。背中と同じなんて、思ってないよ。グゥの言う通り、ヤラシイ事
考えながら触ってた」
「…………」
「それに大きさなんて、ホントに気にしなくていいんだからね。オレが好きなのは胸じゃなくて……グゥ、なんだからさ」
「…………」
誠心誠意、言葉を尽くす。出来るだけ素直に……かなり相当に恥ずかしいが……自分の心を吐露する。
しかしグゥはますます俯き、胸を両手でぎゅっと押さえて身を縮こまらせる。
そんなに、傷つくような事だったのか。自分の軽率さに腹が立つ。
「グゥ、オレ……」
「も、もういいっ! それ以上恥ずかしいコトばっか言うな……ッ」
更に言葉を重ねようと開いた口を、グゥの両手が塞ぐ。振り向きざまに掌底突きのように勢い良く
手を打ち付けられ、パァンと乾いた音が頭に響いた。
「まったく、冗談の通じんやつだ……。こっちのペースまで狂う」
「……っぷは! そりゃオレの台詞だ。あーゆー冗談はヤメロよなぁ。……でも、ホントごめん」
「いいって言ってるだろ。グゥは自分の身体に不満など持ってない。ハレがいいなら、いい」
「……うん」
「しかし、確かにこの手の冗談はもう止めた方がよさそうだな。その度にあんな事言われたら……」
「……言われたら?」
「…………言ったらまたハレが調子に乗るから、言わない」
そう言ってグゥはぷい、とまた前に向き直る。
……グゥ、それはもう、言ってるようなもんだと思うぞ。それでも直接言葉にして聞いてみたいと
思うのは贅沢なのだろうか。
「……もっと、触りたいか?」
「え?」
「素直に言えば、聞いてやらんでもないぞ?」
「お前、自分は言わないでオレには言わすのかよ……」
「……触りたくないのか」
「…………」
ずるい。卑怯だ。グゥのあほ。ばかやろー。……くそう。
「……触りたいです」
「うむ。人間、正直が一番だな」
がっくりとくず折れるオレの頭をグゥの手が優しく撫ぜる。生暖かい微笑みと尊大な声に包まれながら、
オレはいつか絶対お返ししてやると胸に固く誓った。
「いいか、ハレにはどう見えようと、グゥにも多少はあるのだ。それを確かめさせてやるだけだからな?」
調子に乗ったらすぐやめる、と付け足し、グゥはまた両手を横に伸ばした。
口実なのか照れ隠しなのか本気なのか。……気にして無いんじゃなかったのか、とは口に出しては
言えなかったが、とにかくオレにとってはこれで口実が出来上がったようだ。
緊張を解すように自分の手をぎゅっと握る。まだローションでヌルヌルと滑る。はじめて触るのに
正しい感触が伝わり難そうで少し残念な気がしたが、コレはコレで実に、なんというか、エッチくさい。
ローションが満遍なく行き渡るように両手を擦り合わせ、オレは静かにグゥの身体に手を伸ばした。
鳩尾の上からブラの中へ指を挿し入れ、中心から腋の下まで滑らせる。指を揃え、くにくにと
旋回するように揉み込みゆっくりと水着の中へ指を侵入させた。
ひんやりとした皮膚の内側に、熱い脈動を感じる。トクトクとグゥの鼓動が伝わる。
きめの細かい肌はローションのせいかぴたりと吸い付き、肌の上を指が通るとそこだけ内部に
みっちりと詰まったゼリーのような感触が移動し、指が通り過ぎるとまた元に戻る。
サイズは小さいのに重量感があり、柔らかく温かで、そこがしっかりと女の子である事を
こんなにも主張している。
「ぅン……ッ」
尺取虫のような動きでじわじわと指を奥へ移動させている途中、違う感触が指に触れた。
少しざらりと起伏があり、中心に小さな豆粒のようなこりっとした固いものがある。
「ふあッ! うんんッ!!」
そこに中指の腹を擦り付けると、グゥはこれまでに無いくらい身を悶えさせ、大きな嬌声を上げた。
気付けば、グゥのブラはすっかり上に持ち上がり、代わりにオレの手がその胸を包んでいた。
ぴったりと隙間無く、それでいてオレの手に余る事も無く、オレの手がそこにある事が自然であるかの
ように、綺麗に収まっている。
呼吸を抑えようと口を閉じても、鼻から荒い息が漏れる。心臓はドンドンと内側からノックされて
いるように大きく響き、頭は下半身に集まっている以外の血が全て上っているように沸騰していた。
ぐらりと地面が揺らぐ。自分の立っている場所が安定していない感覚。また倒れてしまいそうな
不安感を抱いたが、視界は意外な程クリアだった。頭の中も冷静だ。……多分。
掌を軽く揺すると、たぽたぽと胸の奥が揺れるのが解る。全体を外側に押し広げ、離すと
張りよくすぐに戻る。逆に、きゅっと内側に寄せると微妙に谷間らしきものが出来る。周囲の
肉と、おっぱいとの境界は明確にあるようだった。少し、感動。
そんな動きにもグゥは敏感に反応していた。きゅっと目を瞑り、はっはっと細かく息を吐く。
───グゥはれっきとした女の子の身体を持っている。そんな事はこうして確かめるまでもなく、
とっくに解ってた事だ。でも、だからこそ、ここで止まれるはずもない。
指の感覚を開け、少し圧迫を緩める。途端に、ぷるんと桃色の突起が指の間から飛び出した。
首の後ろをジリッと電気が走り抜ける。今、オレの目の前にグゥの上半身が全て露になっている。
さっきみたいに一瞬じゃない。しかも、それはオレの手の中に納まり指の届く場所にあるのだ
「ど、どうだ、解ったか? もう十分じゃないか?」
「……もうちょっと。まだ、ちゃんと確認してない所あるし」
「そうか……もう少しなら、辛抱してやろう」
「うん、背中には絶対に無い部分を見つけたからさ……」
「……そこに触れれば、ハッキリするのか?」
「……うん」
「ならば、この際だ。念入りに検めればよかろう」
「…………」
「早く……」
「うん……」
互いに言い訳を探すように、確認を取り合うように言葉を交わす。グゥも、解っているんだろう。
もう、お互いに戻れない所まで来ている事に。
「グゥ、腕、上げて」
「……ん」
グゥはオレの言葉に素直に頷き、ばんざいをするように高く腕を伸ばした。
完全に無防備になったその胸のサイズを確認するように、柔肉の周囲を指先でなぞり上げる。
ぷにぷにと下から持ち上げるように揉み上げ、その頂点の突起に指の腹を押し当て、全体を
揉み込む。乳首に中指の腹を当て、柔らかく押し込みこねるように指を回す。乳首の先端部分を
触れるか触れないかの所で指をかすらせる。ぷっくりと隆起してきた突起を指で摘み、きゅっと
引っ張る。ローションの滑りでぬるりと指から逃れた所をまた摘み、ローションを乳首全体に
塗り込むように何度も摘みくりくりと捻る。
「ふっ……くぁ、ちょ、ちょっと待て……こ、これも、マッサージで覚えたのか?」
「んなワケないだろ。やりたいようにやってるだけだよ」
「……天然で、コレか……もはや才能と言うより、病気……うぅんッ」
「気持ち、いいの?」
「バ、バカッ! そんな事聞くな……ッ」
「言ってよ。どう、こんなのとか、いい?」
「ふぁぁんっ! ひぁぁっ!」
乳輪を押し広げ、乳首を根元から爪の先でカリカリと掻くとグゥは大きく声を上げ涎の飛沫を飛ばした。
オレは構わずその敏感な突起を責めながら、耳元でぼそりと囁く。
「お願い、グゥの口から聞きたいんだ」
「そっ、そんな仕返しは、卑怯だぞ……」
「そんなつもりないよ。グゥが良いなら、オレも嬉しいんだ。」
「ひぁ……んんんッ! ……イイ…なんで、こんなに……イイんだッ」
「グゥ……」
グゥは脚を開いて正座するオレの股にお尻を押し付け、オレに持たれかかる。
目を固く瞑り、何かに耐えるように俯き、伸ばした腕をオレの首の後ろに巻きつけオレから
離れないように体重を預けていた。
「解んないけど、多分……オレがグゥを大好きだからじゃないかな……」
「………ふぁ、ぁぁぁ……」
途端にグゥの目がとろんと蕩け、熱を帯びはじめた。カクンとオレの肩に首をしなだれかからせ、
艶っぽい吐息を漏らす。弛緩した口端から垂れた一筋の涎が首筋を汚し、つぅ、と糸を引く。
「ぐ、グゥも、ハレの事…んむ…ちゅ、…ハレのことぉ……ッ」
オレの頬や唇に見境無く吸い付き、キスをねだる。オレからも唇を寄せ、舌を挿し入れドロドロに
唾液に塗れたグゥの舌と絡めあった。
唇を重ねながらも、胸に添えた指は忙しなく動く。胸に膨らみが出来るように乳肉を寄せ上げ、
先端でピンと尖った突起を優しく撫でる。乳肉に乳首が陥没するように押し込み、くりくりと指を
捻る。胸の上を滑るように揉みこねながらチュクチュクと往復し、指の谷間に先端をきゅ、と挟み
擦り上げる。
本能の赴くままに、それでも特にグゥの反応がいいやり方を重点的に繰り返し徹底的に乳首を
苛めた。
「なんか…変だ……ンく、…胸の、奥が…っん………ぷぁ…熱いぃ……」
発情したように小刻みに息を吐き出しながら、キスの合間に言葉を繋げる。
両方の突起を同時に摘むと、グゥはガクッと一瞬、反射運動のように頭を倒した。そのまま
きゅ、きゅ、とリズミカルに先端を揉み込むとグゥは首をぶんぶんと横に振りながらオレの手を
胸から離そうと腕を掴んでくる。が、全身の筋肉が弛緩してしまったようにその手にはまるで力が
篭っていなかった。
先ほどからグゥは脚を閉じ、もじもじとしきりに腰をくねらせている。そのため、熱く腫れ上がった
オレの分身がその柔らかなお尻に布越しに圧迫され、淡い快感とそれを解放出来ない苦しみが交互に襲い、
酷くもどかしい。
最初はオレから逃げようとしているのかと思ったが、そうではないらしい。グゥは太ももを
ピッタリと密着させ、ぐにぐにと動かし自ら股間を圧迫して刺激を得ているように見えた。
トクンと、心にまた一つ新しい熱が灯る。
オレは片手で乳首を弄ったまま、もう片方の手をすっとグゥの下半身に伸ばした。素早くお腹の上を
滑り降り、パンツの中に一息に滑り込ませる。
「ぇ……えっ! ハレッ!?」
瞬間、グゥは椅子から転げたように脚を跳ね上げた。しかしオレがグゥの上半身も下半身も
押さえているため、いくら身をよじっても逃げる事は出来ない。
そうこうしているうちにオレの両手に同時に急所を責められ、またグゥはその身から力が抜ける。
パンツの淵に溜まっていたのだろう、ローションがオレの手の間を抜け流れ込んでくる。
それのせいか、オレの手が元々ローションに塗れているせいか、グゥの女の子の部分はやけに
ヌルヌルと粘着質な感触を指に与える。まるで最初からとろとろに濡れていたようだ。
そこの形を確かめるように、指先をゆっくりと撫で付けながら徘徊する。脚の付け根をなぞり、
下腹部を触診するように慎重に触れながら移動する。そのまま真っ直ぐに下り、ようやくグゥの
最も大事な部分に指が触れた。
そこはどんな形だったか。母さんのを見てしまった時は確か、毛の奥に隠れてよく解らなかったが
ちょっとグロテスクだった記憶がある。だけど今触れているものは何と言うか、一番近いものを
挙げろと言われたら、感触で言えばグゥのほっぺだろうか。柔らかくて、じわりと奥に熱を持っていて、
ツルツルと心地いい手触り。毛もまだ生えていないようだ。
周囲の柔らかいほっぺを揉みながら、中心に指を近づけていく。中指を這わせたそこには
ただ一本の浅い谷間があるだけのように思えた。
「ひっ─────!」
……そこを撫でた瞬間、グゥの身体がビクンと弾けるように大きく跳ねた。
「そ、そこはダメだ、今は胸だけで……」
薄らと涙を浮かべ、グゥが懇願するような目で見詰める。
だけど、そんな顔で、そんな事を言われて、止まれる程の理性はオレには残っていなかった。
中指で中心の溝をなぞりながら、残りの指で柔肉を揉みこねる。自分のよく知らない場所を触るのは
少し怖い。慎重に、優しく表面を擦る。
「ホントにダメだ……ハレ…ダメ……ッ」
それだけでもグゥは身体をぶるぶると震わせ、ダメだ、ダメだ、と小さく呟きオレの腕をぎゅっと
握り締める。余程敏感な場所なのだろう。より慎重に、ゆっくりと指を動かす。
小刻みな身体の震えの波の中に混じっていた大きな波の間隔が、徐々に狭まってくる。それが
どちらの波とも付かぬ程に激しくなった時、グゥはがばっと顔を上げ大粒の涙を零す瞳でオレを見上げた。
「…………離して……ハレ……」
「─────ッ」
その瞳から感じたものは、本当の拒絶。
オレの身体から、瞬時に力が抜ける。拘束から解かれたグゥはすぐさまオレから離れ、
一目散に砂を蹴った。
……グゥが、オレから離れていく。砂の足音が、迷い無く遠のいていく。
あんなに、心に誓っていた事なのに。オレは結局、保険医の息子なんだ。
身体が動かない。もう、グゥを追う気力すらなかった。
ザバァン、と。不意に背後から大きな波音が聞こえた。その音にかき消されるように、グゥの
足音が耳に届かなくなった。ふと顔を上げる。母さんたちの元へ走り去ったならまだ姿が見えて
いるはずなのに、その方向には何も見えなかった。
次いで、先ほどからジャブジャブとけたたましく水音を立てている海の方角に目を向ける。
…………いた。
海に腰まで浸かり、遠くを見詰めている。時折ぶるっと大きく身体を揺すり、その表情は
どこか恍惚としているように見えた。
「あ゛~~~~~~~~~…間一髪……」
大きく吐き出した息のついでのように、妙な声を上げている。
……まさか。
…………まさかまさか……。
さっき、腰をくねらせていたのは別に、自身を慰めていたワケじゃなくて……。
「お、ま、え、な~~!!」
ザブザブと、着衣が濡れるのも構わず大股で波をかき分けグゥの前に立つ。
「どうした。……泣いてるのか?」
「……ッ! ねーよ!!」
慌てて海水で顔を洗う。グゥに言われてはじめて気付いた。すぐに止まったが、自分でも
何の涙なのかよく解らなかった。
「おい、今グゥの周囲はバイオハザード警報が発令中だぞ。顔を洗うなら向こうでした方が
賢明だと思うのだが……」
「……お前、やっぱりおしっこ我慢してたのかよ……」
「…………やだ、ハレったら」
頬に手をあて、思い切りわざとらしく恥ずかしがるこの奔放極まりない少女にオレは何と
言ってやればよいのか。オレの涙も後悔も反省も安堵も全て丸ごと空回りですか。
結果としてはそれで良かったけれども、なんだか素直に喜べない。
「お前、それならそうと言えよ、ちゃんとさ~」
「グゥとて、乙女じゃけえのぅ……」
どこ生まれだよアンタ。なに黄昏てんですか。
「さすがにあの場で漏らすワケにもいくまい。そもそも、ハレが悪いんだぞ? せっかく
我慢してたのに、いきなりあんな事……」
「ぅ゛……そ、それは悪かったけどさ……もっと早く言ってくれれば良かったのに」
「……そんな余裕、無かったからな。ハレがテクニシャンなのが悪い。あれは逃げられん」
「…………へぇ」
そんな事を言われても、オレには自分の腕の程なぞ解らない。しかしそんな事を言われては、
その言葉の真偽に関わらずこちらが折れるしかない。くそ……やはり納得がいかん……。
「それより、ちょっと向こうへ行ってろハレ」
言いながら、グゥはいきなりピシャピシャと水をかけてきた。
「な、なんだよいきなり。オレは気にしないって」
「そうじゃない。ぱんつを洗いたいんだ」
「……は?」
「そのまましてしまったからな。ちょっと脱いで濯ぐだけだが、今のままよりは良かろう」
……なんとも律儀な事を言う。やっぱり、グゥでもお漏らしは恥ずかしいのだろうか。
「それって、オレがここにいちゃ出来ない事?」
「……エロガッパ」
オレをジロリと睨みつけ、まだたくし上がっていたブラを素早く下ろす。
完全にセクハラ野郎扱いだ。
「あー、どーせそーですよ。もう、認めるっての!」
「……開き直ったか…じゃあ、ハレも脱げ」
「うぇぇええ!? な、なんでオレが?」
「グゥだけ見せるのは癪だからだ。それにハレばかりグゥの身体を味わいおって。不公平だぞ」
「そんな大仰な……」
「いいから、見せろ。触らせろ」
「………はぁ」
……勝てない。
それに確かに、グゥの言う通りだ。下手すれば、オレにお漏らしまで見られていたかも
しれないのだから。
オレは罪滅ぼしの意味も込めて、渋々承諾した。
「んじゃ、いくぞ……」
「ほれ、早く」
水面に浮かぶオレの影を真っ直ぐに見詰め、グゥはワクワクと上機嫌に眼を輝かせている。
オレは溜息を一つ吐くとズボンに手をかけ、勢いよくトランクスごと一息にずり下ろした。
ズボンに溜まっていた空気が抜け、海水が一気に流れ込んでくる。
広大な大海原に下半身を曝け出している。なんだか、少しの不安感と開放感が入り混じった
妙な気分になってしまう。
「……ほう」
「……なによ」
「いや、やはりここからじゃ良く解らんな、とな。……触ってもいいか?」
「もう、好きにして……」
どうせ何を言ってもグゥの思い通りにしかならんのだ。むしろ下手に口を挟むと状況が悪化しかねん。
そうなるくらいなら素直に従っておこう。……実の所、グゥに大事な所を触られてしまうと言う背徳感に
オレの胸は静かに高鳴りはじめていたのだが。
「なんだ、柔らかいな」
グゥはおもむろに人差し指と親指で、オレのものを摘み上げた。
「そりゃそうだよ。グゥが逃げたのに驚いたし、水は冷たいし。そりゃ萎えるっての」
「グゥを弄ってる時はビンビンだったのか?」
「ちったー言葉を選べ、乙女! ……ビンビンだったけどさ」
「ふむふむ」
何故かオレの答えに満足げに頷き、グゥはオレの前で屈み今度は両手で弄り出した。
掌にオレのものを乗せ、もう片方の手でぷにぷにと突いたり、先を摘んで持ち上げたり。
分身を支えている手の指先が時折、袋に触り、くすぐったくてどうしても身体が震える。
「───あダッ!?」
グゥが先端の皮を引っ張り上げた時、中の粘膜に爪の先がかすり、股間から脳天まで鋭い
痛みが貫いた。思わず腰を思い切り引き、グゥの手から離れる。
「ど、どうした?」
「いや、なんでもない大丈夫。でももうちょっと優しくして……」
「すまん……デリケートなんだな」
「周りの皮はそうでもないんだけどね。中身がさ」
「ほ、ほほう……皮と中身、ね……」
グゥは興味深げにふむふむと唸りながら、またオレの股間に手を伸ばした。
やはり片手は竿を支え、よっぽど興味がわいたのか、もう片手で皮の先端部分ばかりをくにくにと
弄る。余った皮に指の腹を擦り付け、口の部分を摘んで揉みこね、時に竿全体をすべすべと撫でる。
継続的に淡い快感を与えられ、早くもそこに血が流れ込んでいくのが解る。
分身を乗せている方の手も波の加減かゆらゆらと円を描くように動き、それも密かに快感だった。
「おぉ……?」
一度その気になれば早いもの。あっという間に硬度を増し、ピクンピクンと脈を打つように
跳ねる度に首を高くもたげ、そのサイズも肥大していく。すぐにそれはパンパンに張り詰めた
状態に変化した。余っていた皮も外側に引っ張られ、皺だらけだった先端から少しだけ赤い
粘膜部分を露出させている。
「す、凄いな……。何と言うか、ケモノだな。ハレの凶悪な本性がここに潜んでいると言うワケだな?」
「好きに解釈すりゃええ……」
やっぱり、これは恥ずかしい。グゥはやけに感心した様子で、今にも拍手の一つも飛び出さん
ばかりに興奮している。
……膨張したオレのものを見て興奮するグゥ、なんて文面を想像すると、より一層オレの分身は
堅牢なものになっていく。男って、自分で言うのもなんだが単純と言うか、馬鹿だ。
しかし、そこまで言われる程凶悪か。自分じゃ解らんが。グゥにその辺を訊ねてみた所、
「佇まいというかスタイルというか、存在が凶悪」なのだそうだ。さっぱりわからん。ただ、
サイズとか見た目とか、そーゆー話じゃあない事は確かなようだ。……どうせ、年相応ですよ。
「次はグゥだぞー」
「あ……あ、ああ。うむ。……ハレが洗うか?」
「いらんっ」
こんな時にもこいつは冗談を忘れない。ある意味サービス精神旺盛というか仕事熱心と言うか。
グゥは家で着替えでもしているようにさらりと腰に手をかけ、すました様子でするりと、物凄く
中途半端な所まで水着を下ろしてこちらをジッと睨んできた。……具体的には、オレの、ものを。
「ハレ。いいかげんそれを鎮めろ」
「は?」
「そんなにやる気満々なものをこちらに向けられては、無防備な姿になるのが怖い」
そう言って銃口でも向けられたような眼で見詰められているオレの分身は勿論バリバリの臨戦態勢を
保っている。当たり前だ。目の前で愛しの少女が下半身スッパになろうとしている最中に萎える男が
何処にいる。
「グゥがそんなカッコで目の前にいる以上、無理」
こればかりはどうしようもない。直球で伝える。
「むぅ、パンツを洗うのも命がけだな」
いや、命まではかけんでもええがな。っつうか、貞操も大丈夫だっての。
グゥはもう一度オレのものを見ると、諦めたように溜息を吐き再度パンツに手をかける。
途中まで降ろすとあとは勝手に水中を漂いながら足首まで下りていく。それを足の指で
器用に摘み、持ち上げて手に渡す。ベルに怒られそうなくらいお行儀が悪いが、目の前で
その格好で脚を広げられたオレとしては言葉もなかった。生まれて初めて海の環境汚染と
水質の浄化について真剣に考えた瞬間だった。一瞬だけだったけど。
「……なんだ、いつまでそうしているつもりだ? 貧血で死ぬぞ」
「いや、大丈夫っす」
じゃぶじゃぶとパンツを洗いながら、怪訝な眼差しでまた見詰めてくる。
なんだか、本当に心配しているような目つきだ。
「もしかして、その、発散しないと収まらないのか?」
「いやいや、ほっといたら治るから。勃つたんびにしてたら、身がもたんわ」
「……普段そんなに勃ってるのか」
「ぐっ……」
墓穴を掘ってしまった。いや、実際普段そんなに勃っているのだが。普段は特別
気にかける程の現象じゃあ無いねってくらいに勃っているのだが。
「……ちょっとした拍子にすぐ元気になるもんなの、コイツは」
「ほ……ほほぅ……男とは大変なんだな」
「それにさっきまで、グゥとあんな事してたんだから、当分収まんないよ……」
「…………ふむ」
そう、先ほどまでグゥの身体を思うように弄んでいたのだ。いくら海の水で冷やしたとしても、
身体の芯で燃え上がった熱がそんなに簡単に冷めるはずも無い。
一旦は萎えたとしても、発散するまではまたすぐにこの状態に戻るだろう。お屋敷に帰ったら
まず最初に長めにトイレに入るであろう事はほぼ確実だった。
「……お互い様、という事か」
グゥは腰に手を当て、「なるほどな」と呟くと、真っ直ぐにこちらに向かってきた。
「え……? え? え!?」
そしてオレにぴたりと寄り添い、オレのものをオレとグゥの身体で挟み込む。
次いでオレの肩に腕を回し、そのまま唇を重ねた。
驚いて何も出来ないオレのぽかんと開けた口の中に、素早く舌が滑り込んでくる。
舌を絡め、唾液を掬い取り、それをまた口内に塗り付ける。
ぷは、と唇が離れた瞬間、唇の間に引いた糸が海面にまで届き、波に融けていった。
「グゥも、身体の火照りが止まらん」
「ぐ、グゥ……」
「ハレにいろいろ弄ばれたせいだからな……」
「───うぁッ?」
グゥは片手を水面に着け、おもむろにオレのものを握り込む。
「熱いな……」
小さくそう呟くとグゥはオレのものをぐっと前に倒し、そのまま真っ直ぐに自分の下半身に突き入れた。
「ぅあ! ふあぁっ」
……グゥの中に、入ったと思った。実際には、グゥの股と閉じた太ももに挟まれた状態になっていただけ
だが、経験の無いオレにはその区別など付かず、どちらにせよオレの分身にとってそれはとんでもない
快感である事に変わりはなかった。
ひたすら柔らかく、それでいてしっかりと適度な張りを残した圧迫感。
細い隙間に無理やり挿し込んだせいで包皮が剥き下ろされ、ほとんど外気に触れた事の無い敏感な
部分が完全にその姿を露出させていた。
ゾクリと、背中に冷たいものが走る。そこは自分を慰める時にも触れた事の無い場所。最近やっと
剥け切ったばかりの、まだ乾いてもいない傷口のようなデリケートな場所。そこに触る事なんて、
お風呂でおっかなびっくり洗う時くらいのものだ。それが今、グゥの柔らかい肉に包まれている。
少しの恐怖とそれを遥かに上回る高揚感が、オレの鼓動を高めていく。
「────ンぅぅッ!!」
剥き出しの状態の亀頭が太ももに擦られ、そのあまりに強い刺激にカクンと膝が折れる。
なんとかグゥの腰を抱き身体を支えるが、少し動くたびにビクビクと痙攣してしまう。
「なるほど、ハレの弱点か。形勢逆転だな?」
グゥはニヤリと笑うと腰をゆっくりと前後させはじめた。カリの広い部分がグゥの粘液で濡れた
スリットとこね合わさり、感じた事の無い快感と痺れるような甘い痛みが同時に身体を襲う。
先端部分はその殆どを太ももに揉み潰され、竿がゆっくりとグゥの肢体に埋まる度に鈴口が
パクパクと開く。
「か…は……っ」
喉元から何かを吐き出すように声が漏れた。
地獄のような快楽と苦痛の連鎖に、頭の芯がチリチリと痺れ、思考が定まらない。
オレはすがるようにグゥの胸にしがみつき、倒れないようにするのが精一杯だった。
「もっと、よくしてやるぞ……」
「ふ、ぐぅッ!? ……ぅあ、は、ああああッッ!!」
不意に、グゥは太ももを強く閉じたままぐりぐりと捻るように脚を交差させた。
太ももの片側にカリ首を根元から引っ張られ、その柔らかい肉に食い込んだまま傘の裏側を
勢い良くズリズリと摩擦される。もう片側には逆に押し込むように圧迫され、先端部分を
押し潰されたまま強引に擦り上げられる。
更にカリの上部は蕩けるようにぬめったプニプニの餅のような感触に優しく包まれ、
混ざり合いそうな程に絡み付き、吸い付いてくる。
「やめ、やめ……ダメだよ、こん、な……ッ」
パンパンに腫れ上がった敏感な部分にあらゆる方向から異なった刺激を素早く交互に、
擦り切れんばかりに何度も何度も与えられる。自分の分身に今どんな種類の刺激が
加わっているのか、もはや判別も出来ない。
「ダメ、っは…ホントに、ダメだよぉ……うんンッ、オレこんな…死んじゃう、よぉ……ッ」
何度も息を継ぎ、震える声で訴える。呼吸をする度にとろみがかった唾液が零れ、
だらだらとグゥの胸元に糸を引いた。
身体中が茹るように熱い。特に頬と額は湯気が上がっているのではと思う程沸騰し、
薄らと目頭に溜まる涙に視界がぼやけていく。
グゥに腰を強く抱かれ、逃げる事も出来ない。オレはグゥに力なく持たれかかったまま、
その拷問にも似た愛撫が止むのをただ待つしかなかった。
「ふふふ、お返しだ。ハレも離してくれなかったろ」
グゥはそんなオレの様子を舌を舐めずりながら見下ろしていた。オレ以上にふぅふぅと
短く早く息を切らせ、酷く興奮しているように見える。
「オレは、はっ、離したろッ!」
「む、そう言えばそうだったか。……ギリギリでな」
言いながら、グゥはニヤリと笑った。
その意味深な言い回しと表情に一抹の不安を覚える。が、それに構っていられる程の
余裕も今のオレには残されていなかった。
グゥは更に激しく太ももを擦り合わせ、オレの分身を搾り込み、捏ね回す。腰を扇情的に
グラインドし、前後運動も加え、オレはいよいよその快楽に逆らえなくなっていく。
親指よりふた周りほど大きいだけのただの棒を掴まれているだけなのに、今やオレの全身は
グゥに完全に掌握されていた。
「やっ、やっ、も、や、やだ、いく、でるぅ……ッ」
鼓動が際限なく加速する。息が細切れにしか出てこない。
身体の芯に灯る熱が、一直線にオレの分身へと流れ込んでいく。尾てい骨のあたりから
竿の根元までを甘い痺れが広がり、腰が小刻みに震えだす。根元からじわじわと快楽の波が
昇りつめ、その出口へと辿り着こうとした瞬間……
ふ…、と。オレのものを締め付ける圧迫感が、消えた。
「そ、んな……」
ぼやけた視界で前を見る。グゥはオレの身体から離れ、少しずつ後ろに下がっていた。
オレの分身は今や何にも触れてはおらず、ただ波の流れに逆らうように真っ直ぐそそり
立っているだけだった。
あとほんの少し、もう一擦りでオレはその熱情を放出できていただろう。腰はまだ震え、
分身に灯った熱も高まるばかりで、甘く切ない痛みが鼓動のようにズクズクと疼く。
「グゥ、なんで……」
「……もう、出そうなのだろう? だから解放してやったのだ。……ギリギリで」
「…………ッ」
腕を組み、ニヤニヤと口端を歪め、グゥはオレから二人分ほど離れた所で足を止めた。
……先ほど感じた不安は、コレだったか。こんな復讐を企んでいたなんて、幾らなんでも
酷すぎる。
分身に灯る熱は一向に収まる気配を見せず、むしろますます充血しビクビクとその脈動を
大きくしている。
このままじゃ、波の流れから受ける刺激だけで達してしまいそうだ。ここまで来て、
それは絶対に嫌だ。自分で触るなんてのも、虚しすぎる。オレは半ば麻痺したかのように
筋肉の弛緩した脚を動かし、ゆっくりとグゥに近づいていった。
「そうだ。ここまで来い」
グゥはそんなオレの姿に満足げに微笑み、両手を大きく広げた。思い通りの行動、って所か。
だけど、それでもいい。グゥに包まれて、グゥの身体にこの欲望を発散出来るなら。
一歩ずつグゥの傍に寄る。水の抵抗だけで、本当に出してしまいそうになる。グゥの身体に
触れた瞬間、それがどの部位だったとしてもオレのものは即座に暴発してしまう事だろう。
手を伸ばし、母の所に辿り着こうとする赤ん坊のようによたよたとおぼつかない足取りで
前に進む。
そうしてようやくグゥの目の前に到着した時、グゥは前に伸ばしたオレの手をきゅっと握って
引き寄せてくれた。
「ふふ。お疲れ」
「お前なあ~。もう離さんからな、こんにゃろう」
「……うん。絶対、離さないでくれ」
「え……?」
オレの言葉に、グゥは穏やかな微笑みを返す。
一瞬、呆気に取られたオレにグゥはぐっと急接近し、
「───好きだ。大好きだぞ、ハレ」
直接、その言葉が息と共にオレの中に吹き込まれるくらいにすぐ傍で。そう小さな声で呟くと、
そっと唇を重ねた。
「…………ふっ? んっ───んんんふッ!!」
瞬間、ビクンと身体が大きく跳ね上がった。心臓が胸から飛び出したかと思った。
唇から入り込んだグゥの息吹が全身を駆け抜け、これまでにないくらいの大きな快感の
波となって一気に体外で放出された。
ドクン、ドクンと鼓動にあわせて強烈な快感が身体の芯を走り抜け、弾け飛ぶ。オレは
その最後の瞬間までグゥの唇を一瞬も離さないように、震える膝にぐっと力を込めていた。
やがて、体内に溜まっていた熱が全て外に排出され、波が収まっていく。途端に全身の
力が一気に抜け、オレはそのまま膝が抜けザパンと胸まで海に浸かった。
ハァー、ハァーと細く長い息を吐く。何が起こったのか、身体は理解していたが心では
今ひとつ納得できなかった。果たしてそんな事があるものなのか。いや、実体験した直後に
考える疑問では無いかもしれないが、しかし、俄かには信じ難い。
「どうした、ハレ?」
グゥがオレと同じように海にしゃがみ込む。突然オレがへたり込んだので驚いたのだろう、
心配そうな目でこちらを見詰めている。
「グゥ、あの、オレ……」
「……ん。脚に、ホースでぬるい水をかけられたみたいだった」
「……うん」
お互い、気恥ずかしそうに俯く。グゥもオレに何が起こったのか、一応は解っているようだ。
「我慢、出来なかったのか?」
そして何故かグゥは申し訳無さそうに、指を胸の前で弄りながらそう訪ねて来た。どうやら
グゥは、オレがグゥに辿り着く寸前で達してしまったのだと思っているらしい。
オレも最初はそうだと思ったのだが、多分違う。かといって、他の要因といえば一つしかない。
説明するのが恥ずかしすぎるのだが……ええい、ここは男らしく覚悟を決めよう。
「───多分オレ、グゥに……その、持ってかれたんだと思う」
「……え?」
「キスで、一気にキちゃったって言うか……」
「…………」
「それと、その前にグゥ、言ってくれたよね。好き、って。多分、一番の原因は……ソレ」
「…………ハレぇ……」
「い、いやまさかオレもそれでイ────っんぷ?」
照れ隠しに頭をかくオレに弾丸のようにぶつかり、グゥはオレの唇を奪う。そのまま
バランスを崩し、グゥもろとも海にドボンと沈んだ。
「────ぶはっ! お前いきなり何……」
「ハレ~~~!!」
「ぉわあっ!!」
起き上がった瞬間、海面から飛び出てきたグゥにしがみ付かれまた海中に倒れ込む。
そんな事を、グゥが落ち着きを取り戻すまでしつこく繰り返した。
****[[戻る<<>070901_4]] [5] [[>>進む>070901_6]]
2007-09-13T01:37:14+09:00
1189615034
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070901_4
https://w.atwiki.jp/hgpink/pages/101.html
****小麦色の白雪姫_4(二:224-231)
<<5>>
若干陰りは見えたものの、まだ随分と日は高い。ただ、いつ頃からか空を厚く覆いはじめた雲が
陽の光を遮る時間を徐々に伸ばし、ここに到着した時よりは随分と過ごしやすくなった。
少しだが風も出はじめ、依然水平線の向こうから立ち上るように増え続けている雲に文字通り
雲行きの怪しさを感じるが、まだ気にするほどでは無いだろう。
膝の上に乗ったグゥの頭を撫でる。肌と同じように色素の薄い毛が指の動きに合わせ
さらさらと流れ、つまみ上げようとすると液体のようにするりと指の間をすり抜けていく。
頬に流れる髪を後ろに梳き、耳にかける。普段、髪に隠れ見る事の無い部分が露になり、
とくんと心が跳ねる。何故か、見てはいけないものを見ている気分になった。
グゥはオレと同じく海の方を向き、静かに目を瞑っている。寝ているのだろうか。
いや、寝ているならむしろ目は開いているはずで……ああ、ややこしい奴だ、コイツは。
オレはあくまで自然な素振りで、優しくグゥの頬に指を添える。特にグゥからの反応は無い。
そのまま頬をくすぐるように撫でるとグゥはくぅんと喉を鳴らしオレの膝に顔をすり寄せた。
一応、起きてはいるのだろうが、抵抗の意思は見られない。
頬の上をするすると移動し、小指で耳の内側の淵をなぞる。耳たぶを親指と人差し指で柔らかく
挟み、くにくにと弾力のある感触を楽しむ。人差し指を耳の裏側に這わせ、カリカリと掻くように
動かす。そこまでしても、グゥは嫌がる様子を見せない。時折小さく、ん、ん、とくすぐったそうに
声を上げるくらいだ。
……楽しい。なんだか、長年の夢が一つ一つ叶っているような充実感。
出会って以来、誰よりも多く傍にいて、寝食を共にして来た少女。最初はこの不可思議の塊の
ような少女とどう接していいのか戸惑ったものだけど、心を通い合わせるうちに必然的に
スキンシップの頻度も増えていった。主に叩く抓る捻る揺さぶるといった方向に、だけど。
それでも、やはりいつも一緒にいるのだ。肩を抱いたり、その髪や頬に触れる事はもう
あたりまえの行為で、服の上からにしろ本来触れてはいけない部分に触れてしまった事だって
何度もある。……偶然か、意図的かは置いといて。
でも、だからこそ、解らない。あんまりにも近すぎて、逆にどこまで接してもいいのかが
解らないんだ。
例えば今触れている耳や、首筋、鎖骨なんて部分はどうか。普段なら、髪の毛を撫でるなんて
事もとてもじゃないが出来やしなかったのだ。本来、意味無く触れる事を許されない場所と、
そうでない場所。その曖昧なようで明確な境界線にオレはいつも心を悩まされていた。
グゥが寝ている間にそっと首筋を撫でてしまった次の日は一日中グゥと目を合わせる事が
出来なかったし、グゥの方からいきなり背中にしがみついて来たり、ふざけてプロレス技を
かけて来た時もオレはどうしていいか解らず、ただ「鬱陶しい」と跳ね除けるだけだった。
そんなオレが、今はグゥに思う様に触れる事ができる。これまで当たり前のように触れていた
部分も、まるで違う感触を指に伝える。幸せ。簡単に言えばコレがそうなんだろうか。今はこの
幸せを一つ一つ、丁寧に噛み締めていたいと素直に思った。
グゥの身体のラインをゆっくり追う。鎖骨の少し下、白い布で覆われている部分に目を向ける。
横になっているせいだろうか、胸元が圧迫され、その中心にはほんの少しだけ谷間が確認出来る。
そのずっと下、柔らかそうなお腹に開いた小さな窪みが可愛らしい。ここなら触ってもいいんじゃ
ないか、なんて誘惑を抑えて目線は更に下へ。……パレオが邪魔だ。盛大に邪魔だ。剥ぎ取って
やりたい。せっかくの水着だってのに、お尻の形も確認出来ないなんて……
「ハレ」
「はぅぉぉッッ!?」
突然の自分の名を呼ぶ声にビクンと、思いっきり身体が跳ねる。ついでに、思わず頓狂な声を
返してしまった。
グゥはいつの間にか仰向けになり、真っ直ぐにこちらを見上げていた。
「な、なになに、何かな?」
「……ハレは水着にならないのか?」
グゥはオレの奇態に怪訝な表情を作ったまま、オレの身体の上に目線を這わせる。
そう言えば、オレはまだ家を出る前と同じ、Tシャツに短パンと言う姿のままだった。
「ああ、オレ持って来てないから、水着」
いきなり海に行くと言われて、着の身着のまま車に乗せられたのだ。そんな用意などしている
はずも無い。アシオたちが担いでいた膨大な荷物の中にあるのだろうと高を括っていたのだが、
中身は母さんとおばあちゃん用のものが大半で、残りはビーチグッズやタオルなど共用のもの
ばかり。オレのために用意されたものなど何一つとしてありはしなかった。
「どうせ今日は泳がないしさ。別にこのままでいいよ」
泳がないと言うか、泳げないと言うか。ベルとアシオの都市伝説好きはホント、どうにか
ならんもんか……。
「ふむ。しかしせっかくの海だしな。……グゥのを貸してやろうか?」
「へ?」
そう言うとグゥはむくりと起き上がる。
今着ているもの以外の水着も、用意しているのだろうか。って、そうじゃなくて。
女用の、それもビキニのアンダーなんてものを穿かせるつもりじゃあないだろうな。
そんなもん穿けるワケが無いだろう。恥ずかしいとか、そーゆー問題じゃあ無い。
グゥが穿いたことのある、グゥの、……その部分を覆っていた布をオレが……。
そんなものを穿いたら、マトモに立つ事すら出来なくなる。いや、一部確実にタツからこそ
立てないと言うか……って、上手い事言ってる場合じゃない。
「そ、そんなの借りれないよ! いいって、グゥ!」
「遠慮するな。ほら、これを着けるがよい」
グゥはにこやかに目を細め、スッと大き目のスカーフのような布を手渡してくれた。
それはグゥが身に着けていたパレオ。その薄い布地に隠されていた部分が惜しげもなく
眼前に曝け出される。
トップスに合わせた純白のアンダー。切れ込みは浅いが普段見ることの出来ないグゥの脚の
付け根までが露になり、ぷるんと張りのあるお尻もその形をくっきりと浮かびあがらせている。
先ほどまであれ程渇望していたものが突然目の前に現れ、またオレの目は釘付けになってしまった。
「なんだ、そんなにグゥのここが気になるか?」
グゥはにやりと微笑いクイッと片脚を持ち上げた。勢いよく開かれた股間部分を一瞬、凝視して
しまい思わずブハッと肺の中の空気を全て噴出す。
「エロガッパめ」
ゲホゲホと咽るオレを見るグゥの目は実に満足げだ。こんにゃろう、どんどん調子に乗って
きやがったな。
「ん、んなことより、コレをどーしろってんだよっ」
乱れた息を無理やり整えながら、手渡されたパレオをバサッと広げる。
まさか裸の上からこれだけを腰に巻けって言うんじゃないだろうな。いや、こいつの事だから
言うんだろうけどよ。オレはどこの原住民族だ。
「ダメか?」
「ダメですなッ」
「ふむ……別にハレの粗末なものがチラ見えしてもグゥは気にせんぞ?」
「オレが気にするわ!」
口に手を当て、くすくすと笑うグゥにパレオを投げ返す。パレオはグゥの身体に力なく当たり、
そのままヒラヒラと砂浜の上に舞い落ちた。
「しかし不公平だぞ。グゥの身体は散々視姦しておいて。グゥにもハレの裸体を見せろ」
「そーゆー不穏な発言はやめてもらえませんかね……。男の身体なんか見てもつまらんだろ、だいたい」
「……ハレのなら、グゥは見たいぞ?」
「…………ッ」
背中で腕を組み、小さく微笑みを向ける。それだけで、オレはそれ以上の抵抗の意味を
見失ってしまう。……こいつ、ますますオレのうまい操縦法を覚えて来てる気がするぞ。
ああ、乗せられるオレもオレだけどさ。くそぅ。
「……これで許してもらえませんかね」
「ふむ。まあ、勘弁しといてやろう」
さすがにパレオ一丁なんて姿にはなれないが、Tシャツを脱ぐくらいなら問題ない。
グゥはトランクスも水着も大して変わらんと主張して聞かなかったが、どうにか
短パンだけは死守させてもらった。
「それにしても、あっちぃ……」
シャツを脱いだ途端、衣服に守られていた上半身に太陽光線が直接当たりジリジリと
身を焦がす。なんだか気温が数度上がったような気分だ。
「うむ、絶好の日焼け日和だな」
ビーチマットに足を投げ出して座るグゥが、側に置いた小瓶を指先で弄び出す。
「ではさっそくやってもらおうか」
そしてオレの返事も待たずにごろんと、腕を枕にうつ伏せで寝そべった。
「マジでやるんですかね……」
「合法的にグゥの身体に触るチャンスだぞ?」
「だから、自分で言うなっての」
……なんて言葉とは裏腹に、小躍りをはじめるオレの心。今となってはこんなベタな
シチュエーションがたまらなく嬉しい。日焼けローションを考案した人に表彰状の一つも
送りたい気分だ。
「背中だけで良いからな。変な気、起こすなよエロガッパ」
「うっさい。解ってるっての」
……なんて言葉とは裏腹に、軽く肩を落とすオレの心。いや、背中だけでも十分な進歩だ。
贅沢は敵だぞ、オレ。
少し力の抜けた手でローションの小瓶をつまむ。
『使用方法 □ 適量をムラなくのばしてください。
□ 上下によく振ってから、お使いください。
□ 目に入らないように十分注意してください。
□ 乳幼児の手の届かない所に保管してください』
アメには触らせないようにしなきゃな。なんて心配は今は置いといて。
瓶をよく振り、手の上に少し垂らしてみる。無色無臭の粘り気のある液体がとろりと
糸を引き、手を濡らす。なんか、ヤラシイ。
いちいち手に乗せて塗ると手間が掛かりそうだ。グゥの隣に座り、直接その背中に
ローションを垂らす。
「───っひぅ!?」
瞬間、グゥがビクンと身体を引きつらせた。次いでギロリとこちらを睨む。
「なんか言ってからやれ……」
……すんません。
気を取り直して、今度は「いくよ」と合図を送り背中の筋に沿って真っ直ぐローションを
乗せる。グゥはまだ少し身体を緊張させていたが、今度は特に文句を言う事はなかった。
ふと、背中の上を横一線に走る一本の紐に気が止まる。そう言えば、こーゆー時って
水着の紐、解くんだよな。日焼けローションを開発した人はもしかしたら天才かもしれない。
「背中の紐、解くぞ?」
勝手に解いたらまたグゥの怒りを買うのは必定。一応確認を取る。
グゥは一瞬ちらりとこちらを見やり、何も言わずすぐに前に向き直った。
了承……って事で良いんだろうか。恐る恐る紐の結び目に手を伸ばす。
蝶結びされた紐の両端をつまみ、するすると解いていく。完全に解かれた瞬間、
ふわ、とほんの少し左右に引っ張られる感覚があった。水着の締め付けから解放され、
食い込んでいた部分が元に戻ったのだろう。
その平らなボディのどこに食いこむ余地があるのやら、なんて言ったら殺されるので
言わないが、実際、食い込んでいた部分なんて数ミリ程度だろう。それでも手に伝わって
来るのは、オレの全神経がそこに集中している証拠だろうか。
これで腋から胸元に至る間に邪魔者は何もいなくなった。しかしそこはやはり哀しい程に
まっ平ら。腕を伸ばしているせいで周囲の肉もそちらに引っ張られ、マットに押し潰された
胸元の肉がそこから僅かでもはみ出すなどと言う期待感は全く無い。
まぁ、ある種期待通りではあるのだが。むしろそんなものが見えたら自分を抑えられる気がしない。
安堵なのか落胆なのか解らない溜息を漏らしつつ、オレはいよいよその背中に手を伸ばした。
肩甲骨のラインを親指でなぞり、残りの指で全体に満遍なくローションを伸ばす。
そのまま肩の曲線に沿って移動し、首筋に掌を添え、背筋を真っ直ぐに降りる。
母さんに何度もやらされたマッサージの要領で、腰を左右に揉み込むように丁寧に塗り込める。
その身体はどこを取っても柔らかく、しなやかな体躯の表面をうっすらと肉付きよく脂肪が
覆っているのが解る。なめらかな手触りの皮膚が手の動きに一瞬引っ張られ、ローションの滑りで
戻る瞬間がたまらなく心地良い。
いつまでもこうしていたい気分だが、背中から腰にかけてという狭い面積を塗り終えるのに
そう時間は掛からない。出来るだけ丁寧に、時間を掛けて塗り込めたがそれももう限界だった。
説明書に書かれていた『適量』という言葉には一応、従うべきだろう。
「グゥ、終わったよ」
肩をちょんちょんと突き、声をかける。
だけどグゥは答えず、顔を腕に埋めたまま何かに耐えているかのように
拳を強く握り締め、身を硬直させていた。
「グゥ? グゥってばッ」
「……はぁ、ふぇ?」
耳元で大きく呼びかけると、今目が覚めたかのようにぱっと顔を上げた。呆けた声を返し、
とろんした目を呆然とこちらに向ける姿は本当に寝起きのように見える。
「終わったよ、グ────ッ!?」
もう一度、グゥに同じ事を伝えようと顔を近づけた瞬間、口を塞がれた。グゥからも
勢いよく迫って来た、唇によって。
「んく、ぷぁ……。もう、終わったのか」
すぐに唇を離すとグゥは小さくそう呟き、むくりと身体を起こした。そうしてしばらく
ぼう、と中空を眺め、うわ言のように「そうか、もう終わりか」と繰り返す。
なんだかグゥの様子が変だ。まさか本当に寝惚けているんだろうか。
……ちょっと待て。今、オレの目の前でとんでもない緊急事態が起っている事に気が付いた。
背中の紐が外れたまま起き上がったせいで、水着が涎掛けのように首からぶらさがり、
ゆらゆらと揺れている。
まだ辛うじてオレの見る角度からは隠れているが、胸元からは完全に浮いている状態だ。
グゥがもう少しでも前傾したらぽろりと簡単に捲れてしまうだろう。
「ちゃんと塗ったんだろうな」
「へっ?」
突然、素に戻り目を細め睨んで来たグゥから慌てて顔を逸らす。
まだグゥは自分の状況に気付いていないようだ。
「塗り残しとか……ホントに無いのか?」
「大丈夫だって、ちゃんと塗ったよ」
塗り残しなんて、あるはずがない。むしろ必要以上にたっぷり触って……じゃなくて、
塗ってしまったくらいだ。
「……ホントにホントか?」
オレの自身満々の声にも何故かグゥは納得せず、ますます疑いの眼を向けてくる。
ぐぐ、とその顔を近づけるたびに胸元の涎掛けが怪しく揺れる。オレは出来る限り
そこを視界に入れないようにそっぽを向いたまま、とある事情により腰も引きつつ
後ずさるしか無かった。
「ホントだってのっ! こんなの、嘘ついても仕方ないだろ?」
「……じゃあ何でこっち見ないんだ」
「ぅ……」
そりゃ、見ても良いなら思う存分ご拝謁させて頂きますけどね。
……ええい、このままじゃマトモに話も出来ん。
「とにかく、オレはきちんと塗ったんだからそれ、なんとかしろよ!」
顔を背けたまま、指を突きつける。グゥは一瞬、きょとんと顔を呆けさせたが
すぐに自分の胸元に目をやり、
「……ほほう」
……まるで意に介さず、涎掛け状態の水着とオレを見比べ、口端をニヤリと歪めた。
そうだ、コイツはこーゆーやつなんだ。いやん、なんて言いながら両腕で胸を隠したり、
そんな乙女チックなリアクションなど望むべくもない。
「目にやり場に、困る?」
グゥはいつか聞いたような台詞を言いながら、胸元をくい、と逸らした。両手をついたまま、
正座を崩した姿勢でお尻をぺたんとマットにつけ、肩を竦めて覗き込むように首をもたげる。
挑発的な目線。余裕たっぷりの笑み。その顔はいつものそれよりもずっと強烈で、ある種の
オーラすら発散しているように見えた。……簡単に言えば、すっげえ楽しそう、って事だ。
「こ、困るに決まってんだろ。それでなくてもその、そんなカッコしてんだから」
「おやおや。さっきまであんなに遠慮なく見てたくせに、今さらそんな事を言うとはな」
いまだグゥから目を逸らすオレを見上げながら、にじりと詰め寄る。
「ソレとコレとは別! 見て良い場所とダメな場所は、あるだろ」
「何故それをハレが決める? グゥは別に気にせんぞ」
「母さんみたいな事言うなよ、もう」
「ウェダとは違うぞ。グゥが見せていいと思うのは、ハレだけだからな」
「…………ッ」
さらりと、当たり前のようにそんな事を口に出す。グゥの事だから、誤魔化しや
冗談じゃなく本当にそう思ってくれているんだろう。
胸がきゅんきゅんと疼く。嬉しい。ただそれだけの感情が胸の奥に広がっていく。
だけどそれに流されるワケにもいかない。まだオレにも言い分は残っているのだ。
「……オレは、やっぱりグゥをそんな目で見たくないよ。グゥを、その……だから、か、かわいいって
思うのとさ。身体が見たいとかそーゆーヤラシイ気持ちは、別だと思うんだ」
「見惚れてたくせに」
「ぅ゛……そ、それは、あんましグゥの水着姿なんて見た事無いんだから、しょうがないじゃんか。
心でも身体でも、見た事ない部分が見れたら嬉しいって思うのは自然だろー」
「ならば遠慮なく見ればよかろう」
「だから、頭ン中がそーゆー事ばっかになったら、歯止めが利かなくなるっつってんの。そんで若さに
任せて怠惰で想像力豊かな日々送ってるうちに、後々絶対後悔する瞬間がやってくるんだって!」
「……14歳の少年の心配事とはとても思えんな。どんな人生送ってきたんだ」
「お前に言われたかねーっての」
グゥは呆れた様子でオレを見るが、グゥこそどんな人生を送ったらそんな性格になるのやら。
……オレの場合は、完全に環境のせいだろう。女にだらしない父に、全面的にだらしない母。
そんな二人がオレの寝てる横で平気でイチャコラしはじめるわ、いつの間にか弟まで作るわ。
自分の出生に関してなどは、枚挙に暇が無い。そこからはじまった問題が、つい最近まで尾を
引いていたのだ。他にも、山田ひろこやらユミ先生やら、男と女が絡んでろくな結果になった例を
オレは殆ど知らない。
あらゆるパターンの反面教師を見続けてきてオレは悟った。オレは、もっと慎重に、健全に。
大切な人とゆっくり歩んでいこうと。
「……とにかくさ。今はまだ、オレはグゥと一緒にいるだけで嬉しいんだ。だからグゥも、無理に
変なコトしてくれなくていいんだからな」
「ハレ……」
それが、オレの真っ直ぐな気持ち。もう、グゥから目を逸らさない。きゅっと手を握り、
胸を張りその瞳を真正面に捕らえ、オレの想いを真っ直ぐに伝える。
グゥは目を瞑り、オレの言葉を噛み締めるようにこくんと小さく頷く。そして穏やかに
微笑みを浮かべ、自らの胸元にそっと手を添えた。
「ほれ」
「───ぶッッ!!」
次の瞬間───目から、火花が散った気がした。いや、きっと本当に散ったに違いない。
一瞬。ほんの、本当にほんの一瞬だけ水着を捲り上げ、戻す。グゥがしたのはそれだけだったが、
それだけで、オレの頭の中は真っ白になってしまった。
腋からお腹までをまっすぐに伸びるラインの途上、陰影から僅かに確認出来る二つの膨らみと、
その頂点にぽつんと色づく艶やかな桃色。その一瞬の光景が目の奥に焼きついて、瞬きする度に
残像のように浮かび上がる。
「嬉しそうな顔しおって。一緒にいるだけの時にそんな顔は見た事なかったぞ」
「……うぅ……お前な~……」
それも、オレの男としての真っ直ぐな気持ち。しかしそんなものに胸を張れるべくもなく。
グゥから目を逸らさない、と言う決意だけは守れたが、それがむしろ自分の駄目さ加減を
際立たせていると思えるのは気のせいか。
「グゥも、グゥが見た事が無いハレの姿をもっと見たいのだぞ?」
グゥはやっと年頃の女の子相応に、恥ずかしそうに頬を赤らめ水着をぎゅっと押さえる。
年頃の男の子相応に、恥ずかしそうに腰を引くオレとの対比が痛々しい。
「焦る事は無い、って話だよ。……オレだって我慢してんだからな」
「ふぅん。グゥとしては、とっくに我慢し飽きているのだがな……」
「そッ……それは、お互い様だよ……」
グゥは本当に、物怖じせずにそういう事を言う。その言葉が、どれだけオレの胸を熱くさせるか
解っているんだろうか。だけど、オレもあっさり誘惑に負けてしまうワケにはいかない。
「でも、だからこそだよ。勢いに任せたら、それこそオレ、保険医と同じになっちゃうかもだろ。
それだけは絶対ヤなんだよ」
それがオレの最後の防波堤になっていると言って過言ではあるまい。保険医みたいにはなりたくない。
この強迫観念にも似た想いさえあれば、オレは絶対に自分を見失わない自信がある。
グゥはオレの言葉に「ふむ」と小さく呻り、何事か考えるようにあごに手を当て目を細めた。
「なるほどな……」
「解って、くれた?」
「うむ。ようは、孕まなければ問題は無いワケだな?」
「いやいや極論すぎやしませんかね!? ってかグゥ的にはそれでいいの女として!?」
「む……女としてはやはり、二人は欲しいところだが。ハレのためだ、しばらく我慢するとしよう」
「そうじゃなくてええッ!!」
ああ、コイツに口で勝つのは無理なのか。明らかに意図的に話を曲解してきやがる。
「……ハレの言いたい事は解る。だがそんなに心配する程の事もあるまい」
頭を振りガリガリとかきむしるオレの様子に、グゥは優しげにくすりと笑った。
「ハレが恐れているのは、保険医のようになる事だろう。保険医のどんな所が具体的に気に入らんのだ?」
「どんなって、年端もいかぬ患者に主治医の身でありながら手を出し孕ませた挙句その後のフォローは
一切無し、母さんが勘当された事すら知らず再会した途端のうのうと関係を迫り再び妊娠させてようやく
結婚を決意。不治の女好き。浮気性。下半身に何よりも忠実。癇に障る声。ひ弱。メガネ。二本足で歩く」
「何もかもが気に食わんのだな」
「当、然、ですッ」
「しかし、概ねウェダとの関係における責任感の無さが原因であろう。ならば大丈夫じゃあないか?」
「え……?」
「ハレとグゥと、あの二人とでは状況も、立場も、何もかもが違う。確かに、ハレが女好きの血を引いている事は
疑いようも無い事実だが」
「そこは否定してくれ。頼むから」
「だがな、ハレにはグゥがいるだろう。保険医の時のウェダとは違う。いつも、傍にいるんだ」
「グ、グゥ……」
「見方を変えてみろ。あの保険医ですら、最終的にはウェダと結婚したのだぞ? その理由は何だったか覚えているか?」
「そりゃ、赤ちゃんが出来ちゃったから……」
「……違う。それもあるが、何より重要だったのは……ウェダが、傍にいたからだ。ハレの時と、違ってな」
「……ッッ!」
「安心しろ。グゥは、いつも傍にいる。ハレは大丈夫だ」
……そうだ。コイツは、虚言、悪言、妄言、弄言、言葉巧みに人をかどわかす事にかけては
とにかく右に出るもの無しだが、その実、正論を戦わせてもまったく隙が無い。そしてそれ以上に、
今のグゥから発せられる声にはオレの胸に深く染み渡る何かを持っていた。
オレの中で長い年月をかけて凝り固まった巨大な不安の塊が、グゥの言葉でゆるやかに
融けていくのが解る。
「浮気も心配していないぞ? グゥが二人産んだら、切るから」
「なななな何をですかね!?」
「ああ、竿は残しておいた方がいいか? ならば潰そう」
「いやああああああ!!!!」
ついでに、ついさっきの事で一時的に固まっていた小さな下半身の塊が、グゥの言葉で急速に
縮み上がっていくのも解った。
わきわきと何かを揉むように手を動かすグゥから、股間を押さえて後ずさる。
……頼むから、未来の展望に光を照らすか雨雲をかけるかどっちかにしてくれませんかね。
「───ハレがグゥを意識してくれる瞬間、グゥがどんな気持ちでいるか、ハレに解るか?」
そう言って、グゥはオレの頬に手を添え、ちゅっと軽く唇を交わす。
「これからも、遠慮なく愛でるがよい。グゥはそれが嬉しいんだぞ?」
「グゥ……」
……負けた。いや、最初からグゥに勝てるはずがなかったんだ。舌戦はもちろん、その笑顔に、
その眼差しにオレには逆らう力なんかありはしないのだから。
「……そう言えば、すっかり忘れていたな」
はたと、何かに気付いたように顔を上げ、グゥはくるんと背中を向けた。
「日焼けした姿を、ハレに見せねばならんからな。ハレも手伝え」
すっかり忘れていた、蓋が開きっぱなしの小瓶をつい、と指先で持ち上げる。
「え? で、でもあとは自分で塗れるだろ?」
「ほう。塗りたくなければ、グゥは別によいのだが?」
「…………」
───ああ、最終防衛ラインがみるみる後退していく。既に保険医という防波堤が瓦解した今、
このまま一直線にグゥという濁流に飲まれるリアルな予感が……いや、もはや確信と呼べる実感が、
ジワジワとオレの心を侵食していくのだった。
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2007-09-13T01:36:59+09:00
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