ハレグゥエロパロスレSS保管庫@ Wiki

070121

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hgpink

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小ネタ(一:>150-152)
母さんの実家のお屋敷の方で色々あったらしく、また都会に行く事になった。
まあそれ自体はもうどうでもいい。飛行機も、何度も乗るうちにもう慣れた。
オレの懸案事項はただ一つだ。

「今回は何もするなよ、グゥ」
「ほう……今までグゥが何かしたか?」
「したね。都会に行くたび新ネタ披露しやがって」
「グゥには身に覚えがありませんな」
「あるね。ありすぎて両手の指じゃ数え切れないね」

思えば、初めて都会に行った時は物凄く疲れた。勿論グゥの所為だ。
荷物として運ばれていった時や、機長になって機内放送を流してきた時、
スチュワーデスに扮してメニューを持ってきた時……オレの胃に次々と
新たな穴が穿たれ、神経が凄まじい勢いで磨耗していくのがわかった。
まあ、いつもの事と言えばいつもの事なのだが……。

「グゥがハレの嫌がる事をするはずがなかろう?」
「仮にお前がオレの嫌がる事をしなかったにせよ、それがオレの望む結果に
 帰着した事は一度たりともなかったわけだが」
「まあ大船に乗ったつもりでいたまえ」
(不安だ……)
「ハレ、もうすぐ飛行機に乗る時間よ?」
「向こうまで12時間か、楽しみだな」
(向こうまで12時間か……)

オレはこの時、地球の軌道なり自転なり地軸なりがどうにかなって、
都会まで30分くらいで行けるようになりはしないかと、ちょっと本気で願った。
それが実現したら実現したで、多分それはグゥの仕業なんだろうけど。
陰鬱な気持ちでチケットを改札すると、グゥがポンと肩を叩いてこう言った。

「ハレ、身の丈に合わない夢を見ていい年頃は過ぎただろう?」
「は?」
「軌道とか自転とか地軸とか、傍から見れば頭の痛い子にしか見えませんな」
「またオレのモノローグ読みやがったなお前は……」

本当に頭が痛い。

席はオレと母さんとグゥの3人並んだ席。
オレが窓際で、母さんが通路側。グゥはオレと母さんに挟まれた真ん中の席だ。
チラリとグゥの顔を窺うと、何やらいい顔をして座っている。
付き合いの長いオレにはわかる、これは間違いなく何か企んでる顔だ。
今は座っているからいいが、席を立ったら最後、何をしでかすかわからない。
ツッコミとしていつも後手後手に回るオレだが、今回は秘策を用意してある。
オレは、肘掛の縁に軽く乗せられたグゥの手を、軽く握った。

「ん?」
「? どうしたの、グゥちゃん?」
「いや、ハレがグゥの手を握ってきたのですよ」
「何でまた?」

要は、グゥがオレの目の届く範囲内にいさえすればいい。
常にオレの監視下に置かれていれば、何か余計な事を仕掛けてくることは不可能。
不可能……だよな?

「い、いや……オレの目の届くところにグゥがいないと不安なんだよ」
「あらあら、ハレってば甘えん坊ねぇ」
(母さんにはわかるまい……グゥが何かやらかさないかと常に戦々恐々としている
 オレの気持ちなど……)
「まあハレがどうしてもと言うのなら、手を握っていてやらんこともないがな」
(クッ……こいつの暴走を未然に防ぐためとは言え、すっごいムカつく……!)

何も知らないで微笑ましげな視線を向ける母さんと、したり顔で見下しきった視線を
向けるグゥに軽く殺意を覚えながら、オレはグゥの手を離さないよう努めた。

離陸後もオレはグゥの手を離さない。
オレ一人の12時間で他の乗客の安全が確保されるのなら安いもんだ。あ、今オレ軽く
正義のヒーローっぽい心境。
それにしても、グゥの手ってすべすべで、ひんやりしてて、何か気持ちいいよな……
いやいや、油断するなハレ。相手はグゥなんだから、ちょっとの油断が大きな災いを……
ああ、でも何か眠くなってきたよな。そういえば昨日は夜中の3時までゲームやってたっけ。
いやいや待て待て、ここで緊張の糸を途切れさせては――

ハッと目が覚める。
寝てたのか? 気づけば意識を失ってたけど、一体どのくらい寝てた?
腕時計を見ると、たっぷり7時間以上眠っていたらしかった。
7時間! 隣にグゥがいるにも関わらず、7時間も惰眠を貪ったのかオレは!?
慌てて隣に目を向けると、グゥがいつものあの顔でオレの顔を覗き込んでいた。

「グ、グゥ! ずっと見てたのか!?」
「うむ、緩みきったマヌケ顔でよく眠ってたぞ」
「ああ、そうかい……」

7時間も隙を見せていたんだ、何が起きていても不思議じゃない……
そう思ったが、ふと、手に変な感触を感じた。
手が熱くて、じっとり汗ばんでる。結構な時間手を握ってなきゃ、こうはならないだろう。
もしかして、グゥはオレの手を離さずにずっとこのままだったのか?
グゥはオレの考えを見透かしたかのように――どうせまたモノローグを読んだんだろうが――
こう言ってみせた。

「心配せずとも、グゥはずっとこのままだったぞ」
「は? ほ、ホントに?」
「ハレの寝顔をじっくり見物できたから、今回はまあよしとする。それに……」
「それに?」

鸚鵡返しに聞き返すオレに、グゥは意味深な視線と一緒に、こう囁いた。

「ハレに手を握られるのは、嫌じゃない」



その後。
グゥの真意を測りかねたオレが、風船から空気の抜けるようなマヌケな声を上げてグゥに
その発言の意味を問おうとして、心なしかほんのちょっぴり頬を赤らめたグゥにキツい
ボディブローを貰ったのは、まあ、取り立てて話題にするほどの事でもないだろう。

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