ハレグゥエロパロスレSS保管庫@ Wiki 070901_6

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ハレ×グゥ

ハレ×マリィ

ハレ×グゥ×マリィ

ハレ×ウェダ

ハレ×ワジ

ハレ×アルヴァ

グゥ×ウェダ

アルヴァ×グゥ

ポクテ×グゥ+α

クライヴ×ウェダ

ロバート×ウェダ

グプタ×ラヴェンナ

グプタ×ワジ

レジィ×マリィ

クライヴ×ワジ

ダマ×クライヴ

ハレとサニィ

その他

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小麦色の白雪姫_6(二:261-271)
「鼻が痛い……」
「オレは耳ん中に入った……」
 浅瀬にぐったりと膝を落とし、二人して息を切らせる。水中で暴れるのは危険だ。
特に塩水は場合によって思わぬダメージが追加されてしまう。グゥは目に涙を
浮かべながらしきりに鼻をかんでいた。オレも今日は塩分過多と診断されそうだ。
……塩水って、しょっぺえなぁ。当たり前だけど。

「……ハレ」
 ぐいと目をこすり、鼻声でオレを呼ぶ。
「その、グゥはまだ……」
 頬を染めて俯き、自らの腰を抱いて身をもじる。目だけをちらちらとオレに向け、
グゥは一瞬きゅ、と唇を結んだと思うと静かに立ち上がった。
「体が、もう、熱くて……どうしていいかわからない……」
 ゆっくりとオレに近づく。すぐ目の前にまで来たとき、オレの視界にはグゥの胸元が
いっぱいに広がっていた。
「特に、その、ここが……」
 言いながら、ブラの肩紐の根元に指をかけ、ぐぐ、と持ち上げる。
 徐々にせり上がる水着のラインに胸の肉が柔らかくついていく。胸の真ん中あたりで一瞬、
詰まったかと思うと一気に水着が鎖骨のあたりまで抜け、持ち上がっていた乳肉がぷるんと
元の位置に戻った。
 ……釘付けになった。男なら当たり前だ。グゥが今、どんな表情でオレを見ているかも解らない。
 真っ白い小さな二つの丘の頂点に、ほんのりと盛り上がる桃色の突起。その更に中心に見える
ほんの小さな窪みや根元の皺。白い肌に粟立つ鳥肌までも確認できる距離に、それがある。

「早く、さっきみたいに。じっと見られると、辛い」
 グゥは焦れたように声を上げ、胸をぐっと張る。一層に近づいたグゥの胸は、少し首を持ち上げ
舌を伸ばせば届くくらいにすぐ傍まで接近していた。
 震える手で、柔らかい丘を掴む。まだ敏感な部分には触れず、周囲の肉をくにくにと揉み込む。
二本の指で円を作るように囲み、きゅ、と搾る。ぷっくりと盛り上がった肉の中心で、小さな突起が
ふるふると揺れた。

 こくんと喉を鳴らし、突起に顔を近づける。ハァ、と熱い息をかけるとグゥはビクッと身体を
強張らせ、もどかしそうにオレの頬に手を添える。
「や、優しくな……最初は、そっとしてくれ……」
 オレは無言で小さく頷くと、その胸のサイズに合わせるように口を小さく開き、盛り上がった
乳肉全体を口に含むようにちゅぷっと咥え込み、吸い上げた。

「ハレ様~! グゥさ~ん!」

「─────~~~~~~~ッッ!!!?」
 不意に遠くから聞こえた声に心臓ごと身体が飛び跳ねた。咄嗟にグゥを引っ張り込み、
また一緒にザバンと海中に沈む。

「あれ、海で遊んでたんですか?」
「ぶはぁッ!! はぁ……ろ、ロバート?」
 水中から顔を上げると、砂浜の上を真っ直ぐこちらに向かって来る背広姿の男の姿。
ロバートだ。……ロバートだよな。なんか黒いけど。

「どーしたのさ、ロバート?」
「はい、そろそろ帰る仕度をしますんでお迎えに!」
 やっぱりロバートだったようだ。よかった。黒いけどロバートだ。
「もう帰るの? まだ日も沈んでないのに……」
「ええ。なんか、ひと雨来そうだってウェダさんが」
 言われて空を見る。確かに、先ほどまで真っ白だった雲は鉛色に変化し、今や太陽を完全に
覆い隠しその空の殆どを埋め尽くしていた。風も随分と強くなっている。
「そっか。ありがとロバート? オレたちもすぐ行くから、そう言っといて」
「いえいえ、一緒に戻りましょうよ。片付けるのはマットだけですよね?」
「いやいやいやいーから、ロバート? は先、戻ってて!!」
 冗談じゃない。ここに居座られたらオレたちは身動きが取れなくなってしまう。
オレもグゥも、下半身は丸裸なのだ。と言うか、オレは完全に素っ裸だ。
 くそ、良い所で邪魔をしおって。……いや、まぁお屋敷に帰っても部屋で続きをすればいいか。
……オレって、ゲンキンだなあ……。

「……あの、ハレ様?」
「何、ロバート?」
「さっきから、俺の名前が疑問系になっている気がするんですが?」
「いや……何ていうか、今の姿がどうもいつものロバートの印象と相容れなくてね」
「え? あ、ああ。確かにそうですね、すいません」
「謝る事じゃないし別に良いけどね」
 言われて今気付いたように、ロバートは自分の身体を見て頭をかく。
「ネクタイ、締める時間が無くて。ハレ様たちを呼びに出されて急いで着替えたもので」
「いやいやいやいや知らんよそんな細かいとこは!! もっと大局的に変動した部分あるっしょ!?」
 ははは、と何故か気恥ずかしそうに照れ笑いを浮かべるロバート。そう言えば、いつも
きっちりと締めているネクタイは無く背広もシャツも全開にはだけていた。よっぽど
急いだのだろう。
 ……じゃなくて。なんでこうあのお屋敷のメンツは皆天然ボケが好きなのか。
「ああ……そんなに、印象変わりました?」
「変わった変わった。最初誰かわかんなかったもん」
「そうですか……なるほど、変装の手段としては一考の価値があるかもしれませんね」
 はだけた胸元や腕をしげしげと眺め、何かを納得したように頷く。こいつの頭の中では今、
非常に物騒な物事が渦巻いているのだろう。

「それにしても、グゥさんも結構印象変わりましたよね」
「……そうか? 照れるな」
「へ?」
 ロバートが目線を送った先、オレの隣にはもちろんグゥがいる。
 黒いけど。
 黒いけど………
「いやいやいやいやいやいやちょーーーーーー待てやあああああ!!!!」
「いやあ、一日で焼けるもんですね」
「うむ。太陽の力とはかくも強大なものよ」
「もしもーしグゥさーん!? 一体いつ、なにが、どう化学変化を起こしてそんな御姿に!?」
 あああああああもう、ロバートはともかくグゥに関しては突っ込むだけ無駄なのだろうが
しかしこれが突っ込まずにいられるか。

「何を言っておる。お前が日焼けぐすりを塗ったのだろう」
「いやそんなどこから突っ込めばいいのかわからんけどとりあえず塗ったから焼けるとか
そーゆーマジックアイテムじゃないですからね!?」
「へぇ、やっぱりハレ様が塗ったんですか」
「うむ。全身くまなくムラなく塗ってくれてな」
「へ、へぇぇ……。お二人の仲はそこまで……なんだか少し妬けちゃいますねえ」
 和気藹々と談笑を楽しむこの超狡猾と超天然のゴールデンタッグに対しオレの突っ込みなど
何処吹く風か。ええ、もう。慣れてますよ、この程度。
 っつーか、またロバートにいらぬ誤解を……いや、誤解じゃなけどとにかく、いらん事を
吹き込むのは止めて頂きたいのだが。

「あっ……すいません、俺、お邪魔でしたか?」
「いやいや、良く知らせに来てくれた。だがまあ、あとはグゥに任せて先に戻るがよい」
「はい! それじゃ、ハレ様。なるべく早く戻ってきて下さいね」
 おお、珍しくロバートが空気を呼んだ。
 もしかして、グゥはこれを狙ってワザとオレとグゥの関係を仄めかしたりしたのかな。
でも、ちょっと恥ずかしいな。母さんたちには、もっとタイミングを計って伝えたい。

「ちょっと待ってロバート!」
「え、はい何でしょう?」
「あの、この事、さ。母さんたちには内緒に……」
「……ああ! はい、それはもう、ご安心を!」
 ロバートは胸をトンと叩き、快活な笑顔をくれた。
 よかった。ロバートは基本的に危険人物だが、こう言う素直な性格や忠誠心は本当に
信頼できる。呼びにきてくれたのがロバートで良かった。

「───誰にも言いませんよ、海で遊んでいた事は!!」
「ぅえええ!? ちっ、違ぁぁあ!!!」
 結局、最後まで天然っぷりを発揮してロバートは走り去った。数分後には、オレとグゥの事は
母さんたちに知れるだろう。明日にはお屋敷中に広まっているだろう。うう、明日から周囲の態度が
露骨に変化しそうで怖い。

「はぁ……どーしよー、グゥ」
「……まぁ、そう気に病むな……」
 がっくりとうな垂れるオレの肩にそっと手を乗せ、子供をあやす母のような優しげな、
それでいて芯のある声でグゥは言った。
「どうせ、明日には皆に知れる事になっていたのだ……」
 ……そう、確信めいた力強い言葉を。
 ああ、そうだ。いくらオレが情報の隠蔽に苦心しようとも、パートナーがその方針に
従ってくれなくては全くの無意味なんですね。そしてこの少女がそんな協力をしてくれる
なんて無根拠に信頼しても確実に裏切られると言う事こそ長年の経験から導き出した信頼の
置ける唯一の情報だったんですよね。

 暗雲の切れ間から差し込む陽の光は一転して輝ける太陽を厚く重く覆う不吉な雲という
ネガティブな立場に切り替わり、その今にも雨の雫が零れ落ちそうな不安定な空はまさに
オレという存在を体言しているかのように思えた。……ホントに勘弁して下さい……。


「過ぎてしまった事は仕方あるまい。グゥたちも戻る仕度をするぞ」
「はーい……」
 言いながら、海から上がったグゥはいつの間にかきっちりパンツを穿いていた。
そしてパンツからすらりと伸びる脚もしっかりと小麦色に焼けていた。
 そこは日焼けローション塗ってすらいねえ。なんて、とてもじゃないが突っ込む事など出来なかった。
突っ込むだけ無駄、なんて理由じゃない。グゥの今の姿に、単純に言葉を失ってしまったからだ。
 こんがりと健康的に焼けた身体に真っ白な水着が眩しい。新鮮と言うよりも、全く別の魅力を放出して
いると言うかなんと言うかもう、嫌でも如何わしい事に想いを馳せてしまいそうな悩ましさがあった。

 ……ロバートの事も、日焼けの事も、すっかり頭から消えてしまった。やっぱ男って単純だ……。
 まぁ、確かに過ぎてしまった事を悔やんでも仕方は無い。しかし一つだけ、重大な問題を解決する必要がある。
さっき発散したばかりだと言うのに、またアレな事になってしまっているオレのアレをどうにかしなくては
海から上がる事が出来ない。とにかく、オレもさっさとズボンを穿かねば。

 ……えっと。ズボンはどこかな。
 …………えっと。トランクスも……。

「……グゥ?」
「どうした、早くしろ」
「いやその。オレのズボンが、どこにも……」
「…………ふむ。流されてしまったのかもしれんな」
「……は」
「砂に埋まったのかもしれんが……どちらにしろ今から探すのは無理だろう」
「……はは」
「安心しろ。グゥのを貸してやろう」
「……はは、はははははは…………」
 今、完全にオレの精神とソウルリンクを果たした曇天の空は、枯れ果てたオレの心を潤さんばかりに、
そしてオレの代わりに涙を流してくれているかのようにぽつりぽつりと大粒の雫をもたらした。
 あっという間に土砂降りに見舞われた海岸をパレオ一丁の姿で走るオレの心に虹がかかる日は
来るのだろうか。

 母さんたちのいた所まで戻ると、ロバートが一人手を振り待っていてくれた。
急いで他のみんなが待つ車へと駆け込む。
 車の中はびしょ濡れで、みんな水着のままバスタオルを羽織っていた。
 「下に穿いていた物を全て無くした」と言うオレに一同は生暖かい眼差しを投げかけてくれた。
泣きたかった。
 大きな一枚のタオルに包まれるオレとグゥに対しても終始、似たような目線を送られたが
それは不思議と気にならなかった。

 雨は帰る途中ですぐに止んだ。通り雨だったようだ。
 雲の切れ間に虹を見た。
 タオルの中でグゥと手を繋いで見る、晴れた空に掛かる大きな虹。
 その光景は何故か、とても温かなものに思えた。


<<7>>

「それにしてもほんと、よく焼けたわね~」
 あれだけ燦々と輝いていた太陽も今は地平線の向こうに身を潜め、代わりに現れた
弓のように細い月が今は地表を淡く照らしている。
 長い長いテーブルに過剰な程に並ぶ豪勢な夕食を隔てた向かいの席で、母さんが
嬉しそうに声を上げた。

「特にロバート! え、ちょっ、アンタ何があったの!? 声まで変わって!! ……って感じ!!」
 拳を握り、鼻息荒くきゃっきゃとはしゃぐ母さんに、ロバートはオレの後ろで
恥ずかしそうに頭をかく。ちなみに声までは変わってないからね。
 確かに、ロバートの焼け具合はある意味異常だ。保険医と並ぶくらい血色の悪かった
あのロバートが、ジャングルで暮らすオレや母さんよりもずっと濃く焼けている。
 たった一日でここまでなるものなのか。今後、ロバートの体調に何か深刻な変化が
起こらないか微妙に不安だ。

「きっとあれよ、ロバートは日焼けの才能があったのよ!」
 なんだそのレアな才は。そら人それぞれかもしれんが、もうちょっと真剣に考えてやれよ。
 しかしまあ、本人は今のところいたって元気そうだし、その様子からも不安な要素は見当たらない。
今具体的に深刻な状況に陥っているアシオに比べたら、十分健康体と言っていいだろう。
「……大丈夫なの? 別に部屋で休んでていいのよ?」
「いえ、平気ですから、心配せんとって下さい」
 かすれた声でそう返し、アシオは震える手で母さんのグラスにワインを注ぐ。いつものツナギ姿とは
打って変わった、ウェイターのようなスーツ姿がやけに様になっている。
 袖口から先やきっちり第一ボタンまで留めた襟元から上。その肌の見える部分は全て痛々しく
真っ赤に焼けていた。アシオはさしずめ、日焼けの才能が無かったって所か。

「そうですわ、お嬢様。このくらいの事で弱音を吐いては、このお屋敷に勤める資格は御座いませんから、ねッ」
「おごほぉぉぉッッ!!」
 言いながら、ベルがアシオの背中を思い切りひっぱたいた。破裂音、と言うよりも鈍器で殴ったような
重々しい音が食堂に響く。
 アシオは背中を思い切り弓なりに反らせ、たたらを踏む。転倒までには至らずなんとか体勢を
持ち直したが、背中を向けたまま肩で大きく深呼吸を繰り返していた。きっと、泣いてるのだろう。
「まったく、大の男が情けない……。少しは私を見習いなさい」
 そう言って髪をさらりとかき上げたベルの顔や手足はこれぞ日焼けの見本とばかりに健康的な
小麦色の肌に焼けていた。ある種、一番才能があったのはベルなのかもしれない。

「あーあ、可愛そ。誰かさんのワガママにつき合わされちゃって、ほんと可愛そ~」
「…………あらあら、ウェダったら。それは誰の事かしらね?」
「……自覚が無い所が、性質が悪いわよねえ。ねぇ、母様もそう思うでしょ?」
「そうねえ。日焼けしよう、なんて最初に誰が言い出したのか、自覚が無いなんて困ったものよねえ」
「えぇえぇ、誰かさんが勝手に付いて来さえしなければ、こんな事には……ねえ?」
「それを言うなら、そもそもの原因は海水浴の立案者、よね。ほぉんと、誰かしら?」
「あらあら~。それって、イジメッコよりもイジメッコが通う学校を建てた人が悪い、みたいな
言い草ね~。さっすが、偉い人は言う事が違うわ~」
「…………ちょっと。さっきから母親に対してなんですか、その口の利き方は!!」
「今はそんな話をしてるんじゃないでしょ! 自分の非を認めたくないからって話を逸らすなんて
卑劣よ、ヒレツ!!」
「あなたって子は……! だいたい、あなたが嫌味ったらしい言い方をするから!! そりゃあ
私だって悪いって思ってるわよ? でも何、その言い方は! だいたいあなたに責められる事じゃあ
無いでしょう!? アシオにはちゃんと謝ったのよ? これ以上何が必要だっていうの!?」
「解ってないわねぇ!! アシオを休ませてあげてって言ってるの!!」
「言ったわよ! でもアシオが聞かないんだからしょうがないでしょう!!」
「命令でもなんでもいいから休ませなさいよ!! 気が利かないわねー!!」
「私はアシオの意思を尊重しているのよ!! 無理に休ませたらそれこそ彼を傷つける事に
なるかもしれないでしょう!!」
「そりゃあお優しい事で! その殊勝な気持ちをもーちょっと早くアシオに見せてあげられなかった
ものかしらね!?」
「あれはアシオにも楽しんでもらおうと思って……本気で嫌がっていたら私だってそこまで
無理にするつもりはなかったのよ!?」
「これだから……使用人が母様に逆らえるわけ無いでしょう!? なんでそれが解んないかなー!」
「そ、そんな、逆らえないだなんて大げさよ! 私は普段、使用人にそんなに厳しく当たった覚えは
ありません!!」
「ほら出た、自覚が無いのよねーホンット!」
「え、え、え? ね、ねえアシオ? ベル? 私はそんなこと、しないわよね?」
「え!? え、ええ! それはもう、普段はとてもお優しい方ですとも、奥様!」
「そ、そやそや! 俺がここにいられるのも、奥さんのおかげやし。いくら感謝してもし足りんくらいですわ」
「ほ、ほら見なさい。私がいつもどれだけベルやアシオに心を砕いているか、あなたは知らないでしょう」
「ふぅ~ん。ま、普段はそうでしょうね。普段は」
「な、なによ、その持って回った言い方は……」
「母様、スイッチ入っちゃったら目の色がお変わりになられるものねぇ」
「な、何の事ですか? 言いたい事があるならもっとハッキリと……」

「おおおおお奥さん、お嬢さん!! 俺ならホント、大丈夫ですから!! オレのためにそんな、
お二人が喧嘩するなんてやめてくださいよ!」
「アシオ……いいの、ホントに?」
「そうですよ、アシオに何かあれば、あなたのご両親になんと言っていいか……」
「そんな、大袈裟ですよ。全然、平気ですって! ね、先輩! 他になんかやる事あったら遠慮せんと
じゃんじゃん言ってくださいよ!」
「え…ええ。勿論、そのつもりよ。……でも今の所、ここにはあなたの仕事はもう無いわね」
「そ、そんな先輩まで……」
「勘違いするんじゃないわよ。あなたにはこの後の準備をしてもらいます」
「……! 例のアレ、ですか?」
「あなたも、楽しみにしていたのでしょう? 今夜のメインイベントなんだから、気合入れて
手筈を整えなさい」
「はい、先輩! それじゃ、奥さん、お嬢さん、坊ちゃん、グゥさん。俺はここで失礼させて
もらいます!」
 そう言って、アシオは意気揚々と部屋から退散した。皆がそれを見送る中、ベルが腰に手を当て
皆に聞こえないように小さく溜息を吐いた。

 ……しっかし、一旦始まったらホント、はた迷惑だなこの親子は。
 アシオが割って入らなかったらどこまで発展してた事か。情けないが、オレはただ黙って
見守る事しか出来なかった。
 当の本人たちは、あれだけ騒いだ後だと言うのに、今は涼しい顔で並んで食事を再開している。
喧嘩するのはいいのだが、人を巻き込むなと言いたい。ロバートなどは完全に気配を絶ち
空気と同化していた。己のスキルを最大限活かした処世術、お見事と言っていいのだろうか。

 それにしても、さっきのベルとアシオの会話は聞き捨てならないものがあった。
例のアレ、だとかメインイベントだとか、かなり不穏な空気を感じるぞ。
「ねえベル?」
「はい、何で御座いましょうハレ様」
 ベルはオレが呼ぶとすぐさま笑顔を見せ、素早く足音も立てずにオレの隣にやってくる。
プロの動きだ。ってそれは今はどうでもいい。
「あの、何? 今夜のメインイベントって」
「…………」
「ベル?」
「あら、グゥ様も綺麗にお焼きになられて!」
「……へ?」
「普段の儚げな淡雪のような白妙のお肌もお美しゅう御座いましたが、健康的な小麦色もまたよくお似合いで、
素敵ですわ! 今日は新しいグゥ様の魅力をご発見なさって、宜しゅう御座いましたわね、ね! ハレ様!?」
「へ? え? あ、あの、えっと、そうだねえ……」
「ええ、本当によう御座いました。そうそう、私そろそろデザートの準備をしなくてはなりませんわ。
皆様は続けてお食事をお楽しみ下さいませ!! それでは、失礼致します!!」
 一方的にまくし立て、ベルまでがこの部屋から逃げるように退散してしまった。それもまたある種、
プロの動きだった。
 ……一体、なんだってんだ。嫌な予感は益々オレの中で膨れ上がっていく。

「慌しいわねー。みんな疲れてるんだから、そんなにがんばんなくていいのに」
「それが仕事ですもの。ベルにもアシオにも、ウェダのその気持ちは十分、伝わっているわ。ウェダには
いっぱい、元気を貰っているのよ。あの二人も、私も」
「母様……」
 いい感じに親子仲良く会話している丁度向かい側にいるはずのロバートは現在、完全にその気配を絶ち、
もはや存在すら忘れ去られている。その妙技もある種、プロのものだった。

「そうそう、グゥちゃんもホントに綺麗に焼けたわね」
 いきなりこちらに話が飛んできた。
 グゥも無言で目の前の皿から母さんの方に向き直る。
「どうよ、ハレ? いーでしょ。こーゆーグゥちゃんも、たまには」
「な、なんでオレに振るんだよ?」
「だって、ねえ。グゥちゃんはハレのために焼いたのよぉ?」
 母さんはニヤニヤと歯を見せて笑い、オレとオレの隣に座るグゥを見比べる。
 グゥは少し椅子を引き、慎ましやかにひざの上で手を揃え、何か言いたげにちらりとオレに
目を向けた。
 確かに、グゥもベルと同じくらい綺麗な小麦色に焼けている。白いワンピースから見える
褐色の肌にはことさら強調されるまでも無く、とっくにオレの目は釘付けになっている。
これが健康的な色気と言うやつだろうか。……それをグゥから感じる事になろうとは。
 胸元が開いてない今の服装では、水着の跡は見えない。ただ胸元から首筋に伸びる二本と、
大きく開いた背中を横断する一本の、細く残った白い線だけは確認できるがその程度だ。
 だけど、それだけでも何故か少しきゅんときてしまう単純なオレの心。他の部分も、見せて
貰えるのだろうか。なんて邪な考えに軽く自己嫌悪を覚えるが、しっかり期待してしまっている
自分を偽る事も出来ず。情けないやら、いっそ逞しいやら。

「どう、かな……ハレ」
「……ん、うん。かわいいよ、グゥ」
 どこか不安げにこちらを見詰めるグゥに、オレは正直に感想を述べた。
「かっ……それは、感想として正しいのか?」
「え!? や、いや、あれ?」
 ……しまった、また自爆してしまった。
 二人して顔を真っ赤に俯くグゥとオレを前に、母さんは後ろを向いて笑いを堪えている。
おばあちゃんも頬に手を当て微笑ましげにご鑑賞なさっておられる。くそう、見世物の気分だ……。
「ったくもー、まっすぐなんだから。こっちが恥ずいわよ」
 こっちも十分恥ずかしいんですがね。茶化すのはもう止めにして頂きたい。
「ご馳走様!! ほら、いくぞグゥ」
 これ以上オモチャにされては叶わない。急いで夕食を平らげ、グゥを椅子から引っ張り下ろす。

「あら、デザート来るわよ?」
「いらないよっ」
「ふぅん、一人でグゥちゃん鑑賞会?」
「あーのーねー!! もう、そーゆーんじゃないってのー!」
「ああ、そうだったわね。グゥちゃんだったらなんでもいいんだもんね、ハレは」
「もー!! 知らないよ、もう!!」
「あらら、牛さんになっちゃった」
「ウェダ、いい加減になさい。あまり男女の仲に割り込むものじゃあないわよ」
「いいでしょ、これくらい。息子の恋路は気になるものよ、母としては」
「ウェダだって、クライヴ先生の事はなかなか教えてくれなかったじゃないの」
「な、なんでそこでその話が出てくんのよぉ!」
「私だって、母なのよ? どれだけ心配したか……」
「もう、何よいきなり、もー!!」
「あら、ウェダも牛さんになっちゃったわね」
「もぉ!」
 ぷりぷりと頬を膨らませて狼狽する母さんから一瞬、こちらに目を切り、おばあちゃんが
ぱちんとウィンクをくれた。
 助けてくれたのだろうか。あまり深く考えている暇も無い。オレはおばあちゃんに小さく
頭を下げ、グゥの手を引きこっそりと部屋から抜け出した。
 しかし……ううん、やっぱりおばあちゃんって、よく解らない人だ。


「なあグゥ。おばあちゃんって、ホントはどんな人なんだろ」
「んー?」
 廊下を歩きながら、グゥに話しかける。
「最初会った時はさ? 上品で清楚で、お金持ちの奥様ーって感じでさ。それに泣き顔ばっか
見てたせいもあるかもだけど……なんか、今のおばあちゃん見てたらアレは何だったんだって
思えてくんだよなー。イメージ違いすぎって言うかさー」
「ふむ。そうは言うが、ウェダと再会してからの祖母はいつもあんな感じではないか。それ以前の
祖母の姿なぞ、一日二日見た程度だろう?」
「……まあね」
 確かに、オレの中のおばあちゃんのイメージが変わりはじめたのは、母さんと仲直りしてからだ。
それ以前の姿なんて、グゥの言うとおり短い間だけしかオレは知らない。でも、あのお淑やかで
どこか寂しげなおばあちゃんの印象がオレの中で大きいせいか、どうにも納得がいかないのだ。
「祖母とてハレとは初対面だったわけだしな。猫を被っていたのではないか? ……グゥのように」
「ああ、なるほどね。最後の一言で思いっきり納得しそうになった自分が哀しいわ……」
 母さんといきなり取っ組み合いの喧嘩をはじめたり、夜中に眠れないオレに怪談話を聞かせたり……。
あれが本性なのだとしたら、もしかしたら母さんよりも手強い性格なのかもしれないな……。

「いえ、やはり奥様は随分と変わられましたよ!」
「おわぁっ!?」
 突然、にゅっと後ろから現れた黒い影に思わず飛び上がった。
「な、なんですかいきなり……驚かさないで下さいよ」
「驚いたのはこっちじゃ! どっから現れたのさロバート!!」
 心臓を押さえ肩で息をするオレを何故か訝しげな目で見詰める男……ロバートは
オレの言葉にますます眉をひそめる。
「あの、ずっと後ろから付いていってたんですが……」
「……いやぁ、全く気付かなかったよ?」
 部屋を出る時も出てからも気配を絶ちっぱなしだったのだろう。髪も肌もスーツも黒いせいで余計に
存在感が消えている。
「ロバート、日焼けが治るまではスーツはもっと明るい色にした方がいいと思うよ……」
「は、はぁ……解りました……」
 頭をかき、肩を落とすロバート。少し気の毒にも思うが、この姿で物陰に潜まれでもしたら本気で怖い。
ここはお屋敷の平和のためにも本人に努力してもらおう。

「……で、さっきの話の続きだけど、おばあちゃんが何って?」
「ああ、えっと、はい。ウェダ様と再会する以前の奥様は、今のように……何と言うか、明るい姿を
お見せになることは殆どありませんでした」
「やっぱりそうだったんだ……」
「俺たち使用人には努めて平静に振舞っておられましたけど、時折、ふっと哀しげなお顔をお見せになる時が
ありまして。……その原因は、勿論我々も知っていました。でも、こればかりはどうする事も出来ませんから。
ベルさんも、いつも悩まれていましたよ……」
 当時を思い出すように、顔を伏せて鼻をすする。オレにはとてもその様子を想像する事は出来ないけれど、
十一年と言う歳月の長さをロバートの表情は十全に物語っているように思えた。

「あんなにお元気な奥様を見るのは、俺ははじめてです。これもきっと、ウェダさんのおかげだと思います」
 パッと持ち上げたロバートの顔はまるで憑き物が取れたかのように晴れやかで、まるで自分の事のように
誇らしげで、本当に嬉しそうだった。

『───ウェダにはいっぱい、元気を貰っているのよ』

 食堂で聞いた、おばあちゃんの言葉を思い出す。ロバートたちも、皆きっとおばあちゃんと同じ想いで
いるのだろう。
 そう言えば、いつか母さんが言っていた。ベルもアシオもロバートも、みんな、家族だって。
 臆面も無く、当たり前のようにそんな事が言える母さんだから、みんなも、あのおばあちゃんも素直に
自分を出せるのかもしれないな。

「そうですわ! お嬢様はこのお屋敷の太陽なのです!!!」
「おわぁぁぁッッ!!」
 どこから湧いて出たのか、突然現れた人影にまた飛び上がった。このお屋敷の人間はどうしてこう
みな同じような行動を取るのか。
「べ、ベル!? どうしたの、こんなトコで?」
「11年……それはもう長い長い、筆舌に尽くし難い程の風霜で御座いました。奥様はその日々をどのような
想いで耐えておられた事か……」
 ベルはオレの声が聞こえていないかのように……実際、聞こえていないのだろうが……ぽろぽろと零れる涙を
スカーフで拭い、ぐすっと鼻をすすった。
「幼き頃の蒲柳のお姿、今もつい先日の事のように思い出せますわ。そのお嬢様があんなにも溌剌とした姿を
お見せになられて……。こんな事を、私などが口に出しすべき言葉ではない事は重々承知致しております。
でも、少し……ほんの少しだけ思う時があるので御座います。お嬢様はこの家をお出でになられて、良かった
のではないかと。この11年間があったからこそ、お嬢様はお変わりになられた。奥様との確執も晴れ、今は
あのように遠慮の無い会話をなされて……。私は、このような時が来る事を何よりも望んでいた気がするので
御座います……ッッ!!」
 いよいよ溢れ出す涙を隠すようにスカーフで顔を覆い、目を押さえぐいと拭う。ついでにブフーと鼻をかみ、
流れるように優雅な動きでスカーフを折り畳み当たり前のようにロバートの胸ポケットに仕舞った。
 ロバートは文句を言う事も突っ込みを入れるタイミングも見失い、ただその身を凍りつかせていた。
この遠慮の無さは家族の間のそれとはまた別種のような気がするが、あえてオレも突っ込むまい。

「申し訳ありません……少々、取り乱してしまいました」
「いやあ、普段から多々取り乱してるとこ見てるし、気にしてないよ?」
 まだグスグスと鼻をすすりながらも、深々と頭を下げる。ようやく落ち着きを取り戻したようだ。
「お嬢様と再会してから、奥様は本当に笑顔がお増えになられました。いいえ、笑顔だけでは御座いません。
あのように感情を露にされる事は、お嬢様がこのお屋敷におられた頃ですら稀だったので御座いますから。
お嬢様と同じように、奥様もお変わりになられておられるのですわ」
 改めて、母さんの影響力を思い知らされる。オレにとっては、ただのワガママでだらしないダメ人間としか
思えないのだが、そのワガママでだらしない所を隠さずさらけ出せる所にみんな惹かれていくのかもしれない。
そのワガママに四六時中付き合わされる身としては、あまり喜べないのだが。

「ハレ様のことも、奥様は本当に喜んでおられましたよ」
「え、お、オレ? なんでさ?」
「お嬢様のお腹の子の事も、ずっと奥様はお気になされておられましたから。ですがハレ様のお姿を見て、
本当に安心なさったようで御座いますよ」
 ……そうか。母さんがこの家を勘当された原因は、オレが出来ちゃったからなんだよな。
オレもその事で随分悩んだけど、おばあちゃんは喜んでくれていたんだ。
「こんなに優しくて可愛らしい男の子に育ってくれているなんて、きっとお屋敷ではこうは育たなかったろう、と
いつも仰っておられますのよ」
「そ、そんな……ちょっと大袈裟だってそれは~」
 顔がみるみる熱くなっていく。面と向かってそんな事を言われると、さすがに恥ずかしすぎる。

「ハレ様を、大事なお友達のみんなに紹介してあげたい。とも、いつも仰っておられますわ」
「と、友達?」
 おばあちゃんの友達、って、みんな大人だよな、多分。もしかして、お金持ちにありがちな
社交界とかパーティーとか、そう言うやつだろうか。ちょっと堅苦しそうで、気乗りはしないけど。
「えぇ。奥様はそれはもう、大のお人形好きで御座いまして。特に気に入っておられるのがメリーちゃん……」
「───うぇえええええいやああああああああああああ!!!」
 瞬時に、おばあちゃんに聞かされたあの物凄く嫌な話が脳裏を高速で駆け抜ける。
二度と思い出したく無かったのに……今夜も安眠できるか心配になってきた……。

「ど、どうなさいました、ハレ様?」
「い、いえいえいえ、なんでもないですよ……。そ、それよりさ、どうしたのベル? 食堂の方はもういいの?」
 げふげふと咳き込みながら、なんとか別の話題を探す。放っておいたらベルからもメリーちゃん絡みの
ヤバイ逸話を聞かされかねない。
「奥様とお嬢様には、他の使用人を当たらせておりますわ。私はお嬢様のお使いで御座います」
「お使い?」
「はい。今夜はちょっとしたイベントが御座いますので、早めに汗をお流しになられますよう、お願い致しますわ。
グゥ様、お嬢様が日焼け跡を早く見たいと仰っておいでですわよ」
 言いながら、ベルはにこりとグゥに微笑を向ける。グゥは何故かオレの方をちらりと見てから小さく頷いた。
「私も呼ばれたので御座いますのよ……ああ、お嬢様に私の恥ずかしい日焼け跡をじっくり、たっぷり、
舐り上げるように目で犯されるので御座いますわねーーーー!!!!!!!!!」
 お屋敷中に響き渡らんばかりの絶叫と共に、長い廊下の先の先まで槍のように一直線に飛んでいく鼻血。
アレに当たったら冗談抜きで貫通するんじゃないか。いらん想像をして心が冷えた。
「それでは、私も入浴の準備を致しますのでこれで失礼させて頂きますわ。ハレ様、ご入浴がお済みになられましたら
3階の談話室にお越し下さいませ」
 それだけを言うと、ベルはしずしずとその場を去った。その姿が廊下の先に消える頃にやっと、
イベントってのは結局何なのか、聞きそびれてしまったことに気が付いた。

「ねえロバート。イベントこと、聞いてる?」
「いえ……すいません、俺もよく知らないんですよ」
 申し訳無さそうに頭を垂れるその様子からは、嘘や誤魔化しといった雰囲気は感じられない。
きっと本当に知らないのだろう。海での件もそうだが、ベルやアシオが企んでいる事は何故か
ロバートに伝わっていない事が多い気がする。信用されていないワケじゃあないのだろうが、
ロバートは隠し事が出来ない性格だ。その辺を考慮してロバートには知らせていないのだろう。
「まあ、いいや。ところで談話室って、どこにあるの?」
「はい、それなら解ります。中央の大階段がありますよね。踊り場から二股になっていますが
右の階段を上ってですね、3階のプレートの右手を……」
「ちょ、ごめん、さっぱりわかんないから一緒に行ってくれないかな?」
「あ、はい勿論それは構いませんが……」
 ロバートはどこかバツが悪そうに鼻頭をかくと、視線をグゥとオレの間で何度か往復させ
おもむろにオレの傍に寄り、ヒソヒソと耳打ちをしてきた。
「あの、オレ、お邪魔じゃないでしょうか?」
「え、な、なんで?」
 つられてオレもひそひそ声で返す。
「いえその、ハレ様、グゥさんと一旦部屋に戻るんですよね? 部屋の前に俺が待機していたら、
落ち着かないのでは、と」
「…………」
 どうやらロバートは物凄く下世話な気遣いをしてくれているようだ。いや、ありがたいですけどね。
しかし、もはやどうにもこの問題は言い逃れの出来ない所まで来ているようだ。明日が怖いなあ。

「じゃあさ、ロバートも一緒にお風呂入ろうよ。先にそこで待っててくれたらいいからさ。
上がったら一緒に談話室に行こ」
「……は、はい、俺は全然、それで問題ないです! それでは、早速!」
 言うが早いか、ロバートは早足で廊下を駆けて行った。

 騒がしい人々がいなくなり、真っ直ぐな廊下を突然静寂が襲う。一人きりだったら、自分の部屋まで
思わず駆け出していたかもしれない。
 無言で少し手を横に伸ばす。すぐに、掌がきゅ、と温かな圧迫感に包まれた。
「いこっか」
「ん……」
 オレからも手を握り返し、静かに歩き出す。部屋に戻るまでの間、一言も声を漏らす事は無かったけど、
何よりも楽しい会話を交わしているようにオレの心は柔らかい熱を感じていた。

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