ハレグゥエロパロスレSS保管庫@ Wiki 070901_4

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ハレ×マリィ

ハレ×グゥ×マリィ

ハレ×ウェダ

ハレ×ワジ

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クライヴ×ウェダ

ロバート×ウェダ

グプタ×ラヴェンナ

グプタ×ワジ

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ハレとサニィ

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小麦色の白雪姫_4(二:224-231)
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 若干陰りは見えたものの、まだ随分と日は高い。ただ、いつ頃からか空を厚く覆いはじめた雲が
陽の光を遮る時間を徐々に伸ばし、ここに到着した時よりは随分と過ごしやすくなった。
 少しだが風も出はじめ、依然水平線の向こうから立ち上るように増え続けている雲に文字通り
雲行きの怪しさを感じるが、まだ気にするほどでは無いだろう。

 膝の上に乗ったグゥの頭を撫でる。肌と同じように色素の薄い毛が指の動きに合わせ
さらさらと流れ、つまみ上げようとすると液体のようにするりと指の間をすり抜けていく。
 頬に流れる髪を後ろに梳き、耳にかける。普段、髪に隠れ見る事の無い部分が露になり、
とくんと心が跳ねる。何故か、見てはいけないものを見ている気分になった。
 グゥはオレと同じく海の方を向き、静かに目を瞑っている。寝ているのだろうか。
いや、寝ているならむしろ目は開いているはずで……ああ、ややこしい奴だ、コイツは。
 オレはあくまで自然な素振りで、優しくグゥの頬に指を添える。特にグゥからの反応は無い。
そのまま頬をくすぐるように撫でるとグゥはくぅんと喉を鳴らしオレの膝に顔をすり寄せた。
一応、起きてはいるのだろうが、抵抗の意思は見られない。
 頬の上をするすると移動し、小指で耳の内側の淵をなぞる。耳たぶを親指と人差し指で柔らかく
挟み、くにくにと弾力のある感触を楽しむ。人差し指を耳の裏側に這わせ、カリカリと掻くように
動かす。そこまでしても、グゥは嫌がる様子を見せない。時折小さく、ん、ん、とくすぐったそうに
声を上げるくらいだ。

 ……楽しい。なんだか、長年の夢が一つ一つ叶っているような充実感。
 出会って以来、誰よりも多く傍にいて、寝食を共にして来た少女。最初はこの不可思議の塊の
ような少女とどう接していいのか戸惑ったものだけど、心を通い合わせるうちに必然的に
スキンシップの頻度も増えていった。主に叩く抓る捻る揺さぶるといった方向に、だけど。
 それでも、やはりいつも一緒にいるのだ。肩を抱いたり、その髪や頬に触れる事はもう
あたりまえの行為で、服の上からにしろ本来触れてはいけない部分に触れてしまった事だって
何度もある。……偶然か、意図的かは置いといて。
 でも、だからこそ、解らない。あんまりにも近すぎて、逆にどこまで接してもいいのかが
解らないんだ。
 例えば今触れている耳や、首筋、鎖骨なんて部分はどうか。普段なら、髪の毛を撫でるなんて
事もとてもじゃないが出来やしなかったのだ。本来、意味無く触れる事を許されない場所と、
そうでない場所。その曖昧なようで明確な境界線にオレはいつも心を悩まされていた。
 グゥが寝ている間にそっと首筋を撫でてしまった次の日は一日中グゥと目を合わせる事が
出来なかったし、グゥの方からいきなり背中にしがみついて来たり、ふざけてプロレス技を
かけて来た時もオレはどうしていいか解らず、ただ「鬱陶しい」と跳ね除けるだけだった。

 そんなオレが、今はグゥに思う様に触れる事ができる。これまで当たり前のように触れていた
部分も、まるで違う感触を指に伝える。幸せ。簡単に言えばコレがそうなんだろうか。今はこの
幸せを一つ一つ、丁寧に噛み締めていたいと素直に思った。

 グゥの身体のラインをゆっくり追う。鎖骨の少し下、白い布で覆われている部分に目を向ける。
横になっているせいだろうか、胸元が圧迫され、その中心にはほんの少しだけ谷間が確認出来る。
そのずっと下、柔らかそうなお腹に開いた小さな窪みが可愛らしい。ここなら触ってもいいんじゃ
ないか、なんて誘惑を抑えて目線は更に下へ。……パレオが邪魔だ。盛大に邪魔だ。剥ぎ取って
やりたい。せっかくの水着だってのに、お尻の形も確認出来ないなんて……

「ハレ」
「はぅぉぉッッ!?」
 突然の自分の名を呼ぶ声にビクンと、思いっきり身体が跳ねる。ついでに、思わず頓狂な声を
返してしまった。
 グゥはいつの間にか仰向けになり、真っ直ぐにこちらを見上げていた。
「な、なになに、何かな?」
「……ハレは水着にならないのか?」
 グゥはオレの奇態に怪訝な表情を作ったまま、オレの身体の上に目線を這わせる。
 そう言えば、オレはまだ家を出る前と同じ、Tシャツに短パンと言う姿のままだった。
「ああ、オレ持って来てないから、水着」
 いきなり海に行くと言われて、着の身着のまま車に乗せられたのだ。そんな用意などしている
はずも無い。アシオたちが担いでいた膨大な荷物の中にあるのだろうと高を括っていたのだが、
中身は母さんとおばあちゃん用のものが大半で、残りはビーチグッズやタオルなど共用のもの
ばかり。オレのために用意されたものなど何一つとしてありはしなかった。
「どうせ今日は泳がないしさ。別にこのままでいいよ」
 泳がないと言うか、泳げないと言うか。ベルとアシオの都市伝説好きはホント、どうにか
ならんもんか……。

「ふむ。しかしせっかくの海だしな。……グゥのを貸してやろうか?」
「へ?」
 そう言うとグゥはむくりと起き上がる。
 今着ているもの以外の水着も、用意しているのだろうか。って、そうじゃなくて。
女用の、それもビキニのアンダーなんてものを穿かせるつもりじゃあないだろうな。
そんなもん穿けるワケが無いだろう。恥ずかしいとか、そーゆー問題じゃあ無い。
グゥが穿いたことのある、グゥの、……その部分を覆っていた布をオレが……。
 そんなものを穿いたら、マトモに立つ事すら出来なくなる。いや、一部確実にタツからこそ
立てないと言うか……って、上手い事言ってる場合じゃない。
「そ、そんなの借りれないよ! いいって、グゥ!」
「遠慮するな。ほら、これを着けるがよい」
 グゥはにこやかに目を細め、スッと大き目のスカーフのような布を手渡してくれた。
それはグゥが身に着けていたパレオ。その薄い布地に隠されていた部分が惜しげもなく
眼前に曝け出される。
 トップスに合わせた純白のアンダー。切れ込みは浅いが普段見ることの出来ないグゥの脚の
付け根までが露になり、ぷるんと張りのあるお尻もその形をくっきりと浮かびあがらせている。
 先ほどまであれ程渇望していたものが突然目の前に現れ、またオレの目は釘付けになってしまった。

「なんだ、そんなにグゥのここが気になるか?」
 グゥはにやりと微笑いクイッと片脚を持ち上げた。勢いよく開かれた股間部分を一瞬、凝視して
しまい思わずブハッと肺の中の空気を全て噴出す。
「エロガッパめ」
 ゲホゲホと咽るオレを見るグゥの目は実に満足げだ。こんにゃろう、どんどん調子に乗って
きやがったな。
「ん、んなことより、コレをどーしろってんだよっ」
 乱れた息を無理やり整えながら、手渡されたパレオをバサッと広げる。
 まさか裸の上からこれだけを腰に巻けって言うんじゃないだろうな。いや、こいつの事だから
言うんだろうけどよ。オレはどこの原住民族だ。
「ダメか?」
「ダメですなッ」
「ふむ……別にハレの粗末なものがチラ見えしてもグゥは気にせんぞ?」
「オレが気にするわ!」
 口に手を当て、くすくすと笑うグゥにパレオを投げ返す。パレオはグゥの身体に力なく当たり、
そのままヒラヒラと砂浜の上に舞い落ちた。

「しかし不公平だぞ。グゥの身体は散々視姦しておいて。グゥにもハレの裸体を見せろ」
「そーゆー不穏な発言はやめてもらえませんかね……。男の身体なんか見てもつまらんだろ、だいたい」
「……ハレのなら、グゥは見たいぞ?」
「…………ッ」
 背中で腕を組み、小さく微笑みを向ける。それだけで、オレはそれ以上の抵抗の意味を
見失ってしまう。……こいつ、ますますオレのうまい操縦法を覚えて来てる気がするぞ。
ああ、乗せられるオレもオレだけどさ。くそぅ。


「……これで許してもらえませんかね」
「ふむ。まあ、勘弁しといてやろう」
 さすがにパレオ一丁なんて姿にはなれないが、Tシャツを脱ぐくらいなら問題ない。
グゥはトランクスも水着も大して変わらんと主張して聞かなかったが、どうにか
短パンだけは死守させてもらった。
「それにしても、あっちぃ……」
 シャツを脱いだ途端、衣服に守られていた上半身に太陽光線が直接当たりジリジリと
身を焦がす。なんだか気温が数度上がったような気分だ。

「うむ、絶好の日焼け日和だな」
 ビーチマットに足を投げ出して座るグゥが、側に置いた小瓶を指先で弄び出す。
「ではさっそくやってもらおうか」
 そしてオレの返事も待たずにごろんと、腕を枕にうつ伏せで寝そべった。
「マジでやるんですかね……」
「合法的にグゥの身体に触るチャンスだぞ?」
「だから、自分で言うなっての」
 ……なんて言葉とは裏腹に、小躍りをはじめるオレの心。今となってはこんなベタな
シチュエーションがたまらなく嬉しい。日焼けローションを考案した人に表彰状の一つも
送りたい気分だ。
「背中だけで良いからな。変な気、起こすなよエロガッパ」
「うっさい。解ってるっての」
 ……なんて言葉とは裏腹に、軽く肩を落とすオレの心。いや、背中だけでも十分な進歩だ。
贅沢は敵だぞ、オレ。

 少し力の抜けた手でローションの小瓶をつまむ。

『使用方法 □ 適量をムラなくのばしてください。
      □ 上下によく振ってから、お使いください。
      □ 目に入らないように十分注意してください。
      □ 乳幼児の手の届かない所に保管してください』

 アメには触らせないようにしなきゃな。なんて心配は今は置いといて。
 瓶をよく振り、手の上に少し垂らしてみる。無色無臭の粘り気のある液体がとろりと
糸を引き、手を濡らす。なんか、ヤラシイ。

 いちいち手に乗せて塗ると手間が掛かりそうだ。グゥの隣に座り、直接その背中に
ローションを垂らす。
「───っひぅ!?」
 瞬間、グゥがビクンと身体を引きつらせた。次いでギロリとこちらを睨む。
「なんか言ってからやれ……」
 ……すんません。
 気を取り直して、今度は「いくよ」と合図を送り背中の筋に沿って真っ直ぐローションを
乗せる。グゥはまだ少し身体を緊張させていたが、今度は特に文句を言う事はなかった。

 ふと、背中の上を横一線に走る一本の紐に気が止まる。そう言えば、こーゆー時って
水着の紐、解くんだよな。日焼けローションを開発した人はもしかしたら天才かもしれない。

「背中の紐、解くぞ?」
 勝手に解いたらまたグゥの怒りを買うのは必定。一応確認を取る。
 グゥは一瞬ちらりとこちらを見やり、何も言わずすぐに前に向き直った。
了承……って事で良いんだろうか。恐る恐る紐の結び目に手を伸ばす。
 蝶結びされた紐の両端をつまみ、するすると解いていく。完全に解かれた瞬間、
ふわ、とほんの少し左右に引っ張られる感覚があった。水着の締め付けから解放され、
食い込んでいた部分が元に戻ったのだろう。
 その平らなボディのどこに食いこむ余地があるのやら、なんて言ったら殺されるので
言わないが、実際、食い込んでいた部分なんて数ミリ程度だろう。それでも手に伝わって
来るのは、オレの全神経がそこに集中している証拠だろうか。

 これで腋から胸元に至る間に邪魔者は何もいなくなった。しかしそこはやはり哀しい程に
まっ平ら。腕を伸ばしているせいで周囲の肉もそちらに引っ張られ、マットに押し潰された
胸元の肉がそこから僅かでもはみ出すなどと言う期待感は全く無い。
 まぁ、ある種期待通りではあるのだが。むしろそんなものが見えたら自分を抑えられる気がしない。
安堵なのか落胆なのか解らない溜息を漏らしつつ、オレはいよいよその背中に手を伸ばした。

 肩甲骨のラインを親指でなぞり、残りの指で全体に満遍なくローションを伸ばす。
 そのまま肩の曲線に沿って移動し、首筋に掌を添え、背筋を真っ直ぐに降りる。
 母さんに何度もやらされたマッサージの要領で、腰を左右に揉み込むように丁寧に塗り込める。
 その身体はどこを取っても柔らかく、しなやかな体躯の表面をうっすらと肉付きよく脂肪が
覆っているのが解る。なめらかな手触りの皮膚が手の動きに一瞬引っ張られ、ローションの滑りで
戻る瞬間がたまらなく心地良い。
 いつまでもこうしていたい気分だが、背中から腰にかけてという狭い面積を塗り終えるのに
そう時間は掛からない。出来るだけ丁寧に、時間を掛けて塗り込めたがそれももう限界だった。
説明書に書かれていた『適量』という言葉には一応、従うべきだろう。

「グゥ、終わったよ」
 肩をちょんちょんと突き、声をかける。
 だけどグゥは答えず、顔を腕に埋めたまま何かに耐えているかのように
拳を強く握り締め、身を硬直させていた。
「グゥ? グゥってばッ」
「……はぁ、ふぇ?」
 耳元で大きく呼びかけると、今目が覚めたかのようにぱっと顔を上げた。呆けた声を返し、
とろんした目を呆然とこちらに向ける姿は本当に寝起きのように見える。
「終わったよ、グ────ッ!?」
 もう一度、グゥに同じ事を伝えようと顔を近づけた瞬間、口を塞がれた。グゥからも
勢いよく迫って来た、唇によって。

「んく、ぷぁ……。もう、終わったのか」
 すぐに唇を離すとグゥは小さくそう呟き、むくりと身体を起こした。そうしてしばらく
ぼう、と中空を眺め、うわ言のように「そうか、もう終わりか」と繰り返す。
 なんだかグゥの様子が変だ。まさか本当に寝惚けているんだろうか。

 ……ちょっと待て。今、オレの目の前でとんでもない緊急事態が起っている事に気が付いた。
背中の紐が外れたまま起き上がったせいで、水着が涎掛けのように首からぶらさがり、
ゆらゆらと揺れている。
 まだ辛うじてオレの見る角度からは隠れているが、胸元からは完全に浮いている状態だ。
グゥがもう少しでも前傾したらぽろりと簡単に捲れてしまうだろう。
「ちゃんと塗ったんだろうな」
「へっ?」
 突然、素に戻り目を細め睨んで来たグゥから慌てて顔を逸らす。
まだグゥは自分の状況に気付いていないようだ。
「塗り残しとか……ホントに無いのか?」
「大丈夫だって、ちゃんと塗ったよ」
 塗り残しなんて、あるはずがない。むしろ必要以上にたっぷり触って……じゃなくて、
塗ってしまったくらいだ。

「……ホントにホントか?」
 オレの自身満々の声にも何故かグゥは納得せず、ますます疑いの眼を向けてくる。
ぐぐ、とその顔を近づけるたびに胸元の涎掛けが怪しく揺れる。オレは出来る限り
そこを視界に入れないようにそっぽを向いたまま、とある事情により腰も引きつつ
後ずさるしか無かった。
「ホントだってのっ! こんなの、嘘ついても仕方ないだろ?」
「……じゃあ何でこっち見ないんだ」
「ぅ……」
 そりゃ、見ても良いなら思う存分ご拝謁させて頂きますけどね。
……ええい、このままじゃマトモに話も出来ん。
「とにかく、オレはきちんと塗ったんだからそれ、なんとかしろよ!」
 顔を背けたまま、指を突きつける。グゥは一瞬、きょとんと顔を呆けさせたが
すぐに自分の胸元に目をやり、

「……ほほう」
 ……まるで意に介さず、涎掛け状態の水着とオレを見比べ、口端をニヤリと歪めた。
 そうだ、コイツはこーゆーやつなんだ。いやん、なんて言いながら両腕で胸を隠したり、
そんな乙女チックなリアクションなど望むべくもない。
「目にやり場に、困る?」
 グゥはいつか聞いたような台詞を言いながら、胸元をくい、と逸らした。両手をついたまま、
正座を崩した姿勢でお尻をぺたんとマットにつけ、肩を竦めて覗き込むように首をもたげる。
 挑発的な目線。余裕たっぷりの笑み。その顔はいつものそれよりもずっと強烈で、ある種の
オーラすら発散しているように見えた。……簡単に言えば、すっげえ楽しそう、って事だ。
「こ、困るに決まってんだろ。それでなくてもその、そんなカッコしてんだから」
「おやおや。さっきまであんなに遠慮なく見てたくせに、今さらそんな事を言うとはな」
 いまだグゥから目を逸らすオレを見上げながら、にじりと詰め寄る。
「ソレとコレとは別! 見て良い場所とダメな場所は、あるだろ」
「何故それをハレが決める? グゥは別に気にせんぞ」
「母さんみたいな事言うなよ、もう」
「ウェダとは違うぞ。グゥが見せていいと思うのは、ハレだけだからな」
「…………ッ」
 さらりと、当たり前のようにそんな事を口に出す。グゥの事だから、誤魔化しや
冗談じゃなく本当にそう思ってくれているんだろう。
 胸がきゅんきゅんと疼く。嬉しい。ただそれだけの感情が胸の奥に広がっていく。
だけどそれに流されるワケにもいかない。まだオレにも言い分は残っているのだ。

「……オレは、やっぱりグゥをそんな目で見たくないよ。グゥを、その……だから、か、かわいいって
思うのとさ。身体が見たいとかそーゆーヤラシイ気持ちは、別だと思うんだ」
「見惚れてたくせに」
「ぅ゛……そ、それは、あんましグゥの水着姿なんて見た事無いんだから、しょうがないじゃんか。
心でも身体でも、見た事ない部分が見れたら嬉しいって思うのは自然だろー」
「ならば遠慮なく見ればよかろう」
「だから、頭ン中がそーゆー事ばっかになったら、歯止めが利かなくなるっつってんの。そんで若さに
任せて怠惰で想像力豊かな日々送ってるうちに、後々絶対後悔する瞬間がやってくるんだって!」
「……14歳の少年の心配事とはとても思えんな。どんな人生送ってきたんだ」
「お前に言われたかねーっての」
 グゥは呆れた様子でオレを見るが、グゥこそどんな人生を送ったらそんな性格になるのやら。
 ……オレの場合は、完全に環境のせいだろう。女にだらしない父に、全面的にだらしない母。
そんな二人がオレの寝てる横で平気でイチャコラしはじめるわ、いつの間にか弟まで作るわ。
 自分の出生に関してなどは、枚挙に暇が無い。そこからはじまった問題が、つい最近まで尾を
引いていたのだ。他にも、山田ひろこやらユミ先生やら、男と女が絡んでろくな結果になった例を
オレは殆ど知らない。
 あらゆるパターンの反面教師を見続けてきてオレは悟った。オレは、もっと慎重に、健全に。
大切な人とゆっくり歩んでいこうと。

「……とにかくさ。今はまだ、オレはグゥと一緒にいるだけで嬉しいんだ。だからグゥも、無理に
変なコトしてくれなくていいんだからな」
「ハレ……」
 それが、オレの真っ直ぐな気持ち。もう、グゥから目を逸らさない。きゅっと手を握り、
胸を張りその瞳を真正面に捕らえ、オレの想いを真っ直ぐに伝える。
 グゥは目を瞑り、オレの言葉を噛み締めるようにこくんと小さく頷く。そして穏やかに
微笑みを浮かべ、自らの胸元にそっと手を添えた。

「ほれ」
「───ぶッッ!!」
 次の瞬間───目から、火花が散った気がした。いや、きっと本当に散ったに違いない。
 一瞬。ほんの、本当にほんの一瞬だけ水着を捲り上げ、戻す。グゥがしたのはそれだけだったが、
それだけで、オレの頭の中は真っ白になってしまった。
 腋からお腹までをまっすぐに伸びるラインの途上、陰影から僅かに確認出来る二つの膨らみと、
その頂点にぽつんと色づく艶やかな桃色。その一瞬の光景が目の奥に焼きついて、瞬きする度に
残像のように浮かび上がる。

「嬉しそうな顔しおって。一緒にいるだけの時にそんな顔は見た事なかったぞ」
「……うぅ……お前な~……」
 それも、オレの男としての真っ直ぐな気持ち。しかしそんなものに胸を張れるべくもなく。
グゥから目を逸らさない、と言う決意だけは守れたが、それがむしろ自分の駄目さ加減を
際立たせていると思えるのは気のせいか。
「グゥも、グゥが見た事が無いハレの姿をもっと見たいのだぞ?」
 グゥはやっと年頃の女の子相応に、恥ずかしそうに頬を赤らめ水着をぎゅっと押さえる。
年頃の男の子相応に、恥ずかしそうに腰を引くオレとの対比が痛々しい。
「焦る事は無い、って話だよ。……オレだって我慢してんだからな」
「ふぅん。グゥとしては、とっくに我慢し飽きているのだがな……」
「そッ……それは、お互い様だよ……」
 グゥは本当に、物怖じせずにそういう事を言う。その言葉が、どれだけオレの胸を熱くさせるか
解っているんだろうか。だけど、オレもあっさり誘惑に負けてしまうワケにはいかない。

「でも、だからこそだよ。勢いに任せたら、それこそオレ、保険医と同じになっちゃうかもだろ。
それだけは絶対ヤなんだよ」
 それがオレの最後の防波堤になっていると言って過言ではあるまい。保険医みたいにはなりたくない。
この強迫観念にも似た想いさえあれば、オレは絶対に自分を見失わない自信がある。
 グゥはオレの言葉に「ふむ」と小さく呻り、何事か考えるようにあごに手を当て目を細めた。
「なるほどな……」
「解って、くれた?」
「うむ。ようは、孕まなければ問題は無いワケだな?」
「いやいや極論すぎやしませんかね!? ってかグゥ的にはそれでいいの女として!?」
「む……女としてはやはり、二人は欲しいところだが。ハレのためだ、しばらく我慢するとしよう」
「そうじゃなくてええッ!!」
 ああ、コイツに口で勝つのは無理なのか。明らかに意図的に話を曲解してきやがる。

「……ハレの言いたい事は解る。だがそんなに心配する程の事もあるまい」
 頭を振りガリガリとかきむしるオレの様子に、グゥは優しげにくすりと笑った。
「ハレが恐れているのは、保険医のようになる事だろう。保険医のどんな所が具体的に気に入らんのだ?」
「どんなって、年端もいかぬ患者に主治医の身でありながら手を出し孕ませた挙句その後のフォローは
一切無し、母さんが勘当された事すら知らず再会した途端のうのうと関係を迫り再び妊娠させてようやく
結婚を決意。不治の女好き。浮気性。下半身に何よりも忠実。癇に障る声。ひ弱。メガネ。二本足で歩く」
「何もかもが気に食わんのだな」
「当、然、ですッ」
「しかし、概ねウェダとの関係における責任感の無さが原因であろう。ならば大丈夫じゃあないか?」
「え……?」
「ハレとグゥと、あの二人とでは状況も、立場も、何もかもが違う。確かに、ハレが女好きの血を引いている事は
疑いようも無い事実だが」
「そこは否定してくれ。頼むから」
「だがな、ハレにはグゥがいるだろう。保険医の時のウェダとは違う。いつも、傍にいるんだ」
「グ、グゥ……」
「見方を変えてみろ。あの保険医ですら、最終的にはウェダと結婚したのだぞ? その理由は何だったか覚えているか?」
「そりゃ、赤ちゃんが出来ちゃったから……」
「……違う。それもあるが、何より重要だったのは……ウェダが、傍にいたからだ。ハレの時と、違ってな」
「……ッッ!」
「安心しろ。グゥは、いつも傍にいる。ハレは大丈夫だ」
 ……そうだ。コイツは、虚言、悪言、妄言、弄言、言葉巧みに人をかどわかす事にかけては
とにかく右に出るもの無しだが、その実、正論を戦わせてもまったく隙が無い。そしてそれ以上に、
今のグゥから発せられる声にはオレの胸に深く染み渡る何かを持っていた。
 オレの中で長い年月をかけて凝り固まった巨大な不安の塊が、グゥの言葉でゆるやかに
融けていくのが解る。
「浮気も心配していないぞ? グゥが二人産んだら、切るから」
「なななな何をですかね!?」
「ああ、竿は残しておいた方がいいか? ならば潰そう」
「いやああああああ!!!!」
 ついでに、ついさっきの事で一時的に固まっていた小さな下半身の塊が、グゥの言葉で急速に
縮み上がっていくのも解った。
 わきわきと何かを揉むように手を動かすグゥから、股間を押さえて後ずさる。
 ……頼むから、未来の展望に光を照らすか雨雲をかけるかどっちかにしてくれませんかね。

「───ハレがグゥを意識してくれる瞬間、グゥがどんな気持ちでいるか、ハレに解るか?」
 そう言って、グゥはオレの頬に手を添え、ちゅっと軽く唇を交わす。
「これからも、遠慮なく愛でるがよい。グゥはそれが嬉しいんだぞ?」
「グゥ……」
 ……負けた。いや、最初からグゥに勝てるはずがなかったんだ。舌戦はもちろん、その笑顔に、
その眼差しにオレには逆らう力なんかありはしないのだから。


「……そう言えば、すっかり忘れていたな」
 はたと、何かに気付いたように顔を上げ、グゥはくるんと背中を向けた。
「日焼けした姿を、ハレに見せねばならんからな。ハレも手伝え」
 すっかり忘れていた、蓋が開きっぱなしの小瓶をつい、と指先で持ち上げる。
「え? で、でもあとは自分で塗れるだろ?」
「ほう。塗りたくなければ、グゥは別によいのだが?」
「…………」
 ───ああ、最終防衛ラインがみるみる後退していく。既に保険医という防波堤が瓦解した今、
このまま一直線にグゥという濁流に飲まれるリアルな予感が……いや、もはや確信と呼べる実感が、
ジワジワとオレの心を侵食していくのだった。

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