魔女 ◆IXRLXwC0Ds



カルラにはこのゲームの意図がよく理解できなかった。
強い者と戦いたいという考えや強いもの同士の戦いを見たいという思いならまだ理解できる。
実際にシケリペチム皇ニウェは、国二つを犠牲にしてまでも強者と戦いたいという願望を叶えようとした。
しかし集められた参加者の中には、明らかに戦闘に向かない女子供が多数いた。これでは大した殺し合いはできない。
殺し合いを行いたいのならば強者のみを集めればいい。そうすれば血湧き肉躍る戦いが行われる。
唯の虐殺を行いたいのならば人を集める必要はない。適当な場所で適当に暴れれるだけで欲求は叶えられる。
ゲームの管理者はいったい何を望んでいるのだろうか?

そんな彼女がこの島に送られて最初に気になったのは首輪のこと。
元々嵌まっていた奴隷の印である無骨な首輪は外され、代わりに小さくつるつるした首輪をつけられていた。
奴隷時代の日々、ハクオロとの契約、色々と思いがつまっていた首輪を勝手に外されたのは腹が立った。
しかしその一方では、これはこれで良かったのではないか、と現状を受け入れてもいる。
確かにカルラゥアツゥレイの名前を捨てた後の時間はいつもあの首輪と共にあった。しかしあくまでも過去だ。
自分はいつまでも過去を引きずる性格ではない、いつか過去と決別するときがくる。そう思うと今回のことはいい機会だった。
奴隷戦士であった事を忘れて、何にも縛られずに今を生きるのもまた一興かもしれない……そんな考え方もある。
しかし自分は殺し合いの最中に感傷に浸れる程のおめでたい性格はしていない。今は戦う場面だ、戦いに余分な感情は必要ない。

思考を切り上げてデイパックを調べる。これにはゲームに必要な武器が入っているらしい――早速中のものを取り出してみる。
知らない名前の建物ばかりの地図。それでも主ハクオロなら使いこなせるのかもしれないが、自分には使い道は思い浮かばない。
ただ名前が連なるだけの味気ない名簿。ハクオロ、エルルゥ、アルルゥ、オボロ、トウカ、五人の知り合いが参加しているらしい。
袋に入っていたのは食料品、パンが六個と水が二本。それぞれが見慣れない容器に入っている。開き方は……分からない。
小さな円盤。規則正しい針の動きからみて時を計る道具のようだ。どうやらこれでタカノのいう「時間」とやらは計れるらしい……のだが使い方が分からない。針が三本に数字が十二個、ややこしすぎる。
ランタンは夜目がきく自分には必要ないし、コンパス、紙、筆記用具らしい木の棒も使用する場面は思い浮かばない。
どうにも役に立たないものばかりで辟易する。使う予定がない以上は邪魔なだけなので食料以外は全て海に投げ込んだ。
そして最後に見つかった三つの道具。この道具は他とは分かれて入っていた。彼らのいうランダムな支給品なのだろう。
ファンシーな鞄に動物を模った縫い物、そして薄気味悪い被り物……確かに三つ……他にはない……あれ、武器は?
トウカなら喜びそうな品々ではあるが、生憎と自分からみればハズレもハズレ、大ハズレである。
武器にすることも防具にすることもできない。食べることもできない上に交渉材料にすらならないだろう。
怒りに任せて先程と同じように海に捨てようとしたものの、トウカやアルルゥの顔が思い浮かんで踏みとどまる。こんな物でも彼女達への手土産としての価値はありそうだ、捨てることはないかもしれない。
結局のところ自分の荷物に武器は入っていなかった。どうやらこの先しばらくは肉体一つで戦うしかないようだ。最も体の調子が悪いのでいつもの力は出せそうにない。早急に武器を調達する必要がある。
そして名簿で確認した名前、エルルゥとアルルゥ。他の仲間とは違い彼女達には戦闘力が無い。殺し合いにのった者に出会ったら容易く殺されてしまうだろう。
共に暮らした仲である彼女達には死んでほしくはない。探し出して守ってあげる必要があるようだ。

「エルルゥとアルルゥを探す、武器を確保する――当面の目標はそんなところですわね」

そんなこんなで二人を探してぶらぶらと海沿いを歩いていると内地のほうから戦闘音が聞こえてきたた。襲われているのは自分の仲間かもしれない。
即座に現場に急行しようとするもののやはり体が重い。まるで体重が普段の五倍にも六倍にもなったかのように感じる。
最初に戦闘音が発生していた現場を見つけることはできたものの、どうやら時間をかけすぎたらしい。そこにはすでに人影は無く、二つのデイパックが残されているのみだった。
人が走っている音はまだ聞こえている。まだ、近い。追いつけない距離では無さそうだ。
脇目も振らずに彼らを追うか、ひとまずこの場に残って荷物を調べるか、選んだのは後者。戦闘に参加するのは武器を確保してからだ。
今度こそは強い武器が入っている事を願って二つのデイパックから中身を取り出す。

入っていたアイテムは、酒瓶が五本、絵の描いてある紙束、器に入った船、大きな人形。

…………殺し合いをさせる気があるのかすら疑問に思えてくる。とりあえずは食料と道具を全て自分の鞄に移したものの、大目にみても武器になりそうなのは人形と酒瓶だけ。
いや、他の道具にも「武器」として支給されている以上は武器としての自分の知らない何らかの使い道があるはずだ。さもないといくらなんでも不自然だ。
だが自分が欲しいのはもっと分かりやすい武器だ。そのためにもいまだに争っている彼らに接触する必要がある。
自分の戦闘力についてはまだ不安が残るがこれ以上考えても仕方がない、支度を終えて荷物を背負う。いくら力が弱っているといっても自分はギリヤギナだ、戦に負けるつもりは毛頭ない。
最後に景気づけに酒を一本飲んで、追跡を開始した。進むは戦闘民族ギリヤギナ、抱くは仲間への愛、その装備は……右手に人形、左手に酒瓶。


どうみても間に合わせです。本当にありがとうございました。



 ◇ ◇ ◇



純一を探して歩いているうちに気づいたことが一つ、この島は広すぎるのである。
それは単純だがとても重大な問題。これでは闇雲に探し回って純一を見つけられる可能性は限りなく低い。
だからといって名案があるわけでもない。大した所持品も有力な情報も無い今は、ただ歩き回るしか手が無いようだ。
些か惨めな結論に従って芳乃さくらは朝倉純一を探して闇雲に歩き続ける。その行程で海岸線から離れ、防風林を越えて農家の連なる地帯に差し掛かかる。
そんな時に、その音は耳に入ってきた。殺すとか死ねだのと恐ろしい言葉を言い合う刺々しい声、時おり聞こえる打撃音。明らかに人が争っている音だ。
背筋が寒くなる。
「参加者全員は協力してすぐに島から脱出する。もちろん誰も殺し合いなんてしない」
純一の敵を殺す覚悟はしたものの、心の中にはまだそんな甘い妄想があった。
さぁ、殺しあえ と一方的に告げられたところでそれに従う人間なんているはずがないという自分の中での常識。
しかし、その常識は呆気なく打ち砕かれた。実際に殺し合いをしている人間が……いた。
見つけてしまった以上は、彼らを殺す道か殺さぬ道か……どちらかを選ばなければいけない。ここが引き返すことができる最後の分岐点だ。
殺さなければ、見逃した殺人者に純一は殺されるかもしれない。
殺したならば、大罪を犯した自分を純一は許してくれないかもしれない。
――第三の選択肢もある。それは彼らの戦いに干渉しない事。このまま放っておくだけで生き残りは片方だけになる。それからでも選択するのは遅くはないだろう。
ううん、違う。それは逃げだと思う。問題は先送りにしちゃいけない。
そう、自分は純一が好き――純一のためなら何だってするし、何だって差し出す覚悟はあるよ。
他のどうでもいい人間を殺すくらいどうってことない。それに悪事はばれなければ罪にはならない。
純一の敵は純一にばれないように殺せばいい、そうすれば純一はいつもの微笑みをもって自分を迎えてくれるだろう。

「お兄ちゃんの敵は――――おっ死んじゃえぇぇぇぇぇぇ!!!」

そうと決まれば早い。茂みから飛び出してマシンガンを乱射する。これで殺戮者達は穴だらけの無惨な死体をさらす事になるはずだった。
しかし誤算があった。思っていたよりも銃の反動が大きい、どうにもうまく標準が定められない。これでは銃を撃っているというよりは銃に振り回されている状態だ。
そしてこちらが戸惑っているうちに、争っていた二人は自分達の荷物を放って逃げ出てしまった。好ましくない状況だ。
人目は避けたいので場所を変えるのも好ましくない。できればこの場で仕留めたかった。
しかし、相手が逃げ出した以上は追うしかない――純一の敵は逃がすわけにはいかないのだから。


「待ってぇぇぇ――――ここでボクに殺されてぇぇぇぇぇぇ!!!」

敵を追うためにマシンガンを持ちながら全力疾走、大した重労働ではあるが純一のためを思えば我慢できる。
しかし、無情にも相手との距離は離れていく。理由は分かっている。考えるまでもない。
第一にマシンガン持ちと無手では速度が違う。この銃は持っているだけで疲れてくる。それを抱えて走っているのだ、かかる負担は比べものにならない。
第二にそもそもの足の速さが違う。情けない事に自分は短足で運動不足、すぐに息が上がってしまった。こんな事になるのならもっと運動に力を入れておけばよかったと後悔している。
追いかけても、追いかけても、追いつけないもどかしさ。だんだん焦りが大きくなってくる。
そしてついに致命的なミスをしてしまう。焦りすぎて足元の確認を怠ってしまったのか――足がもつれて転んでしまった。弱り目に祟り目、倒れた自分を待っていたのは柔らかい土ではなく硬く冷たいコンクリートだった。
思いっきり足を挫いてしまった。痛い、すごく痛い。立ち上がろうとしても足が立たない。骨が折れたのかもしれない。
「お願い、動いて――動いてよ。あいつらを追いかけなきゃ。立たなきゃ……走らなきゃ……なんで動かないの……うぅ……」
走っているうちに限界を超えていたのだろうか。もはや足はぴくりとも動かなくない。それでも、あきらめることはできない。
このまま彼らを逃がしてしまう――それは悪夢の幕開け――――瞼の裏に浮ぶのは純一が彼らに殺される光景。
そんなのは嫌だ。自分は純一に再会する日を夢見て生きてきた。再会した純一と過ごした日々は輝いていた。純一が自分を選んでくれた時の嬉しさは言葉ではいい表せない程だった。純一がいない世界なんて考えられない。
自分には分かる。彼らを逃す事は純一が死ぬという事だ。だから芳乃さくらの全てを賭けて彼らを追いかけなくてはならない。
だが、移動の要である足は動かない。ならばどうする? そう、それを魔女である自分は知っている――祈るしかない。
枯れない桜は自分の手ですでに枯らした。もう自分の望みを叶えてくれる存在は無い。だが、祈る。
億に一つ、いやもっと確率は低い。そんな本当の奇跡にすがってただ祈り続ける。


 ―『あいつらを追いかけたい』―  


――――――彼女の純粋な願いは――――――――――叶えられた。


  フワッ


気づくと地面の感触が無い。自分の体は浮いているようだ。地上十センチといったところか。
移動はイメージするだけでできるようだ。確かにこれなら足を怪我していても彼らを追いかけられる。
今、舞台は整った。自分のやるべき事はひとつだけ。誰かが与えてくれたこの奇跡を無駄にはしない。




   絶 対 に 逃 が さ な い



 ◇ ◇ ◇



ゲーム開始から30分。いまだにG-8南部では泣き声の二重奏が響いていた。
涙を流しているのは土見稟と蟹沢きぬ、どちらも大切な者を亡くした人間である。


リシアンサスは自分の目の前で短い生涯を終えた。
自分を求めて神界からやってきた笑顔の可愛い頑張り屋な女の子。明るい彼女に自分は惹かれた。
彼女の悩み、彼女の体に眠る報われないもう一つの人格の事を知った時には驚いた。だが、自分が二人と親密になっていくうちに彼女たちの間にあった軋轢はいつしか取り除かられていった。
そうして悩みをなくした彼女と正式に付き合い始めた矢先にこの仕打ち。優しいシアも勝気なキキョウも死んでしまった。別れの言葉も無かった。守ってやれなかった。
涙が止まらない。大切な人を失うのはこれで二度目だが、これだけは到底我慢できる事ではない。
「悲しんでいても仕方がない、行動を起こすべきだ」理性はずっと囁いている、しかし堰を切ったように溢れている悲しみの感情は自分を立ち直らせてくれない……


近くでガサゴソと物音がする。さっきまで自分と一緒に泣いていた女の子は、もうすでに立ち直ったらしい。今は荷物を調べているようだ。
たしか彼女のほうも友達が亡くなったはずだ。彼女も悲しみにあけくれていた。だが自分よりも先に現実に復帰した。彼女は立派だ。
そうだ、自分も何かをやらなくてはいけない。男ならしっかりしなければ、我慢だけなら誰にも負けない土見稟の名前が泣く。
立ち直るきっかけをくれた彼女に感謝する。その彼女は荷物の整理を終えたようだ、こちらに近づいてきている。
先ほどまでのふがいない自分を見るに見かねたのだろう。果たして責めるられるのか、慰められるのか。

「おい、泣き虫、鞄よこせや」

どちらでもなかった――そういえば、自分も荷物を渡されていた。デイパックを開いてとりあえず名簿を取り出す。
知っている名前は三つ。ネリネ、楓、亜沙先輩、女の子ばかりだ。
今も自分の事を待っているかもしれない女の子達。俺は皆を守らなくてはいけない。悲劇は繰り返させない。
シアの事は一度忘れる。家に帰った後に神王のおじさんと思いっきり泣こう。
今は皆に好かれているいつもの「土見稟」であろう。シアだってめそめそする自分を愛してくれたわけではない。
人が傷つく事が前提のゲーム。こんなものを自分は許すわけにはいかない。仲間を集めて絶対にゲームをやめさせるんだ。

結論が出たところで、支給された武器を確認しようとデイパックを探すも…………無い。彼女の方は再びガサゴゾと荷物の整理を始めている。
何となく嫌な予感がした……予感にしたがい彼女の方を見やると持っている鞄は二つ――――パクられてます……

「おいおい、人のものを盗るのは感心しないぞ……とにかくこれは返してもらうからな」

急いで取り返す。中にざっと目を通すと……良かった、まだ何も抜かれてはいないようだ。
まったく油断も隙もない。しかし、自分は人の荷物を盗る人間よりもだらしなかったのか……少し悲しい。
そして、当の窃盗犯はなぜかこっちに文句をいってくる、実にやるせない。

「おい、何すんだよ、返せよー。ボクには武器がいるんだよー」

「……よく分からないが、この鞄は俺のものだ、君には君の鞄があるだろ」

「何いってんだよー。オマエのものはボクのもの、ボクのものもボクのもの、有名なことわざだぞー。ほら、早く渡せって」

……どうやらいままで自分の周りにはいなかったタイプの人のようだ。
自分勝手で人のいうことを聞かない、初対面でもフランクな物言い、――簡単に表現するとはた迷惑なお馬鹿ちゃん。
対応がいまいち分からない。ともかく我慢して会話を続けるしかないようだ。
「あまり調子に乗るなよチビ。訳の分からんことを抜け抜けとぬかしやがって、いったいなんなんだよこん畜生」
しかし呟いてでもいないとやってられない。まったくこの子の両親はどういう教育をしてきたんだ。

「この野郎ーー、ボクのことをチビっていったなーーー、ぶっ殺す!!」

おいおい、聞こえてたのかよ……こればかりはこちらの失態か……
とりあえず謝っとくか……いや、どうやら自分はこの子の逆鱗に触れてしまったらしい。
ゴ ゴ ゴ ゴ ……背後に擬音が見えるくらいに怒っちゃってます。結構まずい場面?

「歯ぁ食いしばれぇ! 修正してやるっ! ボクのこの手が真っ赤に燃えてるぜぃ!!」

うわ、飛び掛ってきた。おもわずはたき落とす。
体重が軽すぎたのか思いっきり地面に叩きつけてしまった。
カエルみたいに潰れちゃってる……流石に罪悪感を感じるな。

「ぶ、ぶったな。親父にもぶたれたこと無いのに、うぅぅぅ……」

げ、そういえばよりにもよって女の子に手を上げちゃったのか俺。
皆を守ると決意した矢先にこんな事を。我ながら最低だな……ともかく今度こそは謝らなくてはいけない。

「その……ごめんな!! ……悪気は無かったんだ。だけどなにせ突然だったかrグハッッッ!?」

痛タッッ――何だ? 何が起こった?
顔を上げると目に入ったのは腹部にめり込んでいる拳。

「へっへっへーー策士のボクにかかればこんなもんよ。ザマーねえなヘナチョコ野郎」

「オマエってさ、レオの奴によく似てるよ。ヘタレでチキンでビビりなところがさ」

「お、悔しいか、悔しいだろー。でもチキンだから何もできない、あははは」

そして、うずくまる俺の周りを飛び回りながらうるさく騒ぐチビちゃんが一人。
我慢しろ。相手は子供、俺は大人。何をいわれても子供の戯言。
我慢しろ。彼女は悪い子ではない。自分の一人目の仲間になってくれる子だ。
我慢しろ。辛抱強くいけ、何にせよまずはコミュニケーションをとるところからだ。

「そ、そうだな。あはは、あはははは…… お、俺が悪かった。このとおりだ、頭も下げる。だからさ、仲良くしよう」

「お、もう屈服したぞーーふっふっふー流石ボクだね。よーし、命令だ荷物をよこせ」

プチン。何かが切れた。いや我慢できないってこれ。
その後のことはよく覚えていない。お互いに意味のない事を言い合いながら掴みかかりあった記憶がある。
何なんだこの子供は。人が頑張ろうってときに喧嘩売ってきやがって、もう何かめちゃくちゃだ。
それに自分だけちゃっかりと武器持ってるしさ。何かの道具……拡声器か、普通に痛い。

だんだん冷静になってきた。冷静になると現状が好ましくないことに気づく。元々俺は喧嘩は好きじゃない。こんなことは早く終わりにしなくてはならない。
方法は簡単、やろうと思えば体格差で押さえ込める。でも、それは女の子を苛めてるみたいで嫌だ……他の方法は……思いつかない……困った。
そう漠然と悩んでる時に奴はやってきた――マシンガンを乱射しながら。

「お兄ちゃんの敵は――――おっ死んじゃえぇぇぇぇぇぇ!!!」

色々と突っ込みどころはあるんだけどさ、まずお兄ちゃんの敵とは何のことだ?
自慢じゃないが俺は人畜無害。人のことを傷つけるのは大嫌い。よって誰かの恨みを買ったつもりはない……土見ラバーズ関連以外は……
少なくとも銃口をむけられる覚えはない。隣の女の子も命を狙われるほどの悪い子ではないと思う。
だから、明らかな誤解を解くために会話しようとするものの――向けられるのは銃口。こちらの武器はデイパックに入ったままで離れたところに転がっている。
見事に手詰まりだ、困った。逃げるのか、説得するのか、どうする。とりあえず相談するか?
あれ……というかあいつはどこにいったんだ?

「逃げてるんじゃないもんね! これは戦略的撤退だからなーー覚えとけよーーーー」

とっくに俺を放って逃げ出してました。やっぱり自分勝手な子です。
だが足元に兆弾がきている以上は、一刻を争うほどにまずい状況なのは確かだ。
足元に転がっていた拡声器だけをかろうじて回収して急いであいつの後を追う。

「おい待てーーーー待てーーチビっ子ーーー」

「チビっていったなーーーあとで体育館裏にツラぁ貸せぇぇ!」

「待ってぇぇ――――ここでボクに殺されてぇぇぇぇぇぇ!!!」






ハァ、ハァ、二十分位走っただろうか。相手との距離が開いてきた。何とか逃げられそうだ。
どうやら一安心だ、やっと足を緩められる。ちなみにおチビとはまだ一緒にいる……そろそろチビってのもよくないな。名前を聞いておくか。

「そういえばお前の名前は? 俺は土見稟、リンは稟議の稟だ」

「何かキザっぽくていやな名前だなー。ボクの名前は蟹沢、なかなか立派だろ、な!」

「そうか蟹沢っていうのか――で、蟹沢はこれからどうするんだ。二人とも荷物を失った上で彼女に追われている状態、現状は好ましくないぞ」

蟹沢が喧しかったのが見つかった原因な事、そもそもの始まりは蟹沢が喧嘩を売ってきた事。
などなどは蟹沢の名誉のために伏せておく……最も苦い表情までは隠すつもりは無いが。

「ボ、ボクは悪くないもんねーー。だいたいオm…………え……お、おい。オマエあれ見ろよ」

「……同じ手に二度も引っかかる奴はいないと思うぞ」

「あ、あれ見ろって……あれーーー!!」

「ん、いったいどうしたんだ。幽霊でも浮いてるのか?」

いい加減しつこいので誘いにのって後ろを見やると――――さっきの某妹さんが浮いています、無表情で恐いです……ついでに追いかけてきてます。
え、空中浮遊って、魔法? 神族か魔族か……魔女っぽいから魔族かな。だが耳が短い魔族がいるとは知らなかった。
しかしあれだ、そんな事はどうでもいい。心から思う、魔法は反則だろ。サッカーの試合で突然相手チームが手を使いだしたようなものだ。

「「逃げろーーー!!」」


再び始まる逃走劇。浮いているからといって元の速度は上がっていないらしい、それだけがまだしもの救いである。
しかし何せ相手は浮いている。道の凹凸に気を割かなくて済むだけ先ほどよりは速い。今度は引き離すのは大変そうだ。
しかも先程と比べて一番違うのはあれだ。プレッシャーが違う。
無表情にブツブツ呟きながら、うらめしやーのポーズで追ってくる。まるで亡霊に追われているようで、精神にグッとくるものがある。
少なくとも拡声器を武器に対抗できる相手には全く見えない……そうだ、蟹沢に聞き忘れていたことがあったんだった。

「はっ、はっ、そういえば、はっ、はっ、お前は、はっ、はっ、何持ってきたんだ」

走っているうちに気づいたことだが、俺が拡声器を持ってきたように蟹沢も荷物から何かを持ってきているようだ。
もし強力な武器なら状況を打開できるかもしれないと期待してきいてみる。
だが見せられたのはゲームのケース、しかもギャルゲーです、ご丁寧にも箱には所有者の氏名まで書いてあった――鮫永新一。誰だよ。
がっかりだ。でも、わざわざこれを選んで持ってきたということは、蟹沢にとっての鮫永新一は大切な存在なのかもしれない。
忘れがちだが、蟹沢も女の子だもんな。こいつが再び鮫菅に会えるように俺が守ってやらないとな。
そうだ。もう、誰も傷つけさせない。もう、誰も悲しませない。俺が皆を助けるんだ。



「待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て
 待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て
 待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て」





でも正直なところ……とても恐いです。
果たして俺達は彼女から逃げ切れるのでしょうか……



【G-7 路上/1日目 黎明】

【芳乃さくら@D.C.P.S.】
【装備:ミニウージー(残り15/25) 私服(土で汚れています)】
【所持品:支給品一式 ミニウージーの予備マガジン×2】
【状態:左足首捻挫、右足首の骨に罅、右足打撲、疲労大、強い執念(飛行の魔法の根源)】
【思考・行動】
基本方針:環の予知した未来(純一死亡)の阻止。
1:殺人嗜好者二人を逃がさない。殺す。
(2:純一を探す。)
(3:純一を殺害しうる相手は容赦なく殺す。 )

【備考】
※芳乃さくらは枯れないの桜(ゲーム管理者の一人)の力を借りて魔法を行使できます。魔法には以下の制限がついています。
  • 芳乃さくらの強い想いによってのみ魔法は発動します。
  • 強い想いが薄れると魔法の効果は消滅します。
  • 基本的に万能な桜の魔法ですが、制限により効果は影響・範囲ともに大幅に小さくなっています。

【土見稟@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【装備:なし】
【所持品:拡声器】
【状態:疲労】
【思考・行動】
基本方針:参加者全員でゲームから脱出、人を傷つける気はない。
1:芳乃さくらから逃げる。
2:蟹沢きぬを守る。
3:ネリネ、楓、亜沙の捜索。
4:もう誰も悲しませない。

※シアルートEnd後からやってきました。

【蟹沢きぬ@つよきす】
【装備:なし】
【所持品:フカヒレのギャルゲー@つよきす】
【状態:疲労】
【思考・行動】
1:土見稟と一緒に芳乃さくらから逃げる。
2:鷹野に対抗できる武器を探す。
3:レオの事が心配。

【備考】
フカヒレのギャルゲー@つよきす について
プラスチックケースと中のディスクでセットです。
ケースの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してあります。
ディスクの内容は不明です。

【カルラ@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄】
【装備:ケンタ君人形@ひぐらしのなく頃に 日本酒の空瓶】
【所持品:デイパック 食料×3と水×3 羽リュック@Kanon 虎玉@shuffle ナポリタンの帽子@永遠のアセリア
 タロットカード@Sister Princess ボトルシップ@つよきす 日本酒×4(消費中)】
【状態:健康、少し酔い?】
【思考・行動】
基本方針:気の向くままに行動。
1:人に接触する。(現在追跡している相手を優先)
2:エルルゥとアルルゥの保護、武器の調達。

【備考】
  • 制限の関係がで元々の首輪は外されています。(重すぎて行動に支障が出るため)
  • 支給品一式はデイパックと飲食物を除いて全て海に捨てられました。

※カルラと他の三人の間には五百メートル以上の距離が開いています。
※G-8の畑にデイパックが二つ放置されています。(ランダムアイテム・水・食料が抜かれています)


030:廃止鉄道の夜 投下順に読む 032:最高なお先真っ暗
030:廃止鉄道の夜 時系列順に読む 034:パートナー
芳乃さくら 042:宣戦布告
土見稟 042:宣戦布告
蟹沢きぬ 042:宣戦布告
カルラ 043:戦い、それが自由







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