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そらのむこうまで広がる未来 ◆UcWYhusQhw


【episode1:いとしいきもち act:武、きぬ、瑞穂、沙羅、梨花、  ~武~】

この島に連れてこられ殺し合いを強要されてから約3日間。
俺達は必死に抗って遂にはあのディーを倒した。
アセリアの命と引き換えに。
アセリアだけじゃない。あゆも優も失った。

「アセリアさん……アセ……リアさん……馬鹿です……勝手に決めちゃって……」
瑞穂の声が悲しく響く。
声が出ない。
何をいえば云いかなんかよく解らなかった。

瑞穂とアセリアにはきっと誰にも分からないほどの絆があったと思う。
そんな瑞穂だからこそここまで悲しんでると思った。

でもこのまま泣いていられる訳には行かない。
失った命は二度戻ってこない。
だけどその人達の思いは残された者に残るから。
圭一、智代の思いが俺に継がれたように。

だから俺は瑞穂に声かけなきゃならない。そのことを伝える為に。
いますぐ立ち直れなんかいわない。
でも今は前を向いて欲しいんだ。
「瑞穂……お前はアセリアの事は好きか?」
「え……?」
「いや難しい事じゃない……ただ単純にアセリアの事さ」

瑞穂は驚きながらも直ぐに答えた。
涙で顔を濡らせて。

「……はい……もちろんです……好きです! 大好きだった! 最後まで一緒にいたかった!」

瑞穂の大きな叫び。
それは瑞穂が本当にアセリアの事が好きだったことを示していた。
なら簡単な事だ。

「なら……いつまでも泣いてられないだろ? 瑞穂」
「どうして……ですか?」
「アセリアは最後になんて言ってたか憶えてるか? お前が大好きだって、生きて欲しいって」
「あ……?」
「アセリアはお前が好きだからこそ命を懸けた……ただ生きて欲しいから……何よりも大好きなお前の為に。
 そんなアセリアの事好きなんだったらいつまでも泣いていられないだろ? アセリアはそんな瑞穂は見たくないと思うぞ」

そう……俺も同じだ。
つぐみは俺の事が好きだった。
だから全力で俺を治した、命を懸けて。
俺もつぐみが大好きだ、それは一生変わらない。
なら俺は全力で生き続けなければならない。
つぐみはそれをきっと望むのだから。

「そうだぜ! 瑞穂。ボクもそうだぜ。大切な……大好きな人を失った……でも僕は泣いてられないんだ……純一はそんな事きっと望まないから」

きぬもそう俺に続く。
そうか……きぬはこの島で大切な人を作って、そして失ったのだった。
きぬはそれでも進み続けた。
生き続けるために。

それはきぬにだけじゃない。
「そうよ。瑞穂。こんなとこで泣きじゃくっているのは貴方らしくないわよ? 私も生き続ける……潤も風子も望んでいるのだから……」
「瑞穂……きっとアセリアも望んでいるに決まってじゃない。生きることを。皆、そう。アセリアも恋太郎も双樹も」

梨花も沙羅も生き残ってきた者、全員。

俺達はそう進まなきゃいけないから。
それが義務でもあるんだ。
だから生きる。
どんなに辛くても。

「皆……ずるいじゃないですか……そんな事をいわれたら私がアセリアさんを裏切ってるみたいじゃないですか……」

瑞穂がポツリとそう呟いた。
嗚咽を漏らしながらも。

「私はアセリアさんを裏切るわけにいかないんです……だから私は……」

前を向く。
涙をたっぷりためながらも。

「生きていかなきゃならないんですね。私は最後まで……どんなに悲しくても……それを乗り越えて……生きなきゃいけないんですね」

そして笑った。
屈託のない顔で。

「私は生き続けます。アセリアさんの思いなんだから。私は……アセリアさんが大好きです、だからこのいとしいきもちを忘れずに生きていきたいと思います」

そう瑞穂は宣言する。
今度こそ迷いない顔で。
絶対の意志を持って。

「そうだ。だから行こう。もう立ち止まるわけにはいかないもんな」
ならもう俺たちがここに留まっている理由はない。
ここに居ても何も始まらないから。
俺達は進み続けるべきだから。
「ええ行きましょう」
仲間達が答え、出口の方に向かっていった。
大切なものをかかえて俺も向かう。
それは
「優……ゆっくり休めよ」
優の亡骸。
せめて埋葬して安らかに眠ってほしい。
これが優にできる事。
そう思ったから。

「じゃあ行くか」
そして俺達は出口に立つ。
未来に進む為に。

その時、何故だかアセリアの声が聞こえてきた気がした。
本当に気のせいかもしれないけど。

でも聞こえた気がした。
あの無垢な笑顔で。

俺達の事を祝福する声が聞こえた気がした。


【episode2: hallelujah act:武、きぬ、瑞穂、沙羅、梨花、羽入、鈴凛、メカ鈴凛 ~梨花~】


私達はディーと戦った場所を去りヒンメルの扉をくぐり、Lemuに戻ってきていた。
瑞穂も先ほどから比べると随分元気なっていて私も何故だか少し落ち着いた気分になる。
後は鈴凛とあゆと合流するだけ。
「羽入、ここは脱出する分の力は残ってるのよね?」
「はい、それぐらいなら大丈夫なのです」
羽入はそう頷く。
そう、なら安心ね。
あ、そういえば
「羽入、貴方がここにいるのならあゆは大丈夫だったのね?」
「……それは」

羽入はお茶を濁すように視線をそむけた。
私は予想と違う反応され驚いた。
あれ、おかしい。
武まで悲しそうな顔をしてる。
まさか……まさか。
私は急に嫌な予感に襲われた。
それは最悪の予感。
起きてはならない事。
アセリアに続いて、何てなっちゃいけない。
嫌だ、もう。
もう仲間を失って欲しくない。
怖い。

私はその恐怖を追いはらうように羽入に問いかける。
「ねえ……あゆは!」
お願い! 大丈夫だっていって!
お願いだから……

羽入が口を開こうとするその時

『あー聞こえてる? 倉成? 鈴凛よ』
「うおい!? びっくりしたじゃねーか!?」

唐突に鈴凛の声が聞こえてくる。
え? どこから?

「あーこちら、蟹沢きぬ! いきなりビックリしたじゃねーか!?」
『そんな事言われたって……倉成に変わってもらえる?』
「まあ……いいけどよ」

きぬが何か機械を取り出して話しかける。
あれはトランシーバー?
そういえばきぬと武で分け合っていたっけ。
どうして鈴凛が?
武から貰ったのかしら。
それにしても音がでかいトランシーバーね、音がこっちまで聞こえるわ。意味ないじゃない。

だけどそのお陰で私は羽入から聞くチャンスを失ってしまった。
そのせいで私の心はざらついたまま。
どこかまだ不安だった。

武がきぬからトランシーバー受けとり
「鈴凛? 武だ」
『倉成……決着は?』
「終らせた。全部。そう……全て、だ」
そう言った。
その一言は凄く深くそして重いもの。
倉成武というこの島で地獄を見て、そして修羅に落ち、再び舞い戻った男の言葉だった。


『そう……終わったんだ……こっちも終わったよ……脱出の手段が整ったわ』
「「本当か!?」」
その言葉に武のみならずここにいる全ての人間が反応した。
そうだった、ディーは倒したものの脱出する手段が見つかってはいなかったのだ。
鈴凛はそれを探していたのね。
これは本当に朗報だ。
『ええ……そのためには一旦地上に戻らなきゃいけないんだけど……大丈夫?』
「ああ……羽入がしてくれるそうだ」
傍にいる羽入がコクンと頷いた。
羽入もあの時力を大部分使って辛いだろうに、それでも気丈に笑っている。

『じゃあ何処で待ち合わせしょうか?』
「そうだな……ドリットシュトックの司令室でどうだ? そこに仲間がいるんだ」
『解ったわ』

あ、やっぱあゆは無事なのね。
ならあゆを迎えに行かなきゃ。
途端、私は安心した。
不安は直ぐに無くなっていた。

『じゃあ……そこで会いましょう。それじ……』
「あー! ちょっと待って!」
鈴凛が通信を切ろうとした時沙羅が突然大声をあげた。
そして武の通信機をぶんどり
「聞こえてる? こちら沙羅」
『……え、ええ……どうしたの?』
「お願いがあるのよ」
『お願い?』
沙羅はそっと目を閉じて胸に手を当てそのお願いに口にする。
まるで懐かしい思いで語るように。

「ツヴァイト・シュトックに川澄舞の遺体があるんだけど……連れてきてくれない?」
『……どうして?』
「埋めてあげたいのよ……私達の仲間と一緒に。色々あったけど……それでも。舞は言葉通り命の恩人だから」
『……解ったわ、場所……』
『それは私がわかります。マスター』
「メカ鈴凛! 合流できたのね!」

メカ? 
何よ……それ?
鈴凛って何か関係するのかしら?

『白鐘沙羅、お任せください。川澄舞は必ず』
「お願いね……」
「なら、ボクもお願いするな」
きぬが沙羅からまた通信機を奪う。
元々彼女のものだけど。
きぬも少し悲しそうに言葉を呟く
「ヒエン知ってるか? あいつの遺体も一階にある。一緒にお願いできるか?」
『かまわないけど……ヒエンとなんかあったの?』
「まあ、色々とな」
そう呟いたきぬは笑顔だったけど悲しそうだった。
きぬも何かあったのかな?
私にはわかんないけど、でもきっときぬにとっては大切な事なんだろう。
それはきぬにしか分からない大切な事なんだ。

『解ったわ……メカ鈴凛お願いできる?』
『はい、マスター』
「頼んだぜ」
『最後に倉成に変わって』
きぬはそれに頷き、武に渡した。
『倉成、聞きたいんだけど……そちらで最終的に生き残った者は?』
その問いに武の表情が強張った。
私のほうを向いて。
何か伝えたくないという風に。
そんな武の表情に私の心が揺れる。
どうしてそんな顔をするの? やめて、そんな顔をしないで。
私はまたあの不安が戻ってきた。

そしてその不安は的中した。

「こちらの生き残りは……倉成武、宮小路瑞穂、蟹沢きぬ、白銀沙羅、古手梨花、羽入……以上だ……」

ああ……嘘よ。
そんなの。
どうしてあゆの名前が呼ばれてないのよ。
ねえ武!

「おい……ちょっとまてや、武。あゆどうしたんだよ」
「そうよ、何であゆが……まさか」
沙羅ときぬも口を出す。
彼女達もあゆとはすごく仲が良かった筈だ。
『……了解。では合流場所で会いましょう』
「ああ」
そこで鈴凛との通信は終わった。


通信を終えた武がこちらを向く。
武は辛そうに言葉を語る。
一字一句確かに。
「あゆは……逝った……黙っててすまない」
その言葉を聞いた瞬間皆は押し黙った。
仲間が死んだのだ、辛くないわけがない。

しかし何で武だけがそれを知ってるのだろう、そう思った時私は羽入の方を見る。
羽入は私の眼を見ずに避けた。
ああ、そういう事か。

羽入が伝えたのだ、武に。
恐らくディーと戦っていた時に。
そう思った途端唐突に怒りと悲しみが込みあがってくる。

「どうして! 直ぐに教えてくれなかったのよ! 羽入! 貴方解っていたんでしょ!」

羽入へ言葉をぶつける。
こんなことをしてもあゆが帰ってくるわけではないのに。
でも何故だが悔しくて。
あの時知ってればもしかしたらと、悲しいほど淡い気持ちが溢れてきて止まらない。

「どうして黙ってたのよ……どう……して」
「……梨花、ごめんなさいです」


それはただ単純に私の心を映す。
羽入を責めたってなにもならない。
わかってる、わかっているのに。
もう守っていてくれたあゆがいないと考えるだけでただ悔しくて、悲しくて。

「どうして……どうして」

もうそれは嗚咽にしかならなくて。
どうして、という言葉は羽入に言ってるのか、それともあゆに言ってるのかもう解らなかった。
そしてただ私はそういい続ける。
答えを求めるわけではなく、ただくりかえす。

「もう……責めんなよ、羽入をさ……梨花」
そんな私に声をかけたのはきぬ。
きぬも目じりに涙を溜めていた。

「あの時、梨花にその事を伝えたらどうなっていたか解るだろ?」
「それは……」

そんなのわかってる。あの時伝えてたらディーに集中なんて出来はしない。
でも、それでも。
それを認めたくなくなんかなかった。
私の意固地になってそれを否定する。

「意固地になんなよ。解ってるんだよ。なあ皆」
そのきぬの言葉に皆が頷く。
きぬは私に諭すように
「文句あるなら、あゆにいおうぜ。ボクも一杯いってやるからさ、だから今は羽入に言わないでおこうぜ」
そう言った。

なによ、ひどいじゃない。
皆悲しいのに、耐えて。
私だけが泣いてるなんて子供みたいじゃない。

いいわ、解ったわよ。
「あゆの所にいきましょう。文句沢山言ってやろうじゃない……それと羽入……ごめんなさい」
「いえ……いいのです……梨花の気持ちは伝わったから」
その私の言葉に皆が頷いた。
文句沢山言ってやるんだから、あゆ。
今は少しだけ気持ちを抑えて。

そして誰からか分からないけど歩き出す。

あゆの眠る所に。
沢山の文句を言いに。





そして辿り着いた。
あゆがいる場所に。
あゆは寝ているように横たわっていた。
でもそれは寝ているのではない。
紛れも無い死。
何度も目にした死だった。
あゆはそれでも安らかそうに、今にも起き出しそうで。でもそれは永遠に無く。
そう、亡くなっていた。

「あ……ゆ……そ……う……なのね」

私は自然にまた泣き出してしまった。
あゆは最後に何を思っていたのだろう。
独りで静かに逝って。

「私、約束守れなかった。アセリア失っちゃった……でも帰ってこれた……貴方の元に。運命を変えて……でも……でもね」

あゆとの約束少し守れなかった。
アセリアを失ってしまったから。でも帰ってくる事ができたよ。
なのに、なのに。

「どうして……貴方が逝っちゃうのよ……私を泣かしてよ……アセリアを守れなかった事を」

どうして……。
悲しみ、怒りが同居してなんだか分からない。
ただあゆに言えることが一つがある。

「馬鹿……貴方馬鹿よ……本当に! もっと生きなさいよ! 私たちが帰ってきたんだから笑って出迎える様にしなきゃ駄目じゃない!」

馬鹿、本当に馬鹿。
こんなところで逝っちゃうなんて。
なんて馬鹿。
私を怒ってよ。
でももう怒る事も泣く、罵声を言う事もなくただ動かない。

「梨花……あゆは仲間を守ったんです。命を懸けて……そんなに強く言わないでください」
羽入の慰める声が聞こえる。
仲間を守った?
確かにそうね、でもね。
そうでもね、私だって

「私だってあゆの仲間なのよ! 私はあゆを守りたかった! だってあゆは仲間なんだから! 私は悔しい! 守れなかった! 大切な仲間を、また!」

そうあゆは大切な仲間。私の大事な仲間。
そうなのだ、私は悲しいとか怒りだけじゃない。
悔しいのだ、守れなくて。
あゆを守れなくて。
私を信じてくれたあゆを。
あの時、私がしっかりしてれば仲間を守れた。
悔しい。
悔しくて、悔しくて。
私はまた生かされ続けて。

「馬鹿、あゆの馬鹿……私の馬鹿……もっとしっかりしなさいよ……ばかああああああ……うわあああああああ」

もう言葉はいらない。
私は泣き続けた。
ただ感情に任せて。
たった独りで逝ったあゆの為に。
私はただ泣きあゆに縋った。

「おい……おめー……なに死んでんだよ……おめーはボクに生きろっていっただろ……ボク達と一緒に脱出するって言ったじゃんか……それなのに何勝手に死んでんだよ。
 人を散々励ましてさ……ボクを生かしてさ……それなのに勝手に死ぬんじゃねーよ……この馬鹿野郎……この大馬鹿野郎!」
「そうよ……あゆ。私達3人であの時生きようって約束したじゃない……私たちの事、お人好しとか言って……あんたも結局そうじゃない。
 一人でかっこつけて……馬鹿みたい……本当に馬鹿! この馬鹿ああああ!!」

きぬも沙羅もあゆに追い縋り泣いていた。
彼女達は短い間でもあゆと確かな絆を築いてた。
その彼女たちも泣いてる、あゆを思って。

「ほんと……馬鹿なんだから……」

私達はそのまましばらく泣き続けた。
あゆの為に。
最後まで仲間のことを思ってくれたあゆの為に。

この部屋に響くのは私たちの泣き声だけ。

あゆがどうか安らかにいられる様にと。

泣き続けた。







「倉成、ただいま」
程なくして鈴凛がこの部屋にやって来た。
後ろには鈴凛に似た人が。
恐らくアレがメカ鈴凛なのだろう。
メカ鈴凛は2人の遺体を持ってきていた。
あれがカニと沙羅が言っていた二人なのだろう。

私達はやっと泣きやんでいた。
まだ、悲しいけど。
大丈夫、いつまでも泣いてられない。
私達ができる事は生き続けることだから泣いてられないのだ。
だから、うん、もう大丈夫。

「終わったのね……倉成」
「ああ……終わったんだ」
「そう……」
鈴凛と武の短いやり取り。
でもこれで十分だった。
もう凄惨な殺戮遊戯は終わったのだ。
そしてその生き残りはここにいるメンバーだけ。
ただ、それだけなのだ。
私達は後は脱出するのみ。

「じゃあ……脱出方法を教えるよ。誰か港でクルーザーを見た人いると思うんだけど?」
「ええ……私が見たわ……もしかしてそれで?」

沙羅が名乗り出る。
港にクルーザー? そんなのあったのね。

「そう……アレは本来トラップなんだけど、そのトラップを解除できれば普通に使えるわ。聞いた話なんだけど島の外に出れば脱出できるらしいわ」
「本当なのかよ……それ?」
「わからないわ……でもそれしか頼るものはないわ」

本当かしら?
でも確かにそれしか頼るものないのだ。なら

「いいわ。それでいきましょう。それしかないのなら仕方ないわ」
「そうだな。それで行こう」

皆が賛同した。
生き残るのならここにはいられないから。
そんな皆に鈴凛は
「解ったわ……じゃあ羽入お願いできる?」
「お任せくださいなのです。取り敢えず何処にでましょうか?」
「ホテルがいいわ。あゆを埋葬したいもの」
そう、あゆを埋葬してあげたい。
ことみとあゆの大切な友人、亜沙の隣に。
できれば3人で手を取り合って笑って欲しいのだ。
私のエゴでしかないけど、きっとできるはず。
そう思って。

「じゃあいきます……」
羽入がそういうと私達は目を瞑り精神を集中させた。
次第に地面に溶けていくような感覚に襲われる。
そして意識を失う瞬間、瑞穂の言葉が聞こえた。

「さよなら、LeMU。さよならアセリアさん。私達、笑顔で生きてきます」

そうして私達は戦いの舞台となった海底の孤島LeMUから去った。

それぞれ失ったもの、得たものを思って。





【episode3:オルタネイティブ act:武、きぬ、瑞穂、沙羅、梨花、羽入、鈴凛、メカ鈴凛 ~沙羅~】





私達は気付くとホテルの前にいた。
驚くぐらい本当にあっという間だった。


「戻ってきましたね……またここに」
「ええ…あゆ達を埋葬しましょう」
「白鐘沙羅、蟹沢きぬ、川澄舞とヒエンです、どうぞ」
「ありがとう」
「おうサンキューな」
私はメカ鈴凛から舞の遺体を受け取った。
舞はあの時とかわらず安らかに眠っていた。
舞が犯した罪は赦されるものではないかもしれない。
でもそれでも埋葬したい。
それが助けてもらったお礼になるんだから。

「じゃあ最初に埋葬しましょうか」
「ええ、あゆ、ことみ達と仲良く、ね」

私達はまず仲間達を埋葬する事にした。
まず最初はあゆ。
皆疲れてはいたけど穴を掘る手を決して止めようとはしなかった。
ことみ、亜沙、智代と並んでいる所に一緒埋める。
少しずつあゆの顔に土が被る。
そして見えなくなった時にはまた私はなきそうになっていた。
本当、馬鹿みたい。

「じゃあな……ヒエン……ボク生きるからな」
次はヒエンという者。
私はよく分からないけど主催者の仲間なのにきぬを助けた人。
きぬはヒエンを見てる時は悲しそうに刀を握り締めていた。
きぬも強くなったな。私とであった時に比べて。


「優……秋香菜は任せろ」

次は優という人。
武の前からの知り合いだったみたい。
辛そうだ、武も。
武はどんな過去を送ってきたんだろ。
やっぱり聞いてみたいな。

「最後は……舞ね」
「あ、ちょっと待ってお願いがあるの」
「どうした、沙羅?」
そう最後は舞の番だ。
でも私は躊躇い一つのお願いがある。
それは舞に出来る恩返し。
自己満足にしかならないけど。

「舞はね……佐佑理って人の傍に埋めてあげたいの。きっと喜ぶから……確か公園にいるはず……お願い」
「……そう、わかったわ」
私の提案に皆乗ってくれた。
梨花やきぬは仲間を殺されたのにそれでもそれを赦してくれた、
本当に素晴らしい仲間に囲まれたな。
そのことがとても嬉しい。

「じゃあ……これでひとまず終わりか」
「待ってください」
武の言葉に瑞穂が止める。
何かしら?
瑞穂は何処からかとってきた花を持っていた。
それをみんなの墓の近くに置き
「アセリアさん……安らかに眠ってください」
手を組み祈った。

そうか、そうね。
アセリアも必要だよね。
そしてこの祈りが届くようにと。
私たち誰からとも祈りはじめた。
アセリアと皆の冥福を祈って。





「じゃあ……港で会いましょう」
「ええ、直ぐに戻ってくるから」
埋葬が終わった後私達は準備を始めた。
長い旅になるかもしれないから食料とかを多めに持った、何があるか分からないしね。

そしてあらからの準備が終わり出発することになり私は一時別れて舞を埋葬する為だ。
一人でもいいって言ったんだけど武もついて来る事になった、一応用心の為だそうで。
そうして鈴凛たちはメカ鈴凛があやつる車で向かっていった。
……相変わらず機械が機械を運転するのは不思議でならない。

「じゃあ俺達もいくか」
「……ええ」
私達も武の運転で向かう事にした。
幸い他に車があって本当よかった。
車で向かえば早く着く筈。

「それにしても……お前のその格好、くくっ」
「うるさいわね!」
武が私の格好を見て笑う。
さっきホテルで服を変えたんだけどまともなのがなかったのだ。
本当は着たくない。でも血まみれの服はきたくはなかったので仕方なく。
動きにくいし。
その服は

「お前にナース姿とか……どんな悪い冗談だよ」
「うるさーーーい!!! こんなの着たくないわあ! これしかなかったのよお」
「いってえ! なぐんな! 運転が!」

ああ、もう最悪。
どう間違えてホテルにナース服があるって言うのよ。
これは何かの陰謀か?
虐めでしかない。
ああ、そんなに笑うなあああ! 武!



そんな感じで終始馬鹿にされながら公園に辿り着いた。
公園には二つの遺体が曝け出されておりたぶんこれが佐佑理って人もいるんだろうと思った。
「……埋めてやろう、このままじゃ可哀想だ」
「ええ、舞も一緒に」
私達はそのまま舞も地面に置き、墓を掘り始める。
元々掘られていたせいかとても早くできた。

私は舞を真ん中に2人の少女を手をつながせ墓に埋め始める。
どうか、舞が佐佑理と幸せでいられるようにと。
そのつないだ手を離さないように。
ただ、それだけを願った。

「これで終わり……舞。どうかやすらかに……そしてありがとう」
そして土をかけ始める。
ただ思うのは命を救ってくれた感謝。
もし舞が地獄に落ちようとも佐佑理が傍にいられるように。
ずっと支えてくれるようにと。
手を合わせ願っていた。

「じゃあ……いくか」
「そうね……鈴凛達も待ってる筈だわ」
少し時間が経った後わたしたちはそのまま車に乗り込んだ。
私は最後にもう一度だけ振り返り
「ありがとう、舞」
最後にそれだけ言った。
もう振り返らない。
私はこれからも生き続けるんだから。舞の分まで。




「ねえ……武。聞きたいんだけど」
「なんだ?」
「貴方、どんな過去の持ち主なのよ? 気になって」
私は帰りの車の中でずっと気なっていたことを聞いてみた。
それは武の過去。
いったいどんな生活をしてきたのかと。
「そうだな……俺、何歳だと思う?」
「20歳ぐらいじゃないの?」
武はその返答に笑いながら
「違う……37歳の子持ちだ」
「嘘!?」
「本当だ。何でかというとな……」

そこから武の過去話が始まった。
正直凄まじい。
愛しい人を助けてたら17年寝ていてそれでいつの間にか子持ちとは。
信じられない。
でも最後はハッピーエンド。
その筈だったのに。

「こんなのに巻き込まれちゃうなんて可哀想だよ……こんなに苦労したのに」
私は悲しくなってしまった
武のあまりにも悲しすぎる結末に。
その運命に。
「確かに……つぐみも失った……でもな、それだけじゃない」
「え?」
「俺はいろんな人から教えてもらったこの島で。それはきっとこれからもきっと役に立つし素晴らしいものだと思う……それに」
「それに?」
「生きてれば何とかなるさ」

武のその言葉はとてもわかりやすく、でも武そのもの表してると思う。
これが倉成武の生き方。
倉成武って人間なんだなと思えた。
つくづく凄い、この人は。

「それで……お前帰ったらどうするんだ……一人なんだろ」
「そうね……」
武の言葉に少し気が重たくなる。
恋太郎もいないし双樹も居ない。
どうなるかなんて私にも分からない。

「もしよかったら家にこないか?」
「ええ!?」
「いや……ひとりならさ。皆でいたほうが楽しいだろ」
武のその誘いに驚く。
確かに少し魅惑的な選択肢のひとつ。
でもね、私が選ぶ選択肢はとっくに決まってる。

「お断りするわ。私の帰る場所はやっぱりあの小さいけど温かい場所なの。そう双葉探偵事務所なのよ……私は助手だけど探偵不在の時はしっかり守らなきゃ」
「……そうか」
「ええ。ごめんなさい」

そう私はどんな時でも同じ。
私は双葉探偵事務所の助手。
いつまでも、恋太郎がいなくても。
どんな時でも変わらないんだから。
だからあの大切な場所は私が守る。
いつまでも。

きっと喜んでくれるよね? 恋太郎、双樹。





私たちが港に辿り着いた時にはもう鈴凛たちは準備が出来ていた。
クルーザーに荷物を積み込み、私達が乗るのを待ってるだけ。
「お帰り、直ぐに出発するわよ」
「ええ、でも誰が運転するの?」
「それは私です。白鐘沙羅」

またお前か。
なんか機械が機械を……ってもういいや。
きっと触れてはいけない点だろう。
そう自己完結して船に乗り込んだんだけど
「せ、せまい」
「仕方ないわよ……そこまで大きくないんだし」
梨花の怒声が響く。
いやわかってるけどさ。
でもせまいのよ。

「それでは出発します」
メカ鈴凛の掛け声とともに動き出す。
私はかろうじて窓から見える風景を見て思う事。

「終わったわね……やっと」
そうやっと終わったその殺し合いの舞台をみて。
私はこれからも生き続けることを誓った。

そうして私達を乗せたクルーザーは大海に向かって進み始めた。



212:運命――SADAME―― 投下順に読む 213:手を取り合って飛び立っていこう
212:運命――SADAME―― 時系列順に読む 213:手を取り合って飛び立っていこう
212:運命――SADAME―― 白鐘沙羅 213:手を取り合って飛び立っていこう
212:運命――SADAME―― 宮小路瑞穂 213:手を取り合って飛び立っていこう
212:運命――SADAME―― 古手梨花 213:手を取り合って飛び立っていこう
212:運命――SADAME―― 羽入 213:手を取り合って飛び立っていこう
212:運命――SADAME―― 倉成武 213:手を取り合って飛び立っていこう
212:運命――SADAME―― 蟹沢きぬ 213:手を取り合って飛び立っていこう
212:運命――SADAME―― 鈴凛 213:手を取り合って飛び立っていこう
212:運命――SADAME―― メカ鈴凛 213:手を取り合って飛び立っていこう
212:運命――SADAME―― 倉橋時深 213:手を取り合って飛び立っていこう




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