Justice to Believe ◆VtbIiCrJOs



「でもなあ……やっぱ簡単に割り切られるもんじゃねえよなあ……」

 朝倉達と別れ、俺は一人森の中を歩いていた。
 理由は廃坑の隠し入り口を見つけるため、それは偽りの無い事実。
 だが俺にはもう一つ理由があった。
 朝倉のことだ。
 アイツはひたすら仲間を信じて、仲間を集めてこの島から脱出しようと考えている。
 ついさっきまで殺し合いを行っていた連中さえも。

 復讐のため殺し合いの中へ身を投じた坂上智代。
 自らが生き残るため数々の人間を煽動し、坂上智代がああなる原因を作った土永。
 朝倉はそんな連中さえも赦し、その手を差し伸べていた。
「あいつ……俺と風子の事も知ってるんだよな……きっと」
 放送で風子が死んでいることはすでに知っているはず。
 普通ならその時、何があったのかを聞くはず。
 なのに朝倉は何も聞こうとはしなかった。
 おそらくオレが眠っている間に梨花ちゃんが話していたのだろう。
 鷹野の言葉に惑わされ疑心暗鬼の末、風子を殺してしまったことを――

 無論、それはいずれ打ち明けなければならないことで、
 梨花ちゃんが俺を気遣って代わりに打ち明けてくれたのだろう。
 そして朝倉のことだ、それで俺を責めることなんて絶対にしないだろう。あいつはそういう奴だからな。
 だから重たい。
 むしろ口汚く罵ってくれたほうがいくぶん楽だろうか。

「殺されたから殺して、殺したから殺されて。それで一体何になる、か……あいつらしいよな」
 朝倉の言うことは正しいよ、そう正しすぎる。
 だけどオレはあいつみたいに割り切って考えられない。
 坂上や土永に何の憎しみを抱くことなく手を差し伸べることはできそうに無い。
 そして朝倉と一緒にいると、自分の犯した罪を丸裸にされて槍を突き刺されるように思えてくる。
 でも、この痛みに耐えなきゃならないのはわかってる。
 頭じゃあわかっていても俺の心はその痛みに耐えられるほど強くないんだ。

 だから半分逃げるように俺はここにいた。


 たったったったった


「ん?」
 足音がした。
 それも誰かが走ってくる音が背後から。
 俺は振り返る。
「り。梨花ちゃん!」
 振り返った目に映った光景は純一達と一緒にいるはずの梨花ちゃんが、
 俺に目掛けて跳び蹴りを放つ瞬間だった。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※


「うおぁぇぁ……こっ腰がぁぁ……」
 腰を押さえ悶絶する俺を尻目に梨花ちゃんは『してやったり』の表情でくすくすと笑う。
「私を置いていった罰よ、潤」
「なんで……朝倉と行かなかったんだ。ようやく圭一と会えるんだろ?」
「生きてさえいればまた会えるわ、それより潤を一人で行かすことのほうがよっぽど危険ね。それに――」
 梨花ちゃんは蹲る俺を真っ直ぐと見つめ言った。
「潤が無茶しないか心配だもの。おおかた風子のことで純一に負い目を持って居づらかったのでしょ」
「うぐ……」
 見事に俺の心中を言い当てられてたじろぐ俺。
「ほら図星。そんな人間をほっとけるわけないじゃない。私達、『仲間』でしょ」
 クールな梨花ちゃんの瞳に宿る優しさの感情。
 そうだ、俺は一人じゃない。
 こうして信頼できる仲間がいるんだ。

「ほら立ちなさい、廃坑の隠し入り口を探すんでしょう? 私も手伝うわよ。嫌だと言ってもついて行くから」
「ちぇ……わかったよ」
 俺に向かって手を差し伸べる梨花ちゃん。
 俺はその手を掴み、立ち上がろうとした。

「へっ――?」

 その瞬間梨花ちゃんの身体が浮いた。
 それもそのはず俺は高校生で梨花ちゃんは小学生。その体重差は歴然。
 俺は無意識に梨花ちゃんの手に全体重をかけて立とうとしてしまったのだ。
 当然梨花ちゃんは踏ん張れるわけもなく前につんのめり。
 俺はその反動で仰向けに転んでしまい――

 ぼふっ

 俺と梨花ちゃんは折り重なるように地面に転んでしまったのである。 

「ご、ごめん梨花ちゃん……」
 俺は梨花ちゃんの様子を見る。
 梨花ちゃんは俺の胸に顔を埋めるように倒れていた。
 そして梨花ちゃんの長い髪の毛が俺の顔にふわりと……

 どきっ

 ちょっ、ちょっと待て俺!
 今の『どきっ』て何なんだよッ!
 わかってるのか北川潤、いくらクールで大人びた口調とはいえ小学生だぞ小学生!
 いわゆるょぅι゛ょだぞ!
 お互いの同意があっても犯罪行為で逮捕されるんだぞ!
 つか俺は何を言ってるんだ。クールだクールになれ北川潤! こういう時は――


 日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、
 われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による――

 そう憲法前文を暗唱するんだ!

「ちょっと潤……気をつけなさいよ……」
 混乱する俺を気にも止めず立ち上がり服に付いた埃を払う梨花ちゃん。
(日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの――)
 よし、俺も落ち着きを取り戻してきたぞ! さすが憲法前文!
 俺も立ち上がり服の汚れを軽く払う。
「どうしたの潤……顔が赤いわよ?」
「あ、いや、何でも、何でもねえぜ。あはははは」
「?」
 不思議そうに首を傾げる梨花ちゃんを見て俺は胸を撫で下ろすのだった。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※


「ちょっと染みるけど我慢して」
 梨花ちゃんは俺の腕の傷に水をかけて傷の汚れを落としていた。
 水が傷口にかかる度に刺すような激痛が走る。
「ぐぅ……」
 俺は思わず声を漏らす。
「弾は抜けているようだから大丈夫よ。包帯の代わりはこのハチマキするわ」
「まあハチマキでも贅沢言えねえわな。止血と消毒が出来れば十分だぜ」
 野外での怪我でもっとも気をつけることは破傷風対策だ。
 戦場では戦死した人間よりも、負傷した人間が破傷風に感染して死亡する数のほうが多いと聞いたことがある。
 常に傷口を清潔に保つことが重要なのだ。
「潤……」
「どうした梨花ちゃん?」
「無理はしないで。それだけがお願い」
「ああ……わかってる」
「風子のことで負い目を持ってるのはわかるわ、でも私達は仲間よ。一人で抱え込まないで」
「なあ梨花ちゃん……朝倉に話したか? 風子のこと……俺が風子を殺したこと……」
「………………」
 梨花ちゃんは答えない、沈黙が場を支配する。
 ややあって、梨花ちゃんは口を開いた。
「ごめんなさい……潤が眠ってる間に話したわ」
「そうか……気にするな梨花ちゃん、いずれ話さないといけないことだ。朝倉と再会したときに俺の口からもう一度伝えるよ」
「そう……」
「朝倉は何て言ってた? まああいつのことだからな……俺を責めることなんて無いんだろ?」
「ええ……」
「だよな~あいつ、ホントいい奴だぜ、ほんと……」
 俺はやや自嘲めいた口調で語る。


「だから――苦しいんだ」
「潤……」
「むしろ口汚く罵声を浴びせてくれたほうが気が楽なんだよ。でも朝倉は俺を責めず、俺の罪を受け入れてくれた。
友達が殺されているのに、泣き言一つ言わなかった。自分を殺そうとする人間にもその手を差し伸べた。
悲しみも怒りも憎しみもあいつはその器に取り込んで、まっすぐに前を向いている。
俺はそこまで強くねえ……あそこまで覚悟決められねえんだ」
「そうね……私も純一のように強い人間じゃない。だからこそ私は純一の強さが心配なの」
「え……」
「純一はその愚直なまでの正義感で自己を維持している。
仲間を信じ、仲間を集めてこの島から脱出しようとする強い志。悲しみや怒りや憎しみから潰れてしまわないよう心を支える一本の柱。
しかしそれは、しっかりとした土台の上に立てられたものでは無いあやふやな物。
だからそれがちょっとした弾みで折れて、倒れてしまわないか……それがすごく怖い」

 俺は思う。
 もし俺のようにその手を汚してしまった時、朝倉はどうなってしまうのか。
 それでも――
「そんな時のために俺達がいるんだろ?」
「潤……」
「俺達は一人じゃないんだ。折れそうになったら補強すればいい、倒れてしまったらまた立て直せばいい。
支える柱は一本だけじゃない、何本も立てて支えようぜ。俺達はそのための『仲間』だろ」
「ふふふ……そうね、潤の言うとおりだわ」

 俺は空を見上げる。すでに夜は明けていた。
 この島で見る二回目の朝日。
 そう、明けない夜なんてないんだ。
 俺には俺の、朝倉には朝倉の役目がある。
 生きてさえいれば必ず会える。
「行こうぜ、梨花ちゃん!」
「ええ!」


 風子の死を乗り越えるにはまだ時間がかかりそうだけど、
 それでも俺達は希望へ向かって歩き出す。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※


 かくして少年は己の罪と向き合うための旅路へと出る。
 だが少年はまだ知らない、友を――相沢祐一を殺害したのが坂上智代であり、その契機となったのが土永さんによることを。
 その事実を知ってしまった時、彼はどうなってしまうのだろうか。

 北川潤と朝倉純一。
 罪と迷いに戸惑いながらも己の正義と信念を模索する少年と、
 悲しみも憎しみも全て己の正義と信念の糧とする少年。
 二人の少年はこの過酷な現実でどのように立ち振る舞っていくのだろうか。



【D-5 森/二日目 早朝】

【北花】
1:廃坑の隠し入り口の捜索
2:仲間を集めたい
【備考】
※電線が張られていない事に気付きました。
※『廃坑』にまだ入り口があるのではないかと考えています。
※禁止エリアは、何かをカモフラージュする為と考えています。
※盗聴されている事に気付きました
※雛見沢症候群、鷹野と東京についての知識を得ました。
※鷹野を操る黒幕がいると推測しています
※自分達が別々の世界から連れて来られた事に気付きました
※塔の存在を知りました

【北川潤@Kanon】
【装備】:コルトパイソン(.357マグナム弾2/6)、首輪探知レーダー、車の鍵
【所持品】:支給品一式×2(地図は風子のバックの中)、チンゲラーメン(約3日分)、ゲルルンジュース(スチール缶入り750ml×3本)
     ノートパソコン、 ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×7、出刃包丁、
     草刈り鎌、食料品、ドライバーやペンチなどの工具、他百貨店で見つけたもの
【状態:健康 疲労、左腕に銃創(応急処置済み、梨花の赤いハチマキを包帯代わりにしています)】
【思考・行動】
基本:殺し合いには乗らず、脱出に向けての方法を模索
1:梨花を守りながら信用できる仲間を集めこの島を脱出する
2:時間は有効に使いたい

【備考】
※チンゲラーメンを1個消費しました。
※梨花、純一、つぐみ、きぬをかなり信用しています。土永さんに関しては信用と言うより純一と一緒ならほっといても大丈夫だろうという感情のほうが大きいです
※チェーンソのバッテリーは、エンジンをかけっ放しで2時間は持ちます。
※首輪探知レーダーが首輪を探知する。と言う事実には気付いておらず、未だ人間なのか首輪なのかで悩んでいます。
※「微粒電磁波」は、3時間に一回で効果は3分です。一度使用すると自動的に充電タイマー発動します。
 また、6時間使用しなかったからと言って、2回連続で使えるわけではありません。それと死人にも使用できます。
※支給品リストは支給品の名前と組み合わせが記されています。
※留守番メッセージを聞く事ができます。
 たまに鷹野のメッセージが増える事もあります。
 風子に関しての情報はどこまで本当かは次の書き手様しだいです。
※「現在地検索機能」は検索した時点での対象の現在地が交点で表示されます。
 放送ごとに参加者と支給品を一度ずつ検索出来ます。
 次の放送まで参加者の検索は不可になりました。
 なお、参加者の検索は首輪を対象にするため、音夢は検索不可、エスペリアと貴子は持ち主が表示されます。


【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備:催涙スプレー@ひぐらしのなく頃に 祭  暗号文が書いてあるメモの写し
     ヒムカミの指輪(残り1回)@うたわれるもの 散りゆく者への子守唄 】
【所持品:風子の支給品一式(大きいヒトデの人形 猫耳&シッポ@ひぐらしのなく頃に祭、風子特製人生ゲーム(元北川の地図) 百貨店で見つけたもの)】
【状態:頭にこぶ二つ 軽い疲労】
【思考・行動】
基本:潤を守る。そのために出来る事をする。
1:潤と肩を並べたい
2:他の参加者から首輪を手に入れる、どうしても不可能な場合は風子の首輪を取る
3:死にたくない(優勝以外の生き残る方法を探す)


【備考】
※皆殺し編終了直後の転生。鷹野に殺されたという記憶はありません。(詳細はギャルゲ・ロワイアル感想雑談スレ2>>609参照)
※探したい人間は圭一です。
※梨花、純一、つぐみ、きぬをかなり信用しています。土永さんに関しては信用と言うより純一と一緒ならほっといても大丈夫だろうという感情のほうが大きいです
※ヒムカミの指輪について
ヒムカミの力が宿った指輪。近距離の敵単体に炎を放てる。
※梨花の服は風子の血で染まっています


【補足】
※北川たちの通ったルートでは通行が困難だったため、車はB-5の真ん中のあたりに放置しています。
 戦闘で車の助手席側窓ガラスは割れ、右側面及び天井が酷く傷ついており、
 さらに林間の無茶な運転で一見動くようには見えませんが、走行には影響ありません。
 ガソリンは残り半分ほどで、車の鍵は北川が所持したままです。


179:戦う理由/其々の道(後編) 投下順に読む 181:うたかたの恋人(前編)
179:戦う理由/其々の道(後編) 時系列順に読む 181:うたかたの恋人(前編)
179:戦う理由/其々の道(後編) 北川潤 188:三つの不幸、一つの見落とし
179:戦う理由/其々の道(後編) 古手梨花 188:三つの不幸、一つの見落とし







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