少女連鎖(Ⅱ)-少女達の檻- ◆tu4bghlMI


<<とある機密文書>>
一般的に"少女"と呼ばれる存在は、小学生から高校生程度の齢の女子を指す。
また文脈によってはこの定義がより広範囲に用いられる場合もある。
だが基本的には若く瑞々しい肉体を持った女子に対して用いられる言葉と考えてもいいだろう。

月が沈み、太陽が昇り、そしてまた沈んで。二度目の月と顔を合わせるのにも飽きて来る時間帯。
そう、一日が経過した。殺人遊戯に興じるいたいけな少女達。
今宵も島の北と南、博物館と病院という"知"と"命"を代表する場所で血みどろの殺し合いが幕を開ける。


今回舞台に上がったのは【千影】【智代】【舞】【衛】【ことみ】【名雪】の六人の少女。
彼女達は三つの世界、いや街から連れて来られた参加者。
だがそれぞれの舞台に知り合いはおらず、リングを境に表裏一体を成す土星のような構図を取る。

さぁさぁ、お立会い。
御代はいらない。今夜も月が綺麗だ、ライトアップの設備は必要無いだろう。
そして、共に見届けよう。その結末を。
何千何万もの電気信号が私達に見せてくれるその瞬間を。
彼女達の戦いを。


○月×日 第一研究室にて ゲーム開始から二十四時間が経過
担当「:「&@;」。# 」




(表の文章から隠れるように炙り出しで)

 "彼"も動き出した事だし、私もそろそろ腰を上げる時が来たのかもしれない。
 でも彼は鷹野三四に拘束され、酷い拷問を受けている。まだ生きてはいるようだけど。
 何とかしたいとは思うけれどもう少し時間が欲しい。さすがにあまり目立った動きは取れない。

 ああ、そうだ。こんな場所ですまないんだけど一つだけ言わせて。
 ……うん、そもそも私にソレを言う権利は無いかもしれないけど。

 ――あの子達が生き残る事を祈ってる。
 これだけは確か。紛れも無い真実。

 by R



 ■


<<ASPECT①――千影>>


腕に付けた時計を確認する。丁度、長針と短針、そして秒針が綺麗に重なった。
これでゲーム開始から丸々一日が経過した、という事になる。
館内放送用のスピーカーにノイズが走る。
相変わらず慣れない時間だ。四回目だと言うのに毎度毎度心臓が破裂しそうになるのは変わらない。


――参加者の皆さん、元気にしてたかい?


……鷹野じゃ、無い?
私はもう一度自分の時計を、加えて備え付けの大きな時計に眼をやった。

"12"

間違いない。そして……因果な数だ、ただそう思った。

一度も聞いた事が無いのにはっきりに"悪"だと分かる、彼はそんな独特な声をしていた。
虚ろげな霞、遙かなる群雲、紺碧の空、絶え間なき月光。
博物館のホールの窓から外を眺める。
空気は凛とした静寂に包まれていた。唯一それを揺るがす侵略者の存在を除いて。


 ■


放送で"ある名前"を聞いた瞬間、私はネリネくんが持っていたデイパックの中身を大急ぎで確認し始めた。

往人くんの死亡――それは聖上を中心としたネットワークに生まれた一筋の亀裂と言える。
いや、逆に一人だけで済んで良かった、と喜ぶべきなのだろうか。
瑛理子くんも言っていた。

『優秀な人間が殺されてしまう前にある程度の流れを作っておきたい』

チームを分散した時点である程度は予想出来た結末。
だけど、命を落としたのが往人くんだという事はつまり襲われたのは瑛理子くんのグループなのだろう。
まさかアセリアくんと瑞穂くんが下手人……なんて事は無いだろうね。
……縁起でもない、私はそんな考えを一笑に切って捨てた。

とにかく他のメンバーと早期な合流が求められる事態だ。
なぜなら悠人くんが生きているらしいのだから。あの炎の海の中からどうやって生還したのかは分からない。
ただ彼は生きている。その一点が重要なのだ。


何度も戦闘の被害にあったのだろう。
博物館の荘厳な装飾具や内装はボロボロに崩れ落ち、そこら中に戦いの爪跡が残っている。

まずデイパックを開いてみて思ったのがその荷物の多量さ。
私から奪い取った弾丸類に様々な武器、そして食料品。PDAは無くなっていた。
彼女がこのゲームにおける確実な強者であった事の裏付けだ。……でもそんな事は所詮序章に過ぎなかったのだ。

「な……ッ!?」

一つだけ妙なデイパックがあった。
やけに厳重に口の部分が占められ、そして大量の血液が付着しているデイパック。
その中には――

「生……首――ッ!? ッ!!」

思わず目を逸らしてしまった。私はこれでも生物の死体には慣れている方だ。
家にいる頃に似たような事はやっていたし(もちろん"人間"では無いが)、実際に解剖なども経験がある。


だけど……酷すぎるな……これは。
思わず口元に掌が行く、嘔吐こそしなかったものの、気分は最悪だ。
酷過ぎる、何が問題かといえばその死体の弄り方、状態について。

目玉はスプーンを使ったみたいに綺麗にくり抜かれ、他の部分も損傷が激しい。
首の切り口は化膿が激しく、酷く変色していた。
元々は綺麗な栗色だったのであろう髪も所々抜け落ち、地肌が露出している部分さえあった。
顔の状態は……コメント出来ないな、正直。本来は素晴らしい美少女だったと思うのだが。

しかも手が込んでいるのは"顔の原型が無くなる一歩直前"だという事。
知り合いならば判別が付くギリギリのラインまでの変形。
視覚効果はファーストインプレッションが重視される。
つまり一目見た瞬間、自らの記憶とその対象物が繋がるかどうかが印象に大きな影響を与える訳だ。
その原則は限界まで守っている、つまり見た人間にとって最もショッキングな状態なのだ。

そして最後にその保存方法――ビニール袋と酒、だ。
しかも標本などに用いるホルマリンやアルコールではない。
この臭いはおそらくラム……だろうか。だけど、一体どうしてネリネくんはここまでする必要があったのだろう。
何か強烈な恨みでも無ければこんな残酷な真似は出来ない。
おそらく理由があった筈なのだが……。

そこまで考えた私はそのビニール袋を再度デイパックの中に戻した。
本来なら外の二人の死体以上に丁寧に埋葬するべきなのだろうが、状況が状況だ。それに他の人間の意見も聞いてみたい。


さてと、次は……"電話"だ。
聖上達から島内には電話線が通っているという情報を得ている。
私があの時のメンバーの中では最も病院から遠い場所にいることは確実。
だが、逆に順調なペースで移動出来たチームならば今頃到着していてもおかしくない。

幸いな事に博物館には外部と連絡を取る設備が意外としっかり揃っていた。
入り口から入ってすぐの受付の奥の方に電話機と電話帳があった。
間違えないように慎重に番号をダイヤル。
受話器を持ち、発信音が独特のアレに変わる瞬間を待つ。
…………変わった。
どうやらしっかりと通じたらしい。誰かが病院に到達している事を祈った。


ルルルルルルルルル、ずっと同じテンポ。
揺らぐ時を待つ。


『――はいっ、こちら病院です。どちら様ですか?』


繋がった!
しかも……この声は、この声は私の大切な、島に残った"最後"の姉妹の声だ。
私の胸の中は嬉しさと安堵感に満ち溢れた。
良かった。本当に……良かった。

「良かった……衛くんかい!? 私だ、千影だよ」



 ■


『今は……博物館? それで坂上智代って人がゲームに乗ってるの?』
「……ああ、彼女は危険だ。しかも強力な武器を持っている。十分に……気をつける必要がある」

いち早く目的地に到達した衛くんに後々有利になるであろう情報を伝える。
距離的な問題ですぐに危険が及ぶ訳ではないと思うが、用心するに越した事はないからだ。


「あれ……ねぇ、千影ちゃん。悠人さんは?」
『うん、皆と別れた後すぐにネリネくんに襲われてね。その時……その、離れてしまったんだ』
「え……じゃあ、何で今博物館に?」
『まぁ……何と言うか、実はネリネくんに捕まって連れて来られたんだ、私は』

まさか放送を聞くまで死んだと思っていた、なんていう訳にも行かず私は言葉を濁した。
そして【ネリネ】という名前を出した事の意味も分かっている。
なぜならそれは今回の放送で"死者"として名前が挙がった人物。
襲われた私が生きていて、襲った筈の彼女が死んでいる。それはつまり――

「……それより衛くんこそ聖上と一緒じゃないのかい?」
『……うん。ハクオロさんは学校で倉成武って人に襲われて……。
 ボクと今一緒にいる一ノ瀬ことみって人を逃がすために一度別れたんだ』
「倉成武か……彼もゲームに乗っている……と言うことなのかな。ああ、病院にいるのは二人だけかい?
 出来ればそのことみくんに変わって貰えると嬉しいのだが」
『ううん、今は……見回りに行ってる。あ、そうだちょっと待ってね。子機に切り替えるから』


そう言うと受話器から小気味よいクラシック音楽が聞こえて来た。
おそらく衛くんが保留ボタンを押したのだろう。

一度、そのことみくんという人には挨拶をしておきたい。
私もこの島を相当歩き回ったがそれは初めて聞く名前だった。

『ゴメン、千影ちゃん。それでね、ハクオロさんが……』
『――ぃつけたぁ』


――ッ!?

突然、受話器から聞こえて来たのは……衛くんではない誰かの声だった。
女である事は分かる。
いや……そもそもこの声に私は聞き覚えがあるような……。

「衛くん!? どうしたんだい衛くん!!」

私は焦った。返事は……無い。そもそも衛くんに聞こえているのかすら怪しい。
……どういう事だ?
現れた女性と話でもしているのだろうか。

私がそんな事を思った、次の瞬間――


『あはははははははははははははッ!!! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』
『あぐっアアアアアアアア!!!』


私の耳に飛び込んで来たのは、この世の物とは思えない笑い声。
まるで悪魔か狂人か。まともな人間ではない事だけは確か。
そして、衛くんの叫び声。

「衛くん、衛くん!!! 返事をしてくれ!!」

何かが壊れる音がした。加えて鈍い音。
血液が沸騰しそうだった。
壊れる。揺れる。シャンデリア、ガラス細工が一気に打ち壊されたような音。
人が倒れる音。

他には電話越しに聞こえてくるのは女の笑い声だけ。
どうすればいい、どうすれば――
どうして私は受話器を握り締めて衛くんに呼び掛ける事ぐらいしか出来ないんだ。
何も、出来ない。





どれくらい経っただろう。
私にはまるで一時間にも数時間にも感じられた。
受話器が未だ繋がっている点、これだけが最後の望み。
もっとも一番可能性として高いのは衛くんが電源を切らずに、コレを放り出してしまった可能性なのだが。

だけど私には名前を呼ぶ事しか出来なかった。
"衛くん"この五文字を呟く。ただ、ひたすら。
喉は痛く、ガラガラする。唾液もほとんど分泌されない。





『――ち……かげちゃん?』
「衛くん!? どうしたんだい、衛くんっ!?」


聞こえた。衛くんの声だ。
弱々しくて、喘ぎ声も混じっているけど生きた衛くんの声だ。

『うん、ちょっと……ッ襲われ、ちゃって……ね。青い、髪をした女の人に……』
「どこか、怪我をしているのかい? 青い……髪……ッ!? 待って、衛くん……その女の人は"制服と鎧"どちらかを着ていたかい……?」

冷静になるんだ、私。この状況を打破するための方法とは?
そして襲撃者の情報も重要だ。髪の毛が青い人間なんてほとんど存在しない。
私が出会った中でその髪色を持っていた人間はたったの二人。
そして――その二人はまだ生きている。
この予感が当たっているとしたら……。

『制……服だよ。赤い生地が基調で白い傘みたいなのが付いてる……』

私は思わず頭を抱えた。
ハッキリした。着ている服も一致する。だが何故彼女が……?
どう考えても戦意は全くのゼロだった。列車の中で眠りこけていたくらいだ。
遭遇した参加者の中でもトップクラスにゲームに向いていない筈の人間、だった筈。

「……そうかい。よく聞くんだ衛くん。今おそらく君の近くにいるのは水瀬名雪、という女性だ。
 私がこのゲームで一番最初に出会った参加者。……ゲームに乗るようには全く見えなかったんだが」
『水瀬……名雪』

衛くんが襲撃者の名前を呟いた。
だがこのとき既に私の脳は次の事を考えていた。つまり、この状況からの脱出方法を。
おそらく今衛くんは何処かに立て篭もっているのだろう。
音に気付いて同行している筈のことみくんが来てくれるのを待つべきか。
いや、まず衛くんの身体の状態は……。



『……ねぇ、千影……ちゃん。あの台詞、聞かせて欲しいな』
『あの……台詞?』

……何を言っているんだ衛くんは?

「そう、ほら……千影ちゃんがあにぃと別れる時とかに……良く言ってたアレだよ……」
『……ああ。いや、衛くんそんな事は関係ないんだ。早くそこからッ――!!』

思わず語気が荒くなるのを抑え込むのに必死だった。でも無理だった。
なぜなら衛くんが何を言いたいのか分かってしまったから。
その台詞。
この状況においては冗談では済まされない言葉の意味を。


「ううん、駄目……だよ。分かってるもん……ボクが……ボクが一番、自分……の事は」
『衛……くん?』
「だから、お願い、千影ちゃん。ボクたちの絆が続くように。またいつか笑って過ごせる……ように。ね?
 ゴホッ!! ゴホッ!! ゴホッ!! ……千影、ちゃん」


悲壮な、決意。全部分かる。伝わって来る。
悲しみ、恐れ、つよがり、そして――勇気。

涙がこぼれた。衛くんの言葉には何一つ淀みなんて無いのに。
年上である筈の自分の手が震えている。頭が痛い。喉が痺れる。
背負ってなんてあげられない。眺める事しか出来ない……なのに。


「分かった……よ。衛…………くん」


……衛くん、君は本当に強い子だね。


「…………また、来……世」
『じゃあねっ!! 千影ちゃん!!』


電話が、切れた。
違う、切ったんだ。衛くんが自分の手で。

「衛、くん」

もっと涙が溢れて来た。ついに私は一人になってしまったから。
思わず叫んだ。何も考えずに。ただ、ひたすら。



 ■


<<ASPECT②――智代>>


「ああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!」


声にならない絶叫。扉の向こう、その主は――千影。
……一体何が起こったんだ?
私は突然の事態に驚きを隠せなかった。



入れ違いだったのだ。
私がトウカやネリネの周りに散乱していた道具を回収し終え、戦場を離れようとした時、彼女が現れた。

もちろん、すぐさま姿を隠したさ。
いかに出会った状況が若干変わった所でパワーバランスは早々変わらない。
狙うならば余程油断した所でなければ……そう思ったからだ。

博物館に入っていく後姿を見届け、ある程度距離を取って私も接近する――その瞬間、放送が始まった。


 ■


この眼で見届けたとはいえ【春原陽平】の名前が上がった瞬間は胸が苦しくなった。
アイツの死は報われなかった。
臆病な自分を奮い立たせ、その運命と向かい合おうと思った瞬間の死。
それはどんなに悔しい結末だっただろう。無力、非力、挫折……その光景は道端の花が踏み潰される姿に似ていた。

【トウカ】【ネリネ】、この二人の死に何も思う事は無い。
おそらく情報からすればネリネという女は明らかにゲームに乗った殺人鬼だったのだろう。
だが私にとってトウカ、あの愚直者の方が強い怒り、憎しみの対象だ。

【義】が一体何だと言うのだ、それはそこまで自らを突き動かす衝動に成り得るものだと言うのか。
そんなものに人を縛る権利があるのか。
人の命を奪うだけの力があるのか。
弱者を駆逐出来るほど偉いのか。


分からない、分からない、分から……ない?
馬鹿な事を……そんなのNOに決まっている。

もしもそうだとしても私が全力で否定してやる。
この島の全ての人間がハクオロに騙され、偽りの義を貫くとしても、だ。
私は復讐する。
私は全ての人間を――殺し尽くす。



 ■


それからしばらくは静寂との戦いだった。
館内からは荷物を整理する音が響く。大方手に入れた支給品の整理でもしているのだろう。

――踏み込むか?

……いや、まだ早い。焦っては事を仕損じる。
待機だ。じっくりと勝負の時を待て。


…………。


……。




数分後、中から突然話し声が漏れた。
中に誰かいたのか? そんな疑念に捕らわれるがよく耳を凝らしてみるとそうでは無い。
電話、だ。
この語りかけるような口調、明らかに目の前に人間がいる時のソレとは違っている。

私は納得した。
なるほど、そんな手段もあるのか。
電話は遠方の仲間とコンタクトを取るための手段としてはうってつけだ。
特に"目的地"、及び"本拠地"が決まっている場合は。
千影の会話内容からそのどちらかの情報が聞けるかもしれない。
私は彼女の言葉を聞き取ろうと意識を集中させた。

『………ま………病……』

――駄目だ、ハッキリとは聞き取れない。
待て……病……院か?
まぁ、確かに人が集まる場所としては適しているかもしれない。様々な設備もあるし、傷を負った人間が逃げ込むには絶好の場所。
そして――


そんな事を思っていた矢先、あの凄まじい叫び声が辺り一面に木霊したのだ。
扉の向こうから聞こえる声は数時間前に目の前に立ち塞がった少女と同一人物とはとても思えなかった。
泣きじゃくるその声は殺し合いに脅えるただの少女にしか聞こえなかった。

……がっかりだな。もう少し骨の据わった相手だと思っていたのだがな。
とはいえ、チャンスを逃すつもりも毛頭無いが。

デザートイーグルの弾丸を確認。映画のスパイよろしく、突入の準備を整え――


「な――ッ!?」


気付けばすぐ後ろ数メートルの地点に彼女は立っていた。
いつの間に……全く気配は感じなかったのに。
振り向いた私の背後、長い髪、鋭い目付き、赤と白の制服を自らの血で染めた戦闘鬼。
……トウカから聞いていた外見の特徴と一致する。強力な武装を持った――私と同じゲームに乗った人間がそこにはいた。


 ■


「ちッ!!!」
「……無駄」


瞬時にターゲットを変更、しっかりとグリップを握り締め目の前の女に向けて発砲する。
だが相手は待ってくれない。
体勢を崩したまま射撃姿勢に入っていた私の弾丸を凄まじい速度で回避。
銃口から射線軸を読んだのだろうか、そのままデイパックから斧を取り出しこちらへ接近する。

明らかに戦いに"慣れた"人間の動き。
ただ戦いに"乗った"人間の動作とはまるで格が違う。
低姿勢のままこちらへ疾走する彼女を見た瞬間、私はそんな事を思った。

だけど、私は絶対に――負けない。

「あああぁぁッッ!!!!!」

接近する相手に合わせてデイパックから"存在"を取り出す。
下からの切り上げに合わせて体重をかけてソレを叩き落す。

「あぁッ!! はぁッ!!」
「…………ッ」

刀身と刀身のぶつかり合い。数回の打ち込みの後、女は若干距離を取った。

――いける!

武器は明らかにこちらの方が上。
40cm程度しかない手斧と1m以上の大剣には圧倒的なまでの差がある。
明らかに剣の腕では劣っている私が何とか彼女に付いていけているのは一重に武器の力――


「……そう言う……こと」


私が後退した女に油断した瞬間、それは起こった。
彼女は"投げた"のだ。右手に持っていた手斧を。
見事なまでのストライクでこちらに回転しながら飛んで来るソレを剣で弾く。
だがその時既に彼女は……射撃体勢に入っていた。

「……死ね」
「がッあああぁぁぁ!!!!!」

右肩、しかも一度刺された所に見事なまでに銃弾が命中する。
忘れていた、いや侮っていたのだ。
その答えは『普通の人間は両手を使わなければ銃が撃てない』という先入観。
女は私のその固定観念をいとも容易く破ってみせた。

いや……そもそも所持していた銃器の違いもあるのだろう。
私の持つデザートイーグルは酷く無骨で強大な拳銃。対して女の持つ銃は警察官などが持っている手軽な代物。
故に手斧を投擲後、すかさず空いた方の手による射撃なんて言う離れ業が可能だったのだろう。


「あ…………」


激しい痛み。堪らず右手の"存在"を取り落とした。
女がこちらに更なる追撃を掛けようとする姿が見えた。

負ける?
死ぬ?
私が?
駄目だ。あいつに復讐するまではハクオロの息の根を止めるまでは……。
絶対に、死ねない。そうだ、絶対に――負ける、訳にはいかないんだ。


両足で地面を踏み締める。倒れない、何があってもだ。
考えろ、女の手にある今武器は拳銃だけ。刃物は無いんだ。
……そうだ、私が今までどんな戦い方をして来たか思い出すだけで良かった。ソレがベリィできっとベストだ。
私は――大地を蹴った。


軌道、弾道――そこまで読み切るのは正直不可能。
ただ、目の前で銃を回避する人間には何度も出くわして来た。
自分には到底在り得ない行動、人間業には見えなかった、それが――私にも出来る。
何、じっくりと見ればいい。女の射撃は片腕、精確な狙い済ませた攻撃を行う事は出来ない。
そして銃口と射線軸、ソレさえ見極めれば"前もって動いておく"事は可能なのだから。

「はああぁぁぁぁぁアアッ!!!」
「ぐっ……な……!?」

身体を捩って銃弾を回避。
そして私は地面を思い切り駆けた。そしてがら空きになった女の腹部を思いっきり蹴り飛ばす。
足の裏に柔らかい感触を感じた。
そう、そして――ここからが私の本領発揮だ。


打ち込んだ脚をすぐさま引き戻す。そして再度放つ。
その繰り返し、単純なようで凄まじく奥の深い運動。蹴って蹴って蹴って――ひたすら蹴りまくる。

「おおおおぉぉぉぉぉッ!!!!!」

蹴り、蹴り、蹴りの嵐。
前蹴上げ、上段前蹴り、中段前蹴り、上段横蹴り、中段横蹴り、関節蹴り、内回し蹴り、外回し蹴り、後ろ蹴り……とにかく蹴る。
自己最高記録は春原に打ち込んだ六十四連発。
何発までいける? いや無心だ。ただひたすら、打ち込むのみ。


「ぐッ――ああああああッ!! これ以上、やらせない……!!」

蹴りの一瞬の隙を突かれて離脱された。
何発打ち込んだ?
十発?
いや、二十発は確実にお見舞いしたはず……とはいえまだ、立つか。

女の息は荒い。そうだ、アレで春原の奴はタフさだけには定評があった。
なのにここまで食らってまだ膝すら付かないのだ、賞賛に値する。
とはいえ私の方も被害は大きい。右肩からは血が止まらない……すぐさま治療したい所だ。

……どうする?
これで両者ともそれなりのダメージを負った。
拳銃と蹴り。普通に考えればソレはまるで勝負にならないはず。
だが素人の持つ拳銃と蹴りのエキスパート。
そしてどちらとも銃に対するある程度の回避能力を持ち合わせた達人、と言う仮定ならばどうか。
一転してソレは膠着戦となる。
だが――

「はぁッ……はぁッ……!? ちッ!!」
「…………やられた、か」

状況はもう一度、動いた。その時の立ち位置はこうだ。
博物館を背に特攻した後、私は後ろではなく左に退いた。
そして向かい合ったまま私達は互いに距離を調整した。その時、女の足元に私が取り落とした剣が当たったのだ。
当然、彼女はソレを拾う。
つまり――剣のエキスパートと蹴りのエキスパートの戦いと相成ったのだ。


退却すべき、私の中の本能が告げる。
状況は一気にこちらに不利。相手に剣が渡ってしまった以上、不意打ちならばともかく真正面からぶつかり合うのは確実に分が悪い。
頭が高性能エンジンのようにグルグル回った。在り得ないくらい意識が冴える。
私はデイパックの中から催涙スプレーを取り出し、そして――女に向かって投げつけた。


「…………ッ!?」


銀色のスプレー缶がコロコロと地面を転がる。
相手は当然――そう、警戒して数歩下がる。前もってラベルは全て剥がしてある。
つまり銀色の管にしか相手には見えていないはず。爆発物の可能性を考慮して、必ず距離を取ってくると思った。
そしてここで……。

そのスプレー缶を拳銃で――撃ち、抜く。


爆発。
飛び散った金属片と強大な音が森の中を飛び散る。パラパラと薄っぺらい燃えカスが空を舞う。
煙幕としては十分。催涙スプレーなどの内容物は基本、火気厳禁だ。
正直規模としては寂しいものがあったが、十分な牽制になった筈。
今は――逃げるのみ。



 ■



……なんとか、逃げ切れた。
周りに誰も居ない事を確認して肩で息をつく。
博物館から南下して……おそらく現在の位置はC-4といった所か。
自分の身の安全を理解すると、途端にやるせない気持ちが胸の中に湧き出して来た。


闇夜、全てを飲み込んでしまいそうな純然たる黒。
堕ちた復讐者である私にお似合いの色だ。

唇を噛み締める――血が、出た。
鋭い痛み。そして覚醒。そうだ、立ち止まっている訳にはいかない。

腕で無理なら気持ちで埋めてやる。力が及ばないなら武器で補えばいい。
拳銃、対戦車ライフル、ナイフにスタンガン。バランスの取れた十分な武装だ。
そして蹴り。普通の人間ならば距離を取るために何気なく振るう脚も私にとっては最大の武器。最強の切り札となる。


人は簡単に死ぬ。目の前で命を散らした春原のように。
一発、当てればいい。当てさえすればどんな達人だって動きは鈍る。
後は連鎖だ。勝手に崩れていく。
目的地は……病院。千影がまだこの辺りにいたと言うことは他の仲間に遭遇する可能性も高い。
奴らを排除しつつ、更に南下する。これが現状、最良のプランだろう。

待っていろ、ハクオロ。
その罪、必ず償わせてやる――必ず。



【C-4 平原/二日目 深夜】

【坂上智代@CLANNAD】
【装備:IMI デザートイーグル 10/10+1】
【所持品:支給品一式×3、IMI デザートイーグル の予備マガジン9、サバイバルナイフ、トランシーバー×2、多機能ボイス レコーダー(ラジオ付き)、九十七式自動砲 弾数6/7、十徳工具@うたわれるもの、スタンガン、ホログラムペンダント@Ever17 -the out of infinity-、永遠神剣第七位"献身"】
【状態:疲労中、血塗れ、右肩刺し傷(動かすと激しく痛む・応急処置済み)、 左耳朶損失、全ての参加者に対する強い殺意、右肩に酷い銃創】
【思考・行動】
基本方針:全ての参加者を殺害する。
0:病院を目指して南下、人を見かければ有無を言わず攻撃。
1:何としてでもハクオロを殺害する。
2:ハクオロに組し得る者、即ち全ての参加者を殺害する。
3:無謀な突貫はしない

【備考】
※『声真似』の技能を持った殺人鬼がいると考えています。
※トウカからトゥスクルとハクオロの人となりについてを聞いています。



 ■


<<ASPECT③――舞>>


痛み分け。私はぼんやりとそんな事を思った。
腹部、肩部、脚、全身に残る重い痛み。あの蹴りは……危ない。
一発一発が普通の人間なんかと比べても在り得ないくらい鋭い。そして早い。
あんな一瞬の邂逅で数十発近いキックをお見舞いされるなんて想像さえしなかった。
……数秒離脱するのが遅かったら、一発でも頭部に打ち込まれていたら、各部急所がガード出来ていなかったら、確実にやられていた気がする。

おそらく彼女もゲームに乗っていたのだろう。あの血に塗れた姿はきっとそうだ。
自らの事を考えず、戦いに没頭する。それは私と同じ。檻に捕らわれた者。

それ以外にもどこか不思議な親近感を感じた。
何が似ていたのか。雰囲気か、性格か……分からない。

「え……ッ!?」

何気なく剣に強い力を込めた瞬間、光が満ちた。
否、剣が突然光ったのだ。
宇宙空間でグルグル世界が三百六十度回転しているような――何かが、流れ込んで来た。

――それは不思議な感覚だった。
若草のベッドで眠っているような、暖かい月の光に照らされているような、遙かなる稲穂の野原を走っているような。
どこか懐かしくて、そして強い力を感じた。

私は我に返った。周りは今までと何も変わらない。
硝煙と背の低い草むらが燃える青臭さ、それだけ。
もう一度手の中の剣を強く、握り締める。
重さはほとんど感じない。これだけ大きな獲物なのにいつもの自分の剣以上に手にフィットしている。
そして心なしか、身体も軽い。何だ……この先ほどまでの違いは?

「……凄い」

刀身を高く掲げじっくりと剣自体を眺める。
極端に長い柄、そしてスラッと伸びた両刃。
ルーツ自体はおそらく西洋のものだろうが、煌びやかな装飾が施された儀礼剣としての側面も持ち合わせている。
吸い込まれてしまいそうな剣だ。相当に名のある剣工が作った業物だろう。

ゲームが始まってから二十六時間余り。
初めて手にした剣がこんなに見事な一本だとは。
運が無かったのか、あるのか分からなくなりそうだった。


……あれ。
何か感じる。博物館の北と南、何かが離れていくような感覚だ。
南の方は……消えた? 気のせいだったのだろうか。
だけど北の方に何かが居る事は分かる。いや、そもそも非常に近い。私はその反応を追って見る事にした。
大地を蹴る――早い。いつもの数倍の速度が簡単に出せる、なのにまるで身体に疲れは来ない。


数分で私はその反応の主を発見する事が出来た。
それは驚くべき人物だった。
この島に残った私の最後の二人の知り合いのうちの一人――


「舞……くん」


千影がそこにはいた。


 ■


「……動かないでくれ……さすがの舞くんも……ショットガンは回避出来ないだろう?」


特徴的なフォルムの銃を持ちながら千影がこちらを威嚇する。
初めて会った時、彼女と自分はとても似ているような気がした。
強固な芯が通ってはいる。だけどそれは酷く脆くて虚ろ。ダイヤモンドと同じだ。どんなに硬くても衝撃には弱い。

そして――佐祐理のために鬼となった自分と今の千影は更に似通っているように見えた。
そういえば彼女の妹の名前が放送で呼ばれていた気がする。


「でも……私には……コレが……ある」


既に私の右腕となった武器、ブラウニングキャリバーを構える。ターゲット、ロック。
そして周囲の状態を確認する。足元はコンクリート。左右の幅は5メートル余り。屋根は無し。
千影との距離は……約十五メートル。

キャリバーを発射すれば十分に捉える事の出来る範囲。
だがおそらくこの距離から相手を狙撃すれば残りの弾を撃ちつくしてしまうだろう。
とはいえ千影は銃の予備弾を持っていた筈だ。つまり彼女を倒しさえすれば弾が手に入る。

ショットガンを構えながらこちらを牽制する千影。
距離を調整する。
だが千影はもっと他の事を考えていたようだった。

「……ああ、そういうことか……舞くんも持っているんだね」
「……何……を?」
「永遠……神剣」

腰に吊るした剣に視線を送りながら千影が呟いた。
"永遠神剣"、それがこの武器の名前なのだろうか。

「……詳しく」
「それは無理だよ……だって君は……ゲームに乗っているんだろう? そんな事をしても佐祐理さんは……」

千影は酷く残念そうな顔をしていた。起死回生の切り札でもあったのだろうか。
そういえば彼女は初めから私がゲームに乗った事を知っている様子だった。
つまり彼女には他に仲間が居るのだろう。

「……舞くん……私達は共に強力な銃器を持っている……君を見逃すのは心苦しいけど……ここは手打ちにしないかい?」
「私が……本当にそんなものに脅えると……思う? それとも……試して……みる?」
「……そっちこそ。重機関銃なんて代物……補給が限られている島で運用していくのは難儀だと……思うよ」

千影は笑った――平行線。
そう、ショットガンの射程は短い。いかに広範囲をカバー出来る銃器といえど、長距離からの射撃には適わない。
だけど彼女は悟っているのだろう。このキャリバーの残弾が尽きかけている事実に。
弾が切れてしまえば追い詰められるのはこちらの方。それに――千影の弾薬はまず尽きる事はないのだから。
ならば……。

「……弾」
「?」
「コレの弾、頂戴……それで手を打ってあげる」

ならば相手が妥協できるギリギリのラインで交渉するに限る。
弾を渡せば見逃す、そういう事だ。
これならば、あちらとしても無駄な戦いは避けられる。マイナスは――私が誰かをその弾を使って襲う可能性だけ。

「……五十発。全部は……無理だ」
「……それでいい」

千影は少し考えて最大限の食い下がりを見せた。
五十発。残弾と合わせて八十発。随分マシになる。

デイパックから弾薬ケースを取り出し、千影はそれを足元に置いた。
そしてゆっくりと後退する。
もう一度、会う機会があるのだろうか。私はそんな事を思った。
在るとしたらその時はキャリバーの弾薬がもう一度、尽きた時かもしれない。そして私はまた彼女に要求するのだろう。

ああ、そういえば――

「千影」
「……何……だい」
「コレ……お礼」

デイパックから私の支給品を取り出して――千影に投げつけた。
クルクル回転しながら飛んで行く黄色のソレ。
私と、ことりと、そして舞を繋ぐ架け橋だったもの。

「これ……は」
「……バナナ。私にはもう、必要の無いものだから」


千影はとても悲しそうな顔をしていた。
しばらく私達は見つめあった。
何年来の友人のように、古くから親交のあった旧友のように、愛を確かめ合った恋人のように。
どれくらいの時間が経ったのだろう。
千影は胸に抱えていたバナナをデイパックに仕舞い、走り出した。
すぐに視界から、彼女は消えた。永遠神剣の反応も無くなった。


私はこの島で戦い抜くため、強力な力を持った武器を二つ得た。
永遠神剣と弾薬。
だけどその代わり、この島で得た何か――大切なものを失ったのかもしれない。



【C-3 博物館周辺/二日目 深夜】

【川澄舞@Kanon】
【装備:永遠神剣第七位"存在"@永遠のアセリア-この大地の果てで-、学校指定制服(かなり短くなっています)】
【所持品:支給品一式 ニューナンブM60の予備弾15、ブラウニング M2 “キャリバー.50”(ベルト給弾式、残弾80)、ハンドアックス(長さは40cmほど)、ニューナンブM60(.38スペシャル弾5/5) 】
【状態:疲労(小)、肋骨にひび、腹部に痣、肩に刺し傷(止血済。痛いが普通に動かせる)、太腿に切り傷(止血済。痛いが普通に動かせる)、魔力残量MAX、深い喪失感、全身に智代に蹴られたダメージ】
【思考・行動】
基本方針:佐祐理のためにゲームに乗る
0:しばらく休む。
1:武器を奪うため、参加者を襲う。
2:佐祐理を救う。
3:全ての参加者を殺す。ことりも千影も殺す。
4:相手が強い場合、多人数の場合は無理はしない。

【備考】
※永遠神剣第七位"存在"
 アセリア・ブルースピリットが元の持ち主。両刃の大剣。
 魔力を持つ者は水の力を行使できる。舞は神剣の力を使用可能と想定。
 ウォーターシールド…水の壁を作り出し、敵の攻撃を受け止める。
 フローズンアーマー…周囲の温度を急激に低下させ、水分を凍結させ鎧とする。
 他のスキルの運用については不明。
※永遠神剣の反応を探る範囲はネリネより大分狭いです。同じエリアにいればもしかしたら、程度。


 ■


<<ASPECT③'――千影>>


私はボンヤリしていた。頭が痛くて死んでしまいそうだった。
私は少しの間だけ泣きじゃくる少女に戻った。
衛くんからの電話が切れた、その数分後博物館の外から銃声が聞こえて来た。
だから逃げた。何となく、そう、危険から逃げる本能のままに。


そして舞くんと会った。
彼女は確かにゲームに乗っていた。
数時間前の彼女とはまるで別人のような、ボロボロの格好をしていた。だけどそれは確かに舞くんだった。

どこか、彼女と私は似ている部分があるんじゃないかと思った。
初めて会った時、そこにはことりくんが居た。
一対一では話し難い。そんな印象を覚えた。
……なんて事は無い、それは私も同じだったから。私達が似ていたからだったんだ。今なら分かる。

そして数時間後の私達。
佐祐理くんを失って一人になった舞くん、たった今全ての妹を失って一人になった私。
選択した道は違うけれど、きっと根本は同じだった。そういう事だ。


舞くんは永遠神剣を持っていた。そして――その力を引き出していた。
しかも私の時詠とは違い、アレは確実に近接戦闘用の永遠神剣。
打ち合いになったらコチラに分が悪い。それにもうほとんど魔力が無く、時間加速もせいぜい一回分程度しか使えなかった。
だから逃げた。彼女の求めていた道具を渡す、という卑怯な手段で。
その選択が他の誰かの命を脅かすだろう事を十分に理解したうえの決断だった。

そして逆に彼女から渡されたものは――バナナ。
日常の象徴。そしてその放棄。舞くんの決意はそういう事だった。





「……う……はぁっ……クソ……」

舞くんから逃げて、気付けば私は隣のD-3エリアまでやって来ていた。
衛くんが死んだ。
そして殺したのは名雪くんだ。
どうして……こんな事になったんだろう。

「病院……に行かなければ」

さすがにあの状況で衛くんが生きている、なんて可能性に望みを託すほど私は楽天家じゃない。
衛くんの決意は本物だった。あの子は限界まで諦めたりはしない。

ルートは二つ、いや三つある。
禁止エリアを北と南に迂回して行く方法と――その境目を移動する方法。
つまりD-4とE-3の禁止エリアがギリギリ交わらない地点を探してそこから一気に森を抜けて学校、病院へと向かうのだ。
聖上から禁止エリアに入って三十秒は首輪が爆発する事は無いと教えて貰った。
大丈夫だ。正確に地図が作られているのならば、禁止エリアが交わる場所は一瞬で終わるはずだ。

衛くんと一緒にいたはずのことみくん、という女性の安否も気になるし、埋葬もしたい。
そして……水瀬名雪に事の真意を問い質さなければならない。
疲労は深い。大した怪我は負っていなくても、度重なる戦闘で体中パンパンだ。
だけど、行かなければ。迷っている暇は私にはもう無い。




【D-3 森(マップ右下)/二日目 黎明】

【千影@Sister Princess】
【装備:トウカのロングコート、ベネリM3(7/7)、12ゲージショットシェル127発、永遠神剣第三位"時詠"@永遠 のアセリア-この大地の果てで-】
【所持品1:支給品一式×7、九十七式自動砲の予備弾95発、S&W M37 エアーウェイト 弾数0/5 コンバットナイフ 
 出刃包丁@ひぐらしのなく頃に 祭 イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×7 9ミリパラベラム弾68発】
【所持品2:トカレフTT33の予備マガジン10 洋服・アクセサリー・染髪剤いずれも複数、食料品・飲み物多数】
【所持品3:朝倉音夢の生首(左目損失・ラム酒漬け) 朝倉音夢の制服 桜の花 びら コントロール室の鍵 ホテル内の見取り図ファイル】
【所持品4:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』、デザートイーグルの予備弾92発】
【所持品5:C120入りのアンプル×8と注射器@ひぐらしのなく頃に、ゴルフクラブ、各種医薬品】
【所持品6:銃火器予備弾セット各100発(クロスボウの予備ボルト80、キャリバーの残弾は50)、 バナナ(フィリピン産)(5房) 】
【状態:洋服の上から、トウカのロングコートを羽織っている。両手首に重度の擦り傷、左肩重傷(治療済み)、魔力残量微量、肉体的疲労大、深い深い悲しみ、絶望】
【思考・行動】
基本行動方針:罪無き人々を救い、殺し合いに乗った者は倒す。
0:禁止エリアの隙間を突っ切って病院へ向かう(疲労のため進行速度遅め)
1:水瀬名雪を探す、出会った後は何が起こったのかを問い質し、内容によっては――
2:また会う事があれば智代を倒す
3:永遠神剣に興味
4:北川潤、月宮あゆ、朝倉純一の捜索
5:舞を何とかしたい

※未来視は時詠の力ではありません。
※四葉とオボロの事は衛と悠人には話してません(衛には話すつもりは無い)
※千影は原作義妹エンド後から参戦。
※ハクオロ、悠人を強く信頼。
※所持品3の入ったデイパックだけ別に持っています。


173:地獄の島、向日葵の少女(後編) 投下順に読む 174:また、来世
173:地獄の島、向日葵の少女(後編) 時系列順に読む 174:また、来世
161:Don't be afraid./散りゆくものへの子守唄(後編) 千影 174:また、来世
161:Don't be afraid./散りゆくものへの子守唄(後編) 坂上智代 174:また、来世
161:悪意の夢は終わって始まる(後編) 川澄舞 174:また、来世
163:始まりの場所、見上げた月に落ちていく(後編) 174:また、来世
163:始まりの場所、見上げた月に落ちていく(後編) 一ノ瀬ことみ 174:また、来世
163:始まりの場所、見上げた月に落ちていく(後編) 水瀬名雪 174:また、来世







| 新しいページ | 編集 | 差分 | 編集履歴 | ページ名変更 | アップロード | 検索 | ページ一覧 | タグ | RSS | ご利用ガイド | 管理者に問合せ |
@wiki - 無料レンタルウィキサービス | プライバシーポリシー