決着は、初めて出会った場所で――(後編) ◆guAWf4RW62



そして、救急車の扉から飛び出す一つの影。
俄かには信じ難い光景を前にして、武の表情が狼狽に歪む。

「…………っ!?」

青い髪の少女――アセリアが、恐るべき勢いでこちらに向かって跳ねていた。
有り得ない跳躍力。
跳躍点である救急車との距離は十メートル以上もあると云うのに、アセリアはただの一跳びで武が居る地点まで到達しようとしていた。
往人が見せた先の奇跡に続いて、余りにも常識外れな出来事。
度重なる異常な事態を前にしては、常人ならばまともな対応が出来なかったかも知れない。

しかし極限状態で発揮される底力こそが、武の本領。
武はほんの一瞬で意識を切り替えて、すぐさま自分が取り得る最善策を見出した。

「そうだ……惑わされる事はねえ。敵が飛んで来ると云うのなら――」

自分はつぐみと共に生き延びる為、戦い続ける道を選んだのだ。
ならば敵が何者であろうとも、やるべき事は一つ。

「――全力で迎え撃つだけだ!」

武は『求め』を天高く振り上げ、そのまま全身全霊の力を以って振り下ろした。
全く迷いの無いその剣戟を、宙に浮いたままのアセリアが躱せる道理など存在しない。
どれだけ素早く跳躍しようとも、翼を持たぬ人の身では、空中で身動きなど取れぬのだ。
永遠神剣第四位「求め」は、一刀の下にアセリアを両断するだろう。
それは覆しようの無い、定められた死の運命。


だがアセリアは、人を超越せしスピリット。
人間が定めた運命など、永遠神剣を持ったスピリットの前には無意味……!


アセリアの手にした日本刀――永遠神剣第六位冥加が、眩い閃光を放つ。
それとほぼ同時に、アセリアの背中から白く美しい羽が生えた。

「な……莫迦な――――!?」

驚愕に満ちた武の声。
アセリアは宙に浮いたまま大きく方向転換し、迫る剣戟から身を躱していた。
そして絶体絶命の窮地を凌いだ後に訪れるのは、これ以上無い程の好機だ。

「これで……終わりっ……!!」

アセリアは間髪置かずに武の背後へと回り込み、己が剣を――

「――止めろぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!!」

振り下ろせなかった。
突如聞こえてきた凄まじい叫び声に従い、アセリアは攻撃を中断して大人しく後退した。
アセリアが首を動かすと、必死の形相をした圭一が駆けて来るのが見えた。
その後ろには、瑞穂や沙羅の姿もある。
敵が多数だと悟った武はすぐさま動き出し、気絶している美凪の首元に『求め』を突きつけた。


「ケイイチ……どうして止める? この男は……ミナギを傷付けた」
「だからって殺しちゃ駄目だ、武さんは俺達の仲間なんだからな。
 それに遠野さんも大丈夫、見た感じ大きな外傷は無いさ」

武を仲間だと告げる圭一の声には、一分の迷いすらも無い。
圭一は心の底から、未だに武の事を仲間だと思っているのだ。
だが純粋なる想いも、そのまま相手に伝わるとは限らない。
相手が雛見沢症候群で疑心暗鬼に陥っているのならば、尚更だ。
武は圭一の取った行動について、最悪の形の解釈をしていた。

「……そうやって善人振りをアピールして、周りの人間を上手く利用しようとしてやがんのか?
 そうだよな、俺を殺すよりも、そこの化け物の信用を得た方が良いもんな」
「違うっ! 俺は本当に、ただ武さんを救いたいだけなんだ!!」
「はっ、勝手にほざいてろ。もう二度と俺は騙されねえぞ!」

両者の会話は完全に平行線。
圭一がどれだけ説得しようとしても武は聞く耳を持たぬし、武がどれだけ暴言を吐こうとも圭一は諦めようとしない。
終わりの見えぬ、不毛な言い争い。
それに終止符を打ったのは、酷く哀しげな声だった。

「……武さん。貴方は本当に変わられてしまったんですね」
「――瑞穂か」
「貴方に一つだけ、お尋ねしたい事があります」

街灯の光を反射する美しい長髪、憂いを秘めた大きな瞳。
エルダー・シスター宮小路瑞穂が、何時の間にか圭一の横に並び掛けていた。
瑞穂は数秒程逡巡したが、すぐに本題を投げ掛けた。

「単刀直入に聞きます。貴子さんを殺したのは貴方ですか?」
「……貴子については、すまなかったと思っている。殺したのは他の奴だが、俺の所為で死んじまったようなもんだ。
 俺が殺し合いに乗った奴と戦っている隙に、別の襲撃者がやって来て貴子は殺されてしまったんだ」
「――――そうですか」

その言葉を聞いて、瑞穂はホッと胸を撫で下ろした。
武は心底申し訳無さそうな表情をしており、とても嘘を吐いているような感じは見受けられない。
もし武が犯人だった場合、許せるかどうか分からなかったが、それは杞憂に終わったようだった。
だが安心する瑞穂を尻目に、武が言葉を続ける。

「でも安心しろ。貴子を殺した犯人は、俺がちゃんと始末してやったさ。
 火達磨にして、十分に苦しみを与えてから、心臓をナイフで一突きだ」
「……え? 武さん、貴方何を――」 

瑞穂が疑問の声を上げる。
武の表情は先程までと一転して、酷く冷たいものになっていた。
その瞳からは、狂気と憎悪しか伝わって来ない。

「勿論、その程度で終わるつもりは無い。良美も、圭一も、美凪も、そしてお前も、殺してやる。
 俺はもう絶対に騙されねえ。つぐみ以外は皆、殺し合いに乗ってやがるに決まってんだ……!!」

憎しみに満ちた言葉。
最早武は、小町つぐみ以外の誰も信用するつもりなど無かった。
瑞穂が否定の声を上げようとも、そんなモノには耳を貸さないつもりだった。
だが次の瞬間武の耳に飛び込んできたのは、予想とは正反対の言葉だった。

「……そうですね。他の方はともかく、確かに私は一度殺し合いを肯定しました」
「――――っ!?」

武は一瞬意外そうな表情となり、大きく目を見開いた。
だがすぐに口元を大きく歪め、心底可笑しげに笑い出した。

「――――く、ハハハハハハ!! とうとう自分から認める気になりやがったか。
 そら見ろ、俺の云ってた事は正しかったじゃねえか!!」

そう云って武は視線を左右に振り回し、声高に己の正当性を主張する。
哄笑が響き渡る中、瑞穂は自分の罪を自白してゆく。


「私は仲間に――アセリアさんと茜さんに襲い掛かりました。
 一切の容赦無く、全力で殺そうとしました」

そうだ――自分は鷹野の言葉に踊らされ、仲間達に牙を剥いた。
貴子を蘇らせる為だけに、皆の信頼を裏切ってしまった。

「それでも、茜さんは私を説得しようとしてくれた。命懸けで救おうとしてくれた」

今も瑞穂の脳裏には、あの時の茜の姿が鮮明に焼き付いている。
茜はどれだけ傷付こうとも、決して諦めずに説得を続けていた。
自分のような、裏切り者相手にだ。

「そしてその結果、私は自分の過ちに気付けましたが……茜さんは死んでしまいました。
 茜さんが死んだのは……間違いなく私の所為なんです……っ!」

悲痛な声で紡がれる独白に、誰も言葉を挟めない。
それ程に、瑞穂の言葉は痛々しいものだった。

「それなのに――茜さんは、死の間際まで……、恨み言一つ云いませんでした。
 皆の幸せだけを願い続けて、っく、……ゆっくりと息を……ひっく、……引き取りました……」

最後の方は、涙声になってしまった。
茜の死は、未だ瑞穂にとって耐え難い出来事だった。
死に往く茜の姿を思い出すだけで、止め処も無く涙が溢れてしまう。

けれど――今度は自分の番だから。
自分が、暴走した仲間を止めなければいけない番だから。
瑞穂は涙を服の袖で拭き取って、告げる。

「武さん――貴方は間違っている。私を信用出来ないと云うのは構いません。
 ですがつぐみさん以外誰も信用しないのは、絶対に間違っている。
 茜さんやアルルゥちゃんのような、心優しい子達まで疑うなんて、彼女達に対する冒涜です……っ!!」

叩き付けられた言葉には、今にも溢れ出してしまいそうな程の想いが籠められている。
いかな疑心暗鬼に陥っている武と云えど、一笑に付す事など出来ない。
自信無さげな指摘を行う程度で、限界だった。

「……でも、そいつらはもう……死んでしまったんだろ。お前らが殺し合いに乗ってない証明には……ならない筈だ……」
「そうですね。けれど少なくとも、つぐみさん以外信用出来ないなんて暴論は否定出来る」
「くっ…………あ…………ううっ…………」

苦し紛れの言葉も一蹴され、武は苦々しげに奥歯を噛み締めた。
分からない。
自分のやってる事が本当に正しいのか、分からない。
武が混乱する思考に苦しむ中、圭一はずいと前に躍り出た。

「武さん――もう止めよう。アンタも自分自身で、薄々勘付いてるんじゃないか?
 今のアンタはH173に犯されてて、正常な判断が出来なくなってるだけなんだ」
「……またその話か。何度も言わせるな、俺の身体は何処もおかしくなんか――」
「――嘘だっ!!」

反論しようとした武の言葉は、途中で遮られた。


「俺はアンタが――倉成武って云う男が、どれだけ良い奴かちゃんと知っている。だから、断言出来る!
 何時ものアンタなら、誰彼構わず疑ったりする訳ないんだ!」
「――――ッッ!!」
「武さん、思い出してくれ! 昔の自分を! アンタはあんなにも一生懸命、仲間を守ろうとしてたじゃないか!
 そんなアンタが自分から仲間を襲うなんて、絶対に俺は認めねええええええ!!!」

圭一の叫びが、周囲一体に木霊する。
何処までも澄み通った瞳が、武をじっと眺め見ている。
堪らず武は、視線を横に逸らした。

今まで、必死に否定しようとしていたが――圭一の推測通り、自覚はあった。
薄々、何かが可笑しいとは感じ始めていた。
自分がH173の影響を受けていないと判断していたのは、キュレイの効力を信じていたからだ。

確かに万全な状態のキュレイウイルスならば、どのような病気であろうとも問題にしなかっただろう。
身体の至る所に怪我を負ってしまったとしても、すぐに回復してしまう筈。
だが今の自分の身体は、文字通り傷だらけだ。
脇腹と肩に刻み込まれた銃創は、未だに余り回復していない。
キュレイの効力が、予想以上に大きく落ちてるとしか思えない。

それに圭一は、好機があったにも関わらず、自分を殺そうとしなかった。
今だって人質を見捨てさえすれば、確実に自分を倒せると云うのに、真摯な言葉を投げ掛けてくるだけだ。
そんな男が殺し合いに乗っているなど、常識的に考えて有り得ない。

ならば、圭一の云う通りではないのか?
間違っているのは圭一達でなく、自分の方。
自分はH173を投与され、キュレイでもその病原体を防ぎ切る事は出来ず、それで疑心暗鬼に陥ってしまってるのではないか?
そう考えれば、全ての辻褄が合ってしまう。

しかし――それが真実だとしたら、これまでの自分は何をやっていたのだ。
佐藤良美の言葉に踊らされ、必死の想いで説得してくれた仲間達を蔑ろにし、学校では無力な少女にまで剣を向けた、という事なのか。
自分自身が最も忌み嫌っていた筈の、外道の道を歩んでいたという事なのか。
最低の卑怯者は、自分自身だったという事なのか――

「……違う」

紡がれた言葉は、他の誰かに宛てた訳では無い。
自分自身に言い聞かせる為のものだ。

「違う、違う、絶対に違う! 俺は……間違ってなんかいない!!!」
「……た、武さん!?」

武は気絶している美凪の身体を抱き上げて、そして凄まじい勢いで駆け出した。
圭一達の後方に止まっている救急車目指して、全速力で走り続ける。

「く――――!」

沙羅は咄嗟にワルサー P99を構えたが、それ以上は何も出来なかった。
攻撃に移れないのは、圧倒的な戦闘力を誇るアセリアでさえも同じ。
美凪の首元に、未だ『求め』の刃先が突きつけられている所為で、誰も武を止められないのだ。

武はそのまま救急車に美凪を押し込み、自身も運転席に乗り込んだ。
窓から顔を出し、狼狽する圭一の顔を睨み付ける。

「……圭一。一つ、賭けをしようか」
「賭け……だって?」

もう、自分には何が正しいのか分からない。
自分は間違っていないと信じたいが、それが正解である自信など無い。
そして圭一の言葉もまた、完全に信じる気にはなれない。
だから――

「お前と、俺。一対一で、決着を付けよう」
「……どういう事だ?」
「お前が勝ったら――俺は、自分の過ちを認める。
 逆に俺が勝ったら、つぐみ以外の全員を殺し尽くしてやる」

意見が食い違った際の、一番分かりやすい決着方法――決闘。
つまりは、勝った方が正義だという事だ。

「でも……決闘だったら、此処ですれば良いじゃないか。
 そんな車で遠野さんを連れて、何処行こうってんだよ?」
「周りの奴らに邪魔されちゃ、堪らないからな。俺達が初めて出会った場所。
 そこにお前一人だけで来い。断ればどうなるか――分かってるな?」

圭一と武が出会った場所、即ち病院だ。
そこが二人の闘技場という事なのだろう。
そして美凪を人質に取られている以上、圭一に他の選択肢など無い。

「良いぜ、その提案に乗ってやる。決闘に勝って、俺はアンタを救ってみせる!
 だけど絶対、遠野さんには手を出すんじゃねえぞ……!!」
「下らない心配をするな。俺はお前達みたいな卑怯者とは違う、約束さえ守れば何もしないさ。
 尤も――」

そこで武はアクセルを踏み、救急車を発進させた。

「――俺が勝った場合は、美凪も殺してやるけどな」

そう云い残して、武はその場を離れていった。
深夜である事も相俟って、車の姿はあっと言う間に見えなくなってしまった。
嵐の後の静寂という言葉通りに、場に沈黙が訪れる。
だがやがて圭一が仲間達の方へと振り返り、強い声で云った。

「皆……話は聞いたよな? 俺はこれから、武さんを懲らしめに行かなきゃ駄目らしい」
「……一人で行かれるのですか?」
「ああ。そうしなきゃ遠野さんが危ないんだ、当然だろ?」

不安げな瑞穂に対し、圭一は即答を返す。
圭一とて、武がどれ程凄まじい身体能力を誇っているかは分かっている。
恐らく、普通に戦えば勝機など殆ど無いだろうという事も。
それでも圭一は、保身を優先するつもりなど微塵も無かった。
どんな状況でも仲間を第一に考える強き心こそ、前原圭一が持つ最大の武器なのだ。

信じる者と、信じない者。
最早、避けようの無い対決。
それを前にして、圭一にとある武器が差し出される。

「……ケイイチ、使って」
「アセリア? これは――」

差し出された武器――それは、永遠神剣第六位冥加だった。

「……タケシが持っていた武器は、第四位の永遠神剣。ケイイチも永遠神剣を持たないと……勝負にも、ならない」
「アセリア……良いのか?」
「……ん」

圭一が躊躇いがちに尋ねると、アセリアはコクリと頷いた。
今回は、完全にアセリアの言い分が正しい。
圭一が先程まで持っていた武器は、何の変哲も無い金属バット。
永遠神剣と真正面から打ち合えば、程なくして両断されてしまうだろう。
ならば此処で圭一が『冥加』を受け取るのは、勝利の為の最低条件だった。
結局圭一は『冥加』を受け取り、代わりに金属バットをアセリアに手渡した。

「――じゃあ、行ってくるぜ。皆、後は頼んだ!!」

仲間達の心に纏わり付いた不安を一層するような、とても強い声。
そうして、圭一は病院に向かって駆け出した。
今自分の居る住宅街から病院までは、そう遠くない。
ペースを上げ過ぎなければ、激戦に耐え得る体力は十分残るだろう。

(武さん、俺はアンタを信じてる。アンタは今でも俺達の仲間だって、H173なんかに負けないって信じてる。だから――)

握り締めた『冥加』に、ぐっと力を籠める。

(――俺は絶対に諦めねえ! アンタも遠野さんも救ってみせる!!)


◇  ◇  ◇  ◇


圭一が走り去った後の空き地。
そこで出立の準備を整える瑞穂とアセリア。
二人もまた、圭一の後を追う形で病院に急行しようとしていた。
例え永遠神剣を渡したとは云え、圭一が勝つ見込みは限りなく薄い。
ならばこのまま何もせずにただ待つなど、出来る筈もなかった。

「でも、良かったの? どうせ行くなら、圭一と一緒に行けば良かったんじゃない?」
「違います、別々に行った方が都合が良いんです。
 敵を欺くにはまず味方からって、云いますから」
「そう。つまりは――武にも圭一にもバレないよう、隠密行動を取るって事ね」

僅かなやり取りで、沙羅は瑞穂の狙いを理解した。
瑞穂達は武にも圭一にも見付からぬよう病院へ向かい、状況に応じて行動するつもりなのだ。
圭一は嘘が上手いタイプでは無いし、別々に行動した方が良いのは明白だった。
瑞穂とアセリアは肩を並べて、足早に空き地を後にした。


残されたのは、二人。
ハクオロ達との合流予定地点は病院である以上、瑛理子と沙羅も目的地は同じなのだが、二人は後から行く事になった。
足を怪我している瑛理子と共に行動するグループは、どうしても移動が遅くなってしまう。
それでは、武と圭一の決戦に間に合わないのだ。

「……じゃ瑛理子さん、私達も行こっか?」
「そうね。何時までも、落ち込んでいる訳にはいかないしね」

往人が消滅して以来座り込んでいた瑛理子も、沙羅に促されてようやく立ち上がった。
その頬には、涙の跡がくっきりと浮かび上がっている。
可能ならば――何時までも、この場所で悲しみに暮れていたかった。
だけど、往人はそんな事を望んでいない筈だから。
観鈴と同じように、残された者達の幸せを願ってくれている筈だから。
地面に落ちていた往人の人形を拾い上げ、ぎゅっと抱き締める。

「往人、観鈴……見てなさいよ。私、貴方達の分も頑張って生き続けるからね」

そして瑛理子は沙羅と共に、出発しようとした。
深い悲しみを乗り越え、再び前を向いて歩き出そうとした。
だがそこで後ろから聞こえて来た、雑草を踏み締める音。

「「――――誰ッ!?」」

沙羅と瑛理子は素早く各々の銃器を取り出し、音が聞こえてきた方へと向ける。
驚嘆に値する反射速度だった、と云って良い。
現われた者が無差別に襲撃を仕掛けてくる者ならば、何の問題も無く撃退出来ただろう。
だが振り向いた二人の視界に入ったのは、とても人など殺せそうも無い、そして見覚えのある人物だった。

「う、うぐぅ……怖いよぉ……」
「貴方……月宮あゆ?」

怯えた表情で蹲る少女の名は、月宮あゆだ。
あゆは武器など何も持っておらず、涙目でこちらを眺め見ている。
小刻みに震えるその姿を目の当たりにすれば、普通なら無条件で心を許してしまいかねない。
だが今回ばかりは、少々事情が違った。
瑛理子は無表情のままあゆに近付いて、その頭部に銃口を向ける。

「……う、ひああっ!?」
「――答えなさい。往人が貴方を追っていた後、何があったの?
 どうして往人は、死んでしまったの?」
「瑛理子さん――いきなり、何を……」
「沙羅は黙ってて!!」

事情を知らぬ沙羅が問い掛けようとしたが、瑛理子はまるで取り合おうとしない。
瑛理子からすれば、これは当然の行動なのだ。
目前に重要参考人が居る以上、事情聴取を行わない手は無い。

「……答えられないの? つまり、あゆ――貴女が往人を殺したって事?」
「ちっ、違うよ! ボクがやったんじゃないもん!」
「そう。それじゃ、誰が犯人だって云うの?」

瑛理子がそう問い掛けると、あゆは途端に青ざめた表情となった。
心底怯え切った様子で、弱々しく告げる。

「佐藤さん……だよ……」
「佐藤って、佐藤良美?」
「うん……。佐藤さんがいきなり襲って来て……往人さんはボクを逃がす為に、立ち向かって……いったんだ……」

襲撃者からあゆを逃がす為に、往人は一人で戦い、そして死んだ。
それは先程瑛理子が立てた推論と、全く同じだった。
往人の性格や、あゆとの関係を考慮に入れれば、そう考えるのが一番自然だ。
佐藤良美は恐ろしい女だという情報もあるし、あゆが怯え切っているのも理解出来る。
だが頭の中に一つだけ、疑問が残っていた。

(だったらどうして往人は、あんな表情をしてたの? まるで、誰かに裏切られたみたいな……)

絶望に染まった往人の死に顔は、正面から戦って死んだ者のソレとは考え難い。
寧ろ騙まし討ちを受けたような感じだった。
しかし往人も佐藤良美については知っていたのだから、騙まし討ちされてしまう筈は無いのだ。
これは、どういう事だろうか。
瑛理子は暫しの間考え込んだが、やがて一つの結論に達した。

(駄目ね……。幾らなんでも、これだけの情報じゃ判断しようがないわ)

自分の思い過ごしかも知れない。
往人は正面勝負で敗れ去ったが、観鈴との約束を果たせなかった所為で、絶望していたのかも知れない。
そう判断した瑛理子はあゆへの警戒を緩め、互いに情報交換を行う事にした。
けれど、その最中に思う。

復讐に生きようとは思っていない。
過去の罪をそんな手段で清算させた所で、何にもならない。
それでももし、目の前に往人を殺した犯人が居るのならば。
そしてその犯人が、臆面も無く正体を偽るような悪人ならば。

(往人。貴方がこの子を守って逝ったと云うのなら、私も同じように守り続けるわ。でも万一、あゆが往人を殺したのなら――)

ポケットに押し込んだトカレフTT33の感触を確かめながら――

(――私があゆを殺すわ)

沸き上がる殺意は、抑え切れそうも無かった。




そして、明確な殺意を秘めているのはあゆも同じ。

(……うん、不安だったけど割と上手く行ったね)

大した戦闘能力を持たぬ自分が生き残るには、誰かに取り入るしかない。
可能ならば工場に向かいたい所だが、それよりも保身が最優先だ。
だからこそあゆは、ずっと前から、隠れてこの場の様子を伺っていた。
往人の死体を餌として、彼の仲間が駆け付けて来るのを待っていた。
そして、やってきた数々の来訪者。
往人の幻影が現われた時は驚愕の声を上げそうになったが、何とか我慢した。
戦いが終わった後も、すぐには声を掛けなかった。
相手の人数が多ければ多い程、騙し通すのは難しくなるからだ。
そうして、残ったのが瑛理子達二人だけになってから、話し掛けたという訳である。
二人相手ならば大丈夫。
きっと上手く騙して、利用し続ける事が出来る。
予め考えておいたお陰で、往人の死についても上手く言い訳出来た。
それに、万が一自分の正体が暴露しそうになっても――

(……大丈夫。ボクにはコレがあるもん)

そう、隠し持ったコルトM1917で撃ち殺してしまえば良い。
だが、あゆは知らない。
自分が今、どんな相手と行動しているかという事を。

二見瑛理子は、IQ190以上の頭脳を持つ天才少女。
彼女の目をずっと欺き続けるなど、不可能に近い。

白鐘沙羅は、探偵事務所の助手を務めた少女。
常日頃より銃を持ち歩いている彼女の実力は、屈強な男と比べても決して見劣りしない。



少年少女達が抱く、多種多様な想い。
それらの決着が付く時は、もう間も無くかも知れない。




【F-4南 住宅街/2日目 深夜】

【倉成武@Ever17】
【装備:投げナイフ2本、永遠神剣第四位「求め」@永遠のアセリア、貴子のリボン(右手首に巻きつけてる)】
【所持品:支給品一式 ジッポライター、富竹のカメラ&フィルム4本@ひぐらしのなく頃に
     ナポリタンの帽子@永遠のアセリア、可憐のロケット@Sister Princess、首輪(厳島貴子)、鍵】
【状態:L5侵蝕中。中度の疑心暗鬼。強い迷い。
 頭蓋骨に皹(内出血の恐れあり)。頬と口内裂傷(ほぼ回復)。頚部に痒み。脇腹と肩に銃傷。刀傷が無数。服に返り血】
【思考・行動】
基本方針:つぐみ以外誰も信用する気は無かったが、迷いが生じている
0:まずは病院に向かう(ルートは後続の書き手さん任せ)
1:病院での決闘に勝利し、自分の正しさを証明する
2:邪魔が入るようならば、美凪を殺す
3:つぐみを探す
4:ハクオロを強く警戒
5:衛とことみについて、若干の罪悪感
【備考】
※キュレイウィルスにより、L5の侵蝕が遅れています、現在はL3相当の状態で、症状は弱まっていますが、疑心や強いストレスによって進行する恐れがあります。
※自分が雛見沢症候群に犯されている可能性を、自覚しました
※前原圭一、遠野美凪の知り合いの情報を得ました。
※富竹のカメラは普通のカメラです(以外と上物)フラッシュは上手く使えば目潰しになるかも
※永遠神剣第四位「求め」について
「求め」の本来の主は高嶺悠人、魔力持ちなら以下のスキルを使用可能、制限により持ち主を支配することは不可能。
ヘビーアタック:神剣によって上昇した能力での攻撃。
オーラフォトンバリア:マナによる強固なバリア、制限により銃弾を半減程度)
※キュレイにより少しづつですが傷の治療が行われています。
※所有している鍵は祭具殿のものと考えていますが別の物への鍵にしても構いません
※救急車(鍵付き)のガソリンはレギュラーです。現在の燃料はごく僅かです。何時燃料切れを起こしても、可笑しくありません。


【遠野美凪@AIR】
【状態:腹部打撲、気絶、武の運転する救急車に乗せられている】
【装備:無し】
【所持品:支給品一式×2、包丁、救急箱、人形(詳細不明)、服(詳細不明)、顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)情報を纏めた紙×2】
1:不明
※春原陽平、小町つぐみの情報を得ました
※武がH173に感染していることに気が付きました





【F-4 住宅街/2日目 深夜】
【前原圭一@ひぐらしのなく頃に祭】
【状態:精神安定、右拳軽傷、体全体に軽度の打撲と無数の切り傷、左肩刺し傷(左腕を動かすと、大きな痛みを伴う)】
【装備:永遠神剣第六位冥加@永遠のアセリア -この大地の果てで- 】
【所持品:支給品一式×2、折れた柳也の刀@AIR(柄と刃の部分に別れてます)、キックボード(折り畳み式)、大石のノート、情報を纏めた紙×2】
【思考・行動】
基本方針:仲間を集めてロワからの脱出、殺し合いには乗らない、人を信じる
0:病院に向かう
1:病院での決闘に勝利し、武と美凪を救う
2:知り合いとの合流、または合流手段の模索
3:あゆについては態度保留、但し大石を殺したことを許す気は今のところない。
4:良美を警戒
5:ハクオロに対しては一応警戒。
6:いつか祭具殿の中へ入りたい

【備考】
※大石のノートは一応、最後まで読みました。ただ、ノートの何処かに別の考察を書いている可能性はあります
※二見瑛理子、宮小路瑞穂、アセリアを信頼
※春原陽平、小町つぐみの情報を得ました
※スピリットの場合、冥加の使用には、普段の数倍の負担がかかります。
※神剣魔法は以上の技が使用可能です。
アイアンメイデン  補助魔法。影からの奇襲によって、相手の手足を串刺す。
ダークインパクト  攻撃魔法。闇の力を借りた衝撃波で攻撃する。
ブラッドラスト    補助魔法。血をマナに変換し、身体能力を増強する。





【F-4 住宅街/2日目 深夜】
【アセリア@永遠のアセリア】
【装備:悟史のバット@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式 鉄串(短)x1、鉄パイプ、国崎最高ボタン、ひぐらし@ひぐらしのなく頃に、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-、

 情報を纏めた紙×2】
【状態:肉体的疲労軽、右耳損失(応急手当済み)、頬に掠り傷、ガラスの破片による裂傷(応急手当済み)】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
0:瑞穂と共に、病院へ向かう(但し圭一と武に見付からないよう、細心の注意を払う)
1:仲間を守る
2:無闇に人を殺さない(但し、殺し合いに乗った襲撃者は殺す)
3:強者と戦う
4:存在を探す
5:冥加が使い辛い
6:悠人とハクオロに謝りたい
7:川澄舞を強く警戒


【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:ベレッタM92F(9mmパラベラム弾15/15+)】
【所持品:支給品一式×3、フカヒレのギャルゲー@つよきす-Mighty Heart-、
 多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、斧、レザーソー、投げナイフ3本、
 フック付きワイヤーロープ(5メートル型、10メートル型各1本)、茜手製の廃坑内部の地図(全体の2~3割ほど完成)、予備マガジンx3、情報を纏めた紙×2 】
【状態:強い決意】
【思考・行動】
基本:エルダー・シスターとして、悲しみの連鎖を終わらせる(殺し合いを止める)
0:アセリアと共に、病院へ向かう(但し圭一と武に見付からないよう、細心の注意を払う)
1:圭一、武、美凪を救う
2:アセリアを守る
3:川澄舞を警戒

【備考】
※参加者全員に性別のことは隠し続けることにしました。
※現在、バーベナ学園の制服を着用。以前の血塗れの制服はE-2地点に放置。
※フカヒレのギャルゲー@つよきす について
プラスチックケースと中のディスクでセットです。
ケースの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してあります。
ディスクの内容は不明です。






【F-4 住宅街/2日目 深夜】
【天才少女と探偵少女と契約者】
1:情報交換しながら、病院に向かう
2:必要があるようなら、その他の施設にも寄り道する

【月宮あゆ@Kanon】
【装備:背中と腕がボロボロで血まみれの服】
【所持品:支給品一式x3、コルトM1917(残り6/6発)、コルトM1917の予備弾31、情報を纏めた紙×2】
【状態:健康体、ディーと契約、満腹、明確な殺意、生への異常な渇望、眠気は皆無】
【思考・行動】
行動方針:他の参加者を利用してでも、生き残る
0:人を殺してでも、どんな事をしてでも生き残る
1:生き延びる為に、瑛理子と沙羅を利用する
2:可能ならば工場に行く(北上)
3:死にたくない
【備考】
※契約によって傷は完治。 契約内容はディーの下にたどり着くこと。
※悲劇のきっかけが佐藤良美だと思い込んでいます
※契約によって、あゆが工場にたどり着いた場合、何らかの力が手に入る。
(アブ・カムゥと考えていますが、変えていただいてかまいません)
※ディーとの契約について
 契約した人間は、内容を話す、内容に背くことは出来ない、またディーについて話すことも禁止されている。(破ると死)
※情報を纏めた紙にはまだ眼を通していません。
※あゆの付けていた時計(自動巻き、十時を刻んだまま停止中)はトロッコの側に落ちています。


【二見瑛理子@キミキス】
【装備:トカレフTT33 6/8+1】
【所持品:支給品一式、ブロッコリー&カリフラワー@ひぐらしのなく頃に祭、空鍋&おたまセット@SHUFFLE! ON THE STAGE
     往人の人形、エスペリアの首輪、映画館にあったメモ、家庭用工具セット情報を纏めた紙×10】
【状態:強い決意、往人を殺した犯人に対する殺意、左肩打撲、左足首捻挫(処置済み)】
【思考・行動】
基本:殺し合いに乗らず、首輪解除とタカノの情報を集める。
1:あゆが嘘を吐いていないか疑っている
2:錯乱している者や、足手まといになりそうな者とは出来れば行動したくない。
【備考】
※鳴海孝之に対して僅かに罪悪感を抱いています。
※パソコンで挙がっていた人物は、この殺し合いで有益な力を持っているのでは? と考えています。
※首輪が爆発しなかった理由について、
1:監視体制は完全ではない
2:筆談も監視されている(方法は不明)
のどちらかだと思っています。
※家庭用工具セットについて
観鈴が衛から受け取った日用品の一つです。
ドライバー、ニッパー、ペンチ、ピンセットなどの基本的な工具の詰め合わせである。
なお全体的に小型なので武器には向いていないと思われます。


【白鐘沙羅@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
【装備: ワルサー P99 (8/16)】
【所持品:支給品一式 フロッピーディスク二枚(中身は下記) ワルサー P99 の予備マガジン8 カンパン30個入り(10/10) 500mlペットボトル4本、
 情報を纏めた紙×2、『バトル・ロワイアル』という題名の本】
【状態:軽度の疲労・強い決意・若干の血の汚れ】
【思考・行動】
基本行動方針:一人でも多くの人間が助かるように行動する
0:まずはあゆと瑛理子の間に何があったのか、確かめる
1:H173の治療法を探す
2:状況が落ち着いたら、瑛理子と共にフロッピーディスクをもう一度調べる
3:首輪を解除できそうな人にフロッピーを渡す
4:情報端末を探す。
5:混乱している人やパニックの人を見つけ次第保護。
6:最終的にはタカノを倒し、殺し合いを止める。 タカノ、というかこのFDを作った奴は絶対に泣かす

【備考】
※国崎最高ボタンについて、何か秘密があるのでは無いかと考えています。
※FDの中身は様々な情報です。ただし、真偽は定かではありません。
※紙に書かれた事以外にも情報があるかもしれません。
※“最後に.txt .exe ”を実行するとその付近のPC全てが爆発します。
※↑に首輪の技術が使われている可能性があります。ただしこれは沙羅の推測です。
※図書館のパソコンにある動画ファイルは不定期配信されます。現在、『開催!!.avi』と『第三視点からの報告』が存在します。


170:決着は、初めて出会った場所で――(前編) 投下順に読む 171:出会わなければ殺戮の夜叉でいられた
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170:決着は、初めて出会った場所で――(前編) 宮小路瑞穂 181:うたかたの恋人(前編)
170:決着は、初めて出会った場所で――(前編) アセリア 181:うたかたの恋人(前編)
170:決着は、初めて出会った場所で――(前編) 前原圭一 178:信じる者、信じない者(Ⅲ)
170:決着は、初めて出会った場所で――(前編) 二見瑛理子 176:そして、闇はなお深く
170:決着は、初めて出会った場所で――(前編) 月宮あゆ 176:そして、闇はなお深く
170:決着は、初めて出会った場所で――(前編) 二見瑛理子 176:そして、闇はなお深く
170:決着は、初めて出会った場所で――(前編) 遠野美凪 178:信じる者、信じない者(Ⅲ)
170:決着は、初めて出会った場所で――(前編) 倉成武 178:信じる者、信じない者(Ⅲ)







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