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邂逅(前編) ◆/Vb0OgMDJY


太陽が落ちて、すっかり暗くなった町。
いつの間にか空の月は輝きを増し、その下にある全てのものに、美しく、やさしく、そして無慈悲な光をそそいでいた。
その光の中、南に向かって進む一団があった。

「……鳴海孝之が…………そう、……なの」
「ええ、鳴海さんはこの島の現実に耐えられず、夢の中に逃げ込む事しか出来なかったようです」
「………………」
「………………」

天才少女、二見瑛理子。
エルダーシスター、宮小路瑞穂。
ブルースピリット、アセリア。
そして、人形使い、国崎往人。

彼女ら四人は、共に行動することを決めた後、F-2地区を南下し、次の目的地である図書館へと向かっていた。
本来なら、往人の疲労を考え、休憩するべきだったのだが、
本人が、
「俺の事はいい、既に俺のせいで大分時間を使った。
ただでさえ俺達のルートが一番長いんだ、これ以上時間を掛けては予定に間に合わなくなる。
 休憩は、図書館か港で人を探す間だけでいい」

と言ったので、――幾分ゆっくりとしたペースではあるが――そのまま図書館へと移動することにした。
そして、その道中に、色々と情報交換を行っていた…………のだが、
話をしているのは、専ら瑛理子と瑞穂の二人だけだった。

瑞穂は、やはりまだ往人の事は割り切れてはいないため、往人に対してはどうしても話のテンポが悪くなる。
往人も、そのことは理解しているので、自分からはほとんど話に参加していかなかった。
それに彼自身、消耗が激しい為、あまり話す元気もなかったという事もあった。

そしてアセリアは、元々口数の多いほうではないのだが、往人と全く話そうとしないばかりか、露骨にあさっての方角を向いている。
やっている事は丸っきり拗ねた子供のそれなのだが、こちらの話はちゃんと聞いているようなので、そのままにさせている。
それに、日が落ちたこの状況下では、戦いに慣れたアセリアの感覚だけが、周囲を警戒する手段でもあるので、二人とも無理に話に参加させようとはしなかった。

そうして、瑛理子と瑞穂は情報交換を行っていたのだが、瑞穂達がハクオロ達からほとんど話を聞かずに別れたと聞いて、瑛理子が
“首輪は盗聴されている”
と書いた紙を見せた為、
落ち着いて話の(筆談の)出来る図書館に着くまでは、瑞穂がほとんど一方的に話をし、時たま瑛理子が補足を求めるという状況だった。

そうして、温泉での約束や、アルルゥ、アセリアとの出会いの話を経て、茜を殺した狂人、鳴海孝之の話に差し掛かった時、僅かに瑛理子の様子が変わった。
最初は、あまり歓迎していない雰囲気だったが、瑞穂の話が進むにつれて、徐々に口数が減っていった。
そうして、瑞穂がその手で孝之の命を絶った事を話した頃、
漸く住宅街のはずれにある、周りよりも遥かに大きな建造物――図書館が一行の視界へと入ってきた。

◇  ◇  ◇  ◇

「思っていたよりも大きそうな図書館ですね」
瑞穂が口にした内容に、俺も内心で同意しておいた。
俺は図書館なんてそんなに知っている訳じゃあないが、それ専用の建物を持っているとなると、そこそこ大きい町にでも行かなければ無さそうな規模だ。

「あれなら、かなり詳しい専門書もあるかもしれないわね」
瑛理子は妙に大きな声でそう言うと、少しペースを上げて歩き出した。
彼女だって足を怪我している筈なのに、女ってのはたくましいもんだ、と苦笑しながらもそれに続く。
体は元々痛みっぱなしなので、そんなに負担は変わらなかったが、やはり根本的に動かし辛く感じ、瑛理子よりも若干遅いペースで進む。
そんな俺を見て、瑞穂が若干迷ったような表情をみせていた。
だが、俺はその視線を無視して、また少しペースを上げた。

……瑛理子にしろ、瑞穂にしろ、優し過ぎる。
俺には、既にその優しさに甘える資格なんて無い。
ハクオロ、瑛理子、高嶺、瑞穂、…………観鈴。
今の俺は、皆の優しさと強さによって、ここにいる。
だから、これ以上、皆の優しさに甘えるわけにはいかない。
今のこの身は、ただ犯した罪を償い、背負い続ける為だけに存在している。
安息なんて望んでは、いけない。

そうして、瑛理子に続いて図書館の正面側に周った時、不自然なものが俺の視界に入った。
図書館の入り口の近くに、白いボディに赤いペイントがされた車――救急車が停まっていた。
それは、明らかに不自然。
病院ならともかく、こんな所に救急車がある理由……そんなもの、一つしか思いつかない。

「誰か、中にいる……そう考えるのが自然ね」
「ああ、だけど……」
そのことは疑いようがない、だが問題なのは『何故、こんな目立つ場所に救急車が置いてあるのか』ということだ。
言うまでもなく、あんな所に救急車があれば、誰だって図書館に人がいると思うだろう。
つまり、中にいる相手は、自分(達?)の存在を主張しているということになる。
問題は、その意図が何なのか、だ。

「中に居るって主張してるということは、こちらに入って来いと言っている訳よね」
「仲間を集めている、と考えるのは危険過ぎますね」
「ああ、むしろ罠がある、と考えるべきだろうな」
重要なことなので、俺が話かけても、瑞穂は何も言わなかった。
そうして三人で意見を出し合ったのだが、話し合ったところで答えが出るものでもない。

念の為、と救急車を調べてみたが、キーが抜いてあるだけで、ガソリンはまだ残っている。
つまり、乗り捨てて行ったのではなく、図書館に居るのは確実と見ていいだろう。
そうして、どうしたものかと考え込んでいたその時、
一人会話に参加していなかったアセリアが、堂々と図書館の入り口の方へと向かって行った。
慌てた瑞穂が、
「あ、あのアセリアさん、そんな堂々と入っては危険だと思いますが」
と声を掛けたが、
「ん、考えても分からない」
一蹴されてしまった。

だが、アセリアの言う通り、考えたところで答えは出ない。
なら普通に入って行くしか方法は無い。
そう考えた俺が後に続いたので、瑛理子と瑞穂もしぶしぶといった感じだが、ついて来た。
だが、入り口の近くまで来て、見える範囲に人がいなそうなのが確認出来たところで、俺はアセリアに声を掛けた。
「アセリア」
「…………」
見事に無視された。
だが、へこたれている場合ではないので、もう一度、今度は用件を伝える事にした。
「俺が先に図書館に入る。
 アセリアは俺の少し後ろに続いてくれないか」
「……………………何故」
ひどく不機嫌そうな返事が来た、無視するわけにもいかないので、渋々答えたと言う感じだ。
「俺達の中で、一番の戦力はアセリアだ。
 だから、罠があるかもしれない所に入られて、傷を負われては困る。
 まずは俺が罠や待ち伏せが無いか調べるから、その後に続いてくれ」

アセリアに傷を負われては、戦うことも、逃げることも難しくなる。
図書館に近づくまでは、何時でも下がれる為、戦闘に慣れたアセリアに先行してもらったが、危険度と選択が増える屋内では、アセリアをフリーにしておいた方が選択の幅は広い。
そう思って発言したら、
「国崎往人、あんたさっきの話をもう忘れたとか言わないわよね」
瑛理子から怒りの篭った言葉を頂戴した。
だが、まあ来るだろうとは思っていたので、そんなに慌てずに済んだ。
「まさか、俺にはもう自分から死を選ぶ権利なんて無い。
 俺は、これが最も安全だと思っている。
 もし、中に危険があった場合、アセリアになにかあれば、それだけで俺達全員の危険度は増す。
 だから、アセリアの次に戦いに慣れている俺が先行して、アセリアには状況に応じて動いてもらう。
 これが『俺達全員にとって』最も安全な選択だ」
なので、今の正直な意見を告げた。

三人とも、少しポカンとしていたので、その隙に、
「だから俺が先頭、その少し後にアセリアで、瑞穂はその後ろでバックアップを頼む。
 瑛理子は怪我しているから、一緒には入らないで、合図があったら続くようにしてくれ」
それだけ告げて、俺はさっさと図書館のドアを開けて、何もなさそうなことを確認すると、中に入った。


どうやら、見た目通り二階建てで、ロビーにはカウンターと事務室、そして大きめの階段がある。
上か、下か。

篭城するつもりなら、周辺の監視のしやすい上にいるだろう、と当たりをつけ、二階フロアが少し見える位置まで移動した時、
二階の奥の方から複数の人影がやってくるのが見えた。
それに対して銃を向けようとして、そのうちの一人の顔が見えた時、俺は思わず反応できなかった。
「待ってくれ!俺達は殺しあ「国崎さん!!」いに……」
何か言おうとした少年の声を遮って、聞き慣れた声が聞こえた。
「……美凪……か」


◇  ◇  ◇  ◇


倉成武と佐藤良美を退けた圭一達は、住人たちよりも30分ほど前に図書館に到着していた。
彼らの仲間である武を助ける手段を探す為、そして追ってくる武と良美を待ち伏せする為、彼らは、車を停めてすぐに、図書館の中に入った。
そうして、まずは武の症状と思われるH173、及び特効薬らしいC120について調べようとしたのだが、すぐに行き詰ってしまった。
なにしろ、何を調べていいのか解らないのだ。
詳しい情報を調べる為に、沙羅の持つフロッピーを調べようとも考えたのだが、後2枚しかない上に、図書館にある全てのパソコンが使えなくなってしまうとあっては、
簡単に使うわけにもいかず、だが他に手も無いので、パソコンを立ち上げたところで、入り口の方から人の声がすることに気付いた。

それで、慌てて入り口の方へと移動したのだが、圭一が目にしたのは、倉成武ではなく、見知らぬ男性の姿だった。
それで圭一はまず、自分達が殺し合いに乗っていないことを伝えようとして、
「待ってくれ!俺達は殺しあ「国崎さん!!」いに……」
美凪の声に遮られた。


◇  ◇  ◇  ◇


俺の呼びかけは、遠野さんの声に遮られた。
住人という名前は、遠野さんから聞いたことがある、と思った時に、
「……美凪……か」
と、目の前にいる男性――国崎さんで間違いないらしい、が遠野さんに声を掛けた。
「はい、国崎さん、……お久しぶりです」
住人さんの声に答えて、遠野さんが返事をする。
その声には、安堵、歓喜、困惑などなど様々な気持ちが込められていた。
遠野さんの知り合い、それは間違いない、だけど、
「……美凪と一緒にいる少年、俺は、……いや、俺達は殺し合いには乗っていない。
 美凪と一緒にいるって事は、恐らく君達もそうなんだろ」
こちらの気持ちを見透かしたかのように、国崎さんが俺に声を掛けてきた。
「俺達ってことは、仲間がいるってことですか?」
遠野さんの知り合いというなら、それだけでほとんど信用してもいいと思ったが、一応気になることを聞いておいた。
仲間がいるとなれば、殺し合いに乗っている確立は、グンと低くなるからだ。
「ああ、俺達は4人。 それと別の場所で待ち合わせしている仲間が4人いる。
 君達は2人だけか?」
「いや、あと一人、奥にいます。
 ……とりあえず、奥の方で話しませんか」
8人とはまたえらい大所帯だ。
そして、それだけの人数で殺し合いに乗っているなんて、まず考えられない。
なので、住人さん達を奥へと誘った。
「ああ、すまない。
 ……アセリア、それに瑞穂と瑛理子、ここは大丈夫みたいだ」
そう声をかけた少し後、三人の女の人が、図書館に入って来た。


そのまま、俺達は図書館の二階で待っていた沙羅さんのところまで行き、事情を説明した。
そして、閲覧スペースでお互いの自己紹介ということになった。

まず、唯一の男性が国崎往人さん、遠野さんの知り合い。そしてえらくボロボロな人だ。
その横の、傘を杖代わりに使っている人が二見瑛理子さん。 なかなかキツそうな人だ。
長い髪で、いかにもお嬢様といった雰囲気が漂っているのが宮小路瑞穂さん。 俺の周りにはいないタイプだ。
……武さんの仲間の人だと思う。
そして、すこし離れている外人さんがアセリアさん。 どうでもいいが青い髪と目に、鎧って何処の国の人だ? 
とりあえず、レナが生きていたら間違いなくお持ち帰りされそうな面々と自己紹介をしたところで、住人さんが、
「エルルゥ、倉田佐祐理、エスペリア、アルルゥ、神尾観鈴、この中に知り合いが居たら、教えてくれないか」
という、妙な質問をしてきた。
どれも、放送で呼ばれた名前だ。
それに神尾観鈴って、そもそも遠野さんたちの知り合いだろ?
訳が分からないが、とりあえず答えを返した。
俺達の答えを聞いた後、往人さんは俺達に、主に遠野さんに向けて、『そのこと』を話し出した。

俺達は、その内容に声も無く、ただ呆然と聞いていた。
そうして、往人さんが遠野さんに
「……すまない」
と言って、話は終わった。
そうしてしばらく誰も何も言わなかったが、やがて遠野さんが往人さんのそばに近づき、

パチッ

という音が響いた。
「…………は…反省しました、で賞は、あげません」
往人さんの頬を叩いて、遠野さんはそう言った。
その、大した力の篭っていない一撃は、おそらくどんな拳よりも響いただろう。
「……すまない」
そうして、放たれる真摯な言葉。 だが、そんなもので、犯した罪は消えるはずが無い。
「国崎さんは……ずるいです。 ……神尾さんが、そう言ったのなら、私は往人さんには…………何も、言えません」
泣きそうな声で、遠野さんが言った。
その言葉は、何よりも往人さんの心を抉るだろう。

そしてその間、俺も沙羅も、動けなかった。
当然だろう、誰が罪を犯した――人を殺した相手と共に居られるだろう。
だから、俺達は何も出来なかった。

けれど、
“圭一を、許しましょう”
どこで聞いたのか思い出せない声が、俺の頭の中に響いた。
そうだ、犯した罪は消えない、でも、その罪を自覚し償おうとしている。
ならば、それ以上、その罪が責められるべきではない。
往人さんは、許される事は望んでいない。
そして、遠野さんも、責めるべきではないと分かっている。
だから、

「俺は、往人さんを信用する」
そう、告げた。
その言葉に皆が俺の方を向く
「往人さんは、ちゃんと自分の罪を自覚して、向き合っている。
 許されたいと思っていないけど、ちゃんと償おうとしている。
 俺には、往人さんの罪は許すことは出来ない。
でも、全てを話してくれた往人さんを、信じることは出来る」
かつて、どこかで言われた言葉を、俺の言葉で、告げた。
罪を犯した俺を、皆は仲間だと言ってくれた。
□□ちゃんは、許すと言ってくれた。
俺には、往人さんの罪を許す資格はない。
でも、遠野さんが信じている往人さんを、信じることは出来る。


◇  ◇  ◇  ◇


前原くんというらしい男の子には驚かされた。
彼がどういう人間なのか、大体のところは理解出来た。
恐らく彼は、決して人を見捨てたりはしない。

……鳴海孝之の顛末は、私に衝撃を与えた。
彼が狂う事になった原因は、私にもあるのだろう。 それが私の罪であるかは兎も角としてだ。
私の理性は、私の行動が間違いでないと告げている。
けど、私の感情は、それで良かったのかと言っている。
どちらが正しいのかは、わからない。
ただ、前原圭一の言葉によって、私たちと彼らの距離が、随分狭くなった。

その後は、話はスムーズに進んだ。
まず、彼らの当面の目的は、仲間である倉成武(瑞穂の仲間でもある)を救う為らしい。
H173という薬は聞いた事も無い。
そもそも、具体的な病名がわからなければ、どうしようもない。
なので、そのC120とやらに頼るしかないのだけど、それについては瑞穂と圭一の話で当たりがついた。
瑞穂が温泉で倉成武と別れたとき、彼は平穏そのものだったらしい。
そして、その後病院で圭一達と会った後にはそのような薬品に心当たりはないそうだ。
(前原くん達の話だと、病院は随分なダメージを受けているらしい、実際に見てみなければ判断出来ないけど)
ならば、恐らく、誰かの支給品。
もしくは、可能性は低いけど病院で投与された、そのどちらかと考えるのが自然だ。
ただ、懸念するべきは前者。
誰かの、といわれても特定なんて出来ないし、それが死者なら探すことも難しい。(そして他人に投与するとなると、可能性は圧倒的に前者の方が高い)

ただ、その言葉を受けて、
「もしかしたら、誰かの支給品にまぎれているかもしれない」
ということで、皆の持ち物検査をすることになった。
そして机の上に、支給品が広げられたのだが、案の定そんな薬はなかった。
それはいい、でももう一つ、有るべきものが無かった。
「瑞穂……鳴海孝之の荷物の中に、ノートパソコンは無かった?」
「ノートパソコンですか? いえ、彼が持っていたのは武器と、このボイスレコーダーだけでしたよ」
どこかで落としたのかしら?

まあ、考えても仕方の無いことなんだけど、沙羅の話を聞いてから、少し気になっていたことがある。
この図書館だけではなく、レジャービルにもパソコンはあったらしい。
そして、衛の話から考えると、この島の至る所で物が拾えるらしい。
なら、既に禁止エリアではあるけど百貨店、あるいはその辺りの民家に行けば、ノートパソコンがある可能性は高い。
なら、何故ノートパソコンが支給されたのか、特に意味がないという可能性もあるけど、何か重要な意味があるのかもしれない。
と、そこまで考えたところで、

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という声によって私の思考は遮られた。

「…………」
「…………」
「…………」
「…………………………俺?」
「『国崎最高ボタン』……茜さんの支給品だそうです……」
瑞穂の説明が入ったけど、誰も反応が取れなかった。
何ソレ?
どんな意味があるのよ。
なんでわざわざ往人を崇めなきゃいけないのか。
そんな皆の気持ちが一つになった所に。

“イヤッホォォォオゥ国崎最高!!”

再び、例の声が響いた。
何故だか、アセリアが押したらしい。
そのアセリアは“じ~~~~”という擬音を浮かべながら、
ポチッ
“イヤッホォォォオゥ国崎最高!!”
ポチッ
“イヤッホォォォオゥ国崎最高!!”
ポチッ
“さあ、楽しい人形劇の始まりだ”
ポチッ
“イヤッホォォォオゥ国崎最高!!”
何故か知らないけど、ボタンを連打していた。
…………貴方、往人の事嫌いじゃなかったの?


◇  ◇  ◇  ◇


“イヤッホォォォオゥ国崎最高!!”
“イヤッホォォォオゥ国崎最高!!”
私たちの中に、いい感じに倦怠感が流れていた。
アセリアさんはまだアレを連打している。
でも、そんな事をしていられないと思ったのか、瑛理子さんが“パンパン”と手を叩いて皆の注目を集めた。
「とりあえず今後の事を“イヤッホォォォオゥ国崎最高!!”うわよ……って、
 後にしなさい!!」
机を叩きながら、瑛理子さんがアセリアさんに言った。


「じゃあ、気を取り直して話をするわよ」
今度は邪魔は入らなかった。
瑛理子さんは最初、没収しようとしていたけど、ここにいる人間では物理的に不可能なので、国崎最高ボタンは今もアセリアさんが持っている。
また押したりしないか心配だ……。

そんな心配をよそに、会話は進んだ。
瑛理子さんが、話の前に“首輪には盗聴器がしかけられている”という紙を見せた為、筆談も交えて進行していた。
その際、瑛理子さんは、筆談も警戒されている可能性を訴え、文字を書いていても問題のない状況、それぞれの情報を紙に纏める事を提案した。
幸い此処は図書館なので、コピー機があるから丁度いい機会だった。

「まず、私たちは3チームに分かれて、参加者を探しながら、次の放送までに病院を目指しているの、当面の拠点としてね」
“首輪の解体が可能かもしれないしね”
そして、遠野さんの支給品だという、顔写真付名簿を捲りながら続けた。
「仲間の名前は、高嶺悠人、千影、ハクオロ、衛、この4人よ、それで」
「待ってくれ!!」
瑛理子さんの話を、前原さんが遮って、
「ハクオロ、だって? アイツは危険な人間なんだぞ!!」
そう、続けた。
「ハクオロが危険? そんなはずはないわ」
「ああ、ハクオロは信頼出来る仲間だ。
 アイツが居なければ、俺は今此処にはいない」
瑛理子さんの言葉に、往人さんが続ける。
……私は何も言わなかったけど、ほとんど同じ意見だった。
アルルゥちゃんがあんなに懐いていた人が、そんな人間とは思えない。
けど、前原さんは、
「いや、ハクオロは大石さん達を騙した人間なんだ!」
と否定した。
大石といえば、既に放送で名前が呼ばれている人物だ。
「とりあえず、詳しく話してもらえませんか」
その相手が、何を言ったのだろうか。

それで前原さんは、月宮あゆさんという方から聞いたという話をした。
……恐らくだけど、そのあゆさんが嘘を吐いている可能性は低いと思う。
わざわざ自分が人を殺したという嘘を吐く人間がいるとは思えないから。
けれど、その話の途中で、
「ちょっと待って、……暴発?」
意外な人物がその会話を遮った。

「沙羅、それがどうかしたのか?」
「うん、ちょっと心当たりがあるの」
そう言って、沙羅さんは自分の支給品だという、フロッピーディスクの話をした。
それによると、支給品の中には暴発する銃が含まれているそうです。
「だから、ハクオロがその大石さんに対して、害意があったかは半々だと思うわ」
そう沙羅さんが言い、
「まあ、その話は私も初耳だから、本人にも直接聞いてみるべきね」
瑛理子さんが繋げた。
それを聞いて
「……解かった、本人に会うまでは確定はしない」
前原さんも矛を収めてくれた。


161:Don't be afraid./散りゆくものへの子守唄(後編) 投下順に読む 162:邂逅(後編)
160:予期せず出会うもの 時系列順に読む 162:邂逅(後編)
153:歯車二つ(後編) 前原圭一 162:邂逅(後編)
153:歯車二つ(後編) 遠野美凪 162:邂逅(後編)
153:歯車二つ(後編) 白鐘沙羅 162:邂逅(後編)
148:求め、誓い、空虚、因果(後編) 国崎往人 162:邂逅(後編)
148:求め、誓い、空虚、因果(後編) 二見瑛理子 162:邂逅(後編)
148:求め、誓い、空虚、因果(後編) 宮小路瑞穂 162:邂逅(後編)
148:求め、誓い、空虚、因果(後編) アセリア 162:邂逅(後編)






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