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選択肢 ◆/Vb0OgMDJY


…………女の人の声がする。
聞いたことのある声だけど、どこで聞いたのだっけ。
小さい声だし、ところどころ途切れていて、すごく聞きづらい。
何て言っているのか気になって、“誰”って聞いてみた。

返事はなくて、女の人は一方的に何かを喋り続けている。


少しして、……それが放送だって気付いた。
おかしいな? 何でこんなに聞こえづらいのかな。
でも、そこで思い出した。
おかしいのは放送じゃなくて、ボクのほうなんだ。

多分、もうボクの耳は……、
ううん、耳だけじゃないか、もう、ボクの体はほとんど壊れちゃってるんだね。

さっきまで体中が痛くてしょうがなかったのに、今はもうほとんど痛くないや。
その代わり、もう、首を動かすことさえ出来そうにないみたい。
まだ、目と口は何とか動かせるのかな。

試しに声を出してみたけど、
「ぅ…」
とても小さな声で、それしか聞こえなかった。
“うぐぅ”って言ったんだけど、これじゃあ、祐一くんにボクだって気付いてもらえないかな。


それで、何もやることがなくなっちゃった。


だから、まだ流れていた放送を、何となく聞いた。
あんまり聞こえなかったけど、多分ボクの名前は呼ばれなかったと思う。
まだ、ボクは死んでいないという扱いみたい。
ボクがいうのも変だけど、もう、ほとんど…同じだと思うんだけどなあ。

よく聞こえなかったけど、今回は5人くらい死んだみたい。
圭一君や美凪さん、武さんに名雪さん、それから……佐藤さんも呼ばれてなかった……と思う。
圭一君達……は、大丈夫かな……

名雪さんは、ボクがやった傷が悪化していないといいけどな……

佐藤さんは…………、もうボクが考えてもしょうがないか。


もう、ボクは、……助からない。


ボクを助けてくれる人は、もう、どこにもいない。
今のボクを見ても、きっと……助けようと思わないと思う…。
死体と間違われて埋められたら……どうしようかな。
でも、そんな心配も、あんまり長く考えなくてもいいのかな


気が付いたら、静かになっていた。

少しして夕日が落ちて、辺りは急激に暗くなってきた。
暗くなるのが普通よりも早いような気がして、死ぬときは辺りが暗くなっていくって話を何となく思い出した。
今のボクに関係あるのかわからないけど、……ううん、もうどっちでもいいのかな。

ボクには、もう何も出来ない。
このまま、のんびりと死………………そう、死ん、でいくだけ。





“この人形は、三つだけなんでも願いをかなえてくれるんだ”

“遅いよ、祐一くん”
“ごめん、ちょっと遅れた”
“ちょっとじゃないよ。たくさんだよ”

“さあ、楽しい人形劇の始まりだ”

“それなら良かった。改めて自己紹介をしておこう……私は鉄乙女だ。お前、名前は?”

“私を、助けてくれるか?”

“あゆちゃーーーん!”
“な、名雪さん!”
“無事でよかったよぉ~”
“うぐぅ。名雪さんも~”

“あ、あのぉ~つ、月宮さん?”
“駄目だよ大石さん。あーん”

“ふむ。高望みはしていなかったが、これはありがたいな”
“え、ええ。そう、ですね”
“うぐぅ……料理出来なくてごめんなさい”

“お前には感謝している”

“おっ、気がついたのか、っておわ!!”
“……えっちですね、前原さん”

“怖くても逃げちゃ駄目。 一番怖いのは罪から目をそらして生き続けることだから。”
“……”
“逃げるのは簡単。 けど今逃げたら後で一生後悔する”




「ゃ……」
いやだ

「…ぃた…、…ぃぁ……」
まだ、……死にたく…………ないよぉ……。

あの楽しかった時間に……戻りたい。

何でボクは、ボク達は、こんなところで……殺されなくちゃいけないの?
ボクは、死にたくない!
まだ、生きていたい!
誰でもいい! 誰でもいいから!
だから! だから……ボクを……助けて……よ…………


「死にぁく……ないよぉ……」
心の底から、そう思った。
もう叫ぶ事も出来ないけど、今のボクの精一杯の叫び。
誰にも届かない、届いてもどうしようもない叫び。


勿論、叫んでも何も変わらなかった。


辺りは相変わらず静かなままで、
いつの間にか夕日も沈んでいた。
虫の声一つしない、とても静かな場所で、
ボクはようやく、本当にどうしようもないのだと思った。


そして、悲し…と、…しさと、情…なさと、…望感と、……と、…さ…、とにか…色々な……に包…れていた時……。


「ならば、汝の全てを奉げると誓うか」

知らない誰かの声がした。


◇   ◇   ◇   ◇


我が、その声の持ち主のところへ向かったのは、気まぐれだった。

我は、ある契約者の願いによってこの場所を創り上げ、その奥深くで時を待っていた。
かつて、遥か過去の我に届いた声により、あの者と契約を交わした。
その後、あの者が新たに望んだ契約。
それは我にとって、行う価値のあるものだった。


我の空蝉や、子供達。
異なる世界に存在する、かつて居たヒトと同じ生命体。
及び多少の差異がある、近似種。
果ては、全く違う理によって生み出された肉に依らない存在。

それらを集め、殺し合わせる。
それは、元々の行いの縮図。
だが、それよりも遥かに多くの可能性に満ちたもの。

ゆえに、我はこの地を模写し、切り離した。
様々な世界から、可能性を集めた。
ある力を持った存在を招いた。
強力な敵対者を退けた。

そして、その時手に入れた、敵対者の力の一部、及び同種の力、
集めた者達に関係のあるもの、
彼らに科せられたくびきを解き放つしくみ、
そして我の下へ到達するための鍵を彼らに与えた。

そうして、かなりの力を失ったが、舞台は完成し、契約者の手に委ねた。
その後、とても短い時間ではあるが、眠りにつく事にした。
契約者を退け、誰かが我の下へ到達するか、
この地の仕組みに敗北し、契約者が我の下へ来るか、
その時まで、待っているつもりだった。

しばらくして、声が聞こえ始めた。
今の契約者が我を呼んだ時と、同じくらいの呼びかけは、かなりの数、聞こえていた。
だから、我はそれに満足しつつも、動くことはなかった。

だが、その中にいくつか、気になる声が存在した。
そして、その中の一つ、他とは明らかに異なる……強いて言えば音階を持つ声が、最大の、そして恐らく最後の望みを発した時、
我はその声の持ち主の前に立っていた。


◇  ◇  ◇  ◇

「成る程、肉の体ではなく、精神が肉体の形状を持っているのか。
 それ故に、純粋な精神の発露が、直に声となって届いた……と。
 肉に依らない存在として妖精には注目していたが、このような形態の存在という選択肢もあるのか」

男の人(?)が何かを言っていた。
その声は、なぜかはっきりとボクの耳に届いていた。
言っている内容はまるでわからないけど、ボクに向かって言っているのだけは分かった。

「ぁ…れ」
「我は、この地において必要以上の干渉を禁じていた。
 だが、汝は意思を伝えるという面において、他の固体よりも遥かに優れた存在だ。
 ゆえに、『我が現れる』という行為が、汝という固体の持つ特徴によるものとすれば、我が干渉する事こそが汝の必然、ということになるのか」

……何を言っているのかな……。
誰? って聞いたのに意味が分からない答えが返ってきちゃった。

「我との契約を望むならば、対価として汝の全てを奉げよ。
 汝はいかなることがあっても、我の下、この地の最奥部まで来るのだ。
そうすれば、先ほどの願い、叶えてやろう」

先ほどの……願い……?

「ぉ…を……ぇく…ぅの」
ボクは、死にたくない。
ボクを助けてくれるの?


「望むなら、奉げよ、汝の全てを。
 髪の毛一本から血の一滴に至るまで。
 魂さえも我に奉げると誓え」

捧げる?
ボクの全てを?
ボクの全てなんて、もうほとんど壊れてるのに?
それだけ誓えば助けてくれるの?



た っ た そ れ だ け の こ と で ?




「ぅん……ちぁ……よ、だぁら」
“だから助けて”って言う前に
「ならば誓え」
男の人(?)が言った。
その後は、なんでか自然と声が出た。

「髪の…毛一本ぁ…ら、…の一滴に至…まで……、そぃて、この魂を差し出しぁす」

「契約は交わされた」
ボクの声に答えて、男の人(?)が言ったとたん、



「……うぐぅ?」
体がなんだか軽くなった。
あれ?
と思わず体を起こしてみたら、さっきまで全然動かなかったのに、今はとても自然に動いた。
全然痛みも感じなかった。
それで、
「治って……る?」
服は相変わらず血でぐちゃぐちゃで、あちこち擦り切れたり破れたりしているけど、
体の何処を動かしても、全然痛く感じない。
それに、さっきまでほとんど壊れていた耳も、目も、声も、今は自然に動いてる。

「治って……る!」
もしかして、ううん、間違いない!
ボクの体は治ってる!
どこも壊れてないし、痛くも無い、全然血も出ていない。
ボクの体は健康そのものだ!
ボクは、……ボクは、…助かったんだ!


「契約は履行した、後は汝が約束を果たすのみだ」
心の底から、喜びがあふれ出そうになったときに、その声が聞こえた。
それで、ようやくそこにいる人に気が付いた。
「……天使……さま?」
ボクよりも大分年上の男の人がいた。
なんだか変わった服を着ている。
そして、背中から大きな羽が生えていた。
「天使? ……汝らの信仰上の存在か。
 否。 我はウィツァルネミテア。
 そのように呼ばれるもの。
 その分身だ」

ういった……何?
よく分からないけど、天使さまじゃないの?
見た目は間違いないんだけどな。
「えっと、その、ウッタリ……?さん、その、助けてくれて有り難うございます」
よく分からないけど、お礼を言っておいた。

「その名は汝が他者に告げることは禁じられている。
 現在の肉体はかつてディーと呼ばれていた固体。
 ゆえにディーと呼ぶが良い」

なんだがまたよく分からない事を言った。
よくわからないけど、ディーさんって呼べばいいのかな?
なので、もう一度お礼を言おうとしたら、
「それに礼は不要だ。
 我はただ契約を行ったのみ。
 ゆえに、汝が行うべきは礼ではなく、契約の履行だ」
そう言われた。



契約……?
そう言えばさっき、助ける代わりに契約をしろって言われたんだっけ。
えっと確か……ボクの全てを奉げる……とか。
さっきはそれこそ必死だったから、なんとも思わなかったけど、全てを奉げるってどういうことだろう?

「うぐぅ……全てを奉げるって、ボクは何をしたらいいんですか?」
よく分からないから聞いてみた。
えっちなことじゃないといいな。

「否、汝は既に『 全 て を 奉 げ た 』のだ。
汝の全ては既に我の物であり、汝は契約に従い、我の下に来る義務がある」

……やっぱりよくわからない。
ボクがこの人の物って言われても、具体的にどういうことなの?
それに我の下、って言われても、……目の前にいるよ?

「うぐぅ……、ボクはあなたの目の前にいるよ?」
「ここではない。
 汝は我の眠る地、この地の最奥部まで来る義務がある。
 契約者を打ち倒すか、
 この島の理に従い、他者を殺し尽くすか、
 どのような方法をとろうと、汝は我の下まで来なければならない」

他者を……殺し尽くす……?
そうだ、
忘れてた、
ボクは、
ボク達は、
この島で、殺し合いをさせられているんだ。


え……?
でも、今の言い方は?
殺し尽くして、それで会いに来い?
え……その、じゃあ………………ま…さか……、
「あ、あなたは、鷹野って人の……仲間…なの?」

そんな、まさか、ちがうよね、
「否」
うん、そうだよ
「我はその契約者、鷹野という固体に力を与えたもの。
 あの者の願い、我に価値を齎しうるものの為にこの地を作り出し、汝らをこの地に招いたもの」
……ね……。

…………う…そ…。
じゃあ、この人が、ボク達をこんなところに連れてきたの?

ボク達に殺し合いをさせているの?

ボクや名雪さんが苦しんでいるのも、

乙女さんや大石さんや……祐一君が死んだのも、

全部、この人のせい?

「う、」
あれも、これも、全部、全部、全部全部全部全部全部全部全部。

この人のせい?

「う、う、う、」
この人が、この人が、この人さえ、この人さえいなければ?

「ううううううううううううううううううううう」
この人さえイナケレバ?

目の前が真っ赤になっていく。
のどが渇いてる。
体中が震えている。
叫ぶのを抑えられそうにない。

そして、ボクの体が一つの行動を起こしそうになったとき。

「やめておけ」
それで、終わり。
それで、ボクは動けなくなった。
それだけで、ボクは、ボクの体が理解した。

ボクは、この人に、逆らえない。
ボクの全ては、この人に奉げられていることが、理解できた。
ボクには、従うことしか出来ない。
ボクが逆らえば、……そこでボクは、死ぬ。

「理解したか。
 ならば、契約を履行せよ」
ボクが動けないでいると、男の人――ディーさんはそういってボクから離れようとした。
「待って!」
だから必死で呼びかけた。
「ボ、ボクは、何をすればいいの?」
ボクは何をすればいいの?
どうすれば死なないですむの?


「先ほども言ったはずだ。
 我の下へ到達せよ。
 この地の理に従い、他者を殺し尽くすか、
 この地の理に逆らい、契約者を退けるか、
 他者を殺すか、協力するか、従えるか、従うか、欺くか、いかなる方法でもかまわない。
 必ず、我の下へ到達せよ。
 その時に、我は汝という存在を選択肢に入れよう」

他の人を殺して…?
そんなこと、出来ないよ……。

じゃあ、協力して……?
“謝る? 今さら何を謝るの? 大石さんと乙女さんを殺したこと!? 私も殺そうとしたこと!?”
“謝る必要なんてないんだよ……。 許すつもりなんかないんだからね!!”

…………出来るはず……ないよ。

「で……できませ……」
その先は言えなかった。
言ってしまったら、ボクは終わってしまう。


そんなボクにかまわずに、話は終わりとばかりにディーさんは去っていこうとする。
だから、
「な、なにか、そ、そうだ、何か下さい!
 ボクが貴方のところまで、行けるようになりそうな物を!」
何でもいいから必死で叫んだ。

それを聞いて、ディーさんは振り返って、冷たい目でボクを見た。
とても、冷たい目。
それだけでボクは喋れなくなった。
「汝という固体には興味はないが、汝の存在は稀有だ。
 我としても契約の履行を望む。
 故に」
そこでスッと手を伸ばして、
「この地の北西、工場という施設に到達せよ。
 契約者ならば、そこで力を手に入れられる」
それだけを言うと、今度こそディーさんはボクの前から姿を消した。



そうして、ボクは一人になった。

「どう……しよう…………」
逃げる事は出来ない。
他の人に頼ることは出来ても、事情は話せない。
それじゃあ、誰もボクを受け入れてくれない。
そもそも、頼れそうな人なんていない。

助けを求めたら、もっと過酷な場所に放り出された。

「工場……だっけ」
ボク達を、こんな目に合わせた張本人。
そんな人に縋りたくない。
でも、ボクにはもう他に縋るものなんてない。

もう他に、ボクには選択肢なんてないのだから。





【F-5 平原・トロッコの近く(マップ左)/1日目 夜】

【月宮あゆ@Kanon】
【装備:背中と腕がボロボロで血まみれの服】
【所持品:支給品一式】
【状態:健康体、ディーと契約】
【思考・行動】
0:どうしよう
1:工場に行く
2:誰か助けて(でももう頼れないかも)
3:お腹へった

【備考】
※契約によって傷は完治。 契約内容はディーの下にたどり着くこと。
※三回目の放送の内容を知りません。
※悲劇のきっかけが佐藤良美だと思い込んでいます
※名雪の第三回放送の時に神社に居るようようにするの情報を得ました
  (禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※土見稟(死体)はあゆの隣にある血だらけのトロッコの中。
※契約によって、あゆが工場にたどり着いた場合、何らかの力が手に入る。
(アブ・カムゥと考えていますが、変えていただいてかまいません)
※ディーとの契約について
 契約した人間は、内容を話す、内容に背くことは出来ない、またディーについて話すことも禁止されている。(破ると死)


【????/1日目 夜】

【ディー @うたわれるもの】
【状態:????】
【思考・行動】
基本思考:ゲームの終了を待つ
1:精神体に興味。
2:他の特殊な存在にも僅かな興味。
【備考】
※基本的に参加者と接触するつもりはありません。
※原作で特殊な能力(主に精神面)がある参加者が呼びかければ接触するかもしれません。
 (巫女である梨花や、読心能力のあることり、異世界に意思が届いた悠人あたりなら可能性あり?)
 (好きに考えていただいてかまいません)
※ディーとの契約について
 契約した人間は、内容を話す、内容に背くことは出来ない、またディーについて話すことも禁止されている。(破ると死)



153:歯車二つ(後編) 投下順に読む 154:救心少女夢想(前編)
153:歯車二つ(後編) 時系列順に読む 150:憎しみの果てに
143:血みどろ天使と金色夜叉 月宮あゆ 164:彼女たちの流儀
ディー






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