親友 ◆IXRLXwC0Ds
フカヒレが死んだ。
最初は突然の出来事に現実感が湧かなかった。夢だとしか思えなかった。
しかし、暗く静かな森に一人でいるうちに嫌でも理解することになった。どうやらこれは紛れも無い現実のようだ。
目を閉じると仲間四人で過ごした日々が走馬灯のように思い出される。
夏は海で、冬は雪国でひたすらに一日中遊んだ。
毎日学校で楽しくふざけあったし、姉に勧められて皆で入った生徒会の活動は新鮮だった。
そして何よりも、仲間四人でただ何もせずに過ごしたぬるま湯のような部屋での時間が懐かしい。
しかし、暗く静かな森に一人でいるうちに嫌でも理解することになった。どうやらこれは紛れも無い現実のようだ。
目を閉じると仲間四人で過ごした日々が走馬灯のように思い出される。
夏は海で、冬は雪国でひたすらに一日中遊んだ。
毎日学校で楽しくふざけあったし、姉に勧められて皆で入った生徒会の活動は新鮮だった。
そして何よりも、仲間四人でただ何もせずに過ごしたぬるま湯のような部屋での時間が懐かしい。
だが、その日々は無惨にも奪われた。涙が溢れる。
「なぜ……何でだよ……何でフカヒレを殺した。あいつが何をしたっていうんだよ」
確かにフカヒレは聖人君子というわけでは無かった。
異性へのセクハラは日常茶飯事だったし、仲間を売り保身を図った事もあった。
けれどもそれは悪巫山戯の域を出ないものであり、今回のパフォーマンスもいつも通りの茶目っ気だろう。
断じて殺される理由にはならない。それなのにフカヒレの命は奪われてしまった、タカノという女の気まぐれによって。
異性へのセクハラは日常茶飯事だったし、仲間を売り保身を図った事もあった。
けれどもそれは悪巫山戯の域を出ないものであり、今回のパフォーマンスもいつも通りの茶目っ気だろう。
断じて殺される理由にはならない。それなのにフカヒレの命は奪われてしまった、タカノという女の気まぐれによって。
「ううぅぅおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
許せない、憎い、憎い、憎い。タカノだけではない。
この腐ったゲームを仕組んだ奴全員も、ただ見ているだけだった俺自身も、フカヒレの命を救えなかった全てが憎い。
仇を討たなければならない。ゲームを仕組んだ奴全員を殺し、フカヒレが寂しくないように俺も死ぬ。それが自分にできる贖罪だ。
この腐ったゲームを仕組んだ奴全員も、ただ見ているだけだった俺自身も、フカヒレの命を救えなかった全てが憎い。
仇を討たなければならない。ゲームを仕組んだ奴全員を殺し、フカヒレが寂しくないように俺も死ぬ。それが自分にできる贖罪だ。
心が決まったところで、支給されているらしい武器を確認する。
まず出てきたのは鞘に入った刀。乙女さんの持つ地獄蝶々にこそは見劣りするがそこそこの名刀のような気がする。
生憎と剣の心得は無いが、鈍器として使うのには申し分ない。早速腰に差しておく。ひとまずは武器を確保し、安心で頬が緩む。
しかし次に取り出した物を見て血の気が引く。現れたのはマシンガンとその予備弾薬。
どう考えてもタカノの使った拳銃よりも強力、周りの迷彩服連中と同等の装備。
これで撃てば人は容易く死ぬ。フカヒレのように――
まず出てきたのは鞘に入った刀。乙女さんの持つ地獄蝶々にこそは見劣りするがそこそこの名刀のような気がする。
生憎と剣の心得は無いが、鈍器として使うのには申し分ない。早速腰に差しておく。ひとまずは武器を確保し、安心で頬が緩む。
しかし次に取り出した物を見て血の気が引く。現れたのはマシンガンとその予備弾薬。
どう考えてもタカノの使った拳銃よりも強力、周りの迷彩服連中と同等の装備。
これで撃てば人は容易く死ぬ。フカヒレのように――
光景がフラッシュバックする。親友の虚ろな顔に不自然に開いた一つの穴、止まらない血……
この銃を使うということは、あの悪夢を量産することに他ならない。果たして自分はそれに耐えられるのか?
否、耐えられない。『人であったもの』を見るのはもうたくさんだ。
つまり自分に人は殺せない……けれども、フカヒレの仇はとらなくてはならない。ジレンマに頭を抱える。
無駄に使える時間は無いのにただ悩む。今の俺を見たら乙女さんやカニは怒るんだろうな。
否、耐えられない。『人であったもの』を見るのはもうたくさんだ。
つまり自分に人は殺せない……けれども、フカヒレの仇はとらなくてはならない。ジレンマに頭を抱える。
無駄に使える時間は無いのにただ悩む。今の俺を見たら乙女さんやカニは怒るんだろうな。
「この根性無しが! 男なら一度決めた事はきちんとやり通せ」
「オメーは本当に情けねー奴だな。フカヒレが死んだのにグズグズしやがって、このチキン野郎」
鮮明な映像が目に浮かぶ。ひよわな自分が実に情けない。いっそこの激情に身を委ねてしまいたいと思う。
でもそれだけはできない。
でもそれだけはできない。
(一時のテンションに流されるな、その時の感情に身を任せたら絶対に後悔する)
今でも残るトラウマ。中学時代の経験から得た教訓。
そうだ、テンションに身を任せるとろくな事にはならない。クールになれ、対馬レオ。
一度この問題を保留して、他の事を考えれば解決策が見つかるかもしれない。
そうだ、テンションに身を任せるとろくな事にはならない。クールになれ、対馬レオ。
一度この問題を保留して、他の事を考えれば解決策が見つかるかもしれない。
……よし、冷静になった。落ち着いて順番に疑問を解決しよう。
まずはなぜマシンガンなんて物を支給するのかだ。このレベルの兵器なら人数を揃えれば一個小隊には容易く刃向かえる。
いくら首輪があるからといってあまりにも浅慮だと思う。自分達の安全に絶対の自信を与える何かがあるのだろうか?
例えば何かで俺達の行動を監視しているとか……確かに発信機や盗聴器なら首輪に組み込めそうだ。
早速首輪を調べてみるも……継ぎ目が無い。いったいどうやって取り付けたんだ?
生きている人間の首に継ぎ目無しに取り付けられるものなのだろうか。よく分からないが何かうさんくさい。
おかしなことなら他にもある。
俺達は生徒会の活動の真っ最中だったはずなのに、気がついたらあのホールにいた。誰かに捕まった記憶は無い。
いったいどうやってあれだけの人数を、人目を掻い潜って連れてきたんだ?
そしてホールからここまでの移動も何やらきな臭い、タカノが手を上げた途端に一瞬で景色が変わった覚えがある。何をした?
理解不能、理解不能。手品なんていうレベルじゃない、これではまるで魔法のようじゃないか――
まずはなぜマシンガンなんて物を支給するのかだ。このレベルの兵器なら人数を揃えれば一個小隊には容易く刃向かえる。
いくら首輪があるからといってあまりにも浅慮だと思う。自分達の安全に絶対の自信を与える何かがあるのだろうか?
例えば何かで俺達の行動を監視しているとか……確かに発信機や盗聴器なら首輪に組み込めそうだ。
早速首輪を調べてみるも……継ぎ目が無い。いったいどうやって取り付けたんだ?
生きている人間の首に継ぎ目無しに取り付けられるものなのだろうか。よく分からないが何かうさんくさい。
おかしなことなら他にもある。
俺達は生徒会の活動の真っ最中だったはずなのに、気がついたらあのホールにいた。誰かに捕まった記憶は無い。
いったいどうやってあれだけの人数を、人目を掻い潜って連れてきたんだ?
そしてホールからここまでの移動も何やらきな臭い、タカノが手を上げた途端に一瞬で景色が変わった覚えがある。何をした?
理解不能、理解不能。手品なんていうレベルじゃない、これではまるで魔法のようじゃないか――
『魔法』
便利な言葉だ。これだけで全てのことが説明できる。しかし今回のことはそれ以外では説明がつかないように思える。
今回の出来事はまるで絵空事だ。魔法が存在したとしてもそれが自然に感じられる。
魔法が存在することを仮定して考察を進めた方が良さそうだ。
魔法が使えるとするならタカノの妙な自信も理解できる。物語の世界の魔法相手ではマシンガンなどは玩具にすぎないのだろう。
そして武器が役に立たないかもしれないならば情報が必要だ。神秘は知恵と勇気と愛で打ち破るしかない。
幸い手がかりはある。タカノの知り合いのマエバラに会えばいい。そうすれば魔法の有無ははっきりする上、何か奴らを攻略する糸口が見つかるはずだ。
また、冷静になった今だからこそ分かる。
フカヒレの仇を討つ、それはゲームを崩して主催者を打倒すること。
これには仲間が必要だ。生徒会の仲間だけでも十分だが確実に成功させるには人数は多い方がいい。
今回の出来事はまるで絵空事だ。魔法が存在したとしてもそれが自然に感じられる。
魔法が存在することを仮定して考察を進めた方が良さそうだ。
魔法が使えるとするならタカノの妙な自信も理解できる。物語の世界の魔法相手ではマシンガンなどは玩具にすぎないのだろう。
そして武器が役に立たないかもしれないならば情報が必要だ。神秘は知恵と勇気と愛で打ち破るしかない。
幸い手がかりはある。タカノの知り合いのマエバラに会えばいい。そうすれば魔法の有無ははっきりする上、何か奴らを攻略する糸口が見つかるはずだ。
また、冷静になった今だからこそ分かる。
フカヒレの仇を討つ、それはゲームを崩して主催者を打倒すること。
これには仲間が必要だ。生徒会の仲間だけでも十分だが確実に成功させるには人数は多い方がいい。
このゲームに不満を抱いている奴は多いだろうから仲間には事欠かないはずだ。
例え途中でゲームにのった奴に会っても自分には強力な武器がある。負ける気はしない。
方針は決まった。ゲームに不満を持つ仲間を集め、主催者を打倒する。
例え途中でゲームにのった奴に会っても自分には強力な武器がある。負ける気はしない。
方針は決まった。ゲームに不満を持つ仲間を集め、主催者を打倒する。
そうと決まれば善は急げだ、人の集まる場所に移動をしよう。早速地図を広げてコンパスで現在地を確認する。
近くに鉄塔が見えるのでここはB-6の東。近くにある人の集まりそうな場所はホテル・学校・百貨店。
しばし悩んだものの選んだ目的地は学校。決めた以上はこれ以上無駄な時間は過ごせない。
荷物をまとめ、ランタンを提げて歩き出す。
近くに鉄塔が見えるのでここはB-6の東。近くにある人の集まりそうな場所はホテル・学校・百貨店。
しばし悩んだものの選んだ目的地は学校。決めた以上はこれ以上無駄な時間は過ごせない。
荷物をまとめ、ランタンを提げて歩き出す。
「フカヒレ……仇は必ず取ってやる、だから今は黙って見守っていてくれ」
暗い山道は慣れていない自分にはつらい。それが分かっていても距離が遠い学校を選んだ。
『学校』という名詞に無性に惹かれた。郷愁なのだろうか。
親友の死はまだ当分吹っ切れそうに無いようだ……
『学校』という名詞に無性に惹かれた。郷愁なのだろうか。
親友の死はまだ当分吹っ切れそうに無いようだ……
◇ ◇ ◇
参加者63人の中で一番早く行動を始めたのは彼だろう、鮫永新一のもう一人の親友、伊達スバル。
H-1からスタートした彼はすぐに荷物を確認。
支給品はバット、服、人形。一見嘆かわしい品々にも顔色ひとつ変えない。
続いて名簿と地図に軽く目を走らすと、荷物をしまい即座に走り出した。
その間わずか30秒。
親友が死んだというのに沈着冷静、冷血漢にも思える。
しかし、やはりというべきか。彼の心は怒りに燃え、復讐の想いで煮えたぎっているた。
H-1からスタートした彼はすぐに荷物を確認。
支給品はバット、服、人形。一見嘆かわしい品々にも顔色ひとつ変えない。
続いて名簿と地図に軽く目を走らすと、荷物をしまい即座に走り出した。
その間わずか30秒。
親友が死んだというのに沈着冷静、冷血漢にも思える。
しかし、やはりというべきか。彼の心は怒りに燃え、復讐の想いで煮えたぎっているた。
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す
親友三人がオレの全てだった。脅かす外敵は全て退けていたし、これからも守り通せると思っていた。
しかしフカヒレは死んだ。決して崩れてはならないはずの聖域の一角は欠けた。もう戻らない。
聖域を侵す奴には容赦しない。親友はオレが守る。そういう覚悟はあった。
だが、現実は無情。守るまもなくあっけなくフカヒレは殺された。残されたのは絶望だけ……
心にぽっかりと穴が空いた気がする――余計な精神が欠けてしまったのだろうか。
そのおかげでか今のオレは氷のようにKOOL(クール)だ、これから自分のやるべき事も分かる。
しかしフカヒレは死んだ。決して崩れてはならないはずの聖域の一角は欠けた。もう戻らない。
聖域を侵す奴には容赦しない。親友はオレが守る。そういう覚悟はあった。
だが、現実は無情。守るまもなくあっけなくフカヒレは殺された。残されたのは絶望だけ……
心にぽっかりと穴が空いた気がする――余計な精神が欠けてしまったのだろうか。
そのおかげでか今のオレは氷のようにKOOL(クール)だ、これから自分のやるべき事も分かる。
フカヒレの仇を討つ。
そのためにどうやって主催者達に会うか。楽勝だ、他の参加者を全員殺せばいい。
優勝すれば必ずオレの前に再び姿を現す。そこでオレの全力全開をもって野郎どもを皆殺しだ。
そのためにどうやって主催者達に会うか。楽勝だ、他の参加者を全員殺せばいい。
優勝すれば必ずオレの前に再び姿を現す。そこでオレの全力全開をもって野郎どもを皆殺しだ。
レオときぬを守る。
楽勝だ。他の参加者を全員殺せばいい。そうすればオレの親友に悪さをする奴はいなくなる。
楽勝だ。他の参加者を全員殺せばいい。そうすればオレの親友に悪さをする奴はいなくなる。
そう、やるべき事は一つ。皆殺し。
悲しんだり後悔している暇は無い。ともかく早く行動するべきだ。
信条は見敵必殺、陸上部で鍛えた足が役に立つ時がきた。
悲しんだり後悔している暇は無い。ともかく早く行動するべきだ。
信条は見敵必殺、陸上部で鍛えた足が役に立つ時がきた。
そして彼は走り出した。
今は亡き親友、フカヒレ。
弟分でもあると共に、自分の半身のように大切な存在、レオ。
片思いの相手であり、実の娘のようにも想っている、きぬ。
弟分でもあると共に、自分の半身のように大切な存在、レオ。
片思いの相手であり、実の娘のようにも想っている、きぬ。
全ては仲間のために――彼は死を運ぶ一陣の風となる。
【B-6森 1日目 深夜】
【対馬レオ@つよきす~Mighty Heart~】
【装備:トウカの刀@うたわれるもの、】
【所持品:FN P90(残弾50)、予備弾薬(5.7mm×28の専用カートリッジ弾)、支給品一式】
【状態:精神が若干不安定】
【思考・行動】
1:ひとまず仲間を集めに学校に向かう。
2:生徒会の仲間と合流。
3:前原に会い鷹野の情報を手に入れる。
4:フカヒレの仇を討つ。
基本行動方針:人に接触して仲間に誘う、敵対されたら武力で退ける。
【備考1】
レオは魔法の存在に感づきました。鷹野は魔法を使えるのかもしれないと考えています。
【備考2】
深夜B-6の東端でレオの咆哮が響きました。
【装備:トウカの刀@うたわれるもの、】
【所持品:FN P90(残弾50)、予備弾薬(5.7mm×28の専用カートリッジ弾)、支給品一式】
【状態:精神が若干不安定】
【思考・行動】
1:ひとまず仲間を集めに学校に向かう。
2:生徒会の仲間と合流。
3:前原に会い鷹野の情報を手に入れる。
4:フカヒレの仇を討つ。
基本行動方針:人に接触して仲間に誘う、敵対されたら武力で退ける。
【備考1】
レオは魔法の存在に感づきました。鷹野は魔法を使えるのかもしれないと考えています。
【備考2】
深夜B-6の東端でレオの咆哮が響きました。
【H-1路上 1日目 深夜】
【伊達スバル@つよきす~Mighty Heart~】
【装備:無し】
【所持品:人形(詳細不明)、服(詳細不明)、悟史のバット@ひぐらしのなく頃に、支給品一式】
【状態:健康(KOOL?)】
【思考・行動】
1:走り回って見敵必殺。
2:レオときぬのことが心配。
基本行動方針:優勝を目指し皆殺し・主催者全員の殺害。
【装備:無し】
【所持品:人形(詳細不明)、服(詳細不明)、悟史のバット@ひぐらしのなく頃に、支給品一式】
【状態:健康(KOOL?)】
【思考・行動】
1:走り回って見敵必殺。
2:レオときぬのことが心配。
基本行動方針:優勝を目指し皆殺し・主催者全員の殺害。
013:信じるという事 | 投下順に読む | 015:血塗られし予言 |
013:信じるという事 | 時系列順に読む | 015:血塗られし予言 |
対馬レオ | 046:みんなで広げよう勘違いの輪(前編) | |
伊達スバル | 051:そして走り始めた影 |