動く者、動かざる者 ◆sXlrbA8FIo
(――羽入! どこにいるの? 羽入っ!!)
古手梨花は呆然と立ち尽くしながらあたりを見回し、心の中で叫び続けていた。
空から照らす月明かりが彼女を薄く照らし、その悲痛な表情を強調するように浮かび上がらせている。
何度もの転生を繰り返しながら、幾年もの年月を一緒に過ごしてきた少女の姿はどこにもない。
しかも目に映る景色が馴染み深い雛見沢でないことが梨花の不安を増長させていた。
なにせこんなことは今まで一度も無かったのだ。
サイコロの目が1どころではない。むしろ振ったにもかかわらずどこかへ飛んでいってしまったかのようだ。
変わりばえのしない日常に飽いていたのは否定しない。
だからと言ってこのような訳のわからない変化など誰が望んだものだと言うのだろうか。
古手梨花は呆然と立ち尽くしながらあたりを見回し、心の中で叫び続けていた。
空から照らす月明かりが彼女を薄く照らし、その悲痛な表情を強調するように浮かび上がらせている。
何度もの転生を繰り返しながら、幾年もの年月を一緒に過ごしてきた少女の姿はどこにもない。
しかも目に映る景色が馴染み深い雛見沢でないことが梨花の不安を増長させていた。
なにせこんなことは今まで一度も無かったのだ。
サイコロの目が1どころではない。むしろ振ったにもかかわらずどこかへ飛んでいってしまったかのようだ。
変わりばえのしない日常に飽いていたのは否定しない。
だからと言ってこのような訳のわからない変化など誰が望んだものだと言うのだろうか。
いくら呼びかけても羽入は姿を現さず、空想のサイコロの行方に途方に暮れていたまさにその時だ。
ガサッ、と何かを踏むようなほんの微かな音が後方から響き、思わず振り返る。
「――誰っ!?」
不用意にも声を上げ、内心焦りながらもデイバックを抱き上げながら音のした方向に目を凝らす。
……が問いに答えるものは無く、冷たい空気が梨花の髪を揺らしていた。
「風だったのかしら……」
見えない恐怖に動揺している胸を必死に抑え、大きく深呼吸をする。
一つ……。二つ……。三つ……。
息を一つ吐くたびに落ち着きが戻ってきた気がする。
むしろ今の音のおかげで少し冷静さを取り戻すことができていた。
羽生の事ばかりに思考が捕らわれていたが、冷静に考えると不可解なことが多すぎる。
一番の疑問点は鷹野三四が一体何を考えているのか、と言うことだった。
私が死ねばどうなるかを一番危惧していたのは彼女であるはずなのに。
なのになぜ私を殺そうと……?
ガサッ、と何かを踏むようなほんの微かな音が後方から響き、思わず振り返る。
「――誰っ!?」
不用意にも声を上げ、内心焦りながらもデイバックを抱き上げながら音のした方向に目を凝らす。
……が問いに答えるものは無く、冷たい空気が梨花の髪を揺らしていた。
「風だったのかしら……」
見えない恐怖に動揺している胸を必死に抑え、大きく深呼吸をする。
一つ……。二つ……。三つ……。
息を一つ吐くたびに落ち着きが戻ってきた気がする。
むしろ今の音のおかげで少し冷静さを取り戻すことができていた。
羽生の事ばかりに思考が捕らわれていたが、冷静に考えると不可解なことが多すぎる。
一番の疑問点は鷹野三四が一体何を考えているのか、と言うことだった。
私が死ねばどうなるかを一番危惧していたのは彼女であるはずなのに。
なのになぜ私を殺そうと……?
そしてそれまでの思考がピタリと止まり、浮かんだのはそもそもここはどこかと言う疑問。
その問題に行き着いたときに梨花の脳裏にしたくも無いイヤな想像が浮かんでいた。
頬を流れる汗が冷たく、全身の血が一気に蒸発したように全身が震えだしていた。
暴れる身体を必死に抑えるように両腕で全身を抱え込む。
その問題に行き着いたときに梨花の脳裏にしたくも無いイヤな想像が浮かんでいた。
頬を流れる汗が冷たく、全身の血が一気に蒸発したように全身が震えだしていた。
暴れる身体を必死に抑えるように両腕で全身を抱え込む。
時間が無い、いやむしろもう手遅れかもしれない――考えうる事象の中、今一番危ないのはレナだった。
彼女は雛見沢に戻ってようやくオヤシロ様に許されたと思っている。
にも関わらずまた雛見沢を離れたと気づけばまた発症してしまうかもしれない。
勿論他の部活メンバーにしても楽観している場合ではない。
鷹野の告げた『殺し合い』と言う言葉と、目の前で起きたの人の死。
不安・恐怖から疑心暗鬼に陥り、彼らも発症と言うことにもなりえない。
彼女は雛見沢に戻ってようやくオヤシロ様に許されたと思っている。
にも関わらずまた雛見沢を離れたと気づけばまた発症してしまうかもしれない。
勿論他の部活メンバーにしても楽観している場合ではない。
鷹野の告げた『殺し合い』と言う言葉と、目の前で起きたの人の死。
不安・恐怖から疑心暗鬼に陥り、彼らも発症と言うことにもなりえない。
今まで経験したことのない世界に、梨花の精神は激しく動揺していた。
羽入がいない以上、さっさとこの世界に見切りをつけて次の世界と言うわけにもいかない。
この世界が自分の人生の終幕になるのかもしれないと思うと急激に恐ろしくなる。
羽入がいない以上、さっさとこの世界に見切りをつけて次の世界と言うわけにもいかない。
この世界が自分の人生の終幕になるのかもしれないと思うと急激に恐ろしくなる。
私の願いはただ一つ――仲間たちと幸せに生きたい、ただそれだけなのに!
(――まだだ、まだ諦めるな!)
梨花は落ち込みかけた心に活を入れるように自身の頬を両手ではたく。
運命なんて簡単に覆せるのだ。圭一の起こした奇跡をもう忘れてしまったのか?
「……探そう、みんなを!」
もしかしたら羽入だってあの場にいて同じようにどこかに飛ばされただけなのかもしれない。
諦めてしまったら。もうだめだなんて思ったらそこで終わりだ。
仲間はまだ誰も死んでいない、だから――最後まで足掻こう。
梨花は落ち込みかけた心に活を入れるように自身の頬を両手ではたく。
運命なんて簡単に覆せるのだ。圭一の起こした奇跡をもう忘れてしまったのか?
「……探そう、みんなを!」
もしかしたら羽入だってあの場にいて同じようにどこかに飛ばされただけなのかもしれない。
諦めてしまったら。もうだめだなんて思ったらそこで終わりだ。
仲間はまだ誰も死んでいない、だから――最後まで足掻こう。
閉ざされた時間、凍りついた日常。
逃げ場のない永久の螺旋を抜けるべく、固い決意と共に梨花は前を見つめ歩き出した――。
逃げ場のない永久の螺旋を抜けるべく、固い決意と共に梨花は前を見つめ歩き出した――。
- ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
「これはまた可愛らしいお嬢さんではないか」
そんな梨花を値踏みするように見つめる視線が一つあった。
視線の主――杉並は一切の気配を出すことなく息を潜めて梨花を遠巻きに監視している。
杉並の手元に握られた小さな機械――それから発せられる白い光点の示す先を再確認し満足げに微笑む。
そんな梨花を値踏みするように見つめる視線が一つあった。
視線の主――杉並は一切の気配を出すことなく息を潜めて梨花を遠巻きに監視している。
杉並の手元に握られた小さな機械――それから発せられる白い光点の示す先を再確認し満足げに微笑む。
彼は殺し合いをしろと言われて、馬鹿正直にはいそうですかと答える人間ではなかった。
だからと言って見ず知らずの人間を信用し仲良しこよしなどする気もさらさら無かった。
『戦場』がどのようものか認知している人間はほとんどいない事を平和な『日常』から彼は知っている。
目の前にいるのが小さな子供ならばなおさらのことだ。
逆にそう言った人間が日常から離れ非日常を迎えた時に何をしてくるかわかったものではない。
どの常でも必要なのは"情"ではない、"情報"だ。
その点では自分に配られた武器は一番欲していたものであることは間違いなく、自分の幸運に感謝していた。
安全と危険のボーダーラインを見極め、可能な限りの最善の一手を取る。
それが状況を冷静に分析した上で出した彼の結論だった。
だからと言って見ず知らずの人間を信用し仲良しこよしなどする気もさらさら無かった。
『戦場』がどのようものか認知している人間はほとんどいない事を平和な『日常』から彼は知っている。
目の前にいるのが小さな子供ならばなおさらのことだ。
逆にそう言った人間が日常から離れ非日常を迎えた時に何をしてくるかわかったものではない。
どの常でも必要なのは"情"ではない、"情報"だ。
その点では自分に配られた武器は一番欲していたものであることは間違いなく、自分の幸運に感謝していた。
安全と危険のボーダーラインを見極め、可能な限りの最善の一手を取る。
それが状況を冷静に分析した上で出した彼の結論だった。
自分が他者を信用するつもりが無い以上、他者の信用など邪魔なものでしかない。
梨花を囮に使い自分の安全を……梨花の姿を捉えた時点で彼の脳裏にはこれからの行動がいくつもシミュレートされていた。
手元のレーダーの光点と梨花を交互に眺めながら口元を緩め、杉並はゆっくりと梨花の後をつけていくのだった。
梨花を囮に使い自分の安全を……梨花の姿を捉えた時点で彼の脳裏にはこれからの行動がいくつもシミュレートされていた。
手元のレーダーの光点と梨花を交互に眺めながら口元を緩め、杉並はゆっくりと梨花の後をつけていくのだった。
【B-1/1日目 深夜】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備:】
【所持品:支給品一式、ランダム武器不明】
【状態:健康】
【思考・行動】
1)部活メンバー及び羽入の捜索とL5発症の阻止
2)赤坂・大石の捜索
【備考】
皆殺し編直後の転生
【装備:】
【所持品:支給品一式、ランダム武器不明】
【状態:健康】
【思考・行動】
1)部活メンバー及び羽入の捜索とL5発症の阻止
2)赤坂・大石の捜索
【備考】
皆殺し編直後の転生
【杉並@D.C.P.S.】
【装備:】
【所持品:支給品一式、首輪探知レーダー】
【状態:健康】
【思考・行動】
1)主な目的は情報収集
2)他者と行動を共にするつもりは現状無い
【備考】
レーダーは半径500mまでの作動している首輪を探知可能。爆破された首輪は探知不可
【装備:】
【所持品:支給品一式、首輪探知レーダー】
【状態:健康】
【思考・行動】
1)主な目的は情報収集
2)他者と行動を共にするつもりは現状無い
【備考】
レーダーは半径500mまでの作動している首輪を探知可能。爆破された首輪は探知不可
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杉並 | 041:彼女の決断、彼の選択 |