If...~I wish~ -you- ◆Noo.im0tyw


紅に染まる髪を振り乱し、後ろを振り返ることもせず、暑い日差しを浴びながら
抱えきれない不安を抱いて『白河ことり』はただ走る。
息を切らして森を抜ければ、そこに広がるのは半壊している神社であった。

ことりは胸の動機を押さえながら、そっと中を覗いてみる。

「ひどい…・・・なんで、こんな……」

ことりは余りの恐怖にその場に膝をつく。
そこにあるのは、男と女の死体が1つずつ。どちらの死体も血の水溜りを形成し、その周りには使ったであろう武器が散乱していた。
鉈に銃、そしてそれに込める弾丸。挙句の果てには、ジャムや図鑑、リボンなんて物もあった。
大量の武器を使った死闘の成れの果て……。
ことりの眼下にはその光景のみが広がっていた。

(いつまでも、このままじゃだめだよね……)
未だ恐怖で震えるその膝をどうにか押さえつけ、ことりは立ち上がる。
できるだけ死体そのものを見ることをせず、ことりは死者の瞼を手で閉じる。
永遠の眠りを願うように……。

それからことりは死者に黙祷をささげ、散らばっている支給品を回収する。
死者から金品をとることは、極悪非道の行いだと教わってきたが、今はそんなことを言ってる状況ではない。
残念なことに剣はあまりにも重く、それを運べるほどの余力は残っていなかった。


◇   ◇   ◇


すべてをバッグの中に入れたところで、私は来た道の方向を真っ直ぐにみつめる。
放送直後、私たちは災難、いや、災難なんて呼べるほどやわなものじゃないほどの事件に出会った。
ツルハシを片手に持ち、私と赤坂さんを襲ったあの青年。
赤坂さんが身を挺して私を護ってくれたおかげで、私は事なきを得たはずだった。

最初に赤坂さんが青年に放った一撃は、誰がどう見ても完璧に決まっていた。
彼が、ただの一般人であれば。
思えば、始めから青年が気が狂っていると気づくべきだったのだ。

それは、戦っている赤坂さんの役割ではなく、ただ何もできず震えていた私の役目だったはずだ。
私がいち早く、彼の尋常さに気づき、教えていれば今の状況はなかったかもしれない。だけど、
“あの日 出逢っていなければ”・・・とか
“時が 巻き戻せたなら・・・”とか叶いはしない“if”はきっと未来さえ摘むんでしまう。

だから、私はただただ祈った。赤坂さんとの約束を信じて。




◇   ◇    ◇




規則正しく時を刻む、その針が15と12を指し示す。
――――彼、赤坂衛さんとの『約束』。たった今、それは果たされることなく散ってしまった。
散ってしまったものは二度と戻ってくることはない。
それはまるで、桜の花びらのように……。

あの時彼は私にこう言った。

「早く行くんだ。一時間後、例の場所で落ち合おう」と……。

1時間、それは私にとって短いようで永遠に感じた、そんな時間だった。
約束の時間を過ぎても彼がここに来ない。それは、つまり彼の『死』を意味していることは間違いないだろう。
そんなこと、誰でもわかるのだ。ただ、理解したくないだけ……。

――――私が1人でいる時に颯爽と現れ、笑顔を振り撒いた彼。

――――精神が動揺しているときに私を励ましてくれた彼。

――――どんな時でも、私のことを一番に考えてくれた彼。

初音島でも、ここまで私のことを考えてくれる人はそうもいなかった。
親友である、みっくんやともちゃん、それに朝倉君を始めとしたその友達、それに大事な私のお姉ちゃん。
長い時間をかけて培ってきた友情に匹敵するものを、赤坂さんは出会ってからたった数時間で作り上げてくれた。
――――私を護るために。

一筋の涙が頬を伝い、床にシミを作る。
赤坂さんの存在は、私の中でこんなにも大きくなっていたのだと、改めて思い知る。

「うっ…ひっく…どうして………」
どうしてそんなにも優しい人が、死んでしまわなければならないのだろうか?
それがここでのルールだからなのか?

「嫌だ、嫌だよ、そんなの……!!」
他人を殺してでも、頂点に立ち、生を得る。
そんな不条理なルールの元で、私はあとどのくらい生きられるのだろうか?

(だったら会いたい。どうしても、朝倉君に。)
私が、初音島で絶対無二の信頼を置き、そして恋を「していた」彼に。

私がどんなに彼を愛していても、彼は妹である音夢さんを見ていた。
2人は私の目から見ても、お似合いのカップルに見えた。
そんな2人間に私の付け入る隙はない、だから彼のことを諦めたはずだった。

だけど、今更またその感情が蘇ってきたのは何故なのだろうか?

――――頼れる人物が彼しかいなくなったから?

――――音夢さんが死んでしまったから?

理由はどうであれ、私の考えていることは非道であることは百にも承知していた。
彼にけなされてもいい、突き放されてもいい。今思えば、いつでもこの体は彼を愛していたのだから。
逢いたくて、ただ彼に逢いたくて。
彼に助けを求めたい、震えるこの体を抱いて欲しい。例え、そこに愛がなくても……。


「でも…私が行ったら足手まといになっちゃうよね……」
彼に会いたい、という思考が支配しつつある中で彼女は、自分がお荷物だということも理解していた。
自分が行けば、赤坂さんと同じ目に遭わせてしまう可能性は大いにある。
武器を大量に保有した今でさえ、それを満足に使うことすらできない私は、結局のところ少し前の私となんら変わりはないのだから。


ただ、ここに来て変わったこともある。
……それは、私自身の能力について。
この島で復活した、私のテレパシーのような力。
それが、依然と同じように使えるのではなく、限定された時でないと使えないと言うことは、うすうす理解していた。

舞と会ったときは、手が触れた瞬間、彼女の思考が流れてきた。
名前のわからない青年のときもそう、体が触れ合った瞬間に黒い感情が流れてきた。

2つの自体から導かれる結論は、『触れている』という限定内で私の力は復活するということだ。
もちろん、自分から相手の思考を読み取ろうとすれば、頭痛がするだけで、何も得られない。
何と不便な能力だろう、と、ことりは思う。

(あの時のように私はまたレイプまがいのことをされなきゃいけないの…?)

愛してもない人に無理やり襲われる。それはことりにとって、大変な事件であり、また忘れ去りたい過去でもあった。
ことりも『学園のアイドル』と呼ばれているからには、男子学生から性の対象としてみられたこともしばしばあった。
だけど、もちろん実力行使にでてくる人はもちろんいなかったし、無視をしてれば良かった。
――――ただ、ここは風見学園とは違う。
あの青年のように、突如、見境なく襲ってくる可能性もある。
まして、今のこの格好だ。これでは自分が痴女です、と言ってるも同然だろう。
相手に襲われることによって、相手の気持ちを知る。それはことりにとって余りにも皮肉なことであった。


(嫌なことは忘れよう、もう……。新しい服も欲しいな……)
ことりはブンブンと首を振って、ため息をつく。
そしてまた、自分の能力の使い方を思考し始める。

「相手に近づかなければ、意思を汲み取ることもできないんだもね……」
自分の本性を隠して、近づいてくる殺人者に対しては有効かもしれない。
でも、あの青年や、今の舞に対してはあまり有効に活用できそうもない……。

(舞……)
ふと、舞という言葉がでてきたことで、ことりは舞のことを思い出す。

『佐祐理を救うためには他の参加者を全て殺さなくちゃならない』

あの時の舞は私のことをどう見ていたのだろう…?必死に怯えるウサギにでも見えただろうか?

「一緒にご飯を食べたことも、笑いあったこともすべて忘れちゃったのかな…」
そう思うと、胸が苦しくなる。
(一緒に行動した時間は短かったけど、いろいろあったよね…。千影ちゃんに会ったりもしたし)

――――千影ちゃん?
ことりの脳内に閃きという衝撃が走る。
(私たちは、千影ちゃんと約束したんだ! 次の放送のときに神社で遭うって。
 だったら舞が来る可能性もある。その時に千影ちゃんが狙われたら……! )
ことりの頬に嫌な汗が流れる。

(初めのころの舞ならそんなことは絶対にしない。でも今の舞は…?)
友人のために躊躇いなく引き金を引いてしまう彼女なら、千影も例外ではない。
舞との再接触、そして説得を試みれるその機会は、千影が亡き者になる可能性もある。
そのことに気づいたことりは、いそいでバックを背負うともう一度死者に黙祷をし、走り始めた。

(舞と会う前に、千影ちゃんを探さなくちゃ……!!!)

――――ことりは当てもなく走る。朝倉純一、千影の2人を探して。



◇   ◇   ◇



赤坂さん、あなたは今どこで何をしていますか?

この空の続く場所にいますか?

今まで私の心を埋めていたこと失って初めて気付きました。

こんなにも私を支えてくれていたこと。

こんなにも笑顔をくれていたこと。

失ってしまった代償はとてつもなく大きすぎます。

孤独と絶望に胸を締め付けられ心が壊れそうになるけれど

思い出に残るあなたの笑顔が私をいつも励ましてくれるので大丈夫です。

――――私、頑張ります。





【D-4 神社/1日目 午後】

【白河ことり@D.C.P.S.】
【装備:竹刀 風見学園本校制服(縦に真っ二つに破けブラジャー露出)】
【所持品1:支給品一式 バナナ(台湾産)(4房)虹色の羽根@つよきす-Mighty Heart-、ツルハシ】
【所持品2:ヘルメット、発炎筒(×4本)、懐中電灯(×2本)、単二乾電池(×6本)】
【所持品3:ベレッタ M93R(2/21)、鉈@ひぐらしのなく頃に祭、支給品一式x3、ベレッタ M93Rの残弾20、
レインボーパンwith謎ジャム(半分)@CLANNAD&KANON、昆虫図鑑、.357マグナム弾(40発)、
スペツナズナイフの柄 クロスボウ(ボルト残26/30)、カルラの剣@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、果物ナイフ、エルルゥのリボン】
【状態:疲労(小)、精神的疲労、レイプ未遂のショック、軽い頭痛、悲しみ】
【思考・行動】
基本方針:ゲームには乗らない。最終的な目標は島からの脱出。
1:朝倉純一、千影の探索。
2:仲間になってくれる人を見つける。
3:朝倉君たちと、舞と、舞の友達を探す。
4:千影の姉妹を探す。
5:舞の説得。
6:服が欲しい。


※虹色の羽根
喋るオウム、土永さんの羽根。
この島内に唯一存在する動物、その証拠。

【備考】
※テレパス能力消失後からの参加ですが、主催側の初音島の桜の効果により一時的な能力復活状態にあります。
 ただし、ことりの心を読む力は制限により相手に触らないと読み取れないようになっています。
※ことりは、能力が復活していることに気づきました。
※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化) つもりですが、 状況によってはどうなるか分かりません。
※坂上智代から、ボイスレコーダーを発端とした一連の事件について、聞きました。
※音夢ルートからの参加
※次の行き先は後続の書き手さんに任せます。


131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編) 投下順に読む 133:ミエス・カウート(高位の剣)
131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編) 時系列順に読む 133:ミエス・カウート(高位の剣)
126:私の救世主さま(後編) 白河ことり 154:救心少女夢想(前編)







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