再会、混戦、決戦/Blue Tears(中編) ◆guAWf4RW62
「アヒャ? よく分からないけど……茜ちゃんは俺の獲物だぞう!」
孝之からすれば、茜を殺害するのがこの場での最優先目的。
手傷を負わされた舞も憎いが、茜程ではない。
神の戦士である自分を拒絶した茜は、絶対にこの手で断罪しなければならない存在。
ならばこんな所でぼやぼやとしている暇など無い。
孝之は白骨の見え隠れする右足を奮い立たせ、一直線に茜の方へと駆け出した。
手傷を負わされた舞も憎いが、茜程ではない。
神の戦士である自分を拒絶した茜は、絶対にこの手で断罪しなければならない存在。
ならばこんな所でぼやぼやとしている暇など無い。
孝之は白骨の見え隠れする右足を奮い立たせ、一直線に茜の方へと駆け出した。
「え、えっ……!?」
未だ状況の変化に思考が追い付いていない茜に対して、二人の狩人が迫る。
混乱した今の茜では、それこそ数秒と保たずに殺されてしまうだろう。
否、たとえ茜が正気だったとしても、二人掛かりの猛攻はとても防ぎ切れまい。
しかしそこで茜の前に、青色の疾風が吹き荒れる。
恐るべき速度で駆けつけたアセリアは、茜を庇うような位置取りで、長柄の鉄パイプを深く構えた。
混乱した今の茜では、それこそ数秒と保たずに殺されてしまうだろう。
否、たとえ茜が正気だったとしても、二人掛かりの猛攻はとても防ぎ切れまい。
しかしそこで茜の前に、青色の疾風が吹き荒れる。
恐るべき速度で駆けつけたアセリアは、茜を庇うような位置取りで、長柄の鉄パイプを深く構えた。
「――――フ!」
「つあっ……!」
「うひゃああッ!?」
「つあっ……!」
「うひゃああッ!?」
奔る剣戟。
目にも留まらぬ動作で振るわれた鉄パイプが、孝之の斧を弾き飛ばして、返す刃で瑞穂の投げナイフすらも受け止めた。
鍔迫り合いの形で顔を突き合わせながら、瑞穂とアセリアは視線を交錯させる。
目にも留まらぬ動作で振るわれた鉄パイプが、孝之の斧を弾き飛ばして、返す刃で瑞穂の投げナイフすらも受け止めた。
鍔迫り合いの形で顔を突き合わせながら、瑞穂とアセリアは視線を交錯させる。
「ミズホは……私を仲間と言った。なのに、どうして?」
「……アセリアさんには謝らないといけませんね。ですが仕方無いんです。
僕はこの殺し合いで、優勝しないといけなくなりました」
「……アセリアさんには謝らないといけませんね。ですが仕方無いんです。
僕はこの殺し合いで、優勝しないといけなくなりました」
何故、と問い掛ける暇は無い。
此処は戦場であり、悠長に会話している暇などある筈も無い。
これまで何故アセリアが、茜に助太刀しなかったのか。
それはこの場で最強の火力を誇る、川澄舞を封じておく為に他ならない。
そしてアセリアが茜の救助を優先した所為で、今や舞は完全にフリーの状態だ。
アセリア達が密集している地帯に向かって、ニューナンブM60が何度も何度も放たれる。
アセリアは茜を抱きかかえて跳躍し、瑞穂もまた素早い動きで難を逃れる。
二人共が最大限に神経を張り巡らせていた為、第三者に狙われている事実を素早く察知し得たのだ。
この場で舞の銃撃を躱せなかった人間は、たった一人。
此処は戦場であり、悠長に会話している暇などある筈も無い。
これまで何故アセリアが、茜に助太刀しなかったのか。
それはこの場で最強の火力を誇る、川澄舞を封じておく為に他ならない。
そしてアセリアが茜の救助を優先した所為で、今や舞は完全にフリーの状態だ。
アセリア達が密集している地帯に向かって、ニューナンブM60が何度も何度も放たれる。
アセリアは茜を抱きかかえて跳躍し、瑞穂もまた素早い動きで難を逃れる。
二人共が最大限に神経を張り巡らせていた為、第三者に狙われている事実を素早く察知し得たのだ。
この場で舞の銃撃を躱せなかった人間は、たった一人。
「……ぐぎゃああああああっ!!」
森の中に響き渡る、濁った叫び声。
只一人逃げ遅れた孝之は、左肩を完全に撃ち抜かれていた。
元よりズタボロだった孝之の左肩は、今の攻撃で完全に限界を迎えた。
骨は完全に砕け散り、肉も大方引き裂かれ、何時肩から先が千切れ落ちても可笑しくない状況。
今すぐに出血大量で死んだとしても、何の不思議も無い状態。
だが当然ながら、この場に彼を気遣ったりするような者は居ない。
油断してしまえば何時急襲を受けてしまうか分からないのだから、余分な事は考えられない。
誰一人として孝之の怪我を気にも留めず、次なる行動へと移ってゆく。
只一人逃げ遅れた孝之は、左肩を完全に撃ち抜かれていた。
元よりズタボロだった孝之の左肩は、今の攻撃で完全に限界を迎えた。
骨は完全に砕け散り、肉も大方引き裂かれ、何時肩から先が千切れ落ちても可笑しくない状況。
今すぐに出血大量で死んだとしても、何の不思議も無い状態。
だが当然ながら、この場に彼を気遣ったりするような者は居ない。
油断してしまえば何時急襲を受けてしまうか分からないのだから、余分な事は考えられない。
誰一人として孝之の怪我を気にも留めず、次なる行動へと移ってゆく。
「逃がさないっ…………!」
茜を抱きかかえて後退するアセリアの下へ、投げナイフを握り締めた瑞穂が疾駆する。
幾らアセリアといえども、人一人抱きかかえた状態では、まともな反撃など出来る筈も無い。
アセリアは茜を地面に下ろし、続いて鉄パイプを構えようとする。
だがそれはあくまで、一般的な女性相手と想定した時の動き。
実際には男性であり武術の心得もある瑞穂は、アセリアの予測を大幅に上回る速度で、距離を詰め切った。
アセリアが鉄パイプを構えるよりも早く、瑞穂の投げナイフが横凪ぎに振るわれる。
アセリアは後ろに数歩下がってナイフの軌道から逃れたが、そこに追い縋る瑞穂。
瑞穂はナイフをポケットに戻し、それと同時に密着状態になるまで踏み込んだ。
幾らアセリアといえども、人一人抱きかかえた状態では、まともな反撃など出来る筈も無い。
アセリアは茜を地面に下ろし、続いて鉄パイプを構えようとする。
だがそれはあくまで、一般的な女性相手と想定した時の動き。
実際には男性であり武術の心得もある瑞穂は、アセリアの予測を大幅に上回る速度で、距離を詰め切った。
アセリアが鉄パイプを構えるよりも早く、瑞穂の投げナイフが横凪ぎに振るわれる。
アセリアは後ろに数歩下がってナイフの軌道から逃れたが、そこに追い縋る瑞穂。
瑞穂はナイフをポケットに戻し、それと同時に密着状態になるまで踏み込んだ。
「柳のように、風になびくんだ……っ!」
「――――!?」
「――――!?」
互いの吐息を感じ取れる程の距離で、瑞穂はアセリアの右肘を掴み取る。
そのままアセリアの腕を井桁に組んで、捻って極めようとする。
幾らスピリットであろうとも、関節を完全に極められてしまえば、そのまま投げ飛ばされてしまうだろう。
だがアセリアは咄嗟の判断で鉄パイプを左腕に持ち替えて、それを瑞穂の腕目掛けて振り下ろした。
こうなっては瑞穂もこれ以上攻撃を続行する訳にはいかず、素直に腕を離して後退する。
そのままアセリアの腕を井桁に組んで、捻って極めようとする。
幾らスピリットであろうとも、関節を完全に極められてしまえば、そのまま投げ飛ばされてしまうだろう。
だがアセリアは咄嗟の判断で鉄パイプを左腕に持ち替えて、それを瑞穂の腕目掛けて振り下ろした。
こうなっては瑞穂もこれ以上攻撃を続行する訳にはいかず、素直に腕を離して後退する。
「どうして……ミズホは戦う? 私やアカネを殺そうとする?」
再度質問を投げ掛けるアセリア。
彼女の声には僅かながら、悲痛な色が混じっていた。
彼女の声には僅かながら、悲痛な色が混じっていた。
「……簡単な事ですよ。鷹野三四は、この殺し合いで優勝すれば願いを叶えられると云いました。
それが嘘か本当か、僕には分かりません。ですが可能性が1%でもあるなら、僕は貴子さんを生き返らせる為に戦いますっ……!」
「ん……タカノが、そう言ったのか?」
「はい、そうですよ」
それが嘘か本当か、僕には分かりません。ですが可能性が1%でもあるなら、僕は貴子さんを生き返らせる為に戦いますっ……!」
「ん……タカノが、そう言ったのか?」
「はい、そうですよ」
衝撃的としか言いようが無い事実を口にしながらも、瑞穂は投げナイフを構え直す。
それに応えるようにして、アセリアも鉄パイプを握る手に力を篭めた。
力量的には圧倒的に上回るアセリアだったが、今の彼女に瑞穂を殺す気は無い。
そして鉄パイプの長過ぎるリーチと大きな質量が、障害物だらけのこの森ではハンデとなる。
扱い辛い武器で手加減を強いられるアセリアと、心置きなく全力で戦う事が出来る瑞穂。
二人の戦いは、どうも長引きそうだった。
それに応えるようにして、アセリアも鉄パイプを握る手に力を篭めた。
力量的には圧倒的に上回るアセリアだったが、今の彼女に瑞穂を殺す気は無い。
そして鉄パイプの長過ぎるリーチと大きな質量が、障害物だらけのこの森ではハンデとなる。
扱い辛い武器で手加減を強いられるアセリアと、心置きなく全力で戦う事が出来る瑞穂。
二人の戦いは、どうも長引きそうだった。
「こんな……こんなのって……」
かつて手を組んで戦ったにも関わらず、敵味方に分かれて対峙するアセリアと瑞穂。
茜はその光景を、嫌な夢でも見ているかのような気分で眺めていたが、その時視界の端に何かが映った。
それは銃を構えようとしている舞の姿。
誰にもマークされていなかった舞は銃弾の再装填を終えて、今にも瑞穂とアセリアに銃弾を浴びせようとしていたのだ。
それを目の当たりにした茜は、ようやく今自分が成すべき事に思い至り、手にしていた投げナイフを投擲した。
投げナイフが舞に躱されるのを待たずして、茜は全力で前方へ駆ける。
茜はその光景を、嫌な夢でも見ているかのような気分で眺めていたが、その時視界の端に何かが映った。
それは銃を構えようとしている舞の姿。
誰にもマークされていなかった舞は銃弾の再装填を終えて、今にも瑞穂とアセリアに銃弾を浴びせようとしていたのだ。
それを目の当たりにした茜は、ようやく今自分が成すべき事に思い至り、手にしていた投げナイフを投擲した。
投げナイフが舞に躱されるのを待たずして、茜は全力で前方へ駆ける。
「たああっ!!」
「…………くぁッ!?」
「…………くぁッ!?」
茜はスライディングの要領で大きく跳躍して、舞の腰に組み付いた。
そのまま二人は縺れ合い、大きくバランスを失ってしまう。
茜の視界に、茶色い地面と木々の緑が交互に映し出されてゆく。
次の瞬間には茜も舞も、乾いた土の感触を頬で確かめる羽目となる――詰まる所、二人は転倒したのだ。
そのまま二人は縺れ合い、大きくバランスを失ってしまう。
茜の視界に、茶色い地面と木々の緑が交互に映し出されてゆく。
次の瞬間には茜も舞も、乾いた土の感触を頬で確かめる羽目となる――詰まる所、二人は転倒したのだ。
「くぅ――――このっ……!」
舞は未だ自分の腰を掴んで離そうとしない茜目掛けて、ニューナンブM60を放とうとする。
だがこの状態で銃を撃ってしまえば、自分自身にも被害が及ぶかも知れなかった。
銃を撃てば確実に茜は殺せるが、こんな所で無駄な怪我を負う訳にはいかない。
舞は即座に狙いを切り替え、左拳を茜の背中に思い切り振り下ろした。
不十分な態勢である為、一発では威力が足りなさ過ぎるし、その程度では茜とて抵抗を弱めたりしないだろう。
故に舞は何度も何度も、茜の力が弱まるまで同じ動作を繰り返す。
だがこの状態で銃を撃ってしまえば、自分自身にも被害が及ぶかも知れなかった。
銃を撃てば確実に茜は殺せるが、こんな所で無駄な怪我を負う訳にはいかない。
舞は即座に狙いを切り替え、左拳を茜の背中に思い切り振り下ろした。
不十分な態勢である為、一発では威力が足りなさ過ぎるし、その程度では茜とて抵抗を弱めたりしないだろう。
故に舞は何度も何度も、茜の力が弱まるまで同じ動作を繰り返す。
「あぐっ……」
十発程拳を打ち込んだ所でようやく、舞の腰を締め付ける力が弱まった。
その隙に素早く茜を振りほどき、舞は両の足でしっかりと起き上がった。
間髪置かずにニューナンブM60の銃口を、未だ倒れたままの茜に向ける。
その隙に素早く茜を振りほどき、舞は両の足でしっかりと起き上がった。
間髪置かずにニューナンブM60の銃口を、未だ倒れたままの茜に向ける。
「……これで終わり」
冷たい殺気を灯した舞の双眸が、倒れ伏す標的を射抜く。
茜も何とか立ち上がろうとはしているものの、背中を強打された所為で、その動きは酷く緩慢だ。
だがそこで、舞は背後から何かが忍び寄ってくるのを察知した。
直感に従ってサイドステップを踏むのとほぼ同時、それまで舞が居た空間は鋭利な斧によって切り裂かれていた。
茜も何とか立ち上がろうとはしているものの、背中を強打された所為で、その動きは酷く緩慢だ。
だがそこで、舞は背後から何かが忍び寄ってくるのを察知した。
直感に従ってサイドステップを踏むのとほぼ同時、それまで舞が居た空間は鋭利な斧によって切り裂かれていた。
「何度も何度も邪魔しやがって、このクソアマがあああ!」
斧の使い手は、狂人鳴海孝之。
白河ことりを強姦しようとした時も、アセリアと戦っている時も、同じ女に妨害された。
数度に渡る横槍を入れられた孝之は、舞に対して激しい怒りを抱いていた。
千切れかけている左腕程では無いにしろ、ボロボロな右腕を酷使して力任せに斧を振り回す。
その動きは決して俊敏とは言えず、とても舞を捉えきれる程のものでは無い。
だが鮮血を撒き散らしながら暴れ回る孝之の姿に、舞は驚きを隠せなかった。
前回の戦いと今回で、既に自分は五発も銃弾を撃ち込んでいるのだ。
にも関わらず戦い続ける孝之の耐久力は、尋常でないと言わざるを得なかった。
白河ことりを強姦しようとした時も、アセリアと戦っている時も、同じ女に妨害された。
数度に渡る横槍を入れられた孝之は、舞に対して激しい怒りを抱いていた。
千切れかけている左腕程では無いにしろ、ボロボロな右腕を酷使して力任せに斧を振り回す。
その動きは決して俊敏とは言えず、とても舞を捉えきれる程のものでは無い。
だが鮮血を撒き散らしながら暴れ回る孝之の姿に、舞は驚きを隠せなかった。
前回の戦いと今回で、既に自分は五発も銃弾を撃ち込んでいるのだ。
にも関わらず戦い続ける孝之の耐久力は、尋常でないと言わざるを得なかった。
「身体を撃っても止まりそうに無い……なら!」
本体を倒すのが難しいのならば、まずは得物を弾き飛ばした方が利口だろう。
舞は狙いを孝之本体から斧へと切り替えて、ニューナンブM60の引き金を絞った。
銃口から吐き出された38スペシャル弾が、正確に孝之の斧へと突き刺さる。
飛び散る火花、空気を震わせる程の振動――常人なら間違いなく衝撃に耐え切れず、斧を手放してしまうだろう。
だがそんな常識、この狂人には通じない。
舞は狙いを孝之本体から斧へと切り替えて、ニューナンブM60の引き金を絞った。
銃口から吐き出された38スペシャル弾が、正確に孝之の斧へと突き刺さる。
飛び散る火花、空気を震わせる程の振動――常人なら間違いなく衝撃に耐え切れず、斧を手放してしまうだろう。
だがそんな常識、この狂人には通じない。
「ひゃっはあああっー!!」
「…………ッ!?」
「…………ッ!?」
孝之は斧を撃たれても、衝撃で右人差し指の骨に皹が入っても尚、その手を離さなかった。
一発、二発と斧が振り下ろされ、その度に舞は回避を強要される。
予想を外された動揺もあり、反撃する程の余裕が生み出せない。
このまま近距離で戦っても不利だと判断した舞は、身体を孝之に向けたまま後ろ足で後退する。
一発、二発と斧が振り下ろされ、その度に舞は回避を強要される。
予想を外された動揺もあり、反撃する程の余裕が生み出せない。
このまま近距離で戦っても不利だと判断した舞は、身体を孝之に向けたまま後ろ足で後退する。
「この、待て……ぐうっ!?」
追い縋ろうとした孝之だったが、怪我している足の所為でバランスを崩し、傍にあった茂みの中に頭から倒れ込んでしまう。
それを確認した舞は孝之から視線を外し、茜の方へと首を向けた。
茜は背中のダメージがようやく抜けたのか、しっかりと立ち上がり、先程投げ捨てていたナイフも回収していた。
しかしその視線は舞にでは無く、別方向――即ち未だ一騎討ちを続けている瑞穂とアセリアに向けられている。
それを確認した舞は孝之から視線を外し、茜の方へと首を向けた。
茜は背中のダメージがようやく抜けたのか、しっかりと立ち上がり、先程投げ捨てていたナイフも回収していた。
しかしその視線は舞にでは無く、別方向――即ち未だ一騎討ちを続けている瑞穂とアセリアに向けられている。
この状況ならば、舞が誰を狙うべきかなど決まり切っている。
難敵アセリアや、俊敏な動きを見せる瑞穂、ゾンビの如き孝之よりも、隙だらけの茜を狙うに決まっている。
今度こそ獲物を仕留めるべく、ニューナンブM60を握り締めた舞の腕がゆっくりと上がってゆく。
難敵アセリアや、俊敏な動きを見せる瑞穂、ゾンビの如き孝之よりも、隙だらけの茜を狙うに決まっている。
今度こそ獲物を仕留めるべく、ニューナンブM60を握り締めた舞の腕がゆっくりと上がってゆく。
しかしそれをアセリアが見過ごす筈も無い。
アセリアは即座に瑞穂との戦いを放棄して、またも茜を救うべく疾走する。
その事に気付いた舞は標的を切り替え、アセリアに照準を合わせようとするがなかなか上手く行かない。
舞の視点からすれば、不規則にステップを踏みながら迫り来るアセリアは、分身しているようにすら見える。
距離がある状態で銃弾を撃っても、この敵に当たらない事など明白だ。
引き付けて引き付けて、それこそアセリアの鉄パイプが届きかねないくらいの間合いで、舞は初めて引き金を絞った。
アセリアは即座に瑞穂との戦いを放棄して、またも茜を救うべく疾走する。
その事に気付いた舞は標的を切り替え、アセリアに照準を合わせようとするがなかなか上手く行かない。
舞の視点からすれば、不規則にステップを踏みながら迫り来るアセリアは、分身しているようにすら見える。
距離がある状態で銃弾を撃っても、この敵に当たらない事など明白だ。
引き付けて引き付けて、それこそアセリアの鉄パイプが届きかねないくらいの間合いで、舞は初めて引き金を絞った。
「っ――――」
至近距離で牙を剥く銃弾。
アセリアは回避に全力を注ぎ込んだものの、完全に躱し切るには至らず、頬を僅かながら裂かれてしまった。
火薬の匂いが鼻腔を刺激し、痺れるような痛みが脳髄に伝えられる。
しかし無論その程度では、致命傷になるどころか戦力が低下する事すら無い。
間合いを詰めきったアセリアは、再び舞との戦いを開始した。
アセリアは回避に全力を注ぎ込んだものの、完全に躱し切るには至らず、頬を僅かながら裂かれてしまった。
火薬の匂いが鼻腔を刺激し、痺れるような痛みが脳髄に伝えられる。
しかし無論その程度では、致命傷になるどころか戦力が低下する事すら無い。
間合いを詰めきったアセリアは、再び舞との戦いを開始した。
そしてアセリアが舞と戦い始めたという事は、瑞穂をマークする人間がいなくなったという事。
優勝を目標としている瑞穂からすれば、出来る限りこの場の人間は殲滅しておきたい。
この場で最も脅威となるのは、唯一徒党を組んでいる茜とアセリアに他ならない。
そして尋常でない戦闘力を誇るアセリアよりも、只の女子高生である茜の方が遥かに倒しやすいだろう。
故に瑞穂は目標を茜に定め、一歩一歩足を進めてゆく。
優勝を目標としている瑞穂からすれば、出来る限りこの場の人間は殲滅しておきたい。
この場で最も脅威となるのは、唯一徒党を組んでいる茜とアセリアに他ならない。
そして尋常でない戦闘力を誇るアセリアよりも、只の女子高生である茜の方が遥かに倒しやすいだろう。
故に瑞穂は目標を茜に定め、一歩一歩足を進めてゆく。
「…………瑞穂さん」
茜も瑞穂の接近には気付いており、投げナイフを右手で握り締める。
狼狽する暇も、目の前の現実を――瑞穂が殺し合いに乗ったという事実を否定する猶予も無い。
此処で応戦しなければ、呆気無く殺されてしまうだけだろう。
狼狽する暇も、目の前の現実を――瑞穂が殺し合いに乗ったという事実を否定する猶予も無い。
此処で応戦しなければ、呆気無く殺されてしまうだけだろう。
「茜さん……貴女を殺します」
それが、開始の合図。
弾けるように瑞穂が動き、それと同時に茜もまた武器を振るった。
同じ投げナイフ――元は厳島貴子に支給された物――が衝突し、激しい火花を散らす。
同じ武器を用いているのだから、得物の差による優劣は存在しない。
だが得物が同じであろうとも、瑞穂と茜では腕力に大きな違いがある。
弾けるように瑞穂が動き、それと同時に茜もまた武器を振るった。
同じ投げナイフ――元は厳島貴子に支給された物――が衝突し、激しい火花を散らす。
同じ武器を用いているのだから、得物の差による優劣は存在しない。
だが得物が同じであろうとも、瑞穂と茜では腕力に大きな違いがある。
「――あつっ…………!」
茜は敵の一撃を何とか受け止めたものの、被害無しという訳にはいかない。
得物越しにも激しい衝撃が伝わり、右腕に痺れるような痛みが奔った。
茜の回復を待たずして、瑞穂の第二撃が横凪ぎに放たれる。
得物越しにも激しい衝撃が伝わり、右腕に痺れるような痛みが奔った。
茜の回復を待たずして、瑞穂の第二撃が横凪ぎに放たれる。
「このっ――――」
茜は即座に後方へ退避し、猛り狂う死の旋風から逃れようとする。
だが完全には躱し切れず、腹部を軽く切られてしまう。
内臓には届かず、致命傷にも至らぬであろう傷――しかし、決して軽傷では無い。
紅い鮮血が傷口より漏れ出て、茜の制服にじわりじわりと染み込んでゆく。
そして茜が痛みに顔を顰めたその瞬間、叩き込まれる中段蹴り。
だが完全には躱し切れず、腹部を軽く切られてしまう。
内臓には届かず、致命傷にも至らぬであろう傷――しかし、決して軽傷では無い。
紅い鮮血が傷口より漏れ出て、茜の制服にじわりじわりと染み込んでゆく。
そして茜が痛みに顔を顰めたその瞬間、叩き込まれる中段蹴り。
「フッ――――!」
「う……ああっ……!」
「う……ああっ……!」
傷口の上から腹部を強打され、茜はたたらを踏んで後退してゆく。
態勢を立て直す暇など与えぬと言わんばかりに、瑞穂が前方より迫る。
瑞穂の表情には、何の躊躇の色も在りはしない。
このまま追い付かれてしまえばとても防ぎ切れぬと判断し、茜は左手をポケットの中に突っ込んだ。
右手に握り締めている物とは別の――二本目の投げナイフを取り出し、瑞穂の胸目掛けて投擲する。
突っ込んでくる敵に対して、カウンター気味に放たれたナイフ。
面積の大きい胴体部を狙ったそれは、茜にとって正しく会心の一撃と呼ぶに相応しいものだ。
だが――
態勢を立て直す暇など与えぬと言わんばかりに、瑞穂が前方より迫る。
瑞穂の表情には、何の躊躇の色も在りはしない。
このまま追い付かれてしまえばとても防ぎ切れぬと判断し、茜は左手をポケットの中に突っ込んだ。
右手に握り締めている物とは別の――二本目の投げナイフを取り出し、瑞穂の胸目掛けて投擲する。
突っ込んでくる敵に対して、カウンター気味に放たれたナイフ。
面積の大きい胴体部を狙ったそれは、茜にとって正しく会心の一撃と呼ぶに相応しいものだ。
だが――
「――――遅い!」
「そんなっ…………!?」
「そんなっ…………!?」
それもあっさりと、防がれてしまった。
ナイフ同士がぶつかり合い、高い金属音が響き渡る。
茜の投げたナイフは、瑞穂の身体を捉える事無く地面に吸い込まれていった。
躱し切れぬと判断した瑞穂は足を止めて、迫る攻撃をナイフで叩き落したのだ。
ナイフ同士がぶつかり合い、高い金属音が響き渡る。
茜の投げたナイフは、瑞穂の身体を捉える事無く地面に吸い込まれていった。
躱し切れぬと判断した瑞穂は足を止めて、迫る攻撃をナイフで叩き落したのだ。
貴重な武器を放棄してまで放った攻撃ですら、傷一つ負わせられない。
どうにか距離を開く事には成功したが、それだけだった。
満身創痍の様相を呈してきた茜とは対照的に、瑞穂は未だ息一つ乱していない。
幼い頃より鏑木の家で鍛えられてきた瑞穂には、常人とは一線を画すだけの力がある。
その実力たるや、修練を積んだ男が四人掛かりで襲い掛かっても勝てぬ程だ。
瑞穂と茜の戦力差は明らかだった。
茜は肩で息を整えながら、苦しげな表情で言葉を発する。
どうにか距離を開く事には成功したが、それだけだった。
満身創痍の様相を呈してきた茜とは対照的に、瑞穂は未だ息一つ乱していない。
幼い頃より鏑木の家で鍛えられてきた瑞穂には、常人とは一線を画すだけの力がある。
その実力たるや、修練を積んだ男が四人掛かりで襲い掛かっても勝てぬ程だ。
瑞穂と茜の戦力差は明らかだった。
茜は肩で息を整えながら、苦しげな表情で言葉を発する。
「ハ――フ――――ハア、――――――ハア……。瑞穂さん……貴女は貴子さんを生き返らせる為に、殺し合いに乗ったのね?
この殺し合いを仕切っている連中に、優勝すれば願いを叶えてやるって言われたのね?」
この殺し合いを仕切っている連中に、優勝すれば願いを叶えてやるって言われたのね?」
問い掛けられた瑞穂は、涼しい顔をしたままコクリと縦に頷いた。
かつての仲間と戦っているというのに――眉一つ動かさず、機械的に。
一切の感情を見せぬ瑞穂の表情は、茜にとって酷く悲痛なものだった。
かつての仲間と戦っているというのに――眉一つ動かさず、機械的に。
一切の感情を見せぬ瑞穂の表情は、茜にとって酷く悲痛なものだった。
「瑞穂さんはそれで良いの……? 主催者の言いなりになって、全てを棄てて、本当にそれで満足なのっ!?」
「……………っ」
「……………っ」
叩き付けられる言葉。
その言葉には怒りよりも寧ろ、悲しみの色が強く入り混じっていた。
裏切った仲間を罵るというより寧ろ、気遣うような想いが篭められていた。
瑞穂は一瞬表情に翳りを見せたが、すぐに元の無表情を装う。
自分の目的は一つ、それを成し遂げる為には迷ってなどいられない。
その言葉には怒りよりも寧ろ、悲しみの色が強く入り混じっていた。
裏切った仲間を罵るというより寧ろ、気遣うような想いが篭められていた。
瑞穂は一瞬表情に翳りを見せたが、すぐに元の無表情を装う。
自分の目的は一つ、それを成し遂げる為には迷ってなどいられない。
「……ええ、構いません。僕にとっては貴子さんが全てですから。貴子さんの為なら僕は、鬼にも悪魔にもなってみせる!」
一際大きい声で叫ぶや否や、瑞穂はかつてない気迫で駆け出した。
あっという間に茜の眼前まで詰め寄り、投げナイフを乱暴に振り落す。
茜はその一撃を受け止めたものの、得物越しに伝わる衝撃は先程の倍以上だった。
あっという間に茜の眼前まで詰め寄り、投げナイフを乱暴に振り落す。
茜はその一撃を受け止めたものの、得物越しに伝わる衝撃は先程の倍以上だった。
「僕は貴子さんを守ると決めた!」
「――――くああっ……」
「――――くああっ……」
瑞穂は自分自身に言い聞かせるように叫びながら、容赦の無い攻撃を繰り出していく。
肩を突き出す形で放った瑞穂の当身が、茜の胸部辺りに打ち込まれる。
胸を強打された茜は一瞬呼吸が出来なくなってしまい、動きが大幅に鈍る。
続いて繰り出される、斜め下方から振り上げる軌道での一閃。
死に物狂いで躱そうとした茜だったが、到底間に合わない。
肩を突き出す形で放った瑞穂の当身が、茜の胸部辺りに打ち込まれる。
胸を強打された茜は一瞬呼吸が出来なくなってしまい、動きが大幅に鈍る。
続いて繰り出される、斜め下方から振り上げる軌道での一閃。
死に物狂いで躱そうとした茜だったが、到底間に合わない。
「だから貴子さんの為に、彼女を生き返らせる為に、僕は戦わなければいけないっ!」
「……あぐううっっ!!」
「……あぐううっっ!!」
茜は左肩を大きく斬り裂かれ、激痛に悲鳴を洩らす。
そんな茜の腕を、引き寄せるように瑞穂が掴み取る。
ナイフを捨て、両手でしっかりと茜の腕を固定して、渾身の一撃を放つ。
そんな茜の腕を、引き寄せるように瑞穂が掴み取る。
ナイフを捨て、両手でしっかりと茜の腕を固定して、渾身の一撃を放つ。
「――僕は貴子さんの為に、人を殺さなければいけないんだあっ!!!」
「う……あああああぁぁっ!!!」
「う……あああああぁぁっ!!!」
瑞穂の全身のバネを総動員して放たれた技は、所謂背負い投げと呼ばれるものだった。
視界が大きく一周した後、茜の背中に強大な衝撃が襲い掛かる。
それは下手をすれば、後遺症が残りかねない程の一撃。
瑞穂は先程手放したナイフを回収し、仰向けに倒れ込む茜を複雑な表情で見下ろした。
視界が大きく一周した後、茜の背中に強大な衝撃が襲い掛かる。
それは下手をすれば、後遺症が残りかねない程の一撃。
瑞穂は先程手放したナイフを回収し、仰向けに倒れ込む茜を複雑な表情で見下ろした。
「――――アカネ!」
茜の窮地に反応したアセリアが、またも対峙する舞を放置して駆け出そうとする。
だがそう何度も何度も、上手く舞を振り切れる筈はない。
同じ行動を繰り返せば、いずれ敵に読まれてしまうのは自明の理。
だがそう何度も何度も、上手く舞を振り切れる筈はない。
同じ行動を繰り返せば、いずれ敵に読まれてしまうのは自明の理。
「……行かせない」
「…………ッ!!」
「…………ッ!!」
アセリアの行動を予見していた舞は、素早くその進路上に回り込んだ。
舞にとってもこの場で最大の脅威は、徒党を組んでいるアセリアと茜のペアだ。
ならばみすみす見逃してやる道理など、何処にも在りはしない。
茜と瑞穂の勝敗は最早確定した。
後は瑞穂が倒れている茜に向けてナイフを振り下ろせば、それで終わりだろう。
茜がトドメを刺される時まで、このまま此処でアセリアを足止めしておくべきだ。
だがその直後、舞はアセリアが驚愕の表情を浮かべているのに気付いた。
その視線の先を確認すべく、後ろへ振り向くと――――未だ勝負は付いていなかった。
舞にとってもこの場で最大の脅威は、徒党を組んでいるアセリアと茜のペアだ。
ならばみすみす見逃してやる道理など、何処にも在りはしない。
茜と瑞穂の勝敗は最早確定した。
後は瑞穂が倒れている茜に向けてナイフを振り下ろせば、それで終わりだろう。
茜がトドメを刺される時まで、このまま此処でアセリアを足止めしておくべきだ。
だがその直後、舞はアセリアが驚愕の表情を浮かべているのに気付いた。
その視線の先を確認すべく、後ろへ振り向くと――――未だ勝負は付いていなかった。
茜はよろよろと、しかし確かに自分の力で起き上がって、取り落としたナイフも拾い上げていた。
「――――茜、さん」
瑞穂は驚きを隠し切れない様子で、呆然と茜を眺めていた。
有り得ない。
起き上がれる筈がない。
さっきの背負い投げは、これ以上無いくらい完璧に決まった。
背骨に皹が入っても、神経が何本か千切れても、まるで不思議でない一撃。
仮に自分が逆の立場で同じ技を受けたなら、間違いなく起き上がれないだろう。
それに左肩の斬り傷も、かなり深く刻み込まれている筈だ。
なのにどうして、茜は立ち上がれたのだ?
どうして未だ戦意の衰えぬ瞳で、こちらを見つめているのだ――?
有り得ない。
起き上がれる筈がない。
さっきの背負い投げは、これ以上無いくらい完璧に決まった。
背骨に皹が入っても、神経が何本か千切れても、まるで不思議でない一撃。
仮に自分が逆の立場で同じ技を受けたなら、間違いなく起き上がれないだろう。
それに左肩の斬り傷も、かなり深く刻み込まれている筈だ。
なのにどうして、茜は立ち上がれたのだ?
どうして未だ戦意の衰えぬ瞳で、こちらを見つめているのだ――?
「――貴子さんの……為?」
ぼそりと、茜の口から言葉が漏れ出た。
茜はガクガクと揺れる膝を叱り付け、瑞穂の方へと向き直る。
喉元まで混み上げてきた血塊を飲み下し、左肩と背中の痛みは強引に噛み殺した。
所詮自分は非力な女だ。
この場に居る誰よりも弱いし、当然瑞穂にも敵わないだろう。
それでも、まだ負けられない。
孝之は完全に狂ってしまったが、瑞穂は正気を失ってはいない。
孝之はもう救いようが無いが、瑞穂はまだ引き返せる筈だ。
ならば自分が倒されるのは、伝えるべき事を全て伝えてからだ。
瑞穂を止めてからだ。
姉も救えず、好きだった人も救えず、仲間すらも救えないまま終わるなど、絶対に認めない――!
茜はガクガクと揺れる膝を叱り付け、瑞穂の方へと向き直る。
喉元まで混み上げてきた血塊を飲み下し、左肩と背中の痛みは強引に噛み殺した。
所詮自分は非力な女だ。
この場に居る誰よりも弱いし、当然瑞穂にも敵わないだろう。
それでも、まだ負けられない。
孝之は完全に狂ってしまったが、瑞穂は正気を失ってはいない。
孝之はもう救いようが無いが、瑞穂はまだ引き返せる筈だ。
ならば自分が倒されるのは、伝えるべき事を全て伝えてからだ。
瑞穂を止めてからだ。
姉も救えず、好きだった人も救えず、仲間すらも救えないまま終わるなど、絶対に認めない――!
「貴子さんの為――そんなの嘘よ!」
茜は残る全ての力を振り絞って、瑞穂に斬り掛かった。
満身創痍の身体から繰り出される斬撃は、特筆すべき点など無い。
速さの面でも、威力の面でも、技術の面でも、まるで取るに足らないものだ。
だがその斬撃を受け止めた瑞穂は、何故か胸がズキズキと痛むのを感じた。
満身創痍の身体から繰り出される斬撃は、特筆すべき点など無い。
速さの面でも、威力の面でも、技術の面でも、まるで取るに足らないものだ。
だがその斬撃を受け止めた瑞穂は、何故か胸がズキズキと痛むのを感じた。
「嘘……ですって?」
茜の動きは隙だらけだ。
反撃しようと思えば、何時でも仕留める事が出来るだろう。
しかし瑞穂はもう少しだけ、防御に徹しようと思った。
茜が何を伝えようとしているか、聞き届けなければいけない気がしたのだ。
アセリアと舞も何か特別な物を感じたようで、瑞穂と茜の戦いに魅入っている。
反撃しようと思えば、何時でも仕留める事が出来るだろう。
しかし瑞穂はもう少しだけ、防御に徹しようと思った。
茜が何を伝えようとしているか、聞き届けなければいけない気がしたのだ。
アセリアと舞も何か特別な物を感じたようで、瑞穂と茜の戦いに魅入っている。
「皆の命と引き換えに生き返らせて貰って、貴子さんが喜ぶとでも思ってるの?
瑞穂さんが逆の立場なら、貴子さんにそんな事をして貰って喜べるの!?」
「――――――――っ」
瑞穂さんが逆の立場なら、貴子さんにそんな事をして貰って喜べるの!?」
「――――――――っ」
一発、二発。
脇腹と右肩に向けて放たれた連撃を、瑞穂はあっさりと弾き返す。
だが告げられた言葉に対してはそうもいかなかった。
何の言葉も返せない。
自分が逆の立場なら、喜べる筈が無い。
脇腹と右肩に向けて放たれた連撃を、瑞穂はあっさりと弾き返す。
だが告げられた言葉に対してはそうもいかなかった。
何の言葉も返せない。
自分が逆の立場なら、喜べる筈が無い。
「結局貴子さんの為だとか愛だとかって、自己満足でしかないよね? ただの偽善よ……そんな事をしても皆不幸になるだけ!
瑞穂さんも貴子さんも、罪悪感に押し潰されちゃうだけよ!!」
「っ……そうかも、知れませんね……」
瑞穂さんも貴子さんも、罪悪感に押し潰されちゃうだけよ!!」
「っ……そうかも、知れませんね……」
今度は、左肩、右足、左腕、計三箇所に向けて攻撃が放たれた。
先程より幾分か早くなっているが、まだ見切れるレベル。
しかし攻撃を防ぎながら瑞穂は思う――茜の言う通りだと。
先程より幾分か早くなっているが、まだ見切れるレベル。
しかし攻撃を防ぎながら瑞穂は思う――茜の言う通りだと。
砂時計の砂は決して逆流しないように、犯した大罪が消える事も無い。
愛する者を生き返らせる為だけに、多くの人々を殺し続ける。
自分自身の為だけに、数え切れない程多くの大切なものを奪い続ける。
そんな事をした所で、罪悪感に苛まれ地獄の責め苦を味わう羽目になるだけだ。
それでも――
愛する者を生き返らせる為だけに、多くの人々を殺し続ける。
自分自身の為だけに、数え切れない程多くの大切なものを奪い続ける。
そんな事をした所で、罪悪感に苛まれ地獄の責め苦を味わう羽目になるだけだ。
それでも――
「それでも……それでも僕は、貴子さんを守ると誓ったから! 一生を賭けて愛すると誓ったから!」
瑞穂の身体が前傾姿勢となり、その右肩がピクリと揺れる。
「僕は貴子さんを生き返らせる! たとえそれが……僕の自己満足だったとしてもッ!!」
今度は瑞穂がナイフを奔らせた。
自身の決意を籠めた、正真正銘全力での薙ぎ払い。
最小限の動作で放たれた斬撃は、正確に茜の喉元に向かって突き進む。
五体満足の状態でも、茜の実力ではまず防げぬであろう鋭い一閃。
自身の決意を籠めた、正真正銘全力での薙ぎ払い。
最小限の動作で放たれた斬撃は、正確に茜の喉元に向かって突き進む。
五体満足の状態でも、茜の実力ではまず防げぬであろう鋭い一閃。
「くっ…………!!」
しかし茜は、それを受け止めた。
決して防げぬ筈の一撃を、己の得物で確かに受け止めた。
瑞穂のナイフを押さえたまま、告げる。
決して防げぬ筈の一撃を、己の得物で確かに受け止めた。
瑞穂のナイフを押さえたまま、告げる。
「自己満足の為に皆を傷付けて、自分自身も傷付けて……。そんなの……そんなのアルルゥちゃんが……余りに可哀想!!」
「…………アルルゥちゃん……が……?」
「…………アルルゥちゃん……が……?」
瑞穂の瞳が大きく揺らぐ。
ナイフを握り締める手の力が、瞬く間に緩んでいく。
茜は何時の間にか、瞳一杯に涙を溜め込んでいた。
ナイフを握り締める手の力が、瞬く間に緩んでいく。
茜は何時の間にか、瞳一杯に涙を溜め込んでいた。
「酷いよ……瑞穂さんは酷いよ…………アルルゥちゃんは瑞穂さんを庇って死んじゃったのに!
それでも瑞穂さんに笑っていて欲しいって、そう言ってたのに!」
それでも瑞穂さんに笑っていて欲しいって、そう言ってたのに!」
もう、堪え切れない。
瞳から大粒の涙を零しながら、茜は絶叫する。
瞳から大粒の涙を零しながら、茜は絶叫する。
「瑞穂さんがそんな事じゃ……アルルゥちゃんは……何の為に死んだのよおおおおっ!!」
それはきっと、様々な想いが入り混じった叫び。
言葉では表し切れぬ程、多くの想いが篭められた絶叫。
ポロリ、と瑞穂の手からナイフが落ちた。
言葉では表し切れぬ程、多くの想いが篭められた絶叫。
ポロリ、と瑞穂の手からナイフが落ちた。
「アルルゥ……ちゃん……茜さん……貴子さん……僕は…………僕はっ……!
うあ……あああああああっ……」
うあ……あああああああっ……」
一筋の涙が瑞穂の頬を伝い落ちてゆく。
瑞穂はよろよろと二、三歩後退し、そのまま膝から地面に崩れ落ちた。
自分はこれまで、何をしていたのだろうか。
人を殺して、貴子を生き返らせるなんて、そんなの誰も――アルルゥも、貴子自身も望んでいなかった筈だ。
アルルゥは身を挺して、自分を助けてくれたのに。
自分の力量が足りなかった所為で、アルルゥは死んでしまったのに。
それも恨み言一つ遺さず、皆の幸せだけを願ってくれていたのに……!
瑞穂の心に、途方も無い後悔と自責の念が押し寄せてくる。
瑞穂はよろよろと二、三歩後退し、そのまま膝から地面に崩れ落ちた。
自分はこれまで、何をしていたのだろうか。
人を殺して、貴子を生き返らせるなんて、そんなの誰も――アルルゥも、貴子自身も望んでいなかった筈だ。
アルルゥは身を挺して、自分を助けてくれたのに。
自分の力量が足りなかった所為で、アルルゥは死んでしまったのに。
それも恨み言一つ遺さず、皆の幸せだけを願ってくれていたのに……!
瑞穂の心に、途方も無い後悔と自責の念が押し寄せてくる。
アセリアも、茜も、舞すらも、泣き崩れる瑞穂をただ眺めている。
それでも、場の状況は刻々と動き続けていた。
アセリアがその事に気付いた時には、もう手遅れだった。
何かが、空を切る音。
それでも、場の状況は刻々と動き続けていた。
アセリアがその事に気付いた時には、もう手遅れだった。
何かが、空を切る音。
「――――アカネ、避ける!!」
「え…………」
「え…………」
アセリアの声に反応して、瑞穂が顔を上げたその時。
グシャリと、近くで何かが潰れるような音がした。
瑞穂が音のした方へ視線を向けると、そこでは――
グシャリと、近くで何かが潰れるような音がした。
瑞穂が音のした方へ視線を向けると、そこでは――
「茜……さん?」
目に映る、赤、朱、紅。
茜の背中に、鋭利な斧が突き刺さっていた。
血の霧が大きく空中に広がり、周辺の木々まで赤く染め上げてゆく。
茜は口から盛大に吐血した後、こま落としのようにガクンと仰向けに倒れ込んだ。
茜が倒れ込んだ周囲の草々も、瞬く間に真っ赤になってゆく。
茜の背中に、鋭利な斧が突き刺さっていた。
血の霧が大きく空中に広がり、周辺の木々まで赤く染め上げてゆく。
茜は口から盛大に吐血した後、こま落としのようにガクンと仰向けに倒れ込んだ。
茜が倒れ込んだ周囲の草々も、瞬く間に真っ赤になってゆく。
呆然としたまま、その光景を眺め見る一同。
そこに気を違えたような――否、正しく狂っているとしか表現しようが無い、醜悪な笑い声が響き渡る。
そこに気を違えたような――否、正しく狂っているとしか表現しようが無い、醜悪な笑い声が響き渡る。
「ハハハハ……ヒャハハハハハハハハッ!!」
近くの木陰から、一人の狂人がゆっくりと姿を現す。
哄笑を上げながら現われた人物は、鳴海孝之その人だった。
哄笑を上げながら現われた人物は、鳴海孝之その人だった。
「やった……遂にやったぞ! 茜ちゃんを起こしてやったぞォォォォォッ!!」
本当に嬉しそうに、口元を綻ばせる孝之。
何故孝之が、アセリアにすら察知される事無く、茜を仕留められたのか。
孝之は戦いの途中で一旦身を隠し、反撃の機会を伺っていた。
そして舞とアセリアの動きが止まり、瑞穂と茜の戦いも終わった瞬間こそが決定的な好機だった。
最早その時には、全員が孝之の存在など忘れ去っていたのだ。
攻撃する際直接斬り掛かるのではなく、斧を投擲したのも大きい。
いかなアセリアと言えど、予測し得ぬ人物による突然の投擲攻撃からは、茜を守り切れなかったのだ。
そこで、一同の鼓膜を震わせるか細い声。
何故孝之が、アセリアにすら察知される事無く、茜を仕留められたのか。
孝之は戦いの途中で一旦身を隠し、反撃の機会を伺っていた。
そして舞とアセリアの動きが止まり、瑞穂と茜の戦いも終わった瞬間こそが決定的な好機だった。
最早その時には、全員が孝之の存在など忘れ去っていたのだ。
攻撃する際直接斬り掛かるのではなく、斧を投擲したのも大きい。
いかなアセリアと言えど、予測し得ぬ人物による突然の投擲攻撃からは、茜を守り切れなかったのだ。
そこで、一同の鼓膜を震わせるか細い声。
「……瑞穂、さん、何処……?」
全員の視線が声のした方へと集中する。
注意していないと聞き逃してしまいそうなくらい小さな声で、茜が呟いていた。
最早どうにもならない致命傷だったが、それでも茜はまだ生きていたのだ。
すぐさま瑞穂が大地を駆けて、茜の下へと急行する。
注意していないと聞き逃してしまいそうなくらい小さな声で、茜が呟いていた。
最早どうにもならない致命傷だったが、それでも茜はまだ生きていたのだ。
すぐさま瑞穂が大地を駆けて、茜の下へと急行する。
「アカネッ……」
そんな中、アセリアは苦々しげに奥歯を噛み締めていた。
今、自分は『悲しい』という感情を感じている――茜に駆け寄りたかった。
今、自分は『憎い』という感情を感じている――孝之を殺したかった。
だがすぐ傍に居る川澄舞は、銃器で武装した強力無比な敵。
今は大人しくしているが、何時銃撃を再開しても可笑しくは無い。
ならば此処で舞のマークを外す訳にはいかなかった。
今、自分は『悲しい』という感情を感じている――茜に駆け寄りたかった。
今、自分は『憎い』という感情を感じている――孝之を殺したかった。
だがすぐ傍に居る川澄舞は、銃器で武装した強力無比な敵。
今は大人しくしているが、何時銃撃を再開しても可笑しくは無い。
ならば此処で舞のマークを外す訳にはいかなかった。
「――――茜さん!」
瑞穂は右腕を茜の腰に回して、その身体を抱き起こした。
茜の制服にたっぷり染み込んだ血が、瑞穂の腕を濡らしてゆく。
茜の制服にたっぷり染み込んだ血が、瑞穂の腕を濡らしてゆく。
「瑞穂さん……そこに居る、の……?」
「居るよ! 僕は此処に居るよっ!!」
「…………? あは、あはは…………ゴメン、もう、良く聞こえないや……」
「居るよ! 僕は此処に居るよっ!!」
「…………? あは、あはは…………ゴメン、もう、良く聞こえないや……」
語る茜の視線は虚空を彷徨っている――聴力だけでなく、視力までも失っているのだ。
だから瑞穂は茜の手を握り締めた。
自分の存在を伝えるように、心を伝えるように、懸命に握り締めた。
茜の手はとても小さく、頼りなさげなものだった。
だが確かに茜はこの手で、自分を深い闇の底から救ってくれた。
目を逸らしていた現実と、忘れかけていたアルルゥの願いを思い出させてくれたのだ。
だから瑞穂は茜の手を握り締めた。
自分の存在を伝えるように、心を伝えるように、懸命に握り締めた。
茜の手はとても小さく、頼りなさげなものだった。
だが確かに茜はこの手で、自分を深い闇の底から救ってくれた。
目を逸らしていた現実と、忘れかけていたアルルゥの願いを思い出させてくれたのだ。
瑞穂の腕の中で、茜が静かに言葉を紡ぐ。
「瑞穂さん……どうして……だろうね…………? 私、は…………ただ、お姉ちゃんと鳴海さんの傍に居たかっただけなのに……。
私の想いが叶わなくても、お姉ちゃんと鳴海さんが笑っていてくれれば、それだけで良かったのに……」
私の想いが叶わなくても、お姉ちゃんと鳴海さんが笑っていてくれれば、それだけで良かったのに……」
幸せそうな孝之と遥の姿さえ見ていられれば、茜はそれで良かった。
一度は交通事故により砕かれてしまった、儚い夢。
事故にあった遥は眠ったまま目を醒まさなくなり、孤独に耐えられなくなった孝之は別の女の下へと走ってしまった。
でも三年の月日を経て、遥の意識が戻った。
孝之も遥の下に戻って来てくれた。
やり直せる筈だった。
再び皆、幸せになれる筈だったのに――そこで突然、このような殺人遊戯に放り込まれたのだ。
一度は交通事故により砕かれてしまった、儚い夢。
事故にあった遥は眠ったまま目を醒まさなくなり、孤独に耐えられなくなった孝之は別の女の下へと走ってしまった。
でも三年の月日を経て、遥の意識が戻った。
孝之も遥の下に戻って来てくれた。
やり直せる筈だった。
再び皆、幸せになれる筈だったのに――そこで突然、このような殺人遊戯に放り込まれたのだ。
「お姉ちゃんは死んじゃって……鳴海さんは、狂っちゃって……。どうしてこんな事に……なっちゃったん、だろうね……」
瑞穂はその問いに対する答えを、持ち合わせてはいなかった。
自分達が何故連れて来られたかなど、分かる筈も無い。
瑞穂に分かるのは一つだけ。
茜やアルルゥはこんな所で殺される謂れなど無い、心優しい少女だという事だ。
自分達が何故連れて来られたかなど、分かる筈も無い。
瑞穂に分かるのは一つだけ。
茜やアルルゥはこんな所で殺される謂れなど無い、心優しい少女だという事だ。
「鳴海さんも……お姉ちゃんも……瑞穂さんも……貴子さんも……アセリアさんも……アルルゥちゃんも……皆が悲しまなくて良い世界があったら……。
皆で一緒に笑い合える世界があったら、良いのに、ね……」
皆で一緒に笑い合える世界があったら、良いのに、ね……」
その言葉を最後に、茜は口を閉ざした。
戦いでは余り役に立てなくて、遥も孝之も助けられなくて、それでも精一杯生き続けた末、その生涯を終えた。
戦いでは余り役に立てなくて、遥も孝之も助けられなくて、それでも精一杯生き続けた末、その生涯を終えた。
茜の両頬には、細い涙の筋が浮かび上がっている。
瑞穂は茜の涙をふき取り、瞼を閉じさせてやってから、ゆっくりとその身体を抱き締めた。
瑞穂の瞳からは、止め処も無い涙が溢れ出ていた。
瑞穂は茜の涙をふき取り、瞼を閉じさせてやってから、ゆっくりとその身体を抱き締めた。
瑞穂の瞳からは、止め処も無い涙が溢れ出ていた。
そんな瑞穂の頭上から、この場に居る全員の記憶にある声が響いてくる。
『――瑞穂さん、これで分かったでしょう?』
嘲笑うような声は、鷹野三四の物。
正確には、鷹野三四の声を真似た土永さんの物だった。
正確には、鷹野三四の声を真似た土永さんの物だった。
『殺し合いを否定しても、その子のように殺されてしまうだけよ。
先手必勝――生き延びたければ、欲しい物を手に入れたければ、殺し合いに乗るしかないのよ』
「…………」
先手必勝――生き延びたければ、欲しい物を手に入れたければ、殺し合いに乗るしかないのよ』
「…………」
土永さんは木の上に身を隠しながら、瑞穂を扇動しようとする。
本来ならこんな大人数に近付きたくは無いが、今回は仕方ない。
折角手に入れた瑞穂という操り人形をこのまま逃すのは、余りにも惜し過ぎる。
本来ならこんな大人数に近付きたくは無いが、今回は仕方ない。
折角手に入れた瑞穂という操り人形をこのまま逃すのは、余りにも惜し過ぎる。
『だから殺し合いなさい! 憎しみ合いなさい! そうすれば…………!?』
土永さんが話し終わるのを待たずして、一つの大きな銃声が木霊した。
驚愕に土永さんの目が大きく見開かれる。
銃声の主は川澄舞。
鷹野の――即ち土永さんに踊らされている筈の舞が、突如天空に向けて銃を放ったのだ。
驚愕に土永さんの目が大きく見開かれる。
銃声の主は川澄舞。
鷹野の――即ち土永さんに踊らされている筈の舞が、突如天空に向けて銃を放ったのだ。
「……五月蝿い。少し黙ってて」
舞はそう呟きながら、鷹野の声がした方向を睨み付けた。
自分でも莫迦な行動をしたとは思う。
殺し合いに乗った人間が多ければ多い程、自分の負担は軽減する。
あのまま扇動を行わせた方が――成功するとは、とても思えないが――得策だった筈だ。
だけど、我慢出来なかったのだ。
茜という少女は非力ながらも必死に戦い続け、誇り高き死を遂げた。
その死を穢す様な真似は、どうしても見過ごせなかった。
自分でも莫迦な行動をしたとは思う。
殺し合いに乗った人間が多ければ多い程、自分の負担は軽減する。
あのまま扇動を行わせた方が――成功するとは、とても思えないが――得策だった筈だ。
だけど、我慢出来なかったのだ。
茜という少女は非力ながらも必死に戦い続け、誇り高き死を遂げた。
その死を穢す様な真似は、どうしても見過ごせなかった。
『ぐっ……きさっ、いえ、貴女……私に歯向かう気? 佐祐理さんがどうなっても良いの?』
「……逆らう気はない、ちゃんと人は殺す。だけど――」
「……逆らう気はない、ちゃんと人は殺す。だけど――」
詐術で舞を屈服させようとする土永さんだったが、脅し方が致命的なまでに拙かった。
舞の瞳に明らかな怒気が宿る。
周囲の気温が数度下がったかと思わせる程の、凄まじい殺気が放たれる。
舞の瞳に明らかな怒気が宿る。
周囲の気温が数度下がったかと思わせる程の、凄まじい殺気が放たれる。
「許さないから! 佐祐理を傷付けたら……絶対に許さないから……っ!!」
『……………ッ!!』
『……………ッ!!』
土永さんは悲鳴が漏れそうになるのを、必死の思いで耐え凌いだ。
駄目だ――こんな所に留まっていたら、命が幾つあっても足りない。
あの少女は銃を持っているのだから、何時銃撃してくるか分からない。
操り人形を失うのは惜しいが、此処は保身を最優先すべきだ。
そう判断した土永さんは、羽音を立てぬよう、ゆっくりとその場を後にした。
駄目だ――こんな所に留まっていたら、命が幾つあっても足りない。
あの少女は銃を持っているのだから、何時銃撃してくるか分からない。
操り人形を失うのは惜しいが、此処は保身を最優先すべきだ。
そう判断した土永さんは、羽音を立てぬよう、ゆっくりとその場を後にした。
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131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(前編) | 土永さん | 131:再会、混戦、決戦/Blue Tears(後編) |
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