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太陽をつかんでしまった(後編) ◆tu4bghlMI


三人の声が入り混じる。

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
「せ、閃光弾ッ!?」
「っああああああ!! 眼が……眼が……」

有り得ない。有り得ない。有り得ない。有り得ない。有り得ない。有り得ない。
完全に追い詰めたはずだ。なのに。
大空寺あゆが口元を歪ませた瞬間、突然、彼女のスカートが爆発した。

いや、違う。爆発したのではない。
光。太陽の輝きと思しき、閃光が走ったのだ。
瞬間、瞳を閉じたため、光を直視はせずに済んだ。だが、その光は瞼さえ貫いた。
まともな視力ではいられない。
瞼を抑えたまま、足がふら付く。

「こんな、こんな手で……私が……」
「死ねやぁぁ!!」
「つッ!! きゃぁぁぁぁぉぉぉ!!」

バン。バン。バン。バン。
撃たれた。撃たれた。
咄嗟に銃の元へ走った大空寺あゆの弾丸が左肩を抉る。純白の巫女服が紅に染まる。
銃声は四発。しかし、命中したのはたったの一発。
大丈夫、まだ何とかなる。

「糞ッ!!私まで……目の前がチカチカしやがる」
「随分……元気なのね。はぁ……拳銃が、効かないのかなぁ」
「そっちこそ。血、出てるじゃない。よく、見えないけど」

大空寺あゆと若干の距離をおいて対峙する。
とはいえ、私の視力は相当阻害されているようだ。ギリギリ彼女の姿が視認出来るレベルまで落ちている。
距離はどれくらいあるのだろう。遠近感が微妙だ。
あちらも間近であの閃光を見たに違いない。狙いがあやふやだ。
このまま戦う?いや、ソレはマズイ。
何故大空寺あゆが銃弾の影響を受けていないのか定かではないが、条件が悪いのはどう見ても自分。
……さて、ではどうする?

「ちッ……それにしても佐藤。とんだ策士だよ、アンタ」
「それはこっちの台詞だよ……。大体なんでそんなピンピンしてるのかな、普通アレだけ撃たれたら……」
「そりゃあ、"私は"撃たれてないからねぇ」
「?」
「防弾チョッキっつー便利なものが世の中にはあんのよ」

なるほど、だからまだこんな憎まれ口が叩けるわけだ。
しかし、この情報を私に伝える意図はなんだ? 
交わされる言葉の節々からあふれ出る殺意に背筋がゾクゾクと震えた。

睨み合い。互いに情報を小出しにしながら相手を牽制する。
目の前はいまだ暗闇のまま。大空寺あゆの視力はどの程度まで回復している?
時雨亜沙と一ノ瀬ことみの場所は?

「ああ、だからか。なんか上半身だけ太くてスタイル悪いなぁ……って思ったんだ」
「まさか。豚じゃあるまいし、ブクブク太った醜い格好になるくらいなら自殺してる」

突破点は?
どうやって彼女を攻略する?

「大体アンタもアンタだろ? その巫女服、似合ってないさ」
「そうかな? 純白の白。私にピッタリだと思わないかな?」

少し間が空いた。
僅かな逡巡の後、大空寺あゆがもう一度口を開いた。

「それ……本気で言ってるのか?」
「どうして?嘘なんていう訳無いじゃない」
「……アンタみたいなドブ川の腐った様な眼をした人間が巫女?笑わせるね。
 一発で見抜けなかった私の眼力も落ちたもんだ。
 私はアンタみたいに"汚い"目をした人間、久しぶりに見たよ」


大空寺あゆは酷く不愉快そうな顔をしていた。
端正な彼女の顔を歪ませて、心の底から自らと対峙している人間を軽蔑しているような瞳で。
最大級の侮蔑をもって放たれた言葉はとてもシンプルで、ストレートな感情表現だった。




『汚い』




ダメだ。
ダメだよ。ダメ。抑えなきゃ、私。
そうだ。違う。違う。違う。違う。違う。違う。違う。
私は、汚くなんて、ない。汚くなんて、ない?

本当に?


「き……」
「あ?」
「ききき……きた……き……汚く……汚くない……私は汚なくない……」


止まらない。ダメだ。止められない。
落ちる。
暴走する。
私が、変わってしまう。

「私は汚くなんてないッ!!」




「おい、時雨!! 大丈夫か、まだ頑張れるな?」
「う、うん。あゆちゃん、大丈夫、大丈夫だから」

最後は酷くあっけない最後だった。
一体なにがキーワードになったかは分からないが突然、佐藤良美が暴走。
手にした銃を乱射し始めた。

半ば狂乱状態と言っても良かった。
言葉がまるで通用しない。見境無く銃を撃ちまくる。
もしも私が腕利きのスナイパーであれば。
もしも対象を掃射出来るマシンガンでも持っていれば。
彼女の息の根を止める事が出来たのに。

残念な事に、暴走した佐藤良美から逃げるため、そのマシンガンを持った一ノ瀬ことみは私達とは正反対の方向に逃げていったのを確認した。
おそらく彼女も逃げ果せたとは思うが……近くで棒立ちになっていた時雨の手を引っ張って逃げるのが精一杯。
とりあえず発煙筒を一発放り込んでおいたので、時間稼ぎにはなったと思う。
なんだかんだで私も奴を本気で殺すつもりは無かった……という事なのだろうか。

結局、一ノ瀬ことみが嘘をついていたのかは分からず仕舞。
だが彼女が危険な人物であると言う疑惑は晴れなかった。
時雨はおそらく、必死になって否定すると思うが。

「でも……どうしてあゆちゃん、そんな平気そうな顔してるの? その、良美ちゃんにあれだけ撃たれたのに」
「ん? ああ、聞いてなかったか? コレだよ、コレ。防弾チョッキ。 お前らを見つける前から着込んでたのさ」
「防弾チョッキかぁ。へぇ……それじゃあ、いくら撃たれても平気なんだ」
「……馬鹿か。平気な訳ないさ。内臓は大丈夫だと思うが、骨は何本か逝っちまってる」
「ほ、骨って!! 大変じゃない、すぐ手当てしないと!」

服の裏に着込んだ防弾チョッキを見せる。
だが、そんな私の行動よりも時雨の気を引いたのは『骨が折れている』という趣旨の発言だったらしい。
顔を真っ青にしてコチラを気遣う。

「私より、自分の身体の事を心配しな。いつまでもアンタがそのままでいる事の方がよっぽど迷惑さ」
「うん……ねぇ、ことみちゃん……逃げられたかな」
「……まだ、アイツの事信じてるのか?知り合いを人殺し扱いされたのに?」
「ボクにも分からない……。ことみちゃんが恋太郎さんを殺すはずは無いし、楓だって……」

走りながら、時雨は頭を左右に力無く振った。
長い緑色の綺麗な髪がつられて揺れる。
しかし顔色が悪い。どう見ても限界だ。正直、立っている事さえ辛いはずだ。

「大分、辛そうだな」
「へ、平気だよ!ボク、こう見えても体力には自信あるんだから」

そうは言うものの、時雨に合わせたこのペースでさえ完全に息が上がってしまっている。
元々、他人に肩を借りて歩行していたレベルの怪我人なのだ。
いくら何でも過度の負担を掛けるわけには行かない。
それにゲームが開始してもうすぐ十二時間。
疲労も溜まり、一休みしたくなる時間帯でもある。

「……やっぱりあそこしか無いか」
「はぁ……あそ、こ?」
「ホテル」




一ノ瀬ことみは一人で走っていた。
ここはどこだろう。
大分必死に逃げて来たはずなのだが。

突然、自分の身も省みずに暴れだした佐藤良美。
うわ言のように『汚い』という言葉を繰り返す彼女の表情はあの芙蓉楓のような、まるで鬼のような顔付きだった。

とりあえず、亜沙さんとあゆさんが別の方向に消えるのは脇目で捉えた。
それに私が無事なのだから、おそらく二人も無事なはず。大丈夫だ。
しかし問題は突然あんな奇行に出た良美さんの事。
キーワード……だろうか。
あの連呼していた『汚い』という言葉に何か関係があるかもしれない。

それに自分がいくら銃で撃たれそうだからとはいえ、いきなりその相手に向かって銃を発砲するなんて。
威嚇するならば空に向けて引き金を引くなど、やり方は色々あったはずなのに。
加えてあの表情もしこりが残る。
心の奥底に真っ黒な塊を抱えているような、そんな違和感。

しかし、問題はこれからの方針だ。
亜沙さんと合流したい所だが、あゆさんが一緒にいる限りそれは難しいかもしれない。
何とか自分の言い分が正しいと言う事を証明する、分かりやすい方法があればいいのだが。
また、それならばいっそ北上して工場を目指すというプランもある。これなら途中で他に、信用出来る人間と出会える可能性もある事だし。
まぁとりあえずは身体を休める事が先決だろう。
行き先や方針を決めるのは、それからでいい。




「弾……出ないなぁ」

カチカチと乾いた音が辺りに響く。
もう視界はクッキリと晴れて見える。閃光弾の影響は消え失せたようだ。
最後に大空寺あゆが投下していった発煙筒の煙が少し臭うくらい。
それでも、藤林杏の死体が放つ血の臭いよりはマシだ。

時間を確認する。
現時刻は、十一時……面倒だ。後でいいか。
次に弾丸の残りを確認。……たったの三発しか残っていない。
確か先程まで、少なくとも十発以上はあったはずなのに。
とりあえず最後の三発を弾倉に込める。

「またやっちゃった……」

どうして自分はこうなのだろう。
アンティークドールのようにベッタリと地面に腰を降ろしながら考える。
『汚い』ただ一言言われただけでここまで取り乱してしまう。
どうしようもない悪癖だ。だが、コレばかりはどうする事も出来ない。

「藤林さん、私また帰って来ちゃった」

事切れた死体に話しかける自分が馬鹿ばかしく思える。
それでも何故か心は満たされた。
だって死んだ人間は裏切らないから。決して、裏切らないから。

良美は生い茂る木々の間から僅かに見える太陽を眺めて、ぼそっと呟いた。
「エリー……逢いたいよ。一緒に帰って、幸せになりたいよ」





【E-5 森(マップ左下)/1日目 昼】


【大空寺あゆ@君が望む永遠】
【装備:S&W M10 (2/6) 防弾チョッキ】
【所持品:予備弾丸17発・支給品一式 閃光弾セット(発煙筒(白)x1 催涙弾x1)】
【状態:肋骨左三本骨折・右一本骨折、肉体的疲労軽度】
【思考・行動】
1:ホテルに向かい、亜沙を休ませる
2:神社から離れる
3:良美を警戒
4:一応殺し合いに乗るつもりはない

【備考】
※あゆは放送の一部を聞き漏らしています。 その為禁止エリアがC-2と言う事は知らず、Cのどこかであるとしかわかっていません。
※赤坂が遥を殺したかもしれないと疑っています(赤坂と遥の名前は知りません)
※ことみが恋太郎を殺害したと判断しています
※亜沙を信用。ことみには依然、人殺しの疑惑。良美も危険人物として警戒。
※ハクオロを危険人物と認識。
※閃光弾セット
発煙筒(白)二本と催涙弾一本、閃光弾一本のセット。


【時雨亜沙@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【装備:無し】
【所持品:支給品一式、C120入りのアンプル×8と注射器@ひぐらしのなく頃に】
【所持品2:イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×4、ゴルフクラブ】
【状態:体力限界、精神的疲労大、魔力消費大。左肩軽傷。ロングヘアー】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:あゆと共にホテルに向かう
2:神社から離れる
3:ことみを心配
4:ネリネを止める
5:可能ならば稟や楓と合流
6:同志を集めてタカノたちを倒す

【備考】
※あゆを信用。ことみと微妙なすれ違い。良美に対しては困惑の感情。
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※楓が恋太郎を殺したという事実を認める事が出来ていません
※C120は『雛見沢症候群』治療薬だが、健常者に使用すると10分以内に全身の発疹、発熱、瞳孔の拡大、妄想を引き起こす薬です。
症候群を抑えるには1日数回の注射が必要です。
亜沙・ことみはC120の効果を知りません。

※亜沙の回復魔法は制限を受けて以下のような感じになっています。
回復魔法の発動には、魔力と体力の両方を大きく消費する。
治す怪我が酷ければ酷いほど、亜沙の消耗は激しくなる。
命に関わるような重傷は治せない。また切り落とされる等して、失った部位も治せない。

※設定はゲーム版。よってアニメ版の黒楓は知らず。



【E-5 平原(マップ中央)/1日目 昼】

【一ノ瀬ことみ@CLANNAD】
【装備:イングラムM10(9ミリパラベラム弾17/32)】
【所持品:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』、四葉のデイパック、イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×4】
【状態:肉体的疲労中、腹部に軽い打撲、精神的疲労中】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:亜沙を心配
2:身体を休ませる
3:神社から離れる
4:楓に恐怖
5:工場に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
6:鷹野の居場所を突き止める
7:朋也たちが心配
8:ネリネとハクオロを強く警戒
9:ハクオロに微妙な罪悪感


※ハクオロが四葉を殺害したと思っています。
※首輪の盗聴に気付いています。
※魔法についての分析を始めました。
※あゆは亜沙とっては危険ではない人物と判断。自分にとっては危険人物。
 良美に不信感。
※良美のNGワードが『汚い』であると推測



【E-5 森(マップ上)/1日目 昼】

【佐藤良美@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:S&W M36(3/5)、破邪の巫女さんセット(巫女服のみ)】
【所持品:支給品一式×2、錐】
【状態:疲労中度、手首に軽い痛み、左肩に銃創(出血)重度の疑心暗鬼、巫女服の肩の辺りに赤い染み】
【思考・行動】
基本方針:エリカ以外を信用するつもりは皆無、確実にゲームに乗っていない者を殺す時は、バレないようにやる
     利用できそうな人間は利用し、怪しい者や足手纏い、襲ってくる人間は殺す。最悪の場合は優勝を目指す
1:???

【備考】
※メイド服はエンジェルモートは想定。現在は【F-4】に放置されています。
※芙蓉楓を危険人物と判断(名前のみ)
※ハクオロを危険人物と認識。(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※名雪の第三回放送の時に神社に居るようようにするの情報を得ました
  (禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※ネリネを危険人物と判断しました(名前のみ)
※あゆ、ことみ、亜沙のいずれも信用していません。
※杏の死体の隣にいます。杏のS&W M36以外の支給品は不明。





106:太陽をつかんでしまった(前編) 投下順に読む 107:たとえ、愚かな考えだとしても
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106:太陽をつかんでしまった(前編) 佐藤良美 120:サプライズド・T・アタック(前編)
106:太陽をつかんでしまった(前編) 一ノ瀬ことみ 127:放送がもたらしたもの
106:太陽をつかんでしまった(前編) 大空寺あゆ 127:放送がもたらしたもの
106:太陽をつかんでしまった(前編) 時雨亜沙 127:放送がもたらしたもの






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