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サプライズド・T・アタック(後編) ◆4JreXf579k


倒れこむ体。
口の中に入る土。
二対一をしていた沙羅たちの勝負はあっけなくついた。
武道の達人でも二対一をこなすのは難しい、まして武道の心得もない女子高生には尚更である。
水瀬名雪は槍を落とし、沙羅に腕を取られ固められた。
敗北の屈辱が名雪の顔と心を一層醜くする。

「ごめんね、名雪」
「放せ……放せぇ!」
「もう襲ってこないって誓うんなら放すわ」
「誰が誓うか! そうやって油断させてまた裏切るんでしょ!」
「分かってよ名雪……私がどうして銃を使わなかったのか」

そう、沙羅にはワルサー P99という銃がある。
その気になれば手や足を撃ち名雪を無力化させることも、心臓や脳を打ち貫き殺すこともできたのだ。
それをせずに、回りくどい方法で名雪を無力化させたのは、沙羅も美凪も名雪を殺すつもりも傷つけるつもりもないからである。
しかし、名雪はそれさえも自分を弄ぶための余興にすぎないと被害妄想を拡大させることしかできない。
余計な思考をすべて剥ぎとった名雪に他人の考えを察することなどできなかった。

「あゆちゃん……」

こっちの勝負は決したが未だ武や圭一は戦い続けている。
本来ならすぐにでも加勢に向かうべきなのだが、美凪はとりあえずはあゆを安心させることを第一に考えた。
だが返事は返ってこない。
あゆはまだ返事ができないほど恐怖が体に纏わりついているのか。
はたまた美凪の声が聞こえなかったか。
答えはそのどちらでもいない。
この場にいないから返事のしようがないのである。

「あゆちゃん、いない……!」
「何ですって……あっ!」

沙羅の一瞬の気の緩みを見た名雪が沙羅に固められた姿勢から抜け出し、落ちていた槍を拾うと一目散にどこかへ駆け出して行った。
沙羅も慌てて名雪を追いかけようとするが、あゆのことを優先させるために途中で止まる。
美凪の方へ振り返ると確かに月宮あゆなる人物はどこにもいなかった。
美凪の周囲はもちろん武と圭一が戦闘している付近にいる気配もない。
第三者がこの場に介入する余地はほとんどない。
7人もの人間の目を盗んでこの場に侵入してくる者など幽霊でもない限り不可能だ。
ましてやあゆは大きく描かれた三角形の中心にいたのだから。
第三者が現れれば誰か必ず気付かないわけがない。
仮に幽霊のような存在がいたとしても、何故月宮あゆだけを連れて誘拐せねばならないのか腑に落ちない。
つまるところは月宮あゆ本人が自身の意思と力でこの場を離れたのしか有り得ないのだ。
外からの侵入よりも内側からの脱出の方が気取られる可能性も少ないのだから。




その頃、月宮あゆは呼吸を荒くして、足を引きずりながらもただひたすら走っていた。
美凪と沙羅が共闘を始めたのと時を同じくしてあの場から逃げ出したのだ。
守ってくれる人はいた。
美凪も、許しはしないと言っていた圭一もあゆや仲間を守ってくれるために戦ってくれた。
あゆは思った。
ああ、みんななんていい人たちだろう、と。
戦いの最中にも関わらずあゆはふと乙女や大石、名雪らと楽しく過ごしていた時間を思い出しもした。
あゆはこの島にきて何度目かの安らぎを味わっていたのだ。
なのに、何故こうやって逃げているのか?
怖いのだ。 名雪の目が、怒りが、自分の犯した罪が。
沙羅と美凪が名雪を殺す気はないというのが雰囲気で伝わってきた。
沙羅と美凪が首尾よく名雪を捕えることができた後するべきことはあゆにも分かる。
名雪への心からの謝罪だ。
けれど一度名雪に謝罪したときのことを思い出す。
後悔、怒り、悲しみ、諦め、嫌悪、憎しみ、無念、怨み、絶望、苦しみ。
あのときの名雪の表情はありとあらゆる負の感情がつまっていた。
謝罪は受け入れられなかったのだ。
さらに名雪が言っていた復讐のプランを思い出す。
本来名雪は冗談でもそういうことをいう人ではない。
普段の水瀬名雪はいつも眠そうにして、顔に似合わず陸上部の部長もやっていて、おっとりのんびりした性格だが、一途で芯の強い一面もあるような人だ。
その名雪をあんな風に変えてしまうほど名雪の怒りは強い。
名雪の復讐の計画を聞いた時、もうあゆの心のどこにも謝罪や贖罪といった言葉はしなかった。
代わりに圧倒的恐怖があゆの心の大半を占める。
あゆは分かっていない。
謝罪が受け入れられなくても、それでも謝らねばならないのだ。
たとえ許されなくても何度でも謝り、何度でも償わなければならない。
罪とはそういうものだ。
だが、今のあゆに自身の罪を認めることはできても、罪を受け止める勇気はなかった。
ふと咲耶にダイナマイトで襲撃される前、美凪は何を言おうとしていたのだろうと考えを巡らせる。
だが美凪の言葉は途中で中断させられた。
さして今はもう美凪はそばにいない。
そして数少ない心を許せる人物である相沢祐一もいなくなってしまった
守ってくれる人からも、心を許せる人物からも、自分の罪からも逃げ出したあゆの逃げるところはただ一つ。
誰もいないところだった。
誰もいないところで目も耳も全ての感覚を閉ざしたいのだ。
だからあゆの目的地はただ一つ。
人が誰もいないと思われるところ、そう、海の家である。




もはや大勢は決した。
水瀬名雪が撤退した今、咲耶と良美にはこの戦いのメリットが少なくなる。
咲耶も良美も即座に撤退をすべきなのだが、今のところ二人ともそれを選択する素振りは見せない。
武と咲耶、圭一と良美、二つの戦いはもう佳境まで来ており、どちらの勝負も最後の激突を残すのみである。
高鳴る剣気、唸る咆哮、血沸き肉踊り、天が震える。
一分、それくらいであろうか、四人はまるであらかじめ決めていたかのように誰一人動くことなく止まっていた。

「前原さん! あゆちゃんがいなくなってます」

美凪が声をかけるものの圭一は眉一つ動かすことなく、それでも美凪の言うことは聞こえていた。
沙羅は念のため、周囲であゆの捜索を行っている。
もはやこの勝負、決着がつかぬ限り誰も止めることはできないだろう。
彼等はエヴェンクルガの剣士トウカのような武人でもなければ、自らの武を磨くような修験者でもない。
ただ、譲れないもの、守りたいもの、奪いたいもの、それを貫くことのみしか考えてない。
彼等は刀を、剣を、あるいは斧を、銃を使い己の信じる意思を自らの武器に託す。
ある者は己の気を高め、ある者は自身の作戦の確認をし、一触即発の状況が動くのを待つ。
美凪も動くことはできなかった。
時が動く……速く、激しく。
今この場で動いているのは空に浮かぶ太陽と四人を包む暖かい風と各自に支給された時計の針のみ。
そしてさらに何分かの時間がたったとき、ついに動いた。

動いたのは良美。
最後の力の全てを出し切り瞬時に圭一の懐までもぐりこむ。
そして必殺の一撃を叩き込むべく攻撃動作に移る。
だが、佐藤良美の圧倒的なスピードをさらに上回る速度で圭一の刀が唸る。
後手に回った圭一の方が良美の攻撃速度の上をいく。
片手しか添えていなかった斧に両手を添え、良美は攻撃から防御の姿勢に切り替えた。
全体重を乗せた圭一の袈裟斬りを――良美は受け止めることに成功する。
押す圭一。
受ける良美。
倒せ、敵を! 守れ、友を!
互いの思いをぶつけ合う。
空気が振動し、互いの全身の筋肉と血液が総動員する。
良美の顔に初めて苦しそうな表情が生まれた。
圭一が押し始めたのである。
だが、やはり圭一は気付かない。
自らの武器に起こった異変に。


咲耶たちはいずれも動いていない。
時機が来るのを、最高のタイミングで敵に必殺の一撃を与える機会を待っている。


圭一が押す。
二人の顔が口付けを交わすことができるほど近づく。
だが二人の顔はそんなロマンチックさに溢れていない。
圭一が良美を、良美が圭一を、互いが視線で人を殺せそうな形相をしている。
圭一がさらに押す。
これ以上受けるのを断念して良美は引いた。
一瞬、圭一のバランスが崩れる。
今度こそ良美の攻撃の番だ。
狙うは一点!
それはフェイントも小細工もない、いつもどおりのあくびが出そうな単調な攻撃。
けれど全てはこの時の為だけに積み重ねていた伏線。
圭一もいつものように単調な動作で受け――きれなかった。
圭一の刀の刃が良美の遥か後方へ飛んでいく。
武器破壊、これこそが良美が狙っていたものである。
もしも圭一が用心深く良美の攻撃を分析していれば、良美が途中から圭一の体ではなく刀を狙い続けていたことに気付いたであろう。
良美は刀の一点のみを圭一に受けさせ、少しずつ武器の寿命を削っていたのである。
刀の刃は鍔元の部分で折れ、情けないほど短くなった。
そしてこれは圭一の絶体絶命のピンチ。
良美の一撃が脳天に迫る。
圭一は残った柄で器用に受けるものの、それが限界だった。
柄も吹き飛ばされた圭一は丸腰。
再度二人の距離が離れる。
残った手榴弾では精々良美を道連れにすることしかできないだろう。
「終わりだね!」
「終わりかどうかは……俺が決める!」
良美の死刑宣告に圭一は揺るがない。
何故なら、信じているからである、友と仲間を。
良美が圭一に最後の一撃を放つ前に――それは来た。
圭一と良美の方に何かが回転しつつ飛来する。
そしてちょうど圭一と良美の中間に位置する場所にそれが突き刺さった。
それは永遠神剣『求め』。
圭一の窮地を見た武が圭一のもとへ投げ込んだのだ。
人と協力するという意識が根本的に欠けている良美にとってそれは全くの予想外。
「前原さん、それを!」
美凪の叫びに圭一と良美が『求め』を手に入れるべく同時に走り出す。


ここでついに咲耶が動く。
武器を手放した武を襲う絶好のチャンスが訪れる。


良美が銃に残された最後の弾丸を放つ。
弾丸は――圭一には当たらない。


咲耶が最後の弾丸を全部撃ちつくす。
弾はポリタンクに当たり中の石油が漏れ出す。


良美と違って圭一に武器はない。
銃を撃つ動作で良美がワンテンポ遅れる。


咲耶がさらに地獄蝶々を構え武に突進する。
右手にダイナマイトを、左手に発火装置を携えた武に防御する方法はない。


圭一は良美と違って走ることだけに専念した。
だから、良美より一歩リードする。


咲耶が武の上半身を狙って刀を振るう。
武は避けるのに精一杯で、ダイナマイトも発火装置も手放す。


圭一の手が先に『求め』に辿りついた。
良美はその手を狙って斧を振り下ろす。


ついに全ての武器を手放した武に咲耶は勝利の笑みを浮かべる。
しかし、武は焦ることなくポケットからジッポライターと投げナイフを構えた。


良美の斧は圭一の腕を切断できない。
良美は『求め』を手にした圭一と再び五分の勝負に戻された。


「今さらそんなもので!」
咲耶が半ば勝利を確信して刀を振りかざしたとき、ようやくそれに気が付いた。
武との戦闘が始まったころ、自分に投げつけられたものを。
何故ここで武がジッポライターのような可愛らしい支給品を取り出したのか。
自分のデイパックに入っていたものを。
慌てて攻撃を中止して武から遠ざかろうとする。
しかし勢いのついた体はそう簡単に止まらない。
武がジッポライターを口元に持ってきて火をつける。
それは炎にキスするため? ――否!
武の頬が風船のように膨らむ。
頬の中に入っているのは空気? ――否!!
あらかじめ投げつけた日本酒も、これ見よがしに転がしておいたポリタンクも、手にしたダイナマイトと発火装置も――



全 て は こ の と き の 為 の 伏 線 !



武は予め口に含んでおいた日本酒を吐き出す。
口一杯に日本酒を含めば咲耶に気付かれる恐れがある。
だから他人に気付かれない最小限の量でよかった。
ジッポライターの火を通じて日本酒が液体から紅蓮の炎と変わった。
日本酒のアルコール度数は日本酒としては最高レベルの46度。
火をつけるのは問題ない度数だ。
視界いっぱいに広がった炎は咲耶の顔面に命中し、予め服に染み込んでいた日本酒に引火する。
「ああああああああああああああああ!」
炎が咲耶の顔を、髪の毛を、衣服を焦がしていく。
咲耶の口の周りの酸素が燃やし尽くされ、咲耶は炎に焼かれる苦しみと呼吸難の二重苦を味わう。
酸素を求めて口を開いても口の中まで炎が進入し、咲耶の食道と肺を焼き尽くす。
「おおおおおおおおおおおおおおおお!」
咲耶が息絶えるまで武は咲耶の苦しむ様を鑑賞していてもよかった。
貴子も同じような苦しみを味わったに違いないし、武にはその権利がある。
だが武はそのような悪趣味は望まない。
苦しませないように投げナイフで咲耶の心臓を一突きにした。
肉を抉る感触、噴出す返り血、初めて人を刺した経験。
武はその全てに嫌悪感を覚えながらも最後までやり通した。
咲耶は心臓は刺されてもしばらくは動いていたが、やがて炎が治まるのと同時に動かなくなる。
「ま、もる……ちか……げ…………す、ぐ……から……待って……て……」
その一言が最後だった。
「……分かった。 お前の妹は俺が守る……」
何故そんなことを言ったのか武にも分からない。
貴子を殺し、自分たちを殺そうとした女だ。
ただ、最後の一言だけが殺人鬼ではない年相応のものに聞こえた、そんな気がした。
彼女はこの島に来る前からの生粋の殺人鬼、そんなはずはない。
咲耶は、笑いながら人を殺していた少女は、何を思いどのような決意の元に殺人鬼の仮面を被ることにしたのだろうか。
それはもはや知る術はない。
唯一つ分かったのは咲耶の妹たちを守る気持ち、それだけは本物だということだった。




武が咲耶の武器を回収し、圭一の加勢に向かうことを決めたとき、その人物はもう武の目の前にいた。
佐藤良美は咲耶が倒れたのを見届けると同時に、圭一との対戦を放り出し武の方向へ向かっていたのだ。
薄気味悪い笑みを浮かべた佐藤良美は一瞬で油断していた武の額に銃を突きつける。

「武器を捨てて」

短い、けれどそれだけによく響く声が武に伝わる。
一切の妥協を許さぬ良美の姿勢に武は歯噛みしながらも武器を捨てた。
良美は上手く言ったことを安堵していた。
良美の銃にはもはや銃弾は一発も残っていない。
それだけにこのブラフは綱渡り以前の問題だったのだがどうやら上手く言ったようだ。
武の武器に新たな銃が入っていたことにも満足して早速新しい銃を持つ。
丈夫な刀も手に入ったし、言うことなしだ。

「じゃあね、圭一君。 今度はちゃんと殺してあげる」

それだけ言って良美は去っていった。
本当なら武を人質にとって圭一たちからも武器をせしめたいところだ。
だが、武は体格のいい大の男。
いくら良美といえど大の男を抑えつつ武器を奪うのは難しい。
この場は立ち去るのが妥当だと言える。
結果として圭一を殺すことはできなかったものの、より強力な武器を手に入れた。
元々圭一は良美の正体を知っていたし、このまま去ってもデメリットは少ない。
ある意味、この戦いの真の勝者は佐藤良美だった。

「武さん!」
「ああ、済まない」

武は崩れる体を圭一に支えられた。
武は油断したせいで貴重な武器が奪われたことを恥じる。
しかし、それ以上悔やみはせず駆け寄ってきたみんなに微笑んだ。
同時にいなくなったというあゆのことも思い出した。

「そういえばあゆがいなくなったって?」
「そうです。 一体どこへ……」
「逃げたんだろうさ」
「前原さん、その言い方は……」
「あ~それよりもみんなの治療した方がいいんじゃない?」

沙羅に言われて三人は気付いた。
ここにいる人間でまともな状態なのは沙羅だけで、武と圭一はもちろん美凪まで怪我をしている。
自分たちの傷のことを忘れるほど必死だった証拠だろう。
武や圭一は傷のことを思い出した途端に傷が痛みはじめた。
沙羅も美凪も名雪やあゆとはもう一度会いたいがまずは怪我の治療が先だ。
落ちていた投げナイフや折れた刀の破片と柄を拾った後、一行は治療をするべく救急車の中に入っていった。




「何? それは本当か?」
「本当よ」

圭一は疲れからか救急車の中に入るとすぐに眠ってしまった。
沙羅は鷹野と関係があるとにらんでいた圭一に話を聞きたかったが眠っているのでは仕方ない。
起きてからじっくりと聞くことにした。
残された三人で治療中に沙羅の自己紹介や各自の知っている情報を交換していたが、沙羅の持っている情報に興味深いものがあった。
それは沙羅の持っているフロッピーディスクに入っている各種情報のことである。
聞き返した武だけでなく美凪も興味津々である。

「どんな情報があった?」
「え~っと、支給された銃の中には暴発するものがあるとか、廃坑への入り口は地図に載っているもの以外にもあるとか……」
「廃坑? 廃坑への入り口なら確かにあったぞ」

武は思い出す。
温泉で突如現れた涼宮茜のことを、そして茜は廃坑から出てきたのを。
ディスクには信じるか信じないかは自由と書いてあったらしいが、これでフロッピーディスクの情報はいくらか信憑性があることが確定した。
さらなる情報を得るべく今度は美凪が沙羅を促した。

「他には?」
「他には……色々あったけど思い出せないわね」
「お願いします沙羅ちゃん……どんな些細なことでもいいですから」
「そんなこと言われても……ああ、一つだけ思い出した!」

全員の顔が注目する。
果たして沙羅はそれを思い出すべきだったのか、思い出さなければよかったのか、それは今のところ誰にも分からない。

「『H173を打たれても早めにC120を打てば症状は緩和されます(笑)』って」

武の背筋に冷たいものが走った。
それは土見稟に打たれていたもの、あのとき確かに麻酔銃で何かを打たれたのを思い出す。
いや、打たれたのがH173である確証はなく、単なる麻酔である可能性もある。
だが、今まで体に何の変化もないので忘れていたが、今ここでその名前を聞くことになるとは武にも全くの予想外である。
武が青ざめた顔をしているのに気付かずに他の二人は会話を続けていた。

「H173って何でしょう?」
「雛なんとか症候群を発症させる薬って書いてあったけど……」
「薬……ですか?」
「そうそう。 麻酔銃と一緒に支給されてるって」

それは確かに武の持つ情報と一致していた。
土見稟が持っていた麻酔銃、そしてH173と書かれたラベルが貼られていた注射器。
しかもそれは何らかの症候群を発症させるものだという。
武は喉の渇きを感じながらも沙羅に聞いた。

「他になんか書いてあったか?」
「ええっと、人が信じられなくなるとか、そんな馬鹿らしい内容だったけど……」
(人が信じられなくなる? バカらしい、俺はみんなを信じているぜ)

武は沙羅の言葉に思わず安心していた。
内容の馬鹿らしさもさることながら、自分には瑞穂や茜といったちゃんと信じることができる仲間がいるからだ。
しかし、武が頭の中で思い浮かべた信じることの出来る仲間の中に圭一や美凪がまたもや入ってないことには気づいていない。
廃坑のことはともかく、この情報は信じる必要のない嘘、または自分が注射されたのは麻酔薬だと確信していた。
しかし、次の一言が安心していた武の心をどん底に落としやることになる。

「他には喉を掻き毟ったりとか、最後には死ぬとか、どっちにせよ馬鹿な話ね」

武の喉は掻き毟った跡がある。
そして武は今も自分が喉を掻き毟っていることに気付いた。
安心していた心が一気に動揺しだす。
疑心が武の心を埋め尽くし、気付いたときには立ち上がって叫んでいた。

「嘘だッ!!」

さっきの戦いでは咲耶や良美という明確な敵がいたから武の症状は進行せずにすんでいた。
だが、全てが一段楽した今、分かりやすい悪のいない環境は武の疑心と症状を確実に深めていく。
そしてタイミングが悪いことに沙羅のフロッピーディスクの情報を聞いてしまったのだ。
今まで何度となく振り払ってきた妄想が今、武の目の前に具現化した。
美凪と沙羅が醜い顔で笑っているように見えたのである。

「そんなはずねぇ! お前はそうやって俺を騙してるんだろう!」
「え? い、一体どうしたのよ!?」
「俺は信じない! 俺の体はどこもおかしくない! 俺は正常だ!」
「ちょっと、訳がわかんないわよ!」
「俺が死ぬ? 人が信じられなくなる? お前等が俺を騙しているだけだろうが!」
「あっ、待ちなさい!」

そういって沙羅の制止も振り切って武は外に飛び出した。
美凪も沙羅も何がなんだか分からないがとりあえず武を止めるべく外に飛び出した。
勢いよく飛び出したのはいいが武の足取りは覚束ない。
圭一と美凪の治療は終わったが、武は自分は最後でいいと他の二人を優先させていたのである。
二人は走る武を抑えようとするが、武は圭一から別けてもらった手榴弾の安全ピンを抜いて沙羅たちの方に投げた。
ちょうどそこに武が咲耶との戦いでブラフとして投げたポリタンクの石油に引火してあっという間に周辺に火が移る。
沙羅と美凪はとりあえず火を消すことに専念したが、全ての火が消えるころには武の姿はもう見えなかった。

「遠野さん、沙羅、一体何が!」

ようやく起きてきた圭一が駆けつけてきたが、状況を上手く説明できる人間はどこにもいなかった。




実は武は美凪たちとはほとんど離れていないところで気絶していた。
無理もなかろう。
穿たれた二つの銃傷、切り裂かれた無数の刀傷はキュレイの力で傷はふさがったものの、失われた血までは取り戻せない。
ましてや武はこの島に来てから一睡もしてないのだ。
蓄積された疲労、多大な出血、それは武の意識を奪い去るには十分である。

気絶した武は夢を見ていた。
夢と言ってもそんなに大層なものではない。
真っ黒な空間につぐみや瑞穂、陽平、茜、死んだ貴子、様々な人間が現れては消えるといった単純なものだ。
武は彼等に声を掛けるが誰一人として返事はくれなかった。
彼等は口を利けないのか、武と喋る気がないのか、唯一つ彼等に共通していた点は全員が一様に悲しそうな目で武のことを見ていたということである。




水瀬名雪は沙羅たちから逃げ出した後、ある場所に辿りついた。
全てを捨てて皆を殺すことだけに最適化した脳は槍ではなくもっと強力な武器を手に入れることを命令する。
もっと強力な武器がありそうなところ、それは倉庫だ。
かつて咲耶はそこで数々の強力な重機を目にしたが、それを扱うことはせずダイナマイトだけ持っていった。
だが水瀬名雪はその重機を目にした瞬間、これだ、と思った。
無骨なフォルム、圧倒的な大きさ、名雪にとってそれは槍が玩具に思えるほど強力な武器に見える。
圧倒的な力の象徴を目の当たりにして名雪が選んだのはパワーショベルだった。
シートに座ってみると自分の視点が一層高くなり、自分が強くなった気がする。
さらに調べたところ操作方法のマニュアルもあったし、操縦席の窓ガラスは全て防弾仕様のようだ。
短時間でマニュアルを頭に叩き込み、あとは実際に動かしてみて操作のコツを覚えた名雪は意気揚々と外に出た。
行儀よく扉を開けて外に出ることはせず、壁の薄そうなところを強引に突っ込んで壊した。
崩れ落ちる壁、窓ガラスに当たる破片、それを見て名雪はさらに有頂天になる。

「あは、あっははっははははははは! これで! みんな! 殺してやるうううううっぅぅぅぅぅぅ!」

どこまでも捻じ曲がった少女はもう戻れないのか。 答えは本人にも分からないだろう。



【咲耶@Sister Princess 死亡】


【F-4 細かい位置は次の書き手さん任せ/1日目 日中】
【倉成武@Ever17】
【装備:投げナイフ2本、永遠神剣第四位「求め」@永遠のアセリア】
【所持品:支給品一式 ジッポライター、貴子のリボン@乙女はお姉さまに恋してる、富竹のカメラ&フィルム4本@ひぐらしのなく頃に】
【状態:L5侵蝕中。重度の疲労。気絶中。頭蓋骨に皹(内出血の恐れあり)。頬と口内裂傷(出血中)。頚部に痒み。 脇腹と肩に銃傷。刀傷が無数。服に返り血)】
【思考・行動】
0:俺はおかしくなんかない!
1:L5侵蝕中(中度)
2:気絶中
3:???
【備考】
※キュレイウィルスにより、L5の侵蝕が遅れています、現在はL3相当の状態で若干症状が進行しました。
※前原圭一、遠野美凪の知り合いの情報を得ました。
※圭一と沙羅と美凪に若干の不安を抱きました。
※あゆについてはまだ警戒しています。
※富竹のカメラは普通のカメラです(以外と上物)フラッシュは上手く使えば目潰しになるかも
※永遠神剣第四位「求め」について
「求め」の本来の主は高嶺悠人、魔力持ちなら以下のスキルを使用可能、制限により持ち主を支配することは不可能。
ヘビーアタック:神剣によって上昇した能力での攻撃。
オーラフォトンバリア:マナによる強固なバリア、制限により銃弾を半減程度)
※沙羅と情報交換しました。
※キュレイにより少しづつですが傷の治療が行われています。
※武がどこにむかったのか、どの辺りで気絶しているかは次の書き手さんに任せます。


【F-4 住宅街/1日目 日中】
【前原圭一@ひぐらしのなく頃に祭】
【状態:精神安定、右拳軽傷、体全体に軽度の打撲と無数の切り傷、左肩刺し傷(左腕を動かすと、大きな痛みを伴う)】
【装備:折れた柳也の刀@AIR(柄と刃の部分に別れてます)】
【所持品:支給品一式×2、キックボード(折り畳み式)、手榴弾(残1発)】
【思考・行動】
基本方針:仲間を集めてロワからの脱出、殺し合いには乗らない、人を信じる
0:大石さん……
1:一体何が……
2:美凪を守る
3:美凪や沙羅と共に稟を止めるため神社に向かう
4:知り合いとの合流、または合流手段の模索
5:良美を警戒
6:あゆについては態度保留、但し大石を殺したことを許す気は今のところない。
7:土見稟を警戒
8:ハクオロを警戒
【備考】
※倉成武を完全に信用しました
※宮小路瑞穂、春原陽平、涼宮茜、小町つぐみの情報を得ました
※救急車(鍵付き)のガソリンはレギュラーです。現在の燃料は残り2/3くらいです。

【遠野美凪@AIR】
【状態:疲労中程度】
【装備:悟史のバット@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:包丁、支給品一式×2、救急箱、人形(詳細不明)、服(詳細不明)、顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)】
基本方針:圭一についていく
0:武さん、一体何が……
1:知り合いと合流する
2:佐藤良美を警戒
3:土見稟を警戒
※倉成武を完全に信用しました
※宮小路瑞穂、春原陽平、涼宮茜、小町つぐみの情報を得ました
※あゆのことは基本的には信用しています
※沙羅と情報交換しました。

【白鐘沙羅@フタコイ オルタナティブ 恋と少女とマシンガン】
【装備:永遠神剣第六位冥加@永遠のアセリア -この大地の果てで- ワルサー P99 (16/16)】
【所持品:支給品一式 フロッピーディスク二枚(中身は下記) ワルサー P99 の予備マガジン8 カンパン30個入り(10/10) 500mlペットボトル4本】
【状態:健康・疲労・強い決意・若干の血の汚れ】
【思考・行動】
1:一体なにがどうなったの?
2:情報端末を探す。
3:首輪を解除できそうな人にフロッピーを渡す
4:前原にタカノの素性を聞く。
5:混乱している人やパニックの人を見つけ次第保護 。
6:最終的にはタカノを倒し、殺し合いを止める。 タカノ、というかこのFDを作った奴は絶対に泣かす。
【基本行動方針】
一人でも多くの人間が助かるように行動する
※FDの中身は様々な情報です。ただし、真偽は定かではありません。
下記の情報以外にも後続の書き手さんが追加してもOKです。
『皆さんに支給された重火器類の中には実は撃つと暴発しちゃうものがあります♪特に銃弾・マガジンなどが大量に支給された子は要注意だぞ☆』
『廃坑の入り口は実は地図に乗ってる所以外にもあったりなかったり(ぉ』
『海の家の屋台って微妙なもの多いよね~』
『H173を打たれても早めにC120を打てば症状は緩和されます(笑)』
少なくともこの4文はあります。
H173に基本的な情報や症状についての情報が載っています。
場合によってはさらに詳しい情報が書いてある可能性もあります。
※“最後に.txt .exe ”を実行するとその付近のPC全てが爆発します。
※↑に首輪の技術が使われている可能性があります。ただしこれは沙羅の推測です。
※双葉恋太郎の銃“S&W M60 チーフスペシャル(5/5)”は暴発しました。
※港には中型クルーザーが停船していますが、エンジンは動きません。
※パソコンに情報端末をつなげるとエンジンが動くというのはあくまでも沙羅の推測です。
※図書館のパソコンにある動画ファイルは不定期配信されます。現在、『開催!!.avi』のみ存在します。
※図書館についてある程度把握しました。
※隠しフォルダの存在を知りました。実際にパソコン内にあるかどうかは書き手さんにおまかせ。
※武たちと情報交換しました。


【F-4 細かい位置は次の書き手さん任せ/1日目 日中】
佐藤良美@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:S&W M627PCカスタム(8/8)、地獄蝶々@つよきす、破邪の巫女さんセット(巫女服のみ)、ハンドアックス(長さは40cmほど)】
【所持品:支給品一式×3、S&W M36(0/5)、錐、食料・水x4、可憐のロケット@Sister Princess、タロットカード@Sister Princess、大石のデイパック、 
 S&W M627PCカスタムの予備弾53、肉まん×5@Kanon、虎玉@shuffle、ナポリタンの帽子@永遠のアセリア、日本酒x1(アルコール度数は46)、 
 工事用ダイナマイトx1、発火装置、首輪(厳島貴子)】 】
【状態:疲労中度、手首に軽い痛み、左肩に銃創(出血)重度の疑心暗鬼、巫女服の肩の辺りに赤い染み】
【思考・行動】
基本方針:確実にゲームに乗っていない者を殺す時は、バレないようにやる。 集団には無害を装って仲間になる。
     利用できそうな人間は利用し、怪しい者や足手纏い、襲ってくる人間は殺す。
1:利用できる人間を利用して優勝を目指す
2:いつか圭一と美凪を自分の手で殺してやりたい
【備考】
※メイド服はエンジェルモートは想定。現在は【F-4】に放置されています。
※ハクオロを危険人物と認識。(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※名雪の第三回放送の時に神社に居るようようにするの情報を得ました
  (禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※ネリネを危険人物と判断しました(名前のみ)
※大空寺あゆ、ことみ、亜沙のいずれも信用していません。
※対馬レオと霧夜エリカが死んだので優勝を目指すことにしました。
※良美がどっちに向かったのかは次の書き手さんに任せます。


【F-5 住宅街/1日目 日中】
【月宮あゆ@Kanon】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、】
【状態:疲労極めて大。混乱。恐怖。喉に紫の痣。左肩に抉り傷(治療済)(左腕に力が入らない)、右足に銃傷】
【思考・行動】
1:良美さん、そんな……
2:名雪さん……
3:海の家へ行く
【備考】
※佐藤良美に疑いを抱きはじめています
※古手梨花・赤坂衛の情報を得ました(名前のみ)
※ハクオロという人物を警戒(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※名雪の第三回放送の時に神社に居るようようにするの情報を得ました
  (禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※あゆの支給品は武のデイパックに入っています。
※海の家へと進路を定めました。


【G-6 倉庫/1日目 午後】
【水瀬名雪@kanon.】
【装備:槍 学校指定制服(若干の汚れと血の雫)パワーショベルカーに搭乗(運転席のガラスは全て防弾仕様)】
【所持品:支給品一式 破邪の巫女さんセット(弓矢のみ(10/10本))@D.C.P.S.、乙女と大石のメモ、乙女のデイパック】
【状態:疲労中度。出血。右目破裂(頭に包帯を巻いています)。頭蓋骨にひび。欝状態。】
【思考・行動】
1:全参加者の殺害
2:月宮あゆをこれ以上ないくらい惨いやり方で殺す
【備考】
※名雪が持っている槍は、何の変哲もないただの槍で、振り回すのは困難です(長さは約二メートル)
※第三回放送の時に神社に居るようにする(禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※古手梨花・赤坂衛の情報を得ました(名前のみ)
※ハクオロという人物を警戒(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※乙女と大石のメモは目を通していません。
※自分以外の全ての人間を殺し合いに乗った人物だと思っています。


120:サプライズド・T・アタック(中編) 投下順に読む 121:小さな、とても小さな奇跡。
120:サプライズド・T・アタック(中編) 時系列順に読む 121:小さな、とても小さな奇跡。
120:サプライズド・T・アタック(中編) 水瀬名雪 140:Lunatic snow
120:サプライズド・T・アタック(中編) 白鐘沙羅 124:信じる者、信じない者(Ⅱ)
120:サプライズド・T・アタック(中編) 月宮あゆ 128:残酷な罰が降り注ぐ
120:サプライズド・T・アタック(中編) 前原圭一 124:信じる者、信じない者(Ⅱ)
120:サプライズド・T・アタック(中編) 遠野美凪 124:信じる者、信じない者(Ⅱ)
120:サプライズド・T・アタック(中編) 倉成武 124:信じる者、信じない者(Ⅱ)
120:サプライズド・T・アタック(中編) 佐藤良美 124:信じる者、信じない者(Ⅱ)
120:サプライズド・T・アタック(中編) 咲耶






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