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星の館◆/Vb0OgMDJY


「ここが、プラネタリウム?」
「ああ、とりあえずこの中は衛と会う前に調べたから、安全なはずだ。ここで一度休憩にしよう。」
(ただ、俺が調べた後に誰も此処を訪れていないとは限らない……か)
「……ゴメンね、ボクのせいで」
「だから言ったろ、俺の足の怪我のせいだって」

 博物館での襲撃を退けた悠人と衛は新市街での物資調達の後、C-2エリアとの境界付近を通ってD-3に移動し、北の方にある施設を目指していた。
 だがその道のりは平坦なものではなかった。
 先ほどの衝撃者たちの仲間(といっても一時的に手を組んだだけの関係のようだが)は車で移動したように見せて、近くに潜んでこちらを狙っているという可能性がある上に、他の危険人物がいないとも限らない。
そして、遠距離からの狙撃という手段が存在している事を確認した為、今まで以上に慎重に移動せざるを得なかったのだ。
 そしてそれは、殺し合いという場に慣れていない衛には負担が大きく、この先の道のりを考えると、一度安全な場所(幸い目的地の一つであるレジャービルへの道のりの近くにある)であるプラネタリウムで休憩をとってから、改めて北を目指したほうが良いと悠人は考えた。
 無論、気を使われている事を察した衛は反対したが、悠人の気持ちを無碍には出来ず、二人はプラネタリウムを目指すことにした。
そうしてC-2が禁止エリアになった少し後、二人はようやくプラネタリウムに到着したのだった。


「念のため中を確認してくるから、事務室の中に隠れていてくれ」
そう言って内部へ向かった悠人を見送った後、衛はそこにあったソファーに座り込んだ。
(疲れたな……)
まず最初に考えたのはそれだった。慣れない殺し合いという場、知り合った女性、仲の良い姉妹の死、そういったものは想像以上に衛の心身を疲弊させていた。
(ボク……悠人さんに迷惑ばっかりかけちゃってるな……)
 悠人の不器用な気遣いには、衛は勿論気づいていた。そのことを嬉しく思う反面、自分が悠人の――たとえ本人は気にしていなくても――足かせになっている事はとても心苦しかった。
(もっと頑張らないといけないな……)
 そんなことを考えながら、衛の意識は安らかな眠りへと落ちていった。

――どこか、暗いのに明るい所にいた
 見たことの無い場所、初めて見るのに何故か安心できる場所。

そして、衛の視界には二度と会えない相手、遥が写っていた。

“衛ちゃん、ありがとう”
(遥あねぇ、どうしてお礼なんかいうの。ボク、遥ねぇを助けられなかったんだよ)
“ううん、私のことは衛ちゃんのせいじゃない”
(でも、ボク、孝之さんのことも見つけられなかったし、悠人さんがいなかったら、多分遥あねぇを埋めてあげることも出来なかったんだよ)
“そうじゃないの、衛ちゃんがマヤウルの贈り物をくれて、孝之さんを連れてくれるって言ってくれてからの時間は、私にとってとても幸せな時間だった。”
(遥あねぇ……)
“だから――衛ちゃん、ありがとう”
(遥あねぇ!)

 優しい微笑みだけを残して、遥の姿はもうなかった。

そしていつのまにか衛の姉妹、四葉の姿がそこにあった。

(四葉ちゃん!)
“衛ちゃん、兄チャマをお願いするデス”
(四葉ちゃん、そんなこと言わないでよ!)
“咲夜ちゃんと、千影ちゃんを導いてあげて下さい”
(皆で……あにぃの所に……帰ろうよぉ……)
“兄チャマには、ゴメンナサイと伝えて欲しいのデス”
(やだよぉ……ボク……そんなこと…………言えないよ……)
“頼みごとばかりで、申し訳ないデスが”
(頼みなんて……いくらあってもいいよ、だから……)
“衛ちゃん、どうか無事に兄チャマの所へ帰って下さい、これが四葉の最後の頼みデス”

「最後」の言葉の通り、四葉は衛の前から消えてゆく
その光景を前にして衛は子供のように泣きじゃくった。

(やだよぉ、四葉ちゃん!)
“どうか泣かないで下さい……最後って言ったのにまた頼んでしまったデスね)
(四葉ちゃーーーーん!!)

結果から言うと、プラネタリウムには何の変化も見られなかった。
どうやら、自分が探索した後、この場所を訪れた人間はいないらしい。
とりあえず安堵した悠人は衛の待つ事務室へと戻ったのだが、衛はソファーに横になって眠ってしまっていた。
起こすのもかわいそうだな、と苦笑しつつ風邪をひいてはまずいのでロッカーの中にあった制服を毛布代わりにかけて、その横で休憩がてら新市街にて手に入れた食料や医薬品の整理をしていた。
外から丸見えではまずいのでカーテンを閉め、その隙間から時たま外を監視しながら、この後の行動を考えていたら、何やら衛の様子が変だなと思い起こそうと近寄った時

「四葉ちゃーーーーん!!」
と叫びながら、眠っていた衛が跳び起きた。
 ハァハァと息を切らせながら飛び起きた衛は、少しの間キョロキョロと周りを見ていたが、やがて隣にいる悠人に目を向けた。
「アレ……悠人さん?」
「ん、ああ、目が覚めたのか衛」
 いきなり叫んだ衛に若干驚きながらも、悠人は普通に返事を返した。
「え? ……目が覚めた、ってボクもしかして眠っちゃってたの!?」
 悠人の足を引っ張らないように頑張ろう、と考えていたのだが疲労のほうはそれを許してはくれなかったようだ。

「ゴメンナサイ! 悠人さんの事ほっといて眠っちゃうなんて」
「ああ、気にするな、どうせ休憩する予定だったんだから」
 安全確認に行った悠人を待てずに眠ってしまった事を謝る衛に、悠人はそう返した。
「とりあえずこの中は何も変わっていなかった、俺が調べた後は誰も来ていないじゃないかな」
 だからここは安心だ、と続けた後、先ほどまで衛が飛び起きた事を思い出して、
「それより、なんだか急に起きたみたいだけど、どうしたんだ」
 と、尋ねた。
 そしてそれを聞いた衛は急に慌てだしたが、
「あ、そうだ! 四葉ちゃんが消えちゃ…………あ」
 と言ったきり黙りこんでしまった。

その言葉と衛の様子を見て、悠人は衛が何を考えているのかを察した。
それはかつて自分が通った道。死んでしまった大切な人達の事を悔やみ、何も出来なくなりそうな状態。あの時は自分には親友達が居た、何をおいても守りたい存在―香織が居た。それは、自分に前に進む力をくれた。
衛にも会いたいと思っている人達はいるが、今そばにはいない。
なら、「今」衛のそばに居る自分が力になってやるべきなのだろう。

そう思い、悠人は口を開いた。
「四葉……って子の夢を見たのか」
 その言葉に衛は“ビクッ”と震えたが、ややあってから返事を返した。
「……よつば…ちゃんと……はるかあねぇ……が……」
 途切れ途切れの声。
 その、今にも泣き出しそうな声を聞きながら、
「二人に……会ったのか」
 と、努めて優しい声で返した。
 その言葉に、衛は首を縦に振って肯定の意をしめし、
「…よつばちゃんが……お願い……します…って…………はるかあねぇが…………あり…が……とう……て」
 嗚咽交じりの返答をした後

「ボクっ……何も出来なかったのに!!
 二人が生きている間になにもしてあげられなかったのに!!
 それなのに!
 それ…なのに……ふたりとも……やさしい……こ…え……で」

 半ば叫びながら、半ば……泣きながら、言った。
 それで、わかった。
 いや、わかっていたことだった、
衛は優しい子だ、
優しすぎる子だ、優しすぎて自分を責めている。
 遥の願いを叶えられなかった事、死なせてしまった事。
 四葉を死なせてしまった事、自分から探しに行かなかった事。
 それらが全て自分の責任だと思ってしまっている。
 自分が何も出来なかったから、自分が遅かったから、自分が、自分が、と自らを責めてしまっている。

「……俺も、衛が居てくれて嬉しいと思っている」
だから、そう言った。
「…………え?」
「衛が、守りたいと思える相手が、そばに居るということに俺はすごく感謝している」
 自分の、彼女たちの思いを伝えるために
「衛みたいな子だから、守りたいって思う」
 自分達がどう思っているのかを
「衛みたいな子だから、遥さんや四葉ちゃんは、感謝したんだと思う」
 衛は何も悪くないと
「衛が、衛の出来ることをしていたから、衛だったから、そう思う」
 衛に伝えるために
「だから、衛には責められる事は何もないんだ」
 正直な気持ちを
「だから、泣かないでくれ、衛」
 伝えた。
「ボクは……遥あねぇを助けられなかったんだよ」
 少しして、静かな声で衛は言った。
「俺だって、助けられなかったさ」
 静かに、返した。
「……四葉ちゃんを見つけられなかったんだよ」
「俺だって、アセリアやエスペリアを見つけていない」
 事実を
「何も、出来なかったんだよ」
「少なくとも、俺は衛に助けられたぞ」
 気持ちを
「ボク、何もしてないよ」
「博物館の時のこと、忘れたのか?」
 感謝を
「迷惑かけてばかりだよ」
「俺だって、足の怪我で迷惑かけてるぞ」
 様々なものをこめて
「……遥あねぇと、四葉ちゃんは、……死んじゃったんだよ」
「それは、衛のせいじゃない」
 最後に、強い思いをこめて返した。

「遥さんも、四葉ちゃんも、その他の死んだ人も、死んだのはこのよくわからない世界のせいだ」
 強い感情をこめて話す。
「衛は出来ることをした、だから絶対に衛のせいじゃない」
 悪いのはこんなことをしている連中だと
「忘れろとは言わない、悔やんでもいい」
 衛に責められる謂れはないと
「でも、自分を責めるな」
 強く、伝えた。

「……悠人さん、有り難う」
 少ししてから、衛は言った。
「気にするな」
 と、答え
「少し、落ち着いたか?」
 と、尋ねた。
「うん」
 と、少し元気に衛は答えた後
「……四葉ちゃんに、泣かないでって頼まれたのに、泣いちゃったな」
 寂しそうに言った。
「泣き止んだんだから、いいと思うぞ」
 という悠人の言葉に
「うん、そうかもね」
 いつもよりは元気の無い、でもいつも通りのように返事をした。

「それで、これからどうするの」
「とりあえず、もう少し休憩してから、予定通り北に進もう」
 少し後、表面上はいつもの元気を取り戻した衛と悠人は、これからの事を話し合っていた。
「そういえば、さっき言っていた人達が、悠人さんの知り合いの人なの?」
 ふと、思いたった衛の質問に
「ああ、アセリアとエスペリア、大事な仲間たちだよ」
 素直に返し
「そういえば、その咲耶って子と、千影って子は友達なのか?」
 何とは無しに質問してしまった。

「ううん、咲耶ちゃんと千影ちゃん……それに四葉ちゃんは大事な姉妹だよ」
「ふーん、四人姉妹か」
「ううん、12人だよ」
「じゅっ!?」
(12人姉妹!?)
「あれ、どうしたの?」
「い、いや、何でもない」
(……深く考えないようにしよう)
 そうした。

「それから、孝之って人も見つけてあげないと」
「……遥さんの知り合いって人か」
 内心の疑惑を隠して、悠人は返した
「うん、……遥さんの事、ちゃんと伝えてあげないと」
「……そうだな」
(知らせる必要は無いかもしれないが、とりあえず本人に会うまでは保留だな)
 とりあえず、その話はここまでにして、この世界に関する重要なはなしをしようとして、

それはドアの外から聞こえてきた
 「フム、かなり大きい建物のようだな」
 「誰も、居ないのでしょうか」
その時、二人は重要な事、他に人間が訪れるかもしれないという事を忘れていたと思い出すことになった。

   ◇    ◇    ◇

遡ること数分前、禁止エリアから離れたハクオロ、観鈴、瑛理子の三人は、次の目的地であるプラネタリウムを目指していた。
そして、その道のりの間、瑛理子は予想外の収穫を得ていた。

「プラネタリウムを知らないですって?」
「ああ、どんな建物なんだ?」
「……星を見る為の施設のことだけど」
「星を? 星なら夜になれば見れるだろう」
「都会だと見れないのよ」
「あの、ハクオロさんはトゥクルス、っていう別の世界の国の王様なんだそうです。 だから」
 噛み合わない会話を補足するべく、観鈴が瑛理子に言った。
「……別の世界ですって?」
 正直、正気を疑う発言だ。
「……観鈴、私の国の名前はトゥスクルなのだが」
 だが、彼は妄言を吐くような人物ではない。
「えっ、あ、ごめんなさい」
 むしろ逆に、強い知性と理性を感じる人間だ。
「まあ、気にしなくていい。 ……次はないがな」
 そして、「王」という地位も彼にふさわしいもののように感じる。
「え? その? わ、私」
 だが、異世界と言われて即座に納得も出来ない
「はっはっはっ、冗談だ。 だがなるべく間違えないでくれるかな」
 しかし、もしも本当だとしたら。
「え、……もう!ひどいです!」
ハクオロと観鈴のやり取りを聞き流しながら、瑛理子は考え続ける。
その疑問の答えが、十数分後に出るとも知らずに。


 「フム、かなり大きい建物のようだな」
 「誰も、居ないのでしょうか」
あれから数分後、三人はプラネタリウムの中へと入った。
無論、警戒は怠ってはいないが、こちらを伺うような気配は感じられなかったので、三人で入る事にしたのだ。
「ホールみたいな広い所に隠れる人間はいないと思うけど、一応一通り見て回るべきね」
 「それから、なるべく脅かさないように進むのが良いだろうな。 我々が殺し合いをするつもりが無いということを示すために」
 それは、特に深い意味をこめて言った言葉ではなく、ただ確認事項のようなつもりだったのだが、その言葉に対して意外なところから返事が来た。

「!? 何だと!!」
 驚愕。
 誰かが居ることを期待してはいたが、まさかこんなに早く出会うとは思ってもいなかった。
 外を監視していた気配もないのに、入り口付近で待っている人間がいるとは思わなかった。
慌てて声のしたほうを見ると、そこにあるのはドア。
 いや正確に言えば、ドアの隙間からこちらに向いている銃口だった。


 後悔、まず初めに感じたのはそれだった。
 この狭い事務室の中では隠れることも出来ない。 そして、相手が機関銃などでも持っていたら、それで終わりだ。
 ならば、こちらが待ち伏せを行うしかない。
 そう思い、言葉をなくしている衛にロッカーの中に隠れるように言い、ドアの隙間から(開くときに気づかれないかは賭けだったが)相手を観察しようとしたところ
 「それから、なるべく脅かさないように進むのが良いだろうな。 我々が殺し合いをするつもりが無いということを示すために」
という声が聞こえてきた。
 その声に内心の喝采を上げながら相手を見ると、仮面をつけた男一人と悠人と同じくらいの年齢の少女が二人。(ちなみに悠人の部下に、恥ずかしがり屋で仮面を付けているスピリットがいるので、ハクオロの仮面に関してはなんとも思わなかった)
 男の方の物腰からかなりの強さを感じたことで、逆に警戒心は薄くなった。
 殺し合いをするつもりなら、強い人間と弱い人間が組むとは考えづらいからだ。
 だが、念を入れと脅しのため銃を持ち、
「それは、本当だろうな」
 と、声をかけた。

 数分後、衛を含めた5人は事務室の中で話し合っていた。
 接触時に剣呑な空気が流れたが、悠人の声にあまりにも驚いた観鈴が
「ひゃっ」
 と声を出して盛大に転んでしまい、それが悠人の警戒心をといたのだ。
(余談だが、このことで観鈴はハクオロと瑛理子からお手柄とからかわれた)
それぞれの自己紹介を終えた後、瑛理子は内心で考えていた。
(高嶺悠人ね……リストに載っている人間に続けて会えるとはね)
 言うまでもなく、ハクオロと同じくリストに載っていた人間、悠人についてだ。
(彼も信用できる人間のようね)
 衛という少女(こちらも信用できそう)を保護しており、先ほどの対応を見る限りでは中々頼りになる相手のようだ。
 などという瑛理子の思考は衛の言葉によって中断されることになった。
「鳴海孝之ですって」
 あまり愉快ではない相手の名前を聞いたからだ。
「知っているの? 瑛理子さん!」
 衛が聞いてくる
「その遥っていう子には悪いけど、あまり良い印象の相手じゃあないわよ。 四時間くらい前に博物館で別れてそれっきりね。」
 それを聞いて衛は少しショックを受けたようだった。
「そんな、……そんな近くにいたんだ」
 と弱い声で言った。
 その衛を観鈴がなぐさめる。
 が、悠人は少し考え込むと、
「その孝之って人とはいつ頃会ったんだ」
 と聞いてきた。
「……見つけたのは開始早々ぐらいね、ただ信用できる相手かわからなかったから、しばらく尾行して話したのはほんの数分」
 あまり答えたい問いではなかったが、嘘をつくわけにもいかず、どうして別れたのかの部分だけ隠して答えた。
 それを聞いて悠人は少し考えていたが、
「そうか」
 とだけ答えた後
「衛、とりあえず大体の居場所はわかったんだから、一緒に探しに行こう」
 と衛に告げた
(予想はしていたけど……)
 とその展開に内心で舌打ちをした。

その文字に驚いたようだったが、何とか返事を返してきた。
「じゃあ、孝之さんや他の探している相手を見つけたら、そっちに向かってもらうってことでいいのか」
“大丈夫なのか?”
「……ええ、そのことなんだけど、出来れば一度、そうね15時くらいには工場に来て欲しいの」
 と言った。
“首輪の現物があるから、それを調べようと思ってるの”
「……何故だ?」
「工場のあるエリア一帯はマップの端っこで、しかも二箇所からしか入れないから、籠城するにはもってこいなの」
 これは事前にハクオロと決めてあった事だ。
 守りやすいのは事実だし、工場に篭る建前にもなる。
 そして時間を区切れば、探している人間が見つかるまで来ないということはなくなる。
「……つまり俺たちは偵察隊ってところか」
「そう、だから次の放送だとさすがに時間が足りないから、その次の放送の前に、一度詳しい情報が欲しいの」
 これは保険であると共に、本音だ。
 どんな人間がいるのか、どこで誰が死んだか、そういった情報は非常に貴重だ。
 そして
「じゃあ、俺たちも大体のルートを決めておいたほうがいいな」
 悠人はその裏に秘められた意図を明確に理解して答えた。
 そう、あらかじめルートが決まっていれば、……もし悠人たちが時間に工場に来れなかったとしても、そのこと自体が情報となる。
 そう理解出来たからこそ、悠人はそう言ったのだ。

 今まで出会った中で、ハクオロと並んで頼りになりそうな相手(高校生ぐらいなのに殺し合いの場に動じていなさそう)なので、できれば同行して欲しい相手だったのだが、二人の性格的にはそうなってしまうだろう。
 そして場合によってはあの鳴海孝之を連れて合流という可能性もありうる。
 しかし二人を止められそうな材料は瑛理子にはない。
(とは言え保険ぐらいはかけておくべきね)
 と考え、
「私たちはこれからプール、レジャービルを経由して、工場に向かうつもりなの」
 と言いながら
“恐らく盗聴されているから、紙に書くけど、そこでもしかしたら、この首輪を何とか出来るかもしれない”
 そう紙に書いた。

その文字に驚いたようだったが、何とか返事を返してきた。
「じゃあ、孝之さんや他の探している相手を見つけたら、そっちに向かってもらうってことでいいのか」
“大丈夫なのか?”
「……ええ、そのことなんだけど、出来れば一度、そうね15時くらいには工場に来て欲しいの」
 と言った。
“首輪の現物があるから、それを調べようと思ってるの”
「……何故だ?」
「工場のあるエリア一帯はマップの端っこで、しかも二箇所からしか入れないから、籠城するにはもってこいなの」
 これは事前にハクオロと決めてあった事だ。
 守りやすいのは事実だし、工場に篭る建前にもなる。
 そして時間を区切れば、探している人間が見つかるまで来ないということはなくなる。
「……つまり俺たちは偵察隊ってところか」
「そう、だから次の放送だとさすがに時間が足りないから、その次の放送の前に、一度詳しい情報が欲しいの」
 これは保険であると共に、本音だ。
 どんな人間がいるのか、どこで誰が死んだか、そういった情報は非常に貴重だ。
 そして
「じゃあ、俺たちも大体のルートを決めておいたほうがいいな」
 悠人はその裏に秘められた意図を明確に理解して答えた。
 そう、あらかじめルートが決まっていれば、……もし悠人たちが時間に工場に来れなかったとしても、そのこと自体が情報となる。
 そう理解出来たからこそ、悠人はそう言ったのだ。

 筆談と会話に瑛理子は手ごたえを感じていた。
 だから、衛が筆談に参加してきたとき、起こりうる事態を完全に失念していた。
“その首輪ってどうしたの?”
 首輪がある以上死んだ人間から奪ったに決まっている、その相手をどうしたのか、不安になったのだろう。
 だから、眉唾な話ではあるが納得させるために
“エスペリアっていう
 とまで書いた瞬間
「!! エスペリアが、どうしたって!!」
 と悠人が叫ぶのを止められなかった。
(っしまっ!!)
 考えてみれば、死んだ彼女に知り合いがいる可能性は高かった。
 しかしその可能性を全く考えていなかったのだ。
 そして、会話の流れと全く関係の無い叫びが上がってしまった。
「……エスペリアは映画館で」
 とっさにハクオロが話の流れで叫んだようにつなげる。
 そしてその後を観鈴が不自然にならないように捕捉する。
 だがその間、瑛理子は生きた心地がしなかった。
 やがて、5分ほどして、最もそう感じただけで実際には二分くらいだったかもしれないが、首輪に異常がないことに安堵しながら、ふーと息を吐いた。
(ごまかせたのかしら?)
 悠人とハクオロの会話は続いている、
(それとも、全員を盗聴しているわけではないのかもしれない)
 悠人はかなりのショックを受けているようだった、
(人数が多くて正確には聞き取れないという可能性は……低いわね)
 しかし今はこの思考のほうが大事だった
(一番考えたくないけど、そもそも筆談をどうにかして見られている可能性もあるわね、でも結局は保留ね)
 そう締めくくると、瑛理子は会話に戻っていった。


 表面上は平静を取り戻した悠人に観鈴が、エスペリアの遺体が消えてしまった事を話すと、悠人からは驚くべき話が帰ってきた。
 要約するとエスペリアは別の世界の人間ではない奴隷種族で、永遠神剣とかいう剣を使い、普通の人間では軍隊でも歯が立たない力を持ち、悠人は現代日本からその神剣とやらに、異世界ファンタズマゴリアに召喚されたらしい。
 正直言ってハクオロの話以上に疑わしいのだが、エスペリアの遺体が消えてしまったのは事実だ。
 そしてそのエスペリアのものだという永遠神剣「献身」らしいものを、博物館で悠人たちを襲撃した相手が持っていたというのだ。
(……認めたくはないけど、この会場には異世界の人間がいて、異世界の不思議なアイテムがある。
つまりこの島自体が異世界って可能性もあるわけね)
 頭を抱えたくなりそうな情報だ。
 だが、同時に大きな収穫でもある。
 まず、悠人は現状でもかなり強そうだが、その神剣とやらがあれば桁違いに(悠人によれば龍さえも倒せるくらい)強くなるらしい。
 それは悠人と同じ世界のアセリアという女性も同じようだ。
 つまり、もし悠人達の剣があれば殺し合いに乗っている人間を、たやすく止められるということだ。
 そして、悠人はその神剣の力で、異世界に移動したことが(2回も)あるらしい。
 ならば、その神剣があればこの会場から脱出する事も可能かもしれない。
 しかしそれは逆に言えば
(それだけの力を持った相手ですら主催者に連れて来られた……ということね)
 という溜め息を付きたくなる結論もでてくるのだった。

その後の情報交換で
「そのカニという相手は知らないが、トウカがこのような殺し合いに乗るとは考えられない」
 といった情報や
「つまり、その大石蔵人、赤坂衛、前原圭一、古手梨花の四人はあのタカノについて何か知っているかもしれないって事か」
 という情報や
“ライフライン関係の施設は、この島の地下にあるんじゃないか”
 といった情報が交わされた後。

「君はエスペリアを殺した相手を見つけたらどうするつもりだ?」
ハクオロは悠人にそう聞いた。
「……殺すなっていいたいのか?」
 殺す、という単語に衛と観鈴がビクッとなるが、そもそも話を聞く限りでは悠人は望まない戦いであったにせよ、異世界で何人ものスピリットを殺していたらしい。ならば敵、それも憎い相手を殺しても不思議はないだろう。
「……ぶちのめして、ハリセンをくらわすぐらいの事はする。
けど、多分そいつを殺しても、エスペリアは喜ばない、だから、殺すつもりはない」
(一応な)
 それで、話は終わった

彼らは知らない、エスペリアを殺したのは、観鈴の探している相手だということを。


十数分後

「じゃあ、そっちも気をつけてな」
 五人はプラネタリウムの外にいた。
「我々よりも君たちのほうが恐らく危険は多いはずだ、くれぐれも無茶はするなよ」
 予定通り、ハクオロ、観鈴、瑛理子の三人はレジャービル、プール、廃墟郡を経由して工場へ。
「大丈夫だよ、悠人さんにはボクがついてるんだから」
 悠人と衛は映画館、学校、博物館、新市街、を通り参加者との接触や、情報を集めながら、15時までに工場へ。
「気をつけてくださいね」
 共に脱出を誓う彼らは、しばしの別れを惜しむ。
「工場に入るときも、油断しないで」
 再び彼らが再会出来るか、それは誰にもわからない。



【偵察チーム】
【D-2 プラネタリウム/1日目 午前】
【思考、行動】
基本方針:映画館、学校、神社、新市街を経由して参加者の捜索、情報収集を行いながら15時までに工場へ。ただし時間の経過によっては何箇所か立ち寄らずに、時間までに工場に着くことを優先。
思考1: 有益な情報を集める、特にタカノの事を知ると思われる4人を重視。また、可能なら鳴海孝之が持っているというノートパソコンを入手。
【備考】
※ハクオロ、観鈴、瑛理子と協力状態。
※工場にハクオロ達が居ない可能性も考慮。その場合レジャービル、プラネタリウムの順に移動。
※首輪の盗聴と、監視カメラが存在する可能性を知りました。
※禁止エリアについて学びました。(禁止エリアにいられるのは30秒のみ。最初は電子音が鳴り、後に機械音で警告を受けます。)


【高嶺悠人@永遠のアセリア -この大地の果てで-】
【装備:今日子のハリセン@永遠のアセリア】
【所持品:支給品一式×3、バニラアイス@Kanon(残り9/10)、トウカの刀@うたわれるもの、ベレッタM92F×2(9mmパラベラム弾15/15+1×2)、
予備マガジン×7、暗視ゴーグル、FN-P90の予備弾】
【状態:精神状態は表面的には普通、疲労軽程度、左太腿に軽度の負傷(処置済み・歩行には支障なし)】
【思考・行動】
基本方針1:衛を守る
基本方針2:なんとしてもファンタズマゴリアに帰還する
1:アセリアと合流
2:咲耶や千影を含む出来る限り多くの人を保護
3:ネリネをマーダーとして警戒(ただし、名前までは知らない)。また、彼女がなぜ永遠神剣第七位“献身”を持っていたのか気になって仕方が無い。
4:地下にタカノ達主催者の本拠地があるのではないかと推測。しかし、そうだとしても首輪をどうにかしないと……
5:エスペリアを殺した相手を積極的に探すつもりはない、但し出会ったら容赦するつもりはない
6:涼宮茜については遙の肉親と推測しているが、マーダーか否かについては保留。

【備考】
※バニラアイスは小型の冷凍庫に入っています。
※上着は回収しました。
※レオと詩音のディパック及び詩音のベレッタ2丁を回収しています。
※遺体を埋葬、供養したことで心の整理をつけました。
※ハクオロとの会話でトウカをマーダーでないと判断、蟹沢きぬについては保留
※エスペリアを殺した相手を殺すつもりは(一応)ない
※原作の四章、アセリアルートから連れてこられた、アセリアはハイロゥが黒く染まった(感情が無い)状態だと思っている


【衛@シスタ―プリンセス】
【装備:TVカメラ付きラジコンカー(カッターナイフ付き バッテリー残量50分/1時間)】
【所持品:支給品一式、ローラースケート、スーパーで入手した食料品、飲み物、日用品、医薬品多数】
【状態:精神状態はほぼ正常、疲労軽程度】
【思考・行動】
基本方針1:死体を発見し遙や四葉の死に遭遇したが、ゲームには乗らない。
基本方針2:あにぃに会いたい
基本方針3:悠人さんが心配
1:悠人の足手まといにならぬよう行動を共にする。
2:咲耶と千影に早く会わなきゃと思う。
3:ネリネをマーダーとして警戒(ネリネの名前までは知らない)。
4:鳴海孝之という人を悠人と共に探して遙が死んだことを伝える。
【備考】
※遙を埋葬したことで心の整理をつけました。
※瑛理子から、鳴海孝之の情報を得ました。
※TVカメラ付きラジコンカーは一般家庭用のコンセントからでも充電可能です。充電すれば何度でも使えます。
※ラジコンカーには紐でカッターナイフがくくりつけられてます。
※スーパーで入手した食料品、飲み物は二日程度補給する必要はありません。
※医薬品は包帯、傷薬、消毒液、風邪薬など、一通りそろっています。軽症であればそれなりの人数、治療は可能です。
※日用品の詳細は次の書き手さんにまかせます。



【工場探索チーム】
【D-2 プラネタリウム/1日目 午前】
【思考、行動】
基本方針1: レジャービル、プール、廃墟郡を経由して工場へ。(工場に危険があった場合、レジャービル、プラネタリウムの優先順位で移動)
基本方針2:首輪の解析をする。
1: 悠人と衛が心配
【備考】
※首輪の盗聴と、監視カメラが存在する可能性を知りました。
※禁止エリアについて学びました。(禁止エリアにいられるのは30秒のみ。最初は電子音が鳴り、後に機械音で警告を受けます。)
※博物館で悠人たちを襲撃した相手(ネリネ)の外見と、その仲間と思われる相手の乗っている車について聞きました。
※悠人から、ファンタズマゴリア、永遠神剣、スピリットについて学びました。


【ハクオロ@うたわれるもの】
【装備:Mk.22(7/8)、オボロの刀(×2)@うたわれるもの】
【所持品:支給品一式(他ランダムアイテム不明)】
【状態:精神をやや疲労】
【思考・行動】
基本方針:ゲームには乗らない
1:アルルゥをなんとしてでも見つけ出して保護する
2:仲間や同志と合流しタカノたちを倒す
3:観鈴と瑛理子を守る。
4:トウカがマーダーに間違われるようなうっかりをしていないか不安
5:悠人の思考が若干心配
【備考】
※校舎の屋上から周辺の地形を把握済み
※中庭にいた青年(双葉恋太郎)と翠髪の少女(時雨亜沙)が観鈴を狙ってやってきたマーダーかもしれないと思っています。
※放送は学校内にのみ響きました。
※銃についてすこし知りました。また、悠人達から狙撃についても聞きました。
※大石をまだ警戒しています
※目つきの悪い男(国崎往人)をマーダーとして警戒。
※観鈴からMk.22を受け取りました


【神尾観鈴@AIR】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、予備マガジン(40/40)、食料品、飲み物、日用品、医薬品多数】
【状態:健康、元気一杯】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:ハクオロと瑛理子と行動する。
2:往人と合流したい
【備考】
※校舎内の施設を把握済み
※大石に苦手意識
※ハクオロにMk.22を預けました
※映画館に自分たちの行動を記したメモをおいていきました。
※衛から食料品、飲み物、日用品、医薬品(約半分)を受け取りました。


【二見瑛理子@キミキス】
【装備:トカレフTT33 8/8+1】
【所持品:支給品一式 ブロッコリー&カリフラワー@ひぐらしのなく頃に祭 空鍋&おたまセット@SHUFFLE! ON THE STAGE】
【状態:左足首捻挫】
【思考・行動】
基本:殺し合いに乗らず、首輪解除とタカノの情報を集める。
1:ハクオロと観鈴と共に工場に向かう。
2:仮に仲間を作り、行動を共にする場合、しっかりした状況判断が出来る者、冷静な行動が出来る者などと行動したい。
3:(2の追記)ただし、鳴海孝之のように錯乱している者や、足手まといになりそうな者とは出来れば行動したくない。
4:鳴海孝之には出来れば二度と出会いたくない。

【備考】
※目つきの悪い男(国崎往人)をマーダーとして警戒。
※ハクオロと神尾観鈴の知り合いの情報を得ました。
※パソコンで挙がっていた人物は、この殺し合いで有益な力を持っているのでは?と考えています。
※観鈴とハクオロを完全に信頼しました。
※悠人と衛も基本的には信頼しています。
※首輪が爆発しなかった理由について、
1:監視体制は完全ではない
2:筆談も監視されている(方法は不明)
のどちらかだと思っています。


102:知る者、知らざる者 投下順に読む 104:来客の多い百貨店
102:知る者、知らざる者 時系列順に読む 094:瞬間、心、重ねて/さよならの囁き(前編)
086:禁止区域侵攻――/――解放軍 ハクオロ 111:完璧な間違い(前編)
086:禁止区域侵攻――/――解放軍 神尾観鈴 111:完璧な間違い(前編)
086:禁止区域侵攻――/――解放軍 二見瑛理子 111:完璧な間違い(前編)
081:博物館戦争(後編) 高嶺悠人 111:完璧な間違い(前編)
081:博物館戦争(後編) 111:完璧な間違い(前編)






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