交錯する意志 ◆guAWf4RW62


頭上を覆う梢が微風に揺れ、生い茂る葉の隙間から、網目模様の光が降り注ぐ。
極度の緊張で高まった体温を元に戻すべく、全身の表面を嫌な汗が伝う。

一ノ瀬ことみは現場に辿り着いた後、暫く動けないでいた。
前方僅か数メートルにある茂みの横で、あたかも地面に固着したかのように、人の死体が仰向けに倒れていた。
死体の頭部は無惨に粉砕されており、無事に残った部分も鮮血に塗れている。

(これは……やっぱり……)

違うと信じたかった。
目の前の現実を、全力で否定したかった。
頭部の大半が損傷した状態では、死体の身元確認など出来ぬと、そう考えたかった。

しかし、駄目だった。
脇腹に刻み込まれた傷痕も、身に纏っている服装も、ちゃんと見覚えがある。
認めなければならない。
この死体は間違い無く、自分と行動を共にした探偵、双葉恋太郎のものであると。
その身体には幾つかの銃創が見受けられるが、短時間で死に至るような物では無い。
先程の銃声と照らし合わせて考えれば、恋太郎の死因は解明出来る。
恋太郎は銃で撃たれ、行動不能に追い込まれた後に、頭部を砕かれたのだ――恐らくは、自分が芙蓉楓に手渡した大鉈によって。

ネリネの言う通り、自分達はどうしようもない程に寝惚けていたのだ。
自分が楓を撃っていれば、恋太郎は死なずに済んだだろう。
それ以前に、恋太郎一人で行かせるという愚行さえしなければ、まだ対応のしようはあった。
この殺人遊戯の場に於いて、碌な武器も伴わない単独行動がどれ位危険か、少し考えれば分かった筈だ。

……何が国家公認の天才か。
自分の覚悟が足りなかった所為で、明らかな敵である楓を殺せなかった。
楓の狂気に圧倒されてしまって、ただ震える事しか出来なかった。
自分が間抜けだった所為で、恋太郎は死んでしまった。
少し前に感じた以上の無力感と後悔が押し寄せ、計らずして瞳から涙が零れ落ちそうになる。

(駄目……此処で泣いたりしたら、恋太郎さんに叱られるの。もう亜沙さんを支えてあげられるのは私しかいない。
 早く気を落ち着かせて、戻らないと――)

油断無くイングラムM10を構えながらも、必死に涙を堪えることみ。
そして、その様子を遠巻きに観察する影が存在した。


 ◇  ◇  ◇


黄金色に輝く髪に、強い意志の光を湛えた大きな瞳、小柄な身体。
茂みに身を隠した観察者の名は、大空寺あゆ。

(あ~、ド畜生がっ! 全く何なのよ……さっきからこんな場面にばかり出くわすなんてさ)

理不尽な現実に、心の中で思い切り悪態をつく。
銃声が聞こえたからと、様子を探ろうとしたのが不味かった――自分がこのような場面を目撃するのは、これで二回目だ。
しかも前回に比べて、明らかに状況が悪い。
今前方で死体を見下ろしている女は、マシンガンの類であろう武器を片手で握り締めている。
マシンガン――それは銃弾を無尽蔵に撒き散らす、悪魔の兵器と表現するに相応しい存在。
扱う人間が熟練者かどうかなど関係無しに、吐き出される弾丸のシャワーは全てを破壊し尽くすだろう。
一応自分もS&W M10を持ってはいるものの、単発式の拳銃は素人が扱い切れるような代物では無い。
事実自分は先程の戦いに於いて、一発も銃弾を当てる事が出来なかった。
今目の前の女と交戦すれば、確実に殺されてしまう。
そして恐らく、あの女は殺し合いに乗っている。
そう考えるのが自然だ。
銃声が聞こえてきてから、まだ幾ばくも時間が経過していない。
そして自分の位置からでも、未だに死体の身体から鮮血が流れ出ているのを視認出来る。
つまり、殺されて間もないのだ。
そんな状況で死体の傍に居る者となればもう、襲撃者か、死んだ者の仲間という線しか有り得ない。
そして此処で大きな判断材料となるのが、女の携えているマシンガンだ。
あれだけ強力な武器を持っているにも関わらず、仲間を守り切れなかったという事は無いだろう。
別行動していたという可能性も考えられなくはないが、それならば仲間の死体を発見すれば驚く筈。
だというのに、女が驚愕している様子は微塵も無い。
以上の事柄を踏まえれば、あの女が犯人だと判断せざるを得ない。
今立ち尽くしているのは、人を殺してしまった罪悪感に打ちひしがれている――若しくは、圧倒的な力に酔いしれているといった所か。

とにかくこれ以上考えても、仕方が無い。
この場に留まっても百害あって一利無しだろう。
今は素早く場所を移すのが肝要だ。
あゆは物音を立てないよう注意しながら、迅速にその場から離れていった。


 ◇  ◇  ◇


広大な樹海の中で、木々の合間を一人の少女がすり抜けてゆく。
巫女装束に身を包んだ少女、佐藤良美は森を西へと進んでいた。
その目的は、人探しだ。

これまで自分が企てた目論見は、その悉くが成功を収めてきた。
強敵であった伊達スバルを打倒し、碌に役立ちそうも無い鉄乙女一派だって崩壊させた。
常日頃より優等生を演じなければならなかった自分は、人を欺く技能ならば誰にも負けはしない。
装備だって優れているし、このまま上手く立ち回ってゆけば、ゲームに優勝する事も十分可能だろう。
しかし、である。
ゲームの優勝を目標としてしまえば、対馬レオだけでなく、霧夜エリカすらも失ってしまう事になる。
それだけは極力避けたい所だ。
自分が幸せになる為には、エリカの存在が絶対に必要なのだ。

複数人での脱出を成し遂げるには、エリカや一ノ瀬ことみといった、ゲームを破壊し得る人間と合流しなければらないだろう。
身を守る為の『駒』だって必要なのだから、現状では人探しが一番の急務だ。
勿論その過程で怪しい人間や役立たずと遭遇すれば、容赦するつもりなど微塵も無いが。
集団は大規模になればなる程、内紛の可能性が増すのだから、必要最低限の人間だけが居れば良い。
力を持った者が生き、周囲の足を引っ張るだけの愚物は死ぬ――弱肉強食、それが世の摂理。
そんな事を考えながら良美が歩いていると、視界の先、一際開けた森の広場で少女――時雨亜沙――が横たわっていた。

陽光を反射して輝く翠色の長髪に、均整の取れた美しいスタイル、年齢的には自分より少し上といった所だろうか。
見た所死に至る程の傷は負っていないし、ただ眠っているだけだろう。

(う~ん、どうすれば良いかな?)

この少女に対して、どのような行動に出るべきだろうか。
殺害するだけなら、余りにも容易い。
隠し持っている錐で首を一突きしてやれば、何の問題も無く仕留められるだろう。
相手は眠っているのだから、返り血を浴びないように注意する余裕だってある。
しかし、それは上手くない。
こんな所で無防備に眠っている女が、いきなり襲撃してくるという事も無いだろうから、まずは情報を引き出すべきだ。
その後利用価値がありそうなら『駒』にして、そうでなければ排除してしまえば良い。
結論を得た良美は、眼下で寝そべる少女の肩に手を沿えた。
余計な警戒心を与えてしまわぬように優しく、規則正しいリズムで身体を揺さぶる。
だが少女が目を醒ます気配は欠片も無く、安らかな寝息が聞こえてくるばかり。

(ふーん。折角優しく起こしてあげようとしてるのに、私の好意を裏切るんだ?)

少々苛立った良美は少女の左肩――軽く血が滲み出ている傷の部分を、平手で思い切り叩いた。


 ◇  ◇  ◇


「……痛ぁっ!?」

突然左肩に激痛が奔り、少女――時雨亜沙は弾かれたように上半身を起こした。
すると目の前で見知らぬ人物が、困ったような表情を浮かべていた。
続けて亜沙は周囲を見渡してみたが、同行していた筈の双葉恋太郎やことみの姿は無い。
これは一体どういう状況なのか。
まるで見当もつかないが、まずは眼前の少女への対応が先だろう。

「え、えーっと、その………キミ、誰?」
「私は佐藤良美って言います。ご、ごめんなさい、起こそうとしたんですけど痛かったですか……?」

良美はそう言って視線を伏せ、心底申し訳なさげに大きく頭を下げた。
その様子、その口調から悪意は一切感じられない。
語尾を高く震わせ、身体を縮こまらせて謝罪する姿は、見てる側まで居た堪れなくなってくる程だ。
亜沙は慌ててぶんぶんと手を振って、苦笑いを形作った。

「あ、良いの良いの! 別にもう平気だからっ! それよりさ、近くに誰かいなかった?
 ボクの仲間の恋太郎さんや、ことみちゃんが居る筈なんだけど……」
「え――――あ、はい。私が来た時は貴女一人しか居ませんでしたよ」
「そっか……。う~ん、何処行っちゃったんだろ」

ことみという名前を出した瞬間、良美の肩がピクリと反応したが、亜沙はその事に気付かなかった。
亜沙は未だ重い疲労感の残る身体を奮い起こし、活気に満ちた笑顔を浮かべた。

「とにかく、自己紹介が遅れたね。ボクは時雨亜沙、国立バーベナ学園三年生! 得意な事は料理と値切り!
 良美ちゃん、ヨロシクねっ!」 
「よ、宜しくお願いします」

振り捲かれる溢れんばかりの元気さを受け、良美が少々気圧され気味に言葉を返す。
亜沙は良美が殺し合いに乗っているだとか、そういった可能性への懸念は抱いていなかった。
自分は無防備に眠っていたのだから、良美がその気ならば、既に殺されてしまっているだろう。
故に亜沙は、特に警戒する素振りも見せず会話を続けてゆく。

「ボクは仲間と一緒だったんだけど、今は二人共何処かに行っちゃってるみたい。良美ちゃんは一人なの?」

亜沙がそう問い掛けると、良美の顔に暗い影が落ちた。
よく見ればその瞳には、うっすらと涙が浮かんですらいる。

「私は朋也君って人と一緒に行動してたんですけど、途中で襲撃されて、その時にはぐれちゃいました……」
「――――え?」

それから良美が語った話は、驚愕に値するものだった。
良美は、ことみの探し人である岡崎朋也と同行していたが、その最中で攻撃を受けてしまった。
しかもその襲撃者――伊達スバルは良美の友人であったにも関わらず、騙まし討ちを仕掛けてきたらしい。
そして命がらがら逃げ延びはしたものの、朋也とは完全にはぐれてしまったとの事だった。

「朋也君、無事かな……。それに、伊達君はどうしてあんな事を……。
 私の態度が不味かったのかな……。私の信用が足りなくて、その所為で伊達君は襲ってきたのかな……」
「良美ちゃん……」

亜沙は沈痛な面持ちで、良美の話に耳を傾けていた。
友人に裏切られ、望まぬ命のやり取りを強要された――その境遇は、ネリネに襲われた自分と酷似している。
それがどれだけ辛い事なのか、どれだけ悲しい事なのか、痛い程理解出来る。
だからこそ亜沙は、励ますように良美の両肩を掴んだ。

「確かにそれは辛い事だと思う……でも、元気出さなきゃ駄目だよ! クヨクヨしてても何も変わらないんだからさ」
「…………」
「きっと岡崎君も無事だし、伊達君だって話せば分かってくれるよ。ボクもね、友達――ネリネちゃんに襲われちゃったんだ。
 でもボクは諦めない! ネリネちゃんともう一度話し合って、絶対に止めてみせるんだ!! だから良美ちゃんも頑張ろ?」
「亜沙さん――――そうですね、落ち込んでても何も変わりませんもんね。有り難う御座います」

良美がそう言葉を返すと、亜沙は満足げにウインクをしてみせた。
だが勿論――良美の言葉は建前上だけのもので、その内心は全く異なるものだったが。


(……何言ってるのよ、気持ち悪い。お人好しの圭一君だって、ここまで馬鹿な事は考えないんじゃないかな)

何の根拠も、知性すらも感じさせぬ、取るに足らぬ理想論。
聞いてるだけで吐き気がする。怖気が振るう。
一度襲撃してきた相手を話し合いで止めようなどと、頭のネジが外れてるとしか言いようが無い。
そのネリネという人物がどのような目的で殺し合いに乗ったかは知らないが、生半可な覚悟で知人を襲ったりはしないだろう。
話し合いでどうにかなるような状態は、とうの昔に過ぎ去ってしまっている筈なのだ。
あの前原圭一ですら、裏切り者の伊達スバルに対しては武力行使に及んだというのに、この女は――

(どうやら亜沙さんは、未だ寝惚けてるみたいだね。だったら私が、ちゃんと起こしてあげた方が良いよねえ?)

この近辺に一ノ瀬ことみが居ると分かった以上、もう亜沙に利用価値は無い。
見た感じ随分と疲弊しているようだし、このままでは足手纏いになってしまうだけだろう。
役立たずに足を引っ張られて脱出出来ませんでした、という事態は絶対に避けなければならない。
そしてことみを発見してからでは、亜沙を殺す難易度がグンと跳ね上がってしまう。
結論、この女は今すぐ此処で殺すべきだ。
良美は隠し持った錐に手を伸ばす。

「――――ッ!?」

しかしその時、がさがさという音が耳に入り、良美は攻撃を中断した。
錐を元に戻し、囁くように問い掛ける。

「亜沙さん、気付いていますか?」
「うん、向こうの方から何かが聞こえるね……」

音は亜沙の指差した先にある、深い茂みの方から聞こえてきていた。
耳を澄ますと音は未だ続いており、しかも――近付いてきている。
良美が横に視線を移すと、亜沙が緊張した面持ちでゴルフクラブを握り締めていた。

良美はポケットに忍ばせたS&W M36に手を沿えて、何時でも取り出せるような体勢になった。
亜沙を守ってやろうなどという気は微塵も無いが、自分自身の為に戦う必要があるかも知れない。
隠し持った銃を使用するのは避けたい所だが、それも状況次第では仕方があるまい。

良美は亜沙と共に、後ろ足で数メートル程後ずさった。
そうやっている間にも、音はどんどんと大きくなってゆく。
そして――茂みを切り拓いて、小柄な少女が凄まじい勢いで駆けてきた。


 ◇  ◇  ◇


「――――んあっ!?」
茂みを突っ切った少女――大空寺あゆは、良美達の存在に気付き足を止めた。
あゆの側から見ても、これは予期し得ぬ遭遇だった。
マシンガンの女から逃げている最中に、偶然出くわしたに過ぎない。
見れば良美達は二人共が警戒心を露にし、こちらに対して身構えている。
二人で行動している、そしていきなり攻撃を仕掛けてこないといった点から、恐らく殺し合いには乗っていまい。
通常時なら、情報交換の一つでも試みたい所だが――生憎今はそんな時間など無い。
何しろ一刻も早く逃げなければ、マシンガンの女が現れてしまうかも知れないのだ。

「――――どけや」
「……え?」
「え? ……じゃないわよ、すぐ近くにヤバイ奴がいんのよ! 逃げなきゃ殺されちゃうでしょうが!」

まるで事態を理解出来ていない亜沙に対し、ドスの効いた声で畳み掛けるあゆ。
迂回して逃亡するという選択肢もあったのだが、あゆはその方法を選ばない。
正しい自分が、愚かな人間達の為に遠回りするなど我慢ならなかった。

「そ、それってどういう事なの?」 
「知能の欠片も無いわね……まだゾウリムシの方が知性的よ。
 だ・か・ら! 近くにヤバイ奴が居るから、道開けろって言ってんのよ! あんた達が犬死すんのは勝手だけど、あたしまで巻き込むなや」
「ちょっと、急にそんな事言われても――――あ、ことみちゃん!」

一気に捲くし立てるあゆだったが、そこで亜沙達の視線が別方向へと移った。
あゆが目でその視線を追っていくと、そこには先程のマシンガンの女が立っていた。
それは亜沙の仲間である、そして良美の探し人でもある一ノ瀬ことみだったのだが、あゆがそのような事情を知る筈も無い。
あゆからすれば、ことみの出現は殺人鬼の来訪に他ならない。

(…………ヤバイわね)

あゆは緊張で視覚が硬直していくのを感じながらも、必死に現状を分析していた。
自分は逃亡の際S&W M10を鞄に入れてしまったから、すぐに取り出すのは不可能だ。
上手く取り出せたとしても、マシンガン相手に正面勝負ではとても勝ち目が無い。
所謂、絶体絶命的状況だった。
絶望感に打ちひしがれるあゆを余所に、亜沙が堂々と口を開く。

「も~、ことみちゃん何処行ってたの?」
「ごめんなさい……恋太郎さんを探しに行っていたの……」
「――――恋太郎さんを?」
「うん。実は……」

ことみは事の経緯を、簡潔に説明してゆく。
但し亜沙をこれ以上動揺させぬよう、楓の事については一切触れず、必要最低限の事柄しか話さなかった。
教えたのは恋太郎が一時的に単独行動を取っていた事。
神社の方角から銃声がした事と、音の出所付近で恋太郎が死んでいた事だけだ。

「そんな……恋太郎さんが…………」

ことみが話終えた後、亜沙はがくがくと膝を震わせていた。
自分が眠っている間に、状況は一変してしまっていたのだ。
命懸けで自分を救ってくれた恋太郎は、単独行動を取った挙句に殺されてしまった。
聞く所によれば頭部を破壊されていたらしいし、もうどうしようも無いだろう。
今の自分では魔力が不足しているし、そうでなかったとしても死人を蘇らすなど不可能だ。
恋太郎という存在は、永久に失われてしまったのだ。
もう二度と笑い掛けてはくれぬし、言葉を交える事も、共に生き延びる事も出来ないのだ。

眩暈がする。
現実から急速に色が失われてゆき、冷静な思考が削り取られる。
計らずして身体から力が抜け、亜沙は大きくバランスを崩した。
慌ててことみが、亜沙の身体を抱きとめる。

「亜沙さん、しっかりして!」
「ごめ……、ん……」

放っておけば倒れてしまいかねない亜沙と、それを必死に支えることみ。
そんな二人のやり取りを眺め見ながら、あゆは一つの推論を立てていた。


(自分で殺した癖に、白々しい……ウサギの皮を被ったオオカミが……)

この女――ことみと言う名前らしいが――は、殺し合いに乗ってはいるものの、正面から襲い掛かるというタイプでは無い。
素性を偽り善良なウサギの集団に取り入ってから、騙まし討ちを行おうというスタイルのようだ。
恐らく恋太郎という男は、ことみを信用し切った末に、誰も居ない場所まで誘導されて殺されたのだろう。
幾らマシンガンとは言え、集団相手では敗北する可能性もあるのだから、ことみの作戦は理に適っていると言える。
しかし――逆に、それを利用出来るのでは無いか。
正面勝負では勝ち目など無いが、集団に潜伏しての騙し合いならば十分勝機がある。
上手くことみを打倒する事が出来れば、マシンガンという最強の自衛手段が手に入る。
そして危険人物さえ排除すれば、恐らくは善良であろう仲間だって得られる。
メリットは余りにも大きい。
ならば、此処は敢えて危険に身を投じるべきだ。
先の見えぬ単独行動を続けるよりも、勝負に出た方が余程良い。
そう判断したあゆは、亜沙達の前まで歩み寄って、臆面も無く語り掛ける。

「ったく、何時までもグダグダしくさって……とにかく神社の方で、恋太郎って奴が殺されてたんでしょ? 
 だったらすぐに、もう少し離れた所まで移動した方が良いんじゃないの?」
「――――キミは?」

亜沙が弱々しい視線を、あゆの方に向ける。
今頃尋ねられた事に少々呆れながらも、あゆは自身の胸に手を当てた。

「あたしは大空寺あゆ。まあ詳しい話は、歩きながらにして貰いたいさね」
その言葉に反論する者は居ない。
あゆが信用出来るかどうかはまだ分からないが、すぐに移動すべきなのは紛れも無い事実だ。
出会ったばかりの現状で、力を合わせて仇討ちなど出来る筈も無いのだから。
ことみも、亜沙も、良美も、各々の荷物を手に行動を開始する。
もう誰も、武器を構えてはいなかった。
その様子を見て、あゆは内心でほくそ笑む。

(はっ、チョロイもんね。見てなさいよことみ、すぐアンタの化けの皮を剥がしてやんだから)

だが、あゆは知らない――ことみは殺し合いに乗っていない上、脱出の鍵と成り得る人物である事を。
あゆは気付いていない――この島で最も危険とも言える程の存在が、この集団の中に潜んでいる事を。



(……この大空寺あゆって子は、単独行動してたんだよね。そんな相手を信用なんて、出来る訳無いよね?)

良美は隠し持ったS&W M36の感触を確かめながら、これからの事について考えていた。
一ノ瀬ことみを発見出来たのは間違いなく僥倖だが、色々と余計なモノまでついてきてしまった。
ことみにも怪しい部分はあるが、ゲームを破壊し得る程の知能を持っている筈だから、それは大目に見よう。
だがことみ以外の同行者など、只の邪魔でしかない。
時雨亜沙は圭一を上回る程のお人好しであるが、とても戦力になるとは思えない。
大空寺あゆは頭の回転こそ良さそうだが、どうも何か企んでいる気がする。
船頭多くして船山に上る、という諺だってある。
必要最低限以上の人数で行動するのは、足を引っ張られる可能性を、そして裏切られる危険性を高めるだけなのだ。
何とかしなければならない。
隙を見て殺すのも良いし、適当な理由をつけて別行動させるのも良いだろう。
――さて、どうしようか。






【D-4 森/1日目 午前】

【一ノ瀬ことみ@CLANNAD】
【装備:イングラムM10(9ミリパラベラム弾17/32)】
【所持品:謎ジャム(半分消費)@Kanon、『参加者の術、魔法一覧』、四葉のデイパック】
【状態:肉体的に軽度の疲労、腹部に軽い打撲、精神的疲労大】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:亜沙を守る
2:まずは神社から離れる
3:あゆ、良美と情報交換を行う
4:楓に恐怖
5:工場に向かい爆弾の材料を入手する(但し知人の居場所に関する情報が手に入った場合は、この限りでない)
6:鷹野の居場所を突き止める
7:朋也たちが心配
8:ネリネとハクオロを強く警戒
9:ハクオロに微妙な罪悪感

※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※首輪の盗聴に気付いています
※魔法についての分析を始めました
※まだあゆと良美を信用していません


【時雨亜沙@SHUFFLE!】
【装備:無し】
【所持品:支給品一式、C120入りのアンプル×8と注射器@ひぐらしのなく頃に】
【所持品2:イングラムの予備マガジン(9ミリパラベラム弾32発)×8、ゴルフクラブ】
【状態:肉体的疲労大、精神的疲労大、魔力消費極大。左肩軽傷。ロングヘアー】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:まずは神社から離れる
2:あゆ、良美と情報交換を行う
3:ネリネを止める
4:可能ならば稟や楓と合流
5:同志を集めてタカノたちを倒す
【備考】
※良美は危険ではないと判断しました。あゆについては未知数。
※ハクオロが四葉を殺害したと思っています
※楓が恋太郎を殺したという事実に気付いていません
※C120は『雛見沢症候群』治療薬だが、健常者に使用すると10分以内に全身の発疹、発熱、瞳孔の拡大、妄想を引き起こす薬です。
症候群を抑えるには1日数回の注射が必要です。
亜沙・ことみはC120の効果を知りません。

※亜沙の回復魔法は制限を受けて以下のような感じになっています。
回復魔法の発動には、魔力と体力の両方を大きく消費する。
治す怪我が酷ければ酷いほど、亜沙の消耗は激しくなる。
命に関わるような重傷は治せない。また切り落とされる等して、失った部位も治せない。


【大空寺あゆ@君が望む永遠】
【装備:S&W M10(6/6)】
【所持品:予備弾丸17発・支給品一式・ランダム支給品x2(あゆは確認済み)】
【状態:健康】
【思考・行動】
1:まずは神社から離れる
2:良美、亜沙、ことみと情報交換を行う
3:殺人鬼であることみを倒し、イングラムM10を手に入れる
4:一応殺し合いに乗るつもりはない
【備考】
※あゆは放送の一部を聞き漏らしています。 その為禁止エリアがC-2と言う事は知らず、Cのどこかであるとしかわかっていません。
※赤坂が遥を殺したかもしれないと疑っています(赤坂と遥の名前は知りません)
※ことみが恋太郎を殺害したと判断しています
※亜沙、良美は無害であると予測していますが、今後の流れ次第ではどうなるか分かりません


【佐藤良美@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:S&W M36(5/5)、破邪の巫女さんセット(巫女服のみ)】
【所持品:支給品一式×2、S&W M36の予備弾12、錐】
【状態:軽い疲労、手首に軽い痛み、重度の疑心暗鬼】
【思考・行動】
基本方針:エリカ以外を信用するつもりは皆無、確実にゲームに乗っていない者を殺す時は、バレないようにやる
     利用できそうな人間は利用し、怪しい者や足手纏い、襲ってくる人間は殺す。最悪の場合は優勝を目指す
1:まずは神社から離れる
2:亜沙、ことみ、あゆと情報交換を行う
3:あゆと亜沙を排除したい
4:エリカを探して、ゲームの脱出方法を探る
5:『駒』として利用出来る人間を探す。優先順位は赤坂衛と相沢祐一
6:少しでも怪しい部分がある人間は殺す
7:もう少しまともな服が欲しい
【備考】
※メイド服はエンジェルモートは想定。現在は【F-4】に放置されています。
※良美の血濡れのセーラー服は【E-5】に放置されています
※芙蓉楓を危険人物と判断(名前のみ)
※ハクオロという人物を警戒(詳細は聞いていない)
※千影の姉妹の情報を得ました(名前のみ)
※名雪の第三回放送の時に神社に居るようようにするの情報を得ました
  (禁止エリアになった場合はホテル、小屋、学校、図書館、映画館の順に変化)
※ネリネを危険人物と判断しました(名前のみ)
※あゆ、ことみ、亜沙のいずれも信用していません。


097:静かな湖畔? 投下順に読む 099:CROSS††POINT
096:彼女は眠らぬ山猫の様に、深く静かに休息す 時系列順に読む 100:I do not die; cannot die
093:恋獄少女 一ノ瀬ことみ 106:太陽をつかんでしまった(前編)
093:恋獄少女 時雨亜沙 106:太陽をつかんでしまった(前編)
077:赤坂衛の受難 大空寺あゆ 106:太陽をつかんでしまった(前編)
085:Sacrifice of maiden 佐藤良美 106:太陽をつかんでしまった(前編)







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