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瞬間、心、重ねて/さよならの囁き(後編) ◆guAWf4RW62



「―――――――――っ」

風を受けて靡く水色の髪に、美しく澄み通った青い瞳。
アセリアは一心不乱に、博物館目指して駆けていた。
制限されているとは言え、スピリットであるアセリアの身体能力は常人とは桁が違う。
その優れた聴覚が、博物館の方角から聞こえてきた銃声を拾い上げたのだ。
恐らくは、アルルゥ達が何者かに襲撃されているのだろう。

体力を相当消耗してしまったが、それでも急がねばならない。
自分はまだ、あの時の気持ちが何なのか確かめていない。
アルルゥのつぶらな瞳で見つめられた時に感じたものは、一体何だったのだろうか。
アルルゥや瑞穂、蟹沢きぬと一緒に蜂の巣を食べた時、自分は何を思ったのか。
どうして戦いに関係の無い事が、こんなにも気になるのか。

「……ん、分からない」

戦う事しか知らぬ筈の自分が、初めて戦い以外に興味を持てた。
だから自分はアルルゥとまた会って、確かめねばならないのだ。
それまで誰にも、アルルゥを殺させたりはしない。

アセリアは生い茂る雑木林を抜け、新市街の一帯に足を踏み入れる。
すると大きな博物館の姿が目に入った。
周囲に点在する建物などには一瞥もくれず、博物館の中に飛び込む。
それとほぼ同時にすぐ近くから銃声が鳴り響いた。
アセリアは展示場への扉を蹴破って――大きく目を見開いた。

「ミズホ…………アル……ルゥ………?」
「アセリア……さん…………アルルゥちゃんが…………私を、庇ってっ……!」

アセリアの視線の先で、瑞穂が泣いていた。
その腕の中で、血塗れとなったアルルゥが眠るように瞳を閉じている。
まだ呼吸はしているものの、その吐息はひどく弱々しい。
そこから少し離れた所で、見知らぬ男がこちらに向けて銃を構えていた。
考えるまでも無い。
あの男――国崎往人が、アルルゥを撃ったのだ。
その事実を正しく認識した瞬間、アセリアに激しい変化が訪れた。
永遠神剣に戦いを求められた時とは比べ物にならぬ程、激しい破壊の衝動が湧き上がってくる。
この気持ちが何なのか、分からない。
だが一つだけ、分かる事がある。
目の前の男は、確実に敵なのだ――ならば、破壊の衝動を抑える必要など無い。
アセリアの視線と往人の視線が衝突した。

「……敵。それなら倒すだけ」

体格が違う。
往人とアセリアは、身長にすれば実に30センチ近い差がある。
それに加えてアセリアは、此処に来るまでの過程で体力を大幅に消耗している。
得物が違う。
一撃で人を殺し切れるコルトM1917と、何時壊れても可笑しくない鉄串では、そもそも勝負にすらならない。
起こり得るのは一方的な虐殺だけの筈だ。
だというのに。
アセリアは何の迷いも無く、眼前の死神に斬りかかった。

「……せやあああああっ!!」
「何ッ――――!?」

突風が渦巻き、展示場内の空気が振動する。
既にボロボロとなっている鉄串を手に、青い剣士が疾駆する。
余りにも現実離れした、有り得ない速度での突撃。
往人が照準を定めるよりも早く、アセリアはその懐へと潜り込んだ。
恐るべき勢いで鉄串が突き出される。
驚愕に顔を歪めた往人が必死に上体を傾けるが、遅い。
心臓目掛けて繰り出された刺突は、往人の左肩を掠めていた。

「ぐっ、ああああ……!」

アセリアは素早く鉄串を引き戻し、第二撃の準備に入る。
戻りの隙など何処にも存在しない。
圧倒的な身体能力と洗練された技術を持つアセリアは、間違いなくこの島で最速の剣士だ。
往人が銃を構えるよりも早く、それどころか呼吸をするよりも早く、アセリアの体勢は整った。
そして先の一撃が躱された以上、同じ方法で攻め続けなどしない。
刺突はその性質上、連続して攻撃を仕掛けるのは難しい。
故にアセリアは、剣を扱うかのように鉄串を振り回す。

「ハアアアァァァッ!!」
「うあっ、ぐっ、ガッ――――」

一発、二発、三発、四発――秒に満たぬ時間で繰り出された連撃は、全て往人の身体を捉えていた。
先の刺突が敵を仕留める為のものならば、今放たれた殴打は敵を弱め、後への布石とする為のもの。
たたらを踏んで後退する往人に対し、アセリアは鉄串を横凪ぎに振るう。

「……ガ、ハ――――」

胴体部を強打された往人は、後方へと大きく弾かれる。
往人の顔は激痛に歪んでおり、余裕など欠片も無いのが窺い知れる。
その機を外さず、青い影が往人に飛び掛る。
往人の横を疾風が通過するのと同時に、往人の左足に鈍痛が走った。
アセリアが目にも止まらぬ動作で、鉄串による殴打を繰り出したのだ。
続けてアセリアは横一文字に鉄串を振るったが、往人はぎりぎりのタイミングで後ろに飛び退いた。

「う……アアアアッ!!」

往人は激痛を噛み殺し、アセリアに向かって銃弾を放つ。
近距離で放たれる銃弾は、スピリットと言えど制限されている現状では回避不可能。
だがそれは、見てから躱そうとすればの話。
戦いに生きてきたアセリアが、優勢に慢心し、拳銃への警戒を怠るなど有り得ない。
往人が引き金を絞った瞬間にはもう、アセリアは横に飛び跳ねて、銃の射線から身を外していた。


「クソ……化け物めッ!」

往人は大きく間合いを取り、心底忌々しげに歯軋りした。
人外の実力を持った敵と対峙したのは、今回が初めてではない。
往人は鉄乙女と互角の戦いを繰り広げ、一度敗れたとは言えエスペリアだって倒してみせた。
その往人ですら、まるで手も足も出ない。

それ程に、アセリアは圧倒的だった。
まだ自覚していないとはいえ、流されるのではなく、己の意志で戦い始めた彼女に敵う人間など存在しない。
スピリットにはスピリットでしか対抗し得ない。
だが――余りにも得物の状態が、そして自身の体の状態が悪過ぎた。
傷付いた往人を仕留めるべく、アセリアが前傾姿勢を取った時に、それは起こった。

「え……?」

戦いの顛末を見守っていた瑞穂が、呆然と声を洩らす。
アセリアの手にしていた鉄串が、突如音も立てずに砕け散った。
度重なる苦行の所為で、とうとう鉄串の耐久力が限界を迎えたのだ。
更に、不幸は連続して訪れた。

「…………う、ッ―――」

アセリアが僅かに顔を歪め、その身体が力無く傾く。
糸が切れた操り人形のような、ガソリンが切れた自動車のような、そんな様子だった。
アセリアの変調を察知した往人は、間髪置かずに銃弾を放った。
狙いは一番面積が広い、胴体部だ。
アセリアは刹那の判断で、身体を横に半回転させた。
的を失った銃弾は、アセリアの脇腹真横を通過してゆく。
だが、その程度で往人の攻撃は終わらない。

「……食らえっ!」
「ク――――!?」

今度は続け様に二回、銃声が鳴り響いた。
今まで初めての、連続攻撃。
一発目はともかく二発目の銃弾は、軌道を見切れなかった――故に、最低限の動作で躱すのは危険過ぎる。
アセリアは懸命に地面へと転がり込んで、何とか命を繋ぐ。
明らかに余裕の無い、綱渡り的な回避だった。


(おかしい……アセリアさんに何が……?)


瑞穂の脳裏に、大きな疑問が浮かび上がる。
傍目から見ても、先程までのアセリアに比べ、大きく動きが落ちてしまっている。
一体何故――瑞穂は少し考えたが、乱れるアセリアの呼吸を見て取って、一つの答えに辿り着いた。

「アセリアさん…………まさか此処まで、一度も休まずに走ってきたの?」
「…………ん」

アセリアの返事は要領を得ないが、その頬を伝う汗が瑞穂の言葉を肯定していた。
此処に来た時点で既に、アセリアには長期戦に耐え切れる程の体力が残っていなかった。
そして一気に勝負を決めれなかった所為で、遂に体力が底をついてしまったのだ。

「……もう良いわっ! 此処は私が食い止めるから、アセリアさんだけでも逃げて!」

瑞穂がナイフを手に立ち上がり、アセリアに逃亡を促す。
これ以上仲間を死なせたくなった――たとえ自分の身を、犠牲にしてでも。
銃を持った往人に勝てる可能性など1%にも満たぬが、それでも戦うつもりだった。

「ミズホは私を……守る気?」
「ええ、そうよ――だから早く逃げて!」
「どうして、ミズホが戦う? ミズホ……スピリットじゃない」

アセリアには分からなかった。
瑞穂はどう見ても只の人間であり、高嶺悠人のようなエトランジェでは無い。
この場にはスピリットの自分がいる以上、人間が直々に戦う事など有り得ない。
少なくとも、自分が生きてきた世界ではそうだった。
しかし次の瞬間瑞穂が発した言葉は、アセリアの常識からは考えられぬような内容だった。

「スピリットだとか、人間だとかよく分からないけど……貴女は私やアルルゥちゃんの大切な仲間!
 守ろうとするのは当たり前じゃない!」
「私が……仲間……?」

そこまで言われてようやくアセリアは、自分がこれまで感じていた気持ちの正体を、少しだけ理解した。
この島の人間は、自分が元々暮らしていた世界の連中とはまるで違う。
アルルゥや瑞穂は、自分を対等な存在として、仲間として、大切にしてくれたのだ。
そんな彼女達と一緒に居ると、心が安らいだのだ。
だからこそ――アセリアは明確な意思を以って、瑞穂の言葉に抗う。

「ありがとう、ミズホ……。でも、消滅する時まで戦う……それが私だから、逃げる訳にはいかない」
「アセリアさんっ……!」

アセリアは傍に落ちていた巨大な鉄パイプ――陽平が捨てていったもの――を拾い上げた。
それは万全の状態ならばともかく、疲弊している今のアセリアでは扱い切れぬ得物だった。
試し切りと言わんばかりに数回振るったが、その速度は常人の剣戟にも劣る。

瑞穂とアセリアのやり取りを傍観していた往人が、すっとコルトM1917の銃身を持ち上げる。

「……まだやるつもりなのか。良いだろう――俺が全てを終わらせてやる」

往人の乱れていた呼吸は既に落ち着いており、銃に新たな弾丸だって装填した。
全身に鈍痛が残っているが、戦いに支障が出る程では無い。
最早往人とアセリアの戦力比は、完全に逆転していた。

対峙する二人の戦士。
巨大な鉄パイプを構えた少女と、圧倒的な死を運ぶコルトM1917により武装した男。
アセリアの残体力を考慮に入れると、次の一合が最後の戦いとなるだろう。
次の一合で仕留め切れねば、間違いなくアセリアは倒される。


――――――これが正真正銘、最後の衝突。


「ヤアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

裂帛の気合を乗せた戦叫を上げ、アセリアが前方に駆けた。
間合いを詰められる事を防ぐべく、往人がコルトM1917のトリガーを絞る。
アセリアは地面に手を付き、上体を屈めてやり過ごした。
先程まではただの一飛びで躱せていたのに、今の状態ではそれが限界なのだ。
その動きは最早スピリットのソレでは無く、普通の人間と何ら変わらぬものだった。

対する往人は、幾ら相手が疲弊しているとは言え、一撃で勝負が決めれるなどとは思っていない。
体勢の崩れたアセリアに向けて、続けざまに二発の銃弾が放たれる。

アセリアは強引に地面を蹴り飛ばし、横に飛び跳ねる事で、迫る死からどうにか身を躱した。
だが往人は残酷なまでの冷静さで、その動きを予見していた。

「――――フィニッシュだ」

無茶な動きを繰り返した所為で、次の動作に移れないアセリアに、冷たい銃口が合わされる。
銃声が鳴り響き、勝負が決すると思われたその直前。

「アセリアさん――――!」
「…………っ!?」

アセリアの身体を抱き抱えて、瑞穂が跳躍した。
そのまま瑞穂は、アセリアの手の上から鉄パイプを握り締める。

「私も戦うわっ!」
「…………ん!」

二人は疾風と化して、目の前の強敵に向け突撃する。

「何だ、と――!?」

先の一撃で勝負が決まると確信していた往人は、反応が大きく遅れてしまっていた。
たちまち瑞穂とアセリアは、往人を射程範囲内に捉えた。


「……あああああああああああああっっ!!!」
アセリアの叫び。
ようやく分かってきた――自分はアルルゥ達と一緒に居たかったのだ。
アルルゥ達と一緒にいると、心が暖かくなってくるのだ。
だから、これからは守る為に戦う。


「……このおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
瑞穂の叫び。
アルルゥはもう助からないかも知れない――けれどこれ以上、仲間を失いたくない。
自分の安全などどうでも良い。
何としてでも、残った仲間は守りきってみせる。

仲間を守りたい――今、二人の気持ちが重なった。

恐るべき勢いで、鉄パイプが横一文字に振るわれる。
往人が左腕でそれを受け止めようとしていたが、そんなものは関係無い。

往人がどれだけ強い想いを秘めていようとも、二人分の想いには敵わない――――!

「……ぐがああああああっっ!!」

鉄パイプは防御して尚、十分過ぎる程の威力を発揮した。
往人の左腕の骨は砕かれ、且つ脇腹の骨にまで罅を刻み込まれた。
そして、それ程の衝撃ならば、その場で踏み止まれる筈が無い。
往人は大きく後ろに弾かれて、地下室へと通じる階段を転げ落ちてゆく。
常人なら戦意を失うどころか、意識を手放してしまっても不思議でない程の一撃。
それでも往人は、恐るべき執念を発揮する――右手に握ったコルトM1917だけは、未だ手放していなかった。

瑞穂は僅か数秒間で、次に何を為すべきか理解した。
一瞬の判断で、地面に落ちている首輪――朝倉音夢の物――を拾い上げてから、叫ぶ。

「アセリアさん、今よ! アルルゥちゃん達を連れて逃げましょう!」
「…………ん。分かった」

今追撃を仕掛ければ往人を倒せるかも知れないが、返り討ちにされる危険性も残っている。
そしてこの戦いは、敵を殺す為ではなく、仲間を守る為のものだ。
ならば無理にリスクを犯す必要は無い。
体力を消耗しきったアセリアでも、小柄なアルルゥ程度なら何とか持ち上げられる。
アセリアはアルルゥを抱き抱え、瑞穂は茜を抱き上げて、素早く駆け出した。
まずは安全な場所に避難して、それからアルルゥの治療を試みるのだ。


    ◇     ◇     ◇     ◇


「――――ぐあ、くぅ……盛大にやられたな…………」


瑞穂達が逃亡してから五分後に、ようやく往人は階段の上まで昇って来ていた。
正直な話、瑞穂達が逃げてくれて助かった。
先程追撃を仕掛けられていたら、自分は間違いなく敗北していただろう。
銃を握り締めた右腕だけは無事だったものの、骨を砕かれた左腕はもう碌に動かせない。
階段を転がり落ちた衝撃で、身体の至る所に打撲も負っている。

それでも、休んでいる暇などありはしない。
今この瞬間も、観鈴が危険に晒されている可能性があるのだ。
一刻も早く見つけ出し、保護してやらなければならないだろう。
その道中で見つけた人間は、全員殺す。
自分がどれだけ傷付いても構わない。
どれだけこの手を汚そうとも構わない。
観鈴が罪の意識に苛まれようとも、戦い続ける。

それが自分の決意――そしてこれまで殺してきた者達への、最低限の礼儀だから。
今更後戻りは許されない。
手を取り合って生きていくなど、許容される筈が無い。
自分は最期まで修羅として在り続けるのだ。


    ◇     ◇     ◇     ◇


「アルルゥちゃん、しっかりして!」

博物館から数百メートル程離れた民家の中で、瑞穂の悲痛な声が木霊する。
ベッドの上で寝そべるアルルゥを、瑞穂とアセリアと、意識を取り戻した茜が、看取ろうとしている。
簡単な治療道具は見付かったものの、アルルゥの怪我は最早手の施しようが無い状態だった。
銃弾は、アルルゥの腹部の中央辺りを貫いていた――誰がどう見ても、致命傷だ。

「茜……お姉ちゃん…………」

アルルゥが弱々しい声で呼び掛ける。
茜はアルルゥの手を握り締める事で、その呼び掛けに応えた。

「茜お姉ちゃんとは、あまりお話出来なかったけど……。アルルゥ、茜お姉ちゃんに死んで欲しくない。
 茜お姉ちゃんが死んだら、瑞穂お姉ちゃんもきっと悲しむ。……だから、頑張って生きる」
「うん。有り難う――私、頑張るからね。たとえ泥水を啜ってでも、絶対に生き残ってやるんだから……!」

言葉を返す茜の瞳は涙で滲んでいたが、同時に強い意志の光も宿していた。
涼宮遥は死んでしまったし、鳴海孝之は狂気に飲まれてしまったが、それでも尚茜は正気を保っていた。
この島で出会った仲間達のおかげで、何とか耐え凌ぐ事が出来たのだ。
次にアルルゥは、アセリアの方へと首を動かした。

「アセっち、余り人を殺しちゃ駄目。アセっちがそんな事するのやだ」
「アルルゥ……。アルルゥは、私に人を殺さないでいて欲しいのか? 私は戦う為に生まれてきたスピリット――それでも、戦わないで欲しいのか?」
「生きてればきっと、戦い以外にもやる事見つかる。だから、戦う為だけに生きるの駄目」
「……ん、分かった。アルルゥがそう言うなら、努力してみる。クニサキユキトや敵は倒すけれど、それ以外は襲わない」

応えるアセリアの顔は相変わらずの仏頂面で、何の変化も無いようにすら見える。
だが注意して見れば、気づく事が出来るだろう――その瞳の奥底に、はっきりとした悲しみの色が宿っているのを。
それは少し前までのアセリアなら、絶対に起こり得ない変化だった。
アルルゥは最後に、瑞穂へと声を投げ掛ける。

「瑞穂、お姉ちゃん……」
「アルルゥちゃん……もうお別れ、なの……?」

瑞穂が訊ねると、アルルゥは小さく――しかし確かに頷いた。
瑞穂は大きな瞳から涙を零しながら、胸が張り裂けるような声で呟いた。

「……私、貴女に……ひっく、何もしてあげられ、ぐすっ、……なかった」
「そんな事無い。……お姉ちゃんは、アルルゥと一緒に居てくれた。エルルゥお姉ちゃんが死んじゃった時に、慰めてくれた。
 お姉ちゃんのお陰で、アルルゥ、これまで生きてこられた」
「そんな……」

瑞穂は思う――それは違うと。
自分はこれまで、アルルゥの為に何もしてあげられなかった。
アルルゥの知人は見つけられなかったし、守ってあげる事も出来なかった。
それどころか、逆に自分が守られている始末だ。
瑞穂はアルルゥの身体を抱き起こし、力の限り抱き締めた。

「アルルゥちゃん、……ひっく、ごめん、なさいっ……。私が……ひっく……もっとしっかり、していれば、こんな事には、ぐすっ……ならなかったのに……!」

憎かった――不甲斐無い自分が。
情けなかった――こんな時まで、逆に励まされている自分が。
いっその事、思い切り罵られたいくらいだった。
だというのに、アルルゥは言った。

「泣くのダメ、瑞穂お姉ちゃん……。アルルゥは瑞穂お姉ちゃんが好きだから、笑ってないとやだ」
「アルルゥ、ちゃん……」

そう言われても、瑞穂の涙が止まる事は無い。
寧ろ益々勢いを増して、瑞穂の頬を、そして胸元にいるアルルゥの顔を塗らしてゆく。
悲しみの結晶が、次々と瑞穂の瞳から零れ落ちる。

そんな時だった――突如アセリアが、凛とした声で歌い始めたのは。

「暖かく、清らかな、母なる光………すべては再生の剣より生まれ マナへと帰る」
「――アセリアさん、その歌は?」

涙で塗れた目を丸くして、茜が問い掛ける。
少なくとも茜が今まで生きてきた中では、聞いた事の無い歌だった。

「……ん。スピリット達の間に伝わる祈りの歌」

短く返事すると、アセリアは再び歌を歌い始めた。

「たとえどんな暗い道を歩むとしても……精霊光は必ず わたしたちの足元を照らしてくれる」

――瑞穂の嗚咽を伴奏として、アセリアは歌う。

「清らかな水、暖かな大地、命の炎、闇夜を照らす月……」

――綺麗な歌声が、部屋の中に染みこんでゆく。

「すべては再生の剣より生まれ マナへと帰る」

――スピリットの紡ぐ、祈りの歌。
――美しいけれど、少し悲しい歌。

「どうか私たちを導きますよう……マナの光が私たちを導きますよう……」

――その歌には、アセリアに芽生えた感情がたっぷりと籠められているから。
――きっと、アルルゥを天国まで導いてくれる。


【アルルゥ@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄 死亡】



【C-3 博物館付近 /1日目 昼】
【春原陽平@CLANNAD】
【装備:投げナイフ2本】
【所持品:支給品一式 ipod(岡崎のラップ以外にもなにか入ってるかも……?)】
【状態:肉体的には中度の疲労、精神的疲労大、混乱、激しい怯え。右手首に手錠、上はTシャツ、下はジーンズを着用】
【思考・行動】
基本:死にたくない
1:もっと離れた所まで逃げる
2:岡崎を探し出して、助けて貰いたい
3:知り合いを探す
4:国崎往人に対する極度の恐怖


【c-3 博物館 /1日目 昼】
【国崎往人@AIR】
【装備:コルトM1917(残り6/6発)】
【所持品:支給品一式×2、コルトM1917の予備弾40、木刀、たいやき(3/3)@KANNON】
【状態:精神的疲労・肉体疲労大。右腕と左膝を打撲・右手の甲に水脹れ・左腕上腕部粉砕骨折・左肩軽傷・脇腹に亀裂骨折一本・全身の至る所に打撲】
【思考・行動】
1:観鈴を探して護る
2:観鈴以外全員殺して最後に自害、説得に応じるつもりも無い
3:朝倉音夢・仮面の男(ハクオロ)・長髪の少女(二見瑛理子)・青い瞳と水色の髪の少女(アセリア)を危険人物と認識
4:状況が許せば観鈴の情報を得てから殺す



【B-3 民家 /1日目 昼】
【涼宮茜@君が望む永遠】
【装備:国崎最高ボタン、投げナイフ2本】
【所持品:支給品一式、手製の廃坑内部の地図(全体の2~3割ほど完成)、左手首に手錠】
【状態:嗚咽、腹部打撲】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:アセリア、瑞穂と共に行動する
2:諦めずに、必ず生き残る
3:鳴海さんとは二度と会いたくない
4:国崎往人を強く警戒


【アセリア@永遠のアセリア】
【装備:鉄パイプ(頑丈だがかなり重い、長さ二メートル程、太さは手で握れるくらい)】
【所持品:支給品一式 鉄串(短)x1、ひぐらし@ひぐらしのなく頃に、フカヒレのコンドーム(12/12)@つよきす-Mighty Heart-】
【状態:肉体的疲労極大。右耳損失(応急手当済み)。軽い頭痛。ガラスの破片による裂傷(応急手当済み)。殴られたことによる打撲】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない
1:仲間を守る
2:無闇に人を殺さない(但し、クニサキユキトと襲撃者は殺す)
3:ハクオロと戦う(ただし殺さない)
4:強者と戦う
5:永遠神剣を探す
6:もっと使い勝手の良い武器を手に入れる

※フカヒレのコンドーム
アレでナニをする時に使う道具。12個入り。
パッケージの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してある。
レオがエリカルートの屋上でフカヒレから手渡された思い出の品。
薄型がウリでフィット感が凄い、らしい。
※ひぐらし
雛見沢に生息するひぐらしを瓶に無理やり詰め込んだもの。
全て生きています。


【宮小路瑞穂@乙女はお姉さまに恋してる】
【装備:投げナイフ1本】
【所持品:支給品一式、フカヒレのギャルゲー@つよきす-Mighty Heart-、爆弾付きの首輪(朝倉音夢が装着させられていた物)】
【状態:号泣、中度の肉体的疲労】
【思考・行動】
基本:ゲームには乗らない。
1:まずはもう少し休憩する。
2:可能ならば博物館で蟹沢きぬを待ち、合流(挑戦するかどうか、その際の方法などは後続の書き手さん任せ)。
3:自分達の知人、アルルゥの知人を探す。
4:国崎往人を強く警戒
【備考】
※陽平には男であることを隠し続けることにしました。
※アルルゥにも男性であることは話していません。
※蟹沢きぬにも男性であることは話していません。
※アセリアにも男性であることは話していません。他の人にどうするかはお任せ
※アセリアに対する警戒は完全に消えました

※フカヒレのギャルゲー@つよきす について
プラスチックケースと中のディスクでセットです。
ケースの外側に鮫菅新一と名前が油性ペンで記してあります。
ディスクの内容は不明です。


094:瞬間、心、重ねて/さよならの囁き(前編) 投下順に読む 095:忘れていた感情
094:瞬間、心、重ねて/さよならの囁き(前編) 時系列順に読む 097:静かな湖畔?
073:陽のあたる場所(後編) 国崎往人 114:This is the Painkiller
090:無垢なる刃 アセリア 117:歩き出す
090:無垢なる刃 宮小路瑞穂 117:歩き出す
082:Crazy innocence 涼宮茜 117:歩き出す
082:Crazy innocence 春原陽平 107:たとえ、愚かな考えだとしても
090:無垢なる刃 アルルゥ






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