童貞男の孤軍奮闘 ◆/P.KoBaieg
頭のおかしい人間は何をするかわからない。
それは自分が「夢の中」にいるという勝手な理論を構築した鳴海孝之についても該当するらしい。
それは自分が「夢の中」にいるという勝手な理論を構築した鳴海孝之についても該当するらしい。
「うぁーひゃひゃひゃははははぁっ!これは夢、そう夢だから何をしてもいいんだぁ!!」
「そして俺はこの夢の世界の主!そう、支配者!!唯一神だぁぁぁぁぁぁっ!」
「だから目覚めさせる!皆を目覚めさせて最後に茜ちゃんををををををっ」
「そして俺はこの夢の世界の主!そう、支配者!!唯一神だぁぁぁぁぁぁっ!」
「だから目覚めさせる!皆を目覚めさせて最後に茜ちゃんををををををっ」
朝の新市街。
鳴海孝之は停車していたオートバイに跨り、その大通りを北上しながら大声を上げていた。
鳴海孝之は停車していたオートバイに跨り、その大通りを北上しながら大声を上げていた。
彼は爽快だった。
大通りで奇声を上げようと、盗んだバイクで走りだそうと「夢の中」ならば何をしても許される。
なんて都合のいい世界なのだろうか。
そして今、自分の手にはこの夢の世界にいる人間を発見する機械がある。
これこそ「神様が自分を応援してくれる証」に他ならない。
大通りで奇声を上げようと、盗んだバイクで走りだそうと「夢の中」ならば何をしても許される。
なんて都合のいい世界なのだろうか。
そして今、自分の手にはこの夢の世界にいる人間を発見する機械がある。
これこそ「神様が自分を応援してくれる証」に他ならない。
そう、俺は神の代理人なのだ――
有る時期の中学生が持つ、一種の万能感に酔いしれているのと同じ状態にある孝之は、既に有頂天を通り越していた。
もっとも、今の彼は壊れているのだから有頂天も何もない。
もっとも、今の彼は壊れているのだから有頂天も何もない。
(皆を「起こさせて」あげれば、最後に自分が目覚めたとき皆が俺を祝福してくれるんだなぁ。そう、遙も双樹ちゃんも!!!!)
そんな事を考えていると左手に握っている発見器に二つの反応が表示される。
「おおっ!おおおっ!反応が二つぅぅぅぅっ!なんて幸先がいいいんだぁ」
大通りを北上した先にあるのは孝之の出発地点でもある役場。
自動制御で切り替わる大通りの信号も無視し、孝之はそこを目指す。
光点の主を「起こさせて」やる為に。
自動制御で切り替わる大通りの信号も無視し、孝之はそこを目指す。
光点の主を「起こさせて」やる為に。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
一方、役場。
自分たちに迫る危機も知らず、北川潤はこの役場から移動する事としていた。
自分たちに迫る危機も知らず、北川潤はこの役場から移動する事としていた。
「よい……しょっと……」
「Zzzzzzzz……」
「Zzzzzzzz……」
肩にディパックをかけ、背中に相変わらず眠り続ける伊吹風子を背負って、北川は役場正面の扉に手をかける。
結局、この役場での収穫は少なかった。
探索して得られたものと言えば、仮眠室にギャルゲーがインストールされているらしいデスクトップと、冷蔵庫に入っていた
「ゲルルンジュース」ぐらいである。
結局、この役場での収穫は少なかった。
探索して得られたものと言えば、仮眠室にギャルゲーがインストールされているらしいデスクトップと、冷蔵庫に入っていた
「ゲルルンジュース」ぐらいである。
厳密には、他に全く何もなかったわけでもない。
しかし、今の北川にとって市長室の飾り棚にある表彰状やトロフィー、事務室のワープロや事務用品はとても価値があるとは思えなかった。
しかし、今の北川にとって市長室の飾り棚にある表彰状やトロフィー、事務室のワープロや事務用品はとても価値があるとは思えなかった。
(とりあえず、ここを出て百貨店に行くか)
2階の仮眠室に上がってから、今後どうするか風子と話して決めようとしていた北川だが、風子が完全熟睡モードに入っていた事もあり、自分だけで
考えた結果、百貨店に向かう事とした。
やはり時間が経てば腹もすくし、あのディパックの中身も気になる。
それに、新市街に自分達以外の人間しかいないのならば、あのレナという女が死んだ今なら百貨店に行けるかもしれない。
確かにレナが回収した可能性や他の参加者に回収された可能性も捨てきれない。
だが、ここにいても何も変わらないし、どうせなら空腹で動けなくなる前にどこかへ移動したほうがマシ、というのが北川の出した結論だった。
考えた結果、百貨店に向かう事とした。
やはり時間が経てば腹もすくし、あのディパックの中身も気になる。
それに、新市街に自分達以外の人間しかいないのならば、あのレナという女が死んだ今なら百貨店に行けるかもしれない。
確かにレナが回収した可能性や他の参加者に回収された可能性も捨てきれない。
だが、ここにいても何も変わらないし、どうせなら空腹で動けなくなる前にどこかへ移動したほうがマシ、というのが北川の出した結論だった。
扉を開き外に出る。
外は天気もよく、静かなものでここで殺し合いが行なわれているなんて到底信じられない。
外は天気もよく、静かなものでここで殺し合いが行なわれているなんて到底信じられない。
「ん、なんだこの音??」
丁度、北川が役場の外へ出ようとしたときの事だった。
自動車のエンジン音らしき音がこっちに近づいてくるのが聞こえる。
もしかしてタクシー?などと、冗談みたいな事を考えているうちにその音は大きくなり、役場前で止まる。
自動車のエンジン音らしき音がこっちに近づいてくるのが聞こえる。
もしかしてタクシー?などと、冗談みたいな事を考えているうちにその音は大きくなり、役場前で止まる。
どちらにしても、誰かがここに来たのは間違いない。
北川が顔をあげると、敷地外の道路に一台のバイクが停車している。
バイクにまたがっているのはスーツ姿の男……。
他にも人がいたのか。などと北川が考え、男に接触しようかと思った時、バイクに乗っていた男がこっちを見ながらディパックから何かを取り出し、嬉しそうに声をあげる。
北川が顔をあげると、敷地外の道路に一台のバイクが停車している。
バイクにまたがっているのはスーツ姿の男……。
他にも人がいたのか。などと北川が考え、男に接触しようかと思った時、バイクに乗っていた男がこっちを見ながらディパックから何かを取り出し、嬉しそうに声をあげる。
「みぃーつけたぁーあははははははははははは!」
「んのっ!?」
「んのっ!?」
男がディパックから取り出した物を見た北川は思わず声を挙げる。
その手に握られているのはチェーンソー。
それを確認し、男の顔を見てさしもの北川も悟った。
その手に握られているのはチェーンソー。
それを確認し、男の顔を見てさしもの北川も悟った。
あいつは俺達を殺す気でいる――と。
そう、男の顔は明らかに異常だった。
狂ったような笑い声とそれにふさわしい表情を浮かべ、その眼は完全にそっぽを向いている。
このままではヤバいと確信した北川は、すぐ扉を閉めると内側から鍵をかけた。
だが、バイクから降りた男はそんなもの気にする様子もなく、チェーンソーの駆動音を響かせてこちらに向かってくる。
狂ったような笑い声とそれにふさわしい表情を浮かべ、その眼は完全にそっぽを向いている。
このままではヤバいと確信した北川は、すぐ扉を閉めると内側から鍵をかけた。
だが、バイクから降りた男はそんなもの気にする様子もなく、チェーンソーの駆動音を響かせてこちらに向かってくる。
「逃げちゃダメだよぉ~。俺が皆を起こしてあげるんだからさぁ~」
「何言っているんだあいつは!」
「何言っているんだあいつは!」
男――鳴海孝之――の言葉に北川は恐怖した。
それもそうだろう、この島での出来事が夢の中というのは孝之の脳内にしか存在しない理論であり、他の人間に通用するモノではない。
ましてや、この馬鹿げたゲームに乗っていない人間にすれば孝之の発言は狂っている以外のなんでもない。
それもそうだろう、この島での出来事が夢の中というのは孝之の脳内にしか存在しない理論であり、他の人間に通用するモノではない。
ましてや、この馬鹿げたゲームに乗っていない人間にすれば孝之の発言は狂っている以外のなんでもない。
そうこうしている内に、孝之は役場の扉に近づいてくる。
北川も風子を背負ったまま役場内に後退するが、彼は完全に焦っていた。
もはや、先ほどまで風子に欲情していた空気は完全に吹き飛び、状況的には赤信号点灯といって差し支えない。
このままではあの男の持つチェーンソーで切り刻まれて終わりだろう。
北川も風子を背負ったまま役場内に後退するが、彼は完全に焦っていた。
もはや、先ほどまで風子に欲情していた空気は完全に吹き飛び、状況的には赤信号点灯といって差し支えない。
このままではあの男の持つチェーンソーで切り刻まれて終わりだろう。
(あのレナという女といい、チェーンソー持っている今の男といい、なんで俺が出会う人間にはロクなのがいないんだ!?)
ここまで出会った人間の事を考えつつ、北川は役場の奥へ奥へと後退する。
それにしても「ろくでもない人間」の中に風子を含んでないのは、彼の良心ゆえなのか。
だが、そんな事を愚痴ったところで状況が好転するわけではない。
男は扉にチェーンソーを突き立てているのだろう、先ほどから扉の向こうでチェーンソーの駆動音とともに、固いものが削られるような音が聞こえてくる。
それにしても「ろくでもない人間」の中に風子を含んでないのは、彼の良心ゆえなのか。
だが、そんな事を愚痴ったところで状況が好転するわけではない。
男は扉にチェーンソーを突き立てているのだろう、先ほどから扉の向こうでチェーンソーの駆動音とともに、固いものが削られるような音が聞こえてくる。
(一体、どうすれば?どうすればいい……そうだ、裏口から逃げればいいんだ!)
そう考えるや北川は、すぐさま裏口に向かい扉を開く。
幸い、まだ男は役場の中には侵入していない。
裏口を閉めておけば、表から侵入した男はまず役場の中を調べるはずだ、と考えた北川は風子を背負い表へ回ろうとする。
が、しかし。
裏口を閉めておけば、表から侵入した男はまず役場の中を調べるはずだ、と考えた北川は風子を背負い表へ回ろうとする。
が、しかし。
「逃がさないよぉぉぉぉぉぉぉん!」
「のわぁっ!なんでこっちから逃げようとした事がバレたんだ!?」
「のわぁっ!なんでこっちから逃げようとした事がバレたんだ!?」
甘かった。
表へ回ろうとしたら、こちらに向かってあの男がチェーンソーを手に迫ってくるではないか。
表へ回ろうとしたら、こちらに向かってあの男がチェーンソーを手に迫ってくるではないか。
ヤバい、ヤバすぎる。
なんで裏口から逃げようとしたのがバレたのかわからないが、このまま風子を背負って逃げるのは自殺行為だ。
なんで裏口から逃げようとしたのがバレたのかわからないが、このまま風子を背負って逃げるのは自殺行為だ。
北川は、心の底からこみ上げる恐怖を押さえつけながらも再び裏口に逃げ込み、鍵をかけた。
だが、その間にもチェーンソーの音がこっちに近づいてくる。
間違いなくあの男は表から侵入せず、裏口を破って自分たちを殺すと北川は確信した。
だが、その間にもチェーンソーの音がこっちに近づいてくる。
間違いなくあの男は表から侵入せず、裏口を破って自分たちを殺すと北川は確信した。
(め、滅茶苦茶マズい!このままじゃあのチェーンソーで三枚におろされてオシマイじゃないか)
(こうなったら風子を置いて……ダメだダメだ!そんなことできるか!)
(やっぱ、戦うしかないのか?だけどこっちは武器なんか持ってないぞ、どうすればいいんだ?どうすれば……)
(こうなったら風子を置いて……ダメだダメだ!そんなことできるか!)
(やっぱ、戦うしかないのか?だけどこっちは武器なんか持ってないぞ、どうすればいいんだ?どうすれば……)
裏口に通じる廊下の真ん中で、北川は焦りまくる。
しかし、ここには銃器はおろか刀剣類すらない。
チェーンソーを持った相手に対抗出来そうな武器は一つも無いのである。
表から逃げようとしても、さっきと同様に感づかれて回り込まれたらアウトだ。
裏口からは、チェーンソーで扉を切り裂く音が聞こえてくる。
しかし、ここには銃器はおろか刀剣類すらない。
チェーンソーを持った相手に対抗出来そうな武器は一つも無いのである。
表から逃げようとしても、さっきと同様に感づかれて回り込まれたらアウトだ。
裏口からは、チェーンソーで扉を切り裂く音が聞こえてくる。
もう時間が無い――。
覚悟を決めるしか無いと北川が思ったとき、廊下の片隅に置かれた「ある物」が眼に入った。
それは、この手の建物には必ず設置されている物だ。
これなら武器になるかもしれない。
そう思った北川は、風子を廊下に降ろし「それ」を手に取る。
それは、この手の建物には必ず設置されている物だ。
これなら武器になるかもしれない。
そう思った北川は、風子を廊下に降ろし「それ」を手に取る。
(もう選り好みなんてしてられるか、こうなったら一か八かだ)
北川は覚悟を決めると「それ」を手にし、そのまま裏口側に向かった。
「おおおおおおおっ!一人こっちに来るぅぅぅぅぅ!そうか、そんなに起こしてほしいんだなぁぁぁぁぁぁ」
首輪探知レーダーの光点、その一つが自分の方へ向かってくるのを確認した孝之は、嬉しそうにもう片方の手で
握っていたチェーンソーを両手で握りなおすと、裏口の扉に向かって切りつける。
握っていたチェーンソーを両手で握りなおすと、裏口の扉に向かって切りつける。
(自分からこっちに来るというのは俺が正しい事をしているという事だな!うん!!)
そんな事を考えながら、孝之がチェーンソーで扉を切り刻む内、ついに扉が音を立てて内側へ倒れる。
だが、意気揚々と乗り込んだ孝之を待っていたのは薄桃色の煙幕だった。
だが、意気揚々と乗り込んだ孝之を待っていたのは薄桃色の煙幕だった。
「うひゃあ、綺麗なピンク色だなぁ!でも、何だこりゃあぁぁぁぁぁぁ?」
煙幕の中へまともに突っ込む形になった孝之は、思わず立ち止まり周囲を見渡す。
おかげで踏み込んでから先がどうなっているのか、さっぱりわからない。
こんな時こそ、発見器の出番と孝之が首輪探知レーダーを取り出そうとした時、彼の眼前に何かが飛んでくるのが見えた。
その直後、顔面に強い衝撃を受けた孝之はそのまま床に崩れ落ちた。
おかげで踏み込んでから先がどうなっているのか、さっぱりわからない。
こんな時こそ、発見器の出番と孝之が首輪探知レーダーを取り出そうとした時、彼の眼前に何かが飛んでくるのが見えた。
その直後、顔面に強い衝撃を受けた孝之はそのまま床に崩れ落ちた。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
「どうやら当たったみたいだな。それなら今のうちに……」
孝之が床に崩れ落ちた後、自身も所々が薄桃色に汚れた北川はすぐさま風子を背負い、今度は正面の扉を開いてようやく敷地の外に脱出した。
男が追いかけてこないところからすると、とっさの反撃は成功したらしい。
今頃、あの男は床にうずくまっているか気絶しているかのどちらだろう。
男が追いかけてこないところからすると、とっさの反撃は成功したらしい。
今頃、あの男は床にうずくまっているか気絶しているかのどちらだろう。
「アレだけ重いものをぶつけたら痛いのは当たり前だよな」
北川が投げつけたもの、それは「粉末型消火器」だった。
男の侵入を前にして北川は消火器を手に取り、裏口の扉前に向かい、男が扉を破って侵入した直後に中身を放射したのである。
あの薄桃色の煙幕は消火器の中身である消化剤であり、最後に中身を放射し尽くして空になった消火器を男めがけて投げつけたのだ。
男の侵入を前にして北川は消火器を手に取り、裏口の扉前に向かい、男が扉を破って侵入した直後に中身を放射したのである。
あの薄桃色の煙幕は消火器の中身である消化剤であり、最後に中身を放射し尽くして空になった消火器を男めがけて投げつけたのだ。
チェーンソーを振り回すあの男に通用するのかどうかわからなかったが、無防備に突っ込んできてくれたおかげで成功した。
今しばらくは逃げる時間を稼げるだろう。
今しばらくは逃げる時間を稼げるだろう。
だが、北川はそのまま逃走せず、役場とは道路を挟んで向かい側にある駐車場へ向かった。
駐車場には役場の駐輪場と異なり何台も自動車が置かれており、いずれにもキーがささっている。
駐車場には役場の駐輪場と異なり何台も自動車が置かれており、いずれにもキーがささっている。
(あの男はバイクに乗ってここまで来たんだから、今走って逃げても追いつかれてオシマイだ)
そう、相手がバイクで来たなら、自分たちもそれなりの「足」を確保しないといけない。
何より、風子を背負って逃げていては、それだけ早く疲れてしまう。
何より、風子を背負って逃げていては、それだけ早く疲れてしまう。
だからこそ、北川は役場を出るや、目に付いた駐車場へ飛び込んだのだ。
彼が選んだのは駐車場の一番外に停まっていた外車だった。
左ハンドルだったが、この際右も左も無い。
鍵もついており、燃料も満タンであることを確認した北川は、風子を後部座席に押し込むと自身は運転席に乗り込んで車を発進させた。
自動車の運転など生まれてこの方した事が無かったが、案外すんなりと車は走り出した。
左ハンドルだったが、この際右も左も無い。
鍵もついており、燃料も満タンであることを確認した北川は、風子を後部座席に押し込むと自身は運転席に乗り込んで車を発進させた。
自動車の運転など生まれてこの方した事が無かったが、案外すんなりと車は走り出した。
数分後、大通りを南に下りながら北川は車の中で安心していた。
(やれやれ、なんとか逃げ切れた)
どうやら、追いかけて来る感じも無いことから完全に振り切ったらしい。
スピードを落とし、後部座席を見ると風子は寝転がったまま相変わらず寝息を立てている。
スピードを落とし、後部座席を見ると風子は寝転がったまま相変わらず寝息を立てている。
「zzzzzzzzzzz……」
「やれやれ、こっちが命がけで逃げていたというのに……」
「やれやれ、こっちが命がけで逃げていたというのに……」
その様子を見て北川は少々呆れたが、逆に寝ていてくれて助かったとも思う。
もしあの状況で起きられたらパニックになるか、あるいは状況も読めずあの男に殺されていたかもしれない。
とりあえず、このまま百貨店を目指そうと思った時、助手席側の窓ガラスが派手な音を立ててぶち破られる。
その音にビックリした北川が音のした方を見ると、そこには駆動音を立てるチェーンソーが。
そいて、顔を少し上げると――
もしあの状況で起きられたらパニックになるか、あるいは状況も読めずあの男に殺されていたかもしれない。
とりあえず、このまま百貨店を目指そうと思った時、助手席側の窓ガラスが派手な音を立ててぶち破られる。
その音にビックリした北川が音のした方を見ると、そこには駆動音を立てるチェーンソーが。
そいて、顔を少し上げると――
そこには、先ほどの男がバイクにまたがりチェーンソーを握っていた。
「な、何でお前が~っ!?」
「逃げちゃ駄目だって言っているじゃないかぁ~~~」
「逃げちゃ駄目だって言っているじゃないかぁ~~~」
額から血を流しながらも「にたぁ~」と笑う男に北川はただ、恐怖するしかなかった。
だが、チェーンソーの切っ先はまだ北川の体に届いていない。
有る意味、このときの彼には幾つかの「ツキ」があったといえる。
だが、チェーンソーの切っ先はまだ北川の体に届いていない。
有る意味、このときの彼には幾つかの「ツキ」があったといえる。
一つ目は、選んだ車が左ハンドルであった事。
もし、右ハンドルの車を選んでいたら、今頃チェーンソーは彼の体を切り刻んでいたはずだ。
もし、右ハンドルの車を選んでいたら、今頃チェーンソーは彼の体を切り刻んでいたはずだ。
二つ目は、風子を助手席に乗せず後部座席に乗せた事だ。
そのまま寝かせておけば、という気持ちで後部座席に乗せた北川だったが、助手席に座らせていれば風子がチェーンソーの餌食になったのは間違いない。
そのまま寝かせておけば、という気持ちで後部座席に乗せた北川だったが、助手席に座らせていれば風子がチェーンソーの餌食になったのは間違いない。
三つ目は、追いかけてきた男――孝之――もバイクの運転については素人だった事。
男はチェーンソーで窓ガラスをぶち割ったものの、それ以上の攻撃は仕掛けてこない。
むしろ、かなりバランスを気にしているのか、こちらとの距離を一定に保つのも一苦労みたいだ。
男はチェーンソーで窓ガラスをぶち割ったものの、それ以上の攻撃は仕掛けてこない。
むしろ、かなりバランスを気にしているのか、こちらとの距離を一定に保つのも一苦労みたいだ。
両者は併走する形が暫く続いたが、北川はすぐさまアクセルを踏み込みバイクを引き離そうとする。
しかし、孝之もすぐにバイクのスピードをあげて併走し、両者の距離は縮まらない。
幸い、直接体にダメージを与えられたわけではないものの、北川は役場の時と変わらぬ焦りを感じていた。
しかし、孝之もすぐにバイクのスピードをあげて併走し、両者の距離は縮まらない。
幸い、直接体にダメージを与えられたわけではないものの、北川は役場の時と変わらぬ焦りを感じていた。
(このままじゃ、燃料切れになったら車から引きずり出されるかしてチェーンソーでバラバラにされるのは間違いないぞ)
(まだ、燃料に余裕はあるけど一体どうすれば……おわぁ!)
(まだ、燃料に余裕はあるけど一体どうすれば……おわぁ!)
「アーヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャハハハハー!」
次の瞬間、男の声と共に耳障りな音が響く。
男がチェーンソーで車のボディーを切りつけたのだ。
チェーンソーで車を切り刻むのは至難の業だから、まだ走行に支障はないだろうけれど、今頃車の側面は酷く傷ついていることだろう。
男がチェーンソーで車のボディーを切りつけたのだ。
チェーンソーで車を切り刻むのは至難の業だから、まだ走行に支障はないだろうけれど、今頃車の側面は酷く傷ついていることだろう。
横を見ると、男は何度もバイクを車の方へ寄せてはチェーンソーで切り付け、離れるという動作を繰り返してくる。
「そっちがその気ならこっちも!」
その動きを見た北川は、車のハンドルを切るとバイクの方へ車を寄せる。
すると、バイクの男はぶつけられるのは勘弁と思ったか、車から離れていく。
北川はそのまま車を右に右にと寄せていき、男の乗ったバイクを中央分離帯と車の間に挟み込む。
あとはこのまま幅を狭めて、バイクを中央分離帯にぶつけて転倒でもさせてやれば……と、思った時北川は我が目を疑った。
すると、バイクの男はぶつけられるのは勘弁と思ったか、車から離れていく。
北川はそのまま車を右に右にと寄せていき、男の乗ったバイクを中央分離帯と車の間に挟み込む。
あとはこのまま幅を狭めて、バイクを中央分離帯にぶつけて転倒でもさせてやれば……と、思った時北川は我が目を疑った。
「きひひひひひひひ!きゃっほーーーーーっ!!」
なんと、男はバイクから自分の車の方に飛び移ってきたのだ。
ガラスの割れた助手席側のドアを足場にして車の屋根によじ登った男は、安定した足場を得られた事もあってか今まで以上の勢いでチェーンソーを振り回し、屋根に振りおろしてくる。
ガラスの割れた助手席側のドアを足場にして車の屋根によじ登った男は、安定した足場を得られた事もあってか今まで以上の勢いでチェーンソーを振り回し、屋根に振りおろしてくる。
「なんて事しやがる!?」
「zzzzzzzzz……」
「zzzzzzzzz……」
風子はこの状況下でも寝ていたが、北川はそんなことより屋根からの攻撃に対して今まで以上に焦っていた。
スピードを上げたりして振り落とそうとしてみたが、相手はそんな事などお構いナシにチェーンソーを叩きつけてくる。
スピードを上げたりして振り落とそうとしてみたが、相手はそんな事などお構いナシにチェーンソーを叩きつけてくる。
既に周囲の風景は、建物の真新しい新市街からどこか寂れた感じの場所に入り込んでいる。
どっちにしても、このまま南へ走り続ければ森に突っ込んでしまう。
とにかく、屋根の上にいる男をどうにかしないことには状況は好転しない。
どっちにしても、このまま南へ走り続ければ森に突っ込んでしまう。
とにかく、屋根の上にいる男をどうにかしないことには状況は好転しない。
その時、正面に突き当たりとなっている場所が見えた。
丁度、丁字路となっている箇所であり、このまま直進すれば壁に衝突するのは確実だ。
丁度、丁字路となっている箇所であり、このまま直進すれば壁に衝突するのは確実だ。
(いっそのこと、このまま猛スピードであの壁にぶつかってやったほうがいいのかな……)
状況が変わらぬ中で、北川は一瞬そんなことを考える。
屋根の上では相変わらず男が奇声をあげてチェーンソーを振り下ろす音が聞こえており、状況はなんら変化無い。
だがその時、北川の脳裏にあるアイデアがひらめく。
消火器を使って難を逃れたとき以上に分は悪いが、多分今の自分に出来る数少ない手段。
すぐに北川はシートベルトを締めると、アクセルを踏み込み車を加速させる。
ほぼ同時に、屋根の上から響いていた耳障りな音が止んだ。
大方、スピードを上げたので屋根の上にしがみついているのだろう。
屋根の上では相変わらず男が奇声をあげてチェーンソーを振り下ろす音が聞こえており、状況はなんら変化無い。
だがその時、北川の脳裏にあるアイデアがひらめく。
消火器を使って難を逃れたとき以上に分は悪いが、多分今の自分に出来る数少ない手段。
すぐに北川はシートベルトを締めると、アクセルを踏み込み車を加速させる。
ほぼ同時に、屋根の上から響いていた耳障りな音が止んだ。
大方、スピードを上げたので屋根の上にしがみついているのだろう。
(そうやってしがみ付いていろよ!)
北川は更にスピードをあげて、そのまま突き当たりのブロック塀に向けて車を加速させる。
周囲の風景もまた加速していき、みるみるうちにブロック塀が目の前に迫る。
周囲の風景もまた加速していき、みるみるうちにブロック塀が目の前に迫る。
そして、その距離が30メートルほどまで近づいた時――。
「これでっ!どうだぁっ!!」
北川は渾身の力を込めて一気にサイドブレーキを引く!
直後、すさまじいブレーキ音と共に車体が急激な減速と、横へ大きく振られる事による激しい揺れ、シートベルトが体に食い込む痛み、
更に何かが前に向かって投げ出され地面に叩きつけられるような音が一度に来た。
更に何かが前に向かって投げ出され地面に叩きつけられるような音が一度に来た。
北川が、腹部の痛みに耐えながら恐る恐る顔を上げると、車は正面のブロック塀から2メートルほどのところで停まっていた。
前の方を見ると、壁の近くにあの男が倒れている。
前の方を見ると、壁の近くにあの男が倒れている。
勝負はついた。
起死回生の策は成功したのだ。
起死回生の策は成功したのだ。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
車を降りた北川は、男の方へ近づいてみた。
男は完全に気絶しているらしく、まったく動く気配が無い。
しかし、消火器をぶつけられても笑っているような人間なのだから、用心に越した事は無い。
男は完全に気絶しているらしく、まったく動く気配が無い。
しかし、消火器をぶつけられても笑っているような人間なのだから、用心に越した事は無い。
男が持っていたチェーンソーを拾い上げ、更に接近する北川。
身に付けているスーツは既に男自身の血や消化剤、地面に落ちたときの土ぼこりなどで見事に汚れており、もとの小奇麗な姿はどこにもない。
近くには男が持っていたと思われるディパックが落ちており、男が眼を覚まさないうちに北川はディパックを開けて中身を確認し始めた。
身に付けているスーツは既に男自身の血や消化剤、地面に落ちたときの土ぼこりなどで見事に汚れており、もとの小奇麗な姿はどこにもない。
近くには男が持っていたと思われるディパックが落ちており、男が眼を覚まさないうちに北川はディパックを開けて中身を確認し始めた。
「どれどれ……ノートパソコンにハリセン……お、食料品があるのか。貰っておこう……げげぇっ!」
中から出てきたのは支給品一式にノートパソコン、ハリセン、更に男が振り回していたのと同じ型の電動チェーンソー、それに対応したバッテリーだった。
「まさにキ×ガイに刃物ってやつだな……。とりあえず、全部貰っておくか……」
ディパックを回収し、助手席に放りこんだ北川は再び気絶している男に近づく。
恐らく急ブレーキをかけた際に前へ放り出された時、体をぶち当てたのだろう。
正面のブロック塀には派手にヒビが走っていた。
恐らく急ブレーキをかけた際に前へ放り出された時、体をぶち当てたのだろう。
正面のブロック塀には派手にヒビが走っていた。
男の方は、頭から出血しており、体はピクピクと痙攣している。
ここまで怖い目に遭わされたのだから、いっそのこと後腐れなく殺したほうがいいんじゃないかという考えが頭に浮かんだが、それはやめた。
やはり、あのレナに追い回された時にも思ったことだったが、ゲームに乗って人を殺そうとは思わなかったからだ。
ここまで怖い目に遭わされたのだから、いっそのこと後腐れなく殺したほうがいいんじゃないかという考えが頭に浮かんだが、それはやめた。
やはり、あのレナに追い回された時にも思ったことだったが、ゲームに乗って人を殺そうとは思わなかったからだ。
(やっぱ、このまま放っておこう……)
その時、仰向けに倒れた男を見ていた北川は、男の胸ポケットにある不自然な膨らみに気が付く。
どうやら、何かを突っ込んでいるみたいだ。
そっとそれを取り出してみると、それは液晶画面に白い光点を三つ映し出している機械だった。
どうやら、何かを突っ込んでいるみたいだ。
そっとそれを取り出してみると、それは液晶画面に白い光点を三つ映し出している機械だった。
「なんだこれ?ゲーム機か?」
とりあえず、貰っておくことにした北川は今度こそ車に戻ろうとする。
すると、画面上の光点の一つが動いているのが判る。
すると、画面上の光点の一つが動いているのが判る。
「え、どういうことだ?もしかしてこれって……」
もう一度画面を見ながら男の方に近づいてみると、画面上の光点がもう一つの光点の近くに移動した。
「なるほど、人間を探知するレーダーか……これを持っていたから俺達の居場所わかったのか」
どちらにしても、これは有効な道具だ。
これがあれば他の人をもっと容易に発見できる。と思った北川は車に乗り込むと、早速百貨店を目指す事にした。
これがあれば他の人をもっと容易に発見できる。と思った北川は車に乗り込むと、早速百貨店を目指す事にした。
「これがあれば百貨店に誰かいても、すぐに分かるな」
「う~ん」
「う~ん」
すると、ずっと後部座席で眠り続けていた風子が目を覚ました。
「あ、やっと起きたか」
「北川さん、ここどこですか?ベッドじゃないですよね」
「車の中だ。お前が寝ている間大変だったんだ。これから百貨店に行くからな」
「そうですか。それなら百貨店まで風子はまた一眠りします……zzzzzz」
「やれやれ……」
「北川さん、ここどこですか?ベッドじゃないですよね」
「車の中だ。お前が寝ている間大変だったんだ。これから百貨店に行くからな」
「そうですか。それなら百貨店まで風子はまた一眠りします……zzzzzz」
「やれやれ……」
だが、なんとか危機は脱した。
そう思うと自然と気が抜け、今更になって冷や汗がでてきた。
そう思うと自然と気が抜け、今更になって冷や汗がでてきた。
【A-4 廃アパート群の一角/1日目 時間 午前】
【北川潤@Kanon】
【装備:首輪探知レーダー】
【所持品:支給品一式×2、チンゲラーメン(約3日分)、ゲルルンジュース(スチール缶入り750ml×3本)、ノートパソコン(六時間/六時間)、
ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×7】
【状態:至って健康。若干空腹。冷や汗が大量に出てきた】
【思考・行動】
1:とりあえずは百貨店に向かい、風子のディパックを回収する。
2:知り合い(相沢祐一、水瀬名雪)と信用できそうな人物の捜索。
3:PCの専門知識を持った人物に役場のPCのことを教える
4:あの娘やさっきの男を見てしまった以上、殺し合いに乗る気にはなれない……
5:鳴海孝之をマーダーと断定(名前は知らない)
【装備:首輪探知レーダー】
【所持品:支給品一式×2、チンゲラーメン(約3日分)、ゲルルンジュース(スチール缶入り750ml×3本)、ノートパソコン(六時間/六時間)、
ハリセン、バッテリー×8、電動式チェーンソー×7】
【状態:至って健康。若干空腹。冷や汗が大量に出てきた】
【思考・行動】
1:とりあえずは百貨店に向かい、風子のディパックを回収する。
2:知り合い(相沢祐一、水瀬名雪)と信用できそうな人物の捜索。
3:PCの専門知識を持った人物に役場のPCのことを教える
4:あの娘やさっきの男を見てしまった以上、殺し合いに乗る気にはなれない……
5:鳴海孝之をマーダーと断定(名前は知らない)
【備考】チンゲラーメンの具がアレかどうかは不明
チンゲラーメンを1個消費しました。
【備考】
※パソコンの新機能「微粒電磁波」は、3時間に一回で効果は3分です。一度使用すると自動的に充電タイマー発動します。
また、6時間使用しなかったからと言って、2回連続で使えるわけではありません。それと死人にも使用できます。
※チェーンソのバッテリーは、エンジンをかけっ放しで2時間は持ちます。
※首輪探知レーダーを入手しましたが、レーダーが人間そのものを探知するのか首輪を探知するのか判断がついてません。
※運転している車は外車で左ハンドル、燃料はガソリンで鍵がついています。
また、一連の戦闘で車の助手席側窓ガラスが割られ、右側面及び天井が酷く傷ついています。
チンゲラーメンを1個消費しました。
【備考】
※パソコンの新機能「微粒電磁波」は、3時間に一回で効果は3分です。一度使用すると自動的に充電タイマー発動します。
また、6時間使用しなかったからと言って、2回連続で使えるわけではありません。それと死人にも使用できます。
※チェーンソのバッテリーは、エンジンをかけっ放しで2時間は持ちます。
※首輪探知レーダーを入手しましたが、レーダーが人間そのものを探知するのか首輪を探知するのか判断がついてません。
※運転している車は外車で左ハンドル、燃料はガソリンで鍵がついています。
また、一連の戦闘で車の助手席側窓ガラスが割られ、右側面及び天井が酷く傷ついています。
【伊吹風子@CLANNAD】
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:睡眠中】
【思考・行動】
1:zzz
2:北川さん……お腹すいてます?
3:北川さんって……変態さんですか?
4:百貨店ですか……?
【備考】今のところ状況をあまり把握してません。
【装備:なし】
【所持品:なし】
【状態:睡眠中】
【思考・行動】
1:zzz
2:北川さん……お腹すいてます?
3:北川さんって……変態さんですか?
4:百貨店ですか……?
【備考】今のところ状況をあまり把握してません。
【備考】
※新市街での深夜から黎明に行われた戦闘、先ほどの戦闘については知りません。
※新市街での深夜から黎明に行われた戦闘、先ほどの戦闘については知りません。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
鳴海孝之が眼を覚ましたのは、既に北川と風子を乗せた車がその場を離れて随分時間が経過してからだった。
かなりの出血をしているにもかかわらず、ムクリと起き上がった孝之はブツブツと何か呟き始める。
かなりの出血をしているにもかかわらず、ムクリと起き上がった孝之はブツブツと何か呟き始める。
「なんで夢の中なのに思い通りにいかないんだろうなぁ?なんで夢の中なのにこんなに痛いんだろう??」
「夢の中なんだから全部思い通りになるはずなのになのになのになのになのに……」
「体中あちこち痛いのはもしかしたら夢の中だから痛いのかもしれないし、目が覚めたらどこにも怪我してないはずなんだろうしろうしろ」
「夢の中なんだから全部思い通りになるはずなのになのになのになのになのに……」
「体中あちこち痛いのはもしかしたら夢の中だから痛いのかもしれないし、目が覚めたらどこにも怪我してないはずなんだろうしろうしろ」
どうやら、夢なのに体中が激しく痛む事がおかしいと思っているみたいだった。
だが、これが夢ではなく現実であることに気づくわけではなさそうだ。
だが、これが夢ではなく現実であることに気づくわけではなさそうだ。
そんな、孝之を遠くから見つめる目があった。
「大きな音がしたから飛んできてみれば、なんだあの男は?」
孝之へ目を向けていたのは一羽のオウム――土永さん――に他ならない。
あの少女――川澄舞――を騙し、自分にふさわしい拠点を探していた彼は、大きな音が聞こえるや翼を翻してここに向かってきた。
しかし、到着してみれば音のした地点には頭から血を流した男が倒れているだけ。
そして男は起き上がったかと思えば、いきなりブツブツなにかわけの分からない事を呟いている。
とりあえず、土永さんは男の様子を観察する事とした。
あの少女――川澄舞――を騙し、自分にふさわしい拠点を探していた彼は、大きな音が聞こえるや翼を翻してここに向かってきた。
しかし、到着してみれば音のした地点には頭から血を流した男が倒れているだけ。
そして男は起き上がったかと思えば、いきなりブツブツなにかわけの分からない事を呟いている。
とりあえず、土永さんは男の様子を観察する事とした。
「せっかく目覚めさせてあげようと思ったのに、逃げられてしまったけど一度はこっちに来てくれたはずなのに何で逃げ出すんだろうなぁ」
「おかげで夢の中の神様ががんばれるようにくれた発見器もなくしてしまった。神様が神様が神様が神様が神様が神様が神様が」
「そうだ、神様にお願いして力を分けてもらえばいいんだよなぁ。神様出てきてくださいお願いしますしますすすすすす」
「おかげで夢の中の神様ががんばれるようにくれた発見器もなくしてしまった。神様が神様が神様が神様が神様が神様が神様が」
「そうだ、神様にお願いして力を分けてもらえばいいんだよなぁ。神様出てきてくださいお願いしますしますすすすすす」
神の降臨を求める孝之の姿は、土永さんの目にはあまりにも滑稽に映った。
「どうやらあの男、神の存在を盲目的に信じているみたいだな。ディパックも持ってないみたいだ。しかし、この状況で神にすがるとは……」
「だが、うまくいけば操ることができるかもしれんな。やってみるか……」
「だが、うまくいけば操ることができるかもしれんな。やってみるか……」
土永さんは、浮かんだアイデアを実行に移すべく自分のディパックを孝之の後方へそっと下ろし、自身は孝之の背後にあるブロック塀の反対側へ下りる。
『そこな人間!聞こえるか?』
「え、この声は一体誰なんだだだだだだ??」
『我輩は神である!我輩を呼んだ人間はお前か?』
「お、おおおすごい。願ってみたら本当に神様が来てくれたんだ。神様何処にいますか?どこですかーーーーー?」
『人間よ、残念ながら我輩はお前の前に姿を現すことは出来ぬ。とりあえず、そのまま話を聞くがいい』
「え、は、はいわかりましたですますすすす」
「え、この声は一体誰なんだだだだだだ??」
『我輩は神である!我輩を呼んだ人間はお前か?』
「お、おおおすごい。願ってみたら本当に神様が来てくれたんだ。神様何処にいますか?どこですかーーーーー?」
『人間よ、残念ながら我輩はお前の前に姿を現すことは出来ぬ。とりあえず、そのまま話を聞くがいい』
「え、は、はいわかりましたですますすすす」
威厳ある声のトーンは十分な威圧になったのか、孝之はその場にかしこまる。
一方、土永さんは孝之の様子こそ伺えないものの大方萎縮しているだろうと判断し、そのまま言葉を続けた。
一方、土永さんは孝之の様子こそ伺えないものの大方萎縮しているだろうと判断し、そのまま言葉を続けた。
『ところで人間、我輩を呼んだからには理由があるのだろうな?』
「神様がせっかくくれた力がなくなってしまいました。だから、神様に新しい力を貰おうと思いましたましたました」
『(貰った力?一体何の事だ?まあいい)と、とりあえず我輩はお前に使命を与えるために来た。よく聞け人間、お前はこれから神の敵を倒すのだ』
「か、神様の敵っていうことは、この夢の世界で俺から逃げ回っている奴らのことですよねぇ。だれなんですか?」
『(夢?この男はこの世界を夢と思い込んでいるのか)今から我輩の言う名前を頭に覚えるのだ。今から我輩の言う者は、神にそむいた者どもだ』
「そ、そいつらを起こしてやれば、新しい力をくれるんですかかかかかか」
『まぁ、そういうことだ(せいぜい我輩のために働いてくれ、人間よ)』
「で、だれです。誰なんですかそいつらは?」
「神様がせっかくくれた力がなくなってしまいました。だから、神様に新しい力を貰おうと思いましたましたました」
『(貰った力?一体何の事だ?まあいい)と、とりあえず我輩はお前に使命を与えるために来た。よく聞け人間、お前はこれから神の敵を倒すのだ』
「か、神様の敵っていうことは、この夢の世界で俺から逃げ回っている奴らのことですよねぇ。だれなんですか?」
『(夢?この男はこの世界を夢と思い込んでいるのか)今から我輩の言う名前を頭に覚えるのだ。今から我輩の言う者は、神にそむいた者どもだ』
「そ、そいつらを起こしてやれば、新しい力をくれるんですかかかかかか」
『まぁ、そういうことだ(せいぜい我輩のために働いてくれ、人間よ)』
「で、だれです。誰なんですかそいつらは?」
ここまで上手くいくとは思わなかった土永さんは、放送で死亡が確認されたレオを除く生徒会メンバーの名前を口にした。
それを聞いた孝之は言われた名前を暗記しようとブツブツ呟き始めた。
それを聞いた孝之は言われた名前を暗記しようとブツブツ呟き始めた。
『……以上が我輩に敵対する者どもだ。真っ先に探し出して殺せ!』
「こっこっこっ、殺すなら他にも何してもいいんですか?夢の中ですから切り刻んでも犯してもいいですよねねねねねねねえ?」
『うむ、あるいはな(我輩は殺すだけでいいのだが、あとはこの男の好きにさせてもよかろう)』
「イィィィヤァァァァァァッホォォォォォォッ!!神様のお墨付きだぁぁぁぁぁっ!」
(強力な武器を持っている様子は無いが、これほどまで操り易い人間も珍しい。せいぜい操る事にするか)
「こっこっこっ、殺すなら他にも何してもいいんですか?夢の中ですから切り刻んでも犯してもいいですよねねねねねねねえ?」
『うむ、あるいはな(我輩は殺すだけでいいのだが、あとはこの男の好きにさせてもよかろう)』
「イィィィヤァァァァァァッホォォォォォォッ!!神様のお墨付きだぁぁぁぁぁっ!」
(強力な武器を持っている様子は無いが、これほどまで操り易い人間も珍しい。せいぜい操る事にするか)
自分は人間の様に銃を使うことは出来ないが、この男は銃を使うことが出来る。
しかも、先ほどの少女と異なり圧倒的に操り易い。
それならば、この男を裏から操り生徒会のメンバーを始末する『駒』にすればいい。
使えなくなれば捨てるだけのこと……。
しかも、先ほどの少女と異なり圧倒的に操り易い。
それならば、この男を裏から操り生徒会のメンバーを始末する『駒』にすればいい。
使えなくなれば捨てるだけのこと……。
だが、武器が無くては一人も殺せないだろう。
なればこそ、少々惜しい気もするがあのディパックをくれてやることとした。
なればこそ、少々惜しい気もするがあのディパックをくれてやることとした。
『そんなお前の為に、少しばかり力を与えてやろう。後ろを見るがいい!!』
「え、後ろ後ろ……あ、ディパックだ!なくしたと思ったらこんなところに!」
『我輩の力で、お前の為に一つ用意してやったのだ!ありがたく思うがいい(ボイスレコーダーは少々惜しいが、あのナイフは我輩には使いづらいからな)』
「へへ~~~~、ありがたきしあわせで御座いますうえへへへへへへへ~~~」
「え、後ろ後ろ……あ、ディパックだ!なくしたと思ったらこんなところに!」
『我輩の力で、お前の為に一つ用意してやったのだ!ありがたく思うがいい(ボイスレコーダーは少々惜しいが、あのナイフは我輩には使いづらいからな)』
「へへ~~~~、ありがたきしあわせで御座いますうえへへへへへへへ~~~」
目の前のディパックに飛びついた孝之は、さっそくディパックを開き中身を確認する。
「チェーンソーは入ってないのかぁ、神様も同じもの用意してくれればいいのになぁああああああぁぁぁ」
「そして、武器は……ナイフの刃が一本かぁ……。あとは、テープレコーダーか?これ?」
「そして、武器は……ナイフの刃が一本かぁ……。あとは、テープレコーダーか?これ?」
孝之がディパックを物色しているのを聞きながら、土永さんは今後について考えはじめた。
(これで、あの男は完全に掌握したと考えてもいいだろう。後は影から奴を操って我輩の事を知る人間を始末させればいい)
「あとはこの棒付きキャンデーかぁ、レロレロ……チュバチュバ……」
(エリカについてはあの小僧次第、ならばこの男に殺させるべきは……)
「あとはこの棒付きキャンデーかぁ、レロレロ……チュバチュバ……」
(エリカについてはあの小僧次第、ならばこの男に殺させるべきは……)
まだ健在であろう生徒会メンバーの顔を思い出し、最初に狙わせる標的を誰にするか考え――。
(出来れば我輩でも十分使える武器が欲しい。そう、爆弾でなくても容易に持ち運びが出来て、食糧に混ぜられる毒物みたいな物を……)
「だけど、このナイフの刃はやっぱりいらないなぁ……神様には悪いけど捨てちゃおうかなぁ~……」
(この男の武器については途中で落ちているものもあるだろう。そこへ上手く誘導してやればいい)
「だけど、このナイフの刃はやっぱりいらないなぁ……神様には悪いけど捨てちゃおうかなぁ~……」
(この男の武器については途中で落ちているものもあるだろう。そこへ上手く誘導してやればいい)
自らに向いた武器について考え、孝之の武器についても思案する――。
(とりあえず、あの男がここを離れたら我輩も場所を移すか)
「うん!もったいないけど捨てちゃおうか!そうしよう!」
「うん!もったいないけど捨てちゃおうか!そうしよう!」
だからこそ気づかない。孝之が本当に狂っている事にも、予想のつかない行動に出る事も――。
(さっさと、この男を移動させて我輩は上から様子を見る事にしよう)
「こんなモノは、こうだぁぁぁ~~~っ!そ~れっ!」
「こんなモノは、こうだぁぁぁ~~~っ!そ~れっ!」
ぽいっ
そして、孝之がナイフの刃先をブロック塀の「向こう側」に放り投げた事にすら――。
(む、一体何をしたのだ。あの男……? なっ!!!)
土永さんが上を向いたところ、孝之が放り投げたナイフの刃先が一直線に自分へ向かって落下してくるのが見えた。
そして――――。
さくっ
(…………あ、危なかった…………)
ナイフの刃先は土永さんから十数センチずれた地面に突き刺さった。
(あと少しずれていたら我輩はあのナイフで串刺しにされていた……。もしかしてあの男、我輩の居場所が分かったのか?)
(まさか!?いや、先ほどの正確さからして狙ったとしか思えん。それとも我輩の正体に気が付いているのか?)
(まさか!?いや、先ほどの正確さからして狙ったとしか思えん。それとも我輩の正体に気が付いているのか?)
自分を狙ったとしか思えないナイフの軌道を前に、土永さんは孝之へ一種の恐怖じみたものを感じる。
一方、そんな事は何処吹く風な孝之はディパックの中身確認が終わったのか、神の啓示の続きがないのを気にし始めた。
一方、そんな事は何処吹く風な孝之はディパックの中身確認が終わったのか、神の啓示の続きがないのを気にし始めた。
「あれ?神様の声が途絶えたんだけど帰っちゃったのかなぁ神様?それとも神様が起きちゃいましたかかかかか~」
『馬鹿者ぉっ!危なかったではないかーーーッ!』
「神様があぶないぃって、何がでしたかぁ?あ、もしかしてさっき投げたナイフの刃がプスーって刺さってしまいそうだったとか?わはははははははぁひゃあぁぁ」
『(おわ、思わず口が滑った!しかし、なんて鋭い奴!いかんいかん!)い、今のは間違いだ!せっかく我輩がくれてやったものを!勿体ないではないかぁっ!』
「え~~~、だけどあんなものじゃ神様の敵も殺されないじゃないですかぁ~。もっといいもの恵んでくださいよぉぉぉぉぉぉ」
『馬鹿者ぉっ!危なかったではないかーーーッ!』
「神様があぶないぃって、何がでしたかぁ?あ、もしかしてさっき投げたナイフの刃がプスーって刺さってしまいそうだったとか?わはははははははぁひゃあぁぁ」
『(おわ、思わず口が滑った!しかし、なんて鋭い奴!いかんいかん!)い、今のは間違いだ!せっかく我輩がくれてやったものを!勿体ないではないかぁっ!』
「え~~~、だけどあんなものじゃ神様の敵も殺されないじゃないですかぁ~。もっといいもの恵んでくださいよぉぉぉぉぉぉ」
どう考えても神をなめているとしか思えない物言いをする孝之。
もっとも、ナイフの刃先で先ほど名前が挙がった面子を全員殺すのは不可能に近いのだが……。
もっとも、ナイフの刃先で先ほど名前が挙がった面子を全員殺すのは不可能に近いのだが……。
(我輩のディパックをくれてやったのに、なんて奴……。だが、ここでこの男を手放すのは惜しい……まてよ、あそこなら)
『そ、それならこの近くに色々物が置かれた空き地が有る。そこに使えるものがあるはずだ。そこに行け』
『そ、それならこの近くに色々物が置かれた空き地が有る。そこに使えるものがあるはずだ。そこに行け』
孝之の態度に立腹しながらも、きっちりここまで飛んできた途中で見つけた空き地の事を教えてやる土永さん。
どうやら神様役にご満悦らしい。
それを聞いた孝之はディパックを手に立ち上がり、空き地を目指す。
どうやら神様役にご満悦らしい。
それを聞いた孝之はディパックを手に立ち上がり、空き地を目指す。
「な~んだぁぁぁぁぁ、神様もちゃんと武器のある場所知っているじゃないですかぁぁぁぁ~」
既に相当出血しているはずなのに、平然と空き地に向かって歩いていく孝之。
一定間隔を空けて後を追う土永さんはそんな孝之に驚愕する。
一定間隔を空けて後を追う土永さんはそんな孝之に驚愕する。
(あ、あれだけすさまじい怪我をしていながら、平然と歩けるとはなんという男だ!)
(しかも、勘も鋭いときた……単に信心深いだけの人間ではないみたいだな……)
(しかも、勘も鋭いときた……単に信心深いだけの人間ではないみたいだな……)
完全に鳴海孝之という人間を勘違いしている土永さん。
そうこうしているうちに孝之は、解体用の機材や工具が置かれている空き地にたどり着いた。
そうこうしているうちに孝之は、解体用の機材や工具が置かれている空き地にたどり着いた。
「色々あるなぁ~えへぇへへへへへへへへ~。あ、チェーンソーもあればいいけどなぁ~」
「あ、これよさそうだなぁ~。うへへへへへへへ~」
「あ、これよさそうだなぁ~。うへへへへへへへ~」
得物を物色していた孝之は、工具の中から長柄の大型ハンマーを引っ張り出す。
「じゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃじゃ~~んん!ハンマハンマ~~~~~~~ッ!」
(あの男、早速武器をみつけたか。確かにあのハンマーは我輩では扱えないな)
(あの男、早速武器をみつけたか。確かにあのハンマーは我輩では扱えないな)
嬉しそうに新たな得物を振り回して、そこらじゅうの機材をぶっ叩いてみせる孝之。
その様子を物陰から伺う土永さん。
その様子を物陰から伺う土永さん。
「でもこれだけじゃ足りないなぁ~、そうだ。もっと集めておこう!うん!そうすれば起こし方にも種類が増えて楽しいよな!」
(む、まだ新たに武器を得るつもりか……)
(む、まだ新たに武器を得るつもりか……)
新たな得物に満足した孝之は自作の歌を口ずさみながら、ディパックへ次々に武器となるものを突っ込んでいく。
「寝ている子はハンマーで潰してミンチだよ~♪つっつっツルハシで串刺しさ~♪斧でザクザク刻みましょ~ぉぉぉぉうぉっ!」
「レザ~ソ~で首チョンパ~、鮮血噴き出し噴水だ~♪フックをどてっぱらに突き刺して~♪木の上からつるそうよ~♪」
「最後はグッチャグッチャに混ぜ合わせてハンバ~クのできあがり~♪」
「レザ~ソ~で首チョンパ~、鮮血噴き出し噴水だ~♪フックをどてっぱらに突き刺して~♪木の上からつるそうよ~♪」
「最後はグッチャグッチャに混ぜ合わせてハンバ~クのできあがり~♪」
ディパックへお目当ての得物を全てつぎ込んだ孝之は再び、神の啓示を聞こうとする。
「神様神様カミサマ、武器が新しく手に入りましたことを感謝しますですぅぅ」
『うむ、感謝するがよいぞ』
「ところで神様、こいつらの中で真っ先に殺すのは誰からですかぁ~」
『(そうだな……先ほども思ったが、エリカについてはあの小僧次第だからこの男には……)お前が殺すべきはその中の佐藤良美という女だ!』
「へぇ~、佐藤良美かぁ……平凡な苗字だなぁ……でも、この蟹沢きぬというのは名前からしてシワクチャのババアみたいだし、
伊達スバルというのは男だから、この二人よりはマシかなぁぁぁぁぁ~」
『(今の言葉、本人達が聞いたらどんな顔をするか見ものだな……)で、今から佐藤良美がどんな容姿であり、どんな声か我輩が真似をしてやる。よく聞くがいい』
「おぉ~、神様の声真似かぁ~すげぇぇぇぇぇぇぇ」
『うむ、感謝するがよいぞ』
「ところで神様、こいつらの中で真っ先に殺すのは誰からですかぁ~」
『(そうだな……先ほども思ったが、エリカについてはあの小僧次第だからこの男には……)お前が殺すべきはその中の佐藤良美という女だ!』
「へぇ~、佐藤良美かぁ……平凡な苗字だなぁ……でも、この蟹沢きぬというのは名前からしてシワクチャのババアみたいだし、
伊達スバルというのは男だから、この二人よりはマシかなぁぁぁぁぁ~」
『(今の言葉、本人達が聞いたらどんな顔をするか見ものだな……)で、今から佐藤良美がどんな容姿であり、どんな声か我輩が真似をしてやる。よく聞くがいい』
「おぉ~、神様の声真似かぁ~すげぇぇぇぇぇぇぇ」
早速、土永さんは孝之に良美の外見に関する説明と、どんな声であるかを披露してみせる。
一方の孝之はまだ見ぬ「佐藤良美」の外見とその声から色々とよからぬ妄想を行なっていた。
一方の孝之はまだ見ぬ「佐藤良美」の外見とその声から色々とよからぬ妄想を行なっていた。
「水色の髪にその声かぁ……殺し甲斐がありそうだなぁぁぁぁぁぁ~」
「あ~、殺す前に足でも潰して身動き取れなくしてから犯すのが一番かな~うぇへへへへへへへへ~」
『人間よ、勝手に考えるのもいいが、とりあえずは森に入れ。事はそれからだ!(やはり身を隠すには森が一番だ。我輩にとっては特にな)』
「あぁぁぁい、それじゃ森入ります~ぅえへへへへへ~」
「あ~、殺す前に足でも潰して身動き取れなくしてから犯すのが一番かな~うぇへへへへへへへへ~」
『人間よ、勝手に考えるのもいいが、とりあえずは森に入れ。事はそれからだ!(やはり身を隠すには森が一番だ。我輩にとっては特にな)』
「あぁぁぁい、それじゃ森入ります~ぅえへへへへへ~」
立ち上がった孝之は、自分が神の加護を受けているという絶対的な自信の元に森へ歩きだす。
土永さんも森を目指して孝之に見つからぬよう飛び立った。
土永さんも森を目指して孝之に見つからぬよう飛び立った。
「も~りへ~ゆきましょうよ、さ~とう~さん~♪ケッケ~ッケ!ハ~ンバ~グ♪」
体が自分の血で汚れ、全身に痛みが走っているのも気にせず孝之は森に踏み入って行く。
しかし、彼がそのことを気にしないのも当然かもしれない。
なぜなら、今の彼は神の啓示と加護を受けた神の代理人なのだから。
しかし、彼がそのことを気にしないのも当然かもしれない。
なぜなら、今の彼は神の啓示と加護を受けた神の代理人なのだから。
(ま、せいぜい殺してくれよ。我輩が生きて祈の元へ帰る為にな……)
(さて、とりあえずはこの男を操って、我輩の事を知る者を全滅させるか……)
(さて、とりあえずはこの男を操って、我輩の事を知る者を全滅させるか……)
だが、狂っているからこそ彼は気が付かない。
自分が人間の尊厳を失い、オウムの操り人形に堕していることに。
自分が人間の尊厳を失い、オウムの操り人形に堕していることに。
そして、土永さんもまた気づいてない。
孝之がすでに狂っており、必ずしも自分の思い通りの行動をするとは限らない事を。
孝之がすでに狂っており、必ずしも自分の思い通りの行動をするとは限らない事を。
これが、互いにとって幸か不幸かは本当の神のみぞ知る……。
【A-4 廃アパート群の一角にある空き地/1日目 時間 午前】
【鳴海孝之@君が望む永遠】
【装備:両手持ちの大型ハンマー】
【所持品:支給品一式、多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、ツルハシ、斧2本、レザーソー3本、フック付きワイヤーロープ(5メートル型、10メートル型各1本)】
【状態:俺には神の啓示と加護がある!皆待ってろよ!!】
【思考・行動】
1:ぎゃわはははははははー!(森に入り、神の名の下に背徳者である生徒会メンバーを殺す+女は犯してから殺す。まずは佐藤良美とかからだ!!)
2:げへへへへへへっ!(殺したらミンチをこねてハンバーグだ!)
3:あひゃひゃひゃひゃ!(一人の相手には名前を聞いてから殺す)
4:ひゃっはーーーーーーーーー!(大勢の場合、無害を装って一人ずつ時間をかけて殺す)
5:あんなこ~とイイなッ!で~きたらイイなッ!
6:最後は茜をひ、ひひ、ひひひ、ひひいひひひひひひひひッッ!
【装備:両手持ちの大型ハンマー】
【所持品:支給品一式、多機能ボイスレコーダー(ラジオ付き)、ツルハシ、斧2本、レザーソー3本、フック付きワイヤーロープ(5メートル型、10メートル型各1本)】
【状態:俺には神の啓示と加護がある!皆待ってろよ!!】
【思考・行動】
1:ぎゃわはははははははー!(森に入り、神の名の下に背徳者である生徒会メンバーを殺す+女は犯してから殺す。まずは佐藤良美とかからだ!!)
2:げへへへへへへっ!(殺したらミンチをこねてハンバーグだ!)
3:あひゃひゃひゃひゃ!(一人の相手には名前を聞いてから殺す)
4:ひゃっはーーーーーーーーー!(大勢の場合、無害を装って一人ずつ時間をかけて殺す)
5:あんなこ~とイイなッ!で~きたらイイなッ!
6:最後は茜をひ、ひひ、ひひひ、ひひいひひひひひひひひッッ!
【備考】
現在、南に向かって移動中。森に入ります。
森へ入った後、東に行くか南に行くか、はたまた西に進んで海にドボンするかは次の書き手次第。
孝之のスーツは全身が消化剤や自分の血等で汚れています。
自分が神の加護を受けていると思い込んでいるので、酷い出血も痛みもまったく気にしていません。
祈の棒キャンディーを消費しました。
レオを除く生徒会メンバーの名前を情報として知っています(良美については声、髪の色など土永さんが知る限りの情報を全て知ってます)。
現在、南に向かって移動中。森に入ります。
森へ入った後、東に行くか南に行くか、はたまた西に進んで海にドボンするかは次の書き手次第。
孝之のスーツは全身が消化剤や自分の血等で汚れています。
自分が神の加護を受けていると思い込んでいるので、酷い出血も痛みもまったく気にしていません。
祈の棒キャンディーを消費しました。
レオを除く生徒会メンバーの名前を情報として知っています(良美については声、髪の色など土永さんが知る限りの情報を全て知ってます)。
【備考その2】
孝之の「実際の」状態は以下の通り
肉体…疲労は通常なら人間の限界点突破、後頭部より大量の出血、肋骨右3本&左1本骨折、右足首捻挫、
奥歯1本へし折れ、全身擦過傷及び裂傷多数、脳内より大量のエンドルフィン分泌により痛覚完全に麻痺
精神…完全にハイモード及び絶賛発狂中
孝之の「実際の」状態は以下の通り
肉体…疲労は通常なら人間の限界点突破、後頭部より大量の出血、肋骨右3本&左1本骨折、右足首捻挫、
奥歯1本へし折れ、全身擦過傷及び裂傷多数、脳内より大量のエンドルフィン分泌により痛覚完全に麻痺
精神…完全にハイモード及び絶賛発狂中
新しく入手した得物について
- 大型ハンマー:ミンチ作るのに向いてますね。でも、即死させるならこめかみへの一発だ!
- ツルハシ:五寸釘のごとく胸に一発突き立ててやりましょう。
- 斧:スプラッタ映画みたいに脳天かち割りたいね!
- レザーソー:マフラー巻いていても鎧袖一触、頚動脈を掻き切って鮮血の結末を!
- フック付きワイヤーロープ:フックが体に突き刺さったら、すごく……痛いです。
【土永さん@つよきす-Mighty Heart-】
【装備:鳴海孝之@君が望む永遠】
【所持品:なし 】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:最後まで生き残り、祈の元へ帰る
1:鳴海孝之(名前は知らない)を駒として操り、生徒会メンバーを皆殺しにする(孝之の前には姿を現さないように注意)。
2:自分でも扱える優秀な武器が欲しい、爆弾とか少量で効果を発揮する猛毒とか。
3:孝之が使えなくなったら、どこか一箇所留まったままマーダー的活動が出来る場所を探す
4:基本的に銃器を持った相手には孝之をぶつける
【装備:鳴海孝之@君が望む永遠】
【所持品:なし 】
【状態:健康】
【思考・行動】
基本:最後まで生き残り、祈の元へ帰る
1:鳴海孝之(名前は知らない)を駒として操り、生徒会メンバーを皆殺しにする(孝之の前には姿を現さないように注意)。
2:自分でも扱える優秀な武器が欲しい、爆弾とか少量で効果を発揮する猛毒とか。
3:孝之が使えなくなったら、どこか一箇所留まったままマーダー的活動が出来る場所を探す
4:基本的に銃器を持った相手には孝之をぶつける
【備考】
鳴海孝之とは距離をおいて行動しています。
孝之の事は、信心深いくせに勘が鋭く、尚且つ驚異的にタフと思い込んでます(狂っていることに気づいてません)。
狂った孝之が、何かの拍子で自分の想像の斜め上を行く行動を取る可能性について考慮していません。
土永さんの生徒会メンバー警戒順位は以下の通り(レオを除く、放送後の死亡者についてはまだ知らない)
エリー>よっぴー>乙女さん>スバル>カニ
鳴海孝之とは距離をおいて行動しています。
孝之の事は、信心深いくせに勘が鋭く、尚且つ驚異的にタフと思い込んでます(狂っていることに気づいてません)。
狂った孝之が、何かの拍子で自分の想像の斜め上を行く行動を取る可能性について考慮していません。
土永さんの生徒会メンバー警戒順位は以下の通り(レオを除く、放送後の死亡者についてはまだ知らない)
エリー>よっぴー>乙女さん>スバル>カニ
088:復讐鬼とブリーフと | 投下順に読む | 090:無垢なる刃 |
088:復讐鬼とブリーフと | 時系列順に読む | 090:無垢なる刃 |
082:Crazy innocence | 鳴海孝之 | 109:阿修羅姫と夢の国の王様 |
083:童貞男の苦悩と考え | 北川潤 | 104:来客の多い百貨店 |
083:童貞男の苦悩と考え | 伊吹風子 | 104:来客の多い百貨店 |
084:私にその手を汚せというのか | 土永さん | 109:阿修羅姫と夢の国の王様 |