現実と夢の狭間で私は祈る


最近、変な夢を見る。
夢の中では私は変な所にいて。
子供から大人まで会った事も無い人達がいて。
でも何故か私は相手の人達の事を知っていて
相手の人達も私の事を知っている。
徐々に人数は増えていく。毎晩、毎晩。
いつもそこで何をしているかは様々だ。談笑したり、喧嘩したり、競い合ったり。
そして、目の前が明るくなって――――――

でも、朝になると、ちゃんと自分の部屋の中にいる。

幼馴染の宮小路・・・・・鏑木瑞穂とその恋人であり友人の厳島貴子が失踪してもう2週間になる。
聖央女学院では、それについての憶測が常に飛び交っている。
当然だ。何しろエルダーと生徒会長が同時に失踪したのだ。
誘拐、駆け落ち、果てには無理心中という憶測まで飛び出す始末だ。
だが、それが正しいかどうかなんて誰にもわからない。

私が2週間前の朝、瑞穂ちゃんの部屋に行ったらそこはもぬけのからで。
先に学校に行ったと思って昼休みにA組に行ったら居なくて。
美智子さんや紫苑さまに瑞穂ちゃんの行方を聞いたら今日は朝から居ないとの事。
そういや今日は貴子も朝からいなかった。しかも無断欠席。普通ならサボりだろうだが、
しかし、ここはお嬢様だらけの聖央女学院。そんな事をする輩は極めて少ない。
それに加えて貴子は生真面目だ。欠席にしろきっちり連絡は入れてくる。
その次の日も瑞穂ちゃんも貴子もいなくて、そのまた次の日も。
そして2週間が経った。


瑞穂ちゃん達の消息を探すために鏑木財閥は全力を尽くしている。
敵対関係だった厳島グループともこの緊急事態に現在は協力関係を結んでいる。
しかも厳島家から直々に依頼が来た。あの厳島家がである。
いくら、経営の鬼といえども自分の娘は愛しかったようだ。
まあ、貴子自体はその父を忌み嫌っていたようだが・・・
それに旧家方面に顔の利く十条家と御門家の協力もプラスしてこれ以上無い調査網を作り上げている。

それでも、その消息は一向に掴めないままだ。

寮の雰囲気が最近暗くなった。原因は言うまでも無い。
奏ちゃんも由佳里も皆の前では無理して明るく振舞っているが、寮に帰ると軽く塞ぎこんでいる。
まあ、それは私も同じなんだけど。
それだけじゃない、紫苑さまも、美智子さんも圭さんも、それどころか全校生徒に元気がなくなっている。
みんなカラ元気を出しているから表面上は何時もの聖央と変わりは無い。でも、どこかが違う。
瑞穂ちゃんが転入してくる前の6月・・・・いや、今は貴子も居ないから確かに前とは違う環境なんだけれど。
それだけ、それだけ、瑞穂ちゃんと貴子という存在は大きかったのだろう。

夜、私はまた、夢を見た。
私の居る場所は大きな空間で、その空間に意外となんでもそろっている。
そして、そこには大きな扉が一つだけある。
最近分かったけどどうやら私は夢の中では結構有名・・・な存在らしい。
他の人が扉から出入りするのは基本許されていないみたいだけど、私と一部の人間は扉から出入りできるらしい。
扉を開けると、ソファーやテーブルなんかが置いてある控え室みたいな雰囲気の場所に出る。
その場所の奥にはまた大きい扉。
そこに入るとまた大きな空間。今まで私が居たところに比べて人数は少ない。
こっちも毎晩毎晩少しずつ人数が増えてきている。というか、私は元々こっちにいたのだけれど。
ずっと周りを見渡す。するとそこには見知った人物が居た。


――――――――貴子だ。

私はそこに駆け寄ると、貴子に募ってた思いをぶちまけた。
貴子も最初は驚愕していたみたいだけど、徐々にいつもの調子を取り戻して受け答えに答えていた。
話した内容は実のところよく覚えていない。
何時もなら夢の中で話した内容も覚えているはずなのに、貴子と話した内容だけは飛び飛びだった。
ただ、分かったのは貴子も何故ここに来たのかすら分からないということ、それだけ。
もしかしたら忘れたのではなく、私の脳が覚えること・・・・いや
知りたくも無い現実を知ってしまって、自衛のためにわざと忘れたのかもしれないけれど。
そしてまた目の前が明るくなって―――――私はいつものベッドの上にいた。

私は――――泣いていた。

何故だかは分からない。でも、もう現実で貴子には一生・・・・・逢えないような、そんな気がした。
夢だっていつまで見続けられるかは分からない。そうしたら、もう貴子とは絶対に逢えなくなる。
私の中にはそんな確信が出来ていた。理由なんて無い、いや理由なんてつけられるはずもない。
私は泣き続けた。泣くのを止めようと思っても止まらなかった。

多分・・・・瑞穂ちゃんも貴子と同じ原因だろう。そしていつかはあそこに来るのかもしれない。
でも多分それが意味するのは、喜ばしくないこと。
夢での一時の逢瀬を引き換えに得るのは現実での一生の別離。

私は今日も床につく。
彼と、夢で逢う事を恐れ、現実で再び逢うことを祈りながら。





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