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STRANGE ENCOUNTER ◆VtbIiCrJOs



静寂の夜闇を切り裂く拳銃の発砲音。
飛び交う銃弾は時折大木の幹に突き刺さり、木片の粉を巻き上げる。
「まったく……大した自己紹介ね、握手の代わりに鉛弾をぶち込んでくるなんて親の顔が見てみたいわ」
「いやー、うちの実家ヤクザなもので、血の気の多い人間ばっかなんですよ」
「手を取り合い協力する……なんて考えは無さそうね」
「根性無しのお姉ならそんな甘い考えもするでしょうけど、生憎私はもっと手っ取り早い方法を取りますよ」
奴は本気で殺しにかかって来ている。こちらはまともな武器なんて持っていないのに……
木陰に身を潜ませた小町つぐみは唇を噛み締めた。

海洋テーマパークLeMUで起こったあの事件。ようやくそれから解放され、愛する夫と子供たちとの幸せな家庭を手に入れた矢先の出来事だった。
死ぬわけにはいかない、沙羅とホクトを残して死ぬものか。
武……こんなときあなたなら……
つぐみはこの島のどこかにいる夫の名を呟く。
まずは彼と合流し、何としてでも元の世界にもどらなくては……
しかし、そのためには目の前の障害を何とかしなくてはならない。
「しっかし、あなた本当に人間なんですか? これ、おもちゃじゃなくて本物ですよ。例え急所に当たらなくても撃たれた痛みはとんでもないんですよ、わかりますかぁ?」
興奮のため忘れていた強い痛みが走る。
いつ間にかに左肩を撃たれていた。弾はどうやら貫通している。
大丈夫、この程度の傷なんて――だがつぐみは自らの身体の異変に気がついた。
傷の再生が遅い……?
世界でも数例しか報告されていない極めて稀有なウイルス、キュレイウイルス。代謝機能を促進させ自然治癒能力の増大。
さらにテロメア無限修復による細胞分裂回数の限界突破、つまり老化の抑制。
感染した人間はその特性のため限りなく不老不死に近づく。そしてそれはつぐみの体内にも宿っている。
かつてつぐみは再生力の実験と称して全身を切り刻まれたことがあるがそれでも彼女は死ぬことが出来なかった。
恐らく脳を完全に破壊されない限り死ぬことは許されないだろう。
しかしこの島ではどういうわけか傷の治りが遅い、血こそ止まっているが傷口は開いたままで赤い肉と黄色い脂肪の間から骨が見えている。
熱い痛みが体中を駆け巡る。普段ならこの程度ものの数分で完治するはずなのに……!


「私は人間よ、ちょっと普通じゃないけどね」
木陰からちらりと顔を覗かせた途端、銃弾が顔を掠める。
銃弾はそのまま後ろの木に当たりぱらぱらと小さな破片が土の上に降りかかる。
この島を覆う不思議な力はキュレイウイルスの特性である再生力、身体能力の上昇を封じていた。
わずかに残る赤外線視力はその襲撃者の姿を捉えていた。
それはまだ十代の少女。二挺拳銃を構えた姿。その頭部に注目する。
暗視ゴーグルだ。なるほど暗闇でもこちらの姿を見つけることが出来る訳だ。
「近頃の小娘は随分場慣れしてるのね」
「そりゃあ実家が実家ですからね、色々鉄火場をくぐってるもので。それを言うならあなただって私とそう変わらない歳に見えるのに妙に冷静ですねえ」
「私、こう見えても四十近くで高校生の息子と娘がいるのよ」
「あっははははは、それギャグで言ってんの? すっげーつまんないですよ。お姉だってもっとマシなギャグ言いますって」
襲撃者はつぐみとの一定の距離を保ち続け、銃を乱射せず的確に狙いを定めてくる。
つぐみの手数が読めない故の用心なのだろう。
しかしそれはつぐみに事態を打開するための思考を巡らす時間を与えてくれる。
デイパックの中の唯一の武器、スタングレネード。
殺傷力は無いがそれから放たれる爆音と閃光は人を確実に戦闘不能にさせる。
まして相手は暗視ゴーグルを着用、この閃光に耐えられるものなら耐えてみろ。
その後は急いで逃亡、できれば彼女に二度と銃を持てないようにしてやろうかと思ったがパニックになった相手が銃を乱射する危険性が考えられる。
故に下手に追撃はせず逃走するが上策。

「そろそろこの睨み合いに飽きたわ、私には探さなきゃいけない人がいるの」
「あなたがさっさと死んでくれればこのつまらない睨み合いも終わりますよ。さっさと出て来てくれたらエンジェルモート謹製穴開きチーズをご馳走してあげますから」
「結構よ、そんなに私を殺したいのならさっさとこちらに来なさい。それとも私が怖くて来れないの? ふん、臆病者め」
「あっはははははッ! 私がそんな挑発に乗ると思った!? 尻尾巻いて逃げ出す所を鴨撃ちにしてやるよッ!」

「そう――? なら好都合ね」


つぐみは木陰から素早く飛び出しスタングレネードのピンを引き抜き襲撃者に向かって投げつける。
襲撃者も素早く発砲、二発の弾丸はつぐみを掠めて背後の幹に突き刺さる。
いくら暗視ゴーグルがあっても深いブッシュに囲まれた動く目標、用意に狙いをつけられない。
カッコつけて二挺拳銃スタイルなんてするからだ――つぐみは不適に笑う。
「ちィッ! ちょこまかと……!」
「用心しすぎたのがあなたの敗因よ。足元を見てみなさい」
「なッ!! しまっ――」
からんからんと襲撃者の足元に転がるスタングレネード。炸裂まで一秒も無い。
そして凄まじい轟音と閃光が森を揺るがした。
暗視ゴーグルによって何倍にも増幅された白い光が彼女の視神経に直撃する。
「ぎゃああぁァァアああああああああッ!!!! 目がぁあああ目があああぁぁぁぁーーーーッッ!!!」
絶叫を上げ地面をのた打ち回りながら銃を乱射する女。
闇雲に撃った銃弾は辺りの樹木に跳弾し、予測不能な軌道を描く。巻き添えはまっぴらだ。
つぐみは逃げる際、彼女に一声かける。
ちょっとした意趣返し。

「そういえば自己紹介がまだだったわね、私は小町つぐみ」
「畜生畜生畜生ッッ!!!! 殺してやる殺してやる殺してやるぅぅぅぅぅぁぁぁぁぁぁあ!!」
「本当はあなたをここで縊り殺したい所だけど、私、あなたみたいに趣味が悪くないの。ま、せいぜいそこでのた打ち回ってなさい。運が良ければあんたみたいな馬鹿が見つけてくれるかもよ。じゃあね、二度と再会しないことを願っているわ」
「小町つぐみぃぃぃぃィィィッッ!! 殺してやる殺してやる殺してやる! 絶対殺シテヤルゥゥゥ!!」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「……これぐらい逃げればまあ大丈夫ね」

つぐみは追っ手が来ないことを確認した後、近くの木の下に腰を落ち着けた。
左肩の傷を診る。既に血は赤褐色に固まっているが傷口のほうはまだ塞がってはいない。
だが、さっきよりも傷は塞がりつつあるように見えた。
さて、これからどうしようか?
まずは武との合流。でも彼はどこにいるのだろう……
「とりあえず……北へ向かおう」
地図を見るに島の北部はかなり大きな市街地になっている。
ここなら何らかの情報があるかもしれない、また人がいれば情報の共有ができる。
しかし、先ほどの女のように既に殺し合いに乗っている者に遭遇するかもしれない。
――何か武器が欲しい。
デイパックの中身をもう一度確認する。
スタングレネード以外に出てきたのはゲームセンターの景品にありそうな天使を模った人形だけだった。
「はあ……」

このままじっとしていても事態が好転するわけでも無い。つぐみは腰を上げこの場を後にした。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


つぐみを襲った女――園崎詩音が落ち着きを取り戻した時はすでにつぐみは逃走した後であった。
「はぁ……はぁ……はぁ……小町つぐみめ……私をよくもコケに……手足の爪を全部剥いだ上、身体を一センチ刻みで輪切りにして殺してやる……」
あたりの景色がちかちかする。完全に視力が戻ってはいないのだろう。
爆発の音を聞いて誰かやってくるかもしれない。
どこかに隠れて身を休ませなければ……
ふらふらとおぼつかない足取りでこの場を立ち去る詩音だった。

「ちくしょう……」
油断したつもりは無かった。しかしどこかに銃を持っている故の慢心があったのだろう。
そこをあの女――小町つぐみにつけ込まれた。
いいか園崎詩音、クールになれ、ありとあらゆる状況を想定し障害を排除せよ。
慢心こそ死。
例え相手が丸腰であっても油断はしない。
見敵必殺サーチ&デストロイ。
徹底的に殺れ。
よし、落ち着いてきた。素数を数えなくても私は冷静だ。
「悟史君……絶対生きてあなたの所へ戻るから……待っててね……」
なぜ鷹野がこの殺し合いをさせたことなんて些細なこと、考える必要なんて無い。
そんな思考、今は目的の障害でしかない。
やるべきことは元の世界に帰る、そのためには参加者を皆殺しにするのだ。
協力して脱出の手段を模索する?
そんな不確定要素はチップを賭ける対象にすらならない。
そんな馬鹿な行為私はしない。
邪魔するものは皆殺し、この場でもっとも合理的な手段。
……それが圭一達であっても?

わからない……けど自分の邪魔をするのであれば――



【B-4 森/1日目 深夜】

【小町つぐみ@Ever17】
【装備:スタングレネード×9 天使の人形@Kanon】
【所持品:支給品一式】
【状態:左肩に銃創(三時間ほどで治癒)】
【思考・行動】
1:武と合流して元の世界に戻る方法を見つける。
2:ゲームに進んで乗らないが、自分と武を襲う者は容赦しない。
3:北の新市街へ向かう。
【備考】
赤外線視力のためある程度夜目が効きます。紫外線に弱いため日中はさらに身体能力が低下。

【園崎詩音@ひぐらしのなく頃に祭】
【装備:ベレッタM92F×2(9mmパラベラム弾10/15+1,10/15+1 暗視ゴーグル】
【所持品:支給品一式、予備マガジン×10】
【状態:かなりの疲労 やや視力低下】
【思考・行動】
1:ゲームに乗って元の世界に帰る。特につぐみは絶対に殺してやる。
2:身を休ませる場所を探す。
3:圭一達部活メンバーは殺したくないが邪魔をするのであれば殺す。



001:勇気ある者の選択 投下順に読む 003:二人の出会いは
001:勇気ある者の選択 時系列順に読む 003:二人の出会いは
小町つぐみ 039:利用する者される者
園崎詩音 036:もう戻れない優しい日々






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