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紛れ込む悪意二つ◆sXlrbA8FIo


バットを片手にスバルは住宅街を疾走していた。
先ほど耳に届いたけたたましい音が、彼の中に焦りを呼ぶ。
きぬやレオの姿が頭に浮かび、彼らの身に何かが起きたのではないかと思うと気が気ではなかった。
新一の死体と二人の姿が思わずダブり、彼の足はますます速度を上げ駆け続けていた。

荒ぶる呼吸をゆっくりと整えながら、たどり着いたのはつい先ほど朋也とオボロの戦闘によって荒れ果てた震源地。
身を隠しながら覗いたそこは、火薬の匂いが立ち込め、わずかに残る煙と抉られた地面が間違いなくここで何かがあったことをスバルに認識させる。
幸いにもあたりには誰の姿も見えなかった。
それでも警戒を一切緩めることなくスバルは一歩一歩近づき、周囲を見回す。
だが、何があったかを示すような手がかりはまったく落ちてはいなかった。
「ちっ……二人以外が死んでりゃ手間が省けたんだがな」
一人ごちながらもうここにいる価値は無いと判断したスバルは、両腕を伸ばし軽く伸びと屈伸運動をする。
少しダルさも感じていたが、まだそこまで体力は落ちてないことを確認する。
もうしばらくは影響なく動けるだろう。
とにかく人の集まりそうなところ――ここだと一番近いのは学校か? それとも商店街か?
悩んだ挙句にスバルは後者を選択した。
バット以外にも有用な武器が手に入るかもしれない、そう考えた為だ。
これからの姿勢を決めると、大きく息を吸い再び地を蹴って飛び出していた。



  •  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 



「――前原圭一だ、よろしく」
目の前の男はそう名乗りながら俺に向かって真っ直ぐ手を伸ばしてきた。
不覚にもその行動に身体が震え、バックの中の手榴弾を握り締める手に力が篭った。
俺に対して向けられたその瞳は疑うと言うことを知らないのか、真っ直ぐと俺を捕らえて離さなかった。
とは言え信用はまだ出来ない。
正直こいつと一緒にいた人間を見ていなければ安易に近づくなんて真似すらしなかっただろう。
圭一と名乗った男の、少し後ろに立つ自分と同い年ぐらいの女が二人……その片方の格好があまりにも滑稽だった。
(……どう見ても痴女だよな、これは)
ほとんど素肌を晒したような怪しげなその服は、直視もする事もはばかられる。
恥ずかしさに必死に視線を背けようとしてはいるが、そのインパクトに引き寄せられるように目線はどうも追っていってしまう。
「好きでこんな格好してるんじゃないよぅ……」
「え……?」
気が付くと目の前の女は真っ赤になって縮こまってしまっていた。
「……す、すまん」
慌てて俺が頭を下げるのを見ながら、圭一ともう一人の女が小さく笑っていた。
思っただけのはずがどうやら呟いてしまっていたらしい。
(春原じゃないんだから……しくったな。でもおかしいだろう、この服は……胸なんか見てくださいと言わんばかりじゃないか)
「やだ! みないでぇ」
「うっ……」
胸元を抑えながら隠すようにしゃがみこんででしまった女を前に思わず身体が硬直する。
(また言ってたのか……?)
「言ってるよぉ」
涙を軽く貯めながら上目遣いに俺を見上げてくるその表情に罪悪感で一杯に――っておい、そこの二人!
笑いをかみ殺してるんだろうが、めちゃくちゃバレバレだぞ……ったく失礼な奴らだ。
「だからあんまりまじまじと見ないでってばぁ」
……自業自得だけどな。


羞恥に震える女と、それを見守る二人の笑いのおかげ……かどうかは知らないが、幾ばくかの余裕が俺の中に沸き起こる。
そう思うとバックに入れた手とは反対の手を取り出し、圭一の手を握り締めた。
「……岡崎朋也だ」
握り返してくれたのが嬉しかったのか、圭一は満面の笑みを浮かべながら俺の手を強く握り返してくれていた。
なんだろう、悪い気はしなかった。

「……遠野……美凪です」
ちらりと圭一の後ろに並んでいた女を見やると、そのうちの一人がペコリと頭を下げて名乗ってきた。
「あ、さ、佐藤良美です」
一呼吸遅れながら、下からも声が聞こえて来る。
俺を見ながらどこか落ち着かない節を感じるが……やばい、変な奴と思われて無いだろうな。
――と、そこで美凪と名乗った女が何かを差し出しているのに気が付いた。
「ん、これは?」
目の前に出されたものをまじまじと見つめる……『進呈』?
「……お近づきのしるしです、ぺこり」
良くはわからないが恐る恐るそれを受け取り、圭一が生暖かい目で見つめる中それを開けてみた。
中から出てきたのは一枚のお米券……ホワッツ? ホワイ?
まったくもって意味不明な中身に美凪に顔を向けるも、満足そうに美凪は微笑を浮かべ足を一歩戻し後ろに下がっていった。

なにがしたかったのかさっぱりわからず考え込む俺の顔が、よほど間抜けな顔をしていたのだろうか?
圭一が俺の肩をバンバンと叩きながら笑いをこらえているのを見ると、なんとなく警戒していた心も緩み、知らず知らずのうちに一緒になって笑ってしまっていた。



  •  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・



とりあえずは情報交換をしようと言う圭一の提案に、朋也は黙って頷いた。
だが先ほどオボロに襲われたのは決して忘れてはいない。
最初は友好的に近づいてきて情報だけ引き出し、襲ってくる可能性はある。
目の前の3人はとても自分を襲うようには見えなかったが……それでもあくまで用心の為に少し距離を取り、地面に腰掛ける事を提案すると
圭一は明らかに不満そうな顔を浮かべた。
それをなだめながらも、何故自分がそのように慎重になるのかその理由を手短に説明する。
そして自分にはその意思は無いが、もしも俺がそう言う人間だったら圭一達も危ないだろうと言う事も合わせて示唆すると
なるほど、と感心した風に3人は頷いていた。
「んま、そこまで丁寧に話して襲ってくる馬鹿もいないだろ? 俺はあんたの事を信じるぜ。っと、岡崎……さん、か?」
完全にもう朋也の事を信用しているのか、距離を詰めながら圭一は朋也に笑いかけていた。
「朋也でいいぜ、俺も圭一って呼ぶからよ」
朋也は答えながら、手が何時の間にか握り締めていた手榴弾を離し、バックから取り出されていた事に気づく。
同時に今までの思考がバツの悪いものに感じ、気まずさを覚えながらも圭一がしたように笑みを返していた。

「それでこっちのほうだけど……」
圭一も今まで起こったことをかいつまんで説明する。
とは言え、朋也の経験から比べたら圭一の行動など特筆すべきことも無い平和そのものだったのだが。
一つほど平和とは言えない事もあったのだが――圭一は敢えて、良美が『人を殺した』、という事実は朋也には伏せた。
自分との出会いの話になった時に、良美がどこと無くそわそわし始めていたからだ。
仲間となりえる人物に隠し事はしたくない……がこれは良美の問題でもある。
良美はまだ朋也を仲間だと思っていないのかもしれないし、思っていたとしても知られたいはずはあるわけない。
それよりも良美の格好にばかり興味を示した朋也のおかげで、出会いの話題が一瞬で流れたというのもあったのだが。
話題がずれた時に良美がほっとした表情を浮かべたのを感じると、これが正解だったんだろうなと圭一は胸を撫で下ろしていた。



  •  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 



岡崎さんと前原さんが話し合う傍ら、私は佐藤さんにそっと手招きをして呼びかけました。
「……佐藤さん」
「ん?」
変わらぬ笑顔で私に視線をくれた佐藤さん。
ちくりと胸が痛みましたが、聞かなければならないような気がしました。
勿論、その方を殺してしまったのが佐藤さんだと言う事自体を話すつもりはまったくありません。
でも佐藤さんが殺してしまった方が岡崎さんのお知り合いの方なら、その方が死んでいると言う事実だけはちゃんと告げなければいけないと思ったのです。
岡崎さんと前原さんの方をちらりと見ると、お二人は真剣にお話をしているようで私たちのことはまったく気になされていないご様子。
今なら聞けるかも、いえ、今しかない――
「あの方の制服ってもしかして……」
私の問いに、佐藤さんは悲しげな表情を浮かべると
「うん……多分……同じ……」
と、肩を落としながら呟くように言いました。
同時に目から一筋の涙が――。
再び私の胸にちくりと何かが刺さりました。
やはり興味本位で聞くべきではなかったです。
自己嫌悪でつぶされそうになりました。
「いいの。悪いのは私だから」
私が同じように肩を落としたのを見た佐藤さんが、慌てて涙を拭うと私に向かって微笑んでくれました。
「私の口からちゃんと朋也さんに言うから……心の整理がつくまで、待って欲しい……かな」
その顔を見て強いと思いました。
だから懐からあれを取り出して私は良美さんに渡しました。
安易に慰めることも出来ないけれど、少しでも力になりたかったから。
「……ごめんね、ありがとう」

――謝るのは私のほうです、本当にごめんなさい。


  •  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 



渡されたお米券。
正直目の前で破いてやりたかった。
なんとか誤魔化せたようだけれど、もしあの後に変なことを口走られて岡崎朋也に聞かれたらどうなるものかわかったもんじゃない。
少しでも危険を減らしたいところなのに……会う人間全てが前原圭一のようにお人よしであるわけが無いのだから。
遠野さんに対する怒りがやまない……。
お米券を持つ手が震える。

ダメダメ、落ち着いて。深呼吸深呼吸……すーーはーーー。よし、おっけ。

心は落ち着いてきたけど、よくよく考えたら近いうちに彼女はなんとかしないといけない。
守られる対象が二人って言うのはどんなに強い人だって完全に守りきるのは難しいからだ。
圭一君にはなんとしても私を第一に見てもらわなければ。
それにやっぱり、変に勘ぐって和を乱すような人はいらないよ。
朋也君は……信用なんかしてないけど圭一君が完全に信用しきっているし、波風立てることも無いよね。
それに朋也君がことみちゃんの知り合いだったのは幸い。
ことみちゃんと出会ったときに信用されるにはやっぱ元からの知人がいるってのは心強いし。
殺し合おうとか思ってない男手はやはり欲しいしね。
遠野さんには口止めを頼んだし、圭一君もさっきのを見る限り多分大丈夫。
勿論もう一回念は押しておくけれどね。
なんとかして一緒に来てもらえるように出来ないかな。

「んじゃ俺はそろそろ行くぜ」
圭一君と二人で話していた朋也君は、そう言うとバックを持ち立ち上がった。
「え? 俺はてっきり一緒に行くもんだと思ってたぜ」
意外そうな顔で圭一君は朋也君に聞き返す。
「そ、そうですよ。一人は危ないんじゃ?」
私の言葉に同意するように遠野さんもコクコクと首を下げる。
「別にあんたらを信用してないってわけじゃないさ。ただ病院に行きたいからな。あんたらは病院から来たんだろう?
だったら戻らせるのも手間だと思っただけだ。なに、こいつの治療終わらせたら俺も学校へ向かってみるさ」
私のほうを見ちゃいけないと必死に目線をそらそうとしてしてる朋也君が少し可愛かった。
「でも……あ、ほら、商店街には薬屋があるかもしれないし、なくても学校には保健室もあるんじゃないかな?」
「……む、それもそうか」
ここで朋也君を手放すのはかなり惜しい。
「ね、ほら。そうしよう? やっぱり一人は危ないよ」

――結果、私は不自然じゃない程度の呼び止めをし続けた結果、朋也君も同行してくれることになった。

まずは商店街を目指し、私たちは足を揃え歩き出した。
商店街についたらまず服を探して……そして隙があれば……。

輪を乱そうとしてるんじゃないよ。
きっとこれが私達ににとって最善の策。
こうでもしないと絶対生き残れやなんてしないから。
私を守ってくれれば、私だって出来る限りの事はするから。
頑張って、ね。圭一君。朋也君。



  •  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 



そんな4人に増えた一行を遠巻きに見つめる瞳が二つ。
息を殺し、バットを握る手に力を混めながら。スバルは注意深く一行を観察していた。
(また凄い格好してるよな、よっぴー)
佐藤良美の姿を目に捕らえた瞬間に彼の思考は中断していた。
きぬとレオ以外は殺せばいいと、ただそれだけを思っていた。
彼ら以上に大事なものなんて自分にとってはありえないのだから。
彼らの存在。彼らと過ごした聖域。それさえ取り戻せれば良いはずだった。

迷いを払拭しようと慌てて頭を振って雑念を飛ばそうと試みる。
(違う、よっぴーだから躊躇ってるわけじゃない。ただ人数が多かったから、1対4でバットだけで飛び出すなんて単なる馬鹿のやることだ)
知り合いだからとか躊躇ってる場合でもないし、戦力差など省みてる場合でもない
立ち止まっているこの時間の中で、きぬやレオの身に何かが起きているのかもしれないのだから。
(そうなると……俺自身がEになるのが手っ取り早いか)
隙をつく時間すら待っているのが惜しい。
少なくともあの集団の雰囲気から察するに、有無を言わさず俺を襲うということも無いだろう――なら。
「よっぴー!」
最も効率よく参加者を排除できる方法として彼は結論を出し、隠れていた姿を晒すと大声で良美に向かって呼びかけた。




【F-5・G-5境界上方/川の近く/1日目 早朝】

【岡崎朋也@CLANNAD】
【装備:キックボード(折り畳み式)】
【所持品:手榴弾(残4発)・支給品一式】
【状態:脇腹軽症(痛み継続)】
【思考・行動】
基本方針:何が何でも生き延びる。敵意がある者には容赦なく攻撃
1:完全に信用しきったわけではないが、三人が自分に対して今のところ敵意が無いと判断
2:怪我の治療に商店街の薬屋、なければ学校の保健室を目指し、圭一たちに同行
3:良美の格好に少し照れている
4:少しは知人の安否が気になる。
5:オボロが探していたハクオロのことを警戒。
【備考】
オボロは死んだ、もしくは瀕死だと勘違いしています。

【佐藤良美@つよきす -Mighty Heart-】
【装備:S&W M36(5/5)、メイド服(圭一サイズ)】
【所持品:支給品一式×2、S&W M36の予備弾15、スペツナズナイフ、錐 毒入りとラベルが貼られた500ml非常用飲料水】
【状態:健康、羞恥】
【思考・行動】
基本方針:エリカとレオ以外を信用するつもりは皆無、ゲームに乗っていない者を殺す時はバレないようにやる
       利用できそうな人間は利用し、怪しい者や足手纏い、襲ってくる人間は殺す。最悪の場合は優勝を目指す
1:エリカ、レオ、ことみを探して、ゲームの脱出方法を探る
2:圭一と朋也を出来る限り利用したい
3:美凪の存在がそろそろ邪魔に感じる
4:まともな服が欲しい
【備考】
非常用飲料水の毒の有無は後の書き手に任せます。
メイド服はエンジェルモートを想定。
銃、飲料水の存在は誰も知りません。
良美の血濡れのセーラー服はE-5に放置されています

【前原圭一@ひぐらしのなく頃に祭】
【状態:健康】
【装備:柳也の刀@AIR】
【所持品:支給品一式】
【思考・行動】
基本方針:仲間を集めてロワからの脱出
1:美凪と良美を守る
2:良美の服を探す事と朋也の治療で薬屋を探す事の為に先ず商店街へ
3:手掛かりを求め学校に向かう
4:知り合いとの合流、または合流手段の模索
【備考】
良美が殺した人物(藤林杏)と朋也の関係には気付いていません

【遠野美凪@AIR】
【状態:健康】
【装備:なし】
【所持品:支給品一式、顔写真付き名簿(圭一と美凪の写真は切り抜かれています)】
基本方針:圭一についていく
1:知り合いと合流する
2:朋也に良美の過去を話すつもりは無い
【備考】
良美は美凪が顔写真付きの名簿を持っていることを知りません。
病院のロビーに圭一のメモと顔写真が残されています。
良美が殺した人物(藤林杏)と朋也が同じ学校だとは気付いているが、その関係や誰なのかまでは知りません

【伊達スバル@つよきす~Mighty Heart~】
【装備:悟史のバット@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:人形(詳細不明)、服(詳細不明)、支給品一式】
【状態:多少の疲労】
【思考・行動】
基本行動方針:優勝を目指し皆殺し・主催者全員の殺害。走り回って見敵必殺。
1:4人の隙を見て襲撃
2:良美を見て少し動揺
3:レオときぬの安否が気になる


※朋也・圭一・良美・美凪のそれぞれの知り合いの情報を入手しました
※朋也は鷹野についての詳細は圭一からはまだ聞いていません
※オボロとの戦闘の経緯や外見などは圭一・良美・美凪は聞きました
※4人はスバルの声に気づきました


064:信じる声-貫く声-偽る声 投下順に読む 066:そこには、もう誰もいない
064:信じる声-貫く声-偽る声 時系列順に読む 066:そこには、もう誰もいない
058:せーらーふくをぬがさないで 岡崎朋也 075:信じる者、信じない者(前編)
058:せーらーふくをぬがさないで 佐藤良美 075:信じる者、信じない者(前編)
058:せーらーふくをぬがさないで 前原圭一 075:信じる者、信じない者(前編)
058:せーらーふくをぬがさないで 遠野美凪 075:信じる者、信じない者(前編)
051:そして走り始めた影 伊達スバル 075:信じる者、信じない者(前編)




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